2003年12月15日

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158 衆議院イラク支援特別委員会−(3)

質問者=久間章生(自民)、中谷元(自民)、太田昭宏(公明)


平成十五年十二月十五日(月曜日) 午後一時開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 政府参考人として法務省入国管理局長増田暢也君及び国土交通省政策統括官矢部哲君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
斉藤委員長 質疑を続行いたします。久間章生君。
久間委員 どうもしばらくぶりでございます。
 イラクが米軍によって解放されましてから大分時間がたったわけであります。国際社会では、やはり一日も早いイラクの復興あるいはまたイラクの人道支援ということで叫ばれておるわけでございますけれども、我が国でも支援の基金として十五億ドルの支出は決められましたけれども、民間の会社がかつて建設した電力とか、あるいはまた病院とか、そういうものの復興に行こうと思っても、現地の状況がなかなかそれを許さないということで、民間でもそれをやることができない。政府もまた、民間人を、あるいはまた政府職員としてやろうと思っていますけれども、なかなかできないということで今日まで来たわけであります。
 しかしながら、その間、総理としては、国際社会の一員としてやはり各国並みに日本もやらなきゃならないという思いに日夜非常に焦られたことだと思います。そういう中で、どうしても、やはり今の時点で行くとなれば自衛隊しかないということで、大変重い決断でやられましたけれども、先般閣議決定をされたわけでありまして、この間の総理が非常に、慎重の上にも慎重ということで熟慮されたことにつきましては私どももよくわかるわけであります。
 ただ、最近の世論調査あるいはまたいろいろな支持率等を見てみますと、必ずしも総理のそういった苦労が伝わっていないんじゃないかなと思われるような点がございまして、やはりこういう委員会の場でもう少し、国民に向かって、どういうわけでこういうことになったのかということを御説明していただきたい、そういう思いも込めて実は御質問をさせていただきます。
 今回、よく世間で言われるのは、自衛隊がイラクの戦争のために行くかのような、そういう誤解を結構持っておられる人が多いんですね。まさか今ごろになってと思いますけれども、いや、イラクに行って自衛隊は戦うんですか、そういうことをいとも簡単に言われる。ということは、やはり、今度の政府が決定した自衛隊の派遣というのが、また、私たちがこの国会で通した法律というのが、あのアメリカが行った戦争の延長線だというような、そういう認識を持っておられるんじゃないか。
 それは何でだろうかということを考えますと、一つには、周辺事態法をつくりましたときに、あれは、我が国の周辺で我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合に米軍と一緒になって行動する、あるいはそれを支援する、そういう法律でした。その次に、テロ特措法で、あのアフガンを米国が攻撃したときに、もしあのようなテロが続けて起こるならば日本としては対応できないじゃないか、この際テロを根絶したいというアメリカの意図でアメリカはあのときに攻撃をしかけたわけでありますけれども、それに対しては、日本もそれは応援すべきであるということで、海上自衛隊でございましたけれども、アメリカのアフガンに対する、タリバンあるいはアルカイダに対する攻撃を支援する形で行ったわけですね。それは、そこまではみんなも認めたわけですけれども、続いて行われる今度のイラクについては、アメリカ軍が行った戦争を支援するための我が国の自衛隊の派遣でないにもかかわらず、その延長線でとらえてしまっているものですから、米国を応援するための法律であるかのような錯覚をみんなが持ったんじゃないかと。
 ところが、今度のものはそうではなくて、戦争は必ずしも、賛成の人も反対の人も、いろいろな意見が国内にあったと思いますけれども、戦争が終わって、疲弊したイラクの国民をどうやって復興させるか、人道支援するか、そういうことについて国連が決議をして、日本も世界各国と同じようにお願いしますよと言ってきたときに、我が国としてもそれはやろうという形で今度の法律をつくった。それぞれの、周辺事態法あるいはテロ特措法、イラク支援法というのは全く内容が違っていて、特に今度の場合は、復興あるいは人道支援、そこに非常に主眼を置いてつくられた法律である、そういう認識が、今までの延長線の中でさっと見ているものですから、さもなくて、アメリカから言われたから日本も出ていくんだ、アメリカの応援のために出ていくんだというような、そういう短絡なとらえ方をみんながしているんじゃないかなと思うわけです。
 だから、この際、そうじゃなくて、今度のものは、明らかに国連の決議に基づいて、それを受けてつくられた法律で、それを受けて日本としても国際社会の、国連の一員として相応の活動をしたい、しかしながら民間ではやれない、あるいは政府職員だけでもやれない、だから自衛隊に行ってもらうことにしたんだ、私たちはそう思っておるんですけれども、総理においてもそのようなお考えかどうか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 法案の成立過程から十分審議を重ねて理解されている久間さんですから、この法律の趣旨はだれよりも理解されていると思います。
 私どもも、今回の、自衛隊をイラクに派遣するという点につきましても、まずイラク人が希望を持ってみずからの国を立ち上げる、そのための復興支援、人道支援、何ができるかということを考えて、資金的支援のみならず人的支援もするべきだということから、自衛隊派遣を決定したわけであります。その際に、誤解をされている点については、自衛隊が戦争に行くんだということをよく言われておりますが、自衛隊は戦闘行為に参加するわけじゃないし、武力行使もしない。
 そして、日本が国際社会の中で責任ある一員としての役割は何かということを考えると、このイラクの状況、大変困難な状況にある、この中でアメリカ、イギリス初め多くの国々が、できるだけ早くイラク人の政府をつくるように今努力されている。そういう中で、日本としては、民間の方に行っていただくという状況でもない、あるいは外交官の方も過日殺害されるような不安な状況もある、やはり、自分の安全というものを自分たちの組織の中で守りながら役割を果たすという場合には自衛隊の諸君に行ってもらうのがいいだろうと。
 自己完結能力といいますか、自衛隊だったらば、どのような危険があるかということを事前に調査をすることもできる、また回避するすべも持っている、防止する装備も持っていける、そういう中でイラク人の復興支援に当たる活動もできるという観点から、私は、この際、人的支援というのだったらば、多くの国が今汗をかいている、犠牲を払いながら、イラクに民主的な安定的な政権をつくってもらうためには、それぞれの国の事情はあるけれども、国力に応じて貢献すべきだという、国連の決議でも加盟国に支援を要請しているわけであります。
 そういう中にあって、日本としては、やはりこの際人的な支援も必要だろうということで、自衛隊には復興人道支援のために行ってもらうのであって、決して戦争に行くのではないということを何度も言っているんですが、これは、そもそも自衛隊をイラクに派遣すること自体反対だという方々がたくさんいますから、なかなか御理解いただけるのは難しいんですが、その点は、機会を活用いたしまして、丁寧に理解を求めるような説明をしていかなきゃならないと思っております。
久間委員 私の周りでも、かつてのイラクで発電所をつくったり、あるいはまた病院建設をしたり、そういう会社が結構あります。そういう社長さんあるいはまた会社の人に、あなたのところも、もう戦争が終わったんだから、病院も古くなってもおるし、そういうのに建設に行ったらどうですか、あるいは発電所についても、自分のところで昔つくったんだからメンテナンスを兼ねて行ったらどうですかと言いますと、今みたいな状態で行くと、向こうに行って、まず宿泊地をどうするか、食糧をどうするか、水をどうするか、また運搬手段、要するに内部で動き回る手段をどうするか、そういうことを考えると、なかなか民間会社としてはやりたいけれどもやれないんですよという話でございます。
 そういう点は、やはり自衛隊の場合だったら、みずから宿営地もつくれるし、水も食糧も確保できるし、また運搬手段としての車両もみずから持っている。やはりここは自衛隊が活動する以外に今の時点ではやむを得ないんじゃないかな、そういうふうに思っておりましたので、今総理がおっしゃられるように、まさに時宜に適した決定だったんだろうと思います。
 ただ、そのときに、非常に治安状態が悪い、戦闘地域になっているんじゃないか、アメリカの司令官はイラクは全体が戦闘地域なんだというふうなことを言っているというふうなことで、盛んにそういう心配をして言われる方もいらっしゃいます。米軍の司令官の場合は、これはまたほかの人とちょっと違いまして、客観的というよりも主観的な要素、やはり占領を続けているわけですから、戦闘地域でなかったら引き揚げろという話にもなるわけですから、その辺は割り引くにしても、かなりやはり危険な状態であることは間違いないと思うんです。
 幸いにして、きのうフセイン元大統領が身柄を拘束されたということで、これによって若干またこれから先変わってくるということが期待されまして、そういう点では非常によかったと思いますけれども、しかし、これとても、そうなったから本当に安全と言い切るにはまだまだいろいろな要素があるんじゃないか、ちょっと心配じゃないかと思うわけなんです。その辺の認識については、また総理から機会があったら答弁していただいて結構ですけれども、私は、フセイン元大統領が身柄を拘束されたからといって、そう簡単にはいかないんじゃないかと。
 というのは、あのテロを行っている連中が果たしてイラクの残党と言い切れるのか、海外から、国外から入り込んでいるそういう組織もあるんじゃないかなというふうに思っておりますだけに、ここしばらくはやはりこういう危険な状態は続くんじゃないかと思いますので、そういう意味で、自衛隊の派遣はやむを得なかったと。
 そうしますと、自衛隊をそういう危ないところに出していいのかというようなことを盛んに言われる方がいらっしゃいます。そして、それについては、わざわざテレビ局なんか、私の周りでもそうですけれども、自衛隊の家族のところまで行って、御主人が行かれるのは心配でしょう、不安でしょうとマイクを突きつけるわけですね。それはだれだって不安ですよ。しかし、外務省の職員の奥さんにしてもこの間の井ノ上さんにしても、そういう危険も顧みず、外務省の職員としてやはり行くべしだ、日本の国家のためにここは行かなきゃならない、そういう仕事を与えられた場合には敢然と行っているわけでありますから、本人さんたちはどうかというと、自衛隊に、今度行かれる人たちのみんなの話を聞いてみても、もう手を挙げて、私は行きますということで、りりしく、みんな希望を述べて、志願というわけじゃございませんけれども、行きますということを決意して言っておられるわけですから、家族の人に一々突きつけること自体が非常におかしな話だ、私はそういうふうに思いますが、いずれにしましても、そういう形で自衛隊が出ていくことになってきたわけです。
 そこで、一つは、戦闘地域と非戦闘地域というのが盛んに議論されております。私は、この法律をつくりましたときから、戦闘地域という言葉がまだなれていない点があるからどうかなという気はしておりましたけれども、わかりやすく言いますと、戦争状態にあるところとそうでないところ、そういうふうにわかりやすく割り切った方がいいと思うんです。そうすると、イラクの中で今度自衛隊が行く南の地域がそういう戦争状態になっているかというと、テロは確かにあるかもしれません、あるいはバグダッドの空港の中も、テロがないとは言いませんけれども、戦争状態じゃないわけですよ。だから、そこは非戦闘地域だと言い切っていいと思うんです。
 よく例として私は言うんですが、パレスチナとイスラエルとがたがたやっていますね。イスラエルのエルサレムで自爆テロが頻発しているわけです。ところが、エルサレムは戦闘地域でも何でもないわけですよ。むしろ、戦闘地域というのは逆にパレスチナ側のガザ地区、あそこの方が戦闘地域で、イスラエルが時々攻撃していますから。
 こういうふうに国と国、あるいは国と国に準ずるそういう組織、そういうのが敵対関係にあって、組織的、計画的に攻撃がなされる地域、それが戦闘地域であって、テロがたまたま起きたからといってそこは戦闘地域でないわけですから、明らかにイラクの中でも非戦闘地域はたくさんあるわけですよね。そういうことを区別しながら皆さん方にわかってもらうにはどうすればいいのかと思いますけれども、私のこのような考え方が間違っているかどうか、防衛庁長官でもいいし、総理でも結構ですから、答えていただきたいと思います。
石破国務大臣 久間先生のおっしゃるとおりだと私も思います。
 私の御説明の仕方が悪いのかもしれませんが、午前中も答弁いたしましたように、戦闘地域で危険なところ、戦闘地域だけれども安全なところ、非戦闘地域で安全なところ、非戦闘地域で危険なところ、そういう四つあるわけです。戦闘地域だからすなわち危険な地域だというふうに混同して議論をしてしまうことから多くの混乱が生じたのだ。
 つまり、こういう法律の議論というのは、定義をどうするかということをきちんと押さえませんとかえって議論が混乱してしまう。要は、日本国憲法第九条によって禁ぜられている行為を行うことはできないし、そしてまた、その行為が法的に武力行使と一体化されるような、そういうことも避けていかなければいけない。その二つの要請を満たしますために、この法律におきましては、我々の活動は武力の行使、武力の威嚇であってはならないということと、現に戦闘が行われている地域、あるいは活動の期間を通じて戦闘が行われると予測される地域、そこでは活動してはいけない、そういうことを定めておるのであります。
 そのことを混同してはいけないし、戦闘地域、非戦闘地域の概念はまさしく久間先生御指摘のとおりだと私は思っております。
久間委員 それからもう一つは、世間では武力の行使というのがよくわからないというか、武力の行使というのは、憲法上もあるいは自衛隊法その他の法律でも、要するに戦争行為をいわゆる前提とした戦闘状態、戦争行為といいますか、そういうようなこととのちょうど裏腹な形として言葉が使われているわけですよ。
 ところが、武器の使用というのと武力の行使を世間では同じように認識しているものですから、幾ら一生懸命説明しても、武力の行使は行いませんと言っても、じゃ無反動砲を何で持っていくんだというような話になって、要するに、日本国憲法では戦争をやっちゃいけない、武力の行使をやっちゃいけないということは規定しているけれども、攻撃されたときは、本土の場合は自衛するとしても、それ以外のところでも正当防衛として武器の使用は認められておりますし、そのための法律もたくさんつくってきたわけですね。
 ところが、その武器の使用というのと武力の行使というのを同じような概念で皆さん方は持っているものですから、そこでなかなか一つは理解できずに、武力の行使はいたしませんと言っているけれども無反動砲まで持っていくじゃないかというような、武器の使用というと、普通みんなが連想するのは、ピストルとかライフル銃とかそういうたぐいが武器の使用であって、武力の行使というときにはもっと、大砲を使ったりロケットを使ったりするのが武力の行使とか、そういうような誤解があっているんじゃないか。そこにも一つ原因があるんじゃないかと思うんです。
 今度の場合も、そういう意味では、武器の使用は、かなり大がかりなものも持っていきますというのは、どういう形で攻撃されるかわからない、テロがどういう形でやられるかわからないからやられるんだと思いますけれども、あくまでそういうのを持っていくからといって武力の行使にはならない、戦争にはならないんですよということを、もう一回、防衛庁長官、確認のために言っておいてください。
石破国務大臣 自己を守るために必要であり、かつ効果的な装備を持っていくということでございます。
 それは、正当防衛、緊急避難を危害許容要件といたしておりますけれども、それもあくまで自己に対する急迫不正な侵害があった場合に自己を守るために使うのであって、何もないのにこちらから使うということはあり得ない。
 そしてまた、向こうが非常に強力な、私は、今回持っていくものを時々重装備だとおっしゃる方がありますが、これは基本的な装備ではあっても重装備だという判断は軍事学的にはいたしません。向こうが何を持っているかわからない、あるいは、対戦車火器を、誘導弾を使わなければ、対戦車弾を使わなければ自分の身が守れないとした場合に、それを持っていかないということの方がよほど私は危ないのだろうと思っております。
 要は、比例の原則ということ、そしてそれをどう使うかということ。先生御指摘のとおりでございます。
久間委員 それから、総理がこの間記者会見で、武器弾薬の輸送は行いません、そういうことを言われました。そして、その一方で、官房長官が、兵士を輸送することはある、そのとき兵士が武器を携行しておることもあるし、手荷物の中に武器があることもあるでしょうと。
 この辺の議論は、私たちはテロ特措法のときに議論をして、海上輸送をするときに一々その区別はつかぬのじゃないか、その仕分けは、その荷物を載せないなんてできっこないじゃないかという議論をしていますから、とっくにわかっているわけなんですけれども、ここの国会の先生方はみんなわかっていますが、世間では、さも総理の言われたことと官房長官が言われたことと違うみたいな報道がされまして、考えてみましたら、法律をつくったときに関係しておった新聞記者等もすぐ、ぐるぐるかわってしまっていますから、恐らくそのときの議論を余り知った人がいなかったんじゃないかなと思って。こっちはこっちで質問する、こちらで官房長官に質問する、それぞれが自分の書いた記事を掲載するという形で、何か、さも見解が違っているかのような印象を受けましたけれども、その辺は全然違いがないということを、官房長官で結構です、これ、あのときと全く同じ議論で、全然そういう違いがなくて、武器弾薬の輸送は行わないけれども、武器あるいはそういう携行品として弾薬を持っていく兵士の輸送はあり得る、それは全然別のことじゃないんだということを、ひとつ明確におっしゃっていただきたいと思います。
福田国務大臣 今回のこの法律は、人道復興支援が中心的な課題である、こういうことでございます。安全確保支援、そういうことも基本計画に書いてございますけれども、これも仕事としては入っております。この安全確保支援の中には、武器弾薬を込めてもいいんです、考え方として。しかしながら、これは総理から、人道支援ということがはっきりわかるようにということで、武器弾薬は輸送しない、こういうことをはっきりと言われたということでございまして、これはもう、これからイラクで活動する部隊が運用上の問題として解決していけばいいわけでございまして、そういうことにするということを決められたわけですから、そのようにしていただきたい、このように思っております。
 また、向こうでいろいろ活動している部隊、他国の部隊もございます、他国の部隊がいろいろな活動をしているわけです。もちろん武器弾薬等を使うような、いわゆる治安活動、治安の中でもかなり激しい治安活動をするということもあろうかと思いますけれども、しかし、中にはいわゆる町の中の治安、例えば強盗、窃盗とかそういったようなものを防ぐための警官的な立場の者もいる。いろいろな立場の人がいるわけでありまして、そういうような人たちが、兵隊でありますから、通常、警察官であればピストルを持っているけれども、それが少し長い銃を持つということは十分考えられることでありまして、一般的に使うそういう護身用の銃をもって、これを攻撃的なものとかそういうふうなことで規制をするとかいうようなことになりますと、兵隊は一切運んではならない、こういうふうなことになります。ですから、そういう復興、治安の活動をしている兵員まで運ばないといったようなことで輸送活動が円滑に行われるかどうかということはございます。
 ただ、先ほど総理の考えとして、武器弾薬は運ばない、こういうふうに言っておるわけでございますから、そういう趣旨に沿って、兵員の輸送についても、重装備をするとかいったようなことがないような配慮といったようなものは、運用的に考えていくことは十分考えられることだというふうに思っております。
久間委員 法律上は武器弾薬の輸送は行われることがあり得るけれども、可能であるけれども、それをしないという総理の方針は、それは結構だと思います。
 もう時間がありませんから、最後に、日本の自衛隊が行ったときにやはり歓迎してもらえるためには、自衛隊が行った地域では何かそれに合わせていろいろなことをやってもらった方がいいわけです。
 そういう点では、これは要望しておきますけれども、外務省が例えばODAなんかでやったり、いろいろな形でやるときに、やはり相手任せじゃなくて、せっかく行ったら、自衛隊がやって、そこで、活動している周辺でいろいろな雇用につながるような活動をODA等としてもやった方が、私は、そこの地域の皆さん方との融和といいますか、そういう点で雇用を確保するという意味でも非常にいいかと思いますので、今後、そういう点でもひとつ努力をしていただきたいと思いますけれども、総理、よろしゅうございますか。
小泉内閣総理大臣 日本の自衛隊の復興人道支援についても、あるいは民間人がやるものにしても、政府職員が活動する分野におきましても、まずイラク人自身が希望するもの、日本の活動を歓迎してくれるもの、これによく意を用いて活動を展開していきたいと思っております。
久間委員 終わります。
斉藤委員長 この際、中谷元君から関連質疑の申し出があります。久間君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中谷元君。
中谷委員 まず、総理に日本の国益とは何かということをお伺いをいたします。
 政治の決定というのは、十年先、二十年先の日本と世界の姿を見て決定しなければならないと思いますけれども、今から十年前、カンボジアという国は四派、ポル・ポト派などに分かれて内戦をし、何百万人の人が虐殺をされていた。そこで、世界がこのカンボジアを安定させようとして、日本の外交が中心になってマンデートをつくり、そこでPKO活動を実施をしたわけでございますけれども、その中で、民間ボランティアの中田厚仁さん、そして文民警察の高田さんが活動中に犠牲になられたというのは本当に悲しいことでありましたが、十年たった今、このカンボジアはASEANにも加盟をし、経済活動が行われて、国民が幸せになっているわけですね。
 したがって、十年たって思うことは、この国際社会の平和維持活動とか支援活動があったからカンボジアの安定がされたということで、カンボジアの国際平和に貢献された方、またお二人の志には改めて敬意を払わなきゃいけないと思います。
 そこで、今度は十一月の二十九日、イラクにおいて、外交官の奥大使、井ノ上書記官が復興支援会議に出る途中にテロの襲撃に遭って亡くなられました。衆議院のこのイラク特委員会も、八月の初めにイラクに行きまして、現地を見ました。この三日間、この二人にいろいろなところを御案内いただきました。そこで二人が見せてくれたものは、日本の復興支援事業として、学校の修復、グラウンドの整備、そして病院の復旧並びに雇用を促進するために、市内のごみ清掃をして、ごみを回収する、それによって賃金を払う、そして市民の生活を安定させるという雇用対策事業を実施しておりました。
 この成果によって、子供は学校に行けるようになったり、病院に医薬品が届いて、電気がつかなくて手術もできなかったんですけれども、手術ができて人の命が助かるようになったり、また、失業者が報酬を得ることによって生活が安定されたということで、私は直接イラクの人から、日本は非常にありがたい国だ、こう感謝をされて、目に見える、形のできる成果を出していたんですね。まさに彼ら二人が中心になってそれをコーディネートしてまいりまして、まさに日本を代表して、身をもってイラクのため、世界のため、国際社会の一員として働いていたということであります。
 そこで、今回犠牲になったということで、私は、この二人から学ぶべき点としては、日本はイラクの復興支援を絶対になし遂げなきゃいかぬ、そして、イラクの国民のための復興を阻止しているのは、イラクの国民や国ではなくて、テロリストであって、テロとの闘いに決して屈してはいけない。テロの追放というのは世界全体の課題であって、日本自身の問題でもあるということでございます。
 戦後の日本は一国平和主義で、日本だけ繁栄して、日本だけ平和であればいいという考え方が大半でした。しかし、日本は貿易立国であって、世界が安定しているから日本の平和と安全があるし、国民生活にもかかわっている。すなわち、日本の安全と独立というのは国際社会と密接不可分であるというのが事実でございます。
 したがって、現時点において、このイラクの問題について、日本はリスクを払いながらもなし遂げなければならない、そういうことをぜひ国民の皆さんに御理解していただきたいと思っておりますけれども、総理は、現時点で日本に必要なもの、そして国益とは何かという点について、どのようにお考えになられていますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 まず、国益とは何か、国家利益とは何かといえば、一番大事なものは日本の平和と安全を確保することだと思います。日本国民の生命財産を守る、そして、もろもろの施策を平和のうちに推進できるような体制、環境を日本国民自身がつくっていくこと、これが大前提だと思っております。
 今回のイラクの復興支援につきましても、イラクが混乱してテロリストの温床になったらどのような被害が出るかということを考えますと、日本だけはそういうテロから被害を受けないという状況にはないと思っております。日本が自衛隊を出さなければテロの標的にならない、テロからの攻撃を受けない、日本人は安全だという状況にあるとは思っておりません。また、国際社会、国連加盟国として、国連がすべての加盟国にイラクの復興支援に努力するよう要請しております。そういう国際社会の中で日本は生きていかなきゃならない。世界と密接に今やどの国も結びついております。相互依存関係、相互互恵関係、極めて密接であります。
 先ほどカンボジアの例を出しましたけれども、先週、日本とASEANの特別会議が東京で開かれまして、その際、カンボジアのフン・セン首相と会談したときにも、フン・セン首相は、日本の支援に対して非常な感謝を表明されております。現に、日本の援助によってカンボジアの国が、平和に向かって、民主的な体制に向かって、今、懸命の努力をしている、日本の援助はありがたいと。カンボジアの紙幣に橋の絵がかかれているんです。この橋は、日本の援助でできた橋です、きずな橋ですと。自分としては、一国の紙幣に、日本の支援に感謝するという意味で、こういう日本の援助でできた橋をちゃんと描いておりますというお話でございました。日本の支援が生きているな、カンボジアの国民からも喜ばれているなと。
 やはり、一つの支援のあり方、援助のあり方、その国から最も必要な支援を聞き出す、そして、その国の国民が最も必要とする支援をしていくというのが、日本としても今後、支援、援助を考える場合、大事なことではないかと思っております。
 イラクにつきましても、今多くの国が、テロリストのおどしに屈して手を引いたらば、本当にイラクというのは安定した民主的な政権に向かって立ち上がっていけるんだろうかということを考えると、私は日本も、よその国に今の時点でやってください、日本はお金だけ出しますから人的支援は勘弁してくださいという状況か、そういう状況にないと思います。
 今や、日本もかつて多くの国から援助を受けて今日の経済大国までなってまいりました。今や、世界のGDP、アメリカと日本だけ二国合わせて四割程度のGDPを占める経済大国になった。そのときに、やはり、日本も立ち上がることができた、イラクも、できたら日本のように安定した民主的な政権が立ち上がってほしい、イラク人が自分の手で立ち上がってほしいという支援を、国際社会と協力しながら、また米英と協力しながら、イラク人の必要な支援を日本ができるだけのことをしていくのが、考えてみれば日本の国家利益にかなう、中東が安定すれば日本の交易状況、貿易条件も改善されていくと思うのであります。
 そういう点から、イラク復興支援に日本がかかわっていくのは日本の国益にかなうと私は思っております。
中谷委員 ただいま、日本の国益ということを語っていただきました。そして、なぜリスクを持って自衛隊が派遣されるのかということもお話ししていただきました。
 私からは補足として、世界の安全保障観が一変してしまったので、単なるイデオロギーとか国と国との国益の対立ではなくて、国際テロというものに真剣に対応していかなきゃいけないということ。よくマスコミはアメリカに大義があるのかと言いますけれども、ベトナム戦争は、そういう国や民族主義とアメリカが戦っていました。しかし、イラクに関しては、テロリストという国際テロ組織と戦っている、決してイラクの国民と戦っていないという点が違うということ。
 もう一つ、総理は、日米安保、日米協力と言われていますけれども、これはグローバルな意味での日米協力であって、ただ単に我が国の安全保障、そして東アジアの安定を超えて、例えば北朝鮮の国では核、ミサイル、これを開発しております。北朝鮮の首脳も言っております。そのミサイルがイエメンとかイラクとかイランに輸出されて、その技術がテロリストに渡っている。私は、こういう観点からしても、日米協力という観点は、我が国としても、国際的な、グローバルな点でやっていかなければならないということを思っております。
 そこで、総理の決断によって自衛隊員が派遣をされるわけでありますが、総理は記者会見で、国民からの敬意と感謝を持って隊員を送り出してほしいと発言がありました。しかし、依然として、配慮や心ない報道、また市民団体を名乗る反対運動が繰り広げられておりまして、派遣される隊員のみならず、家族や関係者も心を痛めております。
 現在、自衛隊員は、非常に士気も高く、使命感を持ってイラクにおける任務のために準備に励んでいると聞いておりますが、私の経験からしても、この使命感というのは平素から訓練や勤務を通じて身についていまして、黙々と頑張る集団で、これは日本の財産であると思います。派遣が決定された以上、日本そして国民の代表として任務に赴く隊員たちに対してもっと敬意と配慮があってもいいのではないかと思っておりますが、政府はどのような方法で自衛隊に敬意をあらわすのか。例えば、外国では海外に派遣される者には勲章が授与されていることが多いんですけれども、今回の派遣で隊員に対するいかなる名誉を付与するのか。
 そしてまた、派遣手当、これは今財政当局で検討されておりますけれども、財政の理屈でその金額の多寡を決定するのではなくて、派遣される隊員に対して、国家国民の感謝のあかしとして政治がまさに決めるべきものであって、例えば手当は現地へ派遣されても休養日は支給されないと聞いていますけれども、休養日といっても、外出もできません、テレビも見られません、CDも買いに行けません。こういった状況でいいのか。そして、手当というのは課税の対象となるかもしれないと聞いておりますが、いろいろな非課税がありまして、この課税を控除することができないか。
 まさに、この隊員たちに対してどのように国が敬意を払っていくかという問題でございますが、この点、いかがお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、自衛隊諸君は、自衛隊に志願して入隊する際に、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務を完遂するという宣誓をして入隊されております。今、徴兵制ではございません、志願制です。そういうことから、いつも厳しい訓練に耐えて、やるべき仕事はきちんとやる、こういう状況にいながら、みずからの任務に黙々と努力されている姿、大変貴重なことだと思っております。
 論語に、人知らずして憤らず、君子なるかなという言葉があります。人が自分の仕事を理解してくれなくても、決して怒ったり恨んだりしてはいけない、こういう人は本当に立派な人ではないかという意味であります。人知らずして憤らず。自衛隊創設以来、心ない批判を浴びながら、やるべきことをきちんとやるために日ごろから訓練している、こういう自衛隊諸君に対して、私は、一般の国民ができ得ない、きつい、つらい仕事をするわけでありますから、そういう活動なり活躍に対しては多くの国民が敬意と感謝を持って接していただきたいと心から願っております。
中谷委員 では、最後に官房長官に、安全への配意という点で。
 安全は準備によって確保されますけれども、この準備は何かというと、防弾ガラスを車にはめるとか、防弾チョッキを着るとか、そういう点の財政的な面で、まだ予備費が出ておりません。したがって、この準備がおくれていると思うんですけれども、こういった点で、いつごろ準備指示を出されるのか。また、派遣の時期も状況を見てということでございますが、いかなる状況になったら派遣をされるのか。この点についてお伺いします。
福田国務大臣 まず、予算のことでございますけれども、今般決定されました基本計画に定められる派遣部隊の規模、それから活動期間の枠組みなどを踏まえまして、派遣される自衛隊部隊の活動に支障の生じることのないよう留意しながら、現在、関係省庁間において所要の検討が行われております。現段階において、派遣にかかわる経費の規模、財政措置の具体的なあり方については、これは明確に申し上げることは困難な状況でございますが、そのような準備をいたしております。
 派遣の時期ですか。派遣の時期は、今、防衛庁の方で実施要項をつくる、そしてそういう中において派遣の時期は決定されていく、こういうことでございます。
斉藤委員長 時間です。
中谷委員 終わります。
斉藤委員長 これにて久間君、中谷君の質疑は終了いたしました。
 次に、太田昭宏君。
太田委員 公明党の太田昭宏です。
 まず、イラクでの人道復興支援に奔走しておられた二名の外交官、奥大使並びに井ノ上一等書記官が亡くなられたということに対し、衷心より哀悼の意を表したいと思います。
 お二人は、イラク復興のために昼夜を分かたず懸命に尽力をされている中、テロリストの凶弾に倒れたわけでありまして、お二人の遺志を、感情というだけでなく、ウオームハートとクールヘッドを持てという言葉がありますけれども、私は、冷静に受けとめ、そして温かい心で受けとめ、イラクの人道復興支援というものを展開しなくてはならない、このように思っております。
 まず、私は、公明党が今回のイラクへの自衛隊派遣、人道復興支援ということについて言い続けてきたことが二点あるわけです。
 一つは、十一月あるいは十二月九日の党首会談でも話がされているわけでありますけれども、憲法あるいはイラク特措法、そしてテロ等が起き、イラクの情勢がなかなか容易ならざる事態である。同時にまた、自衛隊の安全ということも極めて重要であるということから、第一点は、自衛隊の派遣は慎重にやるべきだ、特に陸上自衛隊の派遣については慎重の上にも慎重を期さなくてはいけない。
 もう一点は、国民に極力わかりやすく、丁寧に説明をするということが大事である。いわゆる説明責任です。私は、そうしたことを丁寧に、そしてこれからも、何度も何度もこの説明責任ということは心がけて、きょうもその一つでありましょうけれども、やるということが極めて重要である、こう思っております。
 総理もこれを受け入れて、十二月九日の党首会談のときには覚書も書かれておりまして、「陸上部隊の活動については、内閣総理大臣は、現地の治安状況を十分に見極め、改めて適切な指示を行うものとする。」そして、本件については、「政府・与党が一体となって取り組むことが重要であり、与党と緊密に協議するものとする。」という項目が、覚書にも書かれているとおりであります。
 私は、特に陸上自衛隊の派遣には慎重の上にも慎重を期せということ、そして、覚書にあるとおりの履行、そして与党また我が党とも十分協議をするということを改めて、きょうは冒頭ではございますけれども、確認をしたい、このように思っております。総理。
小泉内閣総理大臣 基本計画を策定いたしまして、今、実施要項については防衛庁長官を中心にして検討をしている最中でございます。その際、いつ、どのような部隊を派遣すべきかについては、政府のみならず与党ともよく協力関係が維持できるように、十分御理解をいただくように努力していきたいと思っております。
太田委員 特に、総理は、自衛隊法第七条にもありますように、自衛隊の最高の指揮監督権を有するのは総理大臣であるということを明記されているわけでございますので、改めてその辺の安全確認も含めて答弁をお願いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 必ずしも安全とは言えない困難な任務に赴こうとする自衛隊諸君に対しては、安全面において十分配慮しなければいけない。これは、装備もそうでありますが、地域におきましても、よく状況を見きわめながら、そのような配慮の上に派遣をしなきゃいけないと思っております。
太田委員 現在のイラク情勢がどうなっているか、またサダム・フセイン元大統領を拘束した、まさに変化の中のきょうの委員会審議ということになったわけですが、私は、政府もあるいは日本の各界各層、あるいはアメリカもあるいは協力する国々も、できる限りの情勢認識というものを共有していくという作業が非常に大事だというふうに思うんです。一度立ちどまってというわけにもなかなかいかないでしょうけれども、その都度その都度連携をしっかり密にして、アメリカは今後どうするのか、協力する国々はどうするのか、あるいはフランスやドイツやロシア、そして中国、そうした国々も一体どうするのかということを、常に認識の共有というものが私は非常に大事で、今回も橋本特使が派遣をされるとか周辺諸国に行く、私は非常に大事なことだというふうに思うんです。
 私は、総理にも報告をしましたけれども、六月の上旬にイラクに行ってまいりました。公明党派遣団として行ったわけですが、そのときに思ったことは、サダム・フセインの政権が倒れて、イラクの人々は非常に喜んでいるわけですね。きのうの夜のテレビを見てもそういう光景がありましたけれども、その喜んでいるときこそ、ああ、確かにサダム・フセインの時代より、圧制の大変な時代であった、今は本当によくなったな、そういう実感を持つということが実は非常に大事で、そういう意味では、生活実感といいますか、民生の安定というものを早急にやるということが私は非常に大事だということを痛感したんです。
 そのときには、旧バース党の残党が再結集するという動きがありましたから、これは避けるということが大事である。その前に、どちらのスピードが速いか。民心の安定あるいは民生の安定というのが先行するということがあって、残党が再結集するということを防ぐことができるんだ。電気がない、水がない、食糧がない、医療がない。特に私が痛感をしたのは、この十年間の経済封鎖というのがありましたから、なかなか経済活動ができていない。ほとんどの人が、六割が公務員。それが一遍に職がなくなっている。その電気がない、水がない、食糧がない、医療がよくないという上に、特に雇用が不安定であるし、ないということが私は大変な問題で、そういう意味では人道支援というものをこれはスピードを持ってやるということが非常に大事であるという認識をしたわけです。
 その後、これはなかなか容易ならざる事態になったなというふうに私が思ったのは、五月、七月ぐらいまではそういうふうにいって、そして、イラク人による統治評議会がスタートをした。そして、高村派遣団等が行ってみると、警察もイラク人の警察が出てきた。ああ、よかったなと思ったんですが、その後に国連事務所がやられる。テロリストの流入という八月以降の事態というものが一つ変わった。私は、今は第三期、第四期というふうに思うんですが、十月十六日の国連決議というのがあって、そして、かなり、米軍も掃討作戦に入ったから反発も非常に強い。そういう中で昨日のサダム・フセイン元大統領の拘束という事態になったということ、ここはまた、人道復興支援を急ぐというスピードが非常に大事だという局面を迎えたと私は思います。
 テロリストと旧バース党の残党と切り離さなくちゃいけない。その上にもっと大事なのは、イラクの国民の不満というものを本当になくす、この三つが連動してしまうと大変なので、テロリストと旧バース党の残党と、そしてイラク国民の不満というものを遮断するということが私は今一番大事な基本戦略にならなくてはいけないというふうに思っておりますが、その辺のイラク情勢の現時点での情勢をどう見るのか、そしてこの共有作業、そして、人道復興支援には幅広さとスピードが必要であるということを私は思うわけですが、その辺の認識を求めたいと思います。
川口国務大臣 今先生がおっしゃられたことについて、私は全く同じ考えを持っております。
 イラクの今の現状について、まず治安ですけれども、これは全体として予断を許さない状態が続いている。もちろん地域によってその差はあるわけですけれども、全体としてはそういうことであって、今回のサダム・フセイン元大統領の拘束によってこれがいい方向に展開をしていく、そのきっかけに拘束がなればいいというふうに考えております。
 それで、テロリストと旧サダム・フセインの支持者たちを切り離さなければいけないというのは、全くおっしゃるとおりでございます。今、どのような結びつき方があるかということについていま一つはっきりしないということではありますけれども、海外から、国外から流入をしたイスラムの過激主義者たちとともにこの残存勢力がいろいろなことを、テロをやっていた、混乱をさせていた、政治プロセスがきちんとした形で進んでいくことをとめようとしていたということであるわけでございまして、それを切り離さなければいけない。
 また、切り離すためにも重要なことは、まさに先生が御指摘のように、スピード感を持って人道的な支援、復興支援をしていくということであると思います。これは、以前、亡くなった奥大使もそういうことを私に直接おっしゃっていたことがあるわけでございますけれども、これは大事なことであると考えております。
 それらを進めていくために国際社会が関与をしていく、全体としてやっていくということがまた大事でございまして、我が国としてもこのための働きかけを、例えば現在、総理の特使の方が出発をしていきつつある過程にございますけれども、そういった活動を通して、またほかの外交チャネルを通してそういったことをやっていきたいと思っております。私自身も、アナン事務総長とお話をしたり、いろいろな努力をいたしております。
 ここでイラクの支援をきちんと国際社会として関与して前に進めることができなければ、これは武力行使前の立場のいかんを問わず、国際社会全体の責任といいますか、国際社会のかなえが問われるという状況であると思います。日本も、国際社会の重要なメンバーとしてその責任を果たしていきたいと考えております。
太田委員 スピードを持った人道支援というふうに言いましたが、総理、私イラクに入っていって、そのときに、総理がエジプトを通じて医療支援ということをするとか、いわゆる玉突きですね、それから、NGOが非常に現地で活躍をしている。わずか二千万円ぐらいで上水道を確保するとか、いろいろなそういう医療支援もやっていたりと。
 私はそういうことを、自衛隊派遣を含む人道支援とこう言うわけですが、含むのであって、もう少し幅広い、NGOとかあるいは玉突きの援助であるとかさまざまなことを、総理みずからエジプトに働きかけたりすることがあったわけですから、そういうことを奥大使もやろうとしていて本当に走り回っていたわけですから、ぜひとも国民に見える形で、まさにそういうことをさらに進めていただきたいし、また、何をやっているかということの説明を私はもっとする必要がある、こう思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私が五月にエジプトを訪問して、エジプトのムバラク大統領と会談した際に、医療支援というのはエジプトと協力してできるんじゃないかと。日本の医療支援、エジプトにおいては、小児科の病院等について日本がこれまでずっと協力してくれたことに対しては、非常な感謝とこれからの期待を表明されました。
 私は、その日本が建てた病院に行ったんですけれども、もう大歓迎でした。これは、これだけ日本の支援が喜ばれているんだなということを、窓から患者さん、看護婦さん、お医者さん、ずうっと出てきて手を振って、日の丸を振って、日本の協力ありがとうございますという、日本の支援に対して歓迎していただいていることを聞きまして、これはエジプトと協力してイラクの医療活動できることないかということで、イラクにはもう十三の病院、戦前、日本の協力でイラクにはそういう病院が建っている。
 ところが、この病院の機能が戦争によってかなり壊れている。こういうことに対して私は、日本のお医者さんとエジプトのお医者さん、医療関係が協力してイラクの医療支援できないかということで、これはいいなということで進めているわけであります。
 最近、NGOを通じてイラク人の生活基盤の整備に取り組むことができないかと考えておりますが、今、危険だということで民間人が引き揚げている状況です。自分で防備態勢ができない、自分で自己完結性がないということで、民間人はむしろ手を引いている状況でありますので、この際、自己完結性を持った、自分で寝泊まりもできる、自分で食事もできる、自分で給水活動もできるというような組織ではないと、生活基盤の整備においても難しいんじゃないかということで、今回、自衛隊の派遣を決意したわけでありまして、今後とも、日本は、アラブ諸国とも協力して、イラクの復興支援、人道支援、医療活動のみならず、教育活動あるいは生活基盤整備についても、日本独自でできること、アラブ社会、アラブ世界と協力してできること、米英とともにできること、国際社会、国連と一緒になってできること、いろいろな方面に、何をすべきか、まず何をしなきゃならないかということを連携しながら、日本としてできるだけのことの復興人道支援に取り組んでいきたいと思っております。
太田委員 自衛隊でなく民間がいいとか、民間か自衛隊か、私、そういう論議は間違いだろうと。まさに、まず大変危険な状況もある、テロもあるかもしれないというときに、ある人が骨折をしたときの添え木が自衛隊であるということを言いましたが、民間が出られるそういう条件をどうつくるか、あるいはイラクの政府をどうつくるかということについて、今、私は、そういうことの観点をさらに付与して説明をいただきたいというふうに思います。
 防衛庁長官、最後ですが、戦闘地域か非戦闘地域かの議論があって、これはもちろんこの法律は非戦闘地域しか出せないわけですが、私が六月にイラクに行ったときに、北部のモスルというのは非戦闘地域だったというふうに私は実感をしたわけですよ。病院もちゃんと生きていた。ところが、今はなかなか危ない、こういうふうになっている。
 当時から略奪と戦闘は違うとかいう議論もあったし、襲撃と戦闘は違うんだというようなことも最近よく言って、法的にはこうだという説明はできるんですが、実感の問題として、私は、襲撃なのか戦闘なのかなんてそもそも論議が行われて弾が飛び交うところにはこれは出すべきではない、基本的には避けるという慎重さが大事だという認識を持って帰ってきたわけです。私は、正当防衛といっても、撃ち合いになるのを極力避けなければいけないということを胸の中に、防衛庁長官、たたき込んでやってもらわなくちゃ困るとここでくぎを刺しておきますが、いかがでしょうか。
石破国務大臣 先生のおっしゃるとおりだと思います。撃ち合いになるというようなことは、正当防衛の武器の使用の仕方としてこれは想定をされておりません。
 いずれにいたしましても、非戦闘地域でやるというのは当たり前のことなんです。それに加えて、自衛隊の権限、能力、装備をもってして、これはとてもではないが、危険が抑止もできないし回避もできないというような場合には、行動というのは抑制的であるべきだ、それは先生の御指摘、そのとおりだと思っておりますし、私自身、そのつもりで事に臨みたいと思っておる次第でございます。
太田委員 最後に、私が冒頭に申し上げましたように、特に陸上自衛隊の派遣ということについては慎重の上にも慎重を期して、そしてまた、行くならば安全というものがしっかり確保できるということが大事だということで、重ねてでありますが、総理に御答弁いただいて、私の質問を終わりたいと思います。
小泉内閣総理大臣 慎重に、安全面にも十分配慮して、派遣すべきときに派遣したいと思っております。
斉藤委員長 時間が参りました。
太田委員 終わります。


2003/12/15

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