2002/05/29

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平成十四年五月二十九日(水曜日)

大畠委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。福田内閣官房長官。
福田国務大臣 個人情報保護法案の成立と住民基本台帳ネットワークシステムの実施との関係について、政府としての考えを御説明させていただきます。
 平成十一年の改正住民基本台帳法案の国会審議の過程において、十分な個人情報保護措置が講じられているものの、なおプライバシー保護に対する漠然とした不安、懸念が残っていることを踏まえ、議員修正により、附則第一条第二項において、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」との規定がなされたところであります。
 また、この際の国会審議において、当時の小渕総理から、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たり、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識との答弁がなされました。
 この答弁は、行政府の長として、個人情報保護の必要性についての認識を示したものであり、これを踏まえ、政府としては、個人情報保護法案を昨年三月に国会に提出し、その早期成立に向け全力を挙げて努力しているところであります。
 しかし、改正住民基本台帳法それ自体は、同法附則第一条第一項の規定により、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日、すなわち平成十四年八月五日から施行することとされており、法律上、個人情報保護法案が成立すると否とにかかわらず、法令で定められている日に施行することが義務づけられております。
 また、改正住民基本台帳法附則第一条第二項は、政府は速やかに所要の措置を講ずるものとしておりますが、個人情報の保護に関する法律の整備について言えば、政府は、立法機関でなく、みずから法律を制定することはできないものであるため、所要の措置とは、法律案の検討、作成、国会への提出を意味し、政府としては、平成十三年三月に個人情報保護法案を国会に提出したことにより、所要の措置を講じたことになるものであります。
 したがいまして、個人情報保護法案が成立すると否とにかかわらず、政府として、改正住民基本台帳法附則第一条第一項に定めるところにより施行することが義務づけられているものでありますが、小渕総理の答弁の趣旨を踏まえ、引き続き、個人情報保護法案の早期成立に向けて、全力を挙げて努力してまいる考えであります。
 以上であります。
    ―――――――――――――
大畠委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。工藤堅太郎君。
工藤委員 自由党の工藤堅太郎でございます。
 個人情報保護法案並びに関連法案の審議を行うに際しまして、小泉総理に直接お尋ねをしたいことがございまして御出席をお願いしておったわけでありますけれども、このたび、お聞き届けをいただきましたことに対しまして、まずもって多としたいと存じます。
 去る十四日でありますけれども、報道各紙が朝刊で一斉に、小泉総理がきのうの自民党の役員会で、読売新聞に個人情報保護法案の修正案が載っていたが、それも一つの考え方だ、修正を検討してほしいとの発言をされまして、そして担当の竹中大臣に指示をした模様だというように報じられたわけであります。
 私は、それを見てびっくりしました。と申しますのも、当委員会でまだ一回も審議をしておらないうちに修正というような言葉が総理から出されたということでありますから、それはもうびっくりするわけであります。何を考えておられるのか、このように実は思ったわけでありまして、このことについて、総理、報道のとおり修正を指示されたのかどうか、まずお伺いをしたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 私は、修正を指示したということは言っておりません。よく検討するように、いい意見については謙虚に耳を傾けるべきだなと。というのは、私は本来、報道、言論の自由と個人情報、プライバシー、両立できると思っております。そういう点についてなかなか理解されていない向きもあるものですから、読売新聞の試案については、報道の自由と個人情報、プライバシー、両立させるべきだという点を重視しております。そういう点についてよく勉強する必要があるんじゃないか、国民の理解を求めるためにも、いい意見には謙虚に耳を傾けて、答弁等よく考えてもらいたいという意味において検討、勉強を指示いたしましたけれども、修正してくれと言ったことは一度もございません。
工藤委員 当委員会で他の質問者の方の質問の中で、竹中大臣も、総理の発言を、よく勉強しておくように、今総理がおっしゃったようなことでありますけれども、このように指示をされた、修正というようなことではないというように答弁をされておられました。
 しかし、それならなぜ報道機関が一斉にあのような報道をしたんでありましょうか。しかも、自民党の山崎幹事長が当日の記者会見で、法案修正を検討すると表明しておられるわけであります。総理は先ほどあのように言われたわけでありますけれども、しかし、少なくとも山崎幹事長まで総理が修正に言及されたと思うほど、それらしいことを言われたのではないか、私はそのように理解をするわけであります。そうでなければ、山崎幹事長のこの表明はどうもつじつまが合わない。このように、余り疑うなと言うかもしれませんが、どうしてもその辺がわからないものですから、しつこいようですけれども、もう一度、どうぞお願いします。
小泉内閣総理大臣 私は、いかなる法案であっても、国会の審議の状況によって、一切修正まかりならぬという態度はとっておりません。審議の結果、これは修正した方がいいという結論に導けば、それは修正もあり得る。しかし、それは審議の状況次第であります。私は、政府案がいいと思っておりますけれども、審議の結果によって、場合によっては国会の判断に政府は従わなきゃなりませんので、国会の意思として修正すべきだというような意見があり、また大方の皆さんがそういう修正の意見を受け入れるならば、法案というのは修正も可能であります。これは、原則論を言っているわけでございます。
工藤委員 と言われますことは、このいわゆる報道は誤解だというようなことなんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 報道なり多くの方はすぐ結論を考えますからね。だから、私の発言も、よく勉強しておくように、検討しておくようにと言うと、結論は修正もあり得るのじゃないかというふうにとったのではないかと思っております。現に、数々の法案の中においては、政府が出した法案も、幾たびかいろいろな意見を入れて修正して成立した法案もたくさんあるわけであります。そういうことから、よく検討、勉強しておくようにというのが、最終的には修正可能ではないかというようにとった方もあるのではないかと私は理解しております。
工藤委員 しかし、総理、あの時点で検討しろとかよく勉強しろとかということをおっしゃれば、それはメディアでなくても、修正を示唆したとか指示したとかというようなことにだれでもなるんだろう。何であの時点でそういうようなことを発言されたかということを、軽く言ったというようなことかもしれませんし、何かわかりませんけれども、私は、どうもその辺が解せないなというような、そういう気持ちがしてなりません。
 これは私の推測なんでありますけれども、メディアが連日反対のキャンペーンを張っている。それに総理が嫌気が差しておられた。そういうときに読売試案が出た。この修正案を検討することによってメディアが少しこれに同調してくるような、そういう方向に行くんじゃないかと考えられたんではないか。そして、あのような発言をされた。山崎幹事長がそれこそ誤解するような発言をされた。ところが、意に反して、メディアはますます反対を強めてきた。そこで急遽、そんなことを言っていないんだ、勉強しろと言ったんだ、そういうようなことに変わってきたんではないかというような気がしてならないわけであります。
 まさか読売新聞と総理の近くにおられる方が打ち合わせをしてやったなどと、私はそこまでは申し上げません。申し上げませんけれども、どうしても理解できないので、再度お尋ねをさせていただきます。
小泉内閣総理大臣 読売新聞の試案は修正してほしいという意見だと思いますが、それをどう報道するかというのは報道の自由ですから、私の意図をどうとろうか、これは各人各様、見方はさまざまあると思います。現に法案以外のことでも、一つの発言について全く相反する解釈というのは人によって成り立つわけですよね。そういう点から見れば、修正してほしいという方から見れば、修正も考えているんじゃないかととられても無理はありません。
 また、我々としてもできるだけ国民に理解してほしいという気持ちがあります。最初から、審議しない前から反対、廃案、こういう運動が展開している中で、できるだけ理解と協力を求める方策も必要ではないかと考えております。
 急に出した法案でもありませんし、現に個人情報保護法案なんというのは昨年から提出しておるわけですから、そういうことから見れば、まだまだ理解してもらうような努力もしなきゃならないなと思っておりますし、せっかく、基本的な趣旨としては言論、報道の自由と個人情報、プライバシーの保護という両立を目指す法案でありますので、建設的な意見についてはよく勉強をし、検討し、国会の審議に建設的な議論を深めていくような材料にしていただければなというような気持ちから出た発言であるということを御理解いただければありがたいと思っております。
工藤委員 この法案は昨年から出しているというようなことなんでありますが、私が議運におりましたときからずっとつるしたままで、そして、与党自民党もこれを委員会に付託するというような動きも一切ありませんでした。つるしたままで来て、ここへ来てぎりぎり、八月の住基ネットの問題もあって出されたというようなことだろうと思うんでありますが、こういう重要な法案を何でもっと早く、去年から出しておったらそれを委員会に付託しなかったかというようなことを、私はどうもその辺も、小泉総理の責任じゃないのかもしれませんし、どうかわかりませんけれども、そう思ったりします。
 それで、小泉内閣の重要法案の提出が少々乱暴じゃないかと私は思えてなりません。一度に何しろどっと出す。あれもこれも、三つも四つも五つもどっと出す。それで、私は事態特の理事もやっておるわけですけれども、事態特と内閣の理事をやっておりまして、両方で答弁者のとり合いなんですよ。日程を調整して、そしてもう本当に苦労しながらやっている。そのために十分審議をとれるような時間がない。ですから、どれもこれも生煮えのような、そういう状態で進んできているといったようなのが現状だ、私はこのように認識をしているわけであります。
 そういう意味で、私はこの個人情報保護法案と有事法案しか担当でありませんからよくはわからないのでありますけれども、国民の声をよく聞いたり、また国会で十分審議を尽くす意味で、優先順位をつけて、これらの法案、これまでのわずかな審議でも、何をどうすればいいのか、修正という話が、柔軟にというようなことで話をされたわけですけれども、出し直して、もう一回仕切り直しをしてやった方がいいんじゃないか。生煮えのまま、それで、国民に不安を与えたり不満を与えたりしないような方法でやられるのも小泉さんらしい解決の方法だ、運営の方法だと私は思うんでありますけれども、その点、いかがなものでしょう。
小泉内閣総理大臣 これは、私の立場からいえば、提出している法案は全部成立を期して努力するというのが当然ではないかと私は思っております。
 そういう中で、審議の時間、あるいは答弁者の問題、いろいろ国会運営の中でそれぞれ問題があると思いますが、できるだけその点は各委員会とも調整しまして、また、大臣のみならず副大臣等、政府委員もおられるわけですので、そういう点については配慮をしていただきまして、十分審議の時間も確保しながら議論が深められるような運営を私は期待しております。
 今の時点でこれが一番大事であとはどうでもいいというようなことは総理大臣としても言うべきものではありませんし、政府として提出している法案は、国会議員の皆さん方が十分審議の上、成立に向けて努力していただきたいというのが私の切なる希望であります。
工藤委員 総理にいろいろお聞きしたいことばかりたくさんあって、考えることはたくさんあるのですけれども、何しろ時間がないものですから、与えられた時間が少ないものですから、あと一つぐらいかなというような感じがします。
 私は、個人情報保護法案もそれから有事法案も大事な法案で必要だと。丸々だめだと言っているようなことではないのですね。これはどうしてもなければならない。ただ、余りにも抜け穴というか、例えば個人情報保護法案、官には甘く民には厳しくといったような、それからメディアの問題等もあります。
 例えば、福田官房長官も、行政側は悪いことをしないんだ、そういう建前だ、そういうふうになっているということを、記者会見でそういう趣旨のことを話をされたのを聞いたことがありますけれども、しかし、例えば今回の防衛庁のリストの問題とか、あるいは、防衛庁の練習機の購入に際して、会計検査院の公文書を偽造して、会計検査院のあれを得ないままスイスにそれを送ったといったような問題とか、外務省の問題とか、どんどん出てきているわけであります。
 これはもう、官はそういうことをしないんだ、悪いことをしないんだ、もちろん、公僕としてやってはならないことですから当然そうだと私は思うのでありますけれども、そういうのを、責任を明確化するようなきちっとしたものがないとこういうことが出てくるんじゃないかというようにも思いますし、そういう点で随分まだまだ検討していかなければならない、そういう状況にあるだろう、このように思っておるわけでありまして、防衛庁のリストの問題に対して、今々のことでありますから、これについて総理の御見解を賜っておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 情報開示というものも必要でありますが、同時に、どのような情報を保護し、どのような情報を開示するか、この判断も大変大事だと思っております。
 すべての情報をどのように収集し、また開示するかというような点で、目的外とか必要以外の情報を集めるという場合においては、行き過ぎという面もありますから、その点は私はよく配慮しなきゃならない問題だと思っていますし、行政側にしましても、必要不可欠なものとそうでないものというのはよく判断しなきゃならない問題だと思いまして、今回の防衛庁の情報開示の問題については、よく事実を調査して不安や混乱が起きないような対応をすべきだというふうに既に私も指示しておりますので、その点につきましては今後の調査の結果を待ちたいと思っております。
工藤委員 まだまだ質問申し上げたいのですが、次の方に迷惑をかけてもだめですから、この辺でやめさせていただきます。ありがとうございました。
大畠委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。


2002/05/29

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