2002/10/10-2

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参院・外交防衛委員会


○木俣佳丈君 おはようございます。民主党・新緑風会の木俣佳丈でございます。
 まず、今日は日朝の問題について集中的に討議ということで、まず石破大臣、就任おめでとうございます。そしてまた、副大臣、政務官の皆さんにも御就任おめでとうございます。この次の国会というのは、恐らくは北朝鮮国会ということを名付けられる、又は安全保障国会ということになることは間違いないということで、せいぜい励んでいただきたいなと思っておるわけでございますが。
 外交というと、私は三十年来外務大臣を務められたドイツのゲンシャーさんという方を思い出すわけなんですが、この方が言う言葉の中で、外交の基本というのは、相手に誤解を与えたり、そのために、それによって誤った判断が生じる余地を残さない明確な意思の伝達であると、こういう言葉を述べていらっしゃって、これは外交は言葉であるということを言われておると思うんですね。拉致問題の解決なくして日朝の国交正常化はない、これほど明確な意思の伝達というのはないと私は思っておりまして、そういう意味では小泉総理を評価しております。
 ただ、一連の流れの中で、先ほども同僚議員からもお話がございましたけれども、例えば情報の伝達の方法が大分政府で混乱していたんではないかということを私は思わざるを得ない。
 例えば、九月の十七日に、午後三時に拉致被害者の御家族の方々、飯倉公館に行った。そして一時間待った。そこで、要は生死について本当にむごいことを伺った。そして、植竹副大臣、官房長官から、こういう言葉だったらしいんですが、誠に申し上げにくいことですが、例えば横田さん、めぐみさんはお亡くなりになられましたと。そして、確認しましたと、こういう言葉を付け加えていらっしゃるわけです。ところが翌日、これは安倍副長官が拉致の家族の方々のところに飛んでいっていただいたと。ここで言われたことは、確認は取っていませんと、こういう言葉なんですよね。
 ですから、政府が飯倉公館まで、私は呼び出すというより出向いていって申し上げるというのが当たり前で、と思うんですが、呼び出してまで確認しましたと明言をしたというのは間違いないと思うんですが、しかし内閣の柱である副長官が翌日会って、確認は取っていませんと。取ったか取らないかよく分からないという中で、家族の方々が物すごく苦悩し、混乱したと。日本国じゅうと言っていいかと思いますが。
 このことで、例えば私が伺ったのは、増元さんのお父さんなんかも今がんで病床におられて、この日もテレビを見ていらっしゃって、何とかという思いであったと。しかしながらということで、今は非常に悪化してしまったとか、そういうちょっと感情的な話かもしれませんけれども、家族の方々のことを思うと、これは副長官も同じ気持ちだと思うんです。同じ気持ちだと思うから私も答えていただきたいんですが、この辺り、非常に言葉の不明確さがあったということは思われますですよね、副長官。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 被害者の安否情報の御家族への伝達についてでございますが、首脳会談が行われましたピョンヤンで代表団の責任で作成をいたしました資料に基づきまして、ただいま委員が御指摘をされましたように、福田官房長官、植竹副大臣が飯倉公館で待機中の御家族に対しまして内容を伝達をしたわけでございますが、その際、御家族に伝達をいたしましたのは、あくまでも北朝鮮側から通報のあった内容であり、政府として関係者の安否を確認していたわけではないということを前提に説明を……

○木俣佳丈君 それは違うでしょう。短くやってください、時間ないから。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) ということを前提に説明をされたということだと私は承知をしておりまして、ですから、私ども、次の日に御家族には確認をしているわけではないということを申し上げたわけでございますが、ただ飯倉公館での当日、御家族の皆様方に誤解を与えたということであれば大変残念であり申し訳ないと、このように思っております。

○木俣佳丈君 認めていただいたと思います。確認をしましたということを官房長官、副大臣が言われているんですよね。
 それはそれとして、九月の二十七日に、小泉総理までが、北朝鮮というのは独裁国家だから確認はできないんだと、こういった旨の話をされておるんですが、こういう気持ちがおありなんでしょうか、総理は。ちょっと代弁してお答えください、副長官。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 決して総理は私、そんなことをおっしゃっていないというふうに思っております。総理も、特に死亡とされている方々については、私ども政府の責任としてそれを確認をしなければいけない、そしてまたその説明をする義務が北朝鮮側にあると、このように思っております。それは総理も全く同じであると思います。

○木俣佳丈君 先ほど確認をしましたというのは、誤解を与えたという、いや、要するに、政府が過ちをしたということをお認めになったんですが、要するに、情報伝達を事務方で伝達をした方はだれの責任でどのような話でこの話になったんですか。こういう確認しましたということを言わせたのはだれですか。外務省ですか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) その際、私どもは、福田長官あるいは植竹副大臣もあくまでも北朝鮮側の情報であるということを前提に御説明をされたというふうに私どもは承知をしております。この説明資料につきましては、代表団の責任によって作成をさせていただいたということでございます。

○木俣佳丈君 そうすると、誤解を与えた、確認しましたという発言をさせた責任者は田中局長にあると、こういうことでよろしいですね。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) これはもうあくまでも代表団全体で作成をしたということでございます。

○木俣佳丈君 いや、ですから、責任者はだれかと聞いておるわけですから、代表団の団長が責任を取るわけですよね、基本的には。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) その説明資料においては、これはあくまでも……

○木俣佳丈君 資料の責任者はだれかと聞いているんですよ。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 責任はあくまでも代表団であるということでございます。

○木俣佳丈君 代表団の団長じゃないんですか。代表団で連座式でだから責任を取るということですか。そんなことあるわけないよ。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 責任ということでございますが……

○委員長(松村龍二君) ちょっと、委員長の……

○内閣官房副長官(安倍晋三君) はい、委員長。代表団として作ったわけでございまして、その資料は、あくまでもこれは北朝鮮側の説明であるということを、ちゃんとその資料の中にあるわけでございますから、そのラインにのっとって説明がなされたというふうに私どもは思っております。

○木俣佳丈君 どんなものでも日本の、これは安倍副長官なんかあうんの呼吸でお分かりなんですが、やっぱり、内閣の総責任者は内閣総理大臣、防衛庁の最高責任者は大臣である石破さん、外務省のトップである川口さんは外務省の総責任者、責任がないような組織なんてないわけですよね、基本的に。だれが責任者かはっきりしていないような代表団というんだったら、団長とか事務局長とか付けなけりゃいいわけですよ、みんな一緒なんだから。そんなでたらめなことを僕は言われるとは思っていませんでした。それはいいや。
 それで、次の質問なんですが、今度、うれしいことだと思います、五名の方が帰国をされるということなんですが、これで一件落着ではないですね、安倍副長官に伺いたいのは。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) もちろん、私どもは落着したというふうには考えておりません、この拉致問題については。

○木俣佳丈君 八名の方が亡くなられたと、不幸にもということで、一応、今、受け取っておりますけれども、私はそう信じておりません。
 そして、今後も、今日も読売の一面ででも出ておりますように、まだ生存を当然しているという前提で、その物証が、死亡の物証、確認できるような物証が出るまではとにかく生存を前提にして交渉をしていくと、こういう思いを内閣としてはしているということで確認取りたいんですが。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私も、十七日以来、御家族の皆様と何度かお話をいたしております。そのときに、御家族の皆様方から、特に北朝鮮側から死亡とされた被害者の御家族の方々から、私どもの、日本の政府として確認を取っていないわけであるから当然生存ということを前提に交渉に当たってもらいたいという要望がございました。私どもは、その要望は当然重く受け止めて、その考えの下に立って北朝鮮側に対して交渉をしているということでございます。

○木俣佳丈君 確認したいのは、生存を前提にしているということでよろしゅうございますね。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私どもとしては、この御家族の気持ちを基本的に重要に受け止めて、そして、その上でそれを十分に念頭に置いて交渉に当たっていくということでございます。そして、そういうことにつきましては御家族の皆様方も御了解をいただいております。

○木俣佳丈君 次に、今度五名の方が帰国されますが、今回残念なことに、例えば、息子さんとか娘さんいらっしゃる方があると。また、曽我さんのように元の米兵と、アメリカ兵と結婚されて子供がいらっしゃるという方もありますが、次は是非家族そろって出国を当然日本人ですからしていただきたいと私は強く思いますが、いかがでしょうか、安倍副長官。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私どもは、先週の金曜日の専門幹事会におきまして、私が議長をしておりますが、そこで専門幹事会の決定として家族の、被害者及びその家族の全員の帰国を実現させるということを決定をしております。その方針には変わりがございません。

○木俣佳丈君 是非、速やかなそういった手続を取っていただきたい。
 この曽我さんも同様ですか。曽我さん、曽我ひとみさんの娘さん、お二人ですね。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 曽我さんにつきましては、御主人が米国の元兵士であるという、この他の二つ、二カップルとは若干事情が異なりまして、また、お子さんたちもそのお二人のお子さんであるということでございまして、私ども、今回、曽我ひとみさんも十五日に帰国をされますから、そのときに御家族の方々とどういうお話になるかということも伺った上で考えさせていただきたいと思っております。

○木俣佳丈君 時間が短いものですから、防衛庁長官に伺いたいんですけれども。
 以前、私も今入会しております拉致議連の会長でいらっしゃる。その中で、幾つか伺いたいことは、九月の二十日の読売新聞のインタビューで、北朝鮮について、「ああいう異常な体制の国家を相手に、そういうやり方は意味がなかった。」というような、ああいう異常な国家と言われております。
 私も異常な国家だと、独裁国家であると思っておりまして、例えば、今回の拉致、そしてまた亡くなったかもしれない、いや殺されたかもしれない、そしてさらにはまだ数十名の方が拉致されたということはまず間違いなく本当であろう。韓国からは三百人を超えるような方々が拉致されたのも恐らくは事実であろうということを思っております。そしてまた処刑された方もあるということを私は伺っておりますけれども。
 そういう、要は誘拐、殺人の犯人がそうですと言ったがゆえに、それじゃ仲良くするための話合いのテーブルに着きましょうと。こういう国家で私、いいのかなということを思いますね。
 そして、この拉致議連の決議にもありますように、この拉致問題の徹底的な解決が国交問題交渉の大前提であることを改めて宣言すると石破会長が九月の二十六日に宣言文を採択しておりますし、その後すぐに、十月四日、中川さんに会長が替わって、本問題が解決しなければ日朝交渉に入らないことと、この決議をしておるんですが、残念ながら、政府は十月の二十九日、三十日、もう再開をすると、このように答えられておるんですが、どのように思われますか。

○国務大臣(石破茂君) 二十六日は閣僚ではなかったのでなぞといい加減なことを申し上げるつもりはないのですが、これいろんな考え方があるんだろうと思うんです。
 委員が冒頭御指摘になりましたように、閣僚として異常とか正常とかそういうことを申し上げるべきだとは思いませんが、少なくとも我々の感覚とは相当に乖離がある国家だねというふうには思うのですね。

○木俣佳丈君 異常だと言っているんだよ、新聞で。

○国務大臣(石破茂君) いやいや、私が今そう思っているんです、今の私の立場として申し上げれば。そのような議論をしても仕方がない。
 どういうふうに考えるかということですが、要は、国交正常化交渉を再開するということと国交正常化をするということは別であると。正常化交渉の過程において拉致問題を解明し、あるいは核であるとかミサイルであるとか工作船であるとか、そういう議論を行うのでありますけれども、正常化、拉致問題の解決がなければ絶対に国交正常化はしないんだということをきちんと確認しておくということにおきまして、これは議連の趣旨と私は矛盾をするものではないだろうと。
 要は、大事なのはどのように問題を解明するかということであり、併せて核でありミサイルであり工作船であり、そのような脅威を取り除くか、その場をどこに設けるかということなんだろうと思っています。目的のための手段をどのように取るかということにおいて、目的は一致しておると私は考えております。

○木俣佳丈君 とにかく、大臣になられますと大体トーンダウンしちゃうんですよ。何でこうトーンダウンして平気でいられるか、私は分からない。
 天下の公器に、ああいう異常な体制の国家を相手にと、こういうふうに、つい十日ぐらい前ですよ、言っていらっしゃる方があんな言い方をされるということは、私もちょっとこれは困ったなというような感じがしておりますけれども。
 実際に、まあそれは分かります、正常化ということと正常化交渉に入るということは違うということは、これはもう意味も違いますが。これ拉致議連では、交渉にも入らないということを決議しておるんですよ。ですから、今言われたこととも全くそごがございますし、そしてさらには、先般、十日ぐらい前に委員会の中で、これは犯罪なんというのを通り越して国家主権の侵害であると石破委員が言われておるんですよ。ということは、国家主権の侵害ということは、そこで要は戦争が起きてもいいということですよね、簡単に言えば、二国間で。違いますか。
 その中、次の段落で言われているのは、これ、政府が家族と一体的にやってくださいと。政府は家族と同じ気持ちでやってください。何度も何度も言われていますよね。
 ということは、家族の気持ちは政府の気持ち、政府が要するに侵害されておるということは戦争を起こすということですよね、簡単に言えば。違いますか。ちょっとお答えください。

○国務大臣(石破茂君) 私が国家主権の侵害というふうに申し上げましたのは、領土等々と並びまして、国民というのは国家主権を構成する重要な要素であって、それを拉致誘拐するということは当然のことながら国家主権の侵害になるという認識は私は今も全く変わっておりません。
 しかし、先生が御指摘になりますように、それでは戦争になるかといえば、これはもう自衛権行使の要件に該当するかしないかということになるわけであります。自衛権行使の要件につきましては先生御案内のとおりでありますが、今の状況でそれでは戦争になるか、自衛権行使の要件を満たすかといえば、私はその答えは否であり、自衛権の行使の要件には当たらないというふうに考えておる次第でございます。

○木俣佳丈君 自衛権の行使については、幅が広い又は概念として固まっていない私はものだというふうに解釈をしております。ですから、ただ、国家主権の侵害だと、こう言い切っていらっしゃるならば、それであれば、私は開戦をするべきじゃないかということをはっきり明言したらどうかと、防衛庁長官として、ということを私は思いますね。
 さらには、この拉致の指示については、安明進さん以外でも結局国家ぐるみでやられていると。つまり、もっと言えば、金正日の指示がなければ海外渡航さえないと。金正日の直筆サインがなければどうにもならないのは石破大臣も御存じだと思うんですよ。ということは、ますます国交正常化交渉をする意味がどこにあるんだろうかということは閣内でよく川口大臣と話していただいて始めていただきたいと申し添えて、質問を終わります。

○佐藤道夫君 私からお尋ねいたします。
 大変申し訳ない、質問通告をしていなかったんですけれども、石破長官のお顔を拝見しているうちにこれはとても黙っておけないということになりまして、あえて尋ねさせていただきたいと。
 事は極めて基本的な憲法問題ですから、改めて勉強するまでもないことだと思います。
 こういうことです。新聞報道によりますと、石破長官、かねがね集団自衛権の行使は憲法上容認さるべきだ、合憲だという考えを取っていたと。ところが、このたび入閣するについて、我が政府というのはもう歴代、集団自衛権の行使は憲法違反であって許されないという立場を取っているわけですから、その点どうなのかと、多分記者からでも質問されたんでしょうね。それで、その新聞報道によれば、私も入閣をするについては合憲論から違憲論に変わったと、こういうふうに報道されておりまして、私、これ見て大変驚いたわけです。この方は政治家なんだろうかという気すらしたくらいでありましてね。今の点、ちょっと分かりやすく説明してください。見解が変わったのか、変わったとすれば一体いつまで変わったのか、変えるのか、退官すればまた元に戻るのか、いろんな考えがあるでしょうけれども、いかがなんでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 突然のお尋ねでございますが、閣僚の一員として現在の政府の見解に従うのは当然のことであります。

○佐藤道夫君 事は憲法問題なんですよ。末端の法律の解釈でちょっと見解が違っているとかそういう問題ではありません。憲法の九条、一番国民の関心を浴びている、国民が関心を寄せている条項の解釈問題で、これは合憲だという方が、ちょっと変える、一体どうなったんですか。入閣している間だけ政府の見解に従う、何か文句があるのかと。政治家の良心というのはそんなものなんでしょうか。
 もしどうしても入閣してくれと言われたら、自分は憲法九条についてはこういう考えを持っていると。小泉内閣、いや歴代内閣はこういう方針だと。矛盾することは明らかですから、合憲だ違憲だということ、それについて自分はもし国会で質問されたらこういうふうに答えるが首相よろしいんですねと、こういうふうに、そういうことならば入閣してもいいですよと。当然でしょう、それは、政治家である以上、いや、人間である以上。
 今まで合憲だ合憲だという人が、違憲だという説をかねがねもう二十年、五十年も取っている内閣に入閣するについて、じゃ、取りあえず認めておきましょう、その政府の見解を認めておきましょうと。憲法問題というのは取りあえず右だ左だという問題でないんですよ、これは。お分かりでしょう、こんなことは。いかがでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、内閣の一員として政府の見解に従うのは当然のことであると考えておる次第でございます。

○佐藤道夫君 どうも答弁にお力が入っていないようですけれどもね。内閣の方針が自分の考えと全く違っておれば入閣を受けないのが当然でしょう。受けるについてはいろんな条件を付けて、自分が堂々と合憲論を、防衛庁長官ですから、九条の運営をつかさどる方ですから、自分は公式の場でもはっきりと合憲論を唱える、それでもよろしいなら入閣いたしますよということを条件にして内閣に入る、だれだってそうやりますよ。やらなかったのはあなたぐらいじゃないんですか。おかしいですよ。どうなんですか。もっとはっきり答えてください。

○国務大臣(石破茂君) 力がなければ幾らでも大きな声で申し上げますが、大変言い方が悪かったらお許しをいただきたいと存じます。
 例えば、昨年、テロ特措法というものがありました。じゃ、PKO法の改正というものがありました。その中で、私は議員立法でやったらどうなるだろうかということで法案を書いた人間であります。そのときに考えましたのは、それでは今の憲法解釈の範囲内で一体どこまでできるのだろうかということを考えて法案を書いてみました。結果として政府提出のものとほとんど同じになりました。要は、どういうような形で今の政府解釈というものがどのようにしたら変わるのか、それについてもいろんな御議論があるのだろうと思っております。
 私として、政治家としてどうだ、人間としてどうだという御指摘ですが、今このときに国家のために何をやらねばならないのか、そして今の憲法の解釈の範囲内でどこまでやることがそれに近づくのかということも私は政治家の使命だろうと思っております。閣僚の一員として小泉内閣、歴代政府、その解釈に従い、その範囲内でどこまでできるのかということをきちんと検証するということも私は政治家として、あるいは人間としてやるべきことだろうと思っておりまして、人間としてどうか、政治家としてどうかというふうなお尋ねでございますから、私はそのように考えておると答弁をさしていただきます。

○佐藤道夫君 憲法のこの条文が合憲か違憲かという極めて単純な質問なんですよね。
 あなたは、これは合憲だとかねがね言っておられたが、今度は大臣になったら、いろいろおっしゃるけれども、基本的にはもう合憲で認めていくということでございましょう。じゃ、良心を売ったのかと。あっ失礼、違憲で、違憲論で通していくと、大臣の地位にある限りは。そんなこと許されないでしょう。いろんなことをやって、いろいろ解釈を考えていく、そんな議論の前に、九条は集団自衛権を認めているのかいないのか、それだけの問題ですからね。結論だけでも言ってください、どちらなんですか、あなたは。

○国務大臣(石破茂君) それは、政治家としてどうあるべきかということにつきまして先生と見解が違うのだろうと思います。

○佐藤道夫君 それを聞いているのではなくて、九条は合憲なのか違憲なのか、学生に対する質問と同じですよ。司法試験の問題なんかでそういうことが出ることはありますよ。みんな一生懸命考えて書くんであって、そのときに政治的な立場からいえばこうだなんて言ったら零点で不合格間違いないですよ。合憲か違憲かということを尋ねられているんですから。どうですか。

○国務大臣(石破茂君) 大変、御質問の趣旨に合わないお答えかもしれませんが、私は小泉内閣の一員として歴代の政府の解釈に閣僚として従うということでございます。

○佐藤道夫君 これで打ち切りますけれども、いずれ、またこの委員会におきまして、この大変大切な問題で、国民も皆注目していると思いますよ。憲法といえばもう大体九条しか知らないような人たちが多いですからね。それについて考えがくるくる変わる、一体これは何なんだと、皆疑問を持っていると思いますので、どうかはっきり、いずれさせてください。自分は今までは合憲論だったが今度は違憲論に変えたと、大臣を辞めたらまた元に戻るんだと、それはそれでもいいんですよ。どうぞ考えていただきたいと思います。
 そこで、拉致問題につきまして川口大臣と安倍副長官にお尋ねいたします。
 今日は赤い服、今日も赤い服をどうも着ておられないようですけれども、どうか性根を入れてお答えいただければ有り難いと、こう思います。
 そこで第一に、この前、調査団が帰ってきたときに小泉総理に報告をしたのでしょう。小泉総理は、北朝鮮の対応はそれなりに評価できるものであったと、誠意を尽くしてくれていたと、自分は十分評価すると、こういう談話を出したらしくて新聞に出ておりました。これに対して国民は一体何だろうかと、あんな報告を持ち帰って、北朝鮮の対応が誠意を尽くした、評価あるものだと、そんなものを、そんなことがよく言えたものだというふうな感想を抱いた人が多かったと思います。現に自民党の中でも、いろんな部会の集まりでしょう、そういうことが有力議員がはっきりと言っていたという報道もなされておりました。
 そこで、大臣と副長官にお尋ねいたします。この小泉さん、小泉首相の北朝鮮の対応は十分評価できると、誠意を尽くしたものだと、この談話についてどういう感想をお持ちでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 今般、政府の調査団が行きまして、拉致の被害者の方に関する情報を調査をしてきたわけですけれども、そのときに北朝鮮側は平壌宣言を誠実に履行すると言いまして、拉致問題について可能な限り十分な情報を提供するために最善を尽くす用意があるというふうに述べたわけでございます。実際に、日本政府の出した調査団による調査のために、北朝鮮は北朝鮮なりに可能な、北朝鮮として可能な準備は行ったという印象を持っているわけでございまして、総理の御発言もこのような北朝鮮の姿勢に対しての印象を述べられたものではないかと思います。準備、北朝鮮なりのそういう姿勢であったということでございますけれども、総理として、あるいは政府として、その調査の結果についてその御判断をなさったその表現ではないというふうに思います。
 で、現在はこの調査団が持ち帰ってきました情報や資料、これを分析をして精査をしているところでございまして、真相の解明のために北朝鮮側に対しては現在も更なるデータを求めていますし、今後引き続きこれはきちんと求めていく所存でございます。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 小泉総理の姿勢は一貫しておりまして、拉致問題の解決なくして正常化はない、この拉致問題の解決というのは、生存しておられる方々及びその家族の方々全員の帰国、そして死亡したとされている方々が本当にそうなのかと、私ども政府が納得し得る資料等々の提出、そのことがなければ拉致問題は解決をしないという立場でございます。そのことにつきましては、総理は一貫してその姿勢は変わらないわけでございます。
 その中にあって私どもは、相手があることでございますから、交渉しながら、また小泉総理のお言葉というのは大変注目が高いわけでございまして、日本国民のみならず、これは北朝鮮側も注目をして聞いている。その中で、今後交渉をいかに進めていくか、有利に進めていくか、スムーズに進めていくかということも総合的に勘案された上での私は御発言だと思います。

○佐藤道夫君 相手がある話ではありますけれども、何を言ってもいいということにはならないわけで、やっぱりお互い話し合うからには、事実を前提としてその範囲内でいろいろな説明をしていくと。
 ところが、国民から言わせると、死んだと言われている、本当に死んだのかと、死亡時期があいまいではないのかとか、病名は一体何なんだと、お墓一つないではないかと、いろんな疑問が出ておる。こういうことについて国民から見れば、やっぱり隠している、信用は置けないと。これについて小泉さんは、評価できるんだと、誠意ある態度だと、こう言っているから自民党の有力者も怒って、とんでもないという発言をしているんだろうと思います。いずれにしろ、これから調査を進めていって分かることでもあろうかと思いますが、大いに考えていただきたい。
 それで、一つだけ取り上げておきますけれども、首脳会談の席上に、金総書記は、例の犯人は、犯人といいますか責任者は処刑、処罰をしたということをはっきり言っております。拉致だと思いますけれども、この件にかかわる責任者は処罰をしたと。そして、その後の調査報告ですか何かによれば、二名、北朝鮮とすれば拉致問題で処罰をしたと。一人は死刑、いいですか、死刑なんですね、一人は十五年という長期刑に処したと、そしてそれは一九九八年に行ったと、こういうことになっているわけですけれどもね。一体、そのころ北朝鮮は拉致の存在自体も認めていない。そんなときに、国のため、本当に命懸けで働いた工作員、拉致工作員を死刑にしたなんて信じられないことなんですよ。拉致ということをやったと、けしからぬということで、もし、もしですね、詐欺、強盗あるいは殺人を別件でやったとか、いわゆる機密費を横領してしまったとか、そういうことで処罰したと、それは本件と関係ないことですから、何も日本に説明する必要は全くないわけで、日本政府に説明しているということは、どう考えてみても、これ拉致をやったということで一九九八年に二名、一名は死刑ですね、処した、こんなこと一体信じられるんですか、信じたんですか、外務省あるいはまた外務大臣は。すぐその場で、これは北朝鮮さん、おかしくないですかと、今私が言っているとおり一九九八年に死刑にしてしまったなんてことは、だれが聞いたってそんなこと信じられませんよと。別にけんか腰でやる必要はないわけですから、穏やかに話し合えば、向こうだって何か説明、また考えてくるでしょう。その点についてどう考えますか。

○国務大臣(川口順子君) 今、佐藤委員がおっしゃられましたように、この拉致の問題につきまして、政府の事実調査チームが調査をしました結果、一九九八年にこの拉致事件の責任者二名が処罰されているということが向こうから分かったわけでございます。
 この一九九八年当時、北朝鮮は拉致事件が存在をしているということは公には認めていなかったということは、委員がおっしゃるとおりでございます。で、それを、したがいまして、それを公に認めることなく処罰をしたということにはなるわけでございます。金総書記自身は、一九九八年当時、拉致問題及びこの二人の責任者の処罰については知らなかったというふうに推察をされるわけですけれども、この点がどうであったかということについては今の時点では明らかではないということです。
 この拉致の事件の真相については、現在引き続き解明をしていくということでございますので、正常化交渉の過程の中でこれは真相を解明をしていくということだと考えております。

○佐藤道夫君 拉致にかかわったと思われる北朝鮮の工作員というのは、十人二十人じゃないわけですよ。五十名百名も大勢おるわけで、しかも国家目的に沿って、彼らは彼らなりに日本に潜入してきて適当な人物を見付けて拉致していったと。国家のために頑張ったわけです。それを、その国家目的を否定する前に、何か日本が将来うるさくなるかもしらぬ、だれか一人処刑でもしておけと、そんなことで一人死刑にしましたと、いかな北朝鮮がでたらめな国家であってもそんなむちゃくちゃはやらないでしょう。北朝鮮の国民が怒りますよ、もしそんなことをしたとすれば。これは明らかにでたらめでしょう。私、法律家としてとても信じられないんですよ。
 しかし、そういう説明をのみ込んで帰ってきたとすれば、やっぱりその問題を表に出して、どういう罪名で、どういう事実で、いつ、どこで裁判を開いてそして死刑にしたのか、本人はどんな弁解をしていたのか。おれは国家のために頑張ったんだと、死刑なんかになる覚えはないと、だれでもそう言うでしょう。そういう弁解をしていたのかどうなのか、その辺もとことん突っ込んで説明を求めてください。北朝鮮の工作員だからどうなってもいいじゃないかと、そんな問題じゃないんです。
 やっぱり世界の人類の一人ですからね、彼の名誉ということもあるわけであって、そんなことを我々が、文明国と称する日本国がそんな説明をうのみにはとてもできないと思いますよ。副長官、いかがでしょうか、この問題については。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 拉致問題の解決の中には、当然、その拉致そのものがどのように行われたのか、どういう人たちによって行われたのか、そしてその人たちはどのように処罰をされたのかということを私どもがしっかりと確認をするということも入っていると思います。

○佐藤道夫君 今回の日朝の下交渉などを見ておりますと、どうも北朝鮮というのは相手の出方をうかがって少しずつ少しずつ出してくる。それはおかしいと、こう言うとまた別な話をしてくると。見ている国民とすれば、本当にこれはまじめに答えているのかとも言いたくなるわけですから、どうかそういうふうな国民の非難、起こらないように、誠心誠意向こうと話し合って、事実を、ありのままの事実をできる限り引き出して、そして国民の前に伝えると。それがまた政治家の、あるいはまた役人の、省庁の義務でもあるわけですから、どうか外務省は督励して、いい加減なことで手を打つようなことはしないということをはっきりさせてください。
 それから、今度五人の拉致者が生還してくる、帰ってくるということになりましたが、私、もう少しこれも国交回復交渉で一つの大きいテーマとして取り上げてもらいたい。日本人妻も含めて北朝鮮にいる日本人の自由往来を考えてほしいと。希望があれば、あっちに、日本に帰ってくる、こちらからも家族がいつでも面会に行って会ってくると。それは当たり前です、こういう開かれた国家、二十一世紀ですから。独り鉄のカーテンを張り巡らせているのは北朝鮮だけかというふうにも言いたくなるわけですけれども、もうそんな時代じゃないですよと。どうか、拉致された人たち、生存している人、あるいは日本人妻、この前十数名帰ってきましたけれどもね、ああいうふうに北朝鮮政府が一時帰っていいと言うから帰ってきましたと。そういう問題じゃなくて、自分の意思で生まれ故郷の日本に帰って親兄弟に会って話をしてくる。それから、親兄弟も必要があればいつでも訪ねていく。それはもうどこの国でも国際問題として明白なことでありまするから、独りそんなことを、いつまでもカーテンを張り巡らせてたって通用しませんよ、そんな時代じゃありませんよということも北朝鮮側に是非とも伝えていただきたい。
 そして、いろんな交渉事がこれからあるわけですけれども、どうか役人に任せないで、役人なんていい加減ですから、私も役人をやっていましたからよく分かっているんですけれどもね、政治家が、副大臣、政務官おられるわけですから、調査団を派遣する場合には、どうか、団長でもいいし、顧問でもいいし、参与でもいいんですけれども、政治家である副大臣その他の方々が付き添っていって、政治家の観点から物事を見て、これは駄目だと、もう少し交渉してみなさいと言って現場での交渉に口を挟むことも私、大変大事なことだと思うんですよ。これからそういうことが本当に要求されてくると思います。
 これについては副長官の考えをお聞きいたしまして、質問を終わりにしたいと思います。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) この拉致問題については、特に閣僚会議の下に専門幹事会を作りまして、私が議長を務めております。このたび、調査団として向こうに出向きまして、齋木団長以下、皆さんとも極めて綿密な連絡を取りながら、一々私の指示を仰ぐという形になっております。また、今般の帰国についても、総理、官房長官、また外務大臣、それぞれが適切な判断をした上で交渉をしているということでございます。

○副大臣(矢野哲朗君) 私に対するエールを送っていただいたと聞かせていただきました。
 決して役人の皆さんがいい加減と私は思っていないんでありますけれども、いざ私の、そういった意味での調査団の一員として必要があれば、御指摘のとおり、政治が表に立って事実関係を解明する、そのぐらいの思いで事に当たりたいと思います。

○辻泰弘君 民主党・新緑風会、辻泰弘でございます。
 限られた時間でございます。まず冒頭、田中アジア大洋州局長にお伺いしたいと思います。
 九月十五日の全国紙の「ひと」の欄で、「いま、外交官として、本当に面白いと思っている」というふうに語っておられます。今もその心境に変化はございませんか。

○政府参考人(田中均君) 私は、外務省の職員として外交というものに熱意を持っておりますし、それぞれが与えられた仕事を全力をもってこなしているというつもりでございます。ですから、私は自分の仕事に常に興味を持ちながらやっているということについては全く変わりはございません。

○辻泰弘君 同報道に、「国交もなく、日本を敵視してきた国に、いきなりトップを訪問させる今回の荒業」に対して、元上司の方々が、「やり方に危うさはあるが、田中だからここまでできた」と、こういう指摘をされているのを拝見しております。一方にあるそのような評価を承知しつつ、その指摘にもある危うさに関して御質問したいと思います。
 以下数点、田中局長にお伺いいたします。簡潔なコメントを賜れば幸いでございます。まず、首脳会談をピョンヤンでやること、そのことが拉致被害者の安否情報提供の条件だったのかどうか、まずお伺いしたいと思います。

○政府参考人(田中均君) 御質問のような事実はございません。
 これは外務大臣会合、局長会合その他、赤十字会談もございますけれども、正に私どもが一貫して求めてきたのは、この拉致の問題についてきちんとした安否情報を全体として出すということであり、拉致を認めるということでございます。こういう交渉をずっと続けてきた結果、首脳会談を行うというのが適切であるという御判断を小泉総理大臣がされたということでございます。

○辻泰弘君 そういたしますと、事前に安否情報は全くなかったということでございますね。

○政府参考人(田中均君) 日本側の要求として一貫してきたのは、正にこの拉致の問題についてきちんとした調査をして、その調査結果に基づく安否情報を出すということを要求はしてまいりました。しかしながら、その内容については十七日まで承知をいたしておりません。

○辻泰弘君 局長も当日初めて知られたということですね。

○政府参考人(田中均君) 御指摘のとおりです。

○辻泰弘君 私は、訪朝に当たられてやはり外交交渉の在り方としてあらゆるケースを想定しているということがあるべき姿だと思うんですが、申し上げにくいことですけれども、最悪のケースというものを想定しての対応ということは考えていらっしゃらなかったんでしょうか。

○政府参考人(田中均君) 私どもがやってまいりました交渉というのは、これまで拉致の問題について、行方不明者の調査であるとかそういうことはございましたけれども、実態的には、過去、拉致問題を取り上げてから十年を超える間、何事も動いてこなかった、したがって、これを何とか打開しなければいけないということが交渉の基本的な目的であり、したがって、これは局長会合のときもそうでございますけれども、今ある日朝間の懸案、その最たるものが拉致問題でございますけれども、こういうものを包括的に解決をしていく交渉ということが可能かどうかということを見極める、そのために日朝の首脳会談をやるという形で総理が判断をされたということだと思います。

○辻泰弘君 田中局長は、交渉が再開すれば比較的短期間にまとまると、このような発言をされているようでございますが、総理が訪朝された首脳会談後のこれまでの推移というもの、国内の反応というのは、当初の想定どおりだったでしょうか。

○政府参考人(田中均君) 私が申し上げましたのは、日朝正常化交渉が九一年に始まって十年以上何の問題も解決できなかった、そういう状況に比べれば、交渉のための前提条件をきちんとした結果、従来に比べてより速いスピードで物事を解決することができるのではないかという見通しを述べたわけであります。
 しかしながら、当然のことながら、拉致問題というのは徹底的に解明がされていかなければいけない、北朝鮮との関係で、核疑惑の問題であるとかミサイルの問題というのは解決されなければいけない、その結果として正常化、そういうことがあるということだと思います。
 ですから、問題は早く遅くということではなくて、そういう諸懸案をきちんと解決する努力が大事だというふうに思っていますし、現在、政府の方針はそういうことだと思います。

○辻泰弘君 外務大臣にお伺いいたします。
 外務大臣は、この総理の訪朝、八月三十日の発表でございましたけれども、これをいつ知られたでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) いつという日にちは覚えておりませんけれども、この総理の訪朝につながる事前の様々な過程におきまして、私は外務大臣就任以降、この過程については随時報告を受けております。

○辻泰弘君 外務大臣御就任以後、すぐぐらいからということでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 様々な過程があったわけでございますけれども、様々な過程については報告を受けております。

○辻泰弘君 八月に受けられたということではございませんか。

○国務大臣(川口順子君) 就任以降ずっと受けております。

○辻泰弘君 今回の一連の外交交渉を見ますときに、率直に申しまして官邸主導といいますか、局長と官邸主導の説明なき密室外交と、こういう指摘があるわけですが、こういう御指摘についてどうお考えでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) まず、外務省の中において局長主導であったということではございませんで、これは外務省の中で局長の上に立つ者がしかるべくこれは報告を受け、指示をして進んできた話でございます。
 それから、官邸主導ということにつきましては、これだけの重要な外交案件につきましては、これは正に官邸と御一緒にといいますか、政府が一体となってやっていく話でございますから、そういう形で動くべきだと思いますし、動いていると思います。

○辻泰弘君 安倍官房副長官にお伺いしたいと思います。
 八月三十日に発表された首相の訪朝計画、これをいつお知りになったでしょうか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 総理訪朝発表前のしかるべきタイミングで連絡を受けました。

○辻泰弘君 しかるべきというのを説明していただけませんか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) それは発表の当日の朝でございます。

○辻泰弘君 八月三十日の朝ということですね。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) はい。

○辻泰弘君 もう一点確認させてください。安倍官房長官が死亡年月日記載の安否リストを知られたのは、北朝鮮から帰国された後だったというふうに理解してよろしいですか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 帰国後でございます。

○辻泰弘君 安倍官房副長官のインタビューに、宣言文の最終文書や死亡年月日を私が知らなかったのはたまたまだというふうな御指摘があるのでございます。今回のその歴史に残るであろう一大行事に同行されて、かかわられたほんの一握りの数少ない政府首脳の方に、事務方から極めて重要な情報が届かないまま帰国されて、その後に知られたというのは非常に理解できないことなんですが、この点を御説明いただけませんか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 当日は限られた時間の中で首脳会談、そしてまた平壌宣言の調印、そしてまた記者への発表ということが私ども限られた人数の中で処理をしていかなければいけないという中にあって、私は記者へのブリーフの準備がございまして、ずっと席を外しておりました。その中で、限られた時間の中でいろいろな作業をしなければならない、そういう中で起こったことだと思います。
 ちなみに、安否リストにおきましては、私の秘書官にはこの安否リストの死亡日時が入ったものは渡されていたわけでございますが、しかし、それはお互いのそごがございまして私には渡らなかったということでございます。

○辻泰弘君 ここで、ちょっとパネルをごらんいただきつつ御質問申し上げたいと思うんです。立たせていただきます。(図表掲示)
 実は、九月の十八日に夕方のテレビで放映がございまして、こういう解説がなされて、それでこういうビデオが放映されたわけでございます。今朝の、今朝はというのは九月十八日でございますけれども、今朝の北朝鮮の新聞には片隅に小さく日本側からお土産が持ち込まれたと記されていたと、一方、昨晩、小泉総理の帰国便から運び出されたマツタケと書かれた箱、しかもトラック二台を一杯にする量だった、日朝平壌宣言まで至った昨日の歴史的会談、しかし国民が本当に知りたいことがいつ明らかになるのかは不透明なままだと、こういうテレビでの放映がございました。
 また、別の報道では、九月十七日午後十一時半ごろ、政府専用機が到着した羽田空港で、外務省職員ら約十人が同機から運び出された段ボール箱約三百個を空港ロビーに横付けされた二台のトラックに運んだ、段ボール箱にはハングルとマツタケの絵が印刷されていたという、こういう報道がございました。また、大量のお土産の中身をチェックしたいという日本側の意向が北朝鮮側に拒否をされて、中身のチェック、セキュリティーチェックもしないまま飛行機に積み込んだというふうなことも伝えられているわけでございます。
 この件について、経緯、現状、安倍官房副長官、御説明いただけますか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私は、その件については一切承知をしておりません。

○辻泰弘君 承知していないということは、この問題は拉致議連でも取り上げられて、外務省の齋木アジア大洋州局参事官が事実関係を調査し結果を報告したいと回答されているわけですね。これはどう調査されているのでしょうか。それは外務省マターでやるということですか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私自身は、全くこの今、委員の御指摘の件については、全く今の段階で知らないということです。

○辻泰弘君 十月四日に、福田康夫官房長官は、記者会見で聞かれて、承知しないと述べておられるわけです。ですから、この四日の段階で官房副長官もそういう問題があるということは当然知っておられる。外務省の方は調査をして結果を報告したいと、こうおっしゃっているわけで、その問題の所在というものを、そういう指摘があるときに、官房長官ではありますけれども、安倍さんではございませんが、当然どういうことであったのかというのは調べて当たり前だと思うわけでございますが、いかがですか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私にはそういう指示がございませんから、私も全くそれを知らないということでございます。

○辻泰弘君 しからば、こういう問題についてだれが責任者だったんでしょうか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) その事実そのものがあったのかどうかということは、私も今申し上げましたとおり全く存じ上げないわけでございまして、そういう積込みを担当していた者がだれかということについては、今、私もつまびらかではございません。

○辻泰弘君 この件については、別の報道でこういう指摘がございます。羽田からそのまま築地の、築地市場の冷蔵庫に運ばれ保管されていると、拉致事件への国民の怒りがすさまじく、とてもマツタケを配ることはできない、一方で、北朝鮮の手前、廃棄処分にすることもできない、結局マスコミに感づかれないようにこっそり隠し、ほとぼりの冷めるのを待って処分するしかないと、このようなコメントが出ているわけでございます。
 これが事実としますと、保管料は当然国民の税金で賄うことになるわけでございまして、こういう問題は外務省と内閣お得意の官房機密で対処するつもりなのかと、このように思ってしまうわけでございますが、そういう事実はないか、はっきりと調べて御説明をいただきたいと思うんですが、いかがですか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私も、今日まで帰国以来、まず生存者の方々の早期帰国を実現すべく最大限の努力をしておりまして、それに没頭してきたわけでございまして、そうしたことは一切私も承知をしておりません。
 また、いずれにいたしましても、そうしたお土産のやり取りにつきましては、外交上それは間々あることでございます。これは一般論でございますが。その中身を公表することが外交儀礼上果たしていいのかということは議論があるところだと、このように思います。

○辻泰弘君 この件を見ますときに、総理の訪朝全体を冷静に見詰めてしっかり仕切っていた人がいたのかどうかと、このことに思い当たるわけで、疑問に思わざるを得ないわけでございます。全体を仕切っていた人はだれなんでしょうか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) それは、全体を仕切るというのはどういう意味でおっしゃっているんでしょうか。

○辻泰弘君 事務的なことも含めて、やはり今度の交渉のこういうことというのは、やはり一つの大きな、受け取るかどうかということも大きいわけですね。話によれば、人形だとか焼き物を日本側はお渡しになったと聞くわけですが、これだけトラック二台の大仰なものを、ある意味ではマスゲームでどぎもを抜くような、それにつながるような対応だと思うんですが、それを受けるかどうかという判断はやっぱりあったと思うんですね。いかがですか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) 私はその事実そのものを承知をしておりませんから、ですから、私も承知をしておりませんから、そのことをだれが判断したかということについてはお答えできません。

○辻泰弘君 事前通告で、昨日、このことについてそういう答弁はないようにしてほしいというふうに言ってあったことで、やはり調べて、そしてまた、現に拉致議連で齋木さんが事実関係を調査し結果を報告したいとおっしゃっているわけです。
 それじゃ、外務省として、それはいかがですか、その調査をされているわけでしょうか。大臣。

○政府参考人(齋木昭隆君) 今の問題につきましては、外務省としても実際にそういうのを、ピョンヤン訪問に同行をした外務省の関係者、また準備に当たった者、それからまた総理官邸で訪朝に同行された方々も含めていろいろと話を聞いて事実関係の聴取にこれ努めておりますけれども、報道にありましたような先ほどの事実関係については、私どもとしてはまだ確認しておりません。

○辻泰弘君 もう齋木さん、私要求していなくて来ていただいて恐縮ですけれども、もう既に四日から五日ぐらいたっているわけですね。その間、こういう簡単なことの事実調査というのは何があるんですか、そんなに時間が掛かることでしょうか。

○政府参考人(齋木昭隆君) 報道されていることが本当に事実なのかどうかというのはやはり慎重にきちんと調べないといけないと思いますから、大勢の関係者、これはきっちり話を聞くということ、大事だと思っておりますので、今それをやっておるところでございます。

○辻泰弘君 もちろん通告していたことでございますけれども、そうしたら、いつまでに明らかにしていただけますか。

○内閣官房副長官(安倍晋三君) この問題につきましては、私は現段階では全く承知をしておりませんが、いずれにいたしましても、そうした先方からいただいたお土産の中身等々について、こちらからそれをどのようにしたか、どういうふうに処置をした、あるいはまたどういう中身であったかということを公にするかということについては、これは、当然私は議論があるところだろうと、こういうふうに思います。

○辻泰弘君 齋木さんは議連で報告をするとおっしゃっているわけですけれども、それはそういう御予定でいいですか。

○国務大臣(川口順子君) これについては、安倍副長官のお話もございましたし、外務省として官邸と御相談をしながら対応したいと思います。

○辻泰弘君 私は、今回のこのこと、異常なまでの大量のお土産というのをノーチェックで言われるままに持ち帰ったんじゃないかと思われるわけですが、その主体性のなさといいますか、見通しの悪さというか、またそれに伴う事実を明らかにしようとしない秘密主義、また国民への誠意のなさ、事後の対処のお粗末さというものを本当に痛感するわけでございます。言うなれば、拉致問題に言及しない平壌宣言、また一方的な死亡通告、そしてこのマツタケと、いずれも相手のペースのままに、そのまま日本に持ち帰ったと。どうなるかと、そういうことの見通し、判断が十分なかったということが共通しているのではないかと、このように思うわけでございます。
 これからの交渉の過程で主体的な外交姿勢、筋の通った毅然とした対応、ありのままの真実の国民への伝達、公開、このことを政府に求めて、私の質問を終わらせていただきます。


2002/10/10-2

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