2002/05/31

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平成十四年五月三十一日(金曜日)

工藤委員 おはようございます。自由党の工藤堅太郎でございます。
 今国会の重要法案でもあります個人情報保護法案、関連法案の実質審議が始まりまして、国民の皆さんがその成否について注目をいたしている、そういう状況でありますけれども、今回の防衛庁のリスト問題は、個人情報に関しての管理を含め、いかに官が、官のすることが信用できないかを証明したようなものである、私はこのように思っております。
 一昨日の当委員会で、小泉総理は、法案審議の中でいろいろな提案、議論をしていただくことが必要だと答弁されましたが、この発言は、実質的に法案修正を認めたものと理解できるわけであります。しかしながら、今回の防衛庁の不祥事を踏まえれば、修正で済むような話ではございませんで、法案の根幹からつくり直すことが必要である、このように考えます。政府には、一連の法案を撤回した上で、新たな法案提出まで住基ネットワークシステムの八月実施を見送るように、この際、要請をしておきたいと存じます。
 そこで、質問させていただきますが、これまでの質疑で重複する点が多々あろうかと思いますけれども、よろしくお願いをしたいと存じます。
 初めに、中谷防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、昨年四月に施行されました情報公開法に基づいて防衛庁に情報公開を請求された方々の総数、並びに、リストには氏名、住所以外にどのような事柄が記載されているのか、さらに、どのような手段で情報を入手されたのか、その点をお伺いいたします。
中谷国務大臣 ただいまお尋ねの昨年四月から本年三月までの一年間に防衛庁に開示請求を行った請求者の方々の数でございますが、総数は百四十八名でございます。これまでの調査によれば、問題となっております本件の資料には、平成十三年の四月から平成十四年三月の中旬の間に防衛庁に対して開示請求を行われました百四十一名について、開示請求者に対応した窓口でのやりとり、インターネットによって得られた情報などをもとに、開示請求者の方の職業、その他個人情報が記載されているという報告を受けているところでございます。
 具体的に申し上げれば、その職業を記述した欄には、例えば、フリージャーナリストや学生、また受験生の母といった、開示請求書に記載されていない情報も含まれていたという報告を受けているところでございます。
工藤委員 これらのリストを作成したのは海上自衛隊の三等海佐とのことでありますけれども、この三等海佐の氏名を明らかにはできませんでしょうか。何という方であったか教えていただきたい、こういうことであります。そして、いかなる理由をもってこれを作成したのか、さらに、三等海佐個人の意思によるものかどうか、その点もお伺いいたします。
中谷国務大臣 氏名につきましては、捜査の途中段階でありまして、この事実が完全に明らかになりました時点でお答えしなければならないと思います。
 この意図につきましては、これまでの捜査段階によりましたら、この担当の三佐は開示請求者がどのような人物であるか把握する必要があると判断して本件資料を作成したものであると報告を受けているところでございます。
工藤委員 今の長官の御答弁、これは処罰等々、全部済んでからということなんですか、それとも、その前段階で氏名を公表するといったようなことなんでしょうか。全部済んでからということなんですか。
中谷国務大臣 調査が済んだ段階で明らかにしなければならないと思っております。
工藤委員 この捜査の状況でありますけれども、大体、日にち的にいったらどの程度を見込んでおられますか。
中谷国務大臣 現在、防衛庁におきましては、萩山副長官並びに事務次官にも、徹底的に、予断を持たずに調査をするように命じておりまして、全力で実施をいたしております。できるだけ早く調査を進めまして、結果をまとめて報告いたしたいというふうに考えております。
工藤委員 一昨日の武力事態特別委員会で、長官は、本当に個人かな、そうでないかもしれないという気がすると発言をされましたが、もし組織ぐるみでこのような調査をしてリストを作成したのであれば、一体防衛庁は何を考えて日常の勤務についているのか、甚だ疑問なわけであります。
 特に、現在審議されております武力事態関連法案は、国民を守るためのものであることはそのとおりでありますが、その当該官庁が情報公開を求めた方の身辺調査に乗り出しているということは、情報公開法の趣旨に照らしても絶対に許されることはできない、このように思うわけであります。
 組織ぐるみであったかどうか、有事に際して国民を信用できないともとられかねないこうした行為を、長官はどのように考えておられるんでしょうか。
中谷国務大臣 現在、本件につきまして調査をいたしておりますが、現在のところ、本件資料を作成した担当の三佐は、上司の指示ではなくて、担当者個人の発意によって作成をしたというふうに言っていると報告を受けております。
 今回、このようなことが起こりましたことにつきましては、情報公開制度の趣旨からしてあってはならないことでありまして、開示請求者や国民の皆様方に大変な御不安また御迷惑をおかけしたことは極めて遺憾でございまして、厳しく反省する必要があると考えております。
 特に、情報公開と申しますと、国民の知る権利に基づきまして、開かれた政府行政を実現するためのものでございます。通常、市民生活と密着した形で各市町村の役場とか県庁などでは行われているわけでございますが、防衛庁にとりましては、こういったいわゆる市民の窓口となる業務に基づいて情報公開を行うということは初めてのことでございまして、今回こういうことが起こったということにつきましては、この趣旨をよく理解しないで行っていた、また、業務自体も、一般の官庁等の感覚については非常になれない部分もございまして、不適切な部分があったというふうに思っておりまして、今後徹底した調査によりまして事実関係を明らかにし、改善、対処をいたしたいというふうに考えております。
工藤委員 今、これから真剣に調査をしていくというようなお話なわけでありますが、それは当然でありますけれども、ただいまの長官の御発言で、上司の命令というか指示でやったのではないというように聞いているというようにお答えされました。
 これは、確かめておきますが、絶対に間違いない、そう思っておられますか。
中谷国務大臣 現段階で本人に聞き取り調査を何度も行っております。
 この一点につきましては、本人がみずから、自分の発意によって作成をしたものでありまして、上司の指示ではないということを強く主張している状況でございます。
工藤委員 次に、防衛庁では、情報公開法に基づく請求者リストを情報公開室が管理しているということでありますけれども、情報公開室はどのような組織形態になっているのか、また、今回のリストを情報公開室以外の部署で回覧あるいは閲覧していた事実はあったのかなかったのか、その点をお答えいただきます。
中谷国務大臣 防衛庁におきまして、防衛庁の情報公開に関する事務の総合調整などを行う部局といたしましては、長官官房文書課に防衛庁情報公開室が置かれております。また、陸海空それぞれの自衛隊においては、各自衛隊の幕僚監部総務課にそれぞれ情報公開室が置かれております。これらの各機関の情報公開室は、それぞれの機関内における情報公開に関する調整事務を行っているとともに、それぞれに、相互に協力して事務を行っておりまして、各機関にまたがる協議や開示、不開示の判断の総合的な調整などは情報公開室同士を通じて行われる体制となっております。
 今回問題となりました資料につきましては、これまでの調査をしたところでは、海幕の情報公開室以外の部署の者に本件の資料が配付されたことがあるのは事実でありますが、いずれの場合も、個人で管理し、使用せずに保管または破棄がされているということでございます。
 いずれにせよ、さらに詳細な調査を行うことによりまして、この事実につきまして、関係等明らかにしてまいりたいと考えております。
工藤委員 次に、総務省の行政機関等個人情報保護室の見解では、検索可能な形で体系的に登録されていれば、リストは個人情報ファイルに当たる、新たな情報を加えてリストをつくることは、一般的に言えば情報公開法に基づく事務処理とは考えられない、こういうことにしているわけでありますが、今回の事態をどのように見ておられるのか、担当しておられる行政機関の個人情報保護法案の審議にどのような影響が出てくるのか、その辺をどう思われるのか、お尋ねをいたします。
若松副大臣 今お尋ねのリストの件でありますが、現在、防衛庁におきまして詳細に調査していると伺っているところでありますが、いわゆる一般論で言う情報公開の開示手続を実施するためのリストの内容についてのお尋ねでございますが、あくまでもその内容というのは、開示請求権制度は、何人に対しても、理由を問わず、支障のおそれのない情報を開示する制度、こういうことになっておりまして、請求者の連絡先以外、当該ファイルの保有目的の達成には必要性は考えられない、そのように認識しております。
 具体的には、法の趣旨に照らしまして、防衛庁長官において事実をさらに確認していると承知しているわけでありますが、その上で、防衛庁長官においては厳正に対処すべき問題と理解しております。
 なお、今般審議をいただいておりますこの法案でございますが、いわゆる行政機関の個人情報の対象情報を紙に記録されている個人情報にまで拡大しておりまして、個人情報ファイル簿への掲載の有無を問わず開示請求の対象としておりまして、今回のようなケースでも開示請求権を行使することが可能となっております。
 また、不要な個人情報を保有しているとか誤った利用、提供がされているということを知った場合は、その御本人は利用停止請求権を行使できる、このようになっております。
 そういうことでありますので、個人情報の保護を一層拡充する観点から、ぜひ、現行法を全面的に改定する今回のこの法案を審議の上、速やかに御賛同いただきたいと考えております。
工藤委員 総務省では、こうしたケースのリストの取り扱いをどのように管理されておられるのか、また、あわせて他の省庁の管理状況を、把握されている範囲で結構でありますので、御説明をいただきます。簡潔にお願いいたします。
畠中政府参考人 まず最初に、総務省ではどうかというお尋ねについてお答えいたします。
 総務省では、情報公開事務の的確な処理、具体的に申し上げますと、事案の進捗状況の進行管理のために請求の受け付け順に一覧表は作成しております。なお、この一覧表は、請求者の氏名とか住所など開示請求書に記載された個人情報のみを記載しているものでございます。
松田政府参考人 他省庁の状況でございますが、情報公開法に基づきまして、毎年度、施行状況の調査を行うことになっております。その調査を今取りまとめつつあるところでございますけれども、この情報公開請求者のリストの具体的なあり方についてまで現時点では把握はいたしておりません。
 このたび、大臣から、他の省庁におきましても情報公開法の開示請求手続におきまして開示請求に係るリストがどのように作成されているか、緊急に調査を行うよう御指示がございましたので、速やかに調査を行うこととしているところでございます。
工藤委員 次に、中谷長官にお尋ねをいたします。
 今回のリスト作成に絡む行為は、個人情報保護関連法案を審議している中で、個人の情報を行政官庁に管理させることがいかに恣意的に使用されるかを証明したと言っても過言ではない、このように思います。
 そこで、現在の状況下で、今回の行為をいかなる罰則規定で処分することができるのか、お伺いをします。
中谷国務大臣 情報公開の事務に不必要な情報も含む本件の資料を作成した行為につきましては、個人情報ファイルに記録される個人情報は当該の個人情報ファイルの保有目的の達成に必要な限度を超えてはならないことを規定する個人情報保護法、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律の第四条第二項との関係から、問題があったと考えております。
 また、本件資料を隊員相互間で配付または転送をした行為は、ファイル保有の目的外の利用をしてはならないと定めております同法第九条や、個人情報をみだりに他人に知らせてはならないと定めております法第十二条との関係から、今後詳細な調査の結果いかんによっては問題があるものであるというふうに考えております。
 罰則につきましてお答えをいたします。
 防衛庁といたしましては、確認された資料の作成行為は、個人情報保護法第四条第二項との関係で少なくとも問題となるものと考えておりまして、この点を踏まえましたら、処分を行うとすれば、自衛隊法上の懲戒処分、隊法第四十六条等の規定が適用されることになるのではないかと考えております。
工藤委員 先ほどの質問と重複するかもしれませんけれども、若松副大臣並びに中谷防衛庁長官にお尋ねをします。
 現行の行政機関の保有する電算処理に係る個人情報保護法では、第四条で個人情報の保有は所掌事務の遂行に必要な場合に限定、さらに第九条で個人情報の目的外の利用、提供の禁止、第十二条で個人の情報をみだりに他人に知らせることなどの禁止等を規定しているわけであります。まさに、法的根拠もなく個人情報ファイルを作成、管理したり、事務処理以外の目的で利用することはできない、こういうことになっているわけでありまして、今回の行為はそれぞれこれらの規定に違反していると考えられるわけであります。
 具体的にどの行為がどの条文に違反して、結果、どのような罰則規定が適用されるのか、その点をお伺いいたします。自衛隊法第五十九条の職務上知り得た秘密の漏えいの禁止、これに当たることは当然だと思うのでありますけれども、あわせてお伺いをいたします。
若松副大臣 防衛庁から現段階の調査内容を聞いた限りにおきましての判断でございますが、現行の行政機関個人情報保護法、これは昭和六十三年からできている法律でありまして、いわゆる国家公務員がみだりに個人の情報を保有してはいけないと、これは何度も何度も徹底している法律でございます。その第四条第二項に規定しております個人情報ファイルに記録される個人情報でございますが、当該個人ファイルの保有目的の達成に必要な限度を超えてはならない旨の規定に抵触する可能性があると考えております。
 その他、報道等では、目的外利用の禁止について規定しました第九条、業務上知り得た個人情報をみだりに他人に知らせることを禁止した第十二条に違反するのではないかという御指摘でもございますが、これにつきましては、当然疑義は感じておりますが、さらに事実関係の説明を聞いた上で判断する必要があると考えております。
 罰則または処分の問題につきましても、事実関係が明らかになった段階で防衛庁長官が自衛隊法等に則して厳正な対応をする、そのように期待しているところでございます。
中谷国務大臣 自衛隊法五十九条、秘密を守る義務に違反したかどうかという御質問でございますが、この資料を隊員相互の間で配付または転送した行為が自衛隊法第五十九条違反に当たるかどうかという点につきまして、本件資料に掲載された事項が職務上知ることのできた秘密に該当するものであるか否か、また、当該秘密に接する権限のない者に漏らしたこととなるか否か、さらに、情報公開の事務といった正当な業務以外の目的で行われたものであるか否かなどによるわけでございますが、これは、今後詳細な調査を踏まえて検討されるべきものであるかと考えております。
工藤委員 時間もなくなってまいりました。
 ジャーナリストの桜井よしこさんを初め、石原行政改革担当大臣の私的懇談会であります行革断行評議会のメンバーとして特殊法人改革や公益法人改革に携わっておられる作家の猪瀬直樹さんまで、内閣提出の個人情報保護関連法案は官僚支配を助長させるものだ、このように批判をいたしております。特に、基本法はもとよりでありますけれども、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法案の方がより問題は深刻だと指摘をしているわけであります。
 これらの批判の矛先は、現行法でも何ら罰則規定もなく、その現行法の改定版ともいうべき今回の政府が提出した行政機関に関する法案の中でも、第三条第三項の規定、すなわち、個人情報の利用目的変更が相当の関連性がありまして合理的に認められる範囲の規定が、今回の不祥事のように行政官庁の恣意的利用に使われるおそれが大であり、さらに何らの罰則規定もないことにあるんだろう、私はこのように思っております。
 今回の事態は、こうした法案の不備を具現化したものではないか、このように言えると思っておりますけれども、片山大臣はこれらの指摘についてどうお答えされるんでしょうか、お伺いをいたします。
片山国務大臣 現行法はいろいろ問題があるんですよ。例えば、ファイルは規制の対象にするがペーパーはしないとか、あるいは利用停止の請求権がないとか、それを今度の法律は全面改正によって補っているわけですね。
 一番問題は、いずれにせよ、法律は、行政機関が持っている個人情報を行政機関に恣意的に使わせないようにするためのルールなんですよね。その点で今回の法律は現行法よりは相当前進している、私はこういうように思っております。
 そこで、罰則なんですけれども、罰則は、いろいろな議論があるんだけれども、国家公務員法というのがありまして、これがうまく使えるものですから、それから、こういうことに罰則をつくるについては全般的なバランスや何かの議論がありますので、現行法は行政機関の長に義務づけているんですね。それから、行政機関の長の下の補佐職員は、上司の命令に従う義務だとか法令遵守義務があるわけですから、これに違反すれば、これは皆さん御承知のように懲戒処分の対象になる。それから、守秘義務というのがちゃんとあるわけですから、守秘義務は罰則がかかりますね、一年以下の懲役。それから、それ以外の職権乱用だとか公文書破棄だとか、いろいろな、刑法に当たるものなら刑事告発をやって刑罰の法規の適用がある。
 そういうことで、全体が担保されていることで、この法律そのものには罰則は書いておりませんけれども、国家公務員法の仕組みをあわせて使うことによって全体としては効果が期待できるということで、こういう法律をつくっているわけでございます。
工藤委員 今、総務大臣、行政機関に恣意的な使用をさせないようにするための法律だというようなことでお答えをいただいたわけでありますが、現実にこういうように、例えば官房長官が、口を滑らせたか、行政側は悪いことをしないのだといったようなことからきている、そういう建前になっているというようなことを発言されたわけでありますけれども、実際問題としてこういう問題が出ているわけでありまして、そのためにもきちっとした罰則規定が必要ではないかというように思うんですが、いかがでしょうか。
片山国務大臣 官房長がどう言われたか知りませんが、行政機関が悪いことしないということはないんですよ。それは性善でも性悪でもないんですよ。そこで、法律というのは皆さん御承知のように、釈迦に説法ですけれども、行政機関に勝手なことをさせないという意味が非常にあるわけですよ。そこで、例の現行法もそういうことであり、今回の法律もそういうことで出しているんですよ。これからIT時代になって個人情報がはんらんするわけですから、行政機関もいっぱい保有する。それを恣意的に勝手に使わせない、一定のルールのもとにきちっと処理させる。しかも、本人についていろいろな権利を、利用停止だとか中身を直せとか開示だとか、そういう権利を認めるというのが今回の法律でございまして、そういう大変な前進であるということは御認識をぜひ賜りたいと思いますね。
 しかし、どんな法律をつくっても、必ず法律をそのとおり守るかどうかといったら、それは人によりますよ。不心得者が出る。それは厳罰でその場合は対応していく、私はこういうことではなかろうかと思います。どんな法律をつくっても、だれも破らないということは保証できませんよね。そういう場合にはきっちり対応していくということが同時に担保になる、こういうふうに考えております。
工藤委員 今片山大臣から御答弁をいただきましたが、どうも納得できない点も多々ありまして、申し上げたいこともあるんですが、もう時間も参ったようでありますので、私の質問はこの程度で終わらせていただきます。ありがとうございました。


2002/05/31

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