2004年10月13日

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小泉総理の所信表明演説に対する代表質問

民主党代表 岡田 克也 


平成十六年十月十三日(水曜日)

議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。岡田克也君。
    〔岡田克也君登壇〕

岡田克也君 民主党代表の岡田克也です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表し、昨日の総理の所信表明演説に対して、私自身の見解を明らかにしながら、総理に質問をいたします。(拍手)

 質問に入る前に、豪雨や台風による被害に遭われた皆様に対して、心からお見舞いを申し上げます。私は、福井、三重、香川などの被災地を訪れ、関係者の皆さんの切実な声を聞いてまいりました。政府に対して、被災地域の実情に即した、早期復旧のための対策を要望いたします。

 さて、昨日の総理の所信表明演説は、各省庁の政策を羅列しただけで、重要な政策課題について具体性に乏しく、総理のやる気が伝わってこない、官僚の作文にすぎないというのが私の第一印象です。

 具体的に、重点を四点に絞って質問をいたします。

 まず第一に、小泉総理の基本的な政治姿勢に対して質問をいたします。

 昨日の総理の所信表明演説は、本来、特別の意味を持つものであったはずです。すなわち、小泉総理が内閣改造を終え、新たなスタートに当たって、日本国総理大臣として取り組むべき国政の基本方針を国民に対し明らかにし、理解を求めるべき重要な機会でした。しかし、総理が総裁として残された二年間の任期の中で一体何をやりたいのか、その姿が見えてきません。

 小泉総理は、内閣改造後の記者会見で、郵政民営化実現内閣と名づけてもいいのではないかと述べられました。私は、この発言に強い違和感を覚えました。

 内閣や内閣総理大臣がなすべきことは、国民が将来にわたり平和で安定した生活ができるように国家の運営を行うことであり、国際社会の中で日本がその責任を果たしていくことです。郵政改革は重要な政治課題ですが、今の日本が直面している課題の一つにすぎません。内政、外交上の重要課題が山積をしています。

 外交上の課題として、戦後、世界の平和の創造に重要な役割を果たしてきた国際連合が、重大な危機を迎えています。日米同盟のあり方も問われています。総理みずからが二度訪朝したにもかかわらず、その後の日朝関係は完全に行き詰まっています。日本にとって米国と並ぶ貿易相手国であり、北朝鮮の核問題解決に重要な役割を果たすことが期待される中国との関係も、大きな懸案を抱えています。悪化するイラク情勢への対応も重要な課題です。これらについての具体策が所信表明演説の中で何も語られていません。

 内政面では、国民の老後の不安を解決するための年金制度の抜本改革の方向性、地方分権推進のための大胆なビジョン、地方経済の再生と雇用の安定のための具体策、そして歳出構造の見直しと税制改革の方向性を明らかにした財政構造改革など、いずれも内閣が全力を挙げて取り組むべき課題です。これらの課題に対して、総理は、いかなる優先順位をつけて具体的にどう取り組もうとしているのでしょうか。そして、残された二年間の任期の中で、少なくとも何を実現しようとしているのでしょうか。

 小泉総理が郵政改革を重視していることはよくわかりました。しかし、それ以外に今後二年間で特に優先して取り組むべき課題は何なのか、改めて総理が国民に対して明らかにすることを求めます。(拍手)

 昨年秋の総選挙、そしてことしの参議院選挙を経て、日本も本格的な政権選択の時代を迎えました。次の総選挙において政権交代することが、私の、そして民主党の使命です。小泉総理の内閣改造に先立って、私は、民主党の次の内閣を新たにスタートさせました。いつでも政権交代できる準備はできています。(拍手)

 私は、小泉政権に対し、批判のための批判に終わることなく、国民に選択肢を示すための前向きの国会論議を行います。この本会議で次の内閣の鳩山ネクスト外務大臣、横路ネクスト厚生労働大臣が質問に立つのをスタートに、予算委員会や各委員会において、次の内閣のメンバーを先頭に、堂々たる国会論議を開始します。もちろん、私も小泉総理と党首討論を重ねたいと考えています。国民の立場に立って、率直で正直な議論を心がけたいと思います。小泉総理が逃げることなく党首討論を開催し、私の質問に対して正面から答弁されることを求めます。(拍手)

 第二に、外交の基本問題、特に日米関係について質問します。日中関係、日朝交渉などその他の具体的な問題は、鳩山ネクスト外務大臣にゆだねます。

 小泉総理は、内閣改造後の記者会見で、日米同盟と国際協調を両立させていくのが日本外交の基本であると述べられました。しかし、今までの小泉外交の最大の問題は、日米同盟と国際協調が両立できていないことです。

 世界の平和と安定の確保のための最後の手段としての武力行使は、国連の安全保障理事会の決定に基づき行われるべきであり、各国の判断に基づく武力の行使は安保理決議がなされるまでの自衛権の行使に限定されるというのが、国連憲章の最も重要な理念です。他方で、米国のブッシュ政権は単独行動主義を強調し、先制攻撃を正当化しています。このことは、国連憲章の理念に対する重大な挑戦であり、戦後の世界平和創造のための枠組みを根底から揺るがしかねないものです。

 世界の中の日米同盟の名のもとで、この米国の単独行動主義を補完し、助長してきたのが小泉総理です。そのことがいかに重いことであるかとの認識は総理にあるのでしょうか。総理は、国連憲章の理念と先制攻撃、単独行動主義との本質的な矛盾に対しどのように考え、今後、その矛盾解決に向けてどのような努力を行おうとしているのでしょうか。

 私は、テロや大量破壊兵器の拡散という世界の直面する問題を解決するためにも国連の果たすべき役割は極めて重要で、米国を国際協調路線に引き戻すことこそが同盟国としての日本の役割であると考えています。総理の答弁を求めます。

 イラク戦争は、その米国ブッシュ政権の先制攻撃の不幸な失敗例です。まずイラク攻撃先にありきの中で、大量破壊兵器の存在を理由に、多くの国々の反対の中、戦争が開始されました。大量破壊兵器はありませんでした。国家がみずからの判断で戦争を開始することを認めることが、いかに危険であり、問題があるかということを改めて認識させることになりました。

 小泉総理も、大量破壊兵器があることを根拠にイラク戦争を支持しました。総理は、この戦争が国連決議に基づくものであったことを強調し、みずからの誤りを決して認めようとはしません。仮に政府の見解に立ち、国連決議に基づく武力行使であったとしても、そのことが事実誤認に基づき戦争を支持したことを正当化するものでは決してありません。

 小泉総理、あなたは余りにも軽率だったのです。罪のない数多くの命を奪った戦争を支持したことは重大です。そして、リーダーにとって重要なことは、みずからの誤りを率直に認めることです。イラク戦争を支持したことは重大な誤りであったことを認め、日本国民、そしてイラク国民に対して謝罪すべきです。総理の答弁を求めます。(拍手)

 次に、日米同盟の将来について質問します。

 米国からは、一九九六年の橋本・クリントン両首脳による共同宣言で確認したアジア太平洋地域をさらに超えて、インド洋や中東をも含む日米同盟の拡大が求められています。米軍の再編成、トランスフォーメーションもその流れの中で行われています。しかし、このことは、日本の安全保障政策にとって大きな政策転換を意味します。単独行動主義、先制攻撃を主張する米国との同盟関係を今無制限に拡大することが日本の国益にかなうことなのか、そして日米安保条約との整合性はどうなるのか、これらの根本的な問題について総理の明快な答弁を求めます。

 そして、日本の安全を確保するためだけの日米同盟ではない以上、日本の過重な基地負担、そして日米地位協定の不平等性の見直しは、必ず実現しなければなりません。

 私も、沖縄で米軍ヘリコプターの墜落現場を見て、普天間基地問題の解決は時間との競争であると改めて認識しました。さきの戦争で言葉にあらわせない犠牲を受けた沖縄県民が、その占領時代と実質的に異ならないだけの過大な基地の負担を強いられているその現状は、放置できません。沖縄基地の国内外への移転を実現しなければなりません。同時に、日本の米軍基地の規模を縮小しなければなりません。

 困難な問題ですが、国民の理解を得て、説得をしながら乗り越えていかなければなりません。その覚悟と具体的プランが総理にあるのでしょうか。総理の答弁を求めます。(拍手)

 第三に、内政上の重要課題について質問します。

 まず、年金改革です。
 十月一日から改正年金法が実施になりました。さきの参議院選挙を通じて示された、本当の意味での年金制度の抜本改革を望むという国民の気持ちは、無視されたままです。民主党は今、全国各地で年金の問題を議論するための集会を開催していますが、国民は明らかに政府の説明に納得していません。私も、各地の集会に出席をし、持続可能な年金制度を何とか確立してほしいという国民の切実な思いを強く感じています。年金制度改革を先送りせず、しっかり議論することが政治の責任です。

 総理は、年金の抜本改革について、三党合意を持ち出して、早急に協議を開始することが必要だと言われますが、抜本改革案について責任を持って自民党をまとめるというような姿勢は全く見られません。所信表明演説の中でも、単に課題を列挙して、「難しい問題に一つ一つ答えを出していかなければなりません。」と他人事のように述べるだけです。それでは単なる先送りにすぎません。

 私は、小泉総理に改めて提案します。第一に、基礎年金相当部分について、全額税方式により一元化し、その財源に年金目的消費税を活用すること。第二に、いわゆる二階建て部分については、一元化を前提に、国民年金対象者を含めた負担と給付のあり方について検討すること。第三に、納税者番号制の導入を行うこと。この三点を小泉総理が約束するのであれば、与野党間の協議は意味あるものとなります。

 以上の提案について小泉総理はどう考えるのか、誠意ある答弁を求めます。(拍手)

 次に、地方分権について質問します。
 総理、私は今、民主党代表として、なるべく地方を訪れ、一人でも多くの人々に会い、話を聞くことを心がけています。今、地方は、公共事業依存型経済から自立型経済への転換期にあり、構造変化の中で苦しんでいます。しかし同時に、国には見られない新しい動きの胎動を感じることができます。消費者の求める安心、安全な農産物づくりに取り組む地域、キノコやサツマイモなどをブランド化して、国に頼らない自立的な農業を目指す地域、中国市場や高齢者市場への対応など時代の変化に対応した取り組みを行う地域の中小企業など、地方には本来底力があります。

 地方のエネルギーを閉じ込めてきたのが中央集権体制であり、官僚支配の構造です。地方に権限と税源を思い切って移譲して、自立型の地方経済モデル構築を競わせることが日本再生のかぎです。大きな構想を持ち、本当の意味での地方分権を進めることが重要です。

 小泉総理の地方分権の進め方の特徴は、その場しのぎの、将来展望のない改革だということです。平成十六年度の三位一体改革は、税源移譲が先送りされたままに国庫補助負担金の削減や地方交付税の総額抑制が行われ、地方財政は大混乱しました。平成十八年度までの改革については、補助金改革案の取りまとめを全国知事会に丸投げし、知事会初め地方六団体がこれを激論の末まとめたにもかかわらず、各省庁が大臣を先頭に反対しているありさまです。

 総理は、中央省庁の圧力に地方がおびえちゃだめですよ、しっかりしてもらいたいと述べたと伝えられています。冗談にもほどがあります。しっかりしてもらいたいのは総理自身です。総理には、このような各省庁の公務員、そして総理みずからが任命した今まさしくひな壇に並んでいる各大臣の動きに対して、これをやめさせる責任があると考えますが、その意思があるのか、答弁を求めたいと思います。

 そもそも、大きな混乱の原因は総理にあります。地方六団体も明確に述べているように、三位一体改革の全体像が示されていないことが無用の混乱を招くことになりました。最終的にどれだけの税源移譲と国庫補助負担金の廃止を行うのか、そして税源移譲を行った結果生じる地方自治体の格差の問題についてどこまで地方交付税によって措置するのか、明らかではありません。全体像を示さない理念なき部分的手直しにとどまっているために、理念なき抵抗が行われています。

 総理は、平成十八年度までの全体像を年内に決定すると言うだけですが、十八年度以降も含めた三位一体改革の全体像を早急に示すことこそが必要です。この点について総理はどう考えているのでしょうか、答弁を求めます。(拍手)

 次に、郵政改革について質問します。
 総理は、郵政民営化を改革の本丸と位置づけています。私は、ユニバーサルサービスが求められる郵便事業を別とすれば、郵貯・簡保事業については民間でできることですから、本来は民営化するのが筋であると考えます。もちろん、民営化は手段であって目的ではありません。国民の立場に立ってプラスになる民営化でなくては意味がありません。民営化を行うに当たって、総理は少なくとも次の疑問にきちんと答える責任があります。

 第一の問題は、現在規模で三百五十兆円の資金を民営化法人がみずからのリスクで運用し、利益を出すことが現実に可能かということです。大手の金融機関ですら貸出先の開拓に苦労する中で、新規参入する郵便貯金会社、郵便保険会社が、どのようにしてメガバンクの十倍規模という巨大な資金の運用を行い、かつ利益を出すことができるのか、だれもが疑問に思っています。

 第二の問題は、結果的には民営化に失敗し、残ったのは形を変えた官業の肥大化だったということになりかねないことです。民間が株式を保有するという意味での、本当の意味での民営化がなされるまでの間、新規分野への進出を制限するとともに、まず事業規模の縮小を行うべきではないでしょうか。
 そして、第三の問題は、郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を買い続けることで特殊法人の整理合理化が進まない懸念があることです。これでは、財投資金が特殊法人の肥大化を招いたこれまでと何ら事態は変わらないことになります。

 以上の基本的な三つの問題点について、総理はどう考えておられるのか、議論の入り口として総理の明確な答弁を求めます。

 以上、幾つかの基本的な問題についての質問を行いました。しかし、郵政民営化の問題が今後どのような法案になるかは、政府と自民党との調整を待たなければなりません。むだな高速道路をつくらないということでスタートした道路公団民営化論議が、いつの間にか、ほとんどすべての高速道路を税金を使ってでもつくり上げるということに見事にすりかわったのは、記憶に新しいところです。郵政民営化法案がどのような内容をもって次期通常国会に提出されるか、注目しています。かえって日本経済に混乱をもたらし、国民にとってプラスにならないような見せかけだけの改革案であれば、小泉総理は厳しくその責任を問われることになることを最後に付言しておきます。(拍手)

 第四に、信頼される政治を実現するための具体論について質問します。

 日本では、多くの国民が政党や政治家を信頼していません。政治に対する国民の信頼がない中で、小泉総理御自身が述べられたように、国民に理解を求め、改革をなし遂げていくことは不可能です。日本歯科医師連盟、いわゆる日歯連の問題は、かつてのリクルート事件を超える問題であり、小泉総理は、自民党総裁として重大な決意を持って取り組まなければなりません。

 所信表明演説の中で、政治と金の問題について総理はほとんど語っていません。「政治家一人一人が肝に銘じ、常に襟を正さなければなりません。」と、まるで他人事です。自民党総裁として許しがたい責任逃れです。小泉総理が自民党総裁として、第一に、国民に対し説明責任を果たし、第二に、責任ある者が国民に対し謝罪するとともに法律上、道義上の責任をとり、第三に、二度と同じ事件が繰り返されないように制度改革を率先してなし遂げなければなりません。

 このような視点から、小泉総理に対して質問をいたします。

 まず、旧橋本派の一億円やみ献金問題について質問します。
 この事件に関し、会計責任者が逮捕、起訴され、村岡前衆議院議員が起訴されました。他方で、橋本元総理初め他の関係者は起訴されることはありませんでした。なぜ事件の解明が進む前に起訴されないことになったのか、一億円はだれが受け取り、そしてどのように使われたのかなど、大きな疑問が残っています。まず、これらの点について、事実関係を当事者が明らかにすることが大切です。総理が自民党総裁として、橋本氏初め関係者が、国民が納得できるだけの場所で、そして内容で、説明責任を果たすよう説得する意思があるのか、改めて総理の説明を求めます。

 また、国会で説明したいとの意向であると伝えられる村岡氏の国会証言を実現することが事実解明の第一歩と考えますが、まさか総理はそのことを否定されることはないと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。答弁を求めます。

 日歯連の事件は一億円問題だけではありません。自民党の政治資金団体である国民政治協会や自民党本部を利用した迂回献金の問題が指摘をされています。

 確かに、日歯連の国民政治協会への献金直後、自民党の特定議員の関係団体に国民政治協会から自民党経由でほぼ同額の献金が不自然になされるなど、大きな疑問が残ります。このような迂回献金が認められるようでは、政治資金規正法の改正を行っても何の意味もありません。

 総理は自民党総裁として、この問題について徹底的に調査を行い、国民に説明する責任があります。この点について小泉総裁はどう考えているのか、自民党の組織ぐるみのやみ献金疑惑であり、総裁自身の問題ですから、逃げずに答弁するよう求めます。

 きちんとした説明責任が果たされ、責任ある者が法律上または道義上の責任をきちんととることを前提に、事件の再発防止のための制度改革が必要です。迂回献金の禁止、政治団体間の寄附の量的制限、外部監査の義務化、収支報告書の不記載に対する罰則の強化、寄附の銀行振り込みの義務化などを内容とする政治資金規正法改正案を成立させなければなりません。民主党は、法案の提出を準備しつつあります。伝えられる自民党改革案では再発防止になりません。

 総理自身も、所信表明演説の中で、「政治に対する国民の信頼なくして、改革を進めることはできません。」と述べられました。みずからの発言の重みを自覚しながら、強い覚悟と決意を持って責任ある対応をされるよう強く望みます。小泉総理の答弁を求めます。(拍手)

 総理、最後に一言申し上げます。
 総理は、昨日の所信表明演説の結びの中で、高校野球の球児やオリンピックで活躍した選手を例にとり、やればできるというメッセージを繰り返されました。やればできる、すばらしい言葉だと思います。しかし、だれにも負けないだけの努力をしながら、華やかな甲子園やオリンピックに出場することができず、涙をのんだ数多くの高校球児やスポーツマンがいることも忘れてはならないと思います。努力した人が報われる社会にするとともに、努力したけれども報われないたくさんの人々がいることを決して忘れない政治を実現すること、目指すことを誓い、私の代表質問といたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 岡田議員にお答えいたします。

 内政、外交上の重要課題の優先順位についての御質問であります。
 私は、構造改革なくして日本の再生と発展はないとの信念のもとに、構造改革を断行し、個人や企業の挑戦する意欲と地方の自主性を引き出し、自信と誇りに満ちた活力ある社会を築くとともに、国際社会の一員として世界の平和と安定に積極的に貢献していく考えであります。

 郵政の民営化は、構造改革を進めるに当たり、行財政改革や経済の活性化の観点から極めて重要な方策であります。

 これに加え、御指摘の内政、外交のさまざまな案件は、いずれも重要な課題と考えており、年金を含む社会保障制度、金融、税制、規制、歳出の改革の推進や、日米同盟と国際協調を基本とした国益と国民の安全を守る主体的な外交政策の推進など、内閣を挙げて全力で取り組み、最善を尽くしてまいります。こうした考えについては、私の所信表明演説において述べたとおりであります。

 国会における議論についてでございます。
 私は、国会での議論などを通じて、小泉内閣が進めようとしている改革や政策について国民の理解が得られるよう、今までも努力してまいりました。具体論を進めようとしますと、何事にも賛否両論があります。反対の立場から見れば御不満もあるとは思いますが、国会での議論などを通じて、広く国民の理解と協力を得られるように引き続き努力していく考えであります。

 野党も、積極的に政策を提言していただくことは歓迎いたします。国会におけるさまざまな場において、批判論や反対論だけでなく建設的な政策論をしていくことが、お互い切磋琢磨していく上で重要なことだと私も考えております。

 米国の単独行動主義と我が国の対応についてでございます。
 米国が単独行動主義をとっており、国際協調路線へ引き戻す必要があるとの御指摘ですが、米国政府は、テロや大量破壊兵器の拡散といった国際社会の重要な課題につき、同盟国等と協議、協調しながら取り組んできております。また、我が国は、米国に対して、国際協調の重要性につき随時強調してきております。

 国連憲章の理念と米国の先制攻撃、単独行動主義との関係についてでございます。
 国連憲章のもとでは、一般的に武力の行使が禁止されていますが、自衛権の行使に当たる場合や安保理の決定がある場合には武力の行使が認められております。御指摘の先制攻撃については、我が国として他国の国際法解釈につき有権的な評価をする立場にはありませんが、いずれにせよ、米国は国連憲章を初めとする国際法上の権利及び義務に合致して行動しているものと考えます。

 事実誤認に基づいてイラク戦争を支持したのではないかとのお尋ねです。
 我が国が対イラク武力行使を支持したのは、イラクが十二年間にわたり累次の国連安保理決議に違反し続け、また、国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえようとしなかったとの認識に基づくものであります。この点は、平成十五年三月二十日の内閣総理大臣談話において述べたとおりであります。したがって、対イラク武力行使に対する支持が過ちであったとの御指摘は当たりません。

 日米同盟と日本の国益、日米安保条約との関係でございます。
 私は、ブッシュ大統領との間で、世界の中の日米同盟を強化していくことで一致しております。これは、日米同盟関係のもと、日米両国が世界におけるさまざまな問題の解決に世界の国々と協調しながら取り組んでいることを踏まえまして、このような協力関係をさらに強化していくことを確認したものであり、我が国の国益に合致するものと考えております。このような同盟関係は、日米安保条約に基づく協力に限られたものではなく、日米安保条約上の権利義務関係は何ら変更されておりません。

 在日米軍の兵力構成のあり方と日米地位協定の見直しについてでございます。
 在日米軍の兵力構成の見直しに関しては、抑止力を維持しつつ、沖縄等地元の過重な負担の軽減を図る観点から、米側との協議を進めてまいります。また、日米地位協定につきましては、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの考えのもと、運用の改善に努力しているところであります。

 年金制度の与野党協議についてでございます。
 御提示された三点については、これまで民主党が提案されていた最低保障年金との関係など、必ずしも明らかではない点もありますが、いずれにせよ、全額税方式の基礎年金と生活保護をどう調整するのか、年金の財源としての保険料や税の組み合わせをどうするのか、消費税を財源とするのは基礎年金のみとするのか、医療、介護についても対象とするのか、国民年金対象者に対する二階建て部分をつくることは事業主負担がないため保険料負担が従来より大きくなることをどう考えるのか、納税者番号制の導入により所得の公平な捕捉がどこまで可能かなど、さまざまな論点を抱える難しい問題であります。

 政府としては、経済界や労働界などの参加を得ながら、こうした問題について幅広く議論を現在進めておりますが、いずれにしても、これらの問題に答えを出すためにも、さきの通常国会において自民党、民主党、公明党三党が合意をしたわけであります。連合の笹森会長も述べているとおり、民主党は、国民的観点から真摯な政党間協議を行い、国民に対する政党の責任を果たすべきであり、早急に与野党協議を開始することが必要であると考えております。(拍手)

 地方の改革案の実現に向けて各大臣を指導すべきではないか、十八年度以降を含めた三位一体改革の全体像を早急に示すことが必要ではないかとのお尋ねでございます。

 私は、地方にできることは地方にとの理念のもとに、総論賛成の議論を具体化するため、国の補助金を削減し、国から地方への税源移譲を進め、同時に地方交付税を見直す三位一体の改革を進めてまいりました。

 三位一体の改革については、先般、関係大臣に、地方団体の補助金改革案を真摯に受けとめて積極的に取り組むように明確に指示したところであります。現在、関係大臣は、私の指示に従い、地方団体との協議等、改革の具体化に向けさまざまな検討を進めているところであり、いずれにしても、年内には、今年度の一兆円に加え、来年度からの二年間に行う約三兆円の補助金改革、税源移譲、地方交付税改革の全体像を決定いたします。

 十八年度以降の三位一体改革については、決定された十七、十八年度の改革の成果を見きわめた上で判断する必要があると考えております。

 郵政民営化と三百五十兆円の資金運用等についてでございますが、郵政民営化については、先月、基本方針を閣議決定したところであり、今後、これに基づいて具体的な制度設計を進めてまいります。

 まず、民営化法人が三百五十兆円の資金を運用できるかとのお尋ねでありますが、郵政民営化は、国民の貯蓄を経済の活性化につなげるために、資金の流れを官から民へ構造改革するものであり、このような改革の趣旨にかんがみれば、民営化後の郵便貯金会社、郵便保険会社が市場経済の中でみずからの責任と経営判断によって資金運用を行うことにこそ意義があると思っております。

 今後、具体的な制度設計、法案化に当たっては、民営化時点における既契約分に係る資産運用についてこれまでと同じように安全性を重視するとともに、民間金融機関への影響、追加的な国民負担の回避、国債市場への影響を考慮した適切な資産運用を行いますが、厳密な資産負債総合管理のもとで貸し付け等も段階的に拡大できるように検討してまいります。

 民間による株式保有がなされるまでは新分野進出の制限等を図るべきではないかとの御質問でありますが、基本方針においては、例えば、郵便貯金会社、郵便保険会社については特例法を時限立法で制定し対応するなど、イコールフッティングの度合いや国の関与のあり方等を勘案しつつ、業務内容、経営権に対する制限を緩和していくこととしております。

 この基本方針を踏まえ、郵政民営化の制度設計、法案化を進めるに当たっては、当然のことながら、官から民への改革の趣旨に反して民業圧迫となることのないよう配慮してまいりますが、他方で、郵政民営化に当たっては、現在、郵便局ネットワークを通じ提供されているサービスを廃止縮小するという方向ではなく、国民の貴重な資源を最大限活用するという方向で検討すべきであると考えております。

 また、郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を買い続け、特殊法人の整理合理化が進まないのではないかとのお尋ねでございます。

 先ほど申し上げた官から民への資金の流れの改革の趣旨からいって、財投改革に係る経過措置を除き、民営化後の郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を制度的に買い続けるということはあり得ません。
 特殊法人等については、改革対象となる百六十三の法人について、平成十三年十二月に策定した特殊法人等整理合理化計画に沿って改革を進めておりまして、既に八割強について廃止、民営化、独立行政法人化等の措置が講じられ、財政支出を一兆四千億円削減する等の成果が上がっており、今後とも改革を着実に進めてまいります。

 日歯連の献金問題についてでございます。
 私は、政治資金をめぐる不祥事が後を絶たないということについては厳しく受けとめております。政治家が政治資金を受け取る際には、政治資金規正法にのっとって適正に処理されなければならないのは言うまでもないことであり、まず、政治家一人一人が法律を守らなければならないことは当然であります。

 日歯連の事件については既に裁判手続にかけられているところでありますが、およそ政治家たるものは、人から言われるまでもなく、みずからの問題についてきちんと説明することが重要であると考えます。また、国会における証言の取り扱いについては、国会において決めるべきことでありまして、各党各会派において十分議論していただきたいと考えます。

 日歯連の献金問題についての事実解明についてでございますが、御指摘の政治団体間の資金の移動については、既に、政治資金規正法上、報告書記載義務が課され、透明性が求められているところであります。この点について、自民党としては、政治資金規正法にのっとって適正に処理することとしているところでありまして、組織ぐるみのやみ献金との指摘は当たりません。

 いずれにせよ、政治に対する国民の信頼は改革の原点であり、信頼の政治の確立を目指して政治改革に取り組んでまいります。

 政治資金規正法の改正についてでございます。
 基本的には、政治資金を広く、薄く、公正に得るとともに、その透明性を確保するための明確なルールをつくり上げる必要があると考えます。

 具体的な改正案については、現在、自民党内において議論が行われているほか、与党の公明党、さらには民主党の改正案など、さまざまな考え方があるところであり、幅広い理解が得られる内容となるように、各党各会派間でさらに議論を深めるべきものと考えます。こうした議論を踏まえつつ、政府としても必要な検討を進めてまいります。(拍手)


2004/10/13

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