2002/09/26-1

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参院・決算委員会 平成十四年九月二十六日(木曜日)

○三浦一水君 自由民主党の三浦でございます。
 冒頭、先般の総理訪朝につきまして、その評価と、今後の交渉に臨む外務省、川口大臣としての決意をお伺いしたい、そのように思います。
 今回の小泉総理の訪朝につきましては、国交のない国への総理の訪問としましては、鳩山総理のソ連訪問、田中総理の中国訪問に次ぐ歴史的なものがあるという評価が一般的であり、私もそのことは高く評価をしたいと思います。今朝も、アメリカのケリー次官補が北朝鮮との協議に臨みたいといったようなことが報道されておりました。アメリカに先んじて、あるいは米朝の協議に対しても道を開いたという意味合いも持てるのではないかと思っております。
 あえて申しますが、非難ばかりを受けておられる事務方の皆さん方にも、その御苦労を多としたいというふうに思います。
 しかし、最大の懸案でありました拉致問題につきましては、八名の方が死亡なさっているという情報であります。このことは、本当に私自身も愕然とする思い、北朝鮮という国は我々なかなかイメージを持ちにくい国でありますが、本当に言われているとおりの国だったのかなという思いすらします。そしてまた、今の限られた情報の中では非常に不自然だということを素人ながら指摘をせざるを得ないんだろうというふうに感じております。これはもう御家族の心痛はもとよりでございますが、国民全体が到底この情報では納得できないという思いをすべてが抱いている現状ではないかというふうに思います。
 加えて、外務省のその後の対応というものも誠にずさん極まりない。私も与党としてもこれは言わざるを得ない状況でありまして、なぜあの簡単な生年月日の発表が遅らされたのか。これは、衆議院での外務委員会のいろんな話、田中局長のお話を聞きましても、これはとても納得できるものではないというふうに今日まで感じております。
 本当にそういう意味では、御家族の心情を逆なですることはもちろんでありますが、瀋陽の総領事館の事件以来、国民の不信というものを更に、外務省に対する不信というものを増す結果になっているのではないかと私自身としても懸念をいたしますし、独断専行と言われてもこれはやむを得ない、そういう今回の外務省の対応ではないかというふうに感じております。
 一方でマスコミの世論調査では、今回の小泉総理の北朝鮮訪問を評価をし、国交正常化交渉を再開をすべきだと認める方々が五四%に上るという報道がございました。しかし、また一方で、先ほど申しましたことを反映するわけでありましょうが、北朝鮮とは急がず粘り強く交渉をすべきだと回答した人が一方で七六%にも及ぶということであります。この調査の結果は、国民の圧倒的多数が自らの犯罪を認めた北朝鮮との間で国交正常化にこのまま進んでよいのかという素朴な疑問を抱いていることを示していることではないでしょうか。
 私は、実は九八年の三月に北朝鮮を自民党の食糧事情調査団の一員として訪朝をいたしました。中山正暉団長の下でであります。
 そのときに私が自分の目にしましたものは、車はあっても走らせるガソリンがない。高速道路を二日間の時間の中で三百キロ走行をしました。その間に、私の記憶では、擦れ違った車、後続の車、これらについては十台ぐらいしかなかった。ほとんど、六車線もあります、往復六車の高速道路は我々の専用的な状況であったということを思い出します。そして、農村を視察し、思いましたことは、買い出しの方々が非常に多いと。買い出しする分はまだ北朝鮮にもそういう食料があるのかなというふうにも思いましたが、そんな状況でありました。
 果たして一面では、言われているようにこの国が、我々が本当に事を構えたときに、あるいは海外を侵略する、近隣諸国を侵略する力が本当に残っているのかな。夜の町の暗さからもそういうことを素朴に思ったことがございました。
 今回、今、この金正日総書記におきましても、今回の決断をしてきたということは経済的な理由というものが非常に大きいものがあるだろうと。それがまた政権の安定にもつながっているということは間違いのない事実であろうと思います。私たちに接する向こうの幹部の皆様方の表情というのも、本当に本音においては、もうのどから手が出るほど海外の資本と支援が欲しいというのが本音ではないかということを直接感じたところでございました。
 そういう北朝鮮、今後国交の正常化を図っていこうということであります。であるならば、もう一つの私は選択肢は、今の異常な政権の中で、あくまで独裁国家であります、あくまで独裁国家であります、この体制の中で、その政権の延命につながるような経済協力等となるならば、これはもう世界的に我々が非難されるだけの結果になるということではなかろうかと考えております。そこで、内部崩壊を待つというのも、逆説ではありますが、一つの私は選択肢になるんだろうということを今の北朝鮮の状況から見ることもできるんではないかというふうに感じます。
 改めて、川口外務大臣のこの総理訪朝に関しますその評価と、それから今後交渉に臨まれます決意についてお伺いをしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) ただいまの三浦委員の北朝鮮との関係についてのお考えにつきましてはきちんと注意深く伺わせていただきました。ありがとうございました。
 この総理の訪朝に関して、国内でも様々な御意見をいただいております。
 まず、この訪朝に際して、拉致された人の中で八人の人が亡くなっていらっしゃるという情報が北朝鮮からもたらされたということに関しましては、亡くなったとされた方も、それから生存をしていらっしゃるという方についても、御家族の方のお気持ちは、今までの長い間の様々な御心痛の上に、さらに今、今回こういう情報があって、どれほどつらいお気持ちをお持ちであるかとお気持ちをお察し申し上げますし、非常に残念に思っています。
 その中で、総理の訪朝につきましては、委員も御指摘いただきましたように、これは日本と北朝鮮の間が戦後半世紀にわたって、距離的には近い隣国であるにもかかわらず国交の正常化がなされないような状態であるという極めて不正常な状況を打開できるかどうかということの御判断をなさりたいということで行かれたわけでございますけれども、委員も御評価いただきましたように、これについてはブッシュ大統領を始め、総理の御努力に対して強い支持が寄せられているわけでございます。先般、総理が出張なさいましたコペンハーゲンでのASEMの会議でも、これに対して支持の発言が数多くございましたし、この朝鮮半島についての宣言もそこで採択をされたわけでございます。
 こうした正常でない状態を国交正常化する、できる状態に持っていくということは我が国として歴史的な責務であるというように総理はお考えでいらっしゃいますし、私も全くそういうふうに思っております。また、日朝関係が不安定あるいは不正常であるということは、近隣諸国を含める北東アジアの平和と安定にも非常に大きな影響を与えるわけでございまして、私どもとしてはこれを念頭に、このプロセスがアジア、北東アジアの平和と安定に資するような形で行うということが大事だと思っております。
 日朝平壌宣言というのが出されているわけでございまして、この宣言に示されています精神と基本原則にのっとって、様々な日朝間の諸懸案があるわけでございますし、また安全保障上の懸念、ミサイルの問題等もあるわけでございまして、そうした問題を包括的に処理をしていきたいと思いますけれども、まずその前に、拉致をされた方々の真相の究明、事実関係がどうであったか、また、今、生存されていらっしゃる方の生活、あるいは亡くなったとされている人についての、どういうことであったかといったようなことについてきちんと解明をしていく努力を全力を尽くしてやっていきたいと考えております。
 そうしたことをしながらこの正常化の過程を、先ほど申し上げましたような懸案を包括的に議論をし、前に進めながら正常化に向かって全力を尽くしていきたいと思います。
 外務省といたしましても、いろいろな外務省に対しての御批判がずっとあるということは承知をしておりまして、反省すべきところは十分に反省をしておりますし、そういった御指摘を今後のこの問題の対応に当然生かしていく、反映をさせて行動で国民の皆様に外務省が懸命にこの件について努力をしているということを理解していただけるように努力をしたいと考えております。

○三浦一水君 田中局長にちょっとお尋ねをしたいと思います。
 飛行機が北朝鮮に着いた、その状況をテレビで見ました。全く、金大中さんが行かれたとき、あるいはプーチン大統領が昨年、一昨年に訪朝されたときと様子が違う。というのは、軍部の姿が全く、軍の高官という制服組は見えないという点を一つ気付きました。これは、国家元首がお見えになるときの対応としては、私は若干不自然にも見えたし、大方の予想を裏切るものじゃなかったかなと思ったんですが、局長は外交に長年携わってこられましてその点どのような印象を持たれたのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

○政府参考人(田中均君) これは、事前の協議におきましても北朝鮮側はできるだけ歓迎をしたいという意向がありました。他方、小泉総理は、これだけ重い懸案があり、これだけ重いことを扱う訪朝であり、御自分の訪朝というのは全く実務的に、そういう一種のプロトコール的なことであるとか、あるいはそういう歓迎の行事であるとか、そういうことを省きたいという明確な意思を持っておられました。ですから、事実を申し上げれば、そういう私たちの主張に応じて北朝鮮側は出迎え、それから会談等をそういうアレンジを行ったということでございます。
 実は日本の場合に小泉総理が対外的に国家元首という形ではないわけですし、実際の出迎えにおきましても、北朝鮮側からは金永南という国家主席の代行的な役割をしている方が出迎えに来ていた。これは、通常、一つの国の首相、総理等が訪問するときに一般的な形であるという説明を聞いております。

○三浦一水君 北朝鮮側からは、そのような派手というか、言葉がちょっと適当でないかもしれませんが、出迎えをしたいという申出はあったんですか。

○政府参考人(田中均君) そこは、議論の中で私どもが総理の意向として、今回については、これだけ重い厳しいことについて金正日総書記と直接率直に話をするということなので、それ以外のことは遠慮をしてほしいということを申しておりましたから、そういうことを勘案したんだろうというふうに思います。彼らは、通常の歓迎はしたいという気持ちは持っていたようです。

○三浦一水君 北朝鮮側から見ると、一方的に、特務機関あるいは軍の一部と、これはいわゆる工作船とこの拉致問題についてでありますが、という金総書記のお話があったということであります。
 その点、これはひっくり返してみますならば、軍関係者としては、北朝鮮の、非常に面白くないことであろうなという感じも、断罪をされたということでもあろうかと思いますが、政権と軍ということ、制服組は全く見えなかったということについてはそういう感じというものがあるんでしょうか。どういう分析をなさっていますか。

○政府参考人(田中均君) ちなみに、名前は失念いたしましたけれども、飛行場には国防大臣に当たる人も来ていたということであります。それから、確かに金正日総書記が会談で言われたこと、特殊機関であるとか軍の一部というようなこと、それは正に、金総書記のそういう軍の掌握能力がどの程度なのかということは、これから私どもも注意深く見守っていかなければいけないというふうに思います。
 確かに、実際にそのようなことを行った軍との関係がどうなっているのかということについては、今後、拉致の問題については事実の調査のミッションを今週の土曜日から送ることにしていますし、そういう事実関係の掌握ということの中でも調査を進めていかなければいけないと思いますし、今後、安保協議その他におきましても、その点は十分見極めながら、北朝鮮という国があの平壌の宣言に盛られている基本的な原則にのっとって行動するかどうかということについては私どもも十分見極めていかなければいけないことであるというふうに考えております。

○三浦一水君 我々が北朝鮮に感じる脅威というのは軍事的なものがまず第一であると感じます。国内においての勢力ということからもそれが一番であることは間違いないと思います。十分注意を払いながら今後分析を行っていっていただきたいと要望を申し上げておきたいと思います。
 拉致問題について大臣に更にお尋ねをしたいと思いますが、本当に御家族は無念だったと私は思います。金総書記は小泉総理の断固とした抗議に対しまして初めて拉致事件の存在を認めて、遺憾なことというおわびあるいは特殊機関の犯行であり既に責任者を処罰したと、そこまでの発言を引き出したということは、大きなこれは一方で成果だと思います。
 拉致問題は、北朝鮮側が認めたように、国家による犯罪行為であります。テロ行為であります。金総書記の説明だけでは、先ほども申しましたように、到底納得できるものではない。国民の九一%の方々が、これも報道によるわけでありますが、全容解明を前提として正常化交渉に当たるべきと明確な意思表示をされていることでも、そのことは分かることができるというふうに思います。
 具体的に私は、死亡なさっているとするならば、遺体の返還、また家族に対する補償、御遺族の心情に沿った対応が求められると思います。国家として求めるべきものも求めるべきだというふうに思います。生存者の御家族との面会、それから生存者の意思に基づく帰国については、時期、手順ができるだけ速やかに明確にされなければならないというふうに思います。
 そこで、政府として、拉致問題について明確な解決が図られない限り、私は日朝国交正常化交渉、そして他の案件について具体的な交渉に入るべきではないと思います。川口外相の御見解を賜りたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 委員が今おっしゃられましたように、拉致問題につきましては、首脳会談におきまして金正日総書記から、遺憾なことであっておわびをする、関係者については既に処罰をした、今後二度とこのような事案が発生しないようにするという趣旨のお話があったわけでございます。
 私どもは、拉致問題の解明というのは一連の様々なやらなければいけないことの中で最重要な課題だというふうに考えております。御家族のお気持ち、御要望を十分に踏まえながら、委員が今おっしゃられましたように、生存者と御家族との面会あるいは生存していらっしゃる方の自由意思に基づく帰国等、そして亡くなったとされた方についてはその状況等について十分に解明をしたいと考えております。
 九月の二十八日から政府の調査団を派遣をすることといたしておりまして、昨日発表をさせていただきました。こういった状況の事実関係の解明をきちんと行いながら、前に前進をしていきたいと思っております。

○三浦一水君 拉致問題について更にお尋ねをしますが、北朝鮮によるこの事件は、川口外相も衆議院で答弁をなさっているように、我が国の主権の侵害であることは明白であります。今回、北朝鮮側から伝えられた拉致被害者八名の死亡の情報は、その真偽をまず早急に確認する必要がある。そういう意味で、適宜な調査団の派遣だというふうに感じております。
 今後、この方々、亡くなられた方あるいは行方が不明な方、これが正確に事実として判明をした場合には、許し難い私は国家犯罪を犯した北朝鮮に対し、その犯罪行為を糾弾をし、責任を明確にさせなければならない、このことは絶対の条件だというふうに感じております。北朝鮮に対し拉致事件を犯した関係者の特定と処罰、身柄の引渡しはもとより、我が国と被害者御家族に対する謝罪、損害の賠償を求めるべきだと思いますが、再度、川口大臣にお尋ねをしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 今回派遣をいたします政府調査団の仕事として、今、委員がおっしゃったような拉致事件についての真相究明のため、事実の解明の努力を全力を挙げて行うということが今度のその調査団の仕事でございます。これをベストを尽くして最善の努力を行って先方と話をしていく、そして真相を解明していくということが大事であると思います。そうした真相究明を行う、そして国交正常化のプロセスの中でそれをきちんとしていくということが非常に大事なことだと考えております。

○三浦一水君 田中局長にお尋ねをします。
 二十一、二十二日に中国大連で日朝協議、非公式協議が行われたと聞いております。報道によりますと、八人の死因の説明については、北朝鮮側は十分に説明する準備があるという報道もなされているようでございますが、当然今回の調査団の派遣についてもその協議があったものかと思いますが、その内容をお知らせいただきたいと思います。

○政府参考人(田中均君) これは大臣が御答弁されましたとおりなのですけれども、私も、事務的に先方と折衝をずっとしておる中で、正に十七日の日に八人の方が亡くなられているという北朝鮮側の情報に接したときの気持ちをいまだに引きずっている。
 で、やっぱり重要であるのは事実の解明をすることであるというふうに思いますし、正にその基本方針、これを最重要な課題として、まず事実の解明を進めると、こういうことは先方に強く申入れをしたということでございます。先方は、これは正に金正日総書記が明確に拉致と認め、謝罪をしたことである、したがってその指示に基づいて情報の全面的な開示をしたいということでございます。私たちはこれを、きちんとした調査団を派遣し、先方から断片的なことではなくて包括的なことをきちんとお話をしてもらう。そういうことに基づいて、当然日本側の疑問とかそういうことも出てくるであろうというふうに思います。
 ですから、必ずしも一回の調査団の派遣によって全容が解明されるということにはならないかもしれません。しかしながら、この点については正に真実に基づいて事実の解明が行われなければいけないということについては、非公式な協議を通じても確認がされている。
 ただ、重要であるのは、私ども非公式な協議を通じてやることというのは、それが公式に確認をされなければ何の意味もないということでございますし、今回の事実関係の調査団の派遣等を通じて、できるだけ公式的に事実関係の解明を行っていくということだと思います。そういう段取りについて先方とお話をさせていただきました。

○三浦一水君 これまでの努力のまた延長線上にある御努力かと思います。しっかりやっていただきたいと思います。
 それから、今回の八件十一人のほかの方々においても、救出の会によりますと七十人程度がその疑問があるんではないかというふうなお話も聞いております。今朝また、報道では十人の新たな拉致ではないかという問い合わせが救出の会にあったと。そういう意味では、しかるべき機関を設置をしてもらいたいという救出の会の代表のお話も今朝ちょっとテレビで目にいたしました。この点は是非御検討をされるべきだろうと私としても要請をしておきたいと思います。
 これらのその他の方々について、今後の対応をどう図っていかれるのか、その方針についてお尋ねをしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 様々な新しい懸念あるいは拉致されたのではないかと考えられているその御家族のお話を私も報道で接しておりますし、外務省も警察と連携を取りながら話をしておりますけれども、まず、これらについては捜査当局においてきちんと事実の解明が行われるということが第一歩であるかと思います。そして、その上で、外務省は捜査当局と十分に連携を取りながら、その状況に応じて、当然、その疑惑が非常に高い、疑いがあるということであれば北朝鮮に対してその話をしていくと、そういうことでございます。

○三浦一水君 先ほど私が九八年に訪朝したと申しましたが、その折に典型的なこの八件十一人の枠外にあられる寺越武志さんにお会いをしてきました。そのお母様の友枝さん共々におうち、四LDKぐらいであったと思いますが、に訪ねて、若干の懇談をさせてもらいました。
 そのときに、私もちょうど中華人民共和国に昭和五十四年当時いた、共産中国にいた経験がございます。そのことでいろんな社会、共通点も北朝鮮とはあるようでございまして、そういうことを思い浮かべながらお話をさせてもらいましたが、三十数年北朝鮮での生活を経験されて、非常にたどたどしい日本語の中でお話をされました。印象的だったのは、大変北朝鮮の国家を誇りにされて、北朝鮮側も自信を持って出されたんでしょうからそれは当然のことかと思います。そして、家族と自分の生活と環境等、非常に注意を払いながらたどたどしい中にも話されておりました。見ようでは痛々しくも見えたことを思い出します。
 これらの本当に解明すべき内容は、八件十一人以外の方々にも私は多数あるような感じがしてなりません。また、裏付ける話もあるようでございます。この点はしっかり今後やっていただきたいというふうに思います。
 次に、再度、リスト問題についてお話をさせてもらいたいと思いますが、あえて私は申しますと、本当に外務省のこの姿勢というのは、この前、総領事館事件の中で英語が分からないとかいう釈明がございました。今回、翻訳に時間が掛かったと。こんなばかな釈明はもうやめた方がいい、私はもう率直に思います。
 この国際化の時代の中に、本当に国民一人一人はそのような、外務省がもう独善的としか言いようがありません。一人を思うような、本当に国民は愚かではないということをこの際きっちりと私は認識をされるべきだろうと思います。その点、本当に、川口大臣も衆議院でもお断りもあったようなことを聞いておりますが、改めてこの参議院の場でその点について川口大臣の感想、また決意もありましたらお話を聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 外務省に対しておしかりをいただいたわけでございまして、私どもは、そういったお一人お一人からのおしかりについてはきちんと、そして重く受け止めて対応をしていきたいと考えております。
 その上で、そのリストの話についてですけれども、これにつきましては、そのときに渡された資料について、いろいろな考え方はそのときにあったかと思いますけれども、不公表である、事務レベルの段階でそのリストが渡されて、口頭では、亡くなられたとされる年、年月についてはお話はなかったということで、その会談の終わりにハングルの文書が渡されたということで、これは赤十字から赤十字あての文章を参考までというようなことであったかと私聞いておりますけれども。
 それについて首脳会談の席できちんとそのお話があったのは、拉致をされた方々の、生存していらっしゃるかどうか、生存していらっしゃる方のお名前と、それから亡くなった方々のお名前であって、そこには、その正式の会談ではそういう、亡くなったとされた年月についての言及はなかったということでございまして、そうした非公式なものを、しかもハングルであったので手間が掛かったというようなこともあって、その後、そこについてはもう話をしなかったということですけれども。
 これについては、そういった、一方で外務省のそのときの判断としては、不確かなものを、ただでさえ様々な情報で御心痛を非常にされていらっしゃる家族の方々に更にまたそういうことで、としては申し訳ないという思いと同時に、また今から思いますと、家族の方々からすれば、少しでも多くの情報を、何でもいいから関係があればとにかく聞きたいと思っていらっしゃるというお気持ち、これは御家族としては本当に当然のお気持ちだろうと思いますので、そういったことを考えて、非公式なものであるけれどもというその前提を付けてきちんとお話をすればよかったと、今になって、その後になってはもちろんそう思っているわけでございますけれども、これについては大変に申し訳なかったと思っております。
 ただ、申し上げたいのは、こういうことについていろいろ御指摘をいただいて、本当にもっともな御指摘だと思っておりますけれども、我々としては、外務省としてはベストを尽くして仕事をしている。及ばないところあるいはその考えの至らないところ、いろいろあるかと思いますけれども、そういうことであるということも是非お酌み取りいただきたいと思います。

○三浦一水君 もうお断りがあっている中に重ねて言うつもりはございませんが、二つの理由を挙げるというのはまずい、これは。二つ理由が挙がればこれは真実じゃないということは一般的に受け止めをします。非公式、それから翻訳に時間が掛かった、これはもう一つで十分なんです、真実であれば。その点はきちっと、やっぱり基本的には真実、情報を公開をしていくということが第一でありましょう、十分留意をしていただきたいと思います。
 それから、本当に、これちょっとやっぱり至らないところがあるという大臣のコメントでございました。これはもう非常に謙虚で、それはそれでいいと思うんですが、ちょっと国家を代表する機関としてはがさつ過ぎるということは更に反省をいただきたいというふうに思います。
 次に、我が国から北朝鮮に対する補償という問題についてちょっとお尋ねをしたいと思います。
 今回、日本側からは、国交正常化後、無償資金協力、低金利の長期借款、もうとても具体的なんですが、人道主義的支援など経済協力を実施する旨を表明をし、終戦前に生じた財産、請求権については相互に放棄する基本原則を確認したということであります。日朝平壌宣言においては、日本側からの経済協力についての部分が他の部分に比べまして誠に今申しましたように詳細であります。これは正に、今回、北朝鮮側が経済的な行き詰まりを打開し、金正日体制の延命を図るべく、我が国からの経済支援を得ることが最大の目的であったことを如実に示すことであると言えますし、日本側がそれに応じたものと思われます。
 何としても、我が国からの経済支援が、ミサイル開発やあるいは南北境界線の大規模な通常兵力の展開など北朝鮮の軍備増強に使われて、本来の目的である疲弊し切った北朝鮮の国民の救済あるいは経済の立て直しに使われるという保証はないわけであります。今後の正常化交渉の中で、この点どのように担保をしていかれる所存か、大臣の御見解を承りたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 委員が御指摘のミサイルの問題につきましては、この日朝平壌宣言でも明記をしておりますけれども、北朝鮮ではミサイルの発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していくという意向を示しているわけでございますけれども、こういったミサイルの開発、配備、輸出、そしてこの技術の輸出については、日本はもちろん、国際社会全体としてこれについては懸念を持っているわけでございます。アメリカが米朝の対話に向けて使節を、ミッションを送りたいというふうに考えている理由の一つも、こういった北朝鮮に対しての疑惑があるわけでございます。
 こうしたことについては、この正常化の交渉の過程の中で北朝鮮とも我が国はきちんと話をしていく必要があると思いますし、また国際社会全体としてこの問題について懸念を持っているわけですから、日本としては米国、韓国、日本と、三国できちんと連携を取りながらこの問題に対処をしていく必要があると考えております。
 委員がおっしゃられたように、我が国の経済、我が国が北朝鮮に対して行う、この中に入っております様々な経済的な支援について申しますと、これは正常化をした後これを行うということでございます。その正常化の過程までにはこの宣言の精神及び基本原則に従ってきちんと議論をしていくと、そういうことでございます。

○三浦一水君 交渉は本当に入口前の段階であると思います。一方で、人道支援的見地で米の食糧援助ということも取りざたされております。私は、これはもう基本論においては人道的見地で食糧援助をすることについては私は賛成できることではないかと思っております。問題は、政権の延命につながるようなことだけに利用がされる、あるいは軍事目的で利用がされる、そのことが問題だと。
 私は、自分の目で見て北朝鮮の国民の皆さん方、我々善隣の日本人としてできることがあるならば自らやりたいという気持ちを率直に持って帰ったことは事実であります。米ならばエンゲル係数というものがあります。話では、やっぱり軍部に先に行くだろう、権力の傘の中にある方々に先に行くだろう、しかし何十年も保存できるものではないし、流用はできません。必ず国内で胃袋に収まるものだ、一人がたくさん食べるわけにもいかない、そういう意味合いがあるんじゃなかろうかなというふうに思っております。
 経済援助は別であります。これから折衝が始まるわけであります。折衝が進んでいった中では、私は、必ず国際的な機関のチェックが必要であろうし、あるいはまた民間NGOも含めたそういうモニタリングの機能を我々が持っていくということが非常に重要なことではないかと思います。その段階の折には是非御参考にいただければというふうに思います。
 次に、工作船の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 工作船の問題について金総書記は、軍の一部が行ったものと思われる、最後に、今後更にそれを調査したい、このような問題が一切生じないような適切な処理を取るという表明をされたと伺っております。
 工作船の出没は、北朝鮮によるスパイ活動や我が国に対する活動であります。拉致事件あるいは麻薬、覚せい剤の密輸事件など様々な犯罪のもととなっているんではないかと言われております。現に、昨年末の奄美大島不審船事件につきましては、勇敢に職責を果たした海上保安庁の三名が負傷をし巡視艦が損害を受けたという重大な犯罪であります。
 政府は、今回の金総書記の発言で事件を終結したものとすることなく、引揚げに、工作船の調査を厳格に行うとともに、犯罪捜査、再発防止の観点から北朝鮮側に毅然とした対応を取るべきだと思います。また、損害賠償の要求をどのように進めるかも含め、見解をいただきたいと思います。

○政府参考人(田中均君) 工作船の問題につきましては、今、委員御指摘のとおり、日朝の首脳会談で金正日総書記の方から軍の関与を認める発言がありました。私どもといたしましては、国家の最高責任者としての発言は重く受け止める次第でございまして、それに基づいて、今後、日朝で安全保障協議というのを立ち上げることになっておりますけれども、委員が御指摘があった麻薬等の問題も含め、すなわち安全保障協議というのは、二国間の安全の問題、地域の安全保障の問題と両方扱うことになっていますので、私どもとしては、正に金正日総書記の発言というものが十分信頼に値するものなのか、それから日朝の共同宣言、平壌宣言の精神、原則というのが守っていかれるものなのかどうか、そういう見極めも含めて安全保障協議の中で検討をしていきたいというふうに考えております。
 当然のことながら、現在、不審船の引揚げが行われ、犯罪捜査が行われている段階でございますから、この捜査についてはきっちり行われるものであるというふうに考えております。

○三浦一水君 訪朝関係はこれで終わりたいと思いますが、熊本県関係者も松木さん、私は熊本県の選出でありますが、いらっしゃいました。亡くなられたという情報であります。是非、今度の調査団でそのことも明確に全容をつかんできていただければなと思います。
 中国・台湾問題について若干お尋ねをさせてもらいたいと思います。ODAの問題であります。
 五十四年、ちょうど私はその年に中国に留学をしました。それからもう累計が対中ODAは三兆円を超えたと言われております。世界の工場だと中国は言われており、我が国のこの空洞化の主なる行き先の、最大の行き先でもあるという状況であります。私も先般上海に行きまして、その高層化された都市、東京をはるかにしのぐ高層化された都市、本当に二十二年前を思い出して、うれしくも思いますが、大変歯ぎしりする部分もあったという率直な感じでありました。
 対中ODAにつきましては、第一に、軍備拡張のために軍事費に転用されているんではないかという疑いが今も消えません。第二に、中国の経済発展が著しく、二〇〇〇年には約五百十二億円に達する援助を中国から第三国に実施をしているという状況があるようでございます。本当にこのことを、国民、納税者に納得できる説明はそのことからはいただいていないんではないかというふうに思います。第三には、中国側が対中ODAを、言葉としても私は聞いたこともございますが、戦後賠償の代わりだとみなしている側面があるんではないかという疑問であります。
 このようなことから、政府は昨年十月に対中経済協力計画を策定をされたようでありまして、内陸部あるいは環境保全、それから教育、農村の生産向上にODAの重点を置くという方針も立てられているようであります。予算も二四・七%削減をされたということでございますが、いずれにしましても、対中ODAが成果を上げているかという世論調査に対しまして、上げていないという回答が六五%に上ると聞いております。成果が上がっているというのは二二%しかないと。これも報道による数字であります。今後の対中ODAについて援助額を減らすべきであるという回答をした人が四三%で最も多いと。これも、第三国への援助がなされているという現状、それから中国の先ほど来申します経済活況の中では当然のことかなというふうに思います。援助をやめるべきという人は一三%いる、他方、現状維持派が三三%。このように、我が国国民の民意は対中ODAの削減に傾いているということが明白であると言えます。
 深刻な経済、財政、我が国のであります。それを考えるときに、対中ODAのいま一遍の精査に基づく削減を断行すべきと考えますが、川口大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 中国への経済協力の現状につきましては、先ほど委員がおっしゃられたように、対中経済協力計画に基づいて案件を精査をし、そして毎年援助の額を決めていっているわけでございます。
 中国と我が国との関係を考えてみますと、中国は隣国であって、政治、経済、文化、様々な面で我が国と密接な関係を持っている国であるというふうに思います。また、経済発展が、委員も御指摘のように最近非常に目覚ましいということで、我が国との関係についてもかなり多様な側面を持ってきているというふうに思います。そういった国と我が国が密接な関係を維持をしていくということは、日中両国にとっても、またこの地域全体の平和と安定にとっても非常に重要なことであると思います。
 経済協力については、引き続き対中経済協力計画に沿ってきちんと案件を精査し、考えていきたいと思いますし、その上で、国民の皆様方に対して中国に対する我が国の経済協力の現状と、そしてそれが十分に透明性を持って国民の皆様に御理解をいただけるように様々な努力をしておりますけれども、そういう努力をし続けていきたいと思いますし、中国に対しては、私も先般、中国に今月の初めに参りましたときに言いましたけれども、国防費の増大についての懸念あるいは第三国援助についての懸念を国民の皆様が大勢持っていらっしゃるということを考え、私からも、国防費の状況あるいは第三国援助の実態等について透明性を持ってきちんと説明をしていってほしいということをきちんと申し入れた次第でございます。

○三浦一水君 その点は、中国側は反応はいかがだったんでしょうか、申入れに対しては。

○国務大臣(川口順子君) 八月の終わりからいろいろなところに行って、今直ちにその反応がどうだったかということを思い出せないんですけれども、余り明確な形で反応はなかったのではないかというふうに今考えますけれども、これについて銭其シン副総理からおっしゃったお話は、失礼しました、日本からの経済協力支援が現在まで発展し、これが減っているということについては理解をする、それから一方で、日本が経済協力と関係のない事柄、国防費とか第三国支援と結び付けることがないようにお願いをしたいということでございまして、私の言ったことについては理解をしてくれたと私は思っております。

○三浦一水君 次に、日台関係について一点お尋ねをしたいと思います。
 我が国のアジア外交を幅広くしていく必要性があると思います。その選択肢を広げていくという観点から台湾との関係を今後いかに実質的なものに築き上げていくか、川口外相の見解を賜りたいと思います。
 さらに、政府がODA予算から実施してきた台湾に対する技術協力が今年度を最後に打ち切られる運びとなったと聞いております。日台関係の希薄化に拍車が掛かるような結果にならないかと私は大いに懸念をするところであります。その今後の対応についてもお伺いをしたいと思いますが、本当に、台湾海峡を我が国の船籍が通る頻度というのは十分間に一隻だというふうに聞いております。御存じのとおり、そこの制海権というものは台湾が現在制していらっしゃるという状況であります。
 私は、いろんな形で私的に台湾の方々と友人も多いわけであって、話をさしてもらいます。その中で、本当に率直に日本人に大変な好意を持っていただいているということは、どの国にも私はないことではないかなという感じがいたします。台湾海峡の問題につきましても、それを恩を着せるような話を向こう側から聞いたことはない。
 私は、本当に実質的な関係を築き上げていくことは非常に重要だと思っております。一つの中国という原則においては、アメリカ、米国、日本、これは変わりがないわけであります。しかし、向こう側がその運用について感じていらっしゃることは、なぜ、同じ一つの中国、台湾側からも認めながらも、こんなに日本と米国で差があるのか、全く日本のそれは柔軟性を欠くものだといういら立ちは強く持たれているということを感じております。
 そういう中で、昨年十二月ですか、平沼経済産業大臣にWTOの制度下におけますFTAの申入れがあったというふうに伺っております。台湾の林信義経済部長からであったというふうに聞いております。
 台湾側は日台FTAの推進について熱心に取り組んでおられるようでありますが、政府として、今、経済界にいろんな検討をお任せになっているということを聞いておりますが、台湾も同じくWTOのもうメンバーで既にあるわけでありますから、経済協議を私は進めていくべきだろうというふうに感じております。
 その点につきましても大臣の御見解を賜りたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) まず、台湾と我が国の基本的な立場ということですけれども、これは日中共同声明に従って、非政府間の実務的な関係として民間及び地域的な往来を維持していくということでございます。
 現実には、アジア地域全体の、そして台湾の経済発展に伴って、経済的な交流というのは民間レベルで非常に活発になってきていると私は考えておりますし、人的な交流も活発になってきているということだと思います。
 政府といたしましては、基本的な、先ほど申し上げた基本的立場の下でこうした経済交流が順調に進んでいくということを期待をしているわけでございます。
 台湾との間では、またWTO、それからAPECといった多国間の枠組みを踏まえまして、民間レベルで経済連携の在り方について議論をするということは有意義であると考えております。台湾はWTOにごく最近加盟をしたわけで、正式に加盟をしたばかりで、今年の一月でございますけれども、まず台湾が加盟をするときに約束をした事柄について、これを確実に実施をしてもらうということが大事であるというふうに考えております。

○三浦一水君 非公式でありますが、日本経団連が窓口となりまして東亜経済人会議、直近は七月二日に行われたというふうに聞いております、そこでの議論の中身をちょっと聞きましたところ、促進すべきだという意見と、中国との関係あるいはアジア全体の調整をどう図るかという視点も議論をされているようであります。
 是非、私は、非常に近く、なおまた我々との関係が深いこの地域、今世界の潮流の中でしっかりと我が国として関係を築いていくべきだろうと思います。経済的な側面にとどまらないというふうに感じております。是非御検討いただくことをお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 防衛庁関係者には大変失礼申し上げました。

○中島啓雄君 おはようございます。自由民主党の中島啓雄でございます。
 私は、三浦委員に続きまして、防衛庁関係の問題について若干質問をさせていただきたいと思います。
 まず、先ほどもちょっと触れられましたけれども、不審船、領空侵犯等への対応について伺いたいと思いますが、不審船事案、九九年の三月に能登半島沖で不審船が見付かったと。第一大西丸という偽装した船の発見から海上保安庁へ連絡するのに六時間以上掛かったと。第二大和丸についてはもう少し短かったようでございますが。それから、海上保安庁が不審船と判断をして官邸に対策室が設置をされて、いろいろ議論の末、海上警備行動が自衛隊に対して発せられたのが十八時間後だというような報道を承知をいたしております。
 それから、昨年の十二月の九州南西沖不審船事案、これは例の沈没した船の話でありますが、これはP3Cの撮影から伝送、解析開始まで五時間掛かったと。それから不審船と判断するまでに七・五時間掛かったと。それから、本年九月の能登半島沖の事案も若干時間が掛かっているというようなことで、やっぱり領域の警備というのは防衛、外交の基本問題でありますので、これに迅速に対応するということが非常に重要だと思いますが、こうした反省を踏まえて、その後どういうような対策を取っておられるか、御見解を伺いたいと思います。

○政府参考人(守屋武昌君) 先生御指摘の平成十一年三月が第一回目でございますが、この事案では、教訓・反省事項としまして、不審船事案に迅速に対応する必要性が指摘されました。その観点から、不審船を発見した場合の初動対処、海上警備行動の発令前後における相互間の役割分担等について規定しました海上保安庁との間の共同対処マニュアルの策定、情報共有及び対処要領に関する共同訓練の実施等、連携の強化を図ることといたしました。それから、ミサイル艇整備に当たりまして、高速の不審船を追尾するための速力向上等の措置を講じたところでございます。それから、当時は不審船の強制的な停船が大きな課題となりましたので、艦艇、航空機の能力強化ということで十二・七ミリ機関銃等を整備すると。それから、強制停船措置用装備品を研究すると。この研究により、今年度要求に防衛庁としましては平頭弾という特殊な弾を要求いたしております。それから、武器使用権限の強化を内容とする自衛隊法の改正の措置を講じたところでございます。さらに、停船した不審船に円滑に立入検査を行えるよう特別警備隊の新編、艦艇要員確保のための充足率の向上、立入検査用機材の整備を行ったところでございます。
 それから、二回目の平成十三年十二月の九州南西沖不審船事案では、この事案でも教訓・反省事項としまして、やはり不審船事案に迅速に対応するという指摘が、反省がございましたので、政府としましては、工作船の可能性の高い不審船ですが、これにつきましては不測の事態に備えまして、政府の方針として当初から海上自衛隊の艦艇を派遣するということをいたしました。それから、情報伝達、情報共有の在り方が問題、課題となったことから、P3Cから基地への船舶画像伝送能力の強化ということで静止画像伝送装置等を装備することにいたしました。それから、このP3Cが帰投した基地から市ケ谷の海上幕僚監部等への画像伝送能力の強化ということで回線の高速化を図ったところでございます。それから、現場隊員の安全確保のために新型ミサイル艇を整備しているわけですが、これに防弾対策を講じることとしたところでございます。それから、遠距離から正確な射撃を行うための平頭弾の措置を講じたところでございます。
 それから、先般の九月四日の第三回目の不審船事案でございますが、この事案では今までの教訓・反省等が生かされまして、防衛庁としてはおおむね迅速な情報伝達ができたものと考えているところでございますが、今後とも体制整備を引き続き進めまして海上保安庁との関係を密接に連携しまして、日本としましてより迅速な対応を取れるように対応してまいりたいと考えているところでございます。

○中島啓雄君 ありがとうございました。
 特に、P3Cの写真伝送などはインターネットであっという間に送れるという時代になっておりますので、是非、早急に完全な整備をしていただければと思います。
 領域の警備というのは、当然、第一義的には領海については海上保安庁の所管ということになっておって、マニュアルを作成されたというお話もございましたが、海上保安庁としてはどんな措置を取っておられますでしょうか。

○政府参考人(深谷憲一君) 不審船の事案につきましては、先生御指摘のように、政府といたしましても警察機関でございます海上保安庁がまず第一に対処するという基本的な考え方に立っておるところでございますけれども、先ほど先生から御指摘のございました、九九年の能登半島沖の不審船事案がございましたけれども、先ほど防衛庁からも御答弁ございましたように、それの教訓あるいは反省を踏まえまして共同対処マニュアルを作成いたしました。あるいは共同訓練も防衛庁との間で実施するなど、私ども海上保安庁と防衛庁、これ共同して不審船に対処し得るようその連携の強化に努めているというところでございますが、これからも、昨年十二月に九州南西海域の不審船事案というのが発生いたしました。これにつきまして、政府内におきまして検証結果というものを取りまとめたところでございまして、更には御指摘のように本年九月の四日、これも日本海中部の海域におきまして不審船事案が発生いたしました。
 今後、その連絡体制につきまして、内閣官房を中心といたしまして関係省庁によります情報の連絡についての検証を更に行おうというふうなことになっておりますが、こういったことを踏まえまして、私ども海上保安庁それから防衛庁の間でより一層迅速な連絡の確保などを図りつつ、更に改善すべきことがあれば改善をし、不審船事案というものに万全を期して、国民の皆様の安寧秩序に貢献してまいりたいというふうに海上保安庁としては思っているところでございます。

○中島啓雄君 ありがとうございました。
 金正日委員長は、不審船事案について今後このような問題が一切生じないよう適切な措置を取ると、こう述べておられるようでありますから、こういうことで一切不審船事案がなくなれば非常にハッピーなことではありますが、現実はなかなか甘くないんで、是非防衛庁、海上保安庁その他、危機管理体制の強化をしていただきたいと思います。
 昨年、礼文島の北方とか青森県の沖等で領空侵犯というようなこともあったわけでありますから、これも同時に一つの課題として頑張っていただきたいと思います。
 次に、テロ対策等について伺いたいと思います。
 ちょうど九月十一日のアメリカのテロから一年をたったわけでありますが、テロ、ゲリラ、あるいは大量破壊兵器とか生物化学兵器の使用といったような危機管理というのがこれ非常に難しい。国対国の関係ではなくて、どこにいるか分からない敵と戦わねばならぬと、こういうことで、アメリカは当事国でありますからテロ直後に四百億ドル、それから七月になって二百八十九億ドルというような追加支出、日本円に直しますと八兆円を超えるような追加支出をやって国家安全保障省を設置をするんだとか、九月二十日のブッシュ大統領の国家安全保障戦略では、必要な場合は先制攻撃による自衛権の行使も辞さないというようなことを言っておられます。
 先制攻撃にはにわかに賛成するわけにはまいりませんけれども、これだけ大変な力を入れてテロ対策をアメリカはやっておるわけでございますが、我が国においてはどういう対応策を考えておられるのか、まず内閣の方から伺いたいと思いますが。

○政府参考人(村田保史君) テロ、ゲリラ事案や生物化学兵器が使用される事案、こうした事態において国民の安全をいかに確保するかという問題であります。こうした事態の対応において最も重要なことは、言うまでもありませんが、これを未然に防止することであります。そのため、政府としましては、平素から情報収集体制を強化し、出入国管理の徹底を図るほか、重要施設の警備の強化あるいは資金源対策など様々なテロ防止対策を進めているところであります。
 しかしながら、こうした努力にもかかわらず、万一我が国において昨年のアメリカにおきますような大規模テロが発生した場合、あるいは生物化学兵器使用のテロが発生した場合などにおいては、政府全体として取り組むべき重大事案として、内閣の主導の下に関係省庁が相互に連携して、被害者の救助を始め被害の拡大防止、犯人の検挙等に全力を挙げて取り組むこととしております。
 大規模テロなどの緊急事態については、これまで警察、海上保安関係法、自衛隊法、その他の関係法によって対処体制を整えてきておりますが、今後とも、これの不断の見直しを行い、改善強化をして、いかなる事態にも対処できる安全な国づくりを進める考えでございます。

○中島啓雄君 是非よろしくお願いをいたします。
 特に、テロ対策というときには情報戦略というのが非常に重要ではないかと思います。IT時代を迎えて、情報収集、解析というのを、最先端の技術が要るでしょうし、いわゆる情報ネットワークの整備であるとかセキュリティーの問題であるとか、そういった問題に対処するためには、非常に高度な専門知識を持った専門家を養成をしていくというようなことも大事だと思いますので、まず第一に、そういった通信ネットワークその他の技術的な問題について伺いたいと思います。
 なお、防衛庁では官房情報通信課というようなことを設置されて積極的に取り組んでおられると、こういうことでありますが、民間ではいわゆるチーフ・インフォメーション・オフィサーというようなことで、重役が情報について総合的に見えるというような体制もできておりますので、その辺について伺いたいと思います。

○副長官(萩山教嚴君) ただいま中島委員の御質問でございますが、当庁といたしましては、IT化の推進については次の三つの政策を重点的に推進しているところであります。
 一つは、防衛庁、自衛隊を通じて、高度なネットワークの環境の整備、また中央から第一線までの情報共有等を目指す情報通信機能の強化、三つ目には、ネットワークの監視や緊急対策等を一元化的に実施する組織の設置、米国の研究機関への留学などによる専門家の確保育成など、情報セキュリティーの確保に努めております。平成十二年六月にIT担当の防衛参事官を設置をいたしたところであります。これは、IT関連業務が一体的に体系的に行うために、この情報通信課を設置したところであります。
 委員指摘のように、防衛庁、自衛隊におけるIT化を今後推進していくためには、統括責任者たるCIOの機能強化が必要だろうと考えられるところから、防衛庁における統括責任者である防衛参事官を中心に、推進体制の強化に今後とも引き続き重点的に進めてまいりたいと考えております。
 以上であります。

○中島啓雄君 ありがとうございました。是非、よろしくお願いをいたします。
 次に、いわゆる情報収集とインテリジェンスの問題について伺いたいと思いますが、実は九月十八日に、アメリカの議会の合同委員会における証言では、例のテロについて、九八年段階から既にビンラーディンが非常に危険であるというような情報が流れており、昨年春から夏に掛けてはそういった情報がピークに達して、アメリカ国内、ニューヨーク、ワシントンなどを攻撃するというような情報もあったというような証言が出ておりますが、残念ながらその教訓がなかなか生かせなかったということで、情報戦略というのは非常に難しいけれども、これを何とか活用をしていかなければいけないと、こういうことだと思います。
 そういうことで、今どういうことを考えておられるかということをお聞きしたいと思いますが、特に画像情報については、今はどうも防衛庁は外国の衛星に依存をして画像情報を取っておられるというように聞いておりますが、我が国内、国産の衛星による自前の情報収集というようなことも考えておられるのかどうか、その辺を伺いたいと思います。

○副長官(萩山教嚴君) 御質問のとおり、現在、防衛庁は各種情報機能の充実を図っておりますが、極めて重要と考えております。
 情報本部の画像においてイコノスやSPOTなどの商業衛星画像データを用いていることは事実であります。画像情報の収集、整理を現在行っているところでありますが、情報収集衛星については、政府は平成十四年度を目途にいたしまして導入することを目指しております。光学衛星の分解能力が一メートル程度とされていることから、弾道ミサイルや艦艇あるいは航空機の状況等についての情報の入手が可能となるなど、防衛庁は情報収集衛星の画像データを活用することは極めて意義あるものと考えております。委員おっしゃるとおりであります。
 このため、防衛庁といたしましては、情報収集衛星の運用開始後は、現在活用している商業衛星画像データも加えて、情報収集衛星の画像データなどの活用によって防衛庁として必要な情報を収集して分析していきたいと、かように考えておる次第であります。
 以上であります。

○中島啓雄君 ありがとうございました。
 次に、今後の防衛貢献をどう考えるかというようなことについて伺いたいと思います。
 実は先週、私、沖縄へ行く機会がございまして、稲嶺知事のお話も伺ってまいりました。沖縄では日本の米軍基地の七五%が、面積比でですね、沖縄に集中していると、しかも民有地の比率が非常に大きいんだと。そういうことと、もう一つは、非常に基地が多いという状態が五十六年間継続しているということで、香港の租借は九十九か年間だったわけですが、もうその半分の年数がたってしまったというようなことも言っておられまして、基地縮小への願いが非常に切実であるということを申されました。私も全く同感でございますが、なかなか縮小縮小とそれだけ唱えていても限界があると思いますので、やはりいろいろ知恵を絞らねばならないと。その一つに、やはり米軍がいざというときに、当然憲法上の制約はありますけれども、日本がいかなる支援をしてくれるかということが明確になっていないとなかなか縮小できないというようなこともあろうかと思います。それが第一点。
 それから第二点には、今、防衛の形態が、米ソの対立時代は大国の傘の下で大国がやってくれればいいんだというような感じもあったわけでございますが、今や民族紛争とか地域紛争の時代になって集団安全保障というのが非常に大事になってきたと。財政学的な用語で言いますと防衛も国際公共財ということで、お互いに仲のいい国が協力をして防衛分担をすれば全体としてのコストも下げられるというようなことになりつつあると思いますが、それには応分の負担が必要であるということになります。
 さらに、今日のように、テロというような突発事態に備えるためには、国境を越えてテロというのはどこにでも移動するわけで、今回のテロ事件も、例えば今年の一月でしたか、マレーシアで会議を行ったというような情報もあるようでございまして、もうテロは完全に国境を越えて移動する、こういう時代になってきていると思います。
 防衛庁・自衛隊としては、そういったテロ特措法による支援に加えて、国際平和協力ということで、カンボジアから始まって、今、東チモールとかゴラン高原とか、かなりの成果を上げておられると思います。
 そういう時代認識に立って今後の防衛貢献をどう考えるかということを考えた場合に、例えばテロ特措法、これは二年間の時限立法でありますけれども、それを恒久化するとか、国際平和協力についてももっとしっかりしたものにするとか、そういった考え方も必要になってくるのではないかと思いますが、長官の御見解を承れればと思います。

○国務大臣(中谷元君) 先生御指摘のとおり、昨年の九月十一日の米国の同時多発テロ事件、これは民間機を利用いたしまして自爆テロという形で三千人以上の犠牲者を出すような、そういう規模また手段を講じたものでございまして、新たな脅威というふうに言われておりますが、人類の市民社会に対する国際テロリストの挑戦として、国際社会が結束して、このようなテロは二度と起こらないようにしていこうというようなことで国連でも決議をされ、それに従いまして我が国も、昨年の十一月に我が国を含む国際社会の平和と安定の確保に資することを目的といたしましてテロ対策特措法、これを成立をしていただき、それに基づいて現在インド洋で海上自衛隊艦艇による燃料補給、また国内と外国を含む地域における航空自衛隊の輸送機による協力支援活動を行っております。
 また、御指摘のように、PKO活動またホンジュラス、トルコ、インドに対する国際救援活動、また化学兵器禁止機関への陸上自衛官を派遣するなどの国連が行う軍備管理・軍縮、こういった活動にも貢献をいたしておりますし、またアジア太平洋地域の防衛当局者のフォーラムの開催、また国連のPKO局への自衛官の派遣の推進など国際貢献を進めておりまして、防衛庁といたしましても、国際貢献で世界の人たちにとって役に立つ行動ができる日本にすると。また、世界から尊敬される国家を目指してこれからの国際貢献を積極的に実施してきたところでありますし、また今後とも憲法及び関係法令に従いましてできる限りの国際貢献を行ってまいりたいと考えております。
 一方、沖縄の米軍の基地を視察されたお考えも伺いましたけれども、我が国に駐留しております米軍というのは我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定に寄与していると認識しておりまして、政府としても、冷戦が終結後も依然として不透明、不安定な状況が残されておりますので、米軍のプレゼンスを確保し、その抑止力をもって引き続き我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を維持していくということが極めて重要であると。そういう中で日本が憲法の枠内でなし得ることは何かということも十分認識をしつつ、国際社会に向けて貢献しなければならないと思っております。

○中島啓雄君 終わります。

○佐々木知子君 自民党の佐々木知子でございます。
 まず、日朝首脳会談についてお伺いしたいのですが、先ほども同僚の三浦議員からお述べになりましたように、私もこの成果というものに対しては高い評価をしたいというふうに思っております。先般のアジア欧州会議、ASEMの首脳会議におきましても非常に高い評価を得たということで、国際メディアにも取り上げられております。
 ただし、これは拉致被害者の家族にとってみれば決して高い評価ということにはならないだろうと。横田めぐみさんは、例えば、十三歳で拉致されて、今生きていれば三十八歳、四半世紀もの時が流れております。この間、なぜ日本政府は娘を救ってくれなかったのか、そういうふうに思われてこれは当然のことなのです。
 今回なぜこういうふうな歴史的な首脳会談が実現したかということにつきましては、周知のように、今年に入ってからブッシュ政権が北朝鮮をイラン、イラクと並んで悪の枢軸というふうに名指しをした。そして、経済的に崩壊の危機に至っている。そして、あるいはロシアや中国、それぞれの思惑。そして、韓国は太陽政策を取ってきたけれども、金大中政権も間もなく終わりであると。そういうようないろいろな要素が絡み合ってこういうような成果になったということはもちろんよく分かるんですけれども、翻って考えてみれば、日本政府がもっと毅然とした態度を取り、そして米国や中、ロ、そして韓国、その他国際世論を巻き込んでもっと早くに毅然とした対応を取っていればこういうこともあり得たのではないかと、そういうふうなことを思ったりもするんですが、これについては、外務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 委員もおっしゃられましたように、今回の件については国際的な評価が小泉総理の努力に対してある一方で、拉致された家族の方々、拉致された方の家族の方々におかれましては、様々な思いをこの間お持ち続けていらしたと。その結果として、非常にむごい結果が今、北朝鮮から伝えられているということについて、非常に悔しい思いをしていらっしゃるだろうということはお察し申し上げます。
 総理の訪朝が今回可能になったということについて、そして平壌宣言にあるようなそういった結果が出てきたということにつきましては、これは様々な要因はあると思いますけれども、まず、我が国として国交正常化に向けて誠実に取り組んでいく、北朝鮮としても懸案事項の解決に誠実に取り組んでほしいというメッセージ、これをずっと送り続けてきたということが大きな要因であったというふうに考えております。
 もちろん委員が御指摘のように、ブッシュ大統領の毅然としたメッセージあるいは韓国の太陽政策、そして日本、米国、韓国の密接な連携、そういったことも北朝鮮側の態度の変化を促した要因であったかというふうに思います。
 今後、我が国としては、北朝鮮に対して、韓国、米国と引き続き緊密に連携を持ちながら、様々な問題の解明を行う、拉致の問題がその中で最重要な課題であるということはもちろんでございますけれども、安全保障上の問題等についても話し合いながら前進をしていきたい、国交正常化に向けて進んでいきたいというふうに考えております。

○佐々木知子君 これも三浦議員から指摘されたことですが、今回外務省に随分手落ちがあったと。外務大臣は外務省を変える会を立ち上げて、外務省改革を真摯に考えておられるということで私は評価したいと思っておりますが、今回の拉致家族の問題にいたしましても、家族は非常に外務省に対して長い間不信を抱いている。ただ静観しておいてほしいと、騒げば危ない。そして、これはちょっと信じられないことですけれども、十人ぐらいのことで日朝国交正常化が止まっていいのかと、こういう発言をされた外務省の幹部の方たちもおられました。あるいは政治家の中にもこういう発言をされた方がおられたかもしれません。
 これは人命軽視も甚だしい考え方であり、また国家主権を侵害されたという意識がまた極めて、極めて甚だしい、欠如をしていると言わざるを得ないことだというふうに考えますが、これに対しては大臣、いかがお考えでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 委員から御指摘のありました発言につきまして、これまで省内で当時の残っている記録を中心に調査をいたしましたけれども、公的な場でそのような発言があったということは確認をされておりません。
 他方で、過去の一時期にアジア局において、拉致問題をいかに解決すべきかということについて様々な議論を行ってきた過程で拉致問題を軽んじていると受け取られるような雰囲気があったと指摘されたことにつきましては、外務省として謙虚に受け止めなければいけないと考えております。
 今回、北朝鮮側から拉致被害者の安否について情報の提供があったわけでございますけれども、政府としては当然のことながら、これがその問題の終わりだということはもちろんございませんで、重大な、最も重大な重要な課題であると受け止めておりまして、先ほど、昨日発表いたしましたけれども、政府の調査団の派遣を九月の二十八日から行います。それから、御家族の方々の支援を政府として、全体として行っていくために内閣官房にこの拉致の被害者の支援を行う部屋を設けるということで官房長官から発表をさせていただいたわけでございます。

○佐々木知子君 今回、日本側は八件十一名ということを提示いたしましたところ、こちらが拉致と認定していない日本人につきましても安否情報が提供されたということで、これは三浦議員からも質問がございましたけれども、警察庁の方で事前に伺ったところ、この把握している数値あるいは推定できる数値についてはここで発表できないということではございましたけれども、鋭意捜査はしていると、そういうふうに伺ってよろしいでしょうか。

○政府参考人(奥村萬壽雄君) 警察といたしましては、これまで鋭意行ってきました一連の捜査結果を総合的に検討いたしました結果、北朝鮮による拉致の疑いのある事案は現在までのところ八件十一名と判断しておりまして、更にこのうちの一件一名につきましてはよど号犯人のうちの一人の関与が明らかになりましたので、今般逮捕状の発付を得たところであります。
 議員の御質問は、これらに拉致されたことが推定される者、これについて捜査をしているかどうかということでございますけれども、警察といたしましては、この八件十一名以外の事案につきましても北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると見ておりまして、現在捜査や調査を進めておるところでございます。

○佐々木知子君 新聞情報などによりますと、七十人ぐらいいるのではないかというような推定もなされているようでございます。身元がない人をねらっていたということもございまして、なかなか捜査は難しいかもしれませんけれども、これは日本の主権が侵害されたということでございますし、人命の問題ももちろんございます。鋭意捜査を尽くして、その旨北朝鮮にそれをぶつけていただきたいというふうに思います。そして、調査、それから補償の交渉ということも、日朝国交正常化交渉の中で是非きっちりやっていただきたいと。この中で犯罪人引渡しを求めるということももう当然のことだというふうに私は付言させていただきたいというふうに思います。
 今回の日朝首脳交渉の結果につきまして、国際的にメディアはかなり取り上げたというふうに承知しておりますけれども、残念ながら北朝鮮のメディアというのは一切金正日総書記が会談で拉致を認め謝罪したということを報道していないというふうに伺っております。国民はやはり知らされていないわけですね。
 究極の目標としてはやはり北朝鮮を民主化させなければいけないということになるはずでございますけれども、国民に実態を知ってもらうというためにはどのようなことをすべきであるというふうに外務大臣はお考えでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 委員がおっしゃられましたように、北朝鮮の国内においてこの拉致問題についての報道がなされていないということについては私どもも承知をしております。当面、先ほどから申し上げておりますように、最優先の課題というのは拉致問題の解決で、解決といいますか、その拉致問題について事実関係、真相を究明していくということでございます。
 そういったことを行いながら、日朝平壌宣言の精神と基本原則にのっとって、我が国としてはアメリカや韓国と緊密に連携を取りながら国交正常化に向けてのプロセスを進めていきたいというふうに考えております。
 その先、国交正常化が成った後で、北朝鮮については、国際社会とともに更に改革あるいは民主化といったようなプロセスについて我が国としてもかかわっていくということになるかと存じます。

○佐々木知子君 この交渉当時、外務大臣は訪米されていたやに承知しておりますけれども、アメリカの要人ではどなたにお会いになって、どのような形でお告げになって、それからどのような反応が返ってきたか、お伺いしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 今回の訪米の中で、ワシントンにおきましてはパウエル国務長官、ライス補佐官、それからラムズフェルド国防長官にお会いをいたしましたけれども、この会談が終了した時点以降にお会いをいたしまして、その内容についてお話をしたのはライス補佐官とパウエル国務長官でございます。
 この会談が終わりまして割に時間がそれほどたたない時点でございましたけれども、お会いをいたしまして、総理の訪朝の結果について、拉致問題、核、ミサイル、米朝関係等について説明をいたしました。そして、北朝鮮が核に関するすべての国際合意について遵守をするということを述べたということも紹介をいたしました。そして、今後、安全保障上の問題については引き続き国交正常化交渉の中でこれに対応していくということと、それから我が国の行います経済的な支援については国交正常化が成った後でこれを行うということを申しました。そして、米朝の対話の進展が進むようにそれを慫慂したということでございます。
 これに対して、パウエル国務長官からもライス補佐官からも、この報告に関して、拉致をされた方についてのお話もいたしましたので、その家族の方々について厚いお見舞いの言葉があったということでございますし、それから小泉総理の努力については支持をし歓迎をするというお話がございました。

○佐々木知子君 続きまして、日本海の呼称の問題についてお伺いしたいんですけれども、日本海の呼称について韓国が東海と呼ぶように要求しているという問題につきまして、時々これはメディアで取り上げられているんですけれども、これの経緯、そして日本政府はどのように対応しているのか、それについてお聞かせ願いたいと思います。

○政府参考人(石川薫君) お答え申し上げます。
 国際水路機関におきましては、出版物「大洋と海の境界」の現行版、これは一九五三年版でございます、その改訂作業が数年来進められておりますが、本年八月九日、国際水路機関理事会は、改訂版の最終稿として日本海の部分の二ページを含まない案を加盟国に配付し、その出版について加盟国の賛否を問う回章を発出いたしました。
 これに対しまして、我が国は、日本海の単一表記を確保すべく在外公館及び在京の外国の大使館を通じまして加盟国への働き掛けを行うとともに、この国際水路機関理事に対しても直接働き掛けを行ってまいりました。また、海上保安庁も各国水路当局に対し働き掛けを行ってきております。
 この結果といたしまして、同機関の理事会は八月九日付けの回章を撤回するという回章を九月十九日に発出をいたしました。これをもちまして、日本海の部分の二ページを含まない改訂版最終稿の出版につきまして加盟国の投票に付するという手続は撤回された次第でございます。
 この国際水路機関の出版物におきます日本海の取扱いにつきましては、現時点では未定とされておりまして、いまだ予断を許さない状況にございます。我が国といたしましては、今後とも国際社会に対し我が国の立場への理解と支持を求めるとともに、韓国との間におきましても専門家を交えた事務レベルの協議を開催する等、この呼称問題の解決のため努力をしてまいりたいと考えております。

○佐々木知子君 国際水路機関、IHOが日本海というのを白紙に戻して十一月までに新しい名前を決めるところまで話が進んでいるという、こういう報道もあったんですが、そうではないんですか。

○政府参考人(石川薫君) これが九月十九日付けをもちまして先方機関は撤回してまいりました。その投票に付するということは取りあえずなくなったというのが現状でございます。

○佐々木知子君 でも、非常に私は予断を許さないところだというふうに思うんですね。日本海というのは李氏朝鮮が鎖国している十七世紀に既に世界の海図に名前が載っていることでありまして、日本が植民地にしたかどうかということとはこれは何ら関係のないことであり、また韓国にとっては東の海かもしれませんが、日本にとってみればこれは西の海になるはずでございまして、こういう勝手気ままなことが要求されるようになっているということ自体、私は非常に問題にしないといけないと思います。
 これ、韓国に関しましては竹島の問題もございまして、日本が余りその領有権について抗議をしたということも聞きませんし、日本が余り何も抗議をしない、これは鷹揚に構えているといえば非常に聞こえがいいですけれども、これ、鷹揚ということと毅然とした態度を取らないということとは往々にしてほとんど同じことでございまして、こういうところを私は随分ねらわれているのじゃないかなというふうに考えるわけです。私は、日本という国はもっと毅然とした態度を取らなければいけない、それはもう外交スタンスとしてそこはやはり一番重要視しなければいけないことだというふうに思っております。
 続きまして、ちょっとアメリカとの協調関係について質問したいというふうに思いますが、昨年の九月十一日以降、アメリカはテロによって非常な被害を受けた国だということで、日本を始めいろんな国がシンパシーを感じて協力してきた経緯がございますが、どうやら最近になりまして随分趣が変わってきた、アメリカは一国単独主義を強めた感があるということは各地のメディアで取り上げられております。
 例えば、イラク攻撃ですけれども、イラクは今回国連査察を受け入れるというような恭順な態度を示しておりますが、それでもなおアメリカはイラク攻撃をするのがもう既定の事実であるというような見方もなされているようでございます。
 これについては、もちろん日本としては国連決議がない以上は駄目だという立場でおるのだろうというふうに思いますけれども、さて国連決議が通ったとして、アフガニスタン攻撃に際してのテロ対策特別措置法のようにはいかないはずであると。日本には憲法上の制約がございます。日本ができることできないこと、これをやはりはっきりとさせるべきではないかと、そういうふうに思っておりますが、外務大臣のお考えはいかがでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 二十一世紀において様々な国際政治上の問題あるいは国際経済上の問題があるわけでございまして、こういった問題について世界の各国が連携をしながら、協力をしながら解決をしていくことが重要であるという考えは、アメリカにおいても十分にそれはシェアをされていると私は考えております。
 例えば、最近の例ですと、先般のニューヨークの国連の演説の中で、ブッシュ大統領はユネスコに復帰をするということを言っているわけでございまして、こうした国際的な枠組みの重要性についても十分に理解をしている、それを大事だと考えているということだと思います。
 イラクの問題について、先般、イラクが国連の査察を受け入れるということを言いました。これについて、これは我が国の評価といいますか考え方としても、第一歩、解決に向けての第一歩でありまして、実際に重要なことは、この査察が実際に行われ、様々な例えば大量破壊兵器についての疑惑、こういったことがきちんと透明な形で晴らされるということであると思います。そういう意味で、イラクのこの間の発表は第一歩でございまして、我が国も国際社会、ほかの国々と一緒に今後の進展をきちんと見極めていかなければいけないと考えております。
 イラクが、米国がイラクに対して軍事行動を取るかどうかということについては、全く何も予断といいますか、そういうふうに決まっているわけでも全然ないわけでございまして、そういった予断を前提の御質問ということにはお答えするのは難しいわけでございますけれども、テロ特措法との関係でいいますと、委員がおっしゃるように、これは昨年の九月の十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めるということで、それによって国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等に対してその支援を行うということでございます。
 今後の、この特措法の考え方については米国も十分に理解をしているというふうに考えております。

○佐々木知子君 アメリカはいわゆる京都議定書から離脱ということで、川口大臣もいろいろ奔走された経緯がおありですけれども、他にも多くの国際機関への非協力や分担金の滞納などが言われております。孤立を強めている傾向にあるのではないかと憂慮されるところなのですが、これについて同盟国である日本はどう対処すべきであると、大臣、お考えでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 日米関係は我が国の外交の基軸でございまして、良好であって強固な日米関係というのを更に強化をしていくということが大事だということが我が国の考え方でございますし、米国もそう考えている。現に、様々な問題、これは日米間の問題だけでなくて、国際的な地球レベルの問題についても日米では緊密に連携を取っておりますし、それから米国は、日本だけではなくて、ほかの国とそういった問題について緊密に連携を取りながら、大国としての責任を果たしていっていると私は考えております。
 京都議定書については、残念ながらこれを支持しないというのがブッシュ大統領、米国政府の立場でございます。これについては、引き続き我が国としては、米国が最大の排出国でございますから、温暖化ガスの削減に真剣に取り組んでくれるということが大事だと考えておりますし、また発展途上国についても全体として大きな排出をするようになってきておりますので、世界のすべての国が参加できるような共通のルールが構築をされるように、米国の建設的な対応を求めていきたいというふうに考えております。

○佐々木知子君 続きまして、ODAについて伺いたいのですが、武力行使が憲法上制約があってできない日本にとりまして、ODAは最大の武器として考えられるわけですけれども、不況の中、現在、ODAを減らす傾向にございます。欧米ではかえって引き上げる方向にあるというふうに承知しておりますが、量を減らすのであれば、質を高めなければ日本の国際的影響力は相対的に落ちるというふうに考えられるわけですが、この点についての戦略というようなものをお聞かせ願えたらと思います。

○国務大臣(川口順子君) 委員がおっしゃられますように、ODAというのは日本の外交にとって極めて重要な手段であると考えております。今、我が国は、財政上の理由から、ODAについては平成十四年度については量的に約一〇%の削減があったわけでございます。
 しかしながら、国際社会で様々な問題がありまして、アフガニスタンの支援の問題にしても、それから平和構築、平和の定着というふうに言っておりますが、国が大変に困難な状況に置かれた、フェールドステートと言いますけれども、そういった国々の改革あるいはその復興、それから兵士の社会への復帰といったようなことについて支援をしていかなければいけないという必要性というのはますます高まっているわけでございまして、そういうことを考えた場合に、我が国として、支援、援助についてますますそれを効率化し、質的に向上させることによってこの課題に対して取り組んでいかなければいけないと考えております。

○佐々木知子君 ODAにつきましては、例えばこれ九月十五日の産経新聞にカンボジア野党最大党首レンシー氏の言葉として載っているわけですけれども、フン・セン政権が続いてきたこれまでの十七年間、巨額のODAが日本から始め投入されてきているけれども、政府関係者の腐敗が激しくて、援助資金も汚職の対象になって本来の目的に使われていない、その間、貧困も全然なくなっていないと、こういうようなことを述べられております。
 カンボジアだけではなく、私は、こういうことは割と発展途上国の人からよく聞かされることです。せっかくODAを投入しても、これがそういう形で使われていないのであれば、何のこれも意味もないことであって、やはり私は、監視を強化して、資金の流れを透明にして、使途が明確になるようにしていかなければいけないというふうに考えております。
 これは前から言われていることなんですけれども、やはり実効性が余りないのではないかというふうに考えておりますけれども、これについてどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。
 先生御指摘のように、ODAの使途についての監視でありますとか、透明性の確保でありますとか、大変重要なODA政策の根幹を成す問題でございまして、これは徹底してやらなきゃいけないというふうに考えておるところでございます。
 これまでのところ、交換公文ベースでその旨を明らかにするということもございますし、あるいは調達段階あるいは資金の支払段階、それぞれに一つのルールと枠組みの中で執行してきておるわけでございます。さらに、万が一不正行為があれば、一定期間業者をODA事業全体から排除をするという措置も明らかにしておりまして、こういった全体について相手国政府にも理解を求めているところでございます。
 こういう努力をしてきておるところでございますが、今後さらに、これらに加えて、ODA改革・十五の具体策が既に出されておりますし、また「外務省改革「行動計画」」もございますし、そういったものにのっとりまして、早急に監査の充実でありますとか、無償資金協力の選定、実施過程の透明性の確保、情報公開といったことについてきっちりと検討し、その結果を実行に移していきたいというふうに考えております。

○佐々木知子君 私は、独裁政権などであったら、直接その政権に圧力を掛けるぐらいのようなこともやっていかなければ、恐らく実効性は担保できないのではないかというふうに思っておりますが、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○委員長(中原爽君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩をいたします。


2002/09/26

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