2003年12月5日 | >>要旨 |
民 主 党
1 基本認識
「イラク特措法」に基づくイラクへの自衛隊の派遣は反対である。在イラク大使館の奥参事官、井ノ上書記官両名が犠牲となられたことは、痛恨の極みであり、衷心よりご冥福をお祈りする。
この事件等も踏まえ、改めて以下の諸点を厳しく検証すべきである。
- 国連憲章を軽んじ、武力行使を急いだブッシュ政権の戦争の大義に対する疑問
- 政府の米英等による武力行使支持の理由とされた大量破壊兵器の脅威及び米英政府の情報操作疑惑
- 国際法上疑義のある行為を正当化する「イラク特措法」の制定、同法の枠組みを定める前提となった政府の情勢認識及び同法が定める安全確保の見通し
- 日本人外交官への襲撃事件及び周辺国を含む自爆テロの続発など、悪化するイラクの治安
- 戦争を主導した米英軍への攻撃及び内外世論の動向
- イラク国民による政権樹立の方法・過程
- 新たな国連決議及びフランス・ドイツ等の動向
- 自衛隊派遣に関わる政府の説明責任及び日本人外交官の犠牲に対する小泉総理、川口外務大臣の政治責任
2 日米同盟及び国内テロ対策
(1)民主党は、日米同盟を日本外交の基軸とする立場であるが、ブッシュ政権の意向を丸呑みする小泉外交には反対である。政府は、ブッシュ政権を国際協調の枠組みに引き戻し、国連主導による復興支援を追求していくべきである。北朝鮮問題との過剰なリンケージは、継続中の六者協議の実態を無視するものである。
(2)ブッシュ政権との関係については、エネルギー安全保障及び来年の大統領選挙の動向も考慮すべきである。
(3)テロの拡散により、日本がその標的になったとの情報を踏まえ、重要施設警備の強化など、以前に増した万全の国内テロ対策を講じるべきである。
3 イラク特措法の問題点
(1)米英等によるイラクへの武力攻撃は、戦争の大義が問われており、米英主導による暫定統治機構(CPA)による占領行政は、その正当性に疑義がある。米英等の占領から、国連主導による統治形態への変更なしには、自衛隊派遣に対する正当性は生まれない。
(2)たとえ「イラク特措法」が想定する「非戦闘地域」が一時的に存在したとしても、相手側の意志により一瞬にして「戦闘地域」に変わり得るなど、同法に基づく自衛隊派遣の法的枠組みはフィクションであるばかりでなく、海外における武力行使を禁じる憲法に抵触する恐れもある。
(3)戦争の大義、国連安保理決議が正当であるとして制定した「イラク特措法」の枠組みは、完全に破綻しており、同法の廃止を含めた見直しが必要である。
4 新たな復興支援の枠組み
(1)国連主体の復興支援、イラク国民への速やかな主権移譲等が重要である。フランス・ドイツや周辺諸国の積極的な関与を含め、国際社会が一致して協調できる新たな国連安保理決議の採択やイラク国民による政府が樹立に向けた外交努力を強化する。
(2)国際社会が一致して協調できる新たな国連決議の採択、またはイラク国民による政権樹立に至った場合には、イラクへの復興支援のあり方の見直しが必要である。この場合、イラクの治安情勢を踏まえ、わが国の主体的判断に基づき、憲法の範囲内でPKOの派遣基準を緩和するなど、自衛隊の活用も含めた支援に取り組むべきである。
(3)民主党は、医療・教育・経済分野等を中心に、国際協力機構(JICA)、非政府機関(NGO)等と連携を促進するための取り組みを強化する。人道・復興支援には、戦闘終結の前後を問わず、中立的に活動するNGOの方が、軍事組織に比べて優れている現状を踏まえるべきである。
財政支援を実施するに当たっては、政府は、表明した50億ドルの積算根拠、拠出先・使途・運用等について、しっかり説明責任を果たして取り組むべきである。
(4)イラク、中東に平和と安定をもたらすには、中東和平の前進及び周辺のアラブ諸国の積極的な関与が重要であり、アラブ諸国及び国連等における取り組みの強化を促すなど、中東和平に対してイニシアティブを発揮すべきである。以 上
2003年12月5日 |