2004年5月22日

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岡田克也代表/臨時記者会見要旨

■小泉総理の再訪朝を受けて

【代表】小泉総理の訪朝に関して、民主党の考え方・コメントを申し上げたいと思います。

 まず、蓮池さん、地村さんのお子さんたち5名の方が帰国されることについては、長い間親子がバラバラになっていた異常な状態が解消されるわけで、ここは国民の皆さんとともに心から喜びたいと考えています。

 あとは、できるだけその子どもたちが日本で正常な生活ができるように、政府も格段の努力をしていただきたいと思いますし、もちろん我々一人ひとりがそのために努力をしなければいけないと考えています。

 ジェンキンスさんとお2人の子供さんが直ちに日本に戻られないということは残念なことだと思います。ただ、これはご本人の意思の問題でもあるとされていますので、北京においてよくご家族で話し合われる、その結果早く日本に戻られるよう政府にもさらなる努力を期待したいと考えています。

 その上で、私は今回の訪朝は、3つの問題と1つの懸念と申し上げておきたいと思います。大変大きな問題を残したと考えています。

 3つの問題という第1は、北朝鮮側の調査によってすでに死亡されたとする10名の方々について、もうあれから随分時間が経ったにもかかわらず、新たな情報提供が全くなかったということです。

 そして、今後の調査についても具体的な期限を切った約束は何もなかったわけで、単に先送りされたと言われても仕方がないと思います。

 それ以外にも、拉致された可能性の高いとされる方々に対しては言及すらなかったということは極めて遺憾です。

 第2ですが、総理自ら述べられているように、「平壌宣言を遵守している限り制裁措置は発動しない」と言われたようですが、平壌宣言の中には拉致の問題は明示されていません、ご存じのように。

 とすれば、拉致の問題に関して制裁カードが切れなくなるということにもなりかねず、これは大きな外向的な失態だと思います。

 3番目、我が国の国民にとって、国民の生命・財産を守るという意味で非常に重要な核の問題について、具体的な進展がなかったことです。平壌宣言でも非常に中途半端な言及しかなされていませんでしたが、その後のNPT脱退とか、あるいは北朝鮮自らが核を持っていることを示唆するとか、そういった大きな平壌宣言以降の前提の変化がありました。

 したがって、ここはそういった大きな前提の変化についてしっかりと議論・交渉をして、そして何らかの言質を金正日総書記から当然取るべきであったと思います。そういったことがないままに終わってしまったことは極めて大きな問題だと言わざるを得ないと思います。

 以上3つの問題点、そして懸念が1つあります。それは今回人道支援ということで25万トンのコメの支援、あるいは1000万ドルの(医療)支援が約束されたということですが、これは同じ総理の訪朝によって出てきた話ですから、今回の5人の方の帰国とリンクしていたことは、言葉でいくら否定しても明らかだと思います。

 こういう形で取引がなされた可能性が高いということは、今後の拉致の問題の進展について、つまり交渉について悪い先例を残すことになりかねないと懸念しています。

 以上、3つの問題と1つの懸念と申し上げておきたいと思います。一言で言えば、小泉総理が日本国総理大臣がわざわざ相手国まで行って、そして一体何を交渉したのか、何を引き出してきたのかということが全く見えないと、残念ながらそう言わざるを得ないと思います。

 そういう意味で、今回総理は随分慌てて行かれたと思っていますが、そのせいもあったかもしれませんが、結果的には、本来総理が行って、単にものを言うだけではなくて、交渉をして相手から言質を引き出す、譲歩を引き出すというチャンスであったにもかかわらず、そういったことがなされなかったことは極めて残念な結果になったと言わざるを得ないと思っています。

<質疑応答>

■慌てた訪朝

【記者】先ほど、「総理は慌てて行かれたと思う」というご発言がありましたが、そこを具体的に教えていただけますか。

【代表】6月頃に訪朝の予定だったのが急遽決まったということを申し上げました。つまり、準備不足だったのではないかということですね。

 単に5人の方を連れ帰る、このことももちろん重要なことですが、総理が行く以上きちんと交渉して、そして今後の日朝間の懸案の解決に当たって、大きな方向性を見出すべきだったと。それが全くできていないということです。

■訪朝の評価

【記者】今回の訪朝について、ズバリ失敗だったと思われますか。

【代表】5人の方が現実に帰られることについては、先ほど言いましたようにこれは事実として大変喜ばしいことで、そのことまでも我々は否定するわけではありません。そのことは素直に喜びたいと思います。

 しかし、先ほど言ったような3つの問題と1つの懸念、そういったことがありますので、私は成功とはとても言えないと思います。

■制裁カード

【記者】いろんな制裁法案については民主党も同調してというようなこともあったと思うんですが、先ほども言われてましたけども、そのカードをあっさり放棄してしまったことについてもう少し伺いたいんですが。

【代表】これは2つの問題があるわけですね。まず、「平壌宣言が遵守されている限り発動しない」と言われたわけですね。これは交渉ですから、これからどんな交渉展開になるか分からないので、そういう意味でそのカードを、しかも国会の意思としてすでに送金停止については法律ができているわけですから、それを自ら放棄したというのは理解しがたいことです。

 特に、拉致の問題は平壌宣言の中で明示的に言われているわけではありませんから、拉致の問題については無条件でカードを放棄したと言われても仕方がないということです。非常に重要な問題だと思っています。

【記者】制裁法案については今国会で成立の方向で与党側と調整していると思いますが、今回の結果を受けてもそれについては変わりませんか。

【代表】総理がこういうふうに言ってしまったのでという議論はあるかもしれませんが、少なくとも今、法律を成立させておくということは何ら状況が変わったわけではありませんから最低限必要なことだと思います。

 ただ、総理がこういうふうに約束したことで、法律ができても使えないと、一国の総理大臣がそれを約束してしまったということは非常に重いと思います。

■国会での議論

【記者】今回の件について、国会のどのような場で民主党の考えを述べていきたいと思うか教えてください。

【代表】火曜日に本会議で報告があってそれに対する質疑がなされるであろうと聞いていますので、それがまず第1段階になります。

 ただ、それだけではもちろん十分ではありませんので、これから国会の場で機会をつくって、こういう問題についてしっかり議論する必要があると思います。私としては党首討論を含めてそういう機会を求めてきたいと考えています。

 与党からは、総理が本会議で報告するので来週は党首討論はないと、そういう感触も伝えられていますが、こういう重要な問題について行うことと、党首討論を原則毎週やっていくことは矛盾しませんので、来週党首討論を是非開催して、この問題について小泉総理と直接議論したいと考えています。

■訪朝を含む北朝鮮問題の参院選での争点化

【記者】拉致の問題であるとか北朝鮮の関係について、夏の参議院選挙に向けて1つの争点として民主党の方から争点化していくお考えはあるんでしょうか。

【代表】今回の訪朝の結果として、先ほど言ったような問題が浮き彫りになってきましたので、そういったことについてしっかりと国会の場でも議論していくし、参議院選挙においても、これで本当に良いのかということについて争点にしてきたいと考えています。

【記者】小泉さんは、今回いろんなことが言われていて、参議院選挙をかなり意識してやったんじゃないかとか、家族の帰国が話題になっている間に年金法案が採決されて争点隠しになるんじゃないかとかあったと思いますが、今後の国会運営について、そうした小泉さんの狙いがあったとすれば、それがどうなのか、成功したのか失敗したのかも含めて、参院選と国会運営、この2点について教えてください。

【代表】総理のほうは大成功だったとあるいは言われるのかもしれません。しかし、そこは冷静に国民の皆さんは見られると思いますし、マスコミの皆さんの報道の影響も大きいと思いますので、ぜひ冷静なる報道、つまり今回の訪朝が、5人が帰ってきたというそういう一定の成果があったとしても、その過程で極めて問題の大きいものであった、禍根を残すものであったということは強く主張していくことになると思います。

編集/民主党役員室


2004/05/22

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