2002/10/10-1 |
衆院・外務委員会
○浅野委員 平壌宣言は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決して、地域の平和と安定に寄与すると述べております。不幸な過去の清算という命題が極めて高いハードルだとかねてから私は思っておりましたので、二条で、「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。」と述べることによって、歴史認識の相違が一挙に克服されたことについて意外な感を持ちました。これは平成十年十月の日韓東京宣言の表現と全く同じでありまして、北がよくのんだと、外交交渉として高く評価できると私は思っているのです。
ところが、東京宣言は、小渕総理の反省とおわびに対して、金大中大統領がこれを評価し、過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と友好に基づく未来志向的な関係に発展させると受けているんですが、平壌宣言では朝鮮民主主義人民共和国の認識が一切書かれていないので、具体的な様子が全くわからない。首脳会談に至る一連の折衝の中で、北朝鮮は歴史認識にどのような反応を示したのですか。
○田中政府参考人 お答えを申し上げます。
委員が御指摘になりました日朝の平壌宣言でございますけれども、この前文の中に、「両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した」ということ。それから、パラグラフの一で、「この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させる」ということでございます。
したがって、北朝鮮の認識として、不幸な過去の清算ということ、これは委員御指摘のとおり二の冒頭に書いてあるところでございますが、これのみならず、懸案事項を解決する、こういうことはまさに日本の主張でございまして、北朝鮮としても宣言の上ではこれをのんでいる。国交正常化というのも、こういう精神、基本原則に従った正常化であるということでございます。
○浅野委員 平壌市内にある朝鮮労働党三号庁舎と呼ばれる大きな建物に、党中央委員会の対外連絡部、対外情報調査部、作戦部、統一戦線部の四つの部署が入っていると言われております。このうち作戦部は、工作員を日本や韓国へ送り込む潜入と移送を専門に行う部署ですから、恐らくこの作戦部が実際に日本人拉致を指示した、指揮したと推定されます。
首脳会談で金正日総書記は、拉致事件は私の知らないところで起きたことと述べて、みずからの関与を否定しております。しかし、党中央委員会は総書記が主宰する最高意思決定機関ですから、そこでの論議をトップが知らないということは想定しにくいと思います。
そして、朝鮮半島の情報に詳しいある研究所によると、工作員を日本人に成り済まさせるために、日本の町並みを再現し、日常の会話に加え生活習慣を教える日本人村が平壌市の郊外にあって、かなりの日本人が教育係をしているということであります。この情報筋は、拉致された日本人は最終的には三けたに上るのではないかと推定しています。
平壌宣言はまさに、今政府側から指摘のあったとおり、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとると言っているわけですから、国交正常化交渉を始める前に納得のいく拉致リストの全貌を明らかにすべきである、それが明確にならない限り、日程は一たん決めたけれども、入りたくても交渉に入るわけにはいかぬ、そのぐらいの要求はすべきじゃないですか。
○田中政府参考人 委員御指摘の拉致問題にかかわることでございますけれども、御案内のとおり、北朝鮮は過去一度たりとも拉致ということを認めたことがございませんでした。十数年にわたって、正常化交渉の中においても何回も問題提起をしましたけれども、拉致というものは存在をしない、行方不明者の問題として調査をすることはすると、そういっても結果的には、調査の結果、そういうものはないというような答えをしてきたわけでございます。
したがって、今回におきましては、水面下の接触におきましても、何とか拉致問題を正面から認めさせて、安否について全貌を明らかにするということを繰り返し繰り返し求めてきた次第でございます。総理自身も、そういう問題をまず解明するという非常に強いお気持ちを持たれてピョンヤンに行かれて、日朝の首脳会談によって、初めて北朝鮮が拉致の問題を認め、謝罪をしたということでございます。
ですから、政府といたしましても、日朝首脳会談に基づいて徹底的な真相の解明をやっていくということでございますし、その後の調査団の派遣、あるいは今回の生存者の方々の帰国、こういうことで、現在も調査団の収集しました資料に基づきまして、先方が言っていることの整合性、不明な点、精査をして、一つ一つきちんと事実の解明というのをやっていくということでございます。
他方において、正常化交渉、これはまさに入り口でございます。いろいろな意味で平壌宣言はその具体的な前提が書かれている。まさにそういうものにのっとって、交渉の場がないと、なかなか交渉すべきことについてきちんと交渉ができないという点もございます。したがって、交渉の場を通じても、この拉致問題の事実関係の解明、それから問題の解決、こういうことに最優先で取り組んでいくというのが政府の方針でございます。
○浅野委員 九月二十日の外務委員会で、「北朝鮮が死亡したと発表した八人は、いずれも病死または災害死と説明されています。本当はほかの死因ではないかと推定される、断片的ですが、信憑性の高い情報を入手しています。同じ日に二人が死亡したという不自然さを含めて、」どう分析をしておりますかと私は発言をいたしました。
その後、自殺者が判明したり、そのほかの死因が公然と議論されるようになりましたが、あの時点であえて指摘したのは、自決した人が何人かいるという、未確認とはいえ信憑性の高い情報をことし前半のある時期に入手していたからであります。
年月日までは不明ですが、かつて、拉致された日本人が再教育される場で、日本人がみんなで日本の歌、「故郷」を歌っていた。「兎追いしかの山」と涙ながらに繰り返し歌っていたが、そのことが先方をいたく刺激して、よくない状況を招いたようだというたぐいの具体的な情報を含めて聞いておりましたので、病死あるいは災害死という北朝鮮の当初の説明にあの時点で疑問を呈しました。
拉致を認めさせ、双方が交渉のテーブルに着くことは、北東アジアの平和と安全にとって極めて重要なこと、成果だと評価をいたしますが、日本の国土から多くの日本人が連れ去られたという重大事件をあいまいにしたまま交渉の進展はあり得ない、その基本方針だけは堅持するように求めておきます。副大臣の決意を伺います。
○茂木副大臣 浅野委員の御質問はいつも予算委員会等々でも拝聴いたしておりまして、きょうの御質問でも、まさに情報の分析であったりとか、それから調査のプロだな、こういう思いを持っておりますが、今回の拉致問題につきまして、そういった御指摘も受けまして、政府として調査団を派遣させていただいた。
そして、今回の調査結果報告につきましては、特に死亡したとされる方々について、死亡を特定するのにはさらに具体的な情報が必要である、こんなふうに思っておりまして、北朝鮮に対しましても、関連文書を含みまして、詳細な資料の提供をさらに求めているところであります。
また、委員御指摘のように、この真相解明問題を含め拉致問題を、再開される日朝国交正常化交渉の最優先問題として今後とも進めていきたい、このように考えております。
○浅野委員 終わります。
○吉田委員長 次に、上田勇君。
○上田(勇)委員 公明党の上田でございます。
きょうは、拉致問題について、短時間でありますが、何点か質問させていただきます。
これまで、北朝鮮側から拉致事件に関しましていろいろな情報が提供されておりますけれども、これらの情報は、死亡したとされる年月日、それ以降に目撃証言があったり、あるいはいろいろな不自然な点があるというようなことで、マスコミ等でも疑問が提起されているわけであります。確かに、普通に考えるとにわかに信じがたいような内容があったりというのが私も率直に感じるところでありますし、先日、新聞に出ていました世論調査でも、国民の八八%が信用できないというような調査結果もございます。
そこで、ちょっと率直なところをお伺いしたいんですが、政府として、北朝鮮からこういうふうにもたらされている情報をどの程度信用ができるものだというふうに認識されているのか、御認識を伺いたいというふうに思います。
○茂木副大臣 上田委員の方から率直な御質問をいただいたわけでありますが、北朝鮮から提供された情報が現時点で十分かと言われれば、決してそのように我々は考えておりません。また、多くの国民もそのように認識していると思っております。
また、先ほど申し上げましたように、今回、調査団を派遣させていただきまして、その調査結果内容につきましても、政府としては、特に死亡したとされる方々について、死亡を特定するのにはさらに具体的な情報が必要であると考えているところであります。
現在、今回の調査チームが持ち帰ってきました種々のデータの分析であったり鑑定を実施しているところでありまして、また、北朝鮮に対しまして、引き続き、関連文書を含みますさらに詳細な資料の提供を強く求めているところであります。
○上田(勇)委員 つまり、政府としても、現時点でもたらされているさまざまな情報、これだけでは到底納得のいくところまでは進んでいないという認識ではなかったかというふうに思いますけれども、そうした中で、この月末、二十九日、三十日、マレーシアで国交正常化交渉の再開の会合が開かれるということが決まりまして、政府としてもこの拉致問題を諸懸案の最優先事項として取り上げる方針というふうに伺いまして、これも当然のことであるというふうに思います。
他方、北朝鮮側の一番の関心事項というのは、私は、これは日本からの経済協力の内容とか規模というような点にあるんじゃないかというふうに思います。もちろん、平壌宣言においても、この経済協力というのが重要議題の一つとして合意されているのはそうなんですが、しかし、今副大臣からもお話がありましたけれども、この拉致問題について、今の状況というのは納得できる状況にはないということでありますので、そうした中で経済協力に関する交渉を始めるというのは、これは私は適当ではないというふうに考えますし、また、国民の理解もなかなか得られないのではないかというふうに考えるところであります。
先ほどちょっと申し上げました世論調査においてなんですが、実に四三%の人が今月からの交渉を再開することには反対している。これは、私が推測するに、やはり、交渉が再開すると、そうした経済協力みたいな話になってくるんではないか、この拉致問題が解決しないままそういうような話にずるずると引き込まれることについては慎重であるべきじゃないかという国民の意見ではないかというふうに思うんです。
そういう意味で、この拉致問題について今後相当な進展がない限り、やはり経済協力の交渉ということは始めるべきではないというふうに考えますし、また、これから二十日間ほど残っているわけでありますけれども、その間にこの拉致事件の真相解明についてどういうような取り組みをされるお考えなのか、お伺いしたいというふうに思います。
○茂木副大臣 委員の方から、今後の交渉の大きな枠組み、特に経済協力の問題も含めて御指摘をいただいたわけでありますが、何にいたしましても、この拉致問題の解決を国交正常化交渉の最優先課題としていく、同時に、この真相解明に全力を尽くしながら、拉致の被害者の方々そしてその御家族の御意向を最大限尊重して事実解明をしていきたい、こんなふうに考えております。
そこで、国交正常化後の北朝鮮への経済協力の問題でありますが、日朝平壌宣言に基づきまして、その具体的な規模と内容を誠実に協議していく方針であります。いずれにいたしましても、北朝鮮が日朝平壌宣言の精神と原則に基づき誠実な対応をとること、それがこれから重要でございまして、北朝鮮にそのような対応が見られない場合は国交正常化交渉やその後の経済協力のプロセスを進めることはできないのは当然と考えております。
○上田(勇)委員 おっしゃるとおりなんだというふうに思うんですけれども、私が申し上げているのは、やはり、一たん交渉が始まってしまって、こういう経済協力みたいな話し合いが始まる、そうすると、我が方としての関心事項について十分な納得のいく領域に達していなかったとしても、ずるずると交渉が進んでしまうんじゃないかということを私も懸念しておりますし、先ほどの世論調査の結果などにあらわれているような多くの国民の意識なんではないかということでありますので、そこはぜひ十分留意をしていただいて交渉に臨んでいただきたいというふうに思うわけであります。
その中で特に、今、一部、人道支援については国交正常化交渉とは切り離して協議すべきではないかというような意見も聞かれますけれども、私はそれにも賛同できません。先方が重大な関心を持っている食糧支援などの人道支援についても、これは我が方の重要な交渉のカードであるというふうに思いますし、これからまさにその交渉がスタートしようとするときに、しかも、拉致問題はもちろんのこと、安全保障についても幾つもの重大な懸案がある中で、人道支援とはいえ、そういったことに安易に言及するということは、これからの交渉上も得策ではないというふうに思いますし、貴重なカードを切ってしまうというようなことになりかねないんではないかというふうに思いますが、その辺について政府の方針を伺いたいというふうに思います。
○茂木副大臣 まず、次回の交渉の議題ですか、これは相手側、北朝鮮とこれから調整していくということでありますが、次回の交渉におきまして経済協力の規模であったりとか内容につきまして具体的な議論をすることは、現時点では考えておりません。
それから、人道支援の問題でありますが、まず、現在政府として、北朝鮮に対する新たな食糧支援について具体的な検討を行っているという事実はございません。
その上で、北朝鮮に対する食糧支援を今後どう考えていくかという問題でありますけれども、これは現時点では議論しておりませんので一般論として申し上げますと、政府として、人道上の考慮に加えまして、今後交渉の中で浮かび上がってくる種々の要素を総合的に勘案して慎重に検討していくべき問題である、そのように認識をいたしております。
○上田(勇)委員 これから交渉が始まるわけでありますし、相手は、これまでの韓国やアメリカとの交渉を見ていましても、そうすんなりと協力して交渉を進めようというような相手ではないというふうに思いますので、ぜひ我が方としても、十分、その交渉に臨むスタンスについてははっきりとさせていただいて、毅然として臨んでいただきたいというふうに思うわけであります。
それで、最後にちょっと警察庁にもお伺いをしたいんですが、警察庁では、これまで認定した事案以外にも、北朝鮮による拉致の可能性がある事案があるという認識を持っているというふうに承知をしております。それらについても、政府全体として協力して対応する必要があるというふうに考えますが、実際に先方と、北朝鮮側と交渉に当たっている外務省に、そうした認定されている事案以外の件についても十分な情報が提供されるべきであるというふうに考えますが、その見解をお伺いしたいのと、また、実際にその交渉に当たっている外務省にそうした事案についての情報が提供された場合には、これは速やかに北朝鮮側にそうした事実について照会をしていただきたいというふうに思いますけれども、そのお考えをあわせてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○奥村政府参考人 警察といたしましては、現在、十件十五名の方々につきまして北朝鮮による拉致容疑事案と判断をしておりますけれども、これ以外につきましても北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると考えております。現在、所要の捜査、調査を鋭意行っているところであります。
これまでも、拉致容疑事案と判断したもの以外の事案につきましても、外務省に対して必要な情報提供を行ってきたところでありますけれども、これらの事案につきましては、行方不明になっている方々の安否を確認し、また捜査、調査を進める上で外務省との連携が必要不可欠でありますので、今後ともさらに十分な情報提供を行っていきたいというふうに考えております。
○茂木副大臣 御指摘のように、今後関係当局と連携を深めていくということでありますが、捜査当局からそのような判断がなされた場合には、外務省といたしましても、北朝鮮に対しまして当然しかるべき対応を求めていきたいと考えております。
○上田(勇)委員 ありがとうございました。
○吉田委員長 次に、松浪健四郎君。
○松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。
九月の十七日は、歴史的な日となりました。我々、外務省で仕事をさせていただいた政務官の一人として大変うれしく思いますし、歴史的な事実の場に立ち会わせていただいたことを光栄に思うものでありますけれども、小泉総理のピョンヤン訪問は、七三%前後の国民が、よかった、こういうふうに評価をしております。
それは、あくことのなかった扉があいた、しかもちょこっと見えた、大変な成果であるということはうれしい限りでありますけれども、心しなければならないのは、我が国には世論があるということであります。かの国には世論がない。この違いを我々はこれからもよく知っておかなければなりませんけれども、その世論のことを考えますと、これは本論ではありませんけれども、質問に入る前、冒頭、政府と外務省に苦言を呈しておきたい、こういうふうに思います。
と申しますのは、週刊誌や夕刊紙、またテレビを見ておりますと、政府専用機にマツタケを積んでおったのか積んでいなかったのかということが大きな話題になっております。たかがマツタケでありますけれども、されどマツタケであります。これを政府の要人が外交上の儀礼で明確にできない、あるいは関知しないということでは、国民はなかなか納得しないのであります。
したがいまして、積んでいたなら積んでいた、だれが食べたのなら食べた、はっきりと国民に説明をして、この国は北朝鮮じゃないんですから、何でもオープンにする、そして堂々とすべきだ、私はこう思うんです。
どうせうそをついてもばれるということは、政府専用機ですから、物を積むときには、この段ボールに何が入っているのかチェックしなければ総理の命が危ない、だからきちっとチェックしているはずですし、何を積んだかは明確であります。それをなぜ国民に明確にできないのか。私は、包み隠さずそういうようなものはオープンにしていくべきだ、そして国民の皆さんの理解を得るべきだ、堂々とすれば国民も理解してくれる、こういうふうに思うものであります。これが私の苦言であります。
そこで、本論に入りますけれども、冒頭申し上げましたように、北朝鮮は扉を開いた、そして中を徐々に見せようとしてくれております。私は、これは外務省の大きな働きがあったし努力があった、このことに高い評価をするものであります。そこで、この拉致問題について北朝鮮側の対応の評価について、まず田中局長にお尋ねしたいと思います。
○田中政府参考人 拉致問題につきましては、委員御指摘のとおり、これまで長い間北朝鮮との関係では不明であった、それを金正日総書記が首脳会談で認めて謝罪をした、これは全く今までにはない対応であったわけであります。私どもは、まさに拉致問題の解明というのはそこから始まるという認識でございますし、日朝首脳会談以降、北朝鮮は種々の情報の提供、調査団の受け入れ、その他の措置をとっていますけれども、私どもはそれで十分だとは全く思っていません。
これから一つ一つきちんと情報を精査しながら拉致問題の事実の解明に努めていきたいと思いますし、国交正常化交渉におきましても最優先課題として取り上げてまいりたい、かように考える次第でございます。
○松浪委員 これからもやっていくという局長の言葉を我々は信用させていただきたい、こういうふうに思います。
ただ、国民は、七十数%もこの対応を評価していないわけですね。北朝鮮側からすれば、これは大変な前進をさせている、こういう思いなんでしょうけれども、日本国民は納得をしていないということ、このことを交渉される皆さんにぜひ頭の中にたたき込んでおいてほしいということをお願いしたいと思います。
次に、この前、九月二十八日から十月一日まで、拉致問題に関する事実調査チームが調査をされ、その結果を公表されたわけでありますけれども、その調査の評価、これは、我々から見ますと一見大分進んでいる、このように思うわけなんですね。ところが、どうも一つ一つほころびが出てきて、本当に信用できるんだろうか。北朝鮮側の説明というのは、調査された、行かれた人たちに対して本当に説得力があったんだろうか。それとも、まゆつばものだなというような思いで聞いておられたのか。拉致事件で日本政府の調査団に対する北朝鮮の説明、これをどのように評価されるか、田中局長にお尋ねしたいと思います。
○田中政府参考人 調査団は、基本的には、幾つかのインタビューであるとか政府当局者からの聴取、現場の視察等も含めて、一定の時間の間に可能な限りの調査を行ったということでございます。調査団の報告の基本的な結論というのは、一つは、生存されている方々については拉致された方々と断定して差し支えないという印象、それから、死亡されたとされている方々については死亡原因を特定するには具体的な材料が不十分であるということでございます。
調査団の結論というのは今申し上げた二つの点でございまして、今後、調査団が持ち帰った資料、データ、それから科学的に解析を必要とされるものも含めまして精査をしながら、引き続き北朝鮮側に資料を求めていく、説明を求めていくということでございます。
御案内のとおり、先ほども御答弁申し上げましたけれども、拉致を認めたのが九月の十七日ということでございます。その前に特別の委員会を立ち上げて調査をしたという説明がございましたけれども、私どもは、北朝鮮が一夜のうちにすべて変わるというような幻想は全く持っておりません。私どもとしても、粘り強く事実の解明を進めていく必要があるというふうに考えております。
○松浪委員 そこで、この前は、実質的には二日間だけの調査でありました。日程上大変な困難が伴ったであろうことは容易に想像できるわけでありますけれども、この持ち帰った調査結果に八八%の国民は、不十分だ、こう言っているわけですね。ということは、国民の声はやはり、今局長からも粘り強く交渉していくというお話がありましたけれども、もう一度調査団を派遣すべきではないのか。
今月の二十九日からクアラルンプールで交渉が始まるわけですけれども、その前にだって調査団を派遣することができるのではないのか、個人的にこう思いますけれども、再調査を、また調査団を派遣される予定があるのかないのか、副大臣にお尋ねしたいと思います。
○茂木副大臣 まず冒頭、お答えする前に、先ほど来松浪委員は国民の支持、理解ということを強調されておりまして、それは、先日の外務省におきます副大臣、政務官の新旧交代式のときも、私もやはり、力強い外交を展開していくためには国民の支持がなければできない、このような認識を委員と共有させていただいておりますし、今月まで委員には外務政務官としてこの北東アジア地域も御担当いただいたわけでありまして、御意見を真摯に受けとめたい、このように考えております。
その上で、調査団の北朝鮮への再派遣の問題でありますが、現在、調査団が持って帰ってまいりましたデータの分析、鑑定を急いでいるところであります。その結果、そして今回五人の方が一時帰国をされるということでありまして、その状況、それから御家族、御親族の御意向も踏まえて検討していきたい、このように考えております。
○松浪委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、外務省、政府におかれましては、国民の期待にこたえるよう最大の努力をしていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
2002/10/10-1 |