2003/10/01 |
156 衆院・予算委員会
平成十五年十月一日(水曜日)
午後一時一分開議
○藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。
この際、菅直人君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅直人君。
○菅(直)委員 一昨日の本会議に続いて、小泉総理中心に幾つかの点で意見を申し上げ、また御質問をさせていただきます。
きょうの午前中の質疑を私もテレビで拝見しておりました。我が党の枝野幸男政調会長、郵政事業、さらには年金制度、そして高速道路の問題、それぞれ我が党の考え方を明確に示しながら小泉政権の閣僚の皆さんと議論をさせていただきました。大変予算委員会らしい、いい議論ではなかったかと思っております。
特に年金制度については、なかなか国民の皆さんに説明をすることが多少複雑で難しいところもありますけれども、我が党の考え方をちゃんとパネルにしてお示しをいただきました。我が党の、民主党のマニフェストに盛り込むことにいたしております。
しかし、自由民主党の年金制度改革について、そういう案が出ているというふうには聞いておりません。坂口厚生大臣の私的な案が時折報道されておりますが、それもまだ必ずしも定かではありません。
きょう朝の議論を聞いていただければ、これまでに、例えば国民年金と厚生年金と共済年金に分かれていたものをすべて包括的な形できちんと提案をしているのは私たち民主党の年金改革案である、このことは国民の皆さんにも御理解をいただけたのではないか、改めて、小泉政権あるいは自民党中心の与党も総選挙を行うまでにはしっかりした案を国民の前に提示していただきたい、このことを申し上げておきます。
そこで、こうした話の流れの中で、まず小泉総理にお聞きをいたしたいと思います。
これは総理というよりも自民党総裁としてかもしれませんが、総選挙に当たって、政権公約、これから三年間、小泉政権をもし国民の皆さんが支持されればこういうことをやるんだ、こういう政権公約をいつ出されるのか、出されるおつもりがあるのか、そのことをまずお尋ねしておきたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 さきの自民党総裁選挙に際して私が展開してまいりました主張、公約、それに基づいて今党の公約を作成する準備を進めております。
総選挙については、いつ行うかということについては、私は、この段階で総理として言うべきではないと思っておりますが、そろそろ皆さんがその心づもりをしているということについては理解を持っております。
来るべき総選挙、そして来年の参議院の通常選挙、一年以内に行われるわけでありますので、私の総裁選において行われた主張をことごとく党の公約にするつもりでございます。
○菅(直)委員 ここに二〇〇〇年の自由民主党の党の公約があります。私も改めてざっと読ませていただきました。まさに見事な文章ですね。つまりは、どこにもしっぽをつかまれないように、努めます、努力します、推進します、拡充します、いついつまでに何をやるかということは全く書いてありません。
ここには、当時の選挙で自由民主党が出された全面広告があります。いいことがたくさん書いてあります。「自信回復」とか「景気回復」とか「国を想う心の回復」とか、それぞれいいことが書いてあります。しかし、これも、まさにこうあるべきだ、私たちを含めてほとんどの人が決して反対ではないことが並んでおりますけれども、いつまでに何をするかということは、残念ながら、端から端まで見ても一つも書いてありません。
総理は、解散をいつするかはこれから考えるといいましょうか、いろいろ、あうんの呼吸とか言われておりました。まさに総理の専権であります。しかし、少なくとも総理自身は判断ができるんですね。この臨時国会中に解散をされるとすれば、国会の場で、国民の前で正式に議論ができる一番の場が本会議であり、予算委員会であります。まさにこの場で議論をしていることが国民の皆さんに一番伝わるわけです。それなのに、まだ正式なマニフェストを出せない、年金制度という重要な問題についても自由民主党の案がない。まだ解散のことをはっきり言えないからそれは出せないんだという、そういう言い逃れでは済まない、このように思っております。
そこでもう一点。
このマニフェストをめぐって、超党派の若手の議員の皆さんが、選挙になったらこれをぜひ国民の皆さんに伝えるため、これまで選挙法上で若干グレーゾーンになっておりました資料配布について認める法改正を行おうではないかという動きがあります。私は、民主党としてというよりも、有権者、国民の皆さんにとってそのことは望ましいことだ、こう考えております。
自由民主党は、きょうのある新聞の報道によれば、余り自分たちの党に有利にならないからやめておいた方がいいんじゃないかという意見もあるそうですが、まさか小泉総理がそんな意見に加担されるとは思いません。小泉総理として、このマニフェストのいわば配布解禁について前向きに党を指導されるつもりかどうか、見解をお伺いしておきます。
○小泉内閣総理大臣 マニフェストと言おうが公約と言おうが、内容は同じだと私は思っております。政権公約を政党同士が国民に向かって訴えかける、これは当然のことであります。この予算委員会の場ではなくて、常に政治と政治家というのは日ごろの活動を有権者から注目されておりますので、政策並びに活動全般を問うのが選挙だと思っております。
この点については、今国会中で、それぞれの各党各会派が今議論をされている段階だと思います。それぞれの意見を調整されて、しかるべき結論が出ることを期待しております。
○菅(直)委員 マニフェストとこれまでの公約が同じであると総理が言われたということは、またこういうものを出されるつもりということなんでしょうかね。
さっき言いましたように、言葉が違うか違わないかは別として、従来の選挙公約というのは、どちらかといえば、こうありたい、こうしたいということは書いてあるけれども、そのためにいつまでに何をどうする、予算をどうやってつけるという、そういう期限や財源や制度の改革が明確でありませんでした。それを明確にするということで、今このマニフェストの議論がいわばされているわけでありまして、同じものをつくってくれとは言っておりません、違うものをつくっていただかなきゃいけないんです。
そこで、もう一つ申し上げます。
実は、二年半のこの小泉政権で、小泉総理の発言を聞いておりますと、私の言うマニフェストに近い公約をよくされております。
つまり、小泉総理は、歴代自民党総理の中では、割とはっきりと公約されますよね。つまりは、こういう抽象的な努力目標じゃなくて、いついつまでにこうします、こういうはっきりした目標や具体的な案を出されていると思います。
ですから、同じものを党の公約として出されることを期待しておりますが、ただ一つ、その小泉総理が約束した公約を守る保証があるのかどうか。これまで多くの公約を、まあ大したことはないといって、平気で破ってきた人でありますから、あえてお聞きをいたしておきます。小泉総理は、これまで破り続けた公約を今度は本当に守る気なんだ、そういうお気持ちがあるならば、国民の前でしっかりとその決意をお述べいただきたい。
○小泉内閣総理大臣 私は、今まで、公約について守ってきたつもりであります。経済社会情勢については、大胆かつ柔軟に対応してきたものもありますし、公約の基本路線は守ってきたつもりでございます。
これからも、公約について、各党それぞれ違いを出すということはいいことだと思っております。政党によって、期限を区切って明らかにする、額もはっきり示すということは、それぞれの政党によってどういう違いを出そうかというのは、政党独自の判断だから尊重します。
自由民主党は政権をとっております。毎年、予算編成によって具体的な財源も項目もはっきり提示して、実績を積み重ねておりますので、そういう点も含めて国民は判断してくれるものと思っております。
○菅(直)委員 そうすると、政権を持っていれば公約をする必要がないと聞こえますよね。つまり、毎年予算をつくっているんだからそれでいいじゃないか。つまりは、選挙のときに来年度の予算案が出ているんですか。
この十月に解散するとして、一昨日の本会議でも、四兆円の補助金については来年度の予算の中で盛り込むと言われました、その削減について。しかし、まだ予算案は出ていません。つまりは、白紙委任をしろということなんですか。それが、これまでのこういう公約という名の白紙委任の要請なんです。
それに対して、今回は、白紙委任ではなくて、それぞれの党が党首、つまり総理大臣候補を含め、あるいは総理大臣御自身を含め、党の中で一致した形で公約をできるかどうか。昨日、参議院で、上杉自民党議員の方から、郵政や道路についての民営化について、何か急ぎ過ぎではないかという発言があったと聞いておりますし、青木参議院幹事長は、従来から反対だと言われております。
果たして、自民党のすべての衆議院候補とともに、現職参議院の皆さんも、よし、これでいい、こういう形の、あえて横文字をやめるとすれば、政権の公約、公約を出すことができるのかどうか、もう一度きちっと国民の前でお答えください。
○小泉内閣総理大臣 公約はきちっと出します。そこで方針として、例えば、期限を区切ったものとしては、来年の国会に年金改革法案を出すということははっきり示しております。年内に取りまとめるということもはっきり申しております。道路公団民営化の法案も、来年に提出すると言っております。郵政民営化も、来年秋までには民営化案を取りまとめ、十九年から民営化できるような法案を出すとはっきり明示しております。
そして、中身でありますが、これは、国会議員多数おります。これからいろいろ議論していけばいいものであって、すぐ、選挙時だけに全部はっきり明示できるものと明示できないものがあるというのは、御承知だと思います。
議員は、すべてのことについて、四年間、それぞれの信託を受けて、大筋の方針のもとにそれぞれ議論をすることがありますので、そこはやはりお互いの政党の主張、個人の主張、そういうものを勘案しながら、選挙民の信託を受けてよりよい案をまとめていくのが政党だと思います。
中には、同じ政党の中でも意見の違うのがあると思います。それはそれとして、選挙民から審判を受けている議員でありますから、それぞれの主張を調整していく。中には、自分の意見とは違ったものが党の公約になる場合も、自民党も民主党もあるでしょう。しかし、大枠の中では、決まったことには大勢に従っていくというのが、これは政党政治の基本だと思います。
その点は、どういう問題について具体的な時期を明示するか、財源を明示するか、大枠を打ち出すか、それは各党の判断にゆだねて、それを選挙民がどう判断するかだと私は思っております。
○菅(直)委員 今、総理が言われたのは、いついつまでに法案を出すつもりだ、中身については一切触れられておりません。
では、その法案を出す前にもう一回衆議院選挙でもやるというんであれば、それで国民の皆さんに判断をしてもらうということもあるかもしれません。しかし、これで政権を維持するとすれば、総裁任期でいえば少なくとも三年は政権を運営されるおつもりでしょう。そのいわば初めての衆議院選挙に当たって、中身は言えないけれども、選挙が終わって政権が維持されたらいついつごろ出しますよということだけ言ったから、これで公約になります、公約というのはそういうものでしょうか。
私は、これは私たちだけではありません。別に党利党略だけで言っているわけでは全然ありません。つまり、国民の皆さんが、この二大政党に近い形で政権交代を争うときに、どちらの政党が政権をとっても、大きい課題についてはこうする、この約束を見て判断しようとされることができるためには、少なくとも大きな課題については内容を含めた公約が必要だ。いつごろまでに出しますと言ったんでは、白紙委任をしろと言っているのと違いないからであります。
そこで、さらにその前提として申し上げます。
野党のマニフェストと与党のマニフェストは少し性格が違います。与党は、あるいは小泉総理は、二年半政権運営をされているわけですから、その中で何をやったかという、いわば自己評価、自己検証が必要です。私たち民主党は、残念ながら、現在、野党の立場ですから、自分たちが主張したことがすべて実現はできておりません、政権を持っておりませんからね。
そこで、私が二年半の小泉改革を私なりに検証してみて、幾つかの特徴があります。第一に、大変官僚に弱い、中央官僚に甘い改革だというのが第一点。第二点は、弱肉強食型の改革だ。強い人がもっと強くなること、これは場合によっては必要な場合があります。しかし、弱い人に対して、本当にその痛みがわかった改革にはなっていない、こういう感じを強く受けております。
少し具体的に申し上げてみたいと思います。
本会議で、私が、事務の官房副長官の選任に当たって、霞が関のおきてに従ってまた旧内務省系の役所の事務次官経験者をそれに充てられた、結局は霞が関のおきてどおりですね、こういうふうに言いましたら、適材適所とかそういうことを言われておりました。本当に総理は、内務省関係以外の人も含めてだれにしようかと考えて、そして選ばれたんですか、それとも内務省関係者の中のいわば推薦を受けて決められたんですか、どちらですか。
ちょっと後ろから福田さん、この問題は総理が決められたんでしょう。福田さんが決められたんなら福田さん答えてください。
○小泉内閣総理大臣 今の御質問は、官房副長官のことですか。(菅(直)委員「そうですよ、事務の」と呼ぶ)この点につきましては、総合的に考えまして適材を起用いたしました。
○菅(直)委員 ですから、今申し上げたように、適材を採用されたというのはお聞きしましたから、その適材というのは、幅広く、内務省関係以外の人も含めて、あるいは官僚経験者以外も含めて選択をされたのか、その結果、偶然に内務省のいわゆるトップ経験者になったと言われるのか、それとも霞が関のおきてに従ってそうされたのか、そこをお聞きしているんです。
○小泉内閣総理大臣 小泉内閣が必要な施策を進める上で、識見も信望もある適材を起用いたしました。
○菅(直)委員 結局、こういうところに、人事にたけた総理でありますけれども、しかし、官僚のいわばトップ中のトップとも言われる人事については、そういうみずからの指導力が発揮された気配は全くありません。官主導、官僚主導政権そのものだということが、少なくとも見る人が見ればわかると思います。
あえてもう一つお聞きします。
総理大臣秘書官というポストが、一応形式上五人決まっておりますけれども、法律では三名になっておりますが、二名はいわば事務取扱だと思います。その五人のうち四人もが財務省とか外務省の出向のお役人からなっている。歴代の総理がそうであります。私は、細川政権以来、その近くに時折出ていって、何だかおかしな感じがしておりました。
つまりは、将来事務次官になる可能性の高い優秀な官僚の方が総理の秘書官というある意味では最も身近なところにいるということは、まさに官僚支配のもう一つの実は実態ではないでしょうか。このことに違和感を感じられたことは総理はありませんか。
○小泉内閣総理大臣 違和感を感じたことは全然ありません。
極めて優秀な秘書官に囲まれて私は恵まれているな、小泉内閣の方針に従って忠実に各役所等に指示を与えてくれる、また、それぞれの情報を私に入れてくれる、まさに政治が官僚を指導していく、そのための手足となってよくみずからの能力を発揮して、忠実に私の仕事を手伝ってくれると、よき人物、秘書官に恵まれたなと私は感謝しております。
○菅(直)委員 本当に、国民の皆さんによくわかりやすかったと思いますね。本当にわかりやすかったと思います。私は、率直に申し上げて、違和感を感じますね。
私がもし同じ立場に立ったら、少なくとも、秘書官をやってすぐ自分の役所に戻るという人を秘書官には任命しません。それでは官僚主導になってしまうからです。
本会議でも申し上げましたが、私は、官僚一人一人の人の能力を決して疑うものではありません。戦前の陸士、海兵を出た優秀な職業軍人、地域でも最も頭もいい、体力もある人がそういう人たちになりました。しかし、組織として陸軍、海軍は、御本人たちもそうでしたけれども、日本だけではない、多くの国々の人たちを死に追いやった、大きな間違いを犯しました。今の官僚組織も私はそう思っています。
我が党にも官僚出身の優秀な仲間がたくさんおりますし、次の選挙でも我が党から若手が何人も立候補する準備をしてくれております。
しかし、組織になったときに何が間違っているか。ただ一点です。ただ一点。それは、国の利益や国民の利益よりも自分たちの役所の利益、天下り先の利益、そしてそれとつるんだ族議員の利益を優先する、この一点が間違っているわけでありまして、そういった意味で、総理が、最も適任者が秘書官に、周りにいてうれしいと言われているのは、今の官僚主導政権が心地よいということと私には聞こえましたが、国民の皆さんの御判断に任せたいと思います。
そこで、もう一つ申し上げておきます。
よく小泉総理は、特殊法人に対して補助金をカットしたとかいろいろ言われますけれども、例えば、先日も、ある国立大学の学長とお会いいたしましたら、国立大学が独立行政法人になったときに、それぞれの大学に二十名からの官僚の皆さんが事務官として入ってくる、せめて十人ぐらいにしてもらって、あとの十人は、教授、助教授のいわばサポートをする、そういう秘書業務の人をそれの費用で充ててもらえるといい。まあ、竹中さんは大学におられたから、そういう大学の雑務が、私立もそうかもしれませんが、国立では大変多いそうです。その学長、理科系の学長でありましたけれども、七割、八割、一般の人でも六割ぐらいの仕事が大学の管理運営の仕事だと言われておりました。
しかも、なぜそんなに多いかというと、官僚の天下った皆さんが、形式、教授会が決めたという形をとるために、たくさんの会議をセットするんだそうであります。ですから、会議から会議に追われていて、学生を教えたり研究をする時間が半分もとれない、これが実態であります。
幾ら小泉総理が名目的に特殊法人の費用をカットしたからといっても、この独立法人等に振りかわっただけで、天下りも振りかわっただけで、効果が出ていない、私はそう思いますが、総理、いかがですか。
○小泉内閣総理大臣 一部に、独立行政法人に変わって、現状が大分変わって戸惑っている方もおられると思いますが、全般的に見れば、これは近来にない大改革だと評価される方もたくさんおられます。
管理職的な立場に立ちますと、すべて研究職に没頭するわけではございません。政治家でもそうだと思います。政策活動だけではありません。選挙区の活動、地元の方々のいろいろなお世話、社長と小使を兼任しているようなのが各議員の立場じゃないでしょうか。できれば政治活動に専念したいと言われても、そういうわけにはいかないのがそれぞれの立場の方なんです。
私は、そういう点も考えて、研究者だったらば研究に没頭したいという方もおられるのは結構です。自分は学長に向かないな、むしろ研究者、管理職的な立場に向かないなと言われる方もおられるでしょう。しかし、学長になれば、研究だけあるいは教育だけという立場に立っていられないのも事実であります。それぞれの持ち味というのがございます。
そういう点で、今回、独立行政法人に変わって、大変革でありますので、戸惑ったり不安を持っている方もおられると思いますが、これは時代の流れで、より大学に自主性を持たせるという観点から高く評価されている方もたくさんおられるということもまた御理解いただきたいと思います。
○菅(直)委員 やはり総理は余り実態を御存じないようですね。私が話を聞いたのが学長ということであって、私が申し上げたのは、一般の教授、助教授がそうだと言っているんです。
そして、まあ私も、大学の後輩などでアメリカの研究所なんかに三十代で行っている人たちの話を聞くと、本当にそういう研究職の人には、若くてもアシスタントがついて雑務的なことはきちっとやってくれる。まさに日本が技術立国と言われることを考えれば、そういう実は……(発言する者あり)今、お隣から予算が違うと言われましたけれども、予算も重要。しかし、幾ら予算をつけても、そういう若い、能力が最もある人たちまでもが、いわば、一々パソコンを、細かく書類をつくるために何度も何度も打ち直さなきゃいけないという、これは現実ですからね。聞いてもらえばすぐわかります。おわかりでしょう、皆さんも。そういう実態があるということを申し上げているので、ただ形をつくったからそれで物事がよくなっていないということを申し上げております。
そこで、もう一点、特に申し上げておきたいと思います。
私は、この小泉改革が弱肉強食だということを申し上げた一番大きな理由の一つは、やはり中小企業に対して非常に厳しいですね。きょう午前中の質疑の中でも、これは与党でしたか野党でしたか、中小企業経営者の個人保証、連帯保証を見直すようにという議論がありました。
私も、大変近い後援者の一人が、バブルの時代に、銀行に勧められて、敷地が大きかったものですからマンションを建てた。それで、マンションに事務所が入って全部返せる計画だった。それが大幅に値下がりして返せない。とうとうそれを全部持っていかれてしまう。自分よりも、年寄りの親が二人いて、もうにっちもさっちもいかなくなって、私も弁護士さんなどを紹介していろいろフォローしていたんですけれども、最後は町金に手を出して、そして残念ながら命をなくされました。
そういうことを身近に見ていると、何か小泉総理の言う痛みに耐えてというのが、本当に痛みがわかって言っておられるのか、いや、マーケットに任せていれば強いものがどんどん伸びて、そして元気になるんだ、弱いものは仕方がないんだ、そういうふうに聞こえてならないんですけれども、総理は、本当にそうした中小企業の皆さんの実態を御存じで言っておられるんでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 私は、中小企業、いろいろな方々の御意見を聞いておりますし、国会の審議におきましても、与野党の議員の皆さんからもその苦衷なり苦心のところをよく伺っております。
改革を進めていく上において、中小企業政策の重要性も私はよく理解しているつもりであります。今言われたような本当に厳しい事情にあって、苦境に陥っている方の話も聞いておりますが、こういう現状に対しまして、少しでも中小企業の方々が、今までの手法からもっと柔軟に、いろいろな現状を打開するような手だてを講じてくれという話に対しまして、私は積極的に対応しているつもりでございます。
○菅(直)委員 もう一点、所信表明の中に、総理はプライマリーバランスの二〇一〇年初頭のいわゆるバランスの回復ということを述べられておりました。たしかこの表現は二年半前の骨太方針などでも、あるいは見通しの中でしょうか、入っていた同じ表現ですよね。二年半前からだんだんといわゆる財政再建の方向に進んでいって、そして二〇一〇年代初頭にそれを、いわばある目標である、一応の健全化の指標であるプライマリーバランスを回復するということに近づけるんだ、これが二年半の総理のいわば公約でした。
しかし、それから二年半の間、五合目から十合目の頂上に向かっていたのが、今六合目まで来たから、予定どおり十合目に行くのに二〇一〇年初頭になるというんだったらわかります。しかし、五合目から、この二年半の間、上に上ったんですか。それとも、プライマリーバランスからいえば、バランスがますます崩れていく、下に落ちていったんですか。どちらでしょうか。
先日、予算委員会で使ったこの同じ表でありますけれども、当初は、プライマリーバランスという、なかなか一般の国民の皆さんにはわかりにくいですけれども、一定の健全化指標に対して、現在、二〇〇一年でまだ二十一兆円のギャップがあった。これは認められましたよね、そのとき。そして、だんだんと減っていく予定だったのが、二〇〇二年には二十一兆が二十六兆五千億、二〇〇三年の当初予算では二十六兆九千億まで逆にバランスからより乖離している、離れてきているわけです。
この最大の理由は、税収が、総理が就任したときにほぼ五十兆、五十一兆程度あったのが、総理の経済政策の間違いで四十兆にまで下がってしまったために、その穴埋めに国債を、みずからの公約を破らざるを得なくなった。みずからというのは、もちろん小泉さんですよ。
そして、つまりは、五合目から十合目に向かっていたのが、五合目から四合目まで落ちちゃった。しかし、最後の目標だけは変わらない。こんな手品のようなことができるんですか。つまりは、二〇一〇年といえば自分の任期がとっくに終わっているから、目標を変えたら、それ見ろ、変えたと私などに言われるものだから、まあ、大分先の話だから同じ言い方をしておこう、こうだとすれば、こんな無責任な話はありません。
では、逆に、これだけ下がっていながら、つまりは差額が大きくなっていながら、なぜ同じ目標でいけるのか。では、来年から消費税でも大きく引き上げるというのなら、いい悪いじゃないですよ、いい悪いではなくて、まだ理屈がある程度見通せますが、いや、自分の間は消費税は上げません、何も上げません、しかし、プライマリーバランスだけはちゃんと目標値に達します、こんな手品のようなことを公約に書かれておりますけれども、どうやってここまで下がったものを同じ目標値でいけるのか、わかりやすく説明してください。
○小泉内閣総理大臣 後ほど竹中大臣から詳しいことはお話しされると思いますが、私は、このプライマリーバランスを回復する、黒字化するということは、今後の財政規律を維持することで大変重要なことだと思っていますし、今までもその方針というものに近づけるべく、いろいろ努力してまいりました。
しかし、率直に申しまして、五十兆円の税収があるならば、国債の発行は三十兆円以内でおさまるはずだと。それは、経済は生き物であります。だから、当時民主党が提案されました三十兆円枠を法律で縛れということに対して、いや、もっと柔軟に対応した方がいいから、法律で縛るということに対しては、私はお断りいたしました。
結果的に国債が三十兆円枠におさまりませんでしたけれども、今の状況で増税するような環境でもないということから、国債増発に踏み切りました。現在も政府の見通しについて非常に厳しい見通しだということは、私も理解しております。
しかし、こういう厳しい中でも、一般歳出に対しましては、今後、実質的に前年度以下におさめていこうという努力を続けております。あれをふやせ、これをふやせという要求の中で、ふやすべきところはふやす、減らすべきところは減らさなきゃいけないということで、この重点的な歳出改革によって、プライマリーバランス黒字化を目指していく努力は続けていかなきゃならないと思っております。
もとより、十年近く先をはっきり見通すということは確かに難しいことだと思いますが、今後、行政改革、財政構造改革あるいは規制改革を断行することによって、私は、経済の実情も好転していく、そして二〇〇六年には二%を超える名目成長率に持っていきたいという改革を今進めているわけであります。
そういう中で、現在も経済情勢というのは刻々変わってまいりました。株価一つとっても、予想は困難であります。下がると言う人もいれば、上がると言う人もいる。実体は後になってみなきゃわからないわけでございますが、企業収益におきましても最近ようやく明るい兆しが見えたということは、公的資本形成が少なくても、民間主導で業績が上がって設備投資をふやしていくという状況も見えております。
そういう中で、私は、この歳出改革を進めることによって、この黒字化、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを黒字化していく目標のもとに、予算編成なり改革を進めていくことが必要ではないかと思っております。
○菅(直)委員 言葉がなかなか国民の皆さんに説明が難しいプライマリーバランスでありますから、今の小泉総理の答弁がいかにインチキであるかということもわかりにくいところがあるかもしれません。
しかし、少なくとも小泉総理は、経済は生き物であると、まさにそのとおりです。その生き物であることを前提としていろいろな施策を考えて、五十兆円なりの税収見通しを立てて、三十兆の国債でおさめて、そして健全化の方向に進むというのが、二年半前のあなたの公約なんです。その生き物の制御に失敗したんです。失敗して、五十兆ではなくて四十兆しか税収がなくなったから、ますます借金をせざるを得なくなった。つまりは、ますます借金依存が二年半前よりも大きくなった。そう悪化をしたにもかかわらず、目標だけが変わらない、こういう手品のようなことは、だれが考えてもできないんです。それを国民に対してはあたかもできそうな形で説明をされるというところにこの小泉公約のいわば欺瞞性があることをはっきりと申し上げておきます。
そこで、最大の問題は何か。
私たちも、政権を担う段階ですぐに財政規模を縮小して緊縮財政に移っていいとは思っておりません。二%程度の名目成長率が定着するまでは規模は縮小できないということを本会議でも申し上げました。
しかし、中身は根本から変えることができます。中身は、今のような、各役所が縦割りでボトムアップで決めていって既得権益を守るような予算編成を根本から変えます。内閣の中に予算のための小委員会をつくって、まず大枠を決め、その中から各役所の仕事やお金の分担を決めていきます。ボトムアップではなくて、予算こそ総合的なところで、内閣自体の力でつくらなければいけないわけですけれども、このやり方では、今までのやり方を踏襲する限りは、せいぜい前年度比三%カットとか、そんな程度の変化しか望めないことは、もう皆さんもよく御存じだと思います。
それに加えて、大きな大きなむだが生じるのが、国からひもがついた形で地方に流されている補助金です。
ある村の村長さんが、圃場整備で何と九割補助金が来て一割が村の費用でやる事業であっても、村単独で一割の費用でやった方が村人のためになるということを、具体的にテレビなどで述べられておりました。つまりは、九千万の補助金で、一億円で事業をやって、何か大きな水路をつくる工事を村の外の事業者に頼むよりも、農地を持っている農家自身が、自分たちが持っている農作業の道具を使ってつくれば、一割の一千万でできる上に、手間賃は自分たち自身がもらうことができる。もちろん大きさは小さいけれども、自分たちの田んぼや畑にちょうど適切だと。
井上大臣などは農林水産省でそういうお仕事をされていたわけですから、実態をよく御存じだと思いますけれども、つまりは、こういう国から地方への補助金が大きなむだを生んでいるというところから、せんだっても二十一世紀臨調の知事の皆さんが、県経由の、県を通しての補助金の九兆のうち約八兆円を直接財源を移してくれという要請を、多分これは自由民主党にもされたと思います。我が党にもありました。
我が党は、その提言を受け入れて、県を通す補助金ばかりではなく、市町村に直接行っている補助金も含めて、国からの地方自治体に対するひもつき補助金を、原則として全部、当初は例えば一括交付金という形もありますが、将来は財源ごと移していく、こういうことを、これもマニフェストに盛り込むことにいたしております。
総理は四兆円についてのみ先日も言われましたけれども、結局のところ、今申し上げたような農業土木などを含めた公共事業にかかわる問題を含む、すべて合わせれば二十兆円、地方への補助金があると理解をしておりますが、その全体の改革、つまり、国の形を中央集権から地方分権に移していく、この改革を進めるつもりが総理には余り本気でないんじゃないでしょうか。
私は、そのことが実現すれば、例えば保育所とか介護保険のいろいろな施設とか、そういうものも、少なくとも知事や県議会の皆さんが望めば、もっともっと迅速に、基準も場合によっては緩和してでも、それを拡大することができ、働く女性の皆さんが育児や介護のために仕事を追われるようなことも、私はもっと少なくなる。画一的に国が補助金でやるからこそむだなことがふえるし、そうした地域に合わせた、きょうの朝の保育所も、一方では足らないけれども一方では余っているなんという話もありましたが、そういう形になってしまうんじゃないでしょうか。
総理に、本当に国の形を地方主権の形に変えようという意欲をお持ちなのか、お持ちなら、どういう形でやろうとしているのか、はっきり説明をいただきたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 私は、地方にできることは地方にという方針を具体化しようということで、三年間で約四兆円の補助金を削減していこう、そして、地方の交付税あるいは税財源の移譲というものを進めていくということで、方針を示しました。今後、この手順なり項目につきましては、十二月の予算編成に明らかになると思います。こういう方針というのは、必ずや地方が意欲を持って取り組む環境をつくっていくことにつながると思っております。
知事会の意見もよく聞いております。また、同じ県の中で知事の意見と市町村の意見とは違うところもあります。市町村会の意見も聞かなきゃなりません。
そういう点も踏まえまして、それぞれ、民主党も案をお持ちでしょうから、私は、できるだけ地方にできることは地方に任せていくことがいいなと。そういうことが今までなかなか難しかったものですから、補助金、交付税、税財源、一体で取り組もうということで、現実に方針を出してそれを進めようとしているわけでありますので、地方にできることは地方にという趣旨で、今後も改革を進めていきたいと思っております。
○菅(直)委員 地方にできることは地方でやれるように、ひもつき補助金を実質上全部移したらどうですかというのが私たちの提案だと言っているのに、四兆円を三年間で削減して移譲する、半分削減したら二兆円しか移譲しないことになりますよね。
二十一世紀臨調に集われた、私は改革派だと拝見しておりますが、その知事さんたちが自民党にも要請されたでしょう、総理。それに対しては、できませんとお答えになったんですか、それともお答えになっていないんですか、どちらですか。
○小泉内閣総理大臣 今後よく検討して、地方にできるだけの裁量権を拡大していこうということでございます。
○菅(直)委員 こういうのがマニフェストに当たらない表現ですよね。最善を尽くすとか、後の予算を見てくれとか。結局、項目まですべて具体化してその皆さんが要請をされた中で、何一つ答えていないわけであります。
そこで、この問題はまたこれからの他の議員の皆さんの議論にも任せるとして、外交、安全保障について少しお話をしたいと思います。
特に、イラクと北朝鮮の問題についてであります。
私は、イラクの戦争はまさに大義名分なき戦争であったと思います。総理は、大量破壊兵器が独裁国やテロ組織に拡散するおそれがあるからということを大義名分にしてアメリカの武力行使に賛成をされました。そして、最近、CIAが大量破壊兵器は見つからずという報告書を出す、こんなふうに報道されております。
総理は、二カ月前の通常国会では、いや、見つかるはずだ、このように答弁されております。総理は今でも、この大量破壊兵器がこれから見つかる、そう信じておられるんですか。またあのフセイン元大統領が見つからないからみたいな詭弁で逃げようとされるんでしょうか。
はっきりとこの点については、まさにイラクの戦争に対する、小泉政権のスタートの、国民に対する、いわば賛成をした根拠でありますから、国民の皆さんにきちっと説明をしていただきたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 私は、いずれ見つかると思っております。
現に、過去、大量殺人をイラクは行っております。化学兵器、大量破壊兵器、自国民に対してフセイン政権は行って、既に数千人あるいは数万人と言われる遺体なり遺骨が出てまいりました。そういうことから、私はいずれ大量破壊兵器は見つかると思っておりますし、今回のイラク戦争も国連憲章にのっとって支持したわけでありますので、私は、その点につきましては、民主党の菅さんの意見とは違います。
○菅(直)委員 アメリカの中でも、イギリスの中でも、この問題では、どうも大統領やブレア首相の国民に対する開戦当時の説明が少なくとも正確ではなかったんではないか、こういうことで大変な反発が起きております。我が国は、小泉総理の説明が大変うまいのか、それともその言葉のマジックに乗せられているのか、必ずしもそういう動きが大きくなっておりませんけれども、私は、今の説明は全く説明になっていない。
イラン・イラク戦争当時のイラクは、多分アメリカも応援をしていた時代だと思いますけれども、確かに大量破壊兵器を持っておりました。そして、その後湾岸戦争があって、さらにいろいろな時期がありますけれども、査察も行われ、直前にはかなり厳しい査察も行われて、そして、さらなる査察をやるべきだという我が党の主張に対して、総理は、もう戦争を始めることに賛成だと言われたという経緯があります。それを全部飛ばして、湾岸戦争のずっと前にあったから今でもあるんだと言われるのは、私は説得力に欠けていると思いますが、この点は国民の皆さんに判断をしていただきたいと思います。
そこでもう一点。このイラクの戦争で劣化ウラン弾が使われたと言われております。放射能被害が出ているんではないか。私も広島でイラクの現地から来られた医師にお会いをいたしました。この点について、総理はどういうふうに考えておられますか。
○川口国務大臣 劣化ウラン弾につきまして、アメリカ軍のブルックス准将が、アメリカ軍は少量を持っているけれども、それをイラクで使ったかどうかということについては何も言っていないということでございます。
それで、政府といたしまして、アメリカ軍に対して、米政府に対しまして、それを使ったかどうかということの問い合わせをいたしました。何回かいたしましたけれども、それに対しては、米軍としては、ブルックス准将が言ったように、米軍は持っているけれども、それは少量であって安全性に問題はないと考えている、それをイラクにおいて使ったかどうかということについては言わないという回答を得ております。
○菅(直)委員 今のは答弁なんですか、何ですか。単に事実関係の説明だけじゃありませんか。
劣化ウランというのは、総理は御存じですか。私も調べてみました、話を聞いて、電力会社の人からも。ウラン鉱から、原子力発電所とかそういうものに使えるような、いわゆる燃えるウランを抽出した後のウランのことを劣化ウランと呼ぶんだそうであります。そしてこれは、ウランというのは大変原子量が高いですから、比重が重いわけですね、その重いウラン鉱を使って、ウランという金属を使った砲弾だ。
一般的には、単にあるだけではそれほど放射能は強くないそうであります。多分、アルファ線だと聞いておりますけれども、余り飛ばないそうでありますが、弾頭として戦車に当たったとき、それが高熱を発して、いわば気化状態になって、空中に飛散して体の中に入る。そうすると、体の中に入った放射性物質は、外にあるものと違って、長年内側から放射能を体に与えますから、それでいろいろな被害が出ている。このように、少なくともイラクのお医者さんや、日本でもそういうことに関心を持っている方は言われておりました。
先日も、あるテレビ報道で現地の報告を、私もそれも拝見しました。お会いをしたのはもっと前ですけれども、イラクの方にお会いしたのは。広島で、あの原爆の記念碑で私はお会いをいたしました。
核兵器そのものでは全くありませんけれども、しかし、日本において、この被曝という状況は核兵器と似たようなことがあります。ぜひ総理にも、しっかり関心を持って、単に米軍が使ったかどうかはっきりしないという報告を外務大臣にさせるのではなくて、もしそういうことであれば、それは日本も、それこそイラク支援の一環として積極的に取り組むんだぐらいのことは言ってほしいなと思って申し上げたところであります。
そこで、さらにお聞きします。
ブッシュ大統領が今月来日をされると聞いております。総理は、その来日のとき、あるいは来日までに自衛隊のイラク派遣を決めるおつもりですか。
私たちは反対しましたが、法律はもう既にできています。当初は十月にも派遣すると言われておりました、当初はですね。しかし、最近は、選挙への影響を考えて、選挙前には派遣しない、あるいは現地状況が厳しいから派遣しないと聞いておりましたが、また、アメリカのいろいろな要請が強まって、やはり行かざるを得ないだろうといった声も聞こえてきます。
総理として、みずからこの場所で、非戦闘地域について、あれだけ元気よく、雄弁とはあえて申し上げませんが、答弁をされた中で、強行して通されたこのイラク支援法に基づく自衛隊派遣をやられるつもりですか。
私たちの姿勢は先日の本会議でも申し上げました。少なくとも、先制攻撃を加えて占領している米英占領軍に対して、その占領軍に後から参加するような形のイラク支援法に基づく自衛隊派遣には絶対に反対です。
しかし、人道支援という問題での費用負担は従来からあり得ると申し上げておりますし、また、間違った戦争であったと思いますが、それでもフセイン政権を倒した以上は、それにかわるイラク人による政権を、国連との協力のもとにいち早くそれを回復すべきだ。そういうイラク人が主体となった政権や国連からの要請があった場合には、私は、PKOあるいはPKF、あるいはそういうものを前提とした人的貢献、人的支援も前向きに検討していい、このように考えております。
このことを申し上げ、総理は自衛隊派遣について、国民の皆さんが一番心配されていることですから、はっきりとお答えをいただきたい。
○小泉内閣総理大臣 イラク支援法に基づいて、自衛隊派遣が必要だと思ったら、自衛隊を派遣いたします。政府職員が必要だと思ったら、政府職員も派遣します。民間人が必要だと思ったら、民間人でできる方があれば民間人も行っていただきます。
日本にふさわしいイラク人の人道復興支援、イラク人のイラク人による政府の国づくりに日本として努力を続けていきたいと思っております。
○菅(直)委員 というのは、今の答弁はどういうことですか。たしかあの法案のころは、派遣が必要だから法律をつくるんだと言われたはずですが、今はあれですか、派遣が必要なら派遣すると。
では、派遣が必要でないかもしれない、しかし法律だけつくったということですか、総理。
○小泉内閣総理大臣 私は、あの法案の審議の最中にも言っております。イラク復興支援、人道支援のために自衛隊を派遣しなければならないという法律ではない、自衛隊を派遣可能ならば派遣できるための法律だということを法案審議の最中からはっきり言っております。そこを間違えないでいただきたい。何でもかんでも自衛隊を派遣しなきゃならないという法案じゃないんです。
一般の人よりも自衛隊がすぐれた能力を持っております。できないことでも、自衛隊ができることがあったらば、イラクの復興支援のために、人道支援のために派遣することがいいという状況ならば、私は、自衛隊を派遣します。
○菅(直)委員 こういうのを普通は法匪と言うんですけれどもね。確かに法律はそのとおりになっています。ただ、わざわざあれだけの反対を押し切って出されたのは、必要だと考えるからそういう法律をつくられたというのは、そういうふうに国民は受けとめるのは当然じゃないですか。それは、必要でも初めからないんであれば、法律をつくる必要がないわけですから。
そういった意味で、我が党の修正案も、御存じのように、自衛隊の派遣を外した形の法案ならいいですよということを申し上げました。しかし、あえて自衛隊派遣を含む法案をつくられたわけですから、そういった意味で、国民の皆さんに対してミスリードしちゃだめですよ。幾ら防衛庁長官が首を振ったって、そういう詭弁で逃げようと思ってもだめです。
ですから、あえて申し上げますけれども、そうしますと、総理は、例えば今回ブッシュ大統領から要請があったときには、そのとき改めて検討するということですか、自衛隊の派遣について。
○小泉内閣総理大臣 私は、ブッシュ大統領との会談におきましても、日本としていかに協力できるかというのは、日本が独自に考える、主体的に考えるということをブッシュ大統領との会談でもはっきり申しております。そういう観点から、日本にできることを行う。
今、菅さん言われましたけれども、自衛隊の派遣には反対だ、人的貢献には派遣には反対していないというようなことを言われましたけれども、自衛隊が派遣すると危険で、一般の民間人の方が派遣されると危険でない、(発言する者あり)そういうケースもあるでしょうし、逆に、自衛隊だったらばより安全に十分な活動ができる、一般の民間人ではできないという分野もあると思います。
私は、そういう面で、日本にふさわしい貢献をする。何も、戦闘に参加しなさいというための支援法案ではありません。イラク人の復興人道支援のための活動でありますから、自衛隊であろうが民間人であろうが政府職員であろうが、日本にふさわしい貢献をする。人に言われてやるものじゃありません。日本が国際社会の中で責任ある一員として何が必要か、日米同盟、国際協調、この重要性をよく考えて、日本として主体的に判断したいと思います。
○菅(直)委員 ですから、その主体的な判断をお尋ねをしているんですが、主体的判断をする、主体的判断をすると言うだけで、主体的判断の中身が一向に聞こえてこないから、あえてこちらがお聞きをしているんです。
これ以上聞いても、小泉総理の主体的判断はブッシュ大統領との会談の後に出るんでしょうから、結局は、国民の前できちんとみずからの責任で、もう調査団も、岡本さんも行ってこられたんでしょう、一度は。そう言っていながら、そういうふうに言を左右にするというのは、私は、総理大臣として本当に潔さに欠ける、こう思います。
そこで、もう一点、話を進めたいと思います。
北朝鮮の問題についても一昨日の本会議で申し上げました。総理の訪朝によって拉致被害者が帰国をすることができたことは大変喜ばしいことだと思っておりますし、我が党も、さらなる関係者の帰国のために全力を挙げたい、この覚悟であります。
そこで、一つだけ、改めてお聞きをいたしておきます。
もう一年になるわけですが、この十月にも、現在帰国されている拉致被害者の家族の皆さんを日本に呼び返すことができるのではないか、こういう見通しもあちらこちらから出ております。総理として、今月中の帰国について、その可能性があるという見通しを持っておられるかどうか、その点をお尋ねします。
○小泉内閣総理大臣 拉致された御家族の帰国につきましては、いろいろ見通しやら可能性というものが報道で報じられているということは承知しておりますが、これは九月十七日以前にもそういう報道がなされたことがございます。
日本政府としては、できるだけ早く帰国させるように北朝鮮側に働きかけているところでありまして、期限を区切って、いつにという段階ではございません。
○菅(直)委員 それでは、きょうは、あるいは小泉総理と比較的長い時間議論をできるのは総選挙までにないかもしれませんので、少し時間をいただいて、総理の政治に対する考え方、あるいは私の政治に対する考え方、それぞれの考え方があると思いますが、それを私も表明しながら、総理の考え方もお尋ねをしたいと思います。
私は、総理のこの間の活動を見ておりますと、先ほども申し上げましたが、弱肉強食的な改革志向なのかなと率直に思います。すべてが悪いとは言いません。ある場面ではそれも必要かもしれません。しかし、それが政治の目的とは私は思いません。
私は、比較的若いころから、政治の目的というのは、国民の不幸、人々の不幸を最小化することが政治の目的だ、このように考えてきました。つまりは、幸福という概念は政治が関与することを超えた部分があります。例えば、好きな女性や男性ができたとか、それこそ総理にとっては、ワーグナーを聞いたりオペラを見られるのも大変幸福なことだと思います。しかし、政治が、これが幸福なんだ、これがあなたにとって幸福なんだとこれを押しつけることになると、ややもすれば独裁的な国になる、全体主義的な国になる。
ですから、私は、政治というものは、最終的には強制的な権力を使うわけですから、そういう意味で不幸になる要素をできるだけ少なくするという、そういう、いわば権力行使に対して抑制的な中で、しかし、はっきりした目的を持った権力行使が政治だと思っております。
こう言いますとやや消極的に聞こえるかもしれませんけれども、しかし、国民の不幸を少なくするためには、治安に対してしっかりとした体制をとる、あるいは日本の安全保障に対して他国が一方的に侵略できないような、そういう姿勢をとる、これはまさに最小不幸の観点からいっても当然やらなければなりません。あるいは改革の問題も、目の前の確かに痛みというものがたとえあっても、それがその次の段階での国民の不幸を少なくすることにつながるならば、それはそれを越えていかなければいけないこともあります。
と同時に、本人のみずからの責任でない形で、例えば地震で家が失われた、あるいは交通事故で親が亡くなった、そういうことによる、いわば本人の責任ではないところで大変厳しい状態に置かれたときには、私は、政治がきちっとフォローすることもこの考え方に沿った考え方だと思います。
今、中小企業が大変厳しい状態になる、先ほど申し上げたところも、確かにバブル時代の銀行の要請、銀行のいわば話があったからといって、判断をしたのは当事者かもしれませんけれども、相当部分は、本人のいわばそうしたことを超えた状況の中で厳しい状態に陥った人にはきちっとしたフォローをしなければならない、これが私の考える最小不幸社会。この最小不幸社会というものを、私は、私自身の考え方として次のマニフェストの一つの基本的なコンセプトとして盛り込んでいきたい、このように考えております。
総理はどういうふうに政治についてお考えなのか、御意見をお持ちだったらお聞かせをいただきたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 多くの国民を幸せにしたいというのは、どの政党もどの政治家も私は共通した考えだと思っております。
弱肉強食と言われますが、弱肉強食というのは、よく動物の世界で使われます。しかし、人間の世界は弱肉強食であってはならないと思います。
私は、動物が好きですから、動物園によく行きます。別にライオンだけ見に行くわけじゃございませんが、動物園に行ってよく感ずるんですが、確かに穏やかです。しかし、本当に幸せなんだろうか。強い動物に食われる心配はない。えさは毎日あてがわれる。そして、多くの人が見て、自由が束縛されている。一方、野生の世界は、自由だけれども、常に死の危険を感じながら生きていかなきゃならない。そういうことを感じますと、私は、果たして、動物園にいる動物が、野生の動物に比べて弱肉強食の世界でないから幸せであるとは言えない。
人間の世界は、弱肉強食であってはいけません。できるだけ多くの国民が、平和のうちに、みずからの持てる能力、持ち味を発揮できるような環境を整えていくのが政治の大きな役割だと思っております。まず平和と安全、そして治安等、できるだけ政府としてやらなきゃならない仕事がたくさんあります。さらに、社会保障につきましても、これは重要な政府の役割だと思っております。
そういう中で、弱者と敗者というのは違うんです。どのような時代にあっても、勝者と敗者というのが出てきます。しかし、敗者復活戦というのがあるように、一度や二度敗者になっても、敗れ去ることがあっても、次はやはり成功のチャンスがあるという、選択肢をできるだけ提供するのがこの社会では必要ではないか。
そういう意味において、私は、努力した方が報われるような社会にする。そして、一度敗れても、また次に成功するようなチャンスをできるだけ提供する。こういう、余り政府が干渉しないで、民間の力なり地方の特色なりを生かした、そして個人の能力がいろいろの場で試されるチャンスが提供されているような社会をつくるのが私は政治として大事だと思っております。
市場万能主義でもありません。かといって、共産主義社会みたいに、全部政府が、できるだけ多く政府が関与すればいいというものでもありません。どれもお互い調整しながら、それぞれが助け合いながら、みずからの持てる力を発揮できるような環境を整備していくのが私は政治として一番大事な役割ではないかなと思っております。
私は、民主党にしても自由民主党にしても、総論としてはそんなに変わらないんじゃないか。ただ、いろいろな手段、手法については、若干違うところがあるなと思っております。
○菅(直)委員 これは特に反論とかがあるわけではありません。総理としての表現であり、私としての表現であって、国民の皆さんにもお聞きをいただければと思って申し上げてみました。
私の残された時間が少なくなっておりますが、幾つかの点を一括して、我が党の考え方を申し上げて、見解を伺います。
政治改革について、我が党は、やはり国会議員の定数削減、衆議院において比例が今百八十でありますけれども、小選挙区制を強めるという意味を含めて、八十削減というものを提案いたしております。総理は賛成か反対か、まず一点、お聞きします。
また、一票の格差を二倍以内にする。このためには、各県に割り振られている一議席を外した比例配分にしなければいけませんが、これも賛成かどうか。成人年齢とともに選挙権年齢を十八歳に引き下げる、これについての御見解。
また、逮捕された国会議員、自民党関係者も多いわけですが、その歳費の凍結ということ。
さらには、公共事業受注官庁からの企業献金について、総理はそれを規制すべきだと言われましたけれども、結局、何一つなされてはおりませんが、それはどうされるおつもりか。政治資金の透明化に逆行する法案を与党が出されておりますが、私たちはその逆行には反対です。
以上、少し数多く一緒に申し上げましたが、総理の政治改革に対する考え方をお聞かせください。
○小泉内閣総理大臣 政治改革、今幅広い分野で菅さんはお話しされましたけれども、私としても、政治改革は不断に見直していかなきゃならないと思っております。
公共事業受注の政治献金のあり方につきましても、一定の制約のもとになされるべきだと思っておりますし、また、逮捕された議員の歳費等の関係についても、私は見直すべきじゃないかなと思っております。同時に、政治資金というものについては、多くの国民からの協力を得るような方法というものもあわせて考えるべきではないかなと。
また、定数の削減につきましても、私は、削減の方向で各党会派が見直していくことについては賛成でございます。
それと、一票の格差も、やはり二倍以内におさめていくということについても私は賛成であります。こういう点について、選挙制度なり政治改革については、各党がやはりできるだけ話し合って調整できることが望ましいと思っておりますので、今後とも、この話し合いというものは積極的にされてしかるべきだと思っております。
また、十八歳の投票権につきましては、私はちょっと一考を要するんじゃないかと。今、二十歳ですか。私個人の考えでありますが、今の状況であえて十八歳に引き下げるのはいいかどうか。今の時点においては二十歳でいいかなと思っておりますが、これも各党間の話し合いであります。あえて反対はいたしませんが、こういう点についても、よく各党会派で話し合われてしかるべきだと思っております。
○菅(直)委員 この政治改革の問題は、十年前の政権交代でも大きな争点になったわけであります。多くの国民の皆さんは、多分、私たち自身が自分たちで思っている以上に、政治家に対していろいろな意味で、ある意味での厳しい目を持っておられる。何か非常に大きな特権を享受していて、自分たちの権利だけを確保しながら、逆に国民の皆さんには厳しいことを言っているのではないか、こういうことも見ておられます。
総理が書かれたものを読んでおりましたら、在職二十五周年のときに、その表彰をお断りになった、あるいはそれに伴うプラスの何か特別手当もお断りになったということをみずから書かれておりました。まだ私は二十五年にはなっておりませんけれども、そういうところは総理を見習いたい、このように思っております。
しかし、政治改革については、総理が今おっしゃったことは、私は私たちの考え方と大筋近いという意味で評価をいたしますけれども、残念ながら、定数の是正についても、与党の中でも強く反対するところもありますし、一票の格差については、自民党の中にも必ずしも二倍以内にならなくてもいいではないかという意見も強いわけでありますし、十八歳については、私は、やはり義務と権利という問題がありますから、義務や責任についても強めると同時に、権利についても認めていくというのは、世界の中でも大部分の国がそうなっているわけですし、我が国においても当然のことだ、このように思っております。
これらについて、国民の皆さんに対して国会が信頼を取り戻すためにも、まさに超党派でこの問題は取り組んでいくということを私からもお願い申し上げて、私の質問はこれで終わりにさせていただきます。
どうもありがとうございました。
2003/10/01 |