2003/02/04

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小泉総理の施政方針演説に対する代表質問と答弁

民主党 角田義一

角田議員、 小泉内閣の失政全般を厳しく追及 (民主党ニュース)

 参議院本会議において4日、小泉首相の施政方針演説に対する質疑が行われ、民主党・新緑風会の角田義一議員が代表質問に立った。角田議員は、小泉内閣の構造改革による「生活破壊」の実情、旧態依然とした配分の平成15年度予算、金融行政・産業再生策、税制改革、雇用対策、公務員制度改革、外交防衛問題、イラク問題、教育問題、農林水産業の再生・振興など、多岐にわたって何ら活路を見出せない小泉内閣の無策ぶりを厳しい口調で追及。「国民を疲弊させたのは総理自身だ」と指弾した。

 角田議員は冒頭、小泉首相の政治姿勢は国民から夢と希望を奪い、弱者切り捨てに徹する恐るべき政治だと断じ、「公約破りは大したことではない」などと開き直る首相は、経済失政の責任をとって即刻退陣すべきだと迫った。また、自民党長崎県連事件、中村喜四郎元衆院議員の実刑判決など、与党周辺には「政治と金」をめぐるスキャンダルが絶えることがないとし、政治不信解消に向けて民主党が主張する公共事業受注企業からの献金禁止を直ちに実施するよう、首相に求めた。首相は、「自らを厳しく律していかなければないと考える」「改めるべきは改めるという姿勢で政治改革に臨む」「一歩でも前進するような措置を講じたい」などとするのみで、具体的答弁を避けた。

 小泉構造改革をめぐって角田議員は、「破壊すれども創造せず」という手法をこれ以上貫けばデフレはますます深刻化し、経済は収拾のつかない混乱状態になるのは必至だと指摘。「この不況時に、赤字法人を狙い撃ちにする外形標準課税を打ち出し、財務大臣が消費税増税に言及するなど、小泉内閣の『経済音痴』ぶりには開いた口がふさがらない」と断じた。首相は「小泉構造改革が目指すのは、活力ある民間と個性ある個人が中心となった豊かな経済社会の実現だ」などと、能天気な答弁を繰り広げた。

 平成15年度予算については「過去の失政を何ら反省することもなく、旧態依然とした内容を踏襲し、不況・デフレを加速するものと断ぜざるを得ない」と厳しく批判。「潜在的需要を掘り起こすこと」「将来不安の解消を図ること」「仕事を生み出すこと」「地域の個性を生かすこと」「必要な資金を循環させること」の5項目を経済政策の基本に据え、予算案を編成しなおすべきだと提起した。具体的にはサラリーマン本人の医療費窓口負担3割への引上げ撤回、大胆な新産業創造・新子用創出策、中小企業・雇用に対するセーフティネットの充実などの施策を改めて提示した。

 角田議員はまた不良債権処理の解決について、民主党が提案する「金融再生ファイナルプラン」に基づいて最終処理を進めるべきだと指摘。再生が期待できる中小企業は大企業向けのマニュアルとは明確に区別し、それぞれの実情・実態に即した方策をとるよう求めた。また、地域への円滑な資金提供を促すため、民主党が提案している金融アセスメント法の制定を要請。中小企業の実態に応じた金融検査体制の確立など、きめ細かい対応の整備を求めた。竹中金融・経済財政担当相は「金融機関へも中小企業への資金提供の一層の円滑化を繰り返し要請している」などと、何ら進展しない答弁を繰り返した。

 雇用対策をめぐっては「新しい雇用創出型の雇用対策」の必要性を指摘。旧来の公共事業に代えて、介護・医療、保育、教育、環境保全などの公的社会的事業を雇用創出事業に組み替え、100万人以上の雇用創出量を見据えた対策、中小企業の雇用を確保する大規模な人材育成策、ワークシェアリング促進等による4%台失業の目標設定の必要性などを、坂口厚労相に提示した。

 角田議員は最後に小泉首相に対し、「大言壮語により国民に幻想を与えてその地位についたと思う。あなたの得た天下は虚構の天下。民を失えば天下を失う」と断じた上で、今こそ衆議院を解散し国民の信を問うべきだと迫り、総選挙となれば国民は民主党中心の政権を樹立することを確信する、と述べて質問を締め括った。


平成十五年二月四日(火曜日)

○角田義一君 私は、民主党・新緑風会を代表し、総理の施政方針演説に対し、総理並びに関係大臣に質問を行います。

 冒頭、御病気療養中の天皇陛下の一日も早い御回復を心からお祈り申し上げます。

 また、スペースシャトル・コロンビア号の事故でお亡くなりになられました七名の方々に対し、心から哀悼の意を表します。

 さて、総理、苦しくてどうしようもない、先の見通しが全く立たない、この国の流れを変えてほしい、この国民の声が果たしてあなたの心に届いているでしょうか。この切実な言葉に耳を傾けなければ、政治は必ずや国民からの信頼を失い、議会制民主主義はその根幹から揺らぐことになります。今、政治に何ができるか、我々は謙虚に自らの胸のうちに問うべきであります。国民が苦しんでいる今こそ将来への道筋を付ける、これが政治の使命であります。

 しかるに、総理の行っていることは、今すぐにでも実現できそうな、もっともらしいことはおっしゃるが、その実は、国民から夢と希望を奪い、情け容赦なく弱者の切捨てに徹するという恐るべき政治であります。その結果、不況は長引き、日本は失業倒産列島と化し、国全体が閉塞感で満ち満ちております。

 今まで、あなたは一発型のスローガンを並べ立ててきましたが、その公約はことごとく裏切られ、ほご同然であります。もはや残っているのは、小泉改革に反することをしたら私が自民党をぶっ壊す、これぐらいしかありません。しかし、あなたがぶち壊しているのは、日本経済であり、国民生活そのものであります。

 特に、経済政策の迷走ぶりは明らかであります。総理の公約だった国債三十兆円枠やペイオフの実施というシナリオもすべて崩れ去りました。公約が守れなかったのだからそれなりの責任を取るというのが筋であります。

 しかるに、総理は、公約破りは大したことではないと開き直っています。全くあきれ返って二の句が継げません。大したことではないと居直っているあなたこそ大した総理大臣ではないということじゃないですか。この国を、国民を疲弊させたのは、総理、あなた自身であります。総理は、経済失政の責任を取って即刻退陣すべきであります。

 小泉失政の結果、今、日本は重大な危機に直面いたしております。危機打開のためには、その前提として、まず政治への信頼の回復が第一であります。

 しかるに、政治と金をめぐる問題に関して、小泉内閣になっても相変わらず与党周辺からスキャンダルが噴き出しています。先日も、公職選挙法違反容疑、収賄容疑で自民党長崎県連の前の幹事長が逮捕され、ゼネコン汚職であっせん収賄罪に問われた中村喜四郎元衆議院議員の実刑が確定しています。これらの事件は、自民党が政官業癒着の旧態依然とした体質であることの証左であり、自民党政権では真の政治改革ができない根源的な理由と言えます。

 真の構造改革とは、正に政官業癒着構造の根源である自民党をあなたの公約どおり解党させることじゃないんですか。解党させる意思も能力もないのなら、大言壮語は吐かないことであります。

 総理は、政治改革についても、スローガンばかり掲げ、具体策を打ち出すことができないでいます。かつてない政治不信解消のため、いかなる方策を講じようとなさるのか。我が党が主張する公共事業受注者及び利子補給対象の融資を受けている法人からの献金禁止を含め、具体的な総理の答弁を求めます。

 小泉総理、あなたは、改革なくして成長なしと繰り返し構造改革の推進を最優先課題として取り組んでこられました。ところが、ここに来て、あなたの構造改革の実態がだんだん明らかになってきました。

 一昨年の骨太方針の中で、あなたは自らの構造改革を創造的破壊であると言っておられました。しかし、実際は、国民生活を破壊することには人一倍熱心であるが、生活の場を創造することについては全くというほど熱意が感じられません。民主党が主張する、仕事をつくりながら進める構造改革とは似て非なるものであります。構造改革の名の下に、政府自らが破壊者となって多くの人々の生活を不安に陥れているのが現実であります。

 国民の安心と生活の安定を支えるべき政府自らが率先して国民の暮らしを破壊するようなことは、言語道断であります。これで経済の構造改革と言えるのでしょうか。国民から見れば、正に破壊すれども創造せず、これがあなたの進めている構造改革の手法なのであります。あなたの手法を貫けば、デフレがますます深刻化し、経済が収拾の付かない混乱状態となることは必至であります。

 総理、あなたの政策の成果によってつくり出されたもので目をみはるようなものが果たしてありますか。政府公約の五百三十万人雇用増は一体どこへ行ったんですか。結局、あなたは、政官業癒着による既得権を守り、小泉内閣の延命を図るため率先して国民生活破壊を進めているのが実態ではありませんか。小泉無免許運転、竹中ペーパードライバーによる運営で、国民は命を落としたり傷だらけになっているのであります。小泉構造改革とは、大言壮語、完全な偽物だったと断ぜざるを得ませんが、総理の御所見をいただきたい。

 小泉構造改革は、強きを助け弱きをくじく本末転倒の内容となっています。かつて、橋本内閣は、国民負担増を強行し、不況長期化のきっかけをつくりました。そうした過去の失政を教訓とすることもせず、小泉内閣は同じ過ちを繰り返しています。
 医療費患者負担の引上げ、年金給付の引下げ、介護保険料率の引上げ、雇用保険給付のカットなど、社会保障面で国民に多くの負担を押し付けるだけでなく、発泡酒税やワインに対する増税、たばこ増税、配偶者特別控除の縮減など、大衆増税をもくろんでいます。さらには、この不況時に赤字法人をねらい撃ちにする外形標準課税を打ち出し、財務大臣などが消費税増税に言及するなど、小泉内閣の経済音痴ぶりには開いた口がふさがりません。

 私たちは、デフレを克服し経済を再生するために、税金の間違った使い方を改め、限られた貴重な税金を、将来不安を解消しつつ、眠っている需要とこれに対応する供給力を掘り起こすことに集中投資すべきだと考えます。歳入面も含めた抜本的な予算の構造改革によって国民の不安感、閉塞感を払拭し、将来への期待と安心感を醸成していく以外に日本を再生させる道はございません。

 しかるに、平成十五年度の政府予算案は、過去の失政を反省することもなく旧態依然とした内容を踏襲しており、不況、デフレを加速するものと断ぜざるを得ません。

 私たちは、潜在的需要を掘り起こすこと、将来不安の解消を図ること、仕事を生み出すこと、地域の個性を生かすこと、必要な資金を循環させること、以上の五つを経済政策の基本に据えて予算案を編成し直すべきだと考えております。

 具体的には、サラリーマン本人の医療費自己負担割合の三割への引上げなど、安易な国民負担増を撤回すべきであります。さらに、大胆な新産業創造、新雇用創出策、中小企業、雇用に対するセーフティーネットの充実などを盛り込むべきであります。公共事業の省庁別、事業別シェアはほとんど変わっておらず、もう一度配分し直すべきではありませんか。この際、環境、福祉、子育て及び新エネルギー、ナノテクなど新技術などに関連する分野に集中投資してもいいのではないですか。

 以上の視点に立って、厳しいデフレ不況脱却に向けて予算を組み替えるべきであります。何が何でも原案のままで予算を成立させるおつもりですか。予算委員会の審議、国民各層の意見を聞いて柔軟に予算修正に応ずる度量をお持ちかどうか、総理の答弁を求めます。

 あなたの構造改革のもう一つの重要な柱である財政構造改革についてはどうでありましょうか。税収は歳出の半分しか賄い切れず、また、新規国債の発行額は三十六兆円を超えるなど、財政は戦後最悪の状況となっております。

 総理は、デフレ経済の脱却を目指しつつ、二〇一〇年代初頭のプライマリーバランス黒字化の目標は堅持するという極めて厳しい選択を自らに課せられました。この困難な状況をどのような哲学で乗り切り、プライマリーバランスの黒字を実現されるおつもりか、その具体的手法とタイムスケジュールを示してください。答弁を求めます。

 日本の銀行は、この十年間に百兆円になんなんとする不良債権の処理を行ってきました。しかし、バブル期の不良債権の処理はほぼ終わったというのに新規の不良債権が発生し続け、その残高は減っておりません。不良債権処理の問題は、デフレ圧力の高まりを極力回避しつつ、いかに新規の不良債権を削減していくかであります。

 現在の金融システム不安の本質は、大手銀行が現実には過少資本に陥っていることにあり、この結果、中小企業等に対する金融仲介機能が失われ、経済再生の大きな妨げとなっているのであります。

 私は、不良債権問題解決のためには、民主党の提案している金融再生ファイナルプランに基づいて最終処理を進めていくことが必要であると考えます。その際には、再生が期待できる中小企業については大企業と一律のマニュアルによることなく明確に区分し、それぞれの実情、実態に応じた方策が取られる必要があります。また、地元地域へ円滑な資金供給を促すため、民主党が提案している金融アセスメント法の制定も欠かせないと思います。

 現時点で不良債権処理を加速すれば、デフレ圧力は更に強まり、貸し渋り、貸しはがしに拍車が掛かるという悪循環に陥ります。中小企業経営者の中には、自らの命を絶って生命保険金で事後処理をする人や保険を解約して何とか生き続けている経営者も多く、生き残りを懸けて壮絶な闘いをしているのであります。

 中小企業への貸し渋り、貸しはがしを食い止めることこそが不可欠であり、中小企業の実態に応じた金融検査体制の確立など、中小企業を生かすきめ細かい対応が必要であると考えます。竹中金融担当大臣の見解を伺います。

 今回、政府は、不良債権処理にもう一つ新たな器を加えようとしております。産業再生機構は、銀行の不良債権処理の加速と事業再生を両立させようとする仕組みのようには見えますが、依然粗ごなしの構想の域を出ておりません。不良債権の処理に必要な企業再生なのか、産業構造の転換を視野に入れた産業再生なのか、あいまいであります。また、今回のスキームは、大企業の延命のみを図り、再生可能な中小企業に全く配慮がなされていない点で問題があると私は考えます。

 果たして、この産業再生機構によって不良債権問題が解決をし、銀行が本来の機能を取り戻すと確信しておられるのでしょうか。総理の見解を伺います。

 シャウプ勧告以来の改革を目指すと大見えを切った税制改革についても、全く期待を裏切るものでした。取りやすいところから取り、家計に負担を押し付ける大衆増税と断ぜざるを得ません。景気浮揚の策としても全く評価に値しません。

 今後の税制については、日本経済が活力を取り戻し、中長期的に成長力を高めるためにどう改革すればよいのか、ここに照準を合わせて内容を固めていくべきであります。まずは、デフレ不況克服に資する税制の実現に全力を傾注すべきです。民主党が従来から主張してきた住宅、自動車、教育費等を中心に、キャッシュローン以外のすべてのローンに係る利子を所得控除するローン利子控除制度を創設すべきです。さらに、新しい社会活動、雇用の担い手になるNPOを支援するために、使い勝手の良い税制を確立すべきだと思います。これらの点について、塩川財務大臣の見解を求めます。

 次に、雇用対策について伺います。

 政府の経済見通しでは、二〇〇三年度の失業は本年度より更に悪化し、失業率は五・六%と、戦後統計開始以来の最悪に陥るとしています。しかし、予算案には、再就職支援など消極的なセーフティーネット策は見られますけれども、失業者を減らす積極的な雇用対策をうかがうことはできません。しかしながら、最近は失業者が増え、二〇〇二年春から三百五十万人前後、失業率は五・四%の最悪値を続け、世帯主の失業者は百万人に達しています。

 失業問題は本質的には人間の尊厳にかかわる問題であります。この雇用失業の悪化は、失業者本人と家族に精神的、家計上の苦痛を与え、社会的には生活扶助世帯の増大、ホームレスや自殺者の増加などの多くの問題を生み出しています。そして、マクロ経済としては消費の萎縮を生み、消費不況を長期化させています。また、財政面では、雇用保険の破綻、国の支出増、税収の落ち込みをつくり出しています。

 失業を減らす雇用対策は、これら社会、経済、財政問題を解決するものであり、経済政策の基本の柱とすべきものであります。経済政策の最も重要な柱に雇用対策を据えるべきと考えますが、総理の所信を承ります。

 新しい雇用対策の第一として、積極的に雇用をつくり出す対策を政府が実施することを求めます。それは、旧来の公共事業に替えて、国民が求める介護、医療、保育、教育、環境保全などの公的、社会的事業を雇用創出事業に組み替えて、百万人以上の雇用創出量を目標に据えた対策として実施することであります。

 第二の新しい雇用対策として、中小企業の雇用の空洞化を防止し、日本の雇用を維持する人材育成策を実施すべきであります。我が国の雇用は中小企業がその七割を支えてきましたが、近年、中小企業の雇用吸収力は製造業を中心に低下してきています。

 その原因は、不況の長期化、中国など途上国との競争の激化と工場の海外移転、大手企業の下請構造の変化、不良債権処理による銀行の貸し渋り、貸しはがしが影響しています。中小企業は日本の雇用の受皿であります。その中小企業における雇用縮小を防止し、中小企業の活性化を図り、雇用を拡大できる対策を取らねばなりません。

 その対策として、中小中堅企業の技術、技能の引上げを目指し、失業者や新規学卒未就業者を中心に、一年程度の職業教育訓練を数十万人規模で企業委託又は公的訓練として実施し、中小企業が必要とする人材を計画的に育成し、中小企業の雇用を促す対策を行うべきであります。

 第三の雇用対策として、新規学卒者又は長期失業者に対し、トライアル雇用の制度を積極的に推進すべきであります。

 二十四歳以下の若年者の失業率は、現在一〇%までに高まっています。この三月卒業予定の高校生の就職内定率は昨年暮れの調査で六〇・三%と過去最低となり、さらに、失業者のうち、一年以上失業している長期失業者は三割、百万人を上回るに至っています。

 これら新規学卒未就職者やリストラされた長期失業者を暫定的に雇用する企業には賃金助成を行うトライアル雇用を数十万人の規模で行い、人材を失業させる無駄を防止すべきであります。

 また、近年、正規の職員、従業員が減少する中で、パートタイマー労働者や派遣労働者など非正規従業員が急速に比率を高め、現在、その数は千四百八十三万人、全体の三〇%を占めるに至っています。非正規従業員の公正処遇を確保するために、パート労働者、有期契約労働者の雇用・労働条件について均等待遇を行う法律を早急につくるべきであります。

 第四の対策として、不良債権処理の加速、産業再生の実施では、雇用の安定を法律の目標に加え、労働組合、従業員の意見を必ず聞いて企業、産業の再生を行う必要があります。

 最後に、第五の対策として、労働時間を短縮し、雇用を維持、創出するワークシェアリングを推進をして雇用創設を図るべきであります。

 現在、連合と日本経団連の間でワークシェアリングの条件について協議していると聞いております。失業の無駄と産業活力への悪影響を考えるならば、政府が、積極的に労働時間短縮により雇用創設を図るワークシェアリングについて、政労使合意を取りまとめ、財政支援を含め強力に推進すべきであります。

 そして、これら五つの雇用対策の実施により、二〇〇三年度中には失業率を四%台に引き下げ、雇用の安定、創設に努めるとの雇用対策目標を小泉内閣は国民に約束すべきではないですか。坂口厚生労働大臣の所信を求めます。

 昨年十一月、政府が進める公務員制度改革に対して、ILO、国際労働機関が勧告を出しました。すなわち、公務員の労働基本権制約は国際労働基準に違反する疑いが強いこと、職員団体を含む関係者との意見交換が不十分であることがその特徴ですが、極めて重い勧告だと思います。ILO勧告を受けての政府の対応について総理の答弁を求めます。

 また、仮にILO勧告を無視して原案どおりに法案作成を進めるのであれば、今後、大変な問題になってくるとも考えられます。

 総理、公務員制度改革は、職員団体など関係者の合意はもとよりのこと、広く国民的合意に基づいて進めていくべきものではありませんか。今後の政府案作成について総理の方針を伺います。

 外交問題について次にお尋ねいたします。

 小泉総理、私は、我が国外交は日本国憲法の指し示す理念と原則にのっとって展開されるべきであると考えております。

 憲法前文では、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」との言わば目標の前に、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること」、このことを日本国民の決意として掲げております。さらに、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」と明記しております。私は、この憲法前文にうたわれた考え方を基本に外交を進めるべきものと考えますが、総理に、外交に対する基本理念、基本認識についてまずお伺いします。

 昨年来、北朝鮮の核兵器開発問題、イラクの大量破壊兵器査察問題と米国のイラク攻撃の動きなど、国際情勢は緊迫の度を一段と加えています。この局面に的確に対応するためには、まずもって近隣諸国との友好関係の上に緊密な連携が必要であります。

 特に、北朝鮮の核をめぐる問題解決のためには韓国、中国との緊密な連携と相互理解、相互信頼が最も大切なこのときに、小泉総理は何ゆえ唐突に靖国神社を参拝されたのですか。幾人かの歴代総理は、靖国神社への参拝をいたしたいとの心情、私情を抑えて、国益のために、また中国、韓国、朝鮮、東南アジアの民衆の心情を理解して参拝を自重された方々もおられます。思い付きで突然参拝を強行するようでは、思慮に欠けると批判されても弁解の余地はございますまい。中国、韓国を始めとする近隣諸国からの批判を浴びたのはもとより、国内でも総理の外交感覚を疑う声が高まっています。

 総理の参拝の結果、日本のアジア外交が停滞していることに対し、どのように責任を感じておられるか、所信を承りたい。

 現在、韓国、中国、ロシア、国際原子力機構などが協力し、北朝鮮の核開発計画を断念させるため努力しています。米国も、北朝鮮が核開発を放棄し軍備を縮小すれば、北朝鮮を侵攻する意思のないことの文書化も検討するとしています。我が国も、関係諸国との連携を一層緊密にして、北朝鮮が核開発を断念し、国際社会の責任ある一員として行動するよう、外交努力を尽くすべきであります。

 各国が相互に特使を派遣するなど自らの国家の存亡を懸けて外交努力を重ねているのに、日本だけが独り蚊帳の外にいて佇立している姿は誠に情けない限りであります。日本外交の動き、顔が全く見えないのは残念の極みであります。

 拉致被害者と北朝鮮に残された御家族との再会が実現でき、御家族が一日も早く一緒に祖国日本で生活できるようにするために、停滞している日朝交渉をどのような手だてで再開されようとしておられるのか、総理にお伺いします。

 さらに、北朝鮮が国際的な常識に従い国際社会と接するよう、東北アジアの平和と安定を確固たるものとしていく視点から、日本、米国、韓国、中国、ロシアと北朝鮮による信頼醸成の枠組みの形成を実現すべきであります。北朝鮮が、この六か国の安全保障の枠組みが形成をされ、自ら核保有をする必要がないことを認めて核放棄をしない限り、我が国が国民の貴重な税金を使って経済支援をすることはあり得ないことを明確に北朝鮮に伝え、説得すべきであります。

 北朝鮮の核開発を断念させるためにいかなる外交的方策を取られるのか、総理の見解を求めます。

 続いて、イラク問題についてお尋ねします。

 去る一月二十七日、イラクに対する査察の報告がなされました。安全保障理事会は、更に査察を継続するのか、継続するとすればその期間はどの程度なのかを中心に熱い議論が展開されています。戦争回避を求めるフランス、ドイツ、ロシアなどとイラク攻撃を実行したい米英との対立が深まっています。

 米国のイラク攻撃が実行されれば、政治、経済など様々な面で世界を混乱に陥れましょう。まず、原油価格の高騰による世界経済への打撃であります。何よりも、武力攻撃が報復テロを招き、暴力が暴力を呼び、ビンラディンの思うつぼの不信と対立の世界になってしまうのではないでしょうか。

 米国の世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、米国がイラク攻撃を始めれば、イスラム諸国の反米感情の火に油を注ぎ、同盟国との間でも亀裂を生むだろうと予測されています。さらに、米国のイラク攻撃の本当のねらいはあるいは石油利権の確保ではないのかという疑いが、ロシアでは七六%、フランスで七五%、ドイツで五四%、イギリスでさえも四四%に達しているということです。世界の世論は戦争回避を求め、事態が文明の対立に至るのを懸念しています。

 米国のイラク攻撃の本当の目的は一体何であるのか。米国から日本政府はどのような説明を受けているのですか。また、もしイラク攻撃に踏み切った場合に、米国は日本に対し何を求めてきているのですか。その有無を、総理、明確にしていただきたい。

 昨年来、国際世論に抗し、国連憲章に違反してまで、先制攻撃と称し、米国が一国で攻撃に踏み切った場合、小泉総理は国民の理解、納得のいく対応方針を示すことができるのですか。武力を背景とした解決策への対応を模索するのではなく、憲法に示されたように「戦争の惨禍が起ることのないやうにすること」を決意した我が国としては、国連を始めとする国際社会の平和的解決を求める努力に対する協力を一層強化すること及び戦争回避のためにイラクに対し真摯な国連への協力を求めるなど、イスラム諸国からかねて寄せられている我が国への信頼を裏切らない息の長い外交が本来の姿ではありませんか。総理の認識をお尋ねします。

 それにしても、イラク問題に対する我が国独自のメッセージが世界に全く発信されていないのは一体どういうわけですか。米国が万一、国連の新たな決議もなしに戦争を強行した場合、日本は一体どういう対応をするのか、明確な見解を総理から承りたいのであります。

 次に、原子力安全行政について質問を行います。

 去る一月二十七日、名古屋高裁金沢支部は、住民が高速増殖炉原型炉「もんじゅ」設置許可の無効確認を求めた行政訴訟に関して、一審の判決を覆し、設置許可を無効とする判決を下しました。今回の判決は、単に技術の在り方のみが問われたのではありません。原子力行政の在り方そのものが問われたものと言わざるを得ません。

 判決は、国の安全審査には見過ごせない誤りや欠落があったと指摘し、放射性物質が放出されたり炉心崩壊を起こしたりする危険性が否定できないと無効の理由を述べております。

 東海村ジェー・シー・オーの事故、電力会社による点検記録の改ざんの問題など、次から次へと原子力に関する重大事件が生じている今、こうした判決を重く受け止めるべきではありませんか。

 政府は、今回の判決をどう教訓として生かすのか、日本の原子力行政をどう再構築していくのか、総理の答弁を求めます。

 去る一月二十五日の深夜、私の郷里、群馬県前橋市内において暴力団絡みのけん銃乱射事件が発生をしまして、不幸にも市民数名が巻き添えに遭い、三名が死亡、一名が重傷を負うという惨劇となりました。亡くなられた方々の無念さを思うと、犯人に対して強い憤りが込み上げてきます。暴力団と称する者が自首したようでありますが、真相の解明はこれからであります。

 最近の日本の治安状況は極めて悪化しています。複数犯による強盗殺人事件の多発、ATM自動入出金機器をパワーショベルで破壊し、金員を強奪するなど、従来見られない多数犯による凶暴、悪質な犯罪類型も生まれています。

 警察庁によれば、殺人や強盗など重要犯罪は、昨年、二万二千件余りで、検挙率は何と五〇・二%にとどまるという深刻な状況にあります。これほどの検挙率の低下の原因は那辺にあるのですか。

 私は、圧倒的多数の第一線の警察官が職務に精励している姿はよく知っております。警察は捜査を遂行する上で必要な国民の信頼を本当に取り戻したんでしょうか。はたまた、捜査能力は低下したのでしょうか。それとも、人員不足なのでしょうか。市民の抱える治安に対する不安を解消し、治安の危機を乗り切るために、総理は根本的にどんな対策を考えておられるのか、その所信を承ります。

 次に、司法制度について伺います。

 今次の司法改革は、利用者であり主権者である国民の立場に立つべく、極めて重要なものであります。とりわけ、公正で適正な充実した裁判が迅速に行われることは国民の待ったなしの期待でもあります。この国民の期待を一言で言えば、納得のいく裁判で速やかな権利の実現をということであります。

 これにこたえるために、基盤整備、手続改革、さらにはそのための予算措置なども不可欠と考えますが、具体的にどう進めるのか、総理の見解を承ります。

 総理は、就任時の所信表明演説において、長岡藩士小林虎三郎の米百俵の精神を引用されましたが、その後打ち出された政策や予算を見ても、その精神が見えてきません。長岡藩は、届けられた救援のための米百俵を、当座の窮乏を防ぐために用いるのではなく、将来を担う人づくりのための学校設立資金として用いました。

 今、総理は国民に耐えることのみを訴えていますけれども、今の痛みに耐えて明日を良くしようという本来の米百俵の精神に立ち返る必要があります。

 教育は未来への先行投資であり、人づくりなくして国づくりなし、また国家百年の計は教育にありという言葉を引用するまでもなくて、教育は国の基であります。総理自らも、資源のない我が国の発展は教育を重視してきた結果にほかならないと強調しておられます。

 これまで、全国的な観点から、教育の機会均等や教育水準の維持向上を図るために、国が教員給与費等について二分の一を負担する義務教育費国庫負担制度が我が国の教育制度の中で重要な役割を果たしてきたことは言うまでもありません。

 総理は、施政方針演説の中で、明治五年の太政官布告を引用されました。義務教育費国庫負担制度は大正七年に創設され、法律の変遷はあるものの、八十五年を経過し、現在に至っております。その義務教育費国庫負担法は昭和二十八年に制定され、その第一条には崇高な目的が規定されています。

 したがって、今後ともこの義務教育費国庫負担制度の根幹を堅持することが極めて重要と考えます。我が国を支える子供たちへの先行投資である教育予算全体を充実していくことが正に総理の言う米百俵の精神を実現するものと考えますが、総理の所信を伺いたいのであります。

 さらに、総理は、演説の中で、教育基本法の見直しについては、国民的議論を踏まえ、しっかりと取り組んでいくと述べておられます。しかし、現下の不登校の問題やいわゆる学力低下の問題、学級崩壊等の教育現場が抱える様々な問題について、総理は、教育基本法を改正すればすぐに解決する、教育が良くなるとお考えなんでしょうか。私はそんな短絡的なものではないと思っています。

 教育基本法は言わば教育の憲法であり、慎重に取り扱わなければならない。ここは、いま一度教育基本法の精神に立ち返り、教育現場に基本法の精神を生かしていくことが肝要である。問題の根源に迫る努力もせず、手っ取り早く基本法に手を付けるというやり方は本末転倒ではないかと思います。総理、今国会に教育基本法の改正を提出されるお考えはあるかどうか、明確に求めます。

 次に、農林水産業の再生、振興について伺います。

 今、日本の農林水産業は衰退しています。日本、そして世界は際限のない経済成長を求め、市場原理、効率優先の政策を推進してきました。その中で、農林水産業の担い手はいなくなり、農山漁村の過疎化が進み、農地、山林は放置され、荒廃しています。

 今、我が国は世界じゅうから年間五兆円以上の食料を買いあさっているんです。国内農地では生産を休み、耕作を放棄していながら、金で食料を買いあさる日本の食料政策は世界から強く批判されています。国際化が進む一方で、日本の農林水産政策は今大きな転換点を迎えているのであります。

 今、国際的には、WTO農業交渉が進められ、また自由貿易協定を締結するなど、自由化を促進する方向にあります。これにより市場原理主義が一層進めば、価格の安い農畜産物を手にすることはできるでしょうが、国土と環境を食い物にする資源の収奪、すなわち水を浪費し、化学肥料や農薬を多投することで土地を荒廃させ、家族農業と集落を崩壊させ、国民の命や自然環境より経済を優先させるグローバリゼーションによる勝者と敗者に分断する国際化農業が進みます。

 食料の六〇%以上を海外に依存する我が国は、今こそ生命と国土を大切にする、環境や自然と共生する食料政策、農林水産政策の確立を急がなければならないと思います。そのためには、消費者と生産者がまずよく理解し合うことが何よりも重要です。そして、国民は、自国の食料を中心にして命と健康を守るようにしなければならない。生産者は、環境を保全し、大地を汚染させず、持続できる農業生産へ回帰するべきであります。消費者の命と健康が守られ、同時に農林水産業の経営が安定しなければ、安全、安心を手にすることはできません。こうした哲学、理念に基づいた農政に取り組む意思はあるのか、総理の答弁を求めます。

 これだけ大きな課題が山積する中で、平成十五年度の農林水産予算は、環境保全の視点から、農林水産業の担い手が国民に安全、安心な食料を将来ともに供給できる体制づくりの方向性が示されているとは言えません。

 小泉改革はどこにあるんでしょうか。旧態依然とした省益優先、官僚依存のいわゆる政官業癒着から一歩も出ておりません。構造改革、農村振興と称する農業土木事業が二兆円を超えております。

 ところで、アメリカやEUなどの先進国における農業予算とは農業を産業として確立するために使われるものであります。その大きな柱が農民に対する直接支払であります。貿易自由化に対応する観点からも、日本の農林水産政策に国際的に大きな潮流である直接支払制度を確立することが焦眉の急であります。農林土木予算を大胆に削減し、所得補償へ割当てすべきと考えますが、総理の御所見を求めます。

 最後に申し上げたい。

 かつて、孟子は、その民を得ればここに天下を得と言っております。あなたは大言壮語により国民に幻想を与えてその地位に就いたと私は思います。あなたの得た天下は虚構の天下であります。民を失えば天下を失うのであります。真の抵抗勢力とは民衆そのものであることをあなたは御存じか。今、あなたがやるべきただ一つのことは、衆議院を解散し、国民に信を問うことであります。さすれば、本当にあなたが民を得て天下を得たのかはっきりします。

 いざ総選挙となれば、国民はいじめの自公保政権を何のためらいもなく弊履のごとく捨て去るでありましょう。そして、未来に夢と希望を持たせ、心をいやす民主党中心の政権を樹立するであろうことを私は固く信じています。政権交代こそ真の構造改革であることを申し上げて、私の代表質問を終わります。(拍手)

   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 角田議員にお答えいたします。

 答弁に先立って、一言申し上げます。
 このたびの米国スペースシャトル・コロンビア号の事故により犠牲となられた搭乗員の方々の御冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、御家族並びに関係者の皆様に衷心より哀悼の意を表します。

 政治不信解消の方策と公共事業受注企業からの献金禁止についてのお尋ねでございます。

 政治に対する国民の信頼は改革の原点であります。政治に携わる一人一人が初心に返って自らを厳しく律していかなければならないと考えております。自民党として、一連の政治資金をめぐる問題を重く受け止め、改めるべきは改めるという姿勢で政治改革に臨み、国民から信頼される政治を目指して努力してまいります。

 政治献金については、疑惑を招かないような仕組みを考えることが必要であり、昨年、あっせん利得処罰法を改正、強化するとともに、官製談合防止法を制定したところであります。

 公共事業受注企業からの献金については、野党四党から改正法案が既に国会に提出される一方、現在、自民党においても検討が進められているところであり、一歩でも前進するような措置を講じたいと考えております。

 いずれにせよ、政治資金の在り方の問題は、民主主義のコストをどのように国民に負担していただくべきかという問題であり、国民の納得する政治資金の在り方について、各党各会派において今後とも御議論いただきたいと考えております。

 小泉内閣の構造改革についての御質問でございます。

 私の内閣の構造改革が目指しておりますのは、簡素で効率的な質の高い政府の下に、自助と自律の精神で、国民一人一人や企業、地域が持っている大きな潜在力を自由に発揮できる、活力ある民間と個性ある地方が中心となった豊かな経済社会の実現であります。

 構造改革の断行に向けた私の決意にはいささかの揺らぎもございません。改革は道半ばにあり、成果が明確に現れるまでにはいまだしばらく時間が必要ですが、郵政事業への民間参入や住宅金融公庫の廃止、道路公団の民営化など、公的部門の縮小に向けた改革は着実に進んでおります。さらには、都市再生や構造改革特区など、地方や民間の意欲を生かした経済活性化に向けた取組は既に目に見える形で大きく動き出しております。

 こうした改革の取組を進めるに当たっては、雇用や中小企業のセーフティーネットには万全を期すこととしております。これらの改革は決して既得権を守るといったものではなく、民間活力の発揮や将来の国民負担の抑制などを通じて我が国の持つ大きな潜在力を顕在化させ、必ずや民間需要主導の持続的な経済成長につながっていくものと考えます。

 平成十五年度予算についてのお尋ねですが、平成十五年度予算におきましては、歳出改革の一層の推進を図るとの基本的な考え方の下、活力ある社会、経済の実現に向けて、予算配分の重点化、効率化に大胆に取り組んだところであります。

 具体的には、中小企業対策費については、創業、経営革新の推進や中小企業への円滑な資金供給を確保するための基盤強化等への重点化を図っているところであります。

 雇用分野については、将来にわたる安定的運営を確保するための雇用保険制度改革の実施のほか、現下の雇用失業情勢等を踏まえ、若年者の総合的な雇用対策の推進や早期再就職を促進するための施策などを盛り込んだところです。

 公共投資関係費については、公共投資全体の規模について、前年度予算から三%以上削減しつつ、都市の再生や地方の活性化など、雇用、民間需要の拡大に資する分野へ重点配分を行っております。

 環境分野についても、循環型社会の構築、地球温暖化問題への対応などに資する予算に重点化を図っているところであります。

 福祉分野については、待機児童ゼロ作戦の推進などの少子化対策、グループホームの拡充など、各般の施策を推進することとしているところです。

 新エネルギー分野については、燃料電池やバイオマス等の活用による新エネルギーの実用化に向けた研究開発事業を推進することとしております。

 ナノテクについては、基礎的、先導的な研究開発や産業化を視野に入れた研究開発等を推進しているところであります。

 なお、医療費自己負担割合については、国民皆保険を将来にわたり堅持していくために、患者、加入者、医療機関といった関係者がひとしく負担を分かち合っていく必要があり、これにより安定的で持続可能な制度を維持していくことは、結果的に国民全体にとってプラスになるものと考えております。

 以上のように、政府としては、民間需要主導の持続的な経済成長の実現に向けてこの予算、十五年度予算を編成したものと考えておりまして、予算の組替え、修正は考えておりません。

 プライマリーバランスの黒字化への手法とタイムスケジュールについてですが、我が国の財政状況は極めて厳しい状況にあるのは事実であり、日本経済の再生と財政の健全化に向け、歳出改革を含む構造改革の取組を更に加速することにより、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていくことが必要であると考えます。

 中期的な財政運営につきましては、先般閣議決定された「改革と展望―二〇〇二年度改定」において、二〇〇六年度までの政府支出規模の対GDP比は二〇〇二年度の水準を上回らない程度とすることを目指す、二〇一〇年代初頭にはプライマリーバランスを黒字化することを目指すとされたところであり、当面の財政運営に当たっては、こうした目標を踏まえつつ、民間部門の活性化と簡素で効率的な政府の実現を目指し、歳出改革を加速するなど、財政構造改革を着実に進めてまいりたいと考えます。

 産業再生機構についてですが、産業再生機構は、再生の可能性があるにもかかわらず債権者間の利害調整が困難である等の理由で民間だけでは再生が進まない企業に対し、債権の買取り等を通じて再生を支援するものです。

 産業再生機構の活動に当たっては、企業の単なる延命につながらないようにするとともに、その支援対象は企業の規模の大小で区別しないこととしており、中小企業も対象に含まれることとしております。また、機構の活動は、個々の事業の再構築、事業再編等を通じて全体として産業の再生に資するものであります。

 産業再生機構が民間の英知と活力を最大限に生かしながら業務を行うことは、産業の再生と不良債権の処理の促進による信用秩序の維持及び金融仲介機能の回復に資するものと考えております。

 失業を減らす雇用対策の実施についてですが、厳しい雇用失業情勢に対処し、国民の雇用面の不安を払拭することは国政の最重要課題であると認識しております。このため、構造改革を加速していく中で考えられる様々な影響に十分留意の上、雇用対策に万全を期すこととしております。

 政府としては、今般成立した平成十四年度補正予算及び平成十五年度予算において、早期再就職支援策に加え、若年者などの雇用機会の創出対策を盛り込むなど、十分な施策を講じていくこととしており、今後は平成十四年度補正予算の円滑な執行を図り、十五年度予算と併せ、切れ目のない対応を図ることが重要と考えております。

 ILO勧告についてのお尋ねでありますが、今回のILOの勧告は、人事院勧告制度等の我が国の法制度についての理解が十分でなく、またILOの過去の見解と整合しないと認められる部分もあると認識しているため、政府としては、我が方の見解について十分な理解が得られるよう、ILOに対し必要な情報提供を行うこととしております。

 公務員制度改革については、今後とも、職員団体と誠実に交渉、協議を行うとともに、国民から信頼される公務員制度の実現を目指して法改正等の検討を進めてまいります。

 憲法前文にうたわれた恒久平和に関する考え方を基本とする外交についてのお尋ねでございます。

 我が国は、従来から、日本国憲法の下、国際協調を貫き、我が国の安全と繁栄に不可欠である世界の平和・安定と繁栄の確保のために積極的に努力してきております。今後とも、そのような方針を堅持してまいります。

 私の靖国神社参拝と我が国のアジア外交についてのお尋ねがありました。

 中国及び韓国に対しましては、今回の参拝の趣旨につき必要に応じ説明し、我が国との友好は今後とも変わりないことを理解していただくつもりでございます。我が国は、北朝鮮の核をめぐる問題への対応を含め、幅広い問題について、韓国、中国等の近隣諸国と緊密に協力してきており、今後ともこれらの諸国との間で未来志向の友好関係を増進すべく取り組んでまいります。

 拉致問題と日朝国交正常化交渉についてでございますが、現在、日朝国交正常化交渉を直ちに再開することは困難な状況ですが、政府としては、日朝平壌宣言に基づいて、拉致問題を始めとする諸懸案を解決し、地域の平和と安定に資する形で国交正常化を実現するという基本的な方針に変わりはなく、引き続き関係国と緊密に連携しながら、様々な機会をとらえ北朝鮮側に対し問題の解決のための前向きな対応を求めていく考えであります。

 北朝鮮の核開発問題に関するお尋ねであります。

 政府としては、問題の平和的解決を図るべく、米韓を始めとする関係諸国及び国際原子力機関等の国際機関と緊密に協力しながら、北朝鮮に対して、核兵器不拡散条約の遵守を求めるとともに、核関連施設を再凍結し、すべての核兵器開発計画を放棄することを強く求めていく考えであります。

 イラク問題と我が国に対する要請についてでございますが、米国は、イラクが大量破壊兵器を自主的に廃棄し、関連安保理決議を履行する必要があるとの立場と承知しております。先日、ブッシュ大統領は、私との電話会談において、本件の平和的解決を希望しているが、イラクは査察に協力的でない、今後とも日本とは緊密に連携、連絡していきたい旨申し述べておりました。米国は対イラク軍事行動を決定したとは言っておらず、また我が国は具体的な支援要請を受けておりません。

 イラク問題に対する我が国の外交努力についてでございますが、このイラクの大量破壊兵器をめぐる問題は国際社会全体への脅威であります。イラクが査察に全面的かつ積極的に協力し、大量破壊兵器の廃棄を始め関連する国連安保理決議を誠実に履行することが重要でありまして、先般、川口外務大臣から在京イラク臨時代理大使に対し改めて我が国の立場を強く申し入れましたが、イラクが誠実に決議を履行するよう、今後とも我が国としての外交努力を継続してまいります。

 イラク問題に対する日本政府の立場と新たな国連決議についてのお尋ねでありますが、繰り返し明らかにしているとおり、我が国としては、安保理を始め国際社会が協調して毅然たる態度を維持すべきとの考えの下、イラクが誠実に決議を履行するように、我が国としての外交努力を継続していく考えであります。

 米国は対イラク軍事行動を決定したとは言っておらず、我が国としては、査察の状況、安保理の議論等、今後の事態の推移を注視して対応を判断してまいります。

 原子力行政についてお尋ねがありました。

 原子力行政は、何よりもまず安全の確保が大前提であり、さきの臨時国会においては、電力会社による点検記録の改ざん問題等の再発防止のため、安全規制の拡充等に係る法改正を行いました。今後は、その着実な実施と国民への説明により信頼回復に努めてまいります。

 「もんじゅ」訴訟については、先般上訴したところでありますが、引き続き安全確保を大前提に国民の理解と協力を得ながら原子力行政を進めてまいります。

 検挙率低下の原因とその対策についてでございますが、現下の治安情勢は、街頭犯罪や不法滞在外国人による犯罪の増加などにより検挙率が著しく低下しており、凶悪犯罪の続発などと相まって国民の多くが治安の悪化に不安を抱いていることは御指摘のとおりであります。

 また、国家公安委員長にも警察職員の綱紀粛正を指示したところでありますが、多くの職員が職務に精励する中で、不祥事が後を絶たないことは誠に遺憾に思っております。警察に対する市民の信頼回復は喫緊の課題であり、今後とも警察職員が一丸となって内部の改革に取り組むことが重要であると考えます。

 政府としては、世界一安全な国の復活を目指して、警察官の大幅増員など体制強化に努めるとともに、時代にふさわしい教育訓練や装備面の充実にも力を入れてまいります。

 司法制度改革についてのお尋ねでございます。

 第一審の訴訟が充実した手続の下で二年以内に終わることを目標として、今国会に裁判の迅速化のための法律案を提出します。

 この目標の実現には、裁判所や訴訟当事者などにもそれぞれ御努力いただく必要がありますが、政府としても、訴訟手続の整備、法曹人口の大幅な増加、裁判所及び検察庁の人的体制の充実を図るなど、必要な法制上、財政上の措置を講じてまいります。

 教育予算についてでございますが、我が国の発展にとって教育の役割は極めて重要であり、画一と受け身から自立と創造へという理念の下、確かな学力と豊かな心の育成を目指し、明日を担う人材が自らの意思と責任で多様な教育機会を得られるよう、教育改革を強力に推進することとしております。

 平成十五年度予算においては、活力ある経済社会の実現に向けた将来の発展につなげるため、重点四分野の一つ、人間力の向上・発揮の中に教育を位置付け、その充実を図ることとしております。

 義務教育については、国と地方の適切な役割分担が必要であり、義務教育費国庫負担制度については、教育の機会均等と教育水準の確保を図りつつ、地方の権限と責任を拡大する観点から必要な見直しを行うこととしております。

 教育基本法の見直しについてでございますが、御指摘の学力の問題や不登校など、教育現場が直面する諸課題に対して迅速かつ的確に具体的施策を講じていくことは大切であります。私は、教育改革を国政上の最重要課題の一つとして位置付け、確かな学力と豊かな心の育成を目指して、習熟度別指導などきめ細かな指導を推進して学力の向上を図り、また不登校問題に対するネットワークを整備するなど、諸施策の一層の充実に努めてまいります。

 一方、戦後半世紀を経て社会状況が大きく変化し、教育全般について様々な問題が生じております。勇気を持って新しい時代に立ち向かう人間を育成するために、画一と受け身から自立と創造へと教育の在り方を大きく転換する必要があり、教育の根本にさかのぼった改革が求められていると認識しております。このため、教育の根本を定める教育基本法について、現在、中央教育審議会において御審議いただいているところであり、今後、同審議会の答申を踏まえ、幅広く国民的な議論を深めながら、その見直しにしっかりと取り組んでまいります。

 今後の農政の展開についての哲学、理念についてのお尋ねがありました。

 農林水産業は、人の命と健康の基本である食を支えるとともに、資源の循環を担いつつ、国土や自然環境の保全、文化の伝承など、多面的な役割を果たしていると思い、極めて大事なものであると考えております。今後の農政の展開に当たっては、こうした点を十分に踏まえつつ、国民の理解を得ながら消費者を基点とした行政への転換を図ることを基本として取り組んでまいります。

 具体的には、食の安全の確保に万全を期すとともに、農業・農村の改革を加速するため、米政策の改革と農業経営の規模拡大や法人化を推進して、意欲と能力のある経営体を集中的に後押しします。さらに、自然に恵まれた農山漁村と都市との交流を進め、農山漁村と都市が豊かさを分かち合う体制づくりを進めてまいります。

 農業政策の転換についてでございますが、国際化が進む中、農政も国際的な潮流を踏まえた展開が必要となっておりますが、所得政策の導入等の農業・農村の改革に当たっては、我が国と諸外国の農業構造の違いなどにも十分配慮して検討を進める必要があると考えております。

 農業農村整備事業については、総額の抑制とともに、時代の要請に応じた見直しを進めてきており、今後とも食料の安定供給と多面的機能の発揮に向け、命、循環、共生の観点から、重点化、効率化を図ってまいりたいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

   〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 角田議員から、一問、中小企業金融についてお尋ねがありました。

 中小企業をめぐる金融環境、経済環境は依然極めて厳しい状況にあると認識をしております。このため、政府としては、やる気と能力のある中小企業への円滑な資金供給を確保するためにセーフティーネット対策を取りまとめ、現在、実施に移しているところであります。また、金融機関に対しては、中小企業への資金供給の一層の円滑化を繰り返し要請をしているところでございます。

 金融検査体制については、昨年、債務者企業の経営状態のより的確な把握を目的としまして、金融検査マニュアルの別冊、中小企業融資編を作成、公表し、現在その内容を検査の現場や債務者企業などに広く浸透させるべく努めているところでございます。

 なお、地域金融円滑化法についてでありますけれども、基本的に自主的な経営判断にゆだねるべき金融機関の業務内容を画一的な基準で評価、公表するということについては慎重に考えるべき点もあると考えております。

 いずれにしましても、現在、金融審議会におきまして、地域金融機関におけるリレーションシップバンキングの在り方について、年度内を目標に中小地域金融機関の不良債権についてアクションプログラムを作成することにしておりますので、その中で幅広く御指摘の点も踏まえて議論をしてまいりたいというふうに思っております。(拍手)

   〔国務大臣塩川正十郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(塩川正十郎君) 私に対しまして、まず、キャッシュローン以外のローンの利息を減免しろと、こういうことでございました。

 しかし、これは確かに消費には刺激になるかも分かりませんけれども、しかし課税の公平という大原則からいきまして、ちょっとこれはいかがなものかと思います。一生懸命、自分の資金で物を買っている人等を勘案いたしますと、ちょっと不公平な点があると思います。諸外国でも全然これは採用していないと思っておりますので、我々も御意見として聞いておきたいと思っております。

 それから、NPOの税制についてでありますけれども、仰せのように、今回、NPOをもっと活用してもらいたいと思いまして、二つの件で改正をいたしました。一つは、公益性の要件を緩和いたしました。これは御存じのとおりであります。それからもう一つは、みなし寄附制度というものを導入いたしまして、NPOの活動が容易に拡大できるように措置をしたということでございますので、せいぜい御利用をいただきたいと思っております。(拍手)

   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂口力君) 角田議員から雇用問題につきましての御質問をちょうだいしました。一問でございますけれども、中身は五項目ほどに分かれており、幾つかの内容を御提案をいただきまして、感謝を申し上げる次第でございます。

 雇用問題、総論として申し上げれば、そしてまた小泉総理流に申し上げれば、経済成長なくして雇用回復なしでございます。しかし、経済成長に役立つ雇用政策というのは何かということもまた模索をしていかなければならないと考えているところでございます。

 具体的には、今般成立をいたしました平成十四年度補正予算及び十五年度予算におきまして多くの面に着手をいたしておりますし、今後そのスピードを上げていかなければならないと考えております。

 地域に貢献する事業を行う法人を設立をし、三十歳以上六十歳未満の雇用の場、受皿でございますが、この受皿を創出をしました場合には支援措置の創設を行うと、いわゆる不良債権処理に対応いたしましたものでございます。

 また、緊急地域雇用創出特別交付金につきましても八百億円の増額をし、そして、今まで地方からいろいろ使いにくいというような御意見もちょうだいをいたしました。六か月で終わりになるのを、これを一年にならないかというような御意見もございましたので、そのいわゆる内容につきましても拡充、そしてまた充実をさせていただいて、より使いやすい形にさせていただいたというふうに思っているところでございます。

 それから、能力開発につきましても御提案をいただきましたが、民間の教育訓練機関、企業、大学等を活用いたしました職業能力開発の推進、そしてまた、いわゆる大学卒の能力開発ということにつきましても積極的に進めたいと考えているところでございます。

 また、若年者や中高年齢者、障害者などのトライアル雇用につきましての御提案もいただきましたが、これも重要な部分でございますので、その中に含めまして推進をしたいというふうに思っております。

 それから、短時間労働者の働き方に見合った法制、均衡処遇の取組の推進も行いたいというふうに思っておりますが、この分野はワークシェアリングにも関係をしたところでございまして、社会保障の問題、均衡処遇の問題、大変大事なところでございますので、ここを一歩どう進めるかということに今努力をしているところでございます。

 また、企業・産業再生の過程におきます企業による雇用の安定への配慮もいたしておりますし、最後に御提案いただきましたワークシェアリングの積極的な推進につきましても現在進めているところでございます。

 昨年一年間、経営側とそして労働者側とのお話合いを進めていただきまして、そして問題点といたしましては、一つは賃金の削減問題、これはなかなか難しいというお話と、それから均衡処遇の問題を、これが難しいという、今この二つに要約されてきております。しかし、このままにしておきましてはいけませんので、政府がこの中に割って入るという形で、是非ともこのワークシェアリングを前進させたいというふうに思っているところでございます。

 若干、本質から離れる可能性はありますけれども、特に時間外労働等の多いような企業を中心にしまして各産業別にモデルをつくりまして、そして先行的に一遍実施をしていただくということを十五年度からスタートさせたいというふうに思っております。そうした形で、経営者側にも、そして労働者側にも、やはりこういうふうに進めることが我々にとって両方ともプラスになる面があるんだということを御理解をいただけるようにしたいというふうに思っている次第でございます。
 ありがとうございました。(拍手)


2003/02/04

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