2004年6月9日

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現時点におけるイラクに展開する自衛隊についてのわが党の考え

民主党

○サマワに展開する自衛隊は6月30日の主権移譲前に一旦、撤退すべきである。

我が党はもともと、現状のイラクのように武器を伴った反占領活動やテロが頻発している地域において、「戦闘地域」「非戦闘地域」に分けることはできないと主張してきた。怖れていた通り、今や迫撃砲による攻撃や仕掛け爆弾などの行為が常態化し、治安を担当するオランダ軍には死者が出るに至っている。また、日本人が人質として拘束され、ジャーナリストが殺害されるなど、アメリカへの協力者と見られることにより、日本人もイラク人による攻撃の対象となりつつある。我々はもともと、イラク特措法には憲法上の疑義もあり反対であったが、イラク特措法が求める前提条件も、もはや崩れている。

イラク特措法が、イラクに主権が移譲されるまでの人道復興支援活動と安全確保支援活動を規定していることは、第1条の目的や第2条の基本原則などにより明らかである。しかし政府は、6月30日以降も同法を根拠に自衛隊の駐留を続けようとしている。多国籍軍への参加は、自衛隊発足後初めてとなるにもかかわらず、新たな国連決議を前提とした新法も作らず、占領統治を前提としたイラク特措法を援用することは、法治国家として決して認められることではない。

以 上


前原誠司ネクスト外務大臣記者会見要旨

【現時点での考え方】
 「現時点におけるイラクに展開する自衛隊についてのわが党の考え」が本日の『次の内閣』で了承された。結論から申し上げれば、「6月30日までに自衛隊はサマワ、イラクから一旦、撤退すべきである」。

 主な理由として二つ。一つは、もともと民主党は、米国がイラク全土を戦闘地域と指定している中で、戦闘地域、非戦闘地域にわけることはフィクションであると申し上げてきた。また、現在は安全な地域であってもテロにつけねらわれたりすると、そこが戦闘地域になり得るため、イラク特措法の内容そのものを否定してきた。まさに、サマワを取り巻く状況は民主党が懸念してきた状況になりつつある。具体的にはサマワの基地付近に迫撃砲が撃ち込まれるとか、治安を維持するオランダ軍に死者が出るといった、サマワを取り巻く状況は、イラク特措法の前提条件を満たさなくなってきた。法治国家として法律の要件を満たさない以上、撤退すべきである。

 もう一つは、6月30日以降の関わり方であるが、現行のイラク特措法は、CPA(連合国暫定当局)を前提(国連決議1483)とした特別立法となっている。暫定政権ができるのであれば、それを前提とした新たな国連決議を盛り込んだ形の新法が必要であると考えている。従って、今の特措法を援用して6月30日以降も駐留し続けることについて、民主党は反対である。仮に6月30日以降も自衛隊が駐留を続けるということであれば、少なくとも論理的には新たな法律、国連決議1546に基づいた、イラク人による暫定政権が存在しているという前提の法律に基づくべきであると考えているため、6月30日までに一旦、撤退すべきだと主張していきたい。

【具体的な民主党の主張は】
 自衛隊を出すと言っているのは政府側だ。現在のイラク特措法を前提として自衛隊を出すのであれば、新たな法律をつくって国会に問うべきであると主張していきたい。

【『次の内閣』の中で慎重意見は出されたのか】
 本日の『次の内閣』では異論は出なかった。また、その前提となった、外務・防衛部門会議及び役員会でも異論は出されなかった。

【法改正ではなく新たな法律が必要なのか】
 今のイラク復興支援については特別措置法であり、特別措置法の法律改正というのは理屈が通らない。つまり、イラク特措法の目的には、国連決議1483を前提としていることが書いてあり、前提となる国連決議が変わるのである。いくら骨組みがそのままで国連決議だけが変わるからといって、法改正だけで済むということにはならない。そもそも、戦後初めて多国籍軍に参加するケースであり、今までのCPAに協力するといった形とは行動としても根本的に異なるため、法改正ではなく新法が必要であるというのが民主党の姿勢だ。

【「一旦」というのはもう一度参加する可能性はあるのか】
 ゼロではない。民主党が議論している最中に新たな国連決議がまとまった。6月30日以降、どのような復興支援を行うべきかについては、今日出された新たな国連決議を吟味し、それを前提として、イラクに対する関わり方、考え方を打ち出していきたい。

【多国籍軍参加の考え方についてはいつまでにまとめるのか】
 今国会閉会まで残り1週間程であるため、それまでにはまとめなければならないと考えている。新たな国連決議が整ったが、政府はイラク特措法を援用していこうと考えているようだが、そのことについては反対だ。政府が新たな法律を出さない状況では、多国籍軍に自衛隊を出すことには反対との結論にならざるを得ない。

【今の段階で考え方をまとめた理由について】
 民主党はイラク特措法に反対し、それに基づいて自衛隊を出すことには反対してきた。しかし、民主党は法律としては反対したが、政府は一旦、自衛隊を出し、活動を始めてしまった。それを軽々に引き上げるということは、日本が世界から、国際社会からどう見られるかを考えた場合、「撤退せよ」と言うのは控えてきた。特に、イラクで日本人の人質事件が起きた際に、自衛隊撤退が人質を返すことの条件だと言われた。党内でも様々な意見が出されたが、脅しに屈する形でイラクから自衛隊を撤退するということは言わなかった。

 なぜこのタイミングかという点だが、サマワの情勢が大きく変わってきたからだ。法律の要件を満たさないほど治安が悪くなってきたとの認識を持っている。6月30日でイラクの主権主体がかわることになる。新たな国連決議を取り込んだ新法によらなければ出せないということであれば、6月30日以前に撤退すべきだとの結論は当然のことだ。

【憲法との兼ね合いについて】
 憲法上の疑義について民主党が指摘してきたのは、「戦闘地域」と「非戦闘地域」に分けることはできないということ。自衛隊の防護、自己防衛、正当防衛であっても、戦闘行動になり得るのではないか。海外での武力行使を禁止した憲法に抵触する恐れがあると申し上げてきた。

 今後については、詳しい談話を出したいが、現時点では、(1)自衛隊を出す場合であっても、新たな国連決議を盛り込んだ新法でなければ認められない。(2)多国籍軍の指揮権の問題。他国の指揮下に入ることが武力行使の一体化になるのかどうかの整理が不透明だ。多国籍軍に参加するのは、自衛隊発足後初めてのことであり、その点については、厳しくチェックしなければならない。

 国連決議1546には、「多国籍軍が治安に対してあらゆる必要手段をとることができる」とあり、多国籍軍の中心となるのは米国軍であろう。もちろんイラク暫定政権の了解を得てとなるだろうが、現在の米国寄りの暫定政権では、例えば米国がサドル派民兵と交戦する可能性がある。イラクの暫定政権はその拒否権を持つのかどうか懸念している。そういった問題が精査されなければ、新法が仮にできても、多国籍軍に参加することには慎重にならざるを得ない。これについては、さらに精査した上で伝えていきたいと思っている。


2004年6月9日

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