2003/02/03 | >>会議録全文 |
小泉総理の施政方針演説に対する代表質問
民主党 岡田克也
岡田幹事長、小泉失政を全面批判 (民主党ニュース)
衆議院本会議において3日、小泉首相の施政方針演説などに対する質疑が行われ、民主党の岡田克也幹事長が代表質問に立った。岡田幹事長は、経済失政、構造改革の後退、政治腐敗の放置、無原則な外交姿勢の4項目にわたって小泉政権の問題性を果敢に追及。施政方針演説の原稿を再読してお茶を濁そうとする首相に対して、異例の再々質問をも行って食い下がり、無気力な現政権に代わって政権を担おうと決意する民主党の勢いを国民に示した。
小泉政権の経済失政について岡田幹事長は、まず個人破産件数や住宅ローンの代位弁済額の増大、世帯主・長期失業の増加、勉学環境の悪化など、具体的な数字を挙げながら生活者の視点から深刻な経済破綻状況を明らかにし、首相の責任を質した。しかし首相は、「改革の成果が明確に現れるにはまだ時間がいる。悲観主義に陥ることなく、自信と希望をもって改革にあたる」などと、国民生活の現実とはかけ離れた能天気な答弁。岡田幹事長は、「血の通った答弁を」と再度求めたが、首相は同じ内容を繰り返した。
次に、来年度予算案において個人消費を冷え込ませる国民への負担増、増税を強行しようとしている理由を質し、とりわけサラリーマン本人の医療費窓口負担の引き上げについては凍結した上で医療制度の抜本改革を先行させることを求めた。しかし首相は、「個々の負担増のみでなく、社会保障給付の拡大や先行減税の効果なども含め、総合的に考えるべき」などと対置し、医療費本人負担引き上げの凍結についても拒否した。
また岡田幹事長は、政府の来年度予算案について、歳出構造改革が頓挫していることを指摘し、作成中の民主党版予算案の骨子──(1)間違った税金の使い道を改める、(2)次の世代に対する投資、過重な負担の回避を重視する、(3)公共事業、特殊法人などの見直しによる財源確保、経済活性化につながる分野への重点配分、を柱とするもの──を提起。これに対する首相の見解を質した。しかし首相は、政府案の趣旨を淡々と説明するにすぎなかった。
岡田幹事長はさらに、自ら規制改革の切り札と位置付けた構造改革特区構想における首相のリーダーシップ欠如、中小企業対策の欠落などを指摘し、地域金融円滑化法制定など民主党の中小企業金融対策への見解も質した。首相は、構造改革特区構想については「関係大臣に指示を出している」などとし、民主党の地域金融円滑化法案については「金融機関の業務内容を政府が画一的な基準で評価しようとするもの」などととらえた上で、慎重な姿勢を示した。
構造改革をめぐっては、まず道路関係4公団民営化問題を取り上げ、改革案づくりで何の方向性も示さず民営化推進委員会の議論を混乱させたこと、自民党道路族の介入を野放しにしたこと、などについて反省の弁を求めた。小泉首相は、「(民営化推進委での議論は)委員長の辞任など残念な面もあったが大きな成果を挙げた。(民営化推進委と自民党道路調査会の)両会の意見を尊重して取り組む」などと当事者意識の乏しい答弁に終始。岡田幹事長がさらに、民営化推進委員会の最終答申を「基本的に尊重する」という首相の発言を取り上げ、「地方分割(全国を5つの地域に分割して新会社を設立する)は実行するのか」と具体的に質したのに対しても、「その方向で検討する」とあいまいさを残した。
次に税制改革について岡田幹事長は、リーダーシップを発揮しないまま自民党税制調査会のペースで改革案がつくられ、「聖域なき税制改革」でなく「不況下の大衆増税案」になったと指摘。その責任とともに、自民党税調の廃止を求めた。小泉首相は、「私が指示した方針の下に(経済財政諮問会議と政府税制調査会の)両会議で検討してとりまとめた」などとして、リーダーシップ欠如はあたらないと反論した。岡田幹事長はさらに、小泉税制改革の理念を分かりやすく説明するよう求めたが、首相は「簡素、公平、公正、中立」などと思いつき的にしゃべった以上、言葉が続かなかった。
さらに地方分権をめぐって岡田幹事長は、補助金・地方交付税・税源移譲がほとんど進んでいないことを指摘し、「私が総理の立場なら、まず補助金を思い切って統合し、一括交付金とすることで地方自治体の自由な判断と責任に委ねる」と明快に主張し、見解を求めた。首相は「地方に任せることが税金の無駄のない使い方につながるという考え方は同感」などと言わざるを得なかったが、現状については何も言及できなかった。
政治腐敗問題については、まず大島農水相疑惑、自民党長崎県連事件など「政治とカネ」をめぐる問題が噴出していることを指摘し、それらについて自民党総裁として調査し、国会に報告することを要求。また、民主党が提出している公共事業受注企業からの献金禁止法案に賛成するよう呼びかけた。さらに、民主党が本年度から党本部の決算について全面的に外部監査を導入したことを紹介し、自民党も同様の措置をとる考えはないか、と質した。しかし首相は、疑惑調査については「各党・会派間の議論を踏まえて対応したい」などとまたしてもまったくの他人事答弁に終始し、献金禁止法案についても「自民党内で検討していく」と賛同を拒否。党財政への外部監査導入については「将来の検討課題」などとし、まったくやる気のない姿勢をさらけ出した。
これに対して岡田幹事長は、「自民党総裁としての責任がある。何を改めるのか」と厳しく追及したが、首相は「国民の疑惑を招かないために何が必要か検討する」などと驚くほど暢気に答え、政治改革へ意欲のかけらもないことを自己暴露した。
最後に岡田幹事長は、イラク問題を中心に政府の外交姿勢を追及。ブッシュ米大統領の単独行動・先制攻撃容認論、ならびに新たな国連安保理決議がなくともイラク攻撃は可能だという主張に対する態度を明確にするよう求めた。しかし首相は、イラクの武装解除が大事、問われているのはイラクの姿勢、などと繰り返すばかりで、原則もなく米国に追随する姿勢が明らかになった。岡田幹事長は「米国の先制攻撃容認論は従来の国際法における自衛権の考え方の否定だ」とさらに見解を求めたが、首相が質問の意味をとらえられず、議論はかみ合わなかった。
岡田幹事長は、質問の終わりに、「国民の皆さまに申し上げたい。政治を変え、日本を変えるためには政権交代しかない。われわれに任せていただきたい」と力強く訴えて締めくくった。
○岡田克也君 民主党の岡田克也です。
私は、民主党幹事長として、民主党・無所属クラブを代表し、総理の施政方針演説について総理に質問いたします。(拍手)
質問をかわすことなく、真正面から誠意を持って御答弁いただけるようにお願いいたします。なお、答弁が十分でないと考えたときは、時間の範囲内で、納得のいくまで再質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
1. 小泉自民党政権1年9ヶ月の総括
小泉総理、今私は、この壇上に立ち、複雑な思いであなたの姿を見ています。
平成十三年五月、あなたは、この壇上で、恐れず、ひるまず、とらわれず改革に取り組む、日本経済再生の処方せんは既にあり、今なすべきことは決断と実行だと。国民は大きな期待を持ちました。改革なくして成長なしという総理のスローガンに、国民は、しばらく痛みを我慢してみようと覚悟を決めました。小泉総理に任せれば、改革が実現し、経済再生や生活の安定も可能になると信じようとしたのです。
それから一年九カ月。日本の社会、経済、国民生活の現実は、期待外れを通り越して最悪の状況です。改革もなければ、成長もありません。先の展望が見えません。国民にただ我慢してくれと言うだけで、いたずらに痛みをふやしています。それでも、改革が少しでも前進していれば、まだ救いがあります。しかし、小泉総理、あなたは、ひたすら既得権を守ろうとする自民党抵抗勢力と理念なき妥協を続けてきました。
小泉総理、ことしは、日本にとっても世界にとっても極めて重要な年です。経済は再生するのか。改革は進むのか。イラクや北朝鮮の問題にどう対応するのか。総理、あなたは、リーダーとしてこれらの問題に適切に対処できる自信がありますか。
総理、私は、これまで、注意深くあなたの言動を見てきました。総理、あなたは、日本国総理大臣としてリーダーシップを発揮すべき肝心なときに、決断を回避し、あるいは丸投げしてきたのです。私は、この間、もし私が日本国総理大臣であればこうしたのにと思ったことが何度かあります。先日の施政方針演説を聞いても、小泉総理のビジョンも、断固やり抜こうという決意も伝わってきません。
私は、今こそ政権交代によってこの国の政治を変える、本当にこの国の政治を変えたいという思いを強くし、その実現に向けて決意を新たにしています。(拍手)
以下、具体的に、小泉総理、小泉自民党政権の問題点を四点にわたって指摘し、民主党政権ならどうするかを国民の皆さんに対して明らかにしたいと思います。
2. 小泉経済失政と民主党の目指す経済再生
まず、小泉自民党政権第一の問題点として、経済失政を指摘し、民主党の目指す経済再生の具体策について説明します。
経済の現状について、小泉総理の認識は甘過ぎます。具体的な数字を生活者の視点から指摘します。
昨年度の個人破産件数は前年度比二四%増の十七万三千件と過去最高を記録し、民事再生法の個人申請件数は八千五百件にもなっています。教育費や住宅ローンなど固定的経費が負担し切れなくなった家庭も数多くあり、その影響で、住宅金融公庫の住宅ローンの代位弁済が二千九百億円にも達しています。
職を失うことは人生にとって最大の出来事と考えますが、失業者の数の増加だけではなくて、世帯主の失業の増加、一年以上の失業者の増加など、内容もより深刻になってきています。
また、不況の影響は子供たちの勉学環境にも深刻な影を落とし始めており、保護者の失業、賃金カットを理由に授業料の免除、減額を受けた公立高校の生徒は全国に十七万人です。同様に、私立学校に通う生徒の中には、退学にまで追い込まれるケースもふえています。
さらに言えば、小泉失政の究極の犠牲者とも言える自殺者がいまだに三万人を超えています。
これらは小泉総理の経済失政の結果であり、内閣総理大臣としていかなる責任を感じているのでしょうか。真摯な反省の弁を国民に対して述べていただきたいと思います。答弁を求めます。(拍手)
次に、来年度経済成長見通しについてお伺いします。
厳しい経済状況の中で、政府は、来年度、実質で〇・六%の経済成長を見込んでいます。その牽引車は、個人消費と設備投資です。とりわけ、国内総生産五百兆円の中で二百八十五兆円、約六割を占める個人消費がどうなるかは重要です。
しかし、来年度予算には、国民の消費マインドに対して冷や水をかけるような負担増、増税がメジロ押しです。医療保険で一兆四千三百億円、たばこ・酒税の増税で三千億円、国民へのしわ寄せは合計二兆円にも及び、消費の一%近い大きさです。
ただでさえ雇用不安と賃金低下に加え、先行きに対する不透明感、不安感が増す中で、消費に大きな悪影響を及ぼすことは確実です。総理はなぜこのような国民生活を直撃する負担増を行うのでしょうか。答弁を求めます。
特に、サラリーマン本人の医療費の窓口負担の二割から三割への引き上げは容認できません。直ちに凍結すべきです。
昨年、医療の負担増を決めた際に、ことし三月までに新しい高齢者医療制度の創設などについての基本方針を策定することが法律に明記されました。厚生労働省のたたき台は昨年十二月にできたものの、調整が難航していると聞きます。必ず基本方針を三月中にまとめるとの総理の決意を伺います。
また、結局は、またしても改革なくして負担増ありになってしまうのではないでしょうか。総理に、四月の医療費本人負担の三割への引き上げ開始を凍結し、医療制度の抜本改革を先行させるおつもりはないか、お伺いします。(拍手)
さて、小泉総理は、当初、今後二、三年を日本経済の集中調整期間とし、その後、民需主導の経済成長が実現することを目指すと述べておられました。
しかし、二年近くが経過しましたが、現実は、このような楽観的な見通しとはかけ離れており、デフレが深刻化する中、民需主導の経済成長実現の見通しはめどさえ全く立たない状況にあります。これを失政と言わずして何と言うのでしょうか。何が問題だったのか、そして、それをどのように乗り越えようとしているのか、総理の率直な反省の弁をお伺いしたい。答弁を求めます。(拍手)
残念ながら、政府の来年度予算案では同じ失敗の繰り返しになることは確実です。例えば、あれだけ大騒ぎした高速道路の建設費が対前年度比で一・二%ふえ、また、すべてを廃止するか民営化すると総理が主張した特殊法人も、独立行政法人を含めた支出で見ると、わずか五・八%しか減っていません。小泉総理の歳出構造改革は、まさしく政官業癒着構造の中で身動きがとれなくなっているのです。
これに対し、民主党は、責任野党として、経済再生を実現するための民主党版来年度予算案を現在作成中です。その骨子を申し上げます。
民主党の予算編成の柱は、第一に、間違った税金の使い道を改めること、第二に、将来を担う次の世代、若者や子供たちに対する投資、過重な負担回避を重視すること、第三に、公共事業、特殊法人などの大胆な見直しで財源を生み出し、経済活性化につながる分野に重点配分することです。
まず、私たちは、大衆増税を盛り込んだ政府税制改革案は採用せず、撤回を求めます。民主党は、既に発表しているローン利子控除制度の創設、環境税の創設などを柱とした税制改革を提案します。
歳出では、以下の重点五分野に八兆円規模の予算を重点配分し、雇用の創出に全力を挙げます。現在五・五%の失業率を一ポイント下げるには六十万人の雇用創出が必要ですが、政府案では、失業率は来年も上昇することになっています。しかし、民主党の予算案を採用すれば、確実に四%台に下がります。
高齢者が身近な町で暮らせるグループホームの整備や介護、保育、障害者対策など福祉分野に二兆円、高校生の就職を促進するためのカウンセラーの配置、犯罪対策のための警察官の増員、NPOの支援など雇用分野に二兆円、そして、三十人学級や老朽校舎の耐震構造化など教育の分野、起業支援など中小企業分野、バリアフリーやマンション再生など国土交通分野、緑のダムなど環境分野を中心に残り四兆円の予算を積み増します。
これらの予算措置を実現するため、従来型の公共事業や特殊法人への支出、各種補助金、ODA、国のむだな行政経費などを大胆に削り込み、補助金は一括交付金化します。
以上の民主党の予算案について、小泉総理の見解をお願いします。(拍手)
民主党は、予算だけではありません。経済再生のため重要なことは、民間の活力をいかに引き出すかです。日本経済の圧倒的大部分は、政府部門ではなく民間部門です。しかし、民間活力を生かすための規制改革は、小泉総理のリーダーシップが見られないまま、堂々めぐりの議論が続いています。それに加えて、一時は政府みずからがその切り札と位置づけた構造改革特区構想が、現在、見事なほど、しりすぼみ状態になっています。
株式会社の積極参入などを含め、大胆な取り組みが必要と考えますが、小泉総理はなぜリーダーシップを発揮されないのか、答弁を求めます。
また、民間部門の大宗をなす中小企業が本来の活力を取り戻すことは、極めて重要です。特に、全国五百五十を超える地方議会でその制定を求める決議が採択された地域金融円滑化法案の成立や、政府系金融機関の融資における個人保証の禁止、個人破産時における差し押さえ禁止財産の範囲の拡大などの民主党の中小企業金融対策について、どうお考えでしょうか。答弁を求めます。(拍手)
3. 改革の後退、小泉総理の責任
次に、小泉自民党政権の第二の問題点として、構造改革について小泉総理が決定的に国民の期待を裏切ってきたことを指摘し、民主党の考え方を説明します。
先日の予算委員会で、我が党の菅代表の追及にたまりかねて、小泉総理は、この程度の約束を守らなかったことは大したことではないと言われました。政治家、しかも一国の総理大臣の約束がいかに軽いかを、みずから白状してしまったのです。小泉総理は、就任以来、改革実現と言いながら、日本の構造改革にとって重要な局面で原則なき妥協をし、決断すべき場面でリーダーシップを発揮してこなかったのです。
以下、具体的に指摘します。
まず、道路関係四公団民営化問題について取り上げます。
昨年十二月、ようやく、民営化推進委員会の意見書がまとまりました。民主党は、この改革案に賛成です。借金方式でどんどん高速道路をつくれば、次の世代に、高速道路も残りますが、借金も残ります。これを税金で返すのは、私たちの子供たちです。
しかし、小泉総理は、推進委員会に基本的な方向を示さず議論させ、その結果、委員会は大混乱に陥りました。また、抵抗勢力が地方を巻き込んで高速道路建設の大合唱をしたときも、自民党総裁でありながら、何もしませんでした。さらに、自民党道路調査会は、地域分割は行わない、私企業による道路資産買い取りは認めないなどの決議を行っています。
私が総理の立場なら、まず、大きな方向を示した上で推進委員会に議論させます。そして、任せた以上、その結果については責任を持って、自民党の介入を断固排除し、実現したでしょう。これらの問題について、小泉総理の反省の弁と決意をお聞かせください。
次に、税制改革について取り上げます。
小泉総理は、昨年の年頭会見で、「聖域なき税制改革」を実現すると言われました。しかし、その後は、経済財政諮問会議と政府税調に丸投げし、両機関の間で、基本理念をめぐって不毛な議論が続きました。
私が総理の立場なら、まず、経済財政諮問会議で基本的な方向を決定した上で、政府税調で専門的な見地から議論させたはずです。総理としてのリーダーシップの発揮がなかったことの責任をどう考えるのでしょうか。お答えください。
また、最後は自民党税調で、従来型の発想で決まってしまいました。その結果、「聖域なき税制改革」とはほど遠い、不況下の大衆増税案になりました。国民生活と乖離した長老議員が日本の税制を決めています。民主主義国家の中で、政府でもなく、国民に対して直接責任を負う立場にない人々によって政策が実質決定されているのは極めて異常なことだと思います。まず、この仕組みを壊すことから税の抜本改革が始まると思います。
自民党を壊すと小泉総理は国民に約束しましたが、まさしく、こういうことがきちんとできるかどうかが問われているのです。自民党税制調査会を廃止する考えはないか、総理のお答えを求めます。(拍手)
次に、地方分権について指摘します。
総理は、二〇〇六年度までに補助金、地方交付税、税源移譲を三位一体で改革することを表明されました。率直に言って、私も多少の期待を持って総理の決意を聞きました。
しかし、二〇〇三年度予算案では、補助金、交付税の改革はほとんど進まず、特に義務教育国庫負担金に関しては、都道府県からは、選択の余地のない押しつけでかえって改悪だという批判すら出ています。税源移譲に至っては、議論すらまともになされていません。
私が総理の立場なら、地方分権を最重要課題に取り上げ、まず、補助金を思い切って統合し、一括交付金とすることで、地方自治体の自由な判断と責任にゆだねます。
総理もよく御承知のように、ここ十年間の大きな変化は、国ではなく地方で始まっています。有能な知事、市長が続々と誕生しています。例えば、三重県の北川知事や長野県の田中知事は、国の補助事業を大胆に削減し、福祉、環境、教育、雇用などの生活関連分野に対しては重点的に予算配分しています。情報公開や電子入札など、国ではできないような新たな事業にも積極的に取り組む自治体もふえてきました。
中央が地方自治体をコントロールするという発想をやめて地方に任せることが、税金のむだのない使い方につながるのです。総理は地方分権を日本再生の切り札とは考えないのでしょうか。答弁を求めます。(拍手)
4. 政治資金を中心とした政治改革の実現
次に、小泉自民党政権の第三の問題点として、政治腐敗の問題を指摘し、民主党の考える、政治資金を中心とした政治改革の実現について説明します。
先日の自民党長崎県連前幹事長の逮捕を例に挙げるまでもなく、政治と金をめぐる問題が後を絶ちません。これは自民党の政治体質そのものです。大島農林水産大臣の秘書官の口きき疑惑、久間自民党政調会長代理の秘書のコンサルタント料疑惑、そして、自民党組織ぐるみの長崎県連疑惑。野党四党は、予算委員会における一日も早い関係者の参考人招致を強く求めていますが、今日に至るも、与党から具体的な回答はありません。
これらの政治と金をめぐる問題について、自民党総裁として、調査をし国会に報告すること、そして、参考人招致を明確にこの場でお約束いただきたい。また、再発防止のための具体策をお示しください。さらに、我々民主党を中心に野党が提出している公共事業受注企業からの献金禁止法案に賛成するお気持ちがないか、改めてお伺いします。
地に落ちた政治への国民の信頼を取り戻すために、政党はみずからの政治資金の透明性確保に努めることが必要です。
自民党の二〇〇一年の政治資金収支報告を見ると、党運営の責任者である幹事長に対し、十二億円近くの巨額の金が一年間で渡っています。具体的に、森総理時代の古賀幹事長に四億七千万円、小泉政権の山崎幹事長に七億一千万円です。しかし、その使途は一切明らかではありません。これは、国民の常識からかけ離れたことであり、政治資金規正法の脱法的行為です。
小泉総理、このままでは、あなたは今までの自民党総裁と何ら変わりません。不明朗、不透明な自民党の金の扱いについて、どのように自民党総裁として国民に説明されるのか、そして、それを改めるつもりはないか、お伺いします。
民主党は、本年度から、党本部の決算について外部監査を全面的に導入し、政治資金の使途について第三者のチェックを受けることに決定いたしました。国民に対して説明責任をきちんと果たしていこうという決意のあらわれです。総理には、民主党同様、自民党の政治資金決算について全面的に外部監査を導入するつもりはないのか、この場で明確にお答えください。(拍手)
5. イラク問題への明快な対応
小泉自民党政権の問題点として、第四に、イラク問題を例としつつ、外交姿勢について取り上げます。
ブッシュ大統領は、昨年九月に、国家安全保障戦略、いわゆるブッシュ・ドクトリンを発表しました。その中で、テロリストに伝統的な抑止力は通用しないとして、米国は単独行動も辞さない、先制攻撃も辞さないと主張しています。今回のイラク問題に対する米国の対応は、このブッシュ・ドクトリンが背景にあることは明らかです。
第二次世界大戦の惨禍を踏まえ、世界は、国連を中心とした平和維持のための仕組みをつくり上げました。国連憲章第五十一条は、武力攻撃が発生した場合に限り自衛権の行使を認め、基本的には安全保障理事会の決議によって制裁を行うことで世界の平和を維持することになっています。私は、ブッシュ・ドクトリンはこの国連を中心とした世界の平和維持の仕組みと明らかに矛盾するものであり、重大な提案であると受けとめています。仮に、米国以外の国も含めて先制攻撃、単独攻撃を行うということになれば、世界は不安定化します。国際社会は今、大きな分岐点に立たされているという認識が必要だと思います。
ブッシュ大統領の単独行動、先制攻撃容認論に対して、小泉総理は基本的にどう考えているのでしょうか。このような重要な提案に対して沈黙を続けるようでは、本当の意味での同盟国とは言えません。私が総理の立場なら、ブッシュ大統領と徹底的に議論し、再考するように説得します。日本国総理大臣として、明確な見解を求めます。(拍手)
イラクに対する査察が継続しています。ブッシュ大統領は、イラクに対して、新たな国連決議がなくとも安保理決議一四四一号で武力行使できると主張しています。しかし、フランス、ドイツ、ロシアなどの主要国は、イラク攻撃を行う場合、武力行使を容認する新たな決議が必要との立場を明確にしています。
日本はいずれの立場に立つのでしょうか。自民党の山崎幹事長は、明確な証拠があれば新たな決議がなくとも武力行使できると述べていますが、小泉総理も同じ考えでしょうか。私は、新たな決議がなければ武力行使すべきでないと、国際社会に対し日本の考えを明確に主張すべきだと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)
米国は日本にとって重要な同盟国ですが、みずから主体的な判断や主張ができない日本の姿勢を改める必要があります。木で鼻をくくったような総理の答弁は聞き飽きました。日本国民を代表する日本国総理大臣として、責任と誇りのある答弁を求めます。(拍手)
6. おわりに
二年前、森政権のもとで、自民党は完全に行き詰まっていました。既得権を守り続け、時代の大きな変化の中で身動きがとれなくなっていたのです。そういう中、小泉総理が誕生し、国民は、自民党政治を大きく変えてくれることを期待しました。しかし、従来の自民党政権と何ら変わらぬ小泉政権の本質が明らかになってきました。
国民の皆様に申し上げたい。政治を変え、日本を変えるためには、政権交代が必要なのです。我々に任せていただきたい。(拍手)
民主党は、納税者、生活者、消費者の立場に立つ新しい政党です。新しい国づくりのために、古い既得権をぶち壊し、開かれた、公正で透明性の高い社会を目指しています。市場の役割を重視し、政府の介入を最小限にしながらも、所得の再分配など、市場がおのれの役割を果たし得ない分野については、社会的公正の視点から、政府が今まで以上にきちんと責任を果たしていくことが必要だと考えています。子供や孫たち、将来世代が明るい展望を持てるように、世代間の公平、将来世代への責任を重視する立場に立ちます。
この国会を通じて、小泉自民党政権と厳しく対決し、国民の皆様に政権交代による日本の再生という選択肢を示すために全力を尽くすことをお誓いして、私の代表質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 岡田民主党幹事長にお答えいたします。
私の経済政策の結果責任についてでございます。
御指摘のとおり、雇用情勢は厳しく、自殺の増加といった事態についても、まことに痛ましいものと認識しておりますが、日本経済は、世界的規模での社会経済変動の中、単なる景気循環ではなく、複合的な構造要因による景気低迷に直面しているものと考えております。また、不良債権や財政赤字など、負の遺産を抱え、世界的な株価低迷の中で、戦後経験したことのないデフレ状況が継続しているなど、想定以上に厳しい内外経済環境が生じていると思います。
小泉内閣は、大胆な構造改革を進め、二十一世紀にふさわしい仕組みをつくることによってこそ、こうした状況を打破し、我が国の再生と発展が可能となるとの認識のもと、デフレ克服を目指しながら改革を推進し、経済情勢に応じては大胆かつ柔軟に対応するという一貫した方針で経済運営に当たってまいりました。
改革は道半ばにあり、改革の成果が明確にあらわれるまでにはまだしばらく時間が必要ですが、日本の潜在力は失われておらず、厳しい環境の中でも、多くの人々が前向きに挑戦を続けております。悲観主義に陥らず、自信と希望を持って改革に立ち向かうことが、国民全体に明るい未来をもたらすためにたどるべき道だと考えております。
今後とも、金融、税制、歳出、規制などの改革の取り組みをさらに加速させ、日本銀行と一体となってデフレ克服に取り組むことにより民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図り、日本経済を再生させていくことが、私に課せられた責任であると考えております。
社会保障の負担増や増税による国民負担についてのお尋ねであります。
急速な少子高齢化が進展する中で、今後、社会保障給付費は増大していく見込みであり、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、医療保険などの制度改革は不可欠なものと考えます。改革を進めなければ、保険制度の運営が困難となり、かえって将来に対する不安が広がり、経済にも悪影響を及ぼすことになると考えております。
さらに、今般の税制改革におきましては、税負担のゆがみを是正する等の観点から、酒税及びたばこ税の見直しを行うものの、税制改革全体としては、平成十五年度において、国、地方合わせて一兆八千億円程度の減税を実施することとしております。
当面の景気との関係については、個々の負担増のみを取り上げて議論するのではなく、社会保障給付の拡大を通じた所得等の増加というプラスの側面や先行減税の効果なども含め、総合的に考えるべきものと考えます。
いずれにせよ、政府としては、デフレを克服しながら民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく考えであります。
医療制度改革の基本方針の策定と医療費三割負担の凍結についてのお尋ねであります。
国民皆保険を将来にわたり堅持していくためには、患者、加入者、医療機関といった関係者に等しく負担を分かち合っていただくことは避けられず、保険料の引き上げ幅を極力抑制するためにも、予定どおり、本年四月から三割負担をお願いすることが必要と考えております。
また、医療保険制度の体系のあり方など、医療制度改革の諸課題については、各方面の御意見も伺いながら、今年度中に基本方針を策定し、将来にわたり持続可能な制度としていくため、さらなる改革に全力を挙げて取り組んでまいります。
税制改革案及び民主党案についてのお尋ねであります。
今般の税制改革におきましては、現下の経済財政状況を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化の実現を目指し、平成十五年度において、国、地方合わせて一兆八千億円程度の減税をするものであります。これにより、民間設備投資、消費、住宅投資など、足元の経済への好影響が期待できるほか、中長期的にも、我が国経済の構造改革を促進し、民間需要主導の成長に寄与するものと考えています。
御指摘のローン利子控除制度については、課税の公平な負担という問題もあり、適切ではないと考えております。
民主党の予算編成方針についてのお尋ねであります。
民主党の予算編成方針については、その具体的内容を承知しておらず、詳細についてコメントすることはできませんが、御質問いただいた分野の予算についてお答えいたします。
平成十五年度予算においては、福祉分野については、待機児童ゼロ作戦の推進などの少子化対策やグループホームの拡充など、各般の施策を推進していくこととしているところであります。
雇用分野については、将来にわたる安定的運営を確保するための雇用保険制度改革の実施のほか、現下の雇用失業情勢等を踏まえ、若年者の総合的な雇用対策の推進や、早期再就職を促進するための施策などを盛り込んだところです。
教育分野についても、確かな学力の育成、学校施設の耐震化の推進、育英奨学金の充実などについて重点的に取り組んでいるところであります。
中小企業対策費については、創業、経営革新の推進や中小企業への円滑な資金供給を確保するための基盤強化等への重点化を図っているところであります。
環境分野についても、循環型社会の構築、地球温暖化問題への対応などに資する予算に重点化を図っているところであります。
また、公共投資関係については、単価の見直し等を通じたコスト削減に努め、公共投資全体の規模について、前年度当初予算から三%以上削減しつつ、都市の再生や地方の活性化など、雇用や民間需要の拡大に資する分野に重点配分を行っております。
国庫補助負担金については、三位一体改革の芽出しとして、国、地方を通じた行政のスリム化を図る観点から、抜本的な整理合理化を行うこととしております。特殊法人等向け財政支出については、事業の徹底した見直しの成果を予算に反映させることなどにより、縮減を図っております。ODAについては、全体の量的規模を縮減しつつ、国際協力の観点から、我が国の責任の十全かつ適切な遂行が可能となるよう、援助対象分野等のさらなる戦略化、効率化等を図っているところです。
このように、平成十五年度予算においては、歳出改革の一層の推進を図るとの基本的な考え方のもと、活力ある社会経済の実現に向けて、経済活性化や将来の発展につながる分野へ予算を重点的に配分するとともに、徹底した単価の見直しなどによる効率化に大胆に取り組んだところであります。
構造改革特区を含めた規制改革への取り組みについてです。
規制改革は、民間活力を最大限に引き出し、新規需要や雇用を創出するとともに、サービスなどについて多様な選択肢が確保された豊かな国民生活を実現する観点からも、重要な課題と認識しております。
構造改革特区については、四月には第一号を誕生させるとともに、第二次提案募集で寄せられた構造改革にかける地方や民間の熱意を真摯に受けとめ、教育分野への株式参入を含め、今後とも、規制改革の突破口として、そのさらなる充実を図ってまいります。このため、私から関係大臣に対し、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討するよう、強い指示を出しているところであります。
また、全国的な規制改革についても、総合規制改革会議を積極的に活用し、経済財政諮問会議とも連携を図りつつ、引き続き強力に推進していく考えであります。
中小企業金融対策についてのお尋ねであります。
円滑な地域金融の確保は重要なことですが、民主党提案の地域金融円滑化法案は、基本的に自主的な経営判断にゆだねるべき金融機関の業務内容を政府が画一的な基準で評価、公表しようというものであり、慎重に考えるべきものと考えます。
政府系金融機関における保証人の問題については、国民生活金融公庫で第三者保証人が不要な制度を創設する等、適切な保全策を考慮しつつ、対応しているところであります。差し押さえ禁止財産の範囲の拡大については、破産法の全面的な見直し作業の中で引き続き検討してまいります。
政府は、中小企業の資金繰りを支援する保証制度等、約四千五百億円の補正予算の活用により、中小企業金融対策に万全を期してまいります。
道路関係四公団民営化問題についてです。
道路四公団の民営化については、一昨年末に閣議決定した特殊法人等整理合理化計画において、採算性の確保などについて、その基本的な方向を明示したところであります。
民営化推進委員会の審議はこれに従い行われたものであり、最終的な意見の取りまとめに当たり、幾つかの点で意見の対立が解けず、委員長が辞任するなど残念な面もありましたが、債務の確実な返済、建設コストの削減、ファミリー企業のあり方の見直しなどの点で大きな成果を挙げられたものと認識しております。
提出された同委員会の意見を基本的に尊重するとの方針のもと、必要に応じ与党とも協議しながら、改革の具体化に向けて取り組んでいくことが、私に課せられた責務であると考えております。
税制改革に関してのお尋ねであります。
税制改革については、昨年一月、私が二十一世紀の新しい時代に対応するあるべき税制について新年早々から検討していただきたいと指示したことに基づき、経済財政諮問会議や政府税制調査会が検討作業を開始し、その後も、多年度税収中立のもとで一兆円を超えるできる限りの規模を目指した減税を先行させるなど、私が指示した方針のもとに、両会議などが連携しつつ検討を進めた結果、平成十五年度税制改正において、あるべき税制に向けた改革の第一弾として、広範な改革を取りまとめることとなったものであります。
したがって、私がリーダーシップを発揮していないとの御批判は当たらないものと考えます。
自民党税調の廃止についてでございます。
他党の調査会について廃止と言うことについては、いささか疑問を持っておりますが、自民党税制調査会は、党に所属するすべての議員が参加できる場であります。毎年、自由かつ徹底した議論を重ねた上で、税制改正案を取りまとめるところであります。
今後も、政府税制調査会、経済財政諮問会議とともに、自民党を含めた与党税調の議論を生かして税制改革を進めていきたいと考えております。
地方分権に対する考え方についてでございます。
中央が地方自治体をコントロールする発想はやめ、地方に任せることが税金のむだのない使い方につながるのではないかという御指摘は、基本的に同感であります。
地方にできることは地方にゆだねるとの考え方のもと、国が地方行政に対する関与を縮小するとともに、地方の権限と責任を一層拡大することが必要であると考えます。地方が主体的かつ効率的に施策を選択し推進できるよう、みずからの創意と責任による自主財源の確保を可能にする仕組みが必要であります。
今後、御指摘のようなひもつきの補助金に関する議論も含めて、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で幅広い視点から検討し、本年六月を目途に改革案を取りまとめたいと思います。
一連の疑惑についてのお尋ねです。
政治に対する国民の信頼は、改革の原点であります。政治に携わる一人一人が、初心に返って、みずからを厳しく律していかなければならないと考えます。
自民党長崎県連の浅田前幹事長らが公職選挙法及び刑法違反容疑により逮捕された事件については、現在、当局において調査中でありますが、自民党として、今回の事件を重く受けとめ、改めるべきは改めるという姿勢で政治改革に臨み、国民から信頼される政治を目指して努力してまいります。
国会への報告や参考人招致については、各党各会派間の議論を踏まえて対応したいと思います。
民主党が提案している公共事業受注企業からの献金禁止についてのお尋ねであります。
政治献金については、疑惑を招かないような仕組みを考えることが必要であり、昨年、あっせん利得処罰法を改正強化するとともに、官製談合防止法を制定したところであります。
公共事業受注企業からの献金についても、現在、自民党において検討が進められているところであり、一歩でも前進するような措置を講じたいと考えております。
自民党における政治資金の扱いと外部監査の導入についてでございます。
政治資金については、国民から誤解を招くことのないよう、政治資金規正法に沿って適切に処理されることが必要であります。自民党においては、政治資金は法令に沿って適切な手続を経て処理しているものと承知しており、今後とも適正に処理してまいります。
また、外部監査の導入についてでございますが、自民党におきましては、御指摘の外部監査の導入の問題については、将来の検討課題であると考えております。
米国の国家安全保障戦略についてのお尋ねであります。
政府は、米国がこの戦略において、国際社会と連携しつつ、冷戦後の新たな脅威に対し断固たる姿勢で臨む決意を示した点を評価しております。
我が国として、他国の国際法の解釈につき有権的に評価する立場にはありませんが、この戦略は、米国が脅威への先制的対処のため必ず武力を行使するとしているわけではなく、先制を侵略のための口実としてはならない旨を明記しております。
いずれにせよ、米国は国際法上の権利及び義務に合致して行動するものと考えます。
イラク問題に関する新たな安保理決議の必要についてでございます。
イラクの大量破壊兵器をめぐる問題は、国際社会全体への脅威であります。イラクが査察に全面的かつ積極的に協力し、大量破壊兵器の破壊を初め、関連する国連安保理決議を誠実に履行することが重要であります。
我が国としては、安保理を初め国際社会が協調して毅然たる態度を維持すべきとの考えのもと、査察の状況、安保理等の議論を踏まえ、イラクが誠実に決議を履行するように、日本としての外交努力を継続してまいります。(拍手)
○議長(綿貫民輔君) 岡田克也君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。岡田克也君。
〔岡田克也君登壇〕
○岡田克也君 まず、率直に感想を申し上げたいと思います。
大変失望いたしました。ナッシング・ニューという言葉がありますが、今の総理の答弁は、ほとんどが、施政方針演説に書かれたことをそのまま述べているだけであります。これでは、何のためにこの本会議で代表質問があり、総理の答弁があるのか、国民から見ても全く理解できないことではないでしょうか。(発言する者あり)
改めて、六問、質問いたします。総理に聞こえないといけませんから、皆さん、ちょっと静かにしてください。
まず、総理は、私の経済失政についての質問にお答えになりました。しかし、そこに書かれたことは、すべて、施政方針演説に書いてあることです。総理の答弁は極めて形式的で、本当に今国民が厳しい状況にあるということがわかっておられるのかどうか、私は疑問に思います。そういう意味で、より具体的に申し上げて、総理の感想を求めたいと思います。
例えば、これは我々の周りによくある話、皆さんも御存じのことだと思います。借金してマイホームを買った。しかし、所得が減ったり、職をなくして、あるいは職がかわって、そのマイホームを手放さざるを得ない。家はなくしたけれども、借金は残っている。こういう人がたくさんいます。一体、総理はどう思われるのでしょうか。
あるいは、希望を持って勉強して、そして、望む高校や大学を卒業したけれども、一向に就職する道がない。そういう子供たちがたくさんいます。それに対して、総理はどう思うのでしょうか。
頑張って私立高校に入学したけれども、親の収入が減って、そのみずから選んだ私立高校を退学せざるを得ないという子供たちもいます。そういったことに対して、総理の血の通った答弁をいただきたいと思います。(拍手)
二番目に、道路公団の問題について追加質問いたします。
総理は、民営化推進委員会の報告書は基本的に尊重すると言われましたが、基本的に尊重するというのは、一体どういう意味でしょうか。全面的に採用するという意味なんでしょうか。
例えば、具体的にお聞きします。道路調査会が決議している地域分割の問題です。総理は、報告書どおり、地域分割を実行するおつもりがありますか。それとも、自民党道路調査会の決議を採用するのでしょうか。お伺いします。(拍手)
三番目です。規制改革、規制改革特区の問題です。
総理はいろいろ言われましたけれども、例えば、内閣委員会等で、厚生労働副大臣や文部科学副大臣と鴻池担当大臣の間で議論があります。見解が分かれています。そういったことに対して、閣内が不一致であることに対して、総理はどういうリーダーシップを発揮されたのでしょうか。お伺いします。(拍手)
四番目、税制改革についてお聞きします。
先ほどの答弁で、総理は、税制改革についてリーダーシップを発揮していると答弁されました。それでは、総理の「聖域なき税制改革」ということの基本理念を、わかりやすく、国民にわかるように述べていただきたいと思います。(拍手)
五番目、政治資金であります。
施政方針演説の中でも、あるいは今の答弁の中でも、この問題を、政治家一人一人が襟を正さなければなりませんという一般論にすりかえています。自民党総裁としての責任をどう考えているのでしょうか。改めるべきは改めるとおっしゃいました。何を改めるのでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
最後に、イラクの問題です。
イラクの問題で、アメリカの先制攻撃に対して、これをもし認めるとすれば、従来の自衛権の概念を変えることになります。急迫不正の侵害、そういったことがないままで単独行動、先制攻撃をするということは、従来の国際法の考え方を変えるわけで、そのことについての総理の御認識を私はお聞きしたかったわけであります。
同時に、国連決議一四四一号について、総理は、査察の状況とかイラクの対応とか、いろいろ言われましたが、しかし、一四四一号の解釈は、相手の対応や査察の状況で解釈が変わるわけではありません。一四四一号が新たな決議を武力行使のために必要としているのかしていないのか、それはまさしく決議の解釈の問題であります。明確にお答えいただきたいと思います。
以上、総理の明快な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 岡田議員の再質問ですが、六問ありますが、私は、最初の答弁ですべて答弁しているつもりであります。しかし、あえて再質問されましたから再答弁いたします。
経済失政についてでございます。
私は、改革の成果がすぐあらわれるとは思っておりません。時間がかかります。いろいろ経済の指標、状況、厳しいことは事実でありますが、金融、税制、規制、歳出、各般にわたる改革をなし遂げて、将来、持続可能な民間主導の成長軌道に乗せるようしていくことが私に課せられた責任だと思っております。
道路公団につきましても、あの答申を基本的に尊重するということで、十分、私は答弁になっていると思います。
また、我が党に相談しないでどうなるんですか。政党を排除せよと。反対している政党の言うことを聞くよりも、協力してくれる政党の意見をよく聞きながら委員会の意見を尊重して実現していくのは、当然のことではありませんか。(拍手)
規制改革、これも積極的に特区で進めております。それぞれの分野におきまして、今まとめておりますので、鴻池担当大臣が今、積極的に努力しております。その点につきましても、先ほど答弁したとおりでございます。
税制改革につきましても、私は、昨年一月から、一兆円を超える規模の先行減税、将来、単年度にこだわらない、税収のバランスは多年度で結構、しかし、現下の厳しい状況を考えまして、先行減税あり得べし、将来の財源も考えながら多年度税収というバランスも考えて結構という方針を示して改革を行ってきたわけでありまして、できるだけ負担にたえ得るような制度、国民が広く薄く、だれでもが負担できるようなあるべき税制を目指して改革してほしいという指示を出したところであります。
政治資金につきましても、これは、各政党それぞれ、資金調達手段が違うと思いますが、税金あるいは団体、企業、個人、バランスのとれた、国民の疑惑を招かないような制約はどういうことが必要かということを考えながら、今後も、自民党のみならず、各党で検討すべき問題だと思っております。
イラクの問題につきましても、先ほどお答えしたように、まず、イラクが一四四一国連安保理決議を誠実に履行することが重要なんです。これは、国際社会が一致して、イラクが疑惑に積極的に協力しなきゃならない。むしろ問われているのは、イラクの、この決議を守るかどうかの姿勢なんです。
アメリカは、平和的解決を望んでいる、国際協調を構築するよう努力すると。今、努力の最中であります。日本は、イラクが無条件、無制限にこの国連決議を誠実に履行するよう働くとともに、アメリカに対しても、国際協調をとれるような努力が引き続き必要だ。そして、今後も、国際社会の動向を見きわめながら、日本として日本の外交努力を続ける。先ほど答弁したとおりであります。(拍手)
○議長(綿貫民輔君) 岡田克也君からさらに再質疑の申し出がありますが、残りの時間がわずかでありますから、ごく簡単に願います。岡田克也君。
〔岡田克也君登壇〕
○岡田克也君 総理、私は難しいことを聞いているつもりはありませんから、誠意を持ってお答えいただきたいと思います。三つだけ申し上げます。
一つは、先ほどの道路公団の問題です。
今のお話は、結局、どういうことなんでしょうか。民営化推進委員会の報告は尊重するけれども、これから自民党内の議論でいろいろ変えていく、そういうふうに私には聞こえました。そして、私が具体的に質問した、地域分割のことはどうするのですかという問いには答えていただけませんでした。ぜひ、この点についてお答えいただきたいと思います。(拍手)
二問目です。税制の問題です。
私が聞いたのは、総理の「聖域なき税制改革」の基本理念を述べてください、国民にわかりやすく説明してくださいと申し上げました。総理の今のお答えは、一兆円を超える規模の先行減税をやる、そして、最終的には税収中立だと。これは理念じゃありません。技術論です。税制というのは、まさしく国民生活にとって最も基本的な部分です。そこの、総理としての、日本国総理大臣としての基本的な考え方をぜひ述べていただきたい。もう一度お願いします。(拍手)
三番目です。イラクの問題です。
これも、私の質問に全く答えていただいておりません。イラクが国連の査察をきちんと受け入れて、そして、必要があれば、もしそういう事実があればきちんと武装解除する、これは当たり前のことであります。
私が聞いたのは、アメリカの先制攻撃というこの考え方は、今までの国際法の考え方からはみ出る、そこについて、まさしく日本国総理大臣としてどう考えているのか、そのことを聞いています。
同時に、国連決議一四四一号の解釈は、何度も言いますが、イラクの対応、査察の状況によって変わることではありません。一四四一号が最終的な武力行使を容認している決議なのか、そうではないのかという、その解釈を日本国総理大臣としての総理に求めているのです。もう一度、ぜひお答えいただきたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 再々質問でありますが、私は答えているつもりなんですが、道路公団の問題につきましては、地域分割ですから、基本的に尊重するというのは、その方向なんですよ。基本的に尊重すると言っているでしょう。
税制についても、あるべき税制、簡素、公平公正、中立。そして、税負担なしにはいかなる政策も実行できない。国民にできるだけ公正に負担していただく。低ければ低いほどいい。その負担にたえ得るような簡素で効率的な政府をつくるというのも、これは当然重要なことであります。(拍手)
イラクの問題についても、これは、イラクがまず武装解除、疑念を晴らすことが大事なんです。そして、一四四一の決議を守らなかった場合は自動的に武力行使を容認しているかどうか。これは、自動的に容認しているものではありませんが、その間のいろいろな国際状況を見ながら、どういう対応に出るかというのは、今後、日本として主体的に対応していきたい、そう思います。(拍手)
2003/02/03 |