1997/05/16 |
140 衆院・法務委員会
栗原博久議員(自民党)の拉致事件についての質問部分
○栗原(博)委員
次に、時間がないので大変恐縮ですが、実は先般公安調査庁にもちょっとお聞きしましたけれども、きょうの読売新聞にも、北朝鮮の里帰りの問題について、向こうの当局がある程度、数人を認めるというようなことを言っているということは、私もそれを求めてきた一人として大変ありがたく思っています。
きょう、実は新聞を、ちょっと時間がないのですが、持っているのですが、これは昭和三十四年の十二月十四日、地元の新潟日報でございます。この紙面の一面に「新天地に胸ふるわせて」と題して、午後二時にクリリオン号、午後二時三十分にトボリスク号が九百七十五人の帰還者を乗せて、そして新潟の中央埠頭を去った、そこに約三千人近い方が見送りした、私もその一人でありますが、その中で、行く方々は、日本で最後の食事をして、けんちん汁とそれから生卵と朝鮮漬けを食べて帰ったという記事が載っておるわけであります。こういう中において、約七千人近い日本人の方々がたれ一人帰ってきていない。
こういう中で、政府当局があるいはまた各党の方々が懸命に努力をされて、その兆しが見えてきたことは、先ほど申したように大変私は敬意に値すると思っております。
ただ、こういう中におきまして、今、マスコミ等、あるいはまた各党の方々が、この問題と絡めて、横田めぐみさんとか、あるいはまた拉致事件についての疑惑問題の解明を強く望んでおるわけでありまして、私も当然その一人です。もしそのような疑惑があったら、ぜひ、国の主権の中において対応せねばならない。総理も、この前クリントン大統領との会談の中で、この拉致問題あるいは日本人妻の問題などについて、北朝鮮に対して人道的に食糧の援助をするのと同じように、この問題も人道的な問題だということで、強く総理もその解決を求めているわけであります。
国連は一億二千万ドルを超す北朝鮮への支援策を呼びかけておるわけでありますが、私は、感情的になってはならない、北朝鮮における食糧の飢餓の状況を隣の国の国民としてお手伝いしていかなければならぬと思う。あるいはまた、そういう拉致事件というものが真実ならば、これは我が国の国権にかかわる問題ですから徹底的に解明し、また、我が国に情報が足りなかったら、CIAとか、あるいはまたKGBとか、ほかの国の情報網を遺憾なく利用して、そういう意味から国際赤十字とか、あるいは国連等を通じて、そのコネクションからぜひひとつそういう疑惑の解明、あるいはその方の救出に当たっていただきたいと思うのであります。
きょうは長官がお出ましですが、皆さんの中身は余り公表できないと思うのですが、私、この間横田めぐみさんのお父さんにお会いしましたら、公安調査庁の方が過去二十何年間一度も来なかったということを言っておられるのですが、そういうことが果たして正しいかどうかということをまずお聞きしたいと思うのです。
○杉原政府委員 委員御指摘の問題点については私どもも十分理解しているところであります。
当庁では、これまでも、一九八七年の大韓航空機爆破事件の際に明らかとなりました李恩恵問題、あるいはその他の日本人失踪事件発生の都度、調査体制を整えまして、行方不明の日本人との関係について情報収集を行ってきたつもりであります。
今回の横田めぐみさんの北朝鮮工作員による拉致報道以後も、改めて体制を強化しまして、情報の入手が可能な先から関連情報の収集を行っております。横田めぐみさんを初めとしまして、拉致されたと言われております方々の御家族に会って事情を聞いております。めぐみさんの御両親からも実はその後二度ほど事情を伺っております。
当庁といたしましても、今後関連情報の収集を図りまして、私どもの立場でできることは最善を尽くしたいというふうに考えております。
○栗原(博)委員 今あなた、その役とおっしゃったけれども、あれですか、この前横田めぐみさんのお父さんが記者会見した後にお会いしているのですか。その前に別のルートを通じてもしているかしていないかということをひとつお聞きしたいのです。
○杉原政府委員 それ以前は直接めぐみさんの御両親にお会いするということはありませんでした。その後二度ほど……
○栗原(博)委員 そこに私は公安調査庁に対して不満があるのですよ。公安調査庁の名前でなくても、ほかの名前を冠しても、私は、これだけ国際問題になっているものを公安調査庁が把握していないというこの事実について極めて義憤の念を持っている。これをまずあなたに申し上げたいと思うのです。
次に申し上げたいのでありますが、今いろいろ新聞紙上あるいはまた情報を聞きますと、行方不明の方々のパスポートの問題があると思うのです。そういう行方不明で、もしかしたらという、そういう者に対してパスポートの発給をしたことがあるかどうか、そういうことを警察庁は調査しているかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのですが、御答弁いただけませんか。
○内田説明員 委員御指摘の事件につきましては、昭和六十年の六月に韓国当局によって発表された辛光洙事件という事件でパスポートの問題が出てきているわけでございまして、そのパスポートについての事案につきましてお答えを申し上げますと、私ども、そういった事件につきましては、一般的に申し上げれば、周囲の捜索とか関係者への聞き込みというものを行方不明者に対する捜索願を受理した段階でやっておりまして、そういった形の中でいろいろな関係機関と情報交換をしております。
しかしながら、委員御指摘のような拉致の疑いのある事案、特に北朝鮮工作員の日本人への成りかわりの可能性のある事案、こういう場合においては関係機関と特に連携を密にいたしまして所要の裏付け捜査を実施しているところでございますけれども、捜査の個別具体的な内容につきましては、捜査上の秘密の保持というような観点もございまして、残念でございますが、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
○栗原(博)委員 その程度しか答えられないと思うのですが、私は、今、北朝鮮のみならず、東南アジア各国から我が国への密入国者が大変多いように伺っている、あるいはまた偽造パスポートもたくさん出ていると伺っている。そういうことを防止する意味、あるいはまた日本国民の行方不明者がそういうところのために利用され、あるいは被害に遭ってはならないという観点から、今私はあなたに御質問を申し上げたわけであります。
それで、ちょっと時間を超過いたしましたので、我が国の偽造パスポートの件でございますが、今外務省あるいはまた警察庁で把握されている範囲においてその実態をお聞きしたいと思うのです。
○花田説明員 お答え申し上げます。
私ども外務省では、在外公館より、偽変造の旅券の発覚件数ということで、平成四年より報告を徴しまして統計を整えてございます。それに基づきますと、平成四年から平成八年までの五カ年間にわたりまして、合わせまして四百四件、冊数にいたしますと九百九十三冊の偽変造旅券の発覚を見ておるというところでございます。
ちなみに、各年度ごとについての数字を申し上げますと、これは暦年でございますが、平成四年には七十五件、百八十七冊、平成五年には八十件、百八十七冊、平成六年には九十二件、二百十四冊、平成七年には六十三件、百三十四冊、平成八年九十四件、二百七十一冊でございます。
○栗原(博)委員 わかりました。
この北朝鮮問題あるいはまた拉致問題、私は、主権を侵されないということで、ぜひ一つ全力を尽くして調査していただきたい。また、こうして我が国の主権と申し上げていますが、私ども日本もかつての朝鮮の併合の問題などを考えますと大変胸の痛いものもあるわけであります。その中で、私どもが北朝鮮の人道上の問題も十二分に踏まえて、そしてまた、いろいろ情報を得ますと、日本海に対して、ノドン一号等が日本全土が射程距離に入っていることもあるわけですが、こういうことを踏まえてぜひひとつ善処していただきたいということを大臣に御要望申し上げまして、私の発言を終わります。ありがとうございました。
1997/05/16 |