2002/09/26-2

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参院・決算委員会 平成十四年九月二十六日(木曜日)

○海野徹君 午前中に引き続きまして、北朝鮮問題について御質問をさせていただくわけなんですが、最初に日朝首脳会談と平壌宣言について総括的に大臣の方から御見解をお伺いしたいと思うわけなんですが、今回の日朝首脳会談、大変驚きで始まって驚きで終わりました。北朝鮮を訪問するというニュースを全く我々は本当に驚きを持って聞いたわけなんですね。三十日に発表されて十七日に行く、こういう、普通は外交日程というのはもっと違った日程の組み方をするんであろうにもかかわらず、発表するときはもう日にちが決まっていたということもあったんですが、非常に驚きを持って聞きました。

 金正日総書記が大変外交が巧みだと言われている方です。そういう方に対して小泉総理がどの程度の外交手腕を発揮するかという、そういうことも大変関心を持っていました。拉致された八件十一人の帰国がどのように実現されるかと、これも極めて高い関心を寄せておりました。安否、これは、拉致された方々の安否については多分小出しに来るんだろうなと、事前にそういうようなニュースが結構ありましたから、小出しなんだろうなということでいましたところ、四人しか生存がないと、これも驚愕した事態だったわけなんですね。

 こういうことで、日朝首脳会談が平壌宣言という形である意味では終了したわけなんですが、私は、訪朝されるということ、これは北朝鮮とのこれまでの交渉の困難さを含めると、考えると、非常にその決断や努力に対しては一定の評価をするものなんです。拉致事件を含めて安全保障の問題についても直接北朝鮮と、軍事独裁政権ですから、トップがトップ同士で交渉しないといけないんだろうなという思いはあります。それも交渉、当然そういうことがありますし、この交渉の再開自体は日本にとっても十分考えられる選択だということは分かるわけなんですが、私たち、頭で考えれば十分分かることなんです。

 だけれども、理性もありますけれども、私たちは感情もあるわけなんです。拉致された方々の死亡という北朝鮮から突き付けられた衝撃的な事実をどう受け止めるか、非常にこういうことは戸惑いました。亡くなられたと伝えられた方々の御家族の、御遺族というんですか、気持ち、あるいは関係者の、あるいは国民の憤り、悲しみ、これは極めて重く受け止めるべきではないかなと思っております。

 我々はそういった意味では血も涙もある国民ですから、血も涙もある国民一人一人に作られた民主主義を政体として持つ我々国家なんですよね。そういう国家である以上、国民世論から遊離して立ち行くことはできない国家であるということも言えるわけなんです。

 ということを念頭に置きましたら、これから政府はどういうことを肝に銘じて交渉しなければならないかというと、やはり具体的な担保なしに私は合意文書に署名したというのは極めてやっぱり遺憾な事態であったし、時期尚早であったんではないかなという疑念が払拭できないんです。その点について、川口大臣の総括的な御所見をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 委員がただいまおっしゃいましたように、拉致の問題について、ピョンヤンにおける日朝の首脳会談でこのような結果が、北朝鮮側から結果についての情報提供があったということは本当に衝撃的で、家族の方にとっては大変につらい、今までつらかった上に更につらいことであるわけでございますし、国民一般にとっても非常に衝撃的なことであったと、私も自分自身そういうふうに受け止めております。

 今回の訪朝につきましては、隣国である北朝鮮と我が国との間に五十年、約五十年余の間、国交正常化が行われていないという極めて不正常な状況にあることにかんがみ、国交を正常化させていくということが歴史的な責務であるというお考えに立って総理が自ら赴かれ、そして金正日総書記と会談をして、総合的に判断を、非常に英断、勇断、リスクをきちんと取られて、そして決断をなさったということであると私は考えております。

 拉致の被害者の方々の御家族に対しまして、正にこの拉致問題というのは、私どももずっと北朝鮮に対して、国民の生命と安全にかかわる重大な問題であって、国交正常化に当たってはこれを避けて通ることができないということをずっと言い続けてきたわけでございまして、今度、政府の調査団を派遣いたしますけれども、事実解明にきちんとこれをやっていくという過程というのが大事であると私は考えます。

 また、拉致の家族の、拉致の被害者の家族の方々の支援のために内閣に支援室というのも設置するということを発表させていただきました。家族の方々の立場に立って、その視点に立ってこの問題を究明をしていく、解明をしていくということの、そういう立場でこの支援室というのは政府全体の立場から仕事をしていただくということだと私は考えております。

○海野徹君 時期尚早ではなかったかということに対する要するに御見解というのは、余り私の理解ではいただけなかったなと思うんですが。

 拉致問題については大変私どもは重大な責任を持って北朝鮮にも今まで言ってきたという話が外務大臣からあったわけなんですが、果たして、要するに被害者の、拉致家族の方々はそういうような印象を持っていらっしゃるんでしょうか。非常にその辺について、要するに認識にギャップがあるなという思いがしてしようがないんですね。

 というのは、今回も、要するに死亡とされたとされる増元るみ子さんの弟の照明さんという方がこんなことを言っているんですよね。まず、今度の要するに訪朝は共同宣言ありきだったんでしょう。被害者家族は一様に怒りを覚えています。韓国に亡命した北朝鮮工作員の安明進氏でしたか、この方が来日し、金正日政治軍事大学で市川修一さんと思える日本人と会話を交わしたと語ったのは九八年でした。市川さんも姉も生きていたと思います。けれども、外務省は、ただの一度も我々家族に事情を聞いたり、情報を求めたりしたことはありません。そして、北朝鮮からもらった紙一枚を見せながら、お亡くなりになりましたと言うんです。いつ、どこで、どのようにと尋ねても返事はない。これが首相訪朝の結果ですかというようなことをお話しされている。

 また、要するに、今回、瀋陽総領事の案件で、非常に責任を、責任者として問題になった阿南さん、阿南さんがアジア局長時代ですね、亡命者は亡命先の国の聞いたことを話することがある、亡命者の発言は信用できないというようなことを言っていたり、槙田さんが同じようにやはり非常に冷たい突き放した発言をしているんですね。

 これは、私は、やはり責任をお感じになっていただくというよりも、やっぱり責任を取っていただく必要がある。こういう雰囲気がやっぱり外務省にあったんではないか。それは、外務大臣の今の御答弁と多分に私は違うんじゃないか。その辺が、支援室の設置に関してもいろいろ被害者の家族からの不信感というか不満の声が聞こえてきた、私は背景にあると思いますが、大臣、どうなんでしょう。

○国務大臣(川口順子君) 御家族の方々のお気持ちを考えますと、そういった今、委員がおっしゃったような、外務省として今まで北朝鮮に対して働き掛けてきたと申し上げたこととの間にギャップがあるではないかということの背景になるような御発言が御家族の方々からあるということは、これは御家族の方のお気持ちとしては当然いろいろなお気持ちをお持ちでいらっしゃると私は思いますし、そういうような御家族に印象をずっと外務省がもし与えたことがあったとしたら、それは私としても非常に、外務省としてはそういうつもりは全くないということでございますけれども、残念なことだと思います。

 先ほど委員がおっしゃられた発言については、私どもも過去の記録を中心に調べてみましたけれども、公的な場でそういった発言があったという事実は確認はされていないということでございます。ただ、他方で、過去の一時期、アジア局において拉致問題をいかに解決すべきかということについて種々の議論が行われていたその過程で、拉致問題を軽んじていると受け取られてしまったような雰囲気があったと指摘されることにつきましては、外務省としては謙虚に受け止めなければいけないと思っております。

○委員長(中原爽君) 田中局長、発言されますか。──よろしいですか。

○海野徹君 公式的な発言は当然ある話ではありませんし、そういうような雰囲気があって、オフレコの話でこういうものが漏れ伝わってくるということですから、私は、要するに本当に愛があって、本当に血も涙もあるんだったら、少なくともそういうような発言はオフレコでも出てこないと私は思っているんですよ。

 先ほど田中局長がいろいろ午前中御答弁された中で、私も聞いておりましたが、仮にその真情が、局長が今まで外交交渉に携わってきて、本当に北朝鮮問題の拉致家族の方々に対する愛の真情の吐露であれば私はそれを多としますが、過去にこういうような発言がオフレコでもあったということは、大変私は悲しいことだなと思っております。

 もう一つは、何を得たかということの中にも、これは宣言の中にどうしても拉致という問題を入れてほしかった。それが文言が入っていない。これはどうしても納得がいかない。

 両者間では、要するに、これは田中局長がずっと携わっているんでしょうから、文書の草案が当然事前に合意されたんではないか、当日はそれをそのまま署名したんではないか、そういうプロセスであったんではないかなと私思うんですが、事前のいろんな情報の中から前提条件があったはずであります。こういう前提がもたらされたら署名しよう、こういう前提があったらこうしよう、ああしようというのはあったはずではないかと。

 多分に幾らかの安否情報がもたらされるだろう、それは当然事前にはそういう情報も局長のところへは伝わっていたという話もありますから、かなりの確度を得たものがあってこういう文言が要するに用意されていったんではないかなと思うんですが、しかしながら八人の死亡という衝撃的な事実は、これは宣言を事前に作成する前提を超えたものであったんではないか、予想を超えたものであったんではないかなと私は思います。そういうことであれば、前提となる情報がそもそも根底から覆ったわけですから、その場で小泉総理は断罪をし、そして拉致の文言を加えるような要するに交渉を相手方に対して、金正日総書記に対してできたんではないかと思うんですが、その辺はどうお答えいただけますか。

○政府参考人(田中均君) 委員御指摘がありました拉致の問題というのを外務省が決して軽んじていたわけではない。少なくともその拉致の問題が明らかになって以降、正常化交渉の中で、極めて苦労をしながらも一つの課題として取り上げてきて、その間、拉致の言葉を出した途端に相手が席を立つとか、あるいは、それぞれの政党のデリゲーションが行っていただいて、この問題をどういうふうに解決するかということについて相当深刻に考えてアプローチをしてきた。そういう長い積み重ねの中で、今回の総理の訪朝というのは、私も事前の準備に携わりましたけれども、何としてでも同じようなことを繰り返してはいけない、拉致問題については、北朝鮮側は拉致として認め、かつ八件十一名の方々について安否情報をすべて出す、こういうことが必要であるという交渉をやってまいったわけでございます。

 その中で、拉致問題、日本の懸念というのは、拉致問題は極めて大きな問題ではありますけれども、それだけではない、ミサイルが飛んできたり不審船が日本の近海を徘回するという事態、こういうことを何としてでも早くやめさせなければいけない、日本の安全のためには将来的に秩序ある関係を作っていかなければいけない、そういう総合的な形でピョンヤンの日朝の共同宣言というのを作らなければいけない、そういうことが実現するかどうか総理は見極めるということで訪朝をされたわけでございます。

 確かに、十七日の朝の段階で、拉致八件十一名の安否の情報として、八名の方が亡くなっているという情報がもたらされました。総理はそれを受けて、極めて厳しく金正日総書記に対して抗議をして、事実関係の徹底的な究明をしなければいけないということを非常に強く言われた。その結果、午後になって、金正日総書記が極めて率直に申し上げたいということで、拉致を認め、遺憾なことであり、おわびを申し上げる、二度とこういうことは許さない、こういう発言をされたということでございます。

 ですから、私どもが申し上げているのは、少なくとも敵対的な関係の中でどういう事実関係の究明が実際にできるか。正に交渉の場がないとそれはできない、そういうことをきちんと協力をしていくというような基本的な決定がなければできないんですね。ですから、正に金正日総書記の発言に基づいて、直ちに私どもは事実関係の究明に着手しなければいけない、そういう流れにあるわけでございます。

 決して正常化に今回の首脳会談で合意したわけではなくて、ピョンヤンの首脳宣言に書かれている精神とか原則に従った正常化、正常化に至る前においてもいろんな問題について誠意を持って取り組む、そういう合意の下で今後事実関係の究明を行っていくということでございます。

○海野徹君 今、局長は、精神に従ったという話だったんですが、外交交渉というのは、詰めるべきところは詰めて具体的に文言として盛り込むというのが外交の基本じゃないですか、外交交渉の。

 やはり私は、拉致問題の解決というのは日朝交渉正常化の前提だと。そのためにその糸口をということで盛んに総理はおっしゃっていたわけなんですが、少なくとも、こういうような驚愕の予想もしなかった事実が出てきたとき、交渉を中断して帰ってくる、その選択はなかったんでしょうか。国民世論、これだけ、訪朝したことはよかった、扉を開けたこともよかった、しかしというような今国民世論の中で、そういう選択肢というのはあり得なかったんですか。

 あるいは、四時間の日程を二時間半で終えている。あと一時間半何をしていたのか。四時間の会談の日程があるとすれば、そのスケジュールが組まれていたとすれば、一時間半の間にそういうことを、文言を入れるというような努力はすべきであったんではないか。余りにも宣言の中に、経済協力に関する文言の部分とこの部分とは余りにも対照的に、余りにも偏ったものになっているんではないか。

 この宣言で、では、局長、何を日本は得たんですか。

○政府参考人(田中均君) 委員がおっしゃった中で、これまでの日朝関係がどういう状況であったのか。ミサイルが飛んできたり不審船が徘回をしたり拉致が行われていくという状況の中で、果たしてそういう問題を解決していくことが可能だったと私どもは思っていないわけです。ですから、日本の国民の生命、財産を守るという観点からすれば、北朝鮮との間で問題解決をしなければいけないということであります。少なくとも、国民の皆さんもそうだし私どももそうだし、拉致ということを認める、それは今回金正日総書記が小泉総理との首脳会談の中で、正に首脳会談が行われることによって初めて国として認めたわけです。

 ですから、今後やっていかなければいけない、今回の首脳会談並びに宣言でできたことというのは、日本の主張は貫き、その主張に基づいて国交正常化交渉をやっていく、安全保障の協議をやっていく、具体論においてそういう北朝鮮との関係の作り方ということをきちんとやっていくという仕組みを作られたわけでありますから、そういう意味においては拉致問題についても事実の解明というのは粛々と進めていかなければいけない。正に金正日総書記が拉致と認めたことによってそういうことができるようになったということだろうと思います。

○海野徹君 いったん署名した宣言ですから、今後拉致に関する文言を付け加えるということはもうできかねると思いますが、そういう意思もございませんですよね。そういうようなものに代わるものとしては、具体的に、局長、どういうような交渉をされていくんですか。

○政府参考人(田中均君) 全体として見ていただければ、共同宣言の中には日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題、このような遺憾な問題が二度と起こることがないようにということが明記されております。それから、先ほど申し上げたように、金正日総書記が直接小泉総理に対して国家の最高責任者としておわびをするということでございました。それから、北朝鮮の外務省のスポークスマンが遺憾であるということを言った上で、必要な、二度と起こらない必要な措置を取ると、こういうことでございました。

 私どもが今現在必要だというふうに思うのは、一刻も早く事実解明をしていく、その中で問題の解決を図るということだろうと思います。

○海野徹君 拉致問題について度々お伺いしますが、事実関係を国家の責任者である金正日氏が認めたにもかかわらず、事実関係をこれからもまだまだ解明するということに私は何となく納得できないものがあるんですがね。

 全く今回の問題、ある意味では、国内では、北朝鮮国内ではニュースは、拉致問題については全く金正日総書記が日本側に謝罪したというニュースは出てないということなんですね。これは事実ですよね。そうなると、やはり日本の小泉総理が、ある意味では北朝鮮に対する補償問題でわざわざピョンヤンまで来たという絵を作るために、国内向けのプロパガンダとしてこれは使われてしまったんではないかという、これは結果的にですよ、というような懸念を私は感ずるんですよね。確かに謝罪した。だったら国内ニュースでも言うべきだと。しかしながら、まだそんなことはあり得ないと言っている方が多い。そういうことを見ると、本当に要するに利用されたのかなという思いもあるわけなんです。

 そういった意味では、これから調査団を派遣するということなんですが、四日間の調査でどれほどのものがあるのか、その辺も非常に疑問なんですが、この犯人の引渡し、これについてはどのようなお考えをお持ちなんでしょうか。

○政府参考人(田中均君) 委員の御質問の中で、金正日総書記が認めたのに事実解明とはどういうことだという御質問もございましたけれども、私どもとしては、国家の最高指導者の言葉の下に、個々のそれぞれの拉致案件について、なぜそういう拉致ということになったのか、拉致された方々はどういう生活をしておられたのか、どういう経緯、どういう原因で北朝鮮が死亡されたということになっているのか、そういうことについては一件一件解明をしていかなければいけないというふうに思っているわけでございます。

 どの国も一夜にして変わるということを私たちは想定できるものではないと思います。北朝鮮のような国は非常に孤立的かつ非協調的、日本との関係、米国との関係でも極めて敵対的な関係にあったわけでございます。平壌の宣言の基本的な目的というのは、一定の基準というものを作って、できるだけ北朝鮮が国際協調的な路線に戻らなければいけない、そのことについて日本はきちんと交渉をしていきましょうということでありまして、そんなに急に敵対的な関係から協調的な関係に変わるものではない。一定の時間を掛けながら、交渉をしながら成果を得ていくということだと思います。

 ですから、事実関係の解明にいたしましても、仮に四日間の訪朝で具体的事実について解明がされない場合があるかもしれません。当然そういうことというのは引き続き解明がされていかなければいけないし、事実関係の解明というのは、それはそんなに簡単なことではないかもしれないけれども、これは粘り強くやっていく必要がある。委員が御指摘されたその他の問題については、まず事実関係の解明ということを先行してやっていくべきだというふうに考えております。

○海野徹君 今、局長は犯人の引渡しを要求するかという質問に対してはお答えいただけなかったんですが、当然、要するに事実解明を究明していけば、その先にはそういう引渡要求というのは出てくるんじゃないかなと思うんですが、外務大臣、その辺についてお伺いしたいんですけれども。

 金正日総書記が拉致事件に関与した者を処罰しましたと。処罰したんだったら、どういう処罰をして、だれがだれをどういう処罰をして、いつやったかというのは、それは分かるわけなんです。今、局長からも話がありましたように、事実解明すればそういうもの出てくるわけなんです。どんな処罰を受けたかというのも分かるわけなんです。国家テロ、拉致事件の犯人として当然それは引渡しの対象になるんじゃないですか。これは法的な枠組みを超えて要求すべきだと思いますが、大臣の御見解をお伺いします。

○国務大臣(川口順子君) 金正日総書記は、我が国日本人の拉致に関与した人物について、その人を処罰をしたということを言っています。どのような処罰がなされたかということについては今の時点では確認をしておりません。確認されておりませんけれども、今後再開をされる国交正常化交渉等において、拉致に関与した人物についての情報を含めまして、北朝鮮側に対して引き続き事実の解明、これを求めていく考えでおります。

 我が国の対応といたしましては、真相究明を踏まえまして、国交正常化に向けた過程の中で検討していきたいと考えています。

○海野徹君 いや、直接的なお答えがなかったんですけれども、我が国は国外犯の取扱いについて、アメリカや韓国との間に犯罪人引渡し条約、これがありますね。法律としては逃亡犯罪人引渡法や国際捜査共助法、こういうものがあって、国外に逃亡した犯罪者の引渡しを受けたり、外国の機関と協力して容疑者の捜査に協力してもらう法的な枠組みがある。

 確かに、要するに北朝鮮とは外交関係がありませんから、こういうものは直接的に適用できない、これ分かりますが、そもそも要するに総書記が拉致事実を認めているわけです。その拉致事件というのは我が国の領土内で生じているものです。

 よど号犯の関与している事件は、これは日本国民が起こした可能性が濃厚でありますから、これはまあ当然のこととしても、刑事司法の観点からも、弁護人の選任等、民主主義国で当たり前の処遇をすることを前提に容疑者の引渡しを受け、必要な捜査をして事実を解明していくということは当然考えられていいんではないか。

 もっと言えば、上官の命令でやむを得なく拉致を実行した者だけが処罰される、これは公平性を欠くものなんで、トカゲのしっぽ切りの印象でしかないわけですね。国家テロの構造を解明するためにも、私は、実行犯を日本で調査して事件の全容解明、それこそ事実解明を進めるべきだと私は思いますが、そういうような方針はございませんですか。

○政府参考人(田中均君) 先ほどから申し上げておりますとおり、一夜にして北朝鮮という国が日本の信頼ができる友好国に変わったわけでは全くありません。私どもも、非常に難しいというか、問題が問題であるだけに慎重にこまを進めつつ、拉致の問題を認めさせ、安否の情報を明らかにさせたという段階、これからその金正日総書記の日本の総理大臣に対する発言と平壌宣言に基づいて事実関係の究明について協力を求め、情報の全面的な開示を求めていくというのが今の状況でございます。

 ですから、その結果、事実関係が明らかになった段階で、日本政府として考えるべき具体的な問題については国交正常化交渉のプロセスの中できちんと検討していくということでございます。

○海野徹君 できるだけその問題については言明を避けたいということなんでしょうが、次の問題へ入りたいと思いますが、外務大臣、アメリカ、外務大臣もそれぞれ、これはトップ会談でありましたから外務大臣の役割は別なところにあって、いろいろ役割分担をされてやったと思うんですが、どうもアメリカのこの小泉訪朝の成果という、あるいは評価という、多分に分かれているようなことを聞きます。

 しかも、要するに九月の十七日に訪朝するということのその時期の問題を含めて、あるいはその後速やかに報告をもらいたいというブッシュ大統領が二日間もそのことを聞く耳を持ってもらえなかったという中で、大変、要するにアメリカが今回の訪朝の評価というのは、必ずしも私たちが評価するほど、評価するというか、私たちが要するに一定の成果をという意味での評価するほどは評価をしていないんだろう。むしろ、そのまま北朝鮮、金正日政権に対する認識というのは極めて厳しい認識をそのまま維持しているというような印象を持つわけなんですが、いろんな外交ルートから外務大臣が接触される中で、その辺の懸念というのはお感じになりますか。それとも、いや、そういうことはありませんということなんでしょうか。

 というのは、ある意味では、事前の問題で、日程の問題で、韓国も大統領選挙がある、あるいはアメリカがイラクとの問題を抱えている、あるいはロシアの動きあるいは中国の動き、そういうことを総合的に考えたとき、必ずしもアメリカと日本と、トップ同士あるいはそれなりのレベルでの日程、時期における、訪朝の時期における本当の意味での一致がなかったんではないか。そういった意味で、訪問の目的あるいはその成果がなかなか、目的も定まらなかったし、これは日米ですよ、成果が必ずしも一致した評価になっていないということではないかと思うんですが、その点について外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○政府参考人(田中均君) 総理は、訪朝の発表前とそれから訪朝後、ブッシュ大統領に対して電話をされました。それから、外務大臣もワシントン、ニューヨークにおいてパウエル長官であるとかライス国家安全保障担当補佐官等と詳細な話をされています。訪朝の発表並びに訪朝後の結果の報告に対して、ブッシュ大統領並びにパウエル長官、ライス国家安全保障担当補佐官はいずれもこれを支持する、歓迎するということでございました。

 当然のことながら、米国の中には北朝鮮に対していろんな意見があるのは当然のことだと思います。日本の中にもいろんな意見があると思います。私どもも北朝鮮に対する厳しい意識というのは決して変わっていません。重要な、核とかあるいはミサイルも含めて重大な懸念がある、そういう国だという認識においては米国も日本も韓国も変わっていないということだと思います。

 問題は、それでは問題解決を、どういうアプローチで問題を解決していくかということでございまして、これについては、日米韓の政策協議の枠組みでもそうですけれども、きちんとした抑止力を維持して対話で問題解決を図っていくということでございます。これについては、日本と米国と韓国の間に、少なくとも政府当局に関する限り、意見の相違はないと思います。それが米国が、ケリー、日本からの働き掛けにもこたえて、ケリー国務次官補を近い将来ピョンヤンに送るという考えに至った背景であろうというふうに考えています。

○海野徹君 以前、今までも日米韓の緊密な連携という下にこの交渉は行われてきたと思いますし、これからもその枠組みは変わらない。そしてなお、日米の連携は極めて今後もより以上に緊密にしていただくことを私は御要望申し上げるわけなんですが。

 それでは、先ほど私も文言の中に拉致という表現がない、余りにも驚愕な事実の前に我々は、前提が崩れたんだからこの平壌宣言は変えるべきだろうというように私は思っていたんですが、署名してきた。しかもまた、交渉を十月にする。余りにも急ぎ過ぎているんではないかという印象を持つんですが、その点、田中局長、どういうことですか。

○政府参考人(田中均君) これは、何回も同じ御答弁で大変恐縮なのですが、問題を解決していくために対話ないし交渉をやるべきかやらざるべきかという御判断の問題だろうと思います。

 平壌宣言にも明記をしてありますけれども、ああいう宣言の原則であるとか精神に従った正常化をやるために正常化交渉をやっていくということであります。ですから、日本のような国が対話とか交渉のきちんとした場がなくて問題解決ができるでしょうか。私はできないと思います。それが、国交正常化交渉の中で北朝鮮の態度を見極めながら問題の解決に当たり、日本の国民が納得できるような正常化に至るための交渉をするということだと思います。

○海野徹君 田中局長のそれに私は賛成する部分もあるんですが、私は、その時期なんですよね。

 北朝鮮の拉致謝罪の裏には何があるのか、表向きの理由あるいは本音の理由、いろいろあると思うんです。やはり、我々にとってカードでなかったものがカードであったり、カードであったものがカードでなくなったりするわけなんですね。これは、先ほど言いましたように、日米韓、緊密な連携を取って、それぞれいろんな情報を集めながらやっていく必要がある。

 私は、外交の一元化ということで情報の一元化がイコールのように述べられているということに対して大変な疑念を持っているわけなんですが、情報を集めるということと政策的な判断をするということは別なんですよね。そういった意味では、ありとあらゆるところから情報を持ってくる。これは、防衛庁からの情報も必要でしょうし、あるいは諸外国の情報も必要です。そういった中で、要するに外務省が官邸と一緒になって政策判断して進めていく。となったら、その辺の、要するに、ある意味では時間を若干掛けた方がよりいい戦略が出てくるのではないかなと。明らかに方針は決まっていますから、その方針は決まっていたとしても、戦略性をより高度のものにするためには私は若干の時間が必要ではないかなと。

 先ほどからも局長は、北朝鮮はある意味では変わりつつあるかも、変わるような変化の兆しは見せるけれども本質では変わっていないというような答弁をされていると思います。本質は変わらないと思います、そんな一朝一夕で変わるわけがありませんから。それだけに、少しずつ変わりつつある、あるいは変わる変化、兆しを見ながら、それをいろんなところの情報とのすり合わせの中で進めていくということについては、私は若干の時間をずらす必要もあるのではないかなと思いますが、その辺、どうなんでしょうか。

○政府参考人(田中均君) 私は、委員が言われたことと、それから十月に国交正常化交渉を再開するということは決して矛盾したものではないと思います。

 情報を収集し、日米韓の連携の中で慎重に事を運んでいかなければいけないということはそのとおりだと思います。正常化交渉を始めて、いつまでに正常化交渉を終わるという切りが約束されているわけではありません。したがって、私たちは、先ほど委員が御指摘になりましたように、私は北朝鮮が変わっていないというふうに断言しているつもりはございません。今回、総理が行かれて、平壌宣言に盛られていることというのは、北朝鮮がより合理的な路線に変わったかもしれない、そういう兆しというものはあるということだと思います。ですから、それを交渉によってより確実なものにしていくということは必要なことだと思います。

 ですから、委員が御指摘の、より物事を慎重に、情報を十分収集して日米韓で連携をしながらやっていくということと十月に交渉を開始するということが決して矛盾したことだとは思いません。

○海野徹君 慎重の上にも慎重に、あらゆる情報を集約して高度な政治判断をしながら進めていただきたいなと思いますが、そういう政治判断の中で、外務大臣、これ何回も私も外交防衛委員会でお話をさせていただいて、いや、それは金融庁の問題ですからというような御答弁もあったんですが、朝銀信用組合、この問題の公的資金、これ約四千三百億円が追加投入されるのではないかという話があります。

 今までも、要するに朝銀信組、この破綻処理に約九千五百億円の公的資金が投入されてきた。また、交渉が再開されることで更に四千三百億円が追加投入されるのではないかなと、そういうような観測があるし、そういう準備が整っているというような報道もあります。これは、朝銀信組からの貸出金が朝鮮総連へ組織的に不正流出した事件がこれはもう摘発されています。朝鮮総連から北朝鮮本国への不正送金は、これもまた周知の事実なんですね。

 こういうような事実がありながら、また一兆四千億円、合計して、こういう公的資金を入れて、経済改革というもの、実際には破綻した北朝鮮経済、基本的に支える理由が本当にあるのかなという思いがするんです。

 私は、この問題について、やはり金融庁の所管だからということでなくて、外交政策的にもこの公的資金の再投入をどう判断するんだろうか。私は投入すべきではないと思っています。これは、やっぱり今の金正日体制をただ延命させるだけだろう、我々にとって安全保障上の極めて問題ある部分をそのまま残していくんではないかなと思うんですが、その点について外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) この問題につきましてはいろいろな場で再三再四金融当局から御答弁がございましたけれども、この朝銀信用組合は、我が国の国内の法律に基づいて設置をされています金融機関、認可を受けた金融機関でございます。この破綻処理の問題につきましては、これは金融行政の問題でございますけれども、金融当局によって国内の関連の法令に従って処理をするということで、金融当局も御答弁でいらっしゃいますし、私もそのように理解をいたしております。

○海野徹君 大臣の御答弁はもう再三同じような御答弁を聞かせていただいているわけなんですが、これは、ある意味では大転換をしなくちゃならない北朝鮮政策の中で、同じようなことをやっていくというのは私はいかがなものかと思いますから、その点については今後いろんな場で協議をされると思います。政府の方針として、やはり私は、外務大臣は外務大臣として御意見を持っていただきたいなと、そんなことを思っております。

 私の方で与えられた時間が非常にもうなくなりまして、現実には防衛庁長官にも御質問をさせていただくような質問部分があったわけなんですが、なかなか御質問をさせていただく時間がないのであります。

 通告させていただいた質問をちょっと大分はしょった結果になりまして誠に申し訳ないと思うんですが、防衛庁長官、一点だけお伺いさせていただきたいと思いますが、今月初めに、海上自衛隊呉地方総監部所属の護衛艦から秘密文書が紛失している、これが明らかになりました。戦闘時などの連絡手段の確保を記したマニュアルの一種のようで、データの中には在日米軍の通信関係のものもあったというようなことを聞いております。先月にも自衛隊のコンピューターシステムに関する一部データが流出するという、こういうような事件がありました。

 非常に懸念を深めるわけなんですが、自衛隊における情報管理体制、これは一体きちっとされているんでしょうか、その点についてだけ防衛庁長官の御答弁をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 防衛庁といたしましては、秘密文書につきましては保管要領等の関係規則を設けて、保全の責任者を指定して責任を持って保全に当たらせるなど、日ごろから秘密文書等厳格な保管を心掛けております。

 今回の事案等につきましては、現在、事実関係等を解明をして原因を究明をいたしておりますが、事案の再発がないように再発防止の徹底に努めるとともに、調査結果を踏まえまして関係規則に照らして厳正に対処してまいりたいと考えております。

○海野徹君 今の答弁で大丈夫なのかなと思いますけれども、与えられた時間がもう来てしまっているものですから、通告させていただいた質問のかなりの部分を残しました。川口大臣にもまだまだ聞きたいことがありますし、防衛庁長官にもお聞きしたいことがあったんですが、後日、また外交防衛委員会がありましたら、細かく通告させていただいたことを質問させていただく中で、今日はこれで終了したいと思います。

 どうもありがとうございました。

○谷博之君 民主党・新緑風会の谷博之でございます。早速、質問に入らさしていただきます。
 午前中から午後に掛けまして北朝鮮の国交正常化の問題が質問をされておられますが、私も前半、この問題について何点かお伺いをいたしたいと思っております。

 まずその第一は、特に北朝鮮との国交正常化における北朝鮮の通常兵力の削減の問題、軍縮の要求の問題なんですけれども、実はその前に日朝平壌宣言、これにはいろいろ、ここに私も手元にその宣言の内容を持っておりますが、二番のところに、「国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施」すると、こういうふうな項目も出ておりまして、非常にこれは人道的な支援というものが必要だということは私どもも全く同感であります。

 しかし、午前中の質問でも出ておりましたけれども、我々が支援をしたものが、具体的にお米ならお米が果たして国民に届いたのか、むしろ軍隊に流れて、そこで使われてしまっているんではないか、こんなような懸念もあることも事実であります。そういうことになりますと、これは東アジアの安定どころか、むしろ軍を更に、お米だけで強化するということはないかもしれませんが、支援そのものがそういうふうに使われていく可能性も、強化されるという方向に使われる可能性もあるわけですね。

 そういう中で、実はアメリカのブッシュ大統領が米朝間の議題として既に通常兵力の問題を交渉の中で取り上げているというように我々は聞いております。今回の日朝平壌共同宣言に残念ながら通常兵力という言葉、文字も、その削減も一言も触れられておりません。

 そこで、まず最初にお伺いしたいんですが、現在の北朝鮮の通常兵力、これはどの程度あるのか。それから、後ほどお伺いするノドンですね、ノドン、核、ミサイル、これがどのぐらい配備されているか。そして、今後の国交正常化交渉の中で日本政府は北朝鮮にこの通常兵力の削減を持ち掛ける考えがあるかどうか、お伺いいたしたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 現在、北朝鮮の兵力につきましては、総兵力が約百十万人であります。陸上兵力は約百万人で、戦車が三千五百両、艦艇が七百十隻、十・七万トン。それから、空軍におきましては、作戦機が五百九十機、次世代、三、四世代の戦闘機が、ミグ23が四十六、ミグ29が十六、スホーイ25が三十五機ございます。また、特殊作戦部隊もございまして、約十万人程度あるというふうに分析をいたしております。

○国務大臣(川口順子君) それから、引き続きまして国交正常化の過程で通常兵力の削減問題等について取り上げるかという部分についてお答えをさせていただきたいと思いますけれども、アメリカのブッシュ大統領が北朝鮮の、あるいは北と南の対峙の現場近くの通常兵力について懸念を持っているということはそのとおりでございまして、この点については総理も会談の中で朝鮮半島の緊張緩和の問題として取り上げたところでございます。

 日朝の平壌宣言では、この点については、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するために互いに協力をしていくということを確認をしているわけでございまして、今後の正常化交渉をやっていく中で安全保障問題についても当然に取り上げていくわけでございます。

 今回の国交正常化交渉をどのように進めていくかということの関連で、日朝で安全保障協議というものをやりますということについては一致を見ているわけでございます。北朝鮮の通常兵力の問題を含めまして、朝鮮半島の緊張緩和についてはこの中で議論をしていくことになると思います。

 安全保障あるいはミサイル等の問題については、従来からもやっておりますけれども、日本、韓国、米国、この三国の連携をきちんとやりながら進めていくということが大事でございまして、今後とも密に連携を取っていく考えでおります。

○谷博之君 それで、川口大臣にもう一回確認を今の御答弁についてさせていただきますけれども、この日朝平壌宣言の一番最後のところにこういうふうに書いてあります。「双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」と、こういうことですね。この中に通常兵力のその問題も入っているというふうに解釈していいんでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) そういうふうに御解釈いただいて結構です。

○谷博之君 それで、先ほど防衛庁長官の方にお伺いしてちょっと御答弁いただけなかったんですが、いわゆる核・ミサイル問題の、ノドンのことですね。これはいろんな情報が出ておりますけれども、杏林大学の助教授の倉田先生という先生が書いてありますが、これは朝日新聞の九月十九日に出ておりますけれども、現在既に、日本に向けられたノドンが百基以上既に配備されていると。これは日本全体どこにももう射程距離が入っているという、こういうことだそうでございますが、これについての確認はどうでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) ノドンの射程につきましては、先生がおっしゃるように、数字と同じでございます。基数につきましては現時点において正確に把握をいたしておりません。

○谷博之君 実は、我が国にとって一番の脅威は実はここだと思うんです。これは私があえて言う必要もないと思うんです。

 それで、この問題について、今回の金正日総書記と小泉総理大臣とのこの会談の中で、これは、私はその場にいなかったので一応風聞の話ですけれども、金正日総書記の発言として、日朝国交回復すればノドンミサイルは問題でなくなるというふうに語ったと言われているんですが、つまり、逆に言えば、このノドンを私は金正日総書記が切り札にしているというふうに見てもこれは差し支えないんじゃないかというふうに思っておりますが、この辺についての御認識はどう思いますか。

○国務大臣(川口順子君) ミサイル問題につきましては、先ごろの日朝の首脳会談の際に、今、委員がおっしゃられましたように、金正日総書記からは、ミサイル問題については、総理の問題意識は十分に理解をしている、日朝関係が順調に改善すればミサイルの問題はなくなる。発射モラトリアムについては、平壌宣言の精神に従って二〇〇三年以降も継続をしていくこととしたいということでございます。

 この安全保障の問題、ミサイルの問題については、この金正日総書記の発言を引き出す前に、総理からきちんと国際社会の懸念を踏まえて発言をしていただいているところでございます。こういった問題については、今後、日朝の安全保障協議の場で、それから、それをやるに当たっては日本と韓国と米国と連携を取りながらこの問題に対応をしていくという考えでおります。

○谷博之君 それでは、ちょっと視点を変えまして、先ほどからずっと出ておりますが、拉致問題についてでありますけれども、いろいろ御質問、御答弁等ございましたから重複を避けたいと思いますけれども、その前に、こういうことを私は聞いているんですが。

 今回、九月の十七日に小泉総理が訪朝されました。それに向けて、家族の方々が大変心配されて、その前から東京に上京されて、議員連盟の皆さん方と一緒に政府あるいは官邸に要望したり、いろいろなことをやったというふうなことを聞いておりますが、実は、こういう家族の方々、遠いところから来た方もおられると思うんですが、これは全部自費で来ているんですね。交通費は自分たちが出して、そしてなおかつ要望をして、そしていろいろと御心配をされ、今回のようなケースになっているわけですが、私は、これ一つの要望ですが、ちょっと余りにもこれはやり方が冷たいんじゃないかという気がするんですね。こういう大変国家的なある意味では犠牲になったと言わざるを得ない人たちに対して、そういうことについて心配するのは自分たちのあれでやりなさいよというふうなことの対応では、国はどこまでそういう方々の立場を理解しているんだろうというふうなことを正直痛感させられました。

 それはそれとして、今回の拉致事件は絶対人道上許せない国家的犯罪であるということで、私も被害者とその御家族に心から御心中お察し申し上げたいと思っております。

 そこで、これは一つの例ですが、また米国の例を出して恐縮ですが、アメリカでは、過去のベトナム戦争、そしてその前の朝鮮戦争、それぞれその戦争の後、米兵が捕虜になったり行方不明になったり、非常にそういうふうなケースがありました。そこで、アメリカとしてはこういう行方不明の米兵調査ということでPOWという組織を作られて、国交交渉と並行して別ルートでそうした人たちを捜査するという、調査するという、こういうことをやっているというふうに聞いておりますが、これが事実とすれば、日本は今回の、四日間ですか、二十八日から四日間、政府調査団を派遣するということでありますけれども、こういう、アメリカのやっているのは正に常設の機関とか地域を決めて取り組んでいるという、こういうやり方があるやに聞いておりますけれども、その事実と、とすれば、日本もそういう方法もあるのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 今、委員がおっしゃられました、アメリカがベトナム戦争中に行方不明になった米兵の調査についてそういった調査機関を設置して行ったということにつきましては、一九九二年にハノイに設置をして四軍及び海軍の文官が参加をした等々ということで情報は持っておりますけれども、ベトナムと北朝鮮の国内の事情、国交正常化後も全く同じであるかどうかというような点もあるかと思いますし、またアメリカも現時点では北朝鮮との間で朝鮮戦争当時の米兵の問題がまだ解明できていないところがあるというふうに聞いております。

 いずれにいたしましても、こういった様々な問題については、今後、国交正常化の過程の中で議論をしていきたいと思いますし、国交正常化をするということ自体は北朝鮮にとっても非常に大事なことでありますので、それを十分にてことして使いながら交渉していきたいと考えます。

○谷博之君 それでは、ちょっと質問が前後しまして恐縮なんですが、いわゆる日本と北朝鮮、そしてこの東アジアのこれからの平和の枠組みの作り方といいますか、そういう点について次にお伺いをしたいと思っておりますが。

 現在、北朝鮮、人口が約二千万人いると言われておりまして、そのうち、特に軍人とかその他のエリート、党のエリートですね、あるいはピョンヤンに住んでいる市民、そういう人たち約八十万人がある程度食が満たされていて、それ以外の地方のいわゆる北朝鮮の国民は大変飢えに苦しんでいるというふうに言われています。韓国の調査でも、年間六百三十万トンの米が必要なところに、実際、常時二百万トン程度米が不足する、これを要するに国際的な支援によって支えていかなきゃいけないというのが今の北朝鮮の実情だというふうに言われているわけですね。

 そういう中で、私は、この人道的な支援というのは、一方では拉致問題とか、いろんなそういう問題がありますが、正にそういったものの解明と同時並行的に、しかしこういう何千万の国民のやっぱり飢えというものを救っていかなきゃいけないと思うんですね。こういう意味の私は人道的支援というものは、ある意味では必要ではないか、積極的な役割を日本も果たしていくべきだというふうに思っています。

 そして、それと同時に、実は一九九二年、朝鮮半島の非核化に関する共同宣言というのが、北朝鮮と韓国との間でこの年の二月十九日にこの宣言が発効しております。十年前に韓国と北朝鮮はこの共同宣言で非核宣言を実はうたっているんです。日本も御案内のとおり非核三原則を今貫いております。

 そして、こういう立場からすると、いわゆる南北統一と平和共存に日本がそういう視点からも積極的にかかわっていくということ、つまり、先ほどノドンの話しましたけれども、日本の非核三原則と、今言ったように、南北朝鮮のそういう非核化宣言という、こういう正に三つのトライアングルの中に、私はこの東アジアの非核化ということをこの三国が、さらにこれにアメリカをもちろん加えてもいいと思いますけれども、そういうところで非核化に向けての動きを、日本もその一翼を担って果たしていく必要があるんじゃないかというふうに思っておりますが、これらについてのお考えを聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 委員がおっしゃられました朝鮮半島の非核化に関する共同宣言につきましては、これは仮署名をして翌年、一九九二年の二月に発効したということでございます。ただ、この共同宣言にもかかわらず、九三年から九四年に掛けて北朝鮮による核兵器開発疑惑が高まったということで、実質的にこの共同宣言は機能していないという今状況にあるわけでございます。

 朝鮮半島につきましては、今般の首脳会談を契機に今後緊張関係が緩和していくということを強く期待をしております。そうした中で、この非核化に関する共同宣言が完全に履行されるということを期待しているわけでございますし、我が国としても非核三原則、これを堅持していくという立場に変わりは全くないわけでございます。

 非核地帯構想のようなものということにつきましては、その実現のための現実的環境はまだ整っていないということではないかと思います。例えば、この地域には依然として不透明な要素あるいは緊張関係があるわけでございますし、そしてまたこの地域には大規模な軍事力も存在をしているわけでございます。このような中で、我が国としては、アメリカの核を含む抑止力の下で引き続き我が国の安全を確保していくということではないかと考えております。

○谷博之君 いろいろ私もお伺いしてまいりましたけれども、いろんなこの問題についての報道記事が出ておりますが、これは立教大学の法学部の教授の李鐘元さんという先生が書かれている記事がありますが、この中にも触れられておりますように、これからは日本と北朝鮮との双務、一対一のそういうふうな交渉というものも、もちろんこれからいろんな意味で難しい局面はありますけれども、進展させなきゃいけない。

 と同時に、それは、先ほど申し上げましたように、機能していないという話もありましたけれども、しかしそれは少なくとも十年前にそういうふうな共同宣言も発しているわけですね。あるいは、KEDOなんかの支援も具体的にやっているわけですよ。そういうふうなアメリカや韓国や日本、そして北朝鮮を結んだこの部分がいかに北朝鮮のそういう転換、政策転換というものを図っていくことができるかということを私は視野に入れて、グローバルな視点からそういう対応をしていくということも大変重要だというふうに思っています。

 それから、もう一点。

 たまたま、日本国際ボランティアセンターというのがありますけれども、JVCというふうに略されておりますけれども、ここが九月二十日に声明を発表しています。いわゆるNGOです。既に日本のNGOの中にも北朝鮮と民間レベル段階でレールを引いている組織や人たちがいるというふうに私は聞いておりまして、これからはやはり政府間のそういうレベルの交渉と同時に、そういう正にNGOの人たちを、一生懸命そういう方々にも活躍していただいて、さっき言った行方不明者の調査とか、いろんなそういう人道的な支援等について、やっぱりその場で活躍をしていただくということも私は非常に大事なことじゃないかというふうに思っておりまして、これは御答弁は要りませんので、是非ひとつ御検討いただきたいというふうに思っております。

 それから、時間が限られておりますから、次に、質問に移ります。

 防衛庁の所管の問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、午前中の質問の中に沖縄のアメリカ軍基地の話がございました。沖縄が本土復帰から今年で三十年、そして沖縄にはもちろん日本全土の七五%の基地がそこにあるということですが、実は一九七一年、沖縄が日本に復帰してから三十年たちますけれども、ちょうどその復帰のときに日本の自衛隊が沖縄に配備をされました。そして、現在、陸海空合わせて約六千人、自衛隊の隊員の皆さんがここに勤務をしておられるということであります。

 そもそも沖縄に自衛隊が配備をされた根拠というのは、「日本国による沖縄局地防衛責務の引受けに関する取極」、一九七一年六月二十九日に、当時の日本国防衛庁防衛局長久保卓也氏と在日アメリカ合衆国大使館首席軍事代表・海軍中将ウォルター・カーチス・ジュニア、この中将との間で取り交わされた。これが実は沖縄に自衛隊が配備をされた根拠になっているというふうに考えております。

 この取決めは、いわゆる日本国による局地防衛責務の引受けを定めるものでありまして、米軍統治下の沖縄で米軍の任務だった沖縄防衛を防衛庁が引き受けるに当たっての種々の取決めであるというふうに考えております。細かく配備される部隊の数とか、いろいろ書いてありますけれども、これは省略いたします。

 そこで、この問題は随分過去にももう何十回と国会でも質問されていることなんですが、再度確認をさせていただきたいんですが、この取決めは日米間でどのような意味を持つのかということです。少なくとも、具体的に聞きますが、条約ではないはずです。防衛庁と米軍の担当者による単なる約束事と考えていいのかどうか。そのような点について過去にも国会答弁が今申し上げましたようにありますけれども、この点について確認をしておきたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 自衛隊は我が国を防衛するということが主たる任務でありまして、沖縄返還の協定によって沖縄の施政権が我が国に返還された以上、米軍から自衛隊に沖縄局地防衛の任務を引き受けることになるのは当然のことであります。「日本国による沖縄局地防衛責務の引受けに関する取極」につきまして、この任務の引受けがスムーズに行われるように、我が国が引き受ける局地防衛責務の内容、引受けの時期、自衛隊部隊の展開等の段取りについて事務的に確認をしたものであります。

 したがいまして、沖縄の本土復帰の過程において、この取決めに示された計画どおりに自衛隊部隊が沖縄に展開をし、同地の防衛任務が自衛隊に引き継がれた時点でこの取決めはその役割を終えておりまして、現時点においては特段の意味を有しておりません。

○谷博之君 それでは、重ねてお伺いをいたしたいんでありますけれども、これはいわゆる久保・カーチス取決め、久保・カーチス協定というふうに略称して言われておりましたけれども、これが発効してから三十年がたって、その当時、ここにもありますけれども、ナイキ群一とかホーク群一とかいうことで、三個中隊、四個中隊ということで、具体的にこういう配備内容についてもこの内容には触れられているわけですが、随分その当時から比べると軍事技術も進歩してまいりました。もうこれは言うまでもないことですが、例えばここにあるところのナイキ、地対空ミサイルのナイキは、現在はより高性能のペトリオットに替わっております。

 元々ナイキというのは、我々も素人ですから細かくは分かりませんが、いわゆる高い空の方を飛んでいる、そういうところに対応する、その航空機に対応する。そして、ホークというのは、このナイキでカバーできない低い空の部分の航空機を対象にすると、こんなようなことのようでありますが、このペトリオットによってかなりその空域というのは対応できるということになってまいりまして、こういうふうなことを見直していきますと、当然自衛隊というのも日進月歩、基地の整備や縮小なり統合なり拡大なりというものを図っていかなきゃならないというふうに思っております。

 ここにありますけれども、この取決めのホークの部隊の四個中隊、これは東風平町の与座分屯地、知念村の知念高射教育訓練場、勝連町の勝連高射教育訓練場、そして沖縄市と恩納村にまたがる白川高射教育訓練場、この四つがあるわけですけれども、こういう四個中隊というのは、今となっては過剰な配備ではないかというふうに我々は考えるわけですけれども、こういう装備や部隊の変更を例えば将来考えていくとすれば、この久保・カーチス取決めというものは、先ほどの説明だとするともう意味はなくなったということですから、直接そのことについて触れることはないと、こういうことでございましょうか。

○国務大臣(中谷元君) 先生がおっしゃるとおり、この締結、沖縄の局地防衛責務の文書につきましては、沖縄の本土復帰の過程におきまして、これの計画どおりに自衛隊の部隊が展開をして引き継がれた時点でこの取決めはその役割を終えております。部隊の配置とか規模につきましては、防衛計画の大綱、また中期防を計画をいたしておりまして、国際情勢や我が国の安全保障の状況に応じまして計画に従って整備再編を行っているわけでございます。

 したがいまして、復帰後の沖縄への部隊配置につきましては、我が国本土の場合と同様に、同地域の防衛、それから大規模災害等、各種事態への対応等の責務の遂行に必要な部隊を我が国の自主的な判断に基づいて決定することができるというのは当然のことでありまして、沖縄の自衛隊部隊、また施設の配置規模がこの取決めによって拘束されるということはございません。

○谷博之君 分かりました。
 それで、関連をしてもう一点だけお伺いしておきたいんですが、沖縄における先ほどちょっと触れました高射教育訓練場という部隊名の名称問題についてお伺いしたいと思います。

 ここに、那覇防衛施設局管内防衛施設図というのが沖縄の地図の中にありまして、ここにそれぞれの自衛隊の部隊名が記されております。このいわゆる自衛隊の部隊名を決めるということについては、いろいろ私も調べてみましたが、昭和四十年の六月、「自衛隊使用施設の件数・数量の調査について」という通達が防衛施設庁の施設部長から各防衛施設局長に発せられた、これが根拠になっているというふうに言われております。

 沖縄の場合は、先ほど申し上げましたように、一九七一年、本土復帰の時点で、この通達に基づいて決めたというふうに聞いておりまして、その決め方は、使用状況を勘案をし、特に、その区分表記のマニュアルに従ってそれを決定したということでありますけれども。

 実は、考えてみますと、先ほど申し上げました高射教育訓練場、これは名前のとおり言うとすれば訓練場、訓練をする場と普通に我々は考えがちですが、しかし、ここには正に本土でいうところの駐屯地や分屯地と同じような形態になっているところがあるわけでありまして、具体的に言うと、さっき申し上げました三つの高射教育訓練場、これは当然形態からしても分屯地という名前を付けるべきではないかというふうに思っておりますが、この辺の名称の付け方、それからこういう高射教育訓練場と付けたその経過なり判断、これを教えていただきたいと思います。

○政府参考人(大古和雄君) 御指摘の防衛施設につきましては、自衛隊法施行令に基づきまして分屯地と称されておりまして、これは小規模な部隊が所在するという観点からこのような名称が付されたものと承知しております。

 他方、防衛施設庁におきましては、国有財産を管理している立場から、基本的には用途別で分類し、名称を付しているところでございます。この施設につきましては、訓練場として使用されるということを踏まえまして高射教育訓練場というふうに称しているものでございます。

 御指摘の那覇防衛施設局が作成した資料につきましては、外部等への説明資料として使っておりますけれども、この名称を使用しているということでございます。

 なお、この点につきましては、本土に所在する陸上自衛隊の高射特科部隊についても同じように整理しているところでございます。

○谷博之君 そうしますと、ちょっと確認をしたいんですが、いわゆる高射教育訓練場と、いわゆる分屯地ですか、これはどちらの名前を使ってもいいということなんでしょうか。

○政府参考人(大古和雄君) 先ほど言いましたように、陸上自衛隊の方では分屯地として使用しておりますけれども、施設庁の方では国有財産を管理するから用途に着目してそういう名称にさしていただいております。それで外部の説明資料にも使っていると、こういうことでございます。

○谷博之君 沖縄には、御案内のとおり、米軍基地がもちろんたくさんある。陸上自衛隊の基地もあるという、正に基地の島ですね。駐屯地、分屯地という名前を付けるといかにもそこに部隊があって軍の施設があるというふうなイメージ、教育訓練場というと何となく教育する場なんだろうなと、こういうふうなことで、その言葉の意味合いが、これ正に素人考えですよ、そういうふうなことに受け止められないかなというふうな気がしておりまして、そういう意味で高射教育、こういう教育訓練場という名称を付けたということではないんですか。

○政府参考人(大古和雄君) 先ほど言いましたように、施設庁としては財産を管理する立場から用途に着目してそういう名称を付しておりますので、そのほかの他意はございません。

○谷博之君 そうしますと、ここにあります先ほど申し上げましたこの施設図の地図ですけれども、これは高射教育訓練場と書いてありますが、これは名称を別に変えても構わないということなんでしょうか。ここに書いてありますけれども。

○政府参考人(大古和雄君) 陸上自衛隊では分屯地でございますけれども、施設庁としては教育訓練が行われる場ということに着目してそういう名称を付しておりますので、ということでございます。

○谷博之君 実は、これは私ども調べた話というか問題なんですけれども、現実に沖縄県や沖縄のいわゆる市町村ではすべてこの施設図によって行政上全部この名前が使われて扱われておりまして、正にそういう意味では、言葉の与えるイメージなのかもしれません、名称ということでは一つの、その名称によって普通我々はイメージを浮かべますから。そうすると、それが何か全体として独り歩きしているような感じもしないでもないわけなんです。これは私のある程度邪推というふうにとらえられても仕方ないかもしれませんが。少なくとも沖縄県民の中には、米軍の基地の撤去というか縮小というふうな気持ちほど自衛隊の縮小とかそういうことについての考え方は県民の皆さんは持っておられない。これは内閣府の調査でもそういうものが出ておりますから。

 そういう点では、我々は、自衛隊の果たす役割、県民が米軍の基地よりもそれを受け入れているということからすれば、非常に自衛隊の果たしている役割も大きいんだろうと思いますけれども、こういうこの名称の付け方についても私はその実態に合った名称の付け方というのを考えるべきであって、そういう意味ではこの高射教育訓練場というのはちょっと名前の付け方としてはいかがなものかなというふうに感じておりまして、これは幾ら言っても多分水掛け論というか議論がかみ合わないと思いますので、要望として取り上げさしていただきたいと思っております。

 それから次に、航空自衛隊の新初等練習機の調達と会計検査院の検査報告についてお伺いしたいと思っています。

 もうこの問題は衆議院でも取り上げられておりまして、簡潔に二点だけお伺いしたいと思います。

 平成十二年度の決算報告の「特定検査対象に関する検査状況」の中で航空自衛隊の新初等練習機の調達が取り上げられております。この内容は、簡単に申し上げますと、大きく三つの柱から成っておりまして、一つは入札時の書類の取扱い、それから二つ目には提案内容拘束の具体化、そして三つ目が入札時の提案内容履行の確保、この三つについて検討を求めておるわけでありますけれども、防衛庁としてその後どのような対応を取ったのか、お伺いいたしたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) この新初等練習機の調達につきましては、平成十二年度の会計検査院の報告では御院の所見として御指摘の内容が記述されているところでございます。

 この会計検査院の報告書を踏まえまして、防衛庁としましては、富士重工業が提案した内容が今後の新初等練習機の機体調達やIRAN、これは定期修理でございますが、その維持に掛かる各契約に適切に反映されるように、内局、航空自衛隊、契約本部、この連携を強化することといたしておりまして、各年度の予算要求及び執行においては、平成十二年度入札時の提案内容を基に、物価、為替変動等を織り込んだ金額を算定し、その金額内で契約を締結することといたしております。平成十三年度の執行に際しましても、このような考え方に基づきまして機体十一機の調達等を実施したところであります。

 平成十四年度以降も同様に、富士重工業の提案内容が確実に履行されるように、各年度の予算要求及び執行に関して防衛局長、管理局長、契約本部長等がそれぞれ連携を取りつつ、その職務を適切に遂行していくことといたしております。
 また、今後、新初等練習機と同様の総合評価落札方式を採用する場合におきましては、会計検査院の報告書を踏まえまして、入札及び契約事務の公正性及び透明性をより一層高めて、提案内容がより確実に履行されるように、以下三点の点で改善を行っていきます。

 まず一点は、入札時の書類の取扱いについては、入札書に機体の入札価格のほか入札提案時の価格その他の費用を付記させたり、提案書の全部数のうち一部をすべての入札参加企業の関係者の立会いの下に原本として封印をさせるということであります。

 第二は、提案内容拘束の具体化につきまして、物価の変動、また為替レートの一般的な変動要素を具体的に明示するとともに、工数やIRAN間隔等の拘束内容について具体例を明示し、拘束内容等について、入札希望会社の共通認識を高めるための質問会等を入札説明会に加えて設定をいたします。

 第三は、拘束内容履行の確保につきまして、入札説明書に損害賠償を行う具体的な場合を明示するとともに、提案内容を確実に履行する旨、及び履行されない場合の損害賠償の責を負う旨の確認書等を求めるなどの方策を取ることといたしたいと考えております。

○谷博之君 それでは、重ねてお伺いしますが、ここに四月二日の新聞のコピーがありますが、「防衛庁、改ざんし提出」というタイトルなんですが、これは御案内のとおり、今回のその調達についてスイスの航空機メーカーが落札できなかったということで、スイス政府からその経過についての問い合わせがございました。それに対して、本年の四月、防衛庁は、会計検査院の報告を改ざんしてというふうにこのタイトルで書いてありますから、それを使わせていただきますが、改ざんをして、不適切と認められる事態は見受けられなかったというふうな旨の回答をしていた。このことがこの新聞に報道されています。

 この点については、今年の五月八日、九日の衆議院の事態特の委員会でも、我が党の石井、枝野議員が質問で取り上げております。そして、この問題について防衛庁長官は、事務的ミスだったとしておっしゃっておりますけれども、監督不行き届きというふうな点もあって、俸給の一か月分の返納をしたというふうなことであります。

 従来から、こういう防衛調達の透明性とか公正性が強く求められているわけでありますけれども、このような事態が生じたことは本当に我々にとっても誠に残念だというふうに思っておりまして、今後このようなことが起きないように善処方を強く求めたいと思っておりますが、防衛庁長官の決意、所見をひとつお伺いしたい。そして、会計検査院の所見もお伺いいたしたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 本件につきましては何度か委員会でも述べておりますが、いきさつといたしましては、スイス政府からの要請に対しまして、この特定検査対象に関する調査状況としての報告された性格付け、これについて適切に伝えたかったということで、その本文は全文翻訳して送っておりますが、この報告書の性格付けについても対外的に正しく知ってもらいたいと考えまして、同時に作成をいたしました。

 この作成のときに、会計検査院とも協議をいたしまして、対外応答要領を作成をし、それについて防衛庁としての見解としてまとめていたものでございますが、この文書を訳したわけでありまして、防衛庁の担当者は、事前に会計検査院に連絡をして了解が得られていると考えており、またポイント等を会計検査院に届けた際に、会計検査院から特段のコメントもなかったことから、ポイントの作成名義人も含めまして会計検査院の了解が得られたものと認識をしたわけでございますが、しかし、そのことが上に伝わっておりませんで、会計検査院の了解を得ないままにそれを発送するという不適切なミスが生じたものと考えております。

 本件につきましては、私自身も遺憾であると考えておりまして、当時の計画課長以下の作成担当者を厳重に注意処分といたしましたし、こうした事態が生じた後の対応につきまして、事務次官、防衛局長を厳重に注意をし、その旨、五月九日の国会において述べたところでもございますし、私も給与の一部を返納したところでございます。

 今後、このようなことが二度と起こらないように、特に外国に発送する文書等におきまして不備がないように徹底して行ってまいりたいと考えております。

○説明員(増田峯明君) お答えいたします。

 私ども会計検査院といたしましては、ただいま先生御指摘の防衛庁からスイス政府に送付されました検査報告のポイントという文書につきましては、検査報告に記載されていない文言が記載されているかのように、また、検査院が作成した文書ではないわけですが、検査院作成ということで、検査院が作成したかのように誤解を与えるおそれがあるということで、防衛庁に対しまして口頭でまずその旨を強く申入れをいたしますとともに、その後、スイス政府に対しましてスイス政府の誤解が生じないように伝えてほしいということで、再度、書面によりまして申入れをしたところでございます。

 これに対しまして、防衛庁では、スイス政府に書簡を送付いたしまして遺憾である旨を伝えるなど、しかるべき対応が取られたものと理解しております。

 私どもといたしましては、このような事態が起きましたことにつきまして大変遺憾なことと考えておりまして、今後二度とこのようなことが起きないようにお願いをしたいというふうに考えております。
 以上でございます。

○谷博之君 時間が参りました。あと何点か質問の予定をしておりましたが、一点だけ最後にお伺いいたします。

 ODAの情報公開の一層の推進ということでございまして、ODA問題については午前中も質問が出ておりました。私も最近、さきの国会でミャンマーのバルーチャンの発電所の無償援助に関する質問主意書を提出して、そのときに感じたわけですけれども、一連の環境・社会面の調査について情報を聞かせてくれ、開示してほしいということを求めましたけれども、すると、入札に影響を及ぼすからという目的でこれを拒否されたわけですね。例えば、農民の聞き取り調査が入札に影響を及ぼすというようなことになるのかどうかそれは分かりませんが、こういう体質がどうも外務省の中にはあるんじゃないかというふうに考えています。

 九月十一日のNPOの情報公開市民センターの発表した省庁の情報公開度を見ても、外務省は二年連続で二百点満点で七十五点、最低だったんですね、これは、情報公開度が。そういうことなんですが、いわゆる拉致問題でもいろいろと今指摘をされております。

 そこで、特にODAの一層の情報公開の必要性と行動計画の更なる見直しの必要性、そして今度のこのNPOの出した情報公開度の感想、これらも含めて大臣に御答弁をお願いいたしたいと思います。

○政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。

 御指摘のバルーチャンの件につきましては、私どもといたしましては、情報公開法の規定に照らしましてこの七月一日付けで不開示の決定をさせていただいたところでございます。

 その主な理由は、その中にある費用の積み上げの概算の問題でございまして、これが将来の予定上限価格の推測につながるという観点から、入札に影響を及ぼすんではないかということで非公開とさせていただいたわけでございます。

 それから、御指摘のランキングについては、これは交際費でありますとか諸謝金でありますとか、公開についての制度運用についての御評価でございまして、十分承知しているところでございますが、いずれにいたしましても、ODAの改革を進めるに当たって、透明性ということは非常に重要な柱であるというふうに認識いたしておりまして、情報公開法に従って開示すべき情報は広く開示していくという考え方、精神に立ちまして、今後具体的な案件一つ一つについて誠実に対応してまいりたいと思っております。

○谷博之君 以上で終わります。
 ありがとうございました。


2002/09/26

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