2003年12月15日

戻るホームイラク目次


158 衆議院イラク支援特別委員会−(5)

質問者=岡田克也(民主)


平成十五年十二月十五日(月曜日)

斉藤委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。
 まず、質問に先立ちまして、総理に一言お聞きをしたいと思います。
 さきの総選挙が終わった直後だったと記憶をします。総理は、自衛隊をイラクに派遣することがこれで国民に支持をされた、つまり、選挙の結果、与党が勝ったことが、国民がイラクに自衛隊を出すことを支持したことにつながる、そういうふうにおっしゃったと思いますが、今もそういうお気持ちですか。

小泉内閣総理大臣 私もそう思っています。
 イラク支援法を、日本として必要だということで、当時、自由民主党、公明党、保守新党、三党で協力しながら成立させました。そして選挙中にも、この三党の連立体制をつくって、日本としては自衛隊も含めた人的貢献もイラク復興のためにするということをはっきり述べておりました。そういう点から、国民が自民党、公明党、保守新党合わせて安定多数の議席を獲得させてくれたということは、この考え方について基本的に支持をされたと思っております。

岡田委員 私は、今の総理のお言葉には異論があります。
 今の世論調査を見ても、国民のまだ過半数はイラクへの自衛隊派遣に反対をしておりますし、総理は総選挙の最中に、何度か私は総理の街頭演説、後でビデオで見せていただきましたが、その話題の中でイラクの話はほとんど出ておりません。つまり、総理は、イラクへの自衛隊の派遣の問題を選挙の争点にすることを避けながら戦われた。だから、私は、今総理が言ったことは当たらないと思いますが、しかし、きょうはテレビも入っておりますので、テレビを見ておられる有権者の皆さんにも一言申し上げたいと思います。
 よく政治は関係がないとか、どうでもいいという声を聞きます。現実に、さきの総選挙も、投票率は非常に低かったわけであります。しかし、やはり大きなことを決めるのは政治であります。今の総理のその物の言い方に私は異論はありますけれども、しかし、もし民主党政権ができれば、自衛隊がイラクに出ることは今の時点ではなかったわけです。そういう意味で、やはり私は、国民の皆さんに、もっと政治に対してしっかり関心を持っていただきたい、そして、皆さんのそれぞれの投票行動がこの国の行く末を決めるんだということをまず申し上げておきたいと思います。

 さて、質問に入ります。
 まず、総理は、私は先ほどの前原さんの意見と共通するわけですが、説明責任を十分に果たしておられないと思います。十二月九日の総理の記者会見、私はそれを見ておりまして、とても納得のできないところが幾つかありました。その点を中心に、まずお聞きをしていきたいと思います。
 まず、総理は、きょうもそうですけれども、自衛隊派遣はイラクの人道復興支援のためだ、このことを何度も強調されました。人道復興支援のために自衛隊が行くんだということであります。しかし、この法律は、自衛隊をイラクに出す目的は一つではありません。もちろん、人道復興支援は一つの目的であります。しかし、それに並んで安全確保支援活動というものも規定をされている。そもそも、法律の目的そのものが、名称がイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法であって、そこはまさしく並列されているわけであります。そのうちの一方だけを殊さらに言うということは、私は、国民に対する説明として誠意を欠いていると思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 中心的な役割は、復興支援、人道支援なんです。自衛隊は、戦闘行為にも参加しませんし、治安維持活動、これにも参加するということではありません。そういう面で、戦闘行為に行くわけじゃない、戦争に行くわけじゃない、復興支援、人道支援に行くんだということでございます。
 また、最初の質問でありますが、選挙の争点というのは一つだけじゃないんです。政党は、外交だけじゃない、内政、外交、全般にわたる問題、政党の日常活動、候補者のいろいろな日常活動、一つだけ争点になる、一つだけで判断するものじゃないんです。その点は私は御理解いただけるんだと思っております。

岡田委員 せっかくの総理の御答弁ですから申し上げますが、大体、総理は街頭演説、二十分ぐらいされているんですね。その二十分のうちの十五分ぐらいは郵政の民営化と道路公団の民営化なんですよ。イラクの話なんかほとんど出てこない。そのことを申し上げておきたいと思います。
 総理に、さきの質問についてお聞きしますが、人道復興支援についての必要性は、総理は記者会見で述べられたかもしれません。それでは、述べられなかった部分、つまり安全確保支援活動の必要性について、今ここで国民に向かって述べてください。

小泉内閣総理大臣 人道復興支援活動をする地域においては、安全確保をしなきゃできないんです。ある地域に自衛隊が出かけますね。これは、やはり安全面に配慮しろということはさっきの前原さんも言われた。これは自衛隊だからこそできる安全確保支援活動があるんですよ。人道復興支援活動の際にも、無防備でいたら、これは危険な場合がある。だから、復興人道支援活動についても、自衛隊がやる場合は、その復興支援活動、人道支援活動が、安全が確保されなきゃならない。そういう点は、やはり自衛隊は、安全確保活動しなきゃ隊員の皆さんも安心して活動できない、その点はよく御理解いただきたいと思います。

岡田委員 総理は今、隊員の皆さんも安全に活動できないとおっしゃいました。私は、総理官邸で総理から基本計画ができたときの説明を受けて、総理は基本的なことを誤解しているんじゃないかといまだに疑っているんですよ。つまり、安全確保支援活動というのは自衛隊の安全確保を支援するための活動であるというふうに思っておられるんじゃないですか。違うんですよ。これは米英軍などの、例えば戦闘を行っている英米軍なども含めて、そういったところに対する支援活動、それが安全確保支援活動じゃないですか。総理、それに対して、なぜ必要なのかということを説明してくださいと申し上げているわけです。

小泉内閣総理大臣 それは、非戦闘地域で、治安活動をやっているところで自衛隊が活動するわけじゃないんです。比較的、今言いますと、基本計画では、イラク南東部ということを想定しております。そういう際に、復興活動、人道支援活動については安全を確保しなきゃならない。同時に、その周辺で、米英軍以外に今ではオランダ軍も参加している地域もあると思います、南東部で。そういう点については、安全確保の支援活動という点は、私は考えてもいいのではないかと思っております。

岡田委員 私は、必要性を聞いているわけです。
 例えば、空港から空港に航空自衛隊が輸送をする、これは別にイラクの南西部に限る話じゃありません。ただ、バグダッド空港に自衛隊機が、C130が輸送をする、それは自衛隊の荷物ではなくて、例えば米軍の荷物である、これも活動の中身に含まれていると思うんですね。そういったことをする必要性について、きちんと総理は説明しておられないんですよ。人道復興支援活動については説明されました。しかし、そういった他国の軍隊を支援する活動がなぜ必要なのか、なぜ今日本がしなければいけないかということについて、明確に説明しておられないから、今この場で説明してくださいというふうに申し上げているわけです。

小泉内閣総理大臣 それは、英米軍に物資的な支援活動もできます。掃討作戦とか治安活動には参加できませんけれども、各国が、復興支援、人道支援、米英軍は、戦闘活動のみならずイラクの復興活動にも人道支援活動にも当たっていると思うのであります。そういう点について物資の輸送とか人員の協力とか、そういう点については、やれることがあればやるべしと私は思っております。

岡田委員 例えば米兵に、はっきり役割分担がされていて、この人は治安活動をする、この人は人道支援する、そんなこと決まっていないわけですから、バグダッド空港までは米兵を運ぶ、その米兵が治安活動あるいは戦闘行為することもあるし、人道支援することもあるわけですよ。
 総理は、あくまでも人道支援で全部説明しようとしていますが、そうじゃないんですよ、この法律は。そのことを私は申し上げているんです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 詳しいことは官房長官から話しますが、そういう支援活動はできるというふうに規定されておりますが、それでは、水を持っていった、食糧を持っていった、その水を飲む、食糧を食べる、それを米軍が、いざ、食べてから戦闘活動行ったというんだからこれは戦闘活動と言われちゃ、これは困っちゃう。それは、そこまでは、日本は物資を持っていくことはできるんですよ、それを食べるな、使うなとは言えないでしょう。しかし、日本の自衛隊が戦闘活動に参加するということじゃない。そこまで厳密に、日本の持っていったのは全部戦闘活動に使っちゃいかぬ、そこはちょっと、そこまで言うのはどうですかね。

 物的支援もします、人道支援もします、復興活動もします。あるいは病院、協力します、兵士がけがを負ってやってきた、治ったらまた行く、戦場に行くというんじゃ治療しないと言ったんじゃ、それこそできないでしょう。そういう点は、やはりもっと常識的に考えていただければいいんじゃないか。

岡田委員 問題がいつの間にかすりかえられているわけですが、つまり、総理は人道復興支援しかしないと言っておられますが、そうじゃないということ、それを国民に対してきちんと説明すべきだということを私は申し上げているわけです。
 では、具体的な話をちょっとしますが、総理は、武器弾薬の輸送はしない、こう言われました。その翌日、官房長官が、いや、武装したというか、武器を携帯した兵員の輸送はやるんだというふうに言われました。総理は、その官房長官の発言に対してはイエスなんですかノーなんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、武器弾薬は運ばない。しかし、これは自衛隊の諸君だって武器を持っているんですよ、自分の安全を。それを、自衛隊の運ぶのにも、あなた、自衛隊の小銃をおろしなさい、そこはできないでしょう。米軍においても、協力してくれたオランダ軍に対して、復興支援活動、日本と協力してやった、たまたま腰のところかどこかにやはり弾薬を持っていた、小銃を持っていた、それを外せと言うことはできますか。
 そういうことは、私は武器弾薬には入らないんじゃないかと。日本としては武器弾薬を運ばないとはっきりしているんです。人が持っている、自衛隊諸君だって武器を持つんですから、みずからの身を守るために。それも外していけ。そこまで武器弾薬に当たるとは言えないんじゃないでしょうか。

岡田委員 全く議論がすりかえられているんですが、自衛隊の武器は、自衛隊は運ぶんですよ。今度持っていく武器については自衛隊は当然運ぶんですよ。別に携帯しているものだけじゃありませんよ。しかし、米軍のものについてどうか。そして、総理は明確に、いや、武器弾薬は運ばないとおっしゃった。そう言いながら、もう翌日には違うことを言っているから私は申し上げたんです。
 では、武器を携帯した米兵は運ぶ、そういうことでよろしいわけですね。

福田国務大臣 では、私からお答えしますけれども、武器弾薬を運ばないというのは、これは総理が人道支援、復興支援、こういうふうなことでそれを重点に置きたい、こういうようなことで明確に、武器弾薬は運ばない、こういうふうに言われたわけでございまして、そういうことでそれは運ばない。これは、運用上そういうことにできるということに、今防衛庁長官ともお話ししましたけれども、できるということでございますので、そうしたいと思います。
 そして、兵員を運ぶときに銃を持っていたらその武器を運ぶんじゃないか、こういう話ですけれども、これは武器を運ぶんじゃなくて兵員を運ぶんですよ。武器弾薬のために輸送するんじゃないんです。そこのところはやはり考えなければいけない。
 そして、その兵員が、では戦闘行動ばかりしているのか、そういうことではないでしょう。先ほど来お話ししているとおり、イラクにおいては主要な戦争は終わった、しかしテロ行為が方々である、それを守らなければいけない、場合によっては抑止的な効果もあるかもしれぬ、そういうものは持っていなければいけない。
 ですから、そういう兵員がすべて戦闘行為をするんだというわけではない。しかし、それを区分けはすることはできない。しかし、仮に銃を持っているとかいうようなことがあっても、では、警察官を運ぶときにピストルを持っている、それはいかぬということを言っているわけじゃないんでしょう。
 ですから、兵員がピストルでなくて、短銃でなくて、少し長目の銃を持っている、そういうのは通常あることですから、そういうものは、仮にそういう兵員を運んだとしても、それは総理が言われる武器弾薬を運ばないという趣旨に反するものではない、こういうことでございます。

岡田委員 武器弾薬は運ばないという総理のお言葉ですが、それじゃ、例えば米軍の運ぶべき荷物についてチェックするんですか。そんなこと、できっこないでしょう。武器が中に入っているか、その中に小さな武器が入っている、そういう話を私はしているんじゃありませんよ。しかし、弾薬とか、それが弾薬なのか食糧なのか、そんなことは現実にはチェックできないし、それはある意味では大変な秘密ですから、そんなことはできないんじゃないですか。

石破国務大臣 これは、委員もコアリションというものの性質をよく御案内のことかと思いますが、それぞれの国が何ができるか。すなわち、例えばアメリカから、じゃ、Aという国はこれをやれ、Bという国はこれをやれ、Cという国はこれをやれ、そういうお話ではございません。何ができるか。日本としては武器弾薬は運ばないということを申し上げ、しかしながら、常識の範囲として、自分を守るための武器弾薬を携行する、そういうような兵員の輸送は行う。例えばそういうふうに申し上げて、日本はそれしかできないんだね、逆に言えばそういうことができるんだね、それを持ち寄って、そしてコアリションの中で何をやるか、何を運ぶかということが決まってくるわけでございます。
 それはお互いの信頼関係であり、武器弾薬を運びますよという国、どことは申しませんが、それがあるとすれば、その国がそれを運ぶことになるのでしょう。そのときに、一つ一つあけてみて調べろというようなことを言っていたら、これはコアリションなんぞというものは成り立たない、信頼関係というものも成り立たない。
 私は、お互いの信頼関係に基づいて、それぞれの国が何ができるかということをきちんと持ち寄り、それによって効果的なコアリションを形成するのが今回の活動のあり方だと思っています。

岡田委員 私は、今の大臣の発言に対して異論があるわけじゃないんですよ。現実、そうだと思います。
 しかし、裏を返せば、それは、例えば米軍なら米軍に、それを信頼してやる、自分では調べないということですから、信頼してやるということですね。それは、総理が武器弾薬は運びませんといって国民に向かってはっきり明言されたことと余りにも私は距離があると思うんですよ。総理が武器弾薬は運びませんと言ったのは、本当に運ばないということでしょう。それをチェックする、そのことができないんだ、だからそこはアメリカに任せるんだ、私はそれはそういうふうになると思います。
 それであれば、日本としては武器弾薬はなるべく運ばないようにするけれども最終的にはわからないんだというのが、それが本来の言い方じゃないですか。総理の言い方を聞いていると、絶対やらないように聞こえる。そこに私は総理の言い方のトリックがあると思うんです。

石破国務大臣 先生、先生のおっしゃることもわかるのです。しかし、本当に我が国として絶対にこれはやりませんと言って――そちらの方が私はおかしいような気がするんですね。
 我が国として、人道支援物資を中心にしてやります、そして武器弾薬は運びませんというふうにきちんと申し上げる。日本はそうなのか、武器弾薬は運ばないのか、人道支援物資あるいは武器を携行した兵員、そういうものを運ぶんだね、それではそのニーズを日本に与えようね、そのニーズに日本はこたえてねという調整が行われる。それがコアリションというものでしょう。
 絶対に私どもはやりませんということをきちんと申し上げたとしたって、それは何の差し支えのあるものでもございません。それに合った仕事というものが回ってくる。逆に、何でもやりますよという国があった場合には、そこに武器弾薬を運んでもらうということも起こり得るでしょう。コアリションというのはそういうものであって、湾岸戦争時と今回との違い、それはまさしくそこにあると私は思っています。
 お互いの信頼関係でそれは担保されているのであり、日本国としてそれは行わないということをきちんと申し上げることに何の問題もあるとも私は思っておりません。

岡田委員 大臣は問題をすりかえておられるんですが、つまり、アメリカに対して、やりませんときちっと伝えると。いいんですよ、それは。だけれども、そのことの最後の担保はとれていないんですよ。そうであれば、総理は国民に対してそんなことを言っちゃいけないんですよ。そのことを私は申し上げているんです。
 では次に行きますが、法律をつくって以来、総理は、実際に自衛隊をイラクに出すかどうか、それは状況をよく見きわめてというふうにずっと言ってこられました。今回、基本計画ができて、これからいよいよ出ていくということです。状況がどう変わったんですか。状況をどういうふうに見きわめた結果、今回出すということにしたんでしょうか。むしろ、法律ができてから今日までの間にイラクにおける治安状況はどんどん悪化しているというのが現実です。なぜ、法律ができた直後には状況を見きわめてと言って出さずに、今回お出しになるんですか。そこの説明責任が不足しているんですよ。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、我が国の外交官が殺害されたり、あるいは他の国の民間人が殺害されたり、あるいは復興支援活動をしているイラク人が殺されたり、いろいろ安全でない面もあるのは事実であります。
 そういう際に、私は、人的支援をするということを表明しておりましたし、今自衛隊以外の方に、では民間人に行ってくれといった場合に、それはなかなか難しい面もあるのではないか。自衛隊員ならば、非戦闘地域、よく見きわめながら、安全面にも十分配慮しながら復興支援活動ができる分野があるという判断をしたから、自衛隊を派遣するというふうに決定したわけであります。

岡田委員 状況はどういうふうに変化したのかと私は聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 状況もいろいろ、各国の軍隊もそれぞれの活動はしております。そういう中で、安全に活動している部隊もあるわけであります。それぞれ、情報交換し、やる分野も違います、また装備も違います。私は、すべてが全く安全と言えない状況でも、危険を回避するすべがある、また自衛隊が活動できる範囲がある、分野があると思うから派遣するわけでありまして、状況がどう変わったのかということをいえば、今必死に各国が努力している。イラク人が今一番支援を求めている。
 確かに、一部には外国の部隊が来ることを望まない人たちもいますが、多数は、何とか安定した民主的政権をつくるためにイラク人が今努力している。希望を持って、イラク人、自分たちの政府をつくりたい。そして、米英初め各国、今国連に来てくれと言っても来てくれない、そういう中にあって、私は、来年できるだけ早く、六月には新しいイラクの政府をつくるために努力している各国と協力して、今自衛隊でもできる分野があるんじゃないか、状況を見て、苦しいけれども、やはり日本として国際社会に責任を果たすべきときだと判断したからこそ、私は自衛隊の派遣を決断したわけであります。

岡田委員 今の総理の御答弁も飛躍があるわけですね。つまり、イラクの国民が自分たちの国を平和で安定した国にしたいと言っていることは、これは事実です。私は大部分の国民はそうだと思います。しかし、そのことと軍隊に来てください、あるいは自衛隊に来てください、これはまた違う話ですから。そこを短絡して総理はおっしゃるわけですが、私に言わせると、十月以降、現実に軍隊を出したのはシンガポールだけです。そしてシンガポールも陸軍は出していないです。そういう中で日本が出すという、それはやはり最初から決まっていたということなんですね。そしてそれを、時期を見ていたというのは国内政治状況を見ていたということでしょう。
 そういうふうに私は上品に言ったんですが、せっかくこの委員会で、今場外で出ていましたから、選挙を見ていたんですよ。つまり、国民に対して説明責任を果たさずに先延ばしをして、選挙が終わったらもう出すということは決めておられたということです。そういうやり方が、私は、国民に対して説明責任をきちんと果たしていないということを申し上げているわけです。

 では、もう一つ聞きましょう。
 先ほど、公明党の太田委員が質問された件に関してもう少し聞きたいと思うんですが、実は、公明党の冬柴幹事長が十二月十一日の公明新聞でこう言われているんですね、陸上自衛隊は、「治安状況が好転するのを見極めて、公明党の意見も十分聞いて判断することになった」と。なったという意味は、それは小泉総理と神崎代表の覚書でなったというのです。総理の認識も同じですか。つまり、状況が今よりも好転して初めて陸自は出せるんだ、こういうふうにもう一方の与党が言っているわけですが、それはそういうことなんでしょうか。そして、では、好転するというのはどういうことをいうんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、七月のイラク支援法が成立する、これは自衛隊を派遣できる法律だ、そして自衛隊を派遣する場合には、状況をよく見きわめて判断するということを言っていたんですよ。選挙中もそうです。選挙が終わってからもそうです。選挙が終わって、調査団も帰ってきました。調査団の報告を聞くと、自衛隊が活動できる分野は十分あるということで、今回自衛隊の派遣を決定したわけであります。

 そして、今の質問でありますが、どういうときに派遣するのかということは、今後与党との調整も必要でしょう、自衛隊の安全面に十分配慮するということも必要でしょう。これはもう政府だけじゃない、自民党、公明党、与党を形成しておりますので、国民の納得を得るためにも、よく協議しながら、そういう点については十分配慮して決定しなきゃならないということを申しているわけであります。

岡田委員 今の総理の答弁は、冬柴幹事長が言われた、状況が好転しない限り出さない、そういう約束はしていない、そういうふうに私は理解をしました。
 それでは、次に参ります。
 総理が記者会見の中で、日米同盟と国際協調の両立ということを強調されました。そこでちょっとお聞きをしたいと思うんですが、まず、この日米同盟と国際協調の両立というのは、具体的にそれは一体何を言おうとしたのか、私にはよくわかりませんでした。まず、御説明いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日米同盟と国際協調は、相反するものじゃありません。日本の戦後一貫してとってきた方針は、日米同盟、国際協調、これだと思っております。これは現在も、今まで、過去も、将来も変わらないと思っております。
 日本の平和と安全を確保するために、日本一国ではできません、だからこそ、米国と安保条約を締結して、お互いの信頼関係を強めていく、そういう日米同盟を重視していく。
 これから、イラクだけじゃありません、テロ対策においても、あるいは北朝鮮に対する対応においても、さらには海賊等の対策においても、日米協力してやらなきゃならない面がたくさんあります。お互い信頼関係を強めていく。日本にとってアメリカは唯一の同盟国であります。アメリカにとっても、日本というのは信頼に足る同盟国でなくてはいけません。そういうことを考えて、お互いの信頼関係を深めていくような協力体制を形づくっていく。
 それは、安全保障だけの分野にとどまりません。経済の面におきましても、日米協力、これは必要でありますし、なお、国際協調というのは、日本にとっては、世界各国と経済関係、相互依存関係、相互互恵関係を持っておりますので、これからますます、日本と国際社会と歩調を合わせながら、国際社会の中で日本が責任ある一員としての役割を果たしていかなきゃならない。これは、国際協調、もう欠かすべからざることであります。
 そういう点に関して、具体的に、北朝鮮の問題についても、アフガンのテロ対策にしても、そして今度、イラクの復興支援についても、このイラクの復興支援、イラクが破綻国家になったらどうなるか、テロリストの温床になったらどういうことになるのかということを考えると、今苦しいからこそ、私は協力していく必要があると。日本は、イラクの復興人道支援に対しても、まさに国際協調と日米同盟、一番行動で示さにゃならないときだと思っております。このイラクの現在の状況を、テロに屈して日本は人的支援も引き下がるというような状況で果たしていいかというと、私はそう思っておりません。まさにイラクの復興支援というのは、日米同盟と国際協調を両立させる、行動で示すいい時期だと思っております。
 そういう観点から、私は、今までも現在も将来も、日本が平和と安全のうちに繁栄を確保するためには、日米同盟と国際協調の重要性をよく認識して具体的対応をしていかなきゃならないと思っております。

岡田委員 今の総理の御答弁の中で、まず、イラクが破綻国家になったらどうなるのか、そこの問題意識は全く共通であります。しかし、違うのは、だれがそうしたのかということですね。それは、やはりアメリカの単独のイラク攻撃であり、そして同時に、イラク攻撃が終わった後のその具体的な運営のやり方ですよ。そこが完全に失敗しているんですよ。
 そのことは一言申し上げた上で、私がさっき質問したのは、このイラクに自衛隊を出すということに関して国際協調と日米同盟と言われたので、これは具体的に何なんですかということを質問したわけです。
 例えば、私に言わせれば、今、国際協調とおっしゃるけれども、国際世論は、イラクを何とかしていこうという、そこは一致していますけれども、やり方については完全に分かれていますよ。つまり、米英を中心にして軍を出して、そしてその中でイラクを立て直していこうという見方と、フランスやドイツに代表されるように、もう少し国際的な枠組みをしっかりつくって、米英中心ではない中で国を立て直していこうという見方に明らかに国際世論は分かれているわけで、その中で総理が国際協調とおっしゃるから、私には理解できないと申し上げたわけです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は全く理解できませんね。
 国際協調と日米同盟を両立させる、これは、フランスとドイツ、これはNATOという相互安全保障体制を持っていますよ。フランスは核兵器を持っていますよ。ドイツ、フランスは、アフガンのテロ対策においては部隊を派遣していますよ。
 日本は、テロ支援活動にも民主党は反対したんでしょう。後方支援でさえも反対したんでしょう。資金的な援助も、額が多過ぎるといって反対しているわけでしょう。今回、自衛隊はだめだけれども民間人を出せと。民間人はもっと危ないじゃないですか。何でも反対で、日米同盟の信頼関係はどうやって築いていくんですか。これからの日本の平和と安全をどういうふうに確保しようと思うんですか。
 イラクをアメリカが――フセインがあんな独裁政権じゃなかったら、イラク国民はもっと安定した政権をつくりましたよ。国際査察と協力すれば戦争が起こっていませんでしたよ。アメリカが悪い、アメリカが悪いと言うけれども、最も残酷な行動をしたのはフセイン独裁政権自身じゃないですか。こういうところを無視しないで。アメリカが悪い、アメリカが悪い、フランスとドイツと一緒になぜ行動しないのか。日本は一国で核兵器を持つ気はない、フランスみたいに。ほかの国と安全保障の、NATOみたいな相互安全保障条約も持っていない。同盟関係を持っているのはアメリカとだけなんです。だから、日米同盟と国際協調、イラクの復興支援、今手をこまねいてどうするんですか。危険なことはほかの国やってください、そんなことで。日本が、国際協調体制、国連がすべての加盟国に、イラクの復興支援に努力してくれと要請を受けている、そういう際に、資金的な支援も、物的支援も、人的支援も、自衛隊も含めてやるというのは国際社会の中で私は必要だと思っております。

岡田委員 国連決議は確かに全会一致です。しかし、それはやはり、フランスやドイツは、これ以上アメリカと対立したらまさしく国際社会は分裂するという危機感の中で、それは十分賛成はできない、自分たちは軍隊を出すことまでは賛成できないけれども、しかしここは協力をして、一致して国連決議を出さなければいけない、そのことで彼らは賛成をした。そのことを総理はわかっておられないと思うんです。今、総理の御答弁を聞いていて、日米同盟と国際協調の両立と言いながら、やはり中心は日米同盟だというふうに私は理解しました。
 そこで、ちょっと視点を変えてお聞きしたい。
 総理がおっしゃる日米同盟、今回はイラクに対する自衛隊を出すということですね。日米同盟という言葉のもとでイラクに自衛隊を出すということは、いつから日米同盟の範囲がグローバルな、全世界的なものに拡大したんですか。何を根拠に総理はそうおっしゃっているわけですか。そこをお聞きしたい。

小泉内閣総理大臣 私は、今回、イラクに自衛隊を派遣するのは、日本の国家利益にかなっていると思うから派遣しているんです。その国家利益というのは、日米同盟、国際協調、両立させるというものも含んでおります。イラクをテロリストの温床にしないということも含んでおります。中東に安定した、イラクが安定した民主的政権をつくるということも含んでおります。そういうことであって、すべてを包含した判断で、日本は国際社会の一員としてやるべきことをやろうという判断をしたから、自衛隊派遣を決定したわけであります。

岡田委員 総理は全く質問に答えていただいていないんですが、一九九六年に日米安全保障共同宣言がありました。あのときに、アジア太平洋地域全体に日米同盟をいわば広げるという議論があって、最終的には、法律の形では周辺事態法、つまり、日本の周辺であって、周辺地域であって、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合に自衛隊が活動するということで一つの折り合いをつけました。しかし、今の、今回のイラクに自衛隊を出すということはかなりそこから飛び越えているわけですよ。新たな日米共同宣言もなくて、そしてそういう形で飛び越えて、アメリカが言うんであれば自衛隊を、もちろん憲法の枠の中だという前提はつくにしても、どんどん自衛隊を出していくという、そういう日米同盟が今までと違ってきているということについて、総理は全く説明責任を果たしていないじゃないですか。そこをしっかり述べていただきたい。

小泉内閣総理大臣 これは、イラクに行くのは、日本とアメリカが共同して日本を守る、アメリカを守るということじゃありません。戦争に行くんじゃないんですから、戦闘行為に行くんじゃないんですから。復興支援、人道支援活動に行くんです。これはアメリカだけじゃない、イギリスとも協力する、オランダとも協力する、韓国とも協力する、あるいはスペイン、イタリア、ポーランド軍とも、協力するところがあれば協力する。
 これは戦争じゃないんです。集団自衛権の問題でもないんです。イラクに民主的な安定した政権をつくるために日本は何ができるかということで協力するんです。それは日本の国家利益にかなうと思っている。同時に、日米同盟、お互い日米間の信頼関係を醸成させるのにもかなう。国連がすべての加盟国にそれぞれイラク復興支援協力してという要請にもこたえる。そういう国家全体の利益を考えて、日本は資金的後援もします、物的支援もします、人的支援もします、その中で自衛隊の派遣も、戦闘行為には参加しない、戦争、武力行使はしない、復興支援の形で協力をしたいということであります。

岡田委員 日米同盟という言葉を、この自衛隊のイラク派遣について日米同盟を強調されたのは総理自身なんですよ。今のお話は、国益の問題であって、いや、日米同盟じゃない。そうじゃないでしょう。総理御自身が日米同盟ということを前面に出してイラクに自衛隊派遣することをおっしゃるから、私は、いつの間に日米同盟というのがそれだけ広がったんですかということを申し上げているんです。

小泉内閣総理大臣 日米同盟は大事であります。今までも、日米同盟のためにもやる、国際協調のためにもやる、日本国全体の利益を考えてもやるということであります。日米同盟を重視しなくて政権をとろうと思っているんですか、民主党。日米同盟は、日本の平和と安全を確保するために最も大事な同盟である。(発言する者あり)本音でも、本当です、本当なんです。それを否定して民主党が本当に政権をとれるのか。これは非常におもしろい議論ですよ。

岡田委員 全く総理は議論をすりかえているわけですよ。すりかえているわけですよ。
 要するに日米同盟というのは、これは一種の、お互いが、自衛隊ですけれども、しかし、軍事同盟に類似の同盟ですよ。お互いの安全保障のための仕組みですよ。それを総理が安易に日米同盟、日米同盟と今回の自衛隊のイラク派遣に関しても言われるから、それはいつの間に広がったんですかということを申し上げているんです。そのことと今総理が言われたことは全く違うことでしょう。そういうふうに議論をすりかえないでいただきたい。
 それでは総理、質問を変えますが、ブッシュ大統領のその単独行動、先制主義、先ほど総理は、必ずしもそれが日本にとって、あるいは国際社会にとって歓迎すべきものではないというニュアンスでおっしゃったと思います。しかし、日米同盟、日米同盟、あるいは日米関係が重要だと言う中で、もし、どんどんどんどんこのブッシュ大統領の先制攻撃あるいは単独行動、そういったものに日本が後からついていくような形をとれば、これは国連憲章との間に必ず矛盾が出てくるんですよ。そこを総理はどう考えておられるのか。そのときには、国連憲章の枠内できちんと日米協力をやるという立場をとられるのか。それとも、日米同盟はより重要だから、ブッシュ大統領が単独行動、先制主義というのをとられるのであれば、状況によってはこちらを優先して、その結果、国連憲章から離れてしまってもやむを得ないというふうにお考えなのか、そこはいかがなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 そのことは、さっき前原議員の同じ質問ですよ。同じ質問だから同じ答えしかできない。
 我が国としては、米国は国連憲章を初めとする国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えている、また、我が国が国際法上違法な武力行使を支持しない、これはもうはっきり答弁しているんです。
 私は、日米同盟の重要性は恐らく岡田さんも理解しているんだと思います。そういう前提で、いろいろ批判しなきゃならないという立場からの質問だからわかりますが、私はこの今のイラクの状況を見て、フランスもドイツも、アメリカは手を引けなんて一言も言っていませんよ。それで、国際社会へ協力しろ、これは、イラクに復興支援協力することは、アメリカ、イギリスに協力と同時にイラクに協力することなんですよ。イラクの国民のためにする活動なんです。それは、国際社会が一致協力しやりたい。だからこそ、国連がすべての加盟国に、復興支援に努力してくれと訴えているわけです。それを、アメリカと協力すると国際協調にならないかのような質問の仕方はやめた方がいいんじゃないか。
 私は、国際協力も日米協力も両立すると言っているんです。これは国家利益にかなっている。フランスの例をよく出すけれども、フランスだって、アメリカは手を引けなんて全然言っていないんだから。国連だって、今アメリカに手を引かれたら、だれがやるのか。中東和平含めてですよ。これはできるだけ世界各国が協力しながらテロ対策に取り組まなきゃいかぬ。イラクの安定した政権をつくるためには、米英だけじゃない、各国が協力してやろうという要請を国連もしているわけですから。そういう中で、アメリカと一緒にやるとこれは日本の国家利益に反すると。とんでもない。日米協力、国際協力、日本全体の利益、中東をテロリストの温床にしてはいけない、中東が不安になって一番不安になるのは日本国であります。そういうことを考えて、私は、日米同盟と国際協調は両立させなきゃいかぬ。その具体的な方向なんです。
 日本の平和と安全をどうやって図るのか。日本国、核武装はしない。フランスみたいに核兵器を持てと言うんですか。そうじゃないでしょう。では、ドイツ、フランスみたいに集団安全保障体制、NATOみたいなものをつくれと言うんですか。そうじゃないでしょう。日本一国で平和と安全を確保できないからアメリカと同盟関係を結んで平和と安全を確保しよう、そういう日本の方針。なおかつ、国際社会から孤立してはいけない、国際社会と協力していこうということが、経済の発展を考える意味においても大事だ。まさに、日米同盟、国際協調、両立させなきゃならない、これが日本の国家利益にかなうと私は思っております。

岡田委員 総理は答弁を読み上げられたんですが、結局、今の深刻な状況についての認識が余りにもなさ過ぎるんですよ。
 今、国際社会は、ブッシュ大統領のこの単独行動、先制攻撃、こういったことが本当に行われるようになっていけばそれは国連憲章の理念に反する、そのことについてどこかでしっかりとした折り合いをつけなければ世界の平和は維持できない。そういった問題意識の中で、それぞれの国が、もちろんアメリカは超大国です、ですから、アメリカに対して正面からあなたの言っていることは間違いだとは言えないかもしれない、しかし、そこは何とかして少しずつ軌道修正するように努力をしている。
 総理がおっしゃるように、いや、日米同盟と国際協調は両立するんだ、そんな軽いものではないんですよ。そこは、総理の基本的認識が甘過ぎると私は思うんです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 では、どうしろと言うんですか、民主党は。日米同盟重視するな、国際協調重視するな、日本は人的支援をするな、どうなんですか。私は、視点がわかりませんね、民主党の言っていることは。

岡田委員 総理はブッシュ大統領と個人的な関係がしっかりできているというふうに誇っておられるわけですから、それはブッシュ大統領としっかり話をしなきゃだめなんですよ。そして、ブッシュ大統領のその考え方について、個別の話を言っているんじゃないですよ、一般論として、しっかりそれを軌道修正していくだけのその信頼関係がなければ日米同盟じゃないということを私は申し上げているわけですよ。総理は、その問題をどんどんどんどんすりかえて、そして、物事の深刻さというものをわざと覆い隠しているんじゃないですか。
 本当に日米同盟だとおっしゃるんであれば、国際社会がこれだけ今問題にしている単独行動、先制主義というものに対してしっかりと述べていただきたい。官僚の答弁を読み上げてそれで終わりだ、それ以上言えないから総理は読み上げたんでしょう。それでは、本当に、この日本の総理大臣として資質を疑わざるを得ない、私はそう思います。
 先ほど総理が言われたことについて、もう一つ言いましょう。
 イラクについて、我々は、どうでもいいなんということはもちろん言っていませんよ。イラクの国民のために、イラクという国を立て直していくことは物すごく大事なことですよ。その前提に立った上で、方法論が違うんですよ。つまり、今のCPA中心に、米英軍中心に、占領軍が今イラクについて一手にイラクを任されてやっている、それではうまくいかないと言っているんですよ。
 先般、外務省の二名、奥さんと井ノ上さんが亡くなりました。葬儀で総理は途中で声を詰まらせて、そして、ごあいさつをされていました。私も後ろで同じ思いで聞いておりました。一人の人が亡くなるということ、その奥さん、小さな子供さん、年老いた御両親、そして関係のある人、本当に多くの人が苦しみを味わわなきゃいけないんですよ。
 我々日本人があのお二人に対して思った思い。では、イラクの人たちはどうなのか。突然戦争が始まって、そして罪のない女性や子供たちが一万人死んで、そして、その人たちの周りの人たちが、一体、戦争相手であるアメリカに対してどういう気持ちを抱いているのか。そういう国がイラクをこれからも牛耳って支配して、そして、幾らイラクを立て直すといったって、それは素直にはそういう気持ちになれないのは当たり前じゃありませんか。だからこそ、国際社会を巻き込んで、国連を中心にしてイラクを立て直していかなきゃだめなんですよ。そのための努力を日本がすべきだ、これが我々の主張ですよ。
 総理、総理はそういった国際的な努力ということに対してどうお考えですか。

小泉内閣総理大臣 だからこそ、今国際協調をつくるように日本は努力しているんじゃないですか。
 では、どうしろと言うんですか。今、アメリカも国際協調体制をつくるように努力している。日本も努力している。国連中心にしろと言ったって、国連は今手を引いている。国連も攻撃されている。国連に実力部隊がない。日本は今、アメリカと国際社会とできるだけ協調体制をつくるように努力しているんです。
 それでは、今、日本も行くな、アメリカも手を引けということは言っていないと言われている。そうしたら何をするんですか。何をするんですか、これは。民主党が日米同盟と国際協調を重要視しないという理念ならわかる。民主党も日米同盟と国際協調を重要視するという考えを持っておられるんでしょう。そうしたら、今、現実に何をしろと言うんですか。自衛隊を派遣しないということは、それはかなうんですか。

岡田委員 総理は自衛隊を派遣することを誇らしげに言われるけれども、しかし、六百人の陸上自衛隊、そして八機の航空機、四隻の船、それを出したからといって、どれだけのイラクの人たちが、実際にイラク国民の生活の安定、平和のためにどれだけの役に立つのか。むしろ、私たちは、そのこと、象徴的なそういう行為をすることで日本に対する一般のイラク人の印象が変わってしまう。
 現実に、NGOの皆さん、言っているじゃないですか。自衛隊が出てくるということになったら自分たちの危険度は高まる。私は、あるNGOのリーダーの人に先週話をしましたよ。最近までイラクにいた人です。彼が言っていたのは、いや、日本政府が本当にイラクのためになることをやってくれるのであれば、自分たちの危険が高まり、命が危なくなっても、それは満足できる、しかし、こんなことで自分たちの活動が阻害されるのは、それはたまらないというふうに言っているんですよ。
 大使館の皆さんだって活動がしにくくなりますよ。本当にわずかの象徴的な自衛隊の派遣で、そういった形でNGOも活動できなくなる、大使館の活動も制約される。それよりは、今、自衛隊をイラクに出すのではなくて、国際的な協力体制をしっかりつくっていく。国連をイラクの支援のために正面に戻す。
 例えば、来年の五月には暫定議会がつくられ、そして六月には行政移行機構ができる、そしてCPAは解散する。これがアメリカの、そしてイラクの統治評議会が合意をした内容です。だけれども、国連事務総長は、国連の果たすべき役割がその中ではっきりしていない、こう言っているんですよ。言い方は遠慮していますが、要するに排除されているということなんですよ。
 もっとしっかり国連をかませる形でイラクの国の立て直しをしていく、そのことこそが今必要なことであって、そして、それに日本がどれだけ協力していくかということが、日本が求められていることではないでしょうか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、自衛隊六百人足らずであったら形だけだと。じゃ、たくさん出せと言うんですか。そうじゃないでしょう。日本だってできることはあるんです、できないことはあるんです。戦闘行為には参加しない、治安活動には参加できない、武力行使はしない、しかし、復興支援、人道支援については、民間人ができないことでも自衛隊だったらやってくれる分野があるだろう。今、NGOの民間だって、危なくて行けませんよ。
 そういう点、日本は、まず日本もできることをやります、そして国際社会、協力してくださいという働きかけを今しているわけであります。(発言する者あり)してない、してないと言うのは、野党だからね、何でも、説明しろといえば、説明していない。それは、意見が違ったから説明にならないといえばそれまでですよ。
 私は、日米同盟、国際協調、重要だから、これは両立させなきゃいかぬ。国家利益大事だから、国際社会の責任ある一員として、やるべきことはやらなきゃいかぬ。民間人ができないんだったらば自衛隊もできることはあるだろう。ふだんから訓練している、あえて困難な任務だけれども、危険を回避するすべも持っている、安全を確保する装備も持っている。民間人にできないからこそ自衛隊が、戦争じゃない、復興支援、人道支援に行ってやる。だから、こういう自衛隊諸君に対しては、反対だとか批判ばかりしないで、たまには激励してあげてくださいと言っているんですよ。
 まさに、日本の平和と安全、自分の国のことだけ考えちゃいかぬ、そういう憲法の理念にも合致する。これが全体で考えれば日本の国家利益だと思うから、日本は、戦争には参加しない、武力行使はしない、戦闘行為には参加しないけれども、人道復興支援についてはできるだけのことをします、資金の支援も物的支援も人的支援もします、そういう中の自衛隊派遣はその一つであります。

岡田委員 私は、自衛隊の皆さんも、出る以上、きちっとした必要性、大義名分、そのもとで出たいと思うんです。出ていったけれども、地元で歓迎をされない、あるいは、どこかの国の兵隊のように、殺された後、多くの民衆に踏みつけられる、死体が踏みつけられる。そういった今のイラクの現状を見て、果たして本当に自衛隊の皆さんが出ることが、それが価値があることなのかどうか、そのことを私は問うているわけであります。そして、もっと国として、日本としてやるべきことがあるんじゃないか、そのことを申し上げているわけであります。
 これはどれだけやっても恐らくもう平行線でしょう。しかし、私は日本の外交力をもっと今しっかり使うべきその場所があるというふうに申し上げておきたいと思います。
 最後に、先ほど前原さんとのやりとりの中で少し気になった点があるので申し上げたいと思います。
 この非戦闘地域、具体的地名はまだだとおっしゃいましたが、バグダッド空港は、これは非戦闘地域なんですか。

石破国務大臣 一言申し上げさせていただきます。
 自衛隊が行くことは役に立たないというふうにおっしゃいました。私はそうは思っていません。先ほど来お答えしておりますように、自衛隊が水をきれいにする、それで、水を飲んだらば体を悪くする赤ちゃんや病人やお年寄りが助かる、それが何で意味がないことなんですか。学校を直すことがどうして意味がないことなんですか。
 そして大事なことは、総理がおっしゃっておられますように、自衛隊でなければできない状況なのだから自衛隊が行くのだということです。それは、大事なことは、向こうに行ってどうするか、それは自衛隊は一生懸命考えます。外務省とも連携して考えます。地元の部族長とも連携して考えます。要は、出かけていくときに、そのようにおとしめたような言い方は決してよくないということを申し上げておるのであります。
 バグダッド空港は入るのかというお話でございますが、バグダッド空港が特定したエリアとして、地域として非戦闘地域となるかならないかということは、その地域に対して、国または国に準ずる組織の組織的、計画的な武力の行使が行われているか否かということによって判断をすることになります。それが、そのような主体ではない、もしくはそのような攻撃自体が抑止されておるということであれば、バグダッド空港であれどこであれ、そういう空港が非戦闘地域というふうに評価をされることはあり得ることでございます。

岡田委員 バグダッド空港は、先ほど前原さんも二つの例を言われましたが、七月以降、四回ミサイルで飛行機が攻撃されているんですね。七月十六日、C130、これは米軍機です。九月七日、米軍の輸送機。十一月二十二日、民間航空機。そして十二月九日、C17輸送機。四回ミサイルで攻撃されていて、これで私は非戦闘地域だという発想は信じられません。
 しかし、この基本計画の中では、バグダッド空港というのは明示されていますね。あなたは、具体的名前が言えない、言えないと言うけれども、基本計画にもちゃんと書いてあるじゃないですか。だから、あなたの言っていることは、やはり逃げなんですよ。まともに答えようとしないから、こういった具体的なこととの矛盾が出てくるんですよ。

石破国務大臣 それは、基本計画と実施要項の差異というものを委員がどう御認識になるかという問題です。そこに書いてあるからといって、実施要項に必ず書かれるというものではないでありましょう。そして、実施要項は、基本計画が範囲であるのに比べまして、それを特定するという意味を持つものです。
 その場合に、なぜそれぞれの地名を明らかにできないことがあるかといえば、これは先ほどどなたかの御質問にお答えをしたとおりのことでありまして、それは、なぜそういうふうに判断するに至ったか、その情報をなぜ入れるようになったか、そして、なぜそれが非戦闘地域と判断するに至ったか、そのようなことを申し上げることが、隊員の安全、今後の情報の確保、それに障害を与える場合があるから申し上げられない。決して逃げで申し上げておるわけではありません。そして、基本計画、実施要項、その差異をよく御認識いただきたいと思っています。

岡田委員 最後に一言。
 大きな地域を基本計画で指定し、そのうちの一部を実施要項で特定するというのはわかります。でも、バグダッド空港というのはこれ一つですから、基本計画に書いてあるということは、これはやるということでしょう。ですから、そこでいろいろ今御託を述べられましたけれども、結局それは逃げなんですよ、あなたの。そのことだけ申し上げておきたいと思います。
 終わります。


2003/12/15

戻るホームイラク目次