2003年12月16日 |
158 参議院外交防衛委員会−(3)
質問者=山口那津男(公明)、小泉親司(共産)、大田昌秀(社民)
平成十五年十二月十六日(火曜日) 午後一時開会
○委員長(山本一太君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、外交、防衛等に関する調査のうち、イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画等に関する件を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。
まず初めに、イラクで尊い命をなくされましたお二人の外交官に対しまして、深く哀悼の意を表したいと思います。
特に奥大使におきましては、私は、かつて湾岸戦争の直後に、これからの日本が人的な貢献をいかになすべきか、その在り方を現場の実情を知った上で議論しようと、そういう思いでイラク以外の周辺国に行ったことがありました。その際、奥大使はイランの大使館の一等書記官として活躍をされておられました。正に、自らの目と足で積極的に情報を収集しよう、そういう姿勢に感銘を受けたものであります。この亡くなられたということに対しては、本当に惜しい、残念な気持ちでなりません。
また、井ノ上書記官につきましても、このたび第二子が無事に誕生されて、ひとまずほっとしているところであります。残されたお二人の子供さんがいずれ物心付いたときに、お父さんの仕事ぶりがどうであったか、奥大使も含めてお二人の仕事ぶりが、その延長でイラクの復興に結び付いた、そういうことを確信を持って語ってあげられるようにこれから私たちは努力をしていかなければならないと決意を新たにしたところであります。
さて、そこでお伺いをいたします。
我が国がこれから人道復興支援をすることによって一体国民にとって、あるいは我が国にとってどういう利益が得られるのか、あるいは守られる国益とは何なのか、その中身について具体的に総理にお伺いしたいと思います。
説明責任ということが強調される中で、必ずしも国民が率直に確信を持てるような、その国益というものを認識しているとは思えません。例えば、自衛隊の派遣に対して、今なお反対ないしは慎重にあるべきだと、こういう世論も強いわけでありますし、また、フセイン元大統領が身柄拘束されたとはいえ、にわかにテロが鎮まるという見通しも立っておりません。また、主要国でありますドイツ、フランス、ロシア、中国といった国々は、人的な支援については消極的であるという状況であります。
こんな状況の中で、何ゆえ今日本が自衛隊も含めて人的貢献をすることが日本の国益に資するのかということを改めて総理のお言葉で具体的に御説明をいただきたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) イラク国民が長い間、フセイン元大統領の下で自由のない圧制、専制と言ってもいい、そういう政治体制の下で大変苦労されてきた。ようやくその圧制から解き放たれて、これから自由で安定した民主的な政権を打ち立てようと努力している、また希望を持って自らの国を立ち上げようとしているとき、そのイラクの再建のために日本としてでき得る限りの支援の手を差し伸べるということは、大変意義のあることだと私は思います。
まず、日本としてここまで発展してきたのは、戦後、日本も多くの国々から援助を受けて、今や逆に援助ができるまで発展してきたわけであります。お互い苦しんでいる、そういう国々に対して、自分のことばっかり考えないで、よその国が自立できるような支援の手を差し伸べるということは日本国憲法の理念にも合致するのではないか。
なおかつ、今テロとの戦いに多くの国々が苦しんでいる、いつテロリストの標的になるか分からない。それは、ニューヨークでの二年前の九・一一の事件だけではありません。あの事件で、正に三千名近い全くテロリストとは無縁の、戦争とは無縁の方たちが命を落とされた。アメリカ人やヨーロッパの方々だけじゃありません。日本人も二十四名の方々があのニューヨークのテロで命を落とされた。バリ島でもそうであります。イラクだけじゃありません。世界各地区で無差別のテロが起こっている。こういうテロリストがばっこするような世界にはしてはいけない。イラクも、このまま放置しておいたらば、正にテロリストの拠点になってしまうんじゃないか、テロリストの温床になってしまうんじゃないかと。それを防いで、イラク人自身が早く自分たちの政府を立ち上げるためにどのような支援ができるかと。
アメリカやイギリスも大きな犠牲を払いながらこのイラクの復興支援に取り組んでいる。日本も、アメリカの同盟国として日本の平和と安全を確保してきた、これまで。今後もどのような事態が起こるか分からない。そういう際に、やはり日本としても、アメリカの同盟国として信頼に足る同盟国としての行動を取るということは、戦後一貫して堅持してきた日米安保条約によって日本の平和と安全を図る、そして国際社会と協力しながら経済の繁栄も図っていくという。今や国際社会は、国連がすべての国連の加盟国に対して、イラクの復興支援に努力してくれ、協力してくれと要請を受けている。
まず、そういうことを考えますと、日本は、資金的支援、これもしよう、物的支援、これもいたしましょうと。人的支援しましょうという場合に、なぜ自衛隊を派遣しよるのかと、一般の民間人行かせばいいじゃないかと言う方もおられます。しかし、一般の民間人は今避難勧告が出ております。現に、日本の外交官もあの残虐非道なテロリストの犯行によって命を落とした。よその国の民間人まで命を落としている。軍隊を問わず、国別を問わず、復興支援に臨もうとする人たちを追っ払おうとしてテロリストはいろんな活動をしている。こういうときに、日本として、危険が伴うから人的支援はしませんという状況かというと、私はそうは思っていません。戦争はしない、戦闘行為には参加しない。しかし、一般市民にはでき得ないことが自衛隊でできるんだったらば、十分安全確保策を取って復興支援、人道支援活動に当たることができるんだったらばそのような活動をしてもらいたい。これはイラク人にとっても必要だと。日米同盟、国際協調、この重要性を認識するのだったらばこれも両立できると。
なおかつ、日本国憲法違反だと言いますが、違反とは思っていません。正に憲法の理念に合致している。日本はイラクの苦しむ住民の姿を見て、ほっておけない、日本も何かできることがあればということで汗を流そうということは憲法の理念に合致している。
そして、自衛隊の諸君が、必ずしも安全ではないかもしれない、危険を伴うかもしれない、そういうのを承知であえて困難な任務に行こうと決意を固めると言っている。そういう方々に私は敬意を持ちながら、でき得ればこのイラクの復興支援活動に当たってもらいたい。そのことは、ひいては一番恩恵を受けるのは日本国民自身じゃないかと。中東の安定、世界の平和と安定、世界の平和の中に日本の平和がある、世界の安定の中に日本があるという意識を持って、この意義あるイラクの、イラクのための政府を立ち上げる、自らの手でイラク人が再建に立ち向かおうとしているとき、日本にできる支援ができれば日本国民としても喜ぶべきことじゃないかと私は考えております。
○山口那津男君 今の総理の御答弁にもありましたように、イラクの安定は国際社会においても、そしてまた、ひいては我が国においても利益をもたらすということ、それが単なる安全保障面だけではなくて経済的にも政治的にも安定、国益につながっていくんだと、そういう含意の下で御答弁をいただいたというふうに受け止めさせていただきます。
さて、そこで、我が国の行おうとしている基本計画に盛られた人道復興支援、これがムサンナ県を中心とするイラク南東部と、こういうふうに地域的な限定がなされております。ここで成果を上げるということは非常にイラクの復興にとって大きな一歩になると信じているわけでありますが、しかし、これがイラク全体、国全体の復興の過程、プロセスの中でどういう位置付けにあるのか。我が国は頑張った、しかし依然として不安定な地域はたくさんあるというままではイラク全体の復興につながっていかないわけであります。また、治安維持の任務に当たっている各国のチームもありますし、専ら軍隊でありながら人道復興支援に当たっている国々もあるわけであります。
そういう、この日本がやろうとしている人道復興支援がイラク全体の復興プロセスの中でどういう位置付けにあるのか、その見通しも含めて御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(福田康夫君) イラク全体、これ、まだら模様というように言ってもいいんだろうと思います。テロ活動が頻発するようないわゆるスンニ・トライアングルという地域もございますし、そうでもない地域もある。
そして、今御指摘ありましたムサンナ県、この地域については、イラクの南東部でありますが、この地域についてはいろいろな調査をしておりますが、これなかなか安定をしている地域であるというように評価をされております。これまで大きな事件もなし、それから住民は不審者を通報するといったような治安当局に非常に協力的であるといったようなことは近傍におりますオランダ軍もそういうように認知をいたしておるというところでございまして、そういう地域において我が国が基本計画に盛られている活動をする、そこだけではありませんけれども、そういうことが一体どういう意味があるのかと、こういうことになるかと思います。
御案内のとおり、委員もよく御案内のことなんでありますけれども、イラクへの人道復興支援を進めると、こういうことについては国際社会全体がその役割を担っていると、こういうことであります。今、先ほどまだら模様というふうに申し上げましたけれども、これは治安が余り良くないところもある、しかし安定している地域もある。そして、それはその地域地域において、その能力を持ち、そしてまたその意思のある国々が分担しながら、役割分担と申しますか、そういうことをしながらこの復興に携わっているんだと、こういうことであります。我が国は、そういうような中において我が国ができる範囲の仕事をするということでございますので、国際社会と協力して、その一員としてイラクの復興に携わるという役割を、その役割分担を行っているんだと、こういうように考えていいのではないかというように思います。
これも御案内のとおりでありますけれども、イラクの民生と申しますか、民生と申し上げるよりも人道的なことは極めて大事だという部分も非常に多いわけでございまして、ムサンナ県も水の十分、十分というか、衛生的でない、そういうような水しかないような、そういう非常に不便なところにおいて例えば水の供給をするとか、また医療活動をするというような基本的な、社会において必要である基本的なことについて我が国が協力できるということは可能であるという見通しを立てた上で今回この復興支援に参加しようと、こういうことを考えてこの法律を作り、そしてその法律に基づいて実行していきたいということであります。
ただいま総理からもお話がございましたとおり、この目的はイラクの復興にあるということでありますので、その復興に我が国としてもしかるべき役割をしっかりと果たしていきたいというように考えております。
○山口那津男君 今、官房長官から御答弁ありましたけれども、基本計画には、自衛隊の活動だけではありません、文民も含めた、しかも地域限定ではなくてイラク全体を見通した様々な活動のメニューというものが盛られているわけですね。しかも、言われるところでは、来年の夏前ぐらいにイラクの政府を立ち上げるべく大きな計画もあると言われているわけであります。
基本計画では一年間の活動期間というものを定めたわけですね。ですから、この一年間の中でそういうメニューをどういう組合せ、あるいは段階的にどういう仕事をやっていくか、そしてそれがイラクの統治機構ができたときにどう引き渡していくか、そういう展望の中で御説明をもう一度お願いしたいと思います。
○国務大臣(福田康夫君) 委員の御指摘のとおり、これは段階的なことがあろうかと思います。
今現在の状況の中において我が国が許される行動ということ、またできる行動ですね、可能な行動、これからスタートをするということでありまして、水の供給とか医療活動をするということが、をしていくわけでありますけれども、それが進展していきまして、また治安が回復されるというようなことでこの活動が広く行うことができるという状況になれば、それはそれに応じて自衛隊自身の活動も範囲も広がるだろうと、役割も増えるだろう。そしてまた、そういう例えば水の供給であれば、それはその地域の住民にゆだねるというようなことまでしていかなければいけない。そして、ゆだねた上でどういうことができるかということも、その後のフォローが必要だろうと。その部分については、復興支援職員という枠組みがございますから、そういう方々にやっていただくということができるわけでございます。
いずれにしましても、民生の回復がなくして治安の回復もないだろうというように思いますので、これは鶏か卵かという話にもなるかもしれませんけれども、民生の今の状況が少しでも回復するということが治安を少しでも良くするということにつながるというように考えておりますので、民生回復のためにいろいろな今後展開をする。しかし、その第一歩を踏み出すわけですから、慎重にやってまいりたいというふうに考えております。
○山口那津男君 これまで各国の軍隊がやっている人道復興支援活動について、必ずしも報道で日本には紹介されてきませんでした。しかし、かなりいい成果を上げている、イラクの人たちに大変喜ばれている、こういう活動もあるようであります。ですから、これから日本がやろうとしていることが、いい意味でこの復興に対する貢献の競争といいますか、復興を促進する、そういう方向で大きな役目を果たすことを期待したいと思います。
続いて、非戦闘地域というのが法律で設定されているわけであります。これは、中身は、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域と、こう定義されているわけですね。これは、我が国の行う活動が憲法で禁じられた海外での武力行使に至らないための言わば基本的な枠組みでありまして、非常に重要な定義だと思います。
これまでの国会論戦では、ともすればこれを抽象論として、あり得るかあり得ないか、こういう線引きが正しいか、こういう議論がなされてきました。しかし、大事なことは、今これから日本が現場で活動するに当たって、非戦闘地域、つまり現に戦闘が行われず、これからも行われることがないと認められるという確実な認定ができるかどうかということであります。
これは、法律上は、実施要項、これを決定する際にその地域を確定するということになっているわけでありますが、このたび作った基本計画においても、この基本計画で定めた地域というものの中で実施要項を作っていくわけでありまして、基本的にはこの基本計画に定めた地域が今後も戦闘行為が行われることがないと認められるであろうと、そういう認識が必要だと、こう思います。
その意味で、ムサンナー県を中心とするイラク南東部の中のいずれかで活動することになるわけでありますから、この地域の中に今後も戦闘行為が行われることがないであろうと認められるに至った理由といいますか根拠といいますか、相当な確実性といいますか、そういうことを国民に分かるように御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(石破茂君) お答え申し上げます。
基本計画に書きましたのは範囲でございます。委員御案内のように、これを実施要項で確定をする、具体化するということになります。
じゃ、何でイラク南東部ということをまず範囲として定めたのかということでございますが、これは、政府調査団も参りました、専門調査団も参りました。そこで実際に犯罪というものがどれぐらい生起をしているか、そこで死傷を伴う犯罪というものがどれぐらい生起をしているか、そういうことを勘案をいたしまして、それが極めて少ないという実際の数字でございます。そして、現地に行きまして、オランダ軍やあるいはイギリスや、あるいはアメリカともいろんな情報を交換をいたしまして、そのような、現に戦闘が行われているわけではない、そして活動の期間を通じて戦闘が行われないと認められるというような判断をするに至っておるわけでございます。これを更に実施要項で確定しますときにそのようなことを更に確実なものにしていく。それが数字で表れますのは、いろいろな検分等々も重要でございますけれども、実際にそういうようなことが数字として表れている、非常に犯罪も含めましてそういうことがほとんど生起をしていない、それに基づくものが大きいのであります。
○山口那津男君 今、犯罪の件数が少ないあるいはテロ事件が起きたことのない地域があると、こういう御趣旨だと思いますが、それも大事な理由だと思うんですね。しかし、これから起きないということについては、そういうことが起きにくい社会であるということもあるだろうと思います。それから、アメリカ軍が主として治安維持活動を当たっている地域と、この我が方が定めた地域は、これはイギリス軍が大きな意味での安定を図っているわけですね、そういう地域性の違いということもあるだろうと思う。その違いというものが国民にはまだよくのみ込めない。イラク全土がすべてテロ行為が続発、頻発しているかのように誤解している方々も多いわけです。
ですから、その違いというものを基本計画にもある程度書いてあるわけです。それをもっと具体的に御説明すべきだと、こう思います。簡潔にお願いします。
○国務大臣(石破茂君) おっしゃるとおりであります。
ですから、サマワにおきましては、そこにおける統治の体制というものが安定をしているということがございます。穏健な宗教勢力等が存在をし治安が安定をしているということ、そして、オランダが治安を担当しておるわけでございますけれども、オランダがきちんとした警戒態勢を取っているということ、そしてまた、現地において不審な者が入ってくればそれをきちんと見分け、通報するようなそういう体制も整っているということでございます。数と併せまして、そのような治安の状況、統治の体制、そしてそのような不審な者が入ってきたときにそれがすぐに分かるような、そういうような地域であるということを加えて申し上げます。
○山口那津男君 加えて、その地は、かつて日本が様々な支援をした、例えば病院を建てたとか学校を建てたとか、いろいろ実績の残っている地域だろうと思うんですね。イラクの国民感情も比較的良いということもあるだろうと思います。それら様々な具体的な事実をもっともっと説明していただきたいと、こう思います。
最後に、総理に伺います。
与党間で党首の合意をいたしまして、覚書に定めました。これから実施要項を定め、総理が承認をいたし、そしていずれ防衛庁長官が派遣命令を出すと、こういう法律上の手続が順次進んでいくはずであります。そういう中で、覚書の趣旨をこれからどう生かしていかれるおつもりか。
これは、自衛隊の派遣、とりわけ陸上自衛隊の派遣について、危険なしと言えずというところに派遣するに当たって大きな心配があるわけであります。それに当たって政治家として責任を持って決断を下すという意味で大事な手続だろうと思います。法律に書いてあることではありません。しかし、議院内閣制の下で、大げさに言えば、これは与党がシビリアンコントロールを果たし得る、政府とともに果たし得るという一つの手掛かり、試金石になるものだろうと思います。
総理はこの覚書の趣旨をどう生かされていくおつもりか、お答えいただきたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今回の自衛隊派遣、基本計画策定いたしましたけれども、今後、実際に自衛隊を派遣する場合に、今、防衛庁長官のところで実施要項を策定中でございますが、国民に理解を求めるということについてはいろいろな説明の仕方があると思っております。この国会の委員会の審議もその一つだと思いますが、やはり与党とよく緊密に調整していく、これもやっぱり与党・政府一体として国民に理解を求めるという観点から極めて大事なことだと思いますし、自民党、公明党は今連立政権を組んでいるわけでありますので、こういう点については一連の手続の中で緊密に調整をして御理解と御協力を得たいと思っております。
○山口那津男君 是非その手続の中で具体的な良き先例というものを作っていただきたいとお願い申し上げまして、終わります。
○小泉親司君 日本共産党の小泉親司でございます。再び小泉純一郎総理大臣に質問いたします。
まず、私は初めに、イラクで亡くなられました二人の外交官の方々の死に対して、心から哀悼の意を表したいと思います。同時に、御家族の皆さんの御心痛にまずお悔やみを申し上げたいと思います。
我が党は、今度のイラクへの自衛隊派兵、これはもちろん断固反対でございます。その理由は、第一に、今回の自衛隊派兵はアメリカとイギリスの占領軍の支援を目的とするものだ。今、大変イラクは混乱をしている。この大きな原因は、大変、大義のない無法な戦争、それに続く不当な占領、これに対してイラク国民が大変大きな抵抗をしている、反発をしている、ここに大きな原因があると思います。
もう一つは、憲法九条に反する派兵だ。これは、憲法九条は海外での武力行使を禁止している。今、イラクが米英の占領軍の下で大変泥沼化している状況だ、このことはだれしも認めることだというふうに思います。このところに自衛隊が送り込まれれば、この泥沼化の状態を一層加速することは目に見えていると思います。その意味で、自衛隊が攻撃を受けてこれに反撃することによって、自衛隊が武力行使に道を開くことになる、この点で、私はイラクの派兵を強く撤回を求めたいというふうに思います。
私は、この前も総理に質問いたしましたように、私どもは、今の米英占領軍を中心とした枠組みから国連を中心にした枠組みに切り替えて、その下で人道復興支援を大いに行うべきだ、こういうふうに考えております。
そこで、総理に幾つかお尋ねいたしますが、私、この基本計画、総理が案を出して決定されました基本計画を見ました。この基本計画の中に、まず自衛隊の活動範囲の問題。
今日、私、基本計画についてパネルを作ってまいりました。(資料を示す)この基本計画によりますと、自衛隊の活動区域は決して南東部のムサンナ県だけじゃない。クウェートを拠点にしまして、バグダッド空港、中部のバラド空港、北部のモスル空港、それから南部のバスラ空港。さらに、海上自衛隊に至りましては、ペルシャ湾からインド洋に至るまで活動ができるようになっている。これが基本計画の実際であります。
私、イラク特措法では自衛隊の派兵は非戦闘地域に限られている、これは先ほども同僚委員からも議論があったところであります。なぜ非戦闘地域に限られているのか。これは、憲法九条違反か、つまり我が国が海外において武力の行使をしないということを明確にするための制度的担保だ、つまり九条違反に踏み出せないような担保をしているんだというふうなことであります。しかもイラク特措法では、この非戦闘地域に加えて、安全が確保される地域でないと自衛隊、派兵できない、こういうことになっております。
総理、そこで私、まずお尋ねしますが、先ほど示しましたようなこの基本計画の中に明示をされているバグダッド空港や北部のモスル、こうした空港を非戦闘地域、つまり戦闘が行われない地域と判断した理由というのを、まず総理、お聞きしたいと──いや、総理、基本計画なんですから。お尋ねします。
○国務大臣(石破茂君) お答えを申し上げます。
基本計画で定めました範囲というものは、これから私の下で定めます実施の区域とは異なります。その中が非戦闘地域というものを多く含むであろうということはございますが、法律において求められておりますのは、我々が活動するのは、現に戦闘が行われておらず、活動する期間を通じて戦闘が行われることがないと認められる地域ということに相なっておるわけでございます。
そのような観点から、今どこを実施要項の中で実施区域として定めるかということを作業中でございまして、今そこの基本計画に書きましたものは、おおむねそういうことが認められる範囲という大まかなものを示しました。これからそれを具体化する作業を行うわけでございます。
○小泉親司君 基本計画は総理が法律的に作ることになっておりますので、総理、この自分でお作りになられた基本計画について、明確にお答え願いたいと思います。
そこで、総理は七月の時点で、実はバグダッド空港は非戦闘地域かという質問をされているんですね。七月の十八日、ここで総理何と言っているかといいますと、バグダッドは今戦闘地域か非戦闘地域かということは断定できませんが、そんなに安全な地域ではないと思っておりますと答えております。しかも、このときには、どこが非戦闘地域でどこが戦闘地域かと今この私に聞かれたって分かるわけがないと答えておられた。
ところが、今度はこの決定をされた。しかも、バグダッド空港は、この七月の時点から見ますと、この二か月間だけでも十一月の二十二日、民間貨物機がミサイルで攻撃される、十二月九日には米軍輸送機がミサイルで攻撃される、七月の時点より一層悪化しているんです。
なぜそれ、総理、このバグダッド空港、先ほど防衛庁長官は範囲だとおっしゃいましたけど、書いてあるのはバグダッド飛行場と書いてあるんですよ。じゃ、飛行場の滑走路だけ使うのか、屋家だけ使うのか。そんなことあるわけないじゃないですか。バグダッド飛行場と明示した、そのバグダッド飛行場を非戦闘地域と判断された、判断された根拠をお示しください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 七月の時点でどこが戦闘地域かどこが非戦闘地域かと聞かれても私に分かるわけがないと。それはもう当然なんですよ。私、現地行って調査したわけじゃないんですし、専門家でもありませんから。そして、今回政府調査団も派遣し、状況報告を聞き、今後自衛隊を派遣する場合には非戦闘地域であると。
そして、先ほどからも防衛庁長官が答弁しておりますように、非戦闘地域だから安全であるとは言えない場合もあると。戦闘地域だからといって危険だと言えない場合もあると。非戦闘地域の中でも安全なところとそうでない場合があると。戦闘地域でも安全なところとそうでない場合があると。こういう点についてよく状況を見極めて判断したいと。
で、基本計画にはバグダッドと書いてあります。バグダッドにおいても安全が確保される地点とそうでない地点があると思っております。イラクの南東部ということを基本計画で明記しております。イラク南東部においても安全なところと将来安全でないところが出てくるかもしれません。そういう点については、今、防衛庁長官が実施要項策定中でありますので、いつかの時点ではっきりしてくると思っております。
○小泉親司君 総理は私の質問にお答えになっていない。
バグダッドとは書いてございません。バグダッド飛行場と書いてあります。総理、自分でお決めになったのを忘れちゃったんですか。バスラ飛行場、バラド飛行場、モスール飛行場と書いてあるんですよ。バグダッド全体だとは書いておりません。それじゃ、バグダッド飛行場は極めて特化された、バグダッド飛行場というのは非戦闘地域なんですね。安全な地域なんですね。どうですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 飛行場区域の中でバグダッドと明記しているわけであります。飛行場区域の中でね。それで、これから実施要項の中でそのバグダッド飛行場というものについて非戦闘地域に当たるかどうか、その点についてはこの策定する段階ではっきりさせたいと思います。
○小泉親司君 私、それは全くおかしいと思います。総理、飛行場施設、確かに書いてありますよ。「(バスラ飛行場、バグダッド飛行場、バラド飛行場、モースル飛行場等)」と書いてあるんですよ。おかしいじゃないですか。あなたが言っているのは、バグダッドなんというのは書いてませんよ。バグダッド飛行場と書いてあるんだ。だからそれを、特化した飛行場についてあなたは非戦闘地域だと判断しなかったら書けないじゃないですか。そんなごまかし言っちゃ駄目ですよ、総理。そんなもう明白なごまかしです。──いや、書いてありますよ、総理。お見せしましょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 書いてあるんですよ、はっきりと。「航空機による輸送については、クウェート国内の飛行場施設及びイラク国内の飛行場施設(バスラ飛行場、バグダッド飛行場、バラド飛行場、モースル飛行場等) 車両による輸送については、」云々と、ちゃんと書いてあるんです。
○小泉親司君 ということは、バスラ飛行場、バグダッド飛行場、バラド飛行場、モスール飛行場、全部非戦闘地域なんですね。
○国務大臣(石破茂君) それは実施要項と基本計画の相違をよく御認識をいただいていないと、そういうような御質問になるのだろうと思います。
つまり、基本計画の中には、先ほど来申し上げておりますように、範囲というものを記しました。実施要項で実施する区域というものを確定をいたしますときに、自衛隊が活動を行う地域はいわゆる非戦闘地域でなければならない、その要件がきちんと掛かって、それが具体化されるわけでございます。その場合において、じゃ、なぜ、仮に、今、バグダッドとかバスラとかいろんなものをお示しになりました。仮に、ある空港がそこになったとしたとするならば、それは非戦闘地域であり、かつまた自衛隊の権限、能力、装備をもってして危険が回避できる、非戦闘地域と、もう一つ、安全の確保という二つの要件を満たすことが必要になるわけでございます。
○小泉親司君 先ほど、午前中の質疑で、非戦闘地域と戦闘地域の問題は大変難解だと防衛庁長官言いました。国民は全然分からないと思います。だから、私は、今の、私が勝手に作ったものではなくて、総理がお作りになったものから、バグダッド空港と書いてあるから、それは非戦闘地域なんだなと。行くということが書いてあるわけですから、行ける、ないしは行く、このことが書いてあるんだから、なぜそういうことが明確にできないのか。私はこれはごまかし以外の何物でもないと思います。
例えば、基本計画に明示されたこの四つの空港、この空港一つ取っても、例えば北部、モスールでは大変危険だというのはもう皆さんも御承知のとおりのことであります。多くのところで飛行場が攻撃される。実は、イラクには米英占領軍が管理している飛行場が十二あるんです。だから飛行場などとなっているんです。その飛行場などの十二の空港のうち北部にあるのが六か所、中部が四か所あるんです、この四つを含めまして。この空港が米英占領軍の管理下なんです。これは実際にこういう空港も使えるという内閣官房の答えですから、こういうふうなことになったら、広大な区域が自衛隊が活動できる範囲に、総理、なるんじゃないんですか。
私は、特に国連が十二月十日に情勢報告、総理、お聞きになってください、国連の報告の中でも、イラクは危険が伴わない場所はない、これは十二月十日の国連の報告なんです。実際にあなた方が行けるところなんかないじゃないですか。実際に、非戦闘地域という問題は、私は憲法九条の、先ほども申し上げましたように、これにかかわる重大な問題だから私、問題にしている。ところが、これに対して総理が明確にできないというのは非常に憲法九条上問題だと思います。
憲法九条の問題については先ほども出ましたが、総理は記者会見の中で九条という言葉、一言も言わなかった。私は、こういう戦闘地域と非戦闘地域の問題があいまいにされているから総理が九条のことを言えない、ここに私は大きな問題があるんではないかと思います。
そこで、次にお聞きしますが、総理は人道復興支援ということを重ねて言っておられる。同時に、ASEANの首脳会議では米英のテロ掃討作戦には関与しないと、こう説明されている。しかし、私はこれもごまかしではないかと。なぜかといいますと、基本計画の中には、安全確保支援活動、これは先ほど山崎副長官が冒頭お話しになりましたような活動が含まれている。どういう活動かといいますと、これもパネルにしてまいりました。(資料を示す)
これはイラク特措法で防衛庁長官が答弁されたこと、一つは米軍の武器弾薬の輸送、武装兵員の輸送、イラク人による米占領軍への抗議・抵抗運動の鎮圧の支援、フセイン軍残党の米軍掃討作戦の支援、武装解除や敵の部隊を打ち破る攻撃の支援、つまり支援活動としてはこういうことができるんだと政府がこれまで説明してきたことであります。
総理、こういうことも今度の基本計画の中には含まれているんですね。どうですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) そういう活動ができるということになっております。
○小泉親司君 ということでございますから、これらのいわゆる米軍の武器弾薬の輸送、米占領軍の武装兵員の輸送、それから米英軍のフセイン残党掃討作戦の支援、こういうことの支援すると。私、これは米英占領軍、正にその活動だと思います。
そこで、その武器弾薬の問題について少し具体的にお話をお聞きしますが、総理は記者会見で、武器弾薬の輸送をやりませんというふうにお答えになりました。ところが、昨日の委員会では、今度は武装兵員の輸送をやるんだと、官房長官ですか、いわゆる兵員の輸送をやるんだということを認められた。
そこで、聞きますが、イラク特措法の三条三項では、武器の輸送、弾薬の輸送というのは排除されていないんですね。これはもう皆さん御承知のとおりのことであります。基本計画には全く同じ文言で、米占領軍の支援として、イラク特措法第三条三項に規定する医療、輸送、保管、通信、補給など、これを行うと言っておりますが、この基本計画の輸送の中には武器弾薬は含まれるんですか。総理、あなたが決められたんですよ、基本計画は。
○国務大臣(福田康夫君) この、何と言ったかな、支援活動ね、安全確保支援活動、安全確保支援活動のいろいろなその業務を書いてございます。その中に輸送というものがございます。その輸送の中には、兵員の輸送というものもこれも排除されないと、こう考えております。
○小泉親司君 ちゃんと聞いておいてくださいよ。武器弾薬の輸送は含まれるんですか。
○国務大臣(福田康夫君) その中には武器弾薬も排除されないということでありますが、これは再三申し上げているけれども、武器弾薬は総理のお考えとしてこれは輸送しないと、こういうふうに総理が判断をされたものでございます。
○小泉親司君 ということは、基本計画に含まれるということでございますね。そのことをお認めになりましたね。はっきりしてくださいよ、ちょっと、官房長官。
○国務大臣(福田康夫君) はっきりもくそもない、何度も同じことを言っているじゃないですか。武器弾薬はね、これはこの中に入っているけれども、しかし政策判断として、総理の政策判断として運ばないと、こういうふうに言っているじゃないですか。
○小泉親司君 大分、福田長官、お怒りでございますが、武器の弾薬の輸送、この問題についてあなたは、なぜ排除されないのかという質問をしたときに何て答えられていたのか。物品と武器の弾薬とそうでないものと混在して一つの荷物にまとめるということは、戦地では往々にして行われるというように聞いております。武器弾薬を、これを一つ一つ点検して選び出して、それを別にして、このようなことは実際のオペレーションとしてはなかなかしにくいということでございます。要するに、円滑な業務が実施できなくなるおそれがあるんです。だから、できないんです。だから、法律には排除されているんですと説明したんです。
じゃ、総理、お聞きしますが、あなたは武器弾薬の輸送は行いませんと言われましたが、ということは、一つ一つ点検して選び出して、それを別々にして運ぶ、こういうことを指示なさるんですね。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 基本計画、この支援法の中では武器弾薬も輸送することはできると、しかし、私は、実施要項、武器弾薬はしないと。この中で、それぞれ協力する場合に、自衛隊員だって武器携行する場合あるでしょう。それも武器弾薬の輸送に入るかというと、そこは入らないんじゃないですか。私は、そういう面において、兵員が武器を携行していく場合、それを、兵員を輸送する場合にそれは武器、お互い協力活動をしているわけですから、そのときにまでこれまでも武器弾薬の輸送というふうには言えないんじゃないかと言っているんです。
○小泉親司君 総理、全然質問に答えておりません。私が言っているのは、なぜ武器弾薬を、実はアフガニスタンの戦争のときのテロ特措法のときには、皆さんも御承知のとおり、与党の修正でアフガニスタンでは陸上において弾薬の輸送は行いませんという規定が入ったんです。ところが、今度のイラク特措法には、武器弾薬の輸送は行えます、つまり排除されておりません、つまり行えますということが明記されているんですよ。なぜだと私たちが聞いたんです。そうしたら、福田さんが、こん包が混合にこん包されているんだと。だから、例えば防衛庁長官は何て答弁されているかと、小麦粉とバターも一緒に弾薬と積む場合がございますよと、それが区分けできないんだと、だから今回は排除していないんだと言っているんですよ。
ということは、総理がもし武器弾薬を運ばないとおっしゃるのであれば、当然のこととして、それをどうやって見極めるんですか。あなた、一つ一つ点検して、それを明確にしない限りできないじゃないですか。あなた、どういうふうにそれ担保するんですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それははっきりとして、政策判断として運ばないと宣言しているんですから。日本のやる活動はこうですよということは、お互いの信頼関係理解して、ああ、日本の人たちは武器弾薬は運ばないんだなということはよく分かっていると。そういうようなことを表明して、日本の復興支援活動に理解を求めていくと、そういう判断です。
○小泉親司君 あなたね、さっきは実施要項で作ると言ったんですよ。実施要項を作るといったときは、実施要項に、じゃ、そういうものを盛り込むんですか、あなた。
自衛隊員に対して防衛庁長官が命令するときに、いや、それは武器弾薬は一々点検して、それは区分け、だって混合こん包しないからと言っているんですよ。それなのに、じゃ、混合こん包しないというのであれば、当然のこととして、それは一々点検しなくちゃできないじゃないですか。どうやって担保するんですか。
○国務大臣(福田康夫君) 先ほど来、委員は、一緒にこん包していかなければできないと、こういうようなことを言っておられる。これは今回の議論じゃないでしょう。
○小泉親司君 私が言ったんじゃない。あなたが言ったんだ。
○国務大臣(福田康夫君) いやいや、そうじゃない。それはあなたが今言っているんじゃないですか。
○小泉親司君 違うでしょう。
○国務大臣(福田康夫君) 黙って聞いてください。
あのね、それは前の議論でしょう。今回の議論じゃないんです。これは、今回は総理の政策判断として、その武器は運ばない、武器弾薬は運ばないと、こういうふうに言ったんだから、運ばないようにするしかない。それは実施要項を決める中できちんと整理していくと、こういうことであります。
○小泉親司君 私が言ったんじゃございません。あなたの言った答弁を読み上げたんです。──昔じゃありません。イラク特措法の審議においてでございます。だから、イラク特措法とどう違うのかと総理にお聞きしているんですよ。総理、おかしいじゃないですか、そんなことは。現実にあなたは武器弾薬をしないと明言されたのであれば、一つ一つ選び出さない限り見付からないじゃないですか、混合こん包をされているということなんですから。それは私は、大変それはごまかしだと思います。
このようなことで、私は、混合こん包して事実上武器弾薬を運ばないとあなたは政策判断しただけの話で、現実問題としてはこれは分からないと。昨日もこれ議論ありました。そのとき、防衛庁長官、手を挙げていますが、防衛庁長官、昨日答弁は何と言ったかというと、それは連合軍のコーリションだから、だからコーリションを信頼できるわけ、するほかないじゃないかと、こう言ったわけですよ。ということは、じゃ、米英軍が信頼すると言うんだったら何の確認もしないで弾薬も乗せちゃうと、これも可能になるじゃないですか。私は、これは全くのごまかしだというふうに思います。この点で、私は……
○委員長(山本一太君) 石破防衛庁長官、答弁を求められております。
○小泉親司君 違う。私の発言時間ですよ。何言っているんですか。あなた、委員長、勝手に言っちゃ駄目ですよ。あなたね、そういう委員長の差配は非民主的でございます。
○委員長(山本一太君) 質問をお続けください。
○小泉親司君 それで、私は米英占領軍の、これは明確な支援活動だと。総理は、武器弾薬は排除すると言っておきながら、現実にその排除する担保については何ら私は、具体的に示し得ない。こういうことをやっているから、やはり自衛隊が、私、標的になる。例えば、この占領軍の支援の問題については、例えば、今度陸上自衛隊が派遣されるサマワ地域でも攻撃があるんですね。それはもう総理もよく御存じのところだというふうに思いますよ。同時に、先ほど午前の審議で、防衛庁長官も言いました、NGOの赤堀さんという方が、今の治安状況では間違いなく自衛隊や抵抗する人たちがターゲットになってしまうんだと。
だから、一番問題なのは、アメリカとイギリスの占領軍の枠組みじゃなくて、国連を中心にした枠組みに切り替えて人道支援するんだと、そうすることが一番やはり安全の問題からしても重要なんだと。これこそ私たちはイラクの復興の具体的な方策だということを申し上げて、私の質問を終わります。
○大田昌秀君 社民党・護憲連合の大田昌秀であります。
質問に先立って、去る十一月二十九日、イラクにおいて不慮の死を遂げられた奥克彦大使と井ノ上正盛一等書記官並びにイラク人運転手に対し心から御冥福をお祈りいたします。また、御遺族の方々には謹んでお悔やみ申し上げます。
さて、最初に総理の歴史認識についてお伺いいたします。
去る十二月九日、小泉内閣は自衛隊をイラクに派遣するための基本計画を閣議決定いたしました。いまだ戦闘が終結していないイラクの戦場に武装した自衛隊を派遣することは自衛隊の海外派兵にも等しく、戦争を否定し、武力行使を否定する憲法を持つ平和国家として、過去半世紀以上も国外でただ一人の生命を奪うこともなかった誇るべき戦後日本の歴史を文字どおり覆すことにもなりかねません。
先日、十四日、フセイン元大統領が拘束されたことについて米英暫定占領当局のブレーマー代表は、今日はイラクの歴史で偉大な一日だと述べました。後世の歴史家たちが今回の総理のイラク派兵の歴史的意味についてどのような表現で記述されるか分かりませんが、私は今回のイラク派兵は日本の戦後史における一大事件と認識しております。
総理は御自身の決意を歴史的な文脈の中でどう認識されておられますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今まで憲法の解釈をめぐりましていろいろな議論が行われてまいりました。御承知のとおり、自衛隊は憲法違反である、いや自衛隊は合憲であるという議論が戦後幾度となく国会の場でも議論されてきたわけであります。そういう中にあって、今や裁判所の判断をまつまでもなく、大方の国民は自衛隊は憲法違反でない、合憲だと判断しているのではないでしょうか。
一時期は学者も巻き込んで違憲、合憲、かんかんがくがくの議論が行われました。その後、湾岸戦争を契機に、自衛隊も人的貢献の中で海外で活動できるのではないかと。当時、いろんな議論を思い起こしてみますと、自衛隊が海外に行くことはこれまた憲法違反である、海外派兵は禁じていると、憲法で。しかしながら、幾たびかの議論を重ねてきて、自衛隊が海外に行くのが必ずしも派兵、いわゆる武力行使のために行くのではない、PKO、いわゆるピースキーピング・オペレーション、平和維持活動に行くのだったらば自衛隊も海外で活躍できる分野があるのではないかと。この審議の際にも国会では様々な議論が行われました。徹夜の審議も行われました。
しかしながら、自衛隊、海外派遣されるのは必ずしも憲法違反ではないと、PKO活動、平和維持活動ならば自衛隊の海外派遣も派兵とは違う観念であると。派兵というと、どうも戦争に行く印象が強いと。武力行使はしない、戦闘行為には参加しない、平和維持活動だということで、自衛隊派遣ということも私は大方の国民の賛同を得て定着してきたんだと思います。
現に、この十年間の間にペルシャ湾の掃海艇の派遣、あるいはカンボジアのPKO活動、ゴラン高原のPKO活動、あるいは東ティモールのPKO活動、アフガンでの後方支援活動、それぞれ自衛隊の部隊が海外に派遣されても、これは憲法違反でない、合憲だという解釈は大方の国民の理解を得れるようになったと思います。
こういうことを考えていると、憲法の解釈、もう当初から非常に変わってきた面もあります。今回、日本が戦後の憲法制定時のように外国から援助を受けていた時代から、外国の支援にもよります、日本国民の努力にもよります、そして今日まで発展してきた。今や援助を受ける立場から援助をする立場に立つような発展した国になった。そういう際に、私は他国のことの復興支援のためにいろいろな活動ができる、そういう中で自衛隊もできるのではないか……
○大田昌秀君 簡潔にお願いします。時間がありません。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) という私は解釈があってもいいのではないかと思っております。
もちろん、このような解釈においては依然として、憲法違反、いや合憲だという議論があるのも承知をしております。そういう点について私は、憲法の前文の理念とそれから憲法九条、武力の行使はしない、武力による威嚇はしない、そういう前提の下に、私は自衛隊を派遣するということは憲法違反であるとは思っておりません。戦闘行為にも参加しない、戦争に参加するんじゃない、復興支援活動に赴くんだということで、私は今回も自衛隊派遣することが憲法違反であるとは思っておりません。
○大田昌秀君 総理は常々、日米同盟の重要性について強調されておられます。私も軍事同盟ではなく日米の友好協力関係は非常に大事だと思っております。しかし、戦後半世紀以上も我が国は安保条約を締結している立場から、アメリカに対しては多くの基地を提供しているだけでなく、金銭的にも随分と協力しています。ちなみに、外務省の日米安保条約課から提供していただいた在日米軍駐留関連経費総額の表によりますと、一九七八年以来、いわゆる思いやり予算として二〇〇三年までに四兆二千三百億円、それを含めて駐留費として既に総額十一兆七千八十二億円を支出しています。
今回のイラク戦争においても、経済的苦境にありながら、イラク復興支援金として、当面、二〇〇四年中に一千六百五十億円、二〇〇七年末までに総額五千五百億円を拠出すると表明しています。
ですから、日米関係については十分に協力していると思われますが、憲法違反までしてあえて自衛隊を派兵しなければ日米関係は悪化すると総理はお考えですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 基本的な認識がまず違っているなと思います。
私は、先ほど申し上げましたとおり、自衛隊派遣することが憲法違反であると思っておりません。憲法違反まで犯して日米協力するのかと言われますが、まず憲法違反であると私は思っておりません。
そして、日米協力重要だと。日米協力重要の中で最も重要な点は、日本の平和と安全を確保することであります。日本の経済の発展も、まず日本の平和と安全が確保されなきゃあり得ないと思っています。日米安保条約は経済協力だけでもないです。平和と安全、独立を守るための条約であります。
そういう観点から、私は、日本として、同盟国として、日米協力というのは日本の平和と安全を確保する上においても、また世界各国と友好的な経済関係を提携する上においても重要だと思っておりまして、今回の法案が憲法違反であるとは思っておりません。
○大田昌秀君 十二月五日付けの共同通信社の報道によりますと、イラクの戦闘に参加している米兵のうち、脱走者が千七百人出ているほか、七千人の米兵が精神的ダメージによって治療のため撤退したとあります。精神的ダメージというのは、いわゆる戦闘恐怖症というものだと思います。去る沖縄戦においても、守備軍司令部のあった首里攻防戦では、わずか十日間ほどの戦闘で一千五百人から二千人ほどの米兵が戦闘恐怖症にかかり特別の治療を受けましたが、戦後もずっと精神的不安定が続いているようです。
実は、私の学友と後輩も沖縄戦で精神的ダメージを受け、戦争から生き延びたものの、戦後五十八年間、今日に至るまで、精神病院に入ったまま一歩も社会へ出て生活することができない人たちがおります。この人たちにとって人生とは何かを考えたときに、どう表現していいか言葉も見付からない状態であります。
精神的ダメージを受ける理由はいろいろあると思いますが、一つには、何のために殺し合うのかということについて納得できないからだと思います。国益のために戦うと言いながら、現実には何ら罪もない子供や女性を殺りくしてしまうことに疑問が出てくるのです。
イラク人道復興支援特措法が議論される場合、ともすれば殺される側のことはなおざりにされがちですが、こうした問題について総理はどのように配慮なすっておりますか、簡潔にお願いいたします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず、日本の自衛隊がイラクにいる場合も、殺し合いに行くのではありません。これは、もし万が一殺されるかもしれないような攻撃に遭ったときには、安全確保のために十分な準備をしていかなきゃならない。イラクの国の発展のために、イラクの、イラク人の政府を立ち上げようとしているイラク人の支援のために、復興支援のために、自衛隊は自らの活動分野あるだろうと思って行くわけであります。
そういう中に、殺し合いを前提にして行くのではありませんし、この点については、むしろ行く前に、自衛隊が行く場合でも、イラク人に評価されるような、イラク人が希望するような仕事、任務をすべきだと。こういう点については、よくイラク人に理解されるような、迎え入れられるような配慮を十分にしていかなきゃならないと思っております。日本の自衛隊は戦争に行くのではないと、殺し合いに行くのではないと、イラク人の支援のお手伝いに行くんだということをよく理解してもらうような努力が一段と必要ではないかと思っております。
○大田昌秀君 今回の自衛隊のイラク派遣について、沖縄県の五十二市町村のうち過半数の三十二市町村の首長が反対しています。賛成しているのは二人だけです。戦争が何たるかを知っているからだと私は思います。
社民党は、先日十二月十三日に開催された定期全国大会において、自衛隊のイラク派兵に反対する決議を採択しました。イラクの復興については我が国も積極的に協力すべきという点については無論賛成であります。しかし、それは、米英の占領行政に加担するのではなく、何よりも国連主導による復興支援体制が確立され、イラク人による政権の早期樹立が展望される中で、非軍事、民生、人道支援に徹することこそが我が国が行うべき支援であり、平和憲法を生かす道だと思うからであります。
その意味で、自衛隊の派遣には明確に反対する意向を表明して、質問を終わります。
ありがとうございました。
○委員長(山本一太君) 総理、御退席いただいて結構です。
2003/12/16 |