2002/09/20-3 |
衆院・外務委員会
○土田委員 自由党の土田龍司でございます。
今回の首脳会談、拉致事件に関しましては大変悲しい結果に終わってしまいました。そしてまた共同宣言につきましても、非常に一方的な宣言に署名をして帰ってきた。全く評価できない残念な結果だと私は思っております。
この八月三十日に小泉総理は、十七日に首脳会談をやる、それはこの一年間水面下で活動してきたその成果だというふうに言っておられますけれども、私は明らかにそれは間違いだと思います。これまで外務省が水面下で努力をしてきた。何とかしたいという気持ちはわかりますけれども、具体的な進展は全くなかったんじゃないかと私は思っているんです。
四月三日に北朝鮮から、アメリカや日本と話し合う用意があるんだというメッセージが伝えられた。それを受けて、四月の二十九、三十に赤十字会談が行われた。その際も、ほとんど話は進展しておりません。六月に開く赤十字会談も延期されたままになって、外務大臣がブルネイで北朝鮮の外務大臣と話し合われて初めて交渉再開の糸口が見つかったんじゃないかと思っているんです。
そして、田中局長が北京で会談されたのが八月の二十五日、このときもまだ首脳会談の話は出ておりません。可能性としてはあるというぐらいの話だったと思うんです。たったこの一週間の中で、この日朝交渉を進展させるために、小泉総理は一気に首脳会談をやるという話に飛びついたんです。全くのパフォーマンス、人気取りでしかあり得ません。今、首脳会談をやる時期ではない。これは私たちはそのときも言いましたし、我が党の党首であります小沢党首も総理にじかに言いました、今、首脳会談をやる時期じゃないでしょうと。そして、このような結果に終わってしまったわけです。
共同宣言の内容につきましても、第一項目は十月から交渉を再開するということで、第二項目めからはすぐに今度は補償問題、お金の問題に入ってきている。全く一方的な北朝鮮のペースにはまってしまったようなやり方であると私は直観をいたしております。
外務大臣にお尋ねするんですが、今回の首脳会談について、こういった拙速なやり方をいいというふうに思っておられますか。
○川口国務大臣 日朝間にさまざまな問題があるわけでございますし、また、国際社会の北朝鮮に対する懸念というものもあるわけでございますけれども、そうした中で、我が国は北朝鮮との間で五十年以上にわたって国交が正常化されていないという異常な状態にある、これをきちんと正常化していくことが歴史的な責務であるというふうに総理はお考えになっていらっしゃって、それでそういった、先ほど申し上げたような諸問題について北朝鮮側が誠意を持って対応するつもりがあるかどうかを直接に自分の目で確かめるということで総理は行かれたわけでございます。
そういったことの結果、一定の前進が見られ、国交正常化の交渉の再開が可能だろうという御判断があったということでございまして、拉致の問題その他、たくさん解決をしていかなければいけない問題がございますけれども、それらがまさに交渉ができる場がつくられ、そういった場でこれから交渉を進めていこう、もちろんその前にもやらなければいけないことは当然拉致の問題に関してございますけれども、そういったことも含め、交渉再開の場でさまざまな問題を取り上げていくということであるかと思います。
○土田委員 小泉総理は、繰り返し、拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないというふうに言われてまいりました。今回、別に、総理がピョンヤンまで行って首脳会談をやって、ああいった共同宣言に署名しなくても、当然、局長級会談があって、大使級会談があって、そこで詰めていけば十分にできたはずです。今回の首脳会談でこの共同宣言に署名したばっかりに、今後の交渉というのは日本側にとって非常に大きな負担になっていくというふうに私は思っているんです。
今大臣が、五十年間国交がなくて、いろいろな問題、諸問題があって、それを解決するためにはそれしかなかったというふうにおっしゃいますけれども、私は、外交的には全く間違った、失敗だったなという感じがしてなりません。
先ほど言いましたように、この共同宣言の第二番目にはすぐに日本からの謝罪の問題、補償の問題、補償という言葉は入っておりませんが、経済協力の問題になってくるわけですね。今回、この問題について一番北朝鮮が望んでいること、それがその前面に出てくる。確かに、共同宣言の文書を読んでみますと、日本側はとか北朝鮮側は、あるいは双方はという言葉を非常にバランスをとってやってありますけれども、その中身はほとんど一方的に北朝鮮の希望を聞いただけ。そこで軽々しくサインしてくるものじゃないというふうに私は思えてならないんです。
そこで、拉致問題についても幾つか聞きたいと思うんですが、もう与党側からも野党側からもたくさん出ましたので、ちょっと、その次の問題として、過去の清算について私は外務省にあるいは外務大臣に確認をしておきたいと思っております。
当然、この過去の清算のことが問題になるわけですね。そのときに、これまでの日朝交渉において、北朝鮮は補償とか賠償を求めてきた。日本は、それについては全く補償とか賠償はしない、交戦関係になかったんだというふうに言ってきた。そして、今回の共同宣言では、お互いの財産及び請求権も放棄するということを合意したわけですね。
さて、そうなってきますと、三十七年前に日韓で合意した経済協力、合計五億ドルの経済協力をしたわけでございますが、この性格について一度検証しておかなきゃならないというふうに思うんです。それと同時に、今後、北朝鮮に対して、賠償責任がないわけですから、それで財産権も放棄したということになると、果たして経済協力を行う目的があるかどうかということになってくるんじゃないかと思うんです。もちろん、今日本が行っている途上国におけるODAについて、そのレベルならわかりますけれども、そういった話し合いを前面からする必要があるのかどうか。この二つについてお答えください。
○田中政府参考人 委員御指摘のうち、前段の方で共同宣言についてのお話がございましたけれども、私どもとしては、少なくとも、一つは、国交正常化にかかわる基本原則にかかわる問題として、まさにこういう宣言の精神に従った正常化ということを言っておりますわけで、いろいろな安全保障上の懸念とか、そういう日本の安全を脅かすようなことも含めて、そういう問題についてもきちんと包括的に議論をしていくという前提の中での正常化ということでございます。
経済協力についてのお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、日韓基本条約の際には、相互に請求権を放棄して、いわゆる経済協力である一括方式という形をとりましたわけでございます。北朝鮮は一貫して、過去五十年間、日本に対して、日本と交戦状態にあったんだという主張をし、なおかつ植民地に対する被害等について補償という概念でしか応じないということを言ってきたわけでございますが、今回、基本的な考え方として、一括方式、経済協力かつ請求権の相互放棄という形で、それを基本原則にして今後正常化交渉の中で具体的に協議をしていくということでございます。
○土田委員 つまり、補償じゃない、植民地支配の代償であるならば、それは国際法的にどういった根拠があるんでしょうか。それは行わなきゃならない問題なんですか。
○田中政府参考人 植民地支配に対する賠償として行うものではありません。相互の請求権の放棄、それに伴う経済協力方式として日韓で行ったのと同じ方式で行うというのが我が国の考え方でございます。
○土田委員 先ほどから出ておりましたけれども、この拉致問題の解決なくして国交正常化はない。それで、田中局長、何回か質問がありましたけれども、国交正常化の話し合い、そしてこの経済協力の話し合いに入る前に拉致問題を解決するのか、あるいは同時並行でいくのか、ちょっともう一回正確に答弁してください。
○田中政府参考人 小泉総理御自身も、外務大臣も先ほど申し上げましたけれども、拉致問題の解決なくして国交正常化なしということでございます。
今回の平壌宣言におきましても、国交正常化の問題とかそれから懸案の解決というのはやはり包括方式でやっていくということでございますし、なおかつ、宣言の中にも明記をしてございますけれども、こういう宣言の原則に従った国交正常化であるということでございますし、当然のことながら、先ほど大臣も御答弁をされましたけれども、国交正常化交渉の中で最優先の課題として検討をしていくということも申されています。ですから、包括方式でやっていくということでもありますし、国交正常化交渉の最優先の課題として検討をしていくということでもあります。なおかつ、国交正常化交渉を開始する前にやることも多々あるということでございます。
ですから、どちらをどれだけやるのかという問いに対しては、それは包括的なのが基本的な原則ですし、安全保障の課題については安全保障協議ということを立ち上げてこの宣言のフォローアップをしていきたい、かように考えているわけでございます。
○土田委員 ということは、拉致問題の解決に向けての話し合いもすると同時に、経済協力の、いわゆるお金の話、幾らにするとかどうやって支払うとか、そういった話し合いも同時にやっていくというわけですね。
改めて聞きますけれども、外務大臣に聞きたいと思いますが、日朝の正常化交渉を急ぐ理由は何ですか。
○川口国務大臣 日朝の正常化交渉の再開ということでございますから、これから再開をして、これからさまざまな懸案について議論をしていくということでございまして、そういった問題を解決して正常化を図るということで、これを誠実に進めたいと私どもは考えておりますけれども、決して、一定の日までにこれをやらなければいけないとか、そういうふうには考えておりません。
○土田委員 北朝鮮側は、この共同宣言にありますように、第二項目めからお金の話になっているわけですね、極めて重要だと。北朝鮮が望むのはここだと言わんばかりに書いてある。日本側は、この共同宣言には、先ほどから話に出ていますように、拉致問題や工作船の話は全く出ていないんですね。日本はなぜそんなに、拉致問題をあいまいなままにして日朝正常化交渉を急ぐ理由は何ですかと聞いているんですよ。
確かに、九二年から始まりました、何回も中断してきましたけれども、交渉を始めるということはわかります。結構ですよ。始めてもらいたいと思いますけれども、正常化を急ぐ理由は何ですかと聞いているんです。
○川口国務大臣 この宣言に書かれていますように、この宣言に示された精神及び基本原則に従い正常化の交渉を私どもはやるということでございまして、これについては誠実にやっていきたいと考えておりますけれども、先ほど申しましたように、いつまでに正常化を果たさなければいけないというふうに考えているわけではございませんで、もし北朝鮮がこの精神と基本原則に反するようなことがあれば当然に国交正常化も進まない、そういうことになるわけでございます。
○土田委員 来月から早速金額の話になるようですから、少し聞いておきたいと思うんですけれども、正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議するということになった。経済協力の規模については日韓方式でいくと。これは書いてないようですけれども、事務レベルの話ではもう既にそうなっている、日本側からはそういうふうに要求している。日韓の場合は、無償資金が三億ドルで有償資金が二億ドルの計五億ドルが韓国に対して供給された。
その方式でいくならば、今度、北朝鮮はどうなるのか。一説に言われているのは、北朝鮮は既に百三十億ドルぐらいを要求しているというような報道がございますけれども、明確な根拠がないですね。合理的な積算根拠が見つからないままやることについては、これは国民の皆さんの理解も得られないんじゃないかというふうに思っております。
そういったことで、なぜ経済協力をしなきゃならないかというふうに疑問を持っている方もたくさんいるわけでございまして、経済協力の規模の算定方法について、今後政府はどういった基本的な方針で臨まれるのか。
○田中政府参考人 委員、経済協力の規模について日韓方式ということをおっしゃいましたけれども、必ずしも私はそう申し上げていないわけで、方式としては日韓と同一の方式ということを申し上げましたけれども、規模につきましては、まさに今後、日本の国内、政府の関係者、当然のことながら十分協議をしながら交渉を進めていく。どの段階でどうだということを、今まだ交渉の具体的な日程が設定されていないときに申し上げることはできませんけれども、今後、当然のことながら、経済協力の考え方、その具体的なあり方、そういうものについて国内の議論をしながら北朝鮮との間で正常化交渉の中で話をしていくということでございます。
○土田委員 確かに外務大臣も田中局長も規模についてはおっしゃっていませんけれども、ちまたではその話にみんな関心を持っているわけでございまして、政府としてどういった基本的な方針でいくのかということについては、現段階で、発表できるといいましょうか、基本的なことについては話しておくべきだと思うんですが、どうでしょうか。
○田中政府参考人 申しわけございませんが、今、私がここでお答えをするべきことでもありません。今後、政府内で協議をしながら北朝鮮側と協議をしていく課題であろうというふうに思います。
ただ、同時に、これは結果的には条約という形になるわけでございまして、当然のことながら国民的な合意が得られないような条約ということにはなり得ないということでもございますし、当然慎重に検討していくということでございます。
○土田委員 北朝鮮の過去の外交姿勢を見てみますと、交渉において合意されたことがしばしば破られているということが感じられるわけですね。金大中さんとの約束も幾つも破られているといいますか、実行されていない。一割ぐらいしか実行されていないと言う人もいる。あるいはアメリカとの約束についても実行されていないようなことがたくさんある。あるいは日本との交渉でも、行方不明者はいないんだ、いなかったということも言ってきている。そして、そのために一方的に日朝交渉を中断してきた経過があるわけですね。
今回の共同宣言に華々しくいろいろなことを書いてございます。国際法を遵守し互いの安全を脅かす行動はとらないとか、北東アジア地域の平和と安定を維持強化する、互いに協力していくんだとか、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のために国際的合意を遵守するとか、安全保障にかかわる協議を行っていくとか、モラトリアムを二〇〇三年以降もさらに延長していくとか、非常にこういうたくさんのことを書いてあるんですが、いつ一方的に破られるかわからないということも当然ございますね。先ほど言いましたように、今までの外交姿勢を見ていますと、いつも一方的に破っている国ですから。
こういった状況で、経済協力というお金の話を急ぐのは構いませんけれども、さっき外務大臣がおっしゃったように、日本側からも、話が進展しない、約束を守らないんだったらばいつでも中断しますよと、そういった姿勢を持っていくことは非常に大事だと私は思っているんです。ですから、その点について、外務大臣、もう一回決意を伺いたいと思います。
○川口国務大臣 まさにそういう趣旨のことがこの平壌宣言に書かれているわけでございまして、「この宣言に示された精神及び基本原則に従い、」途中飛ばしますが、あらゆる努力を傾注し、正常化交渉を再開をするということでございますので、先ほど申し上げましたように、この精神及び基本原則に北朝鮮側が従わないということがあれば国交正常化は前に進まない、そういうことになります。
○土田委員 最後に、アメリカとのことについてちょっと伺っておきます。
川口大臣は、アメリカでパウエル長官ほかいろいろな方とお会いになって、今回の日朝首脳会談についての説明をされました。アメリカとしては、支持する、あるいは歓迎するというコメントを出しておりますけれども、一方では、ミサイル問題への深刻な脅威は変わっていないんだということもアメリカは言っております。
これまでブッシュ政権は、北朝鮮への厳しい態度をとってきているわけですね。核攻撃も辞さないというようなことも言ってきている。その逆に、今度は金大中さんの太陽政策にも理解を示している。ソフトランディングはいいんだということも言っている。実態として、やはりアメリカは北朝鮮をそんなに信用していないというふうな感じを私は受けるわけです。つまり、北朝鮮が何を言ってこようとも、今の金正日独裁体制、これが続く限りは脅威はなくならないんだという方針に、アメリカは変わっていないと思うのですよ。
大臣は、実際にアメリカの首脳と会われて、本当に今回の日朝首脳会談の成果を手放しでアメリカは喜んでいるかどうか、どういう感触を持っておられますか。
○川口国務大臣 ただいま委員がおっしゃいましたように、北朝鮮の核開発あるいは大量破壊兵器の疑惑、それからミサイル技術の輸出といったようなことについて国際社会が懸念を持っているということは事実でございます。そして、今後再開される国交正常化交渉においては、経済協力の問題のみならず、ミサイルの問題ですとか核開発といったような安全保障の問題も取り上げていくということは当然であるわけでございます。
小泉総理はブッシュ大統領にお電話をなさったということでございますけれども、私は、ワシントンにおりまして、パウエル国務長官やライス補佐官と、会談終了後、こういう結果であったというお話をさせていただきまして、そのときにお二方から、小泉総理の努力を支持し、歓迎をするということをおっしゃられました。
金正日総書記は、この合意された枠組みを含む国際的な枠組み、これを守るというふうに言っているわけでして、今後、この実行がどのように行われていくかということをきちんと見ていくことが大事だろうと思います。
また、今次の首脳会談においては、日朝両首脳は、新たに日朝安全保障協議の立ち上げについて意見の一致があるということでございますので、この協議において、国交正常化交渉と連携をさせながら、核の疑惑、核の問題、あるいはミサイルといった安全保障上の問題も集中的に議論していくことになると思いますし、アメリカあるいは韓国といった関係の国と緊密に連携をとりながらこういったことの話をしていくということによって、正常化が東アジア地域の平和と安全に資するような形で行われていくということが大事だと考えております。
○土田委員 以上で終わります。
○中川(正)委員長代理 次に、松本善明君。
○松本(善)委員 私は、日朝首脳会談について、まずこの問題についての日本共産党の見解を述べて、質問をいたします。
日本共産党は、この会談で、過去の植民地支配の清算、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題の再発防止措置などに関し日朝共同宣言が交わされ、国交正常化交渉の再開が合意されたことは、悲劇の中の一歩ではありますけれども、重要な前進の一歩だと考えております。
この会談の中で、北朝鮮が日本人の拉致を行っていたという重大な事実が明らかになりました。他国の国民を暴力によって自国に拉致することは、国家主権を侵害し、基本的人権と人道に反する重大な国際犯罪であります。私は、日本共産党を代表して、この場をかりて厳しい抗議の態度を表明するものであります。
拉致された方々のうち、五名生存、八名死亡、一名不明という結果を聞いて、交渉再開についての首相の決断は重くつらいものであったと思いますが、これで懸案が解決したわけではないが、交渉なしに改善は図られないとの立場からの決断を我が党は強く支持するものであります。
交渉の前途に曲折、困難も予想されますが、日朝共同宣言に基づいて、懸案の諸問題を理性と道理をもって解決し、敵対関係を協力の関係に転換し、日朝両国の平和と友好への道が開かれることを願ってやみません。このために、日本共産党は、引き続き必要な協力を惜しまないことを最初に述べておきたいと思います。
また、拉致の事実が明らかになったとはいえ、思いも寄らない痛ましい結果であり、御家族の皆さんのお悲しみはいかばかりかとお察し申し上げるものでございます。
拉致問題で北朝鮮側が事実を認め、遺憾なことでありおわびすると述べたことは、問題の真相解明の重要な一歩でありますが、これで済まされる問題ではもちろんありません。拉致問題の真相の全容を明らかにすること、責任者の厳正な処罰を行うこと、被害者への謝罪と補償を図ることなどを国交正常化交渉の中で提起し、解決を図ることが必要であると思いますが、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
○川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国と北朝鮮との間には五十年以上国交がないという、近くの国同士の間の関係としては極めて異常な関係に今あるわけでございまして、これを正常化させるということは歴史的な責務であるというふうに小泉総理はお考えになって、また、その方向に向けての前進が可能かどうかということを見きわめるために、金正日総書記と直接にお話しになるということでピョンヤンに十七日にいらっしゃって、その結果として、まさに委員もおっしゃったように、拉致の問題についての非常に無残な、むごい結果を聞くということになりましたけれども、その中で、あえて厳しい思い、御判断をなさったということでございます。
そういうことで、さまざまな問題をこれから国交正常化交渉をやっていく中で解決をしていかなければいけないわけでございますけれども、まさにこの平壌宣言の精神、基本原則に従った形でこれを進めていくことが大事だというふうに考えております。
○松本(善)委員 拉致者については、拉致された日時、場所、どのようにして拉致されたか、拉致された後の扱いはどうだったか、これを北朝鮮側がどう言っているのか、御説明をいただきたいと思います。
○田中政府参考人 十七日の段階では、安否情報と、金正日総書記が拉致という言葉を初めて口にし、その関与を認めて謝罪をするということでございまして、きちんとした事実関係の究明はこれから行われるということでございます。
○松本(善)委員 これはしっかりやってもらいたいと思います。
生存していると伝えられている方々は、どこでどのような生活をしているか、家族の皆さんの一番心配しておられることと思います。面会、そして帰国を希望されている方の帰国が一刻も早く実現するように全力を尽くすべきだと思いますが、この点についての交渉の見通しをお話しください。
○田中政府参考人 全力を尽くして御家族の訪朝、面会が実現するようにしたいというふうに考えます。
○松本(善)委員 死亡したと北朝鮮側から伝えられた方々は、いつ、どこで死亡したというのか、死亡の原因、状況はどういうふうに言っているのか、お答えをいただきたいと思います。
○田中政府参考人 まさに、おっしゃる点も含めた死亡に至る経緯というのが解明されなければいけないということで、徹底的な調査を求めております。
○松本(善)委員 北朝鮮に入ったことが確認できないと言われております久米裕さんについて、北朝鮮は拉致を認めているのかどうか。船から落ちたということも言われておりますが、真相はわかっておりますか。
○田中政府参考人 久米さんについては、共和国の管内に入った記録はないというのが北朝鮮側の安否情報による回答でございました。
○松本(善)委員 今回明らかにされました十一人以外の拉致者はいないのか。この点は警察庁に聞こうと思います。
○奥村政府参考人 警察といたしましては、この拉致問題につきまして、これまであらゆる捜査を行ってまいりまして、北朝鮮による拉致の疑いのある事案として八件十一名を認定しておるわけでございますけれども、これ以外の幾つかの事案につきましても、北朝鮮による拉致の可能性があると見ております。
ただ、件数を申し上げることによりまして、一つの予断を与えることになりますので、件数につきましてはお答えを差し控えたいと思います。
○松本(善)委員 この点についての外務省の方針はどういうものですか。
○田中政府参考人 警察庁と十分連携をとりながら検討をさせていただきたいというふうに思います。
○松本(善)委員 被害者や被害者の御家族の憤り、悲しみは、察するに余りあるものであります。これに対する北朝鮮側の謝罪、補償については、どういう方針で臨みますか。
○田中政府参考人 これは先ほど来御答弁を申し上げておりますように、外務省スポークスマンの談話ということで遺憾の意の表明、それから、日朝宣言におきます、この遺憾なことが二度と起こってはならないという宣言、それから、国家の最高指導者としての金正日総書記の小泉総理に対する発言ということで謝罪、遺憾の意というのは表明をされている次第でございますけれども、今後、私どもがやっていかなければいけないのは、きちんとした事実関係の調査、それの情報を北朝鮮に求めていくということであり、そういう事実関係を解明していく中でいろいろな問題を検討していかなければいけない、かように考えているわけでございます。
○松本(善)委員 被害者の心情を考えますと、私の聞いておりますのは、北朝鮮側に直接、被害者に対しての謝罪を求めていくかどうか、それから補償を求めていくかどうかということであります。この点についてはどうですか。
○田中政府参考人 今後いろいろな場合があり得ると思いますけれども、まず、事実関係の調査を進めるということが先決だろうというふうに思います。
○松本(善)委員 そこは全然違うんじゃないですか。拉致をしたということは認めているわけです。それが犯罪行為であることは明白です。それが、生存をしていても、それから死亡をされたということになっていたとしても、いずれにしても補償をしなければならないことは明白なんです。そのことについて方針がないということではだめだと思います。外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
○川口国務大臣 この拉致の件といいますのは、委員もおっしゃられましたように、被害者となられた方御自身もさることですし、それから御家族の方々のお気持ちを考えると、本当に煮えくり返る思いをしていらっしゃるというふうに思います。
今後、さまざまなやり方があり得ると思いますけれども、まず、どういうことが実際に起こってどうだったのかという真相を調べることが第一歩でございまして、その上に立って、おっしゃった幾つかのことのうち何をすべきか、何をするのがいいかということを考えるということだと思います。
それから、先ほど申しましたように、外務省の中で、拉致された方々の御家族を支援するチームというのを現在立ち上げつつございますので、そこでさまざまなお手伝いをさせていただきたいと思います。
○松本(善)委員 アジア局長、補足することはありませんか。
○田中政府参考人 ございません。
○松本(善)委員 共同宣言に基づいて個人に対しての補償をすることができるかどうか、できない場合にはどうするかということについて政府の方針があるかどうかということを聞きたいと思います。
これは局長では無理かな。大臣か副大臣か、内閣としてその点についてどう考えるかということです。
○吉田委員長 松本先生、もう一回言ってください。
○松本(善)委員 要するに、共同宣言に基づいて直接補償を求めるということができるのかどうか、もしできないというならば、政府としてどうするつもりなのか。
○川口国務大臣 被害に遭われた方御自身あるいはその御家族が北朝鮮の政府に対して直接補償を求めることができるはずというふうにおっしゃっていらっしゃる質問だというふうに理解をいたしましたけれども、そのことも含めまして、まず、どういう状況で何が起こったかということを、真相をきわめることが第一歩である。その次に、そのわかった事実関係に基づいて何を行うのが適切かということを考えていくということだと思います。
○松本(善)委員 私は、共同宣言の中でそれができるのかどうかということは、これは宣言の解釈の問題であります。だから、事実関係を調べるということの前に考えなければならぬ。まだ内閣としてどうするかは決まっていないみたいでありますが、これは日本国政府が補償するのか、あるいは直接補償を求めるのかということは大変大事なことでありますので、内閣でしっかり討議をしてもらいたいと思います。
金正日総書記は、拉致は特殊機関の一部が行ったということを言ったということであります。それは、どういう機関で、いつできて、今はどうなっているのか、これはわかっていますか。あるいは、これからその点を明らかにさせる考えがありますか。
○田中政府参考人 私ども、一般的な知識として、北朝鮮のいろいろな工作機関というものは承知をしておりますけれども、この件について、具体的にどの特殊機関がということを承知しているわけではございません。今後、事実関係を究明する中で取り上げてまいりたい、かように考えるわけでございます。
○松本(善)委員 拉致の実行犯の特定、処罰の内容はわかっているのか、わかっていなければ明らかにするよう求めるべきだと思いますが、どうですか。
○田中政府参考人 金正日総書記は、関係した責任者は処罰をしたという言葉を使われていますけれども、この点も含め、今後事実関係を調査してまいりたいというふうに考えております。
○松本(善)委員 犯人、実行犯あるいは関係者、この拉致という犯罪を行った犯人の引き渡しを求めるという問題については、政府はどう考えていますか。
○田中政府参考人 国交がない国でございます。犯罪人引き渡し条約というものもございません。したがって、法的な問題として難しい側面があると思います。何よりも大事なのは、まず事実関係の究明を行うことであるというふうに思います。
○松本(善)委員 その他の懸案ですね。過去の植民地支配などの過去を清算する問題、それから経済協力の問題、ミサイル問題、核開発問題、工作船問題などについての方針をお聞かせいただきたいと思います。その問題についての交渉方針ですね。
○田中政府参考人 委員が御指摘の問題すべてについて、共同宣言の中で基本的な考え方が盛られているとおりでございます。
過去の清算と言われましたけれども、そういう問題については、基本的には日韓方式でやるというのを基本原則にするといったようなこと。それから安全保障の問題については、ミサイル問題、核問題、それぞれ必要な措置というか、基本的には北朝鮮側の、核についてはすべての国際合意を遵守するということ、それからミサイルについては、問題解決のため関係国との対話を行っていくということでございますし、信頼醸成のために将来的には一つの枠組みを考えていこう、こういうことでもございます。
今後、まさにそういう中で私どもが考えていかなければいけないのは、懸念というものが解消されたわけでは全くないわけですから、安保協議、国交正常化交渉、そういうことを通じて、北朝鮮がそういう約束を着実に実施しているのかどうかということをきちんと見きわめつつ、日米韓という協力体制の中で、安全保障の問題については必要な措置をとっていくということでございます。
○松本(善)委員 北朝鮮側に米朝対話の用意があるということを米側に伝えてほしいということでしたが、これは伝えたのかどうか。特に大臣は、アメリカでパウエル国務長官と会談をしたということですが、この点は伝えたのかどうか、アメリカ側の反応はどうだったのか。
それから、時間もありませんから伺いますが、さらに、南北朝鮮、日、米、中、ロの六者協議について、ロシア大統領は、これを有益と考えると前向きに受けとめたということでありますが、この関係諸国の反応はどうだったのか、伺いたいと思います。
○川口国務大臣 まず、私の方から最初のことについてお答えをいたしまして、二番目の方は田中局長からお答えをすることにさせていただきたいと思いますが、パウエル長官、それからライス補佐官両方に対しまして、総理が向こうからメッセージを、米朝の対話を進めたいと考えているということを話をしてほしいというメッセージについてお伝えをいたしました。
○田中政府参考人 委員お尋ねの二番目の問題は六者協議の問題であろうと思いますけれども、ロシアは、基本的に従来から前向きの認識を示しているということでございます。その他の国は、従来北朝鮮が非常に強く反対をしていたということもございまして、必ずしも現段階でその旗幟を鮮明にするということではない。もちろん、韓国は、六者協議ということについての概念自体については賛成をしているということだと思いますし、米国も、概念自体について否定をしているわけではないということだと思います。
共同宣言の中にありますように、この地域の正常化が進むにつれ、そういう枠組み、六者協議と具体的に決めているわけではございませんが、日本がイニシアチブをとって何らかの形の信頼醸成の枠組みをつくっていきたい、そういう基本的な考え方に北朝鮮も合意をしているということであろうと思います。
ちなみに、この過程の中で北朝鮮は、民間、まあ実態は民間ではないんですけれども、知的な対話の枠組みとして、民間を含む六者協議、北東アジアの協力対話ということでございますが、これに参加の意思を表明しているということでございます。
○松本(善)委員 最後に、大臣でも局長でもいいですが、この日朝首脳会談についての国際的な反応、特に関係国、主要国、国連の反応はどういうものか。韓国の反応については、韓国からの拉致者もいるということだけれども、韓国政府はその点をどう考えているのか、お答えをいただきたいと思います。
○田中政府参考人 今回の日朝首脳会談については、韓国を含む主要国より極めて前向きな反応が出されているということでございます。
韓国につきましては、外交通商部のスポークスマンの声明によって、歓迎をする、国交正常化交渉が円滑に進展し、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定に寄与することを期待するということでございました。金大中大統領も、説明のために訪韓した高野外務審議官に対して、今回の訪朝は北東アジアの平和に大きく寄与するということで、日米韓の緊密な関係が今後も維持されることを期待するということでございました。総理が金大中大統領に電話をされたときも、極めて前向きな反応が得られました。
米国につきましては、外務大臣がお答えをしたとおりでございます。
中国につきましては、外交部の定例記者会見で、今回の訪朝はこの地域の平和と安定に寄与すると信じているということでございます。
ロシアにつきましては、プーチン大統領から小泉総理に対して、非常に生産的であったという趣旨の発言がございましたし、EUの諸国も、押しなべてそのような反応がございました。
国連につきましては、国連の事務総長が声明を発出いたしまして、日朝平壌宣言は地域の平和と安全に対する画期的な貢献であるという声明を発出されています。
○松本(善)委員 正常化交渉で日朝間の懸案、私が指摘したような問題につきましても道理ある形で解決をされ、日朝両国関係が敵対から協調、友好の関係に転換することを強く期待して、質問を終わります。
○吉田委員長 次に、保坂展人君。
○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
去る九月十七日の小泉総理大臣のピョンヤン訪問で実現した日朝首脳会談で、中断していた国交正常化交渉が再開されることを日朝共同宣言で合意されたことを、大変重いスタートでありますけれども、大きな歴史の一歩ということで評価をしたいと思います。
そして、このスタートの時点で、きょうもずっと議論されました拉致事件被害者の安否情報、これは余りに残酷で信じがたいものでありました。二十代から三十代の若さで八人中六人の方が亡くなっているという情報、その後に追加をされてきました死亡年月日、こういったことを考えますと、被害者家族の方たち、とても納得できる状況ではないというふうに思います。
田中局長に伺いたいんですが、正式のリストというふうにたびたび答弁をされていました。この正式のリストでは年月日の方はなかったんだということだったんですが、こちらの生存しているか亡くなっているかというその部分について、確認の手段はなかったのではないか。とするならば、この年月日の部分も、これも確認できないわけですから、生死の判別という物すごく重い情報だけを出してしまった。ここを正式、非公式ということで分けたということは、やはり納得が得られないのではないかと思いますが、いかがですか。
○田中政府参考人 北朝鮮側が言ってまいりましたのは、安否情報については、赤十字会の通報、通知というものが公式なものである、それを待ってくれ、こういうことでございました。
したがって、あくまでこれは、その説明責任は北朝鮮側にあるわけで、私どもが判断する材料というのを直ちには持たないわけですから、北朝鮮が公式なものであるということを言ってきて、特にそれが首脳会談という指導者の間で行われることですから、それについては公式ということで、北朝鮮側の文書として私どもはそれに基づいてやるべきだという意識が非常に強くあったということでございます。
したがって、おっしゃるとおり、生死も含めて、本人確認あるいは事実関係の究明というのはこれからやっていかなければいけないことで、それについて私どもが今の段階で確証を持っているわけではございません。しかしながら、北朝鮮が正式に言ってきたことというのは、私どもはそれに重きを置くということでございまして、非公式にだということで言ってこられたものを使うということに対しては、大変なちゅうちょがあったということでございます。
○保坂委員 信じがたい残酷な結果を告げられたわけですけれども、今回の経過、この犯罪行為をだれがどのように計画し、実行して、その責任者はだれだったのか、一日も早く真相の究明を進めていかなければならないと思います。
きょう、日本側のリストにはなかった五人目の生存者の方が、佐渡で十九歳で失踪された方ではないかという報道がなされております。現段階でどのような確認がなされているのか、現段階で結構ですから、外務大臣、お答えいただけないでしょうか。
○田中政府参考人 私どもの方に生存が確認された者が一名いるという通知が北朝鮮側からあったわけでございますが、本件に関しては、目下、調査、確認作業を行っていただいているということであり、プライバシーにかかわる問題もあり得るので、情報の公表を差し控えているということでございました。
他方、報道等では既にお名前が出ているということでございますが、現時点で断定をしているわけではございません。警察を通じ、引き続き確認、調査を行っていることでございますし、北朝鮮側に対しても、今後確認を求めていく必要が出てくるものだというふうに考えております。
○保坂委員 今回の首脳会談に至る経過について質問をしたいと思います。これは田中局長にいたします。
これまで十一回にわたる国交正常化協議の中断後、北朝鮮の姿勢に大きな変化が見られたということを報道されておりますけれども、昨年のアメリカでのテロ事件の発生の後、平松北東アジア課長が北朝鮮が日本との関係改善を求めているという情報を確認するために中国に出張されたりというようなことも伝えられています。田中局長自身が北朝鮮の姿勢転換ということをいつどのような形で認められたのか、その点について伺いたいと思います。
○田中政府参考人 具体的にだれがどこでというお話についてコメントを申し上げるわけにはいきませんけれども、非公式な接触あるいは公式的な接触、公式的な接触というのは、日朝外相会談あるいは局長級会合、赤十字協議ということでございました。そういうものあるいは非公式な接触という中で、実は朝鮮半島をめぐっていろいろなことが起こったわけですけれども、比較的迅速に日本側が主張することについて措置をとってきたというようなこともございますし、それから、公式な協議のプロセスにおいても、最初の日朝赤十字会談の後、随分時間がたった場合もあります。それは朝鮮半島の情勢とか国際情勢にも影響されているわけでございますが、先ほど申し上げたように、比較的北朝鮮が従来にはない姿勢を見せ出しているということがございました。
当然、私どもは、拉致というのが最も重要な問題ですけれども、安全保障とかそういうことに対して懸念を持っているわけで、そういう懸念に対して北朝鮮が誠意を持って取り組む用意があるかないかということがすべてであって、そういうものに対応する様相というのを見せ出して、総理の首脳会談ではそういうことであったということだと思います。ただ、今後の問題が非常に重要だというふうに考えます。
○保坂委員 韓国の反応について外務大臣に伺いたいと思いますけれども、今回の首脳会談の直後、南北を隔てる二つの鉄道の工事が始まって、地雷等除去されているというニュースが入ってきています。
二〇〇〇年の南北首脳会談以降、両国の関係あるいは会談での合意事項は必ずしも順調に推移したわけではないというふうに思います。また、韓国国内でも、金大中大統領が掲げる太陽政策に関しては、それでいいのかという意見、異議もある中、太陽政策というものが進められてきたというのも事実だと思います。
この金大中大統領の太陽政策というものを日本政府としてどのように評価するか、小泉総理大臣とも電話での会談があったと伝えられていますが、そのあたりについて、外務大臣よりお答えいただきたいと思います。
○川口国務大臣 我が国といたしましては、一貫として韓国の太陽政策は支持をしてきているということでございます。今、南と北の関係がまた進みつつある、鉄道や道路の起工式をするという話が現実のものになってきている等、進展が見られるということについては、私どもは支持をさせていただいているわけでございます。
日本と北朝鮮の関係が正常化に向けて前向きに進むということと同時に、南と北の関係が進んでいくということも大事であると思いますし、また、米朝の関係が進んでいくということも大事だと思います。アメリカと韓国と日本と三つの国が連携をとりながら、北朝鮮を国際社会との対話に導いていくということが大事だと考えております。
○保坂委員 この共同宣言の中身に入りたいと思いますけれども、今回の宣言では、これは村山総理の談話、ここを基調にして書かれるということを総理も事前に言っておられましたけれども、アジアの人々という村山談話の部分、これは「朝鮮の人々」というふうになっているんですね。
これはちょっと確認的な質問になりますが、この「朝鮮の人々」とは、どの範囲の人々を指すのでしょうか。
○田中政府参考人 これは、北朝鮮の人々という認識でございます。
○保坂委員 朝鮮の人々というときに、今北朝鮮の人々と言われましたけれども、例えば、みずからの意思によらずに、日本本土及び、例えばサハリンであるとかあるいは旧満州、中国の東北部などに移動させられた人々、在日の方も多いんですが、これらの人々も含んでのことなんでしょうか。
○田中政府参考人 これはそういう厳密な意味で申し上げているわけではないと思いますが、基本的には、韓国の人々については、既に日韓の共同宣言においてそれがうたわれておりますし、そういう意味では、朝鮮半島の人々ということをカバーしているわけでございます。ここでは北朝鮮の人々ということであるわけでございますが、そういう観点からいけば、そこはいろいろな解釈があり得ましょうが、これは法的な文章ではなくて政治的な文章であります。
○保坂委員 これは正確な統計は難しいかもしれないんですが、南北朝鮮に分断をされる前、日本が植民地として支配をしていた朝鮮から、みずからの意に反して日本本土及び本土以外に移動をさせられた人の数というのはどのぐらいなんでしょうか。
○田中政府参考人 今、私、正確に申し上げる数字を持ち合わせておりません。
○保坂委員 時間がありませんので次に進みますが、この宣言に「在日朝鮮人の地位」という部分がございます。また、「文化財」という言葉も出てまいります。これらの議論を日本政府は今後どのようにしていこうというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
○田中政府参考人 在日朝鮮人の地位に関する問題については、これまでの国交正常化交渉において北朝鮮側より問題提起がされておるわけでございます。我が方としては、在日朝鮮人の法的地位及び待遇向上のため努力をしてきているということは累次説明をしてきている次第でございます。
したがって、今次国交正常化交渉が再開されれば、その中でも在日朝鮮人の地位に関する問題を議論していくということでございますし、文化財の問題についても、今後の国交正常化交渉において議論をしていきたい。先方が提起をしている問題ではございます。
○保坂委員 先ほども冒頭出ましたけれども、在日の朝鮮学校の生徒の方に、あるいは学校に嫌がらせの電話などがあり、大阪の府知事がこれは大変人権上問題があるというメッセージを出したり、森山法務大臣もそれについて触れているようでございます。
外務大臣の所見を伺いたいと思います。
○川口国務大臣 まさに、日本国民の人権意識が試される話でもあると私は考えております。
○保坂委員 田中局長にさらに伺います。
この宣言に「すべての国際的合意」とありますが、この国際合意の中に、一九九二年一月の南北朝鮮の朝鮮半島非核化宣言も含まれているのかどうか。これは、外務省がまとめられた資料によると、総理はそのことも含めて発言をされているようですが、先方からはどういう応答があったのかもお答えいただきたいと思います。
○田中政府参考人 関連するすべての合意として、例えば核兵器不拡散条約、NPTや国際原子力機関との保障措置協定、米朝間の合意された枠組み、南北間の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言等を念頭に置いております。北朝鮮側もかような理解であるということでございます。
○保坂委員 ちょっと外務大臣に伺いますが、これも含めて国際合意を遵守するということが、本当に事実としてきちっとこれが履行されるならば、朝鮮半島が非核地帯ということになり、また我が国も非核三原則を国是とする国として、いわば、朝鮮半島、南北朝鮮と日本とが非核地域ということになる可能性が出てくるかと思います。既にモンゴルでは、国連総会にて一国非核地位ということで承認もされていますけれども、そういった萌芽が生まれる可能性があるかどうか、認識を伺いたいと思います。
○川口国務大臣 国際的な合意を遵守していくということを金正日総書記が言われているわけですけれども、たしか総理も記者会見でおっしゃったかと思いますけれども、これを実際に行動で示していくということが何よりも今大事であると思いますし、また、六者間の安全保障の枠組み等の場でこういった問題については今後引き続き協議をしていくことが大事だと思います。
そして、おっしゃられました極東アジア地域の非核化構想の問題でございますけれども、この地域ではこの構想の実現のための条件がまだそろってはいないというふうに考えております。それはどういうことかといいますと、一つは、依然として不透明な様相あるいは緊張関係が存在をしているということでもございますし、また、現実に核戦力を含む大規模な軍事力が存在をするといったことが挙げられるわけでございます。
我が国としては、極東アジアの平和と安定を確保していくために日米安保体制、これを堅持しながら、二国間や多国間のさまざまな枠組みで、さまざまなレベルで信頼関係の醸成を図っていくということ、それから、大量破壊兵器やその運搬手段がなくなるような努力を現実的に重ねていく、そういったことかと思います。
○保坂委員 そういった懸念が残っているということは私もよくわかります。ですから萌芽と申し上げたわけですけれども、ぜひそういった萌芽が生まれる方向で努力をしていきたいというふうに思います。
今、六カ国間協議のお話が出ました。この共同宣言によりますと、「この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築され」というような表現、地域の信頼醸成の枠組みという表現なんですが、これも、外務省でまとめられたやりとりを見ると、このことを総理が投げかけられて、これに対して、信頼醸成の対話は関係各国間の正常化が行われるにつれ整備されていくだろう、共和国もそのような対話の場に参加する用意があるという記録が外務省から出されているんですが、これは、その枠組みの中に入る用意があるということでよろしいんでしょうか。
○田中政府参考人 「この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、」ということでございますし、直ちにそういうものが立ち上がるということを想定しているわけではございません。ただ、将来的な方向として、今委員御指摘のとおり、将来的には参加をする用意があるということでございますので、この六者協議というものの重要性は北朝鮮側も認識をしているというふうに考えております。
○保坂委員 時間が近づいてきましたので、最後の質問にします。
大変困難なこの交渉、交渉を始めるまでにも大変大きな問題が山積みしていると思います。しかし、この交渉をしっかりと進めて正常化というゴールにもし至ったとすれば、あるいは至る過程で、今六者間の話もありましたけれども、日韓条約の第三条で、当時、大韓民国が朝鮮における唯一の合法政府、こういう部分も含めて、これは韓国とも当然話し合わなければいけないでしょうけれども、そういったことも含めて考えられているというふうにとらえてよろしいでしょうか。
○田中政府参考人 日韓基本条約の中で、唯一合法政府というのがございますが、あれは国連決議を前提にしている。国連決議は、国連が監視することができた地域、すなわち三十八度線以南ということでございますので、日韓との基本条約を修正するという必要性はないということでございます。
○保坂委員 では、最後に外務大臣に、そういった今まで質問させていただいた諸課題を含めまして、今後の交渉あるいは交渉に至る努力、いつごろどのように始められるのか伺って、終わります。
○川口国務大臣 まだ入り口の手前にいるわけでございまして、これから入り口に入るためにも多くのことをしなければいけませんし、入り口に入った後、問題解決のためにさまざまな努力を重ねなければいけないと思っております。
今最も優先的な課題としてございますのは、拉致された方々の家族の方、この方がお望みになるのであれば、現地に行き、生存していらっしゃる方の場合にはお会いいただいて確認をいただく、あるいは不幸にしてそうでないとされている場合には、どういう状況でそうなったかということが、事実関係が究明されるように、そういうことのための努力を、今とりあえずしなければいけない最優先課題だと考えております。
そのために、外務省の中には、支援をするためのチームを今立ち上げつつございます。それからまた、入り口に入った後でも、この拉致の方々の関係の議題というのは、これは最優先課題と考えておりますし、それからその他のさまざまな問題がございますので、これらに精いっぱい取り組んでいきたいと思っております。
○保坂委員 終わります。
2002/09/20-3 |