2002/10/30 |
(民主党ニュース・トピックス)
【党首討論】不良債権処理加速策などめぐって議論
衆議院国家基本政策委員会で30日、党首討論が行われ、民主党・鳩山由紀夫代表、共産党・志位和夫委員長、社民党・土井たか子党首がそれぞれ小泉首相と論戦した。鳩山代表と小泉首相の討論の概要は次の通り。
鳩山 同僚の石井議員が暴漢に襲われ亡くなったことについて、暴力を憎み、心から石井議員の冥福を皆様とともに祈りたい。世相がひどくなっているなかで、暴力も生じている。小泉内閣の大きな責任で解決すべき問題だ。さて、代表質問でも申し上げたが、小泉総理は「構造改革なくして景気回復なし」とたびたび言っているが、なぜそうなのか、必ずしも十分な答弁がない。
小泉 言論や政治活動を暴力で封じる行為に強い憤りを感じる。ご冥福を祈る。石井議員は、鋭い口調で熱心に質疑をされていただけに、とても残念だ。「構造改革なくして成長なし」についてだが、わが国では、長年にわたり財政・金融政策でできるだけの手を打ってきたが、なかなか景気が回復しない。これはやはり、構造問題、つまり今まで成功してきた制度が、これからの時代には機能しなくなっているということだ。
鳩山 なぜそれで経済がよくなるのか、見えてこない。本論に入るが、政府は今日、総合デフレ対策を出すと聞いている。銀行への公的資金の投入も辞さないと言うが、不良債権はどれくらいあるのか。
小泉 14年3月期に9.2兆円の不良債権を処理したが、残高は43.2兆円で、前年よりも9.6兆円増加している。
鳩山 どれくらいの公的資金を。投入することになるのか。
小泉 まず公的資金投入ありきという考えはとっていない。厳格な査定と引き当て、経営体質の健全化などについて十分見極め、それで投入なしでは無理だというなら投入を考える。
鳩山 明確な答弁をいただけないが、国民の税金を投入するということまでやると決めたのなら、国民への説明責任がある。竹中大臣の最初の案が、自民党や銀行の言いなりになって、どんどん骨抜きになっているのではないか。特に、経営責任の追及、経営者の更迭の話が消えてしまった。公的資金投入にあたり、経営責任の厳しい追及は当然行うのか。
小泉 民主党も含め不良債権処理を早くという主張がある一方、与野党の中には、あまり急ぐと倒産や失業が増えるという議論もある。不良債権処理を加速する過程で、無用の不安や混乱を起こさないようにどういう手だてが必要か、各方面に聞いているところだ。しかし、腹を決めてやるべきことはやる。経営者のしかるべき責任は、あるという観点からなされるべき。
鳩山 聞きたいのは、なぜ「経営責任の追及」が文言として消えたのかということだ。「厳しい経営責任の追及はしないから、公的資金を受け入れてほしい」という話に聞こえる。
小泉 今晩には基本的な方針を出せるようにする。しかるべき責任追及はなされるべきだ。常識的な線で責任を問うのは当然と思っている。
鳩山 あいまいではあるが、経営責任の追及は行うと明言されたので、期待する。不良債権処理の加速は、民主党が4年前から言っていることだ。4年たって、セーフティーネットの整備、企業再生、中小企業対策など、さらに大きな対策が必要になってしまった。もっと早くやっていれば、ここまでにはならなかった。このような対策を講じるには、予算措置も必要だ。民主党は、予算の組み替えを要求してきた。小泉首相としては、予算措置を臨時国会に提出するのか。
小泉 臨時国会では出す考えはない。現在は14年度の本予算を執行中だ。
鳩山 もっとスピードが求められている。遅きに失している。小泉内閣のもとで、もう8本目か9本目の対策だが、対策ペーパーを書くだけでいいのか。通常国会には出すのか。
小泉 すぐに予算を組んだから、すぐに解決するというものではない。14年度予算のなかで、改革すべきは改革している。今後、税収動向や経済状況も見ながら、必要な対策については大胆かつ柔軟に対応していきたい。
鳩山 その「大胆かつ柔軟に対応」という表現もだいぶ使われているが、要するに通常国会には出されるものと受け止める。現在の中小企業などの生の声を聞くことが大変重要だ。臨時国会では対策のペーパーだけというのでは、彼らは泣いてしまう。
小泉 厳しい状況が続いているのは事実だ。14年度予算でも、雇用対策、中小企業対策などを打っている。その面で手当てできるものもあるし、できないものは、今後どうするか作業を進めている。困難な状況に負けず前向きに取り組んで行ける企業と、そうではない企業がある。やっていける企業、再建できる企業については、意欲を持って立ち向かって行けるような対策を考えなくてはならない。
鳩山 1秒を争っている状況で「作業中」と聞いたらがっかりする。今こそ具体的な施策を打ち出すべきとき。生の声をもっと聞いてほしい。ペイオフ、国債30兆円枠、特定財源見直し、「1内閣1閣僚」など、小泉内閣の公約はドミノ倒し状態だ。「小泉ドミノ倒し内閣」と呼ぶべきだ。大変深刻に考えている。北朝鮮との国交正常化交渉が始まった。5名の拉致被害者が戻られたことは、「総理よくやった」と率直に感謝するが、拉致問題や核開発問題の解決なくして正常化をしてはいけない。日朝首脳会談時の初動が甘かったと言わざるを得ない。総理は、「拉致問題の全面解決なくして国交正常化はない」と言い切ったが、「全面解決」とは何を指すのか。
小泉 「初動が遅れた」との指摘は納得できない。鳩山代表は「時期尚早だ」と言っていたが、私は踏み切った。訪朝し、日本の主張は全部盛り込んだ上で、これが実現するなら国交を正常化しようということだ。交渉の中でしか解決はない。どこまでいったら解決かということについては、家族や本人の希望がかなうよう努力する。日朝交渉は、過去・現在・将来を総合的に交渉しなければ、はじまらない。
鳩山 ごまかしてはいけない。私は「初動が甘い」と申し上げた。階段の30分前に死亡を聞かされた、核開発で米朝合意違反があることが分かっていた、宣言に「拉致」という言葉が出てこない、などだ。金正男氏が偽造旅券を持っていたにもかかわらず、わざわざ特別機で送り返したこともあった。そのときにきちんとしていれば、拉致事件はもっと早く解決していたかもしれない。
第155回国会 国家基本政策委員会合同審査会
平成十四年十月三十日(水曜日)
午後三時開議
―――――――――――――
○会長(瓦力君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
本日は、私が会長を務めさせていただきます。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
このたび、衆議院の国家基本政策委員長に就任いたしました瓦力でございます。
参議院の江田委員長を初め、衆参両院の委員の皆様方の御指導、御協力を賜りまして、その職責を全ういたしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
これより討議を行います。
討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理は、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行うようお願い申し上げます。
また、委員各位におかれましても、議事の妨げとなるような言動のないよう、御協力をお願いいたします。
発言の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。
○鳩山由紀夫君 まず、冒頭に申し上げなければならないことがあります。
私ども民主党の同僚議員でありました石井紘基議員が暴漢に襲われて亡くなるという惨事がございました。暴力というものを私どもは憎みます。そして、心から石井紘基議員の冥福を皆様方とともにお祈りを申し上げたいと思っています。
やはり世相が大分ひどくなった、そういう実感があります。高校生の就職率が五〇%、中学生は何と一五%という話です。働きたくても働けない人がたくさんいる。このような中で暴力を振るったり、あるいはさまざまな犯罪を犯してしまう、その可能性が高まっているということを、ぜひともこれも小泉内閣の大変大きな責任において、問題の解決をしていただかなければなりません。
さて、質問に入りますが、前回といいますか、代表質問のときに、私は総理に、構造改革なくして景気回復なしだと総理はたびたびおっしゃるけれども、国民の皆さん方は、どうもそこの部分、必ずしも明らかでないと、できるだけ冷静に、構造改革なくしてなぜ景気回復がないのかというお話をしていただきたいと申し上げたのですが、必ずしも十分に御答弁をいただけませんでした。
改めて総理、この問題から質問をさせていただきます。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず冒頭、鳩山代表が御指摘されたように、石井代議士が刺殺されたという悲惨な事件、我々政治家として常に似たような危険を背負っているわけでございますが、暴力は断じて許されない、言論や政治活動を暴力で封殺するというようなことは断じてあってはならないということを申し上げたいと思います。強い憤りで私もいっぱいでございます。石井代議士の御冥福をお祈り申し上げますが、あの鋭い口調で、熱心に精力的に審議された姿が思い出されますが、それだけに一層残念でございます。
まずもって、鳩山代表が九月の代表選挙で激戦を勝ち抜かれて、再び代表に選任されたことをお祝い申し上げたいと思います。
これから、お互い政党の党首として、今後の国政に責任を担わなきゃならない立場だと思います。きょうの臨時国会におきまして初めての党首討論でございますが、そういう意識のもとに、建設的な議論を行っていきたいと思います。
私がなぜ構造改革なくして成長なしという議論かというお尋ねだと思いますが、それは、長年にわたりまして、財政、金融両政策、手を打ってこなかったかというと、違います。この十年間、日本としてはできるだけの財政出動、そして金融緩和、財政金融政策を目いっぱい、よそのクラブから見てもこれほどぎりぎりまで手を打ってきたことがないぐらい打っている。ところが、なかなか景気回復しない。これこそまさに財政政策、幾ら借金をして需要回復をいたそうと、つなげようとも、うまくいかない。
では金融政策、戦後これ以上、公定歩合、ゼロ金利、したこともないぐらい、そういう中において、私は、構造というのは、やはり今までの成功してきた制度等がこれからの時代に機能しなくなったんではないかということから、構造に問題がある。
それは、役所の仕事にしても、かつては民間を、先導的な役割を果たしてこようということで引っ張ってきた。それにつられて民間も元気を出して、今や民間でも、役所がやらなくても、官がやらなくてもできる分野が相当出てきた。しかしながら、惰性といいますか、今や民間でできることも役所の方でやっている。そういう面から、官から民へ、役所がやらなくてもいい仕事はできるだけ民間に移していこう。
同時に、役人がやる仕事は公共的だ、民間のやる仕事は公共的でない、公共的な仕事は役所がやるんだ、公務員がやるんだというのは、ごく当然のことに考えられていた。ところが、実際調べてみると、民間、サラリーマンがやっていることだって、公共的な仕事はたくさんあるわけです。
そういう点から、やはり官がやれば公共的、民間がやれば非公共的、この概念、この意識も取っ払おうじゃないか。むしろ、官は民の補完という考え方と同時に、今までの、民間も非公共的な分野だけじゃなくて、公共的な分野にも民間人に参加してもらおうという、この構造的な問題に手を入れようということがまずは一つ。
それと同時に、余りにも国がちょっと地方の仕事に口を出し過ぎるんじゃないか、規制等あり過ぎるんじゃないか、そういう規制改革。そういう構造的な問題を掘り下げないと、幾ら財政出動しても、金利を緩和してもなかなかこれは景気が回復しないということで、構造改革なくして成長なしという点を申し上げたわけでございます。
○鳩山由紀夫君 御説明をいただきましたが、なぜそれで経済がよみがえるのかというところになると、まだ見えてきていません。
しかし、この問題、余り長くやりますと時間がなくなりますから、本論に入らせていただきます。
デフレ対策、総合デフレ対策をお出しになるということであります。若干それを見ながら申し上げたいのでありますが、総理は、まず、この銀行、大変厳しい状況にあるという私どもは認識をしておりますが、銀行に対して将来公的資金の投入も辞さないという決意だと伺っています。
それであるならば、まず、これは何度もお尋ねしていることでありますが、不良債権、銀行がどのぐらい持っているのかという具体的な数字をお示しを願いたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今数字を見ればすぐわかります。党首討論ですから、そういう数字ということよりも、確かに趣旨は、恐らく鳩山代表の趣旨は、不良債権処理、進めてももっとふえているじゃないかということを言いたいわけでしょう。私、今資料を見ればすぐ言えますよ。しかし、そう言うよりも、やはり党首としての討論として、数字言ってもしようがない。私は、御趣旨は、鳩山代表の趣旨は、不良債権処理は進んでも進んでもさらにふえているじゃないかということを言いたいんだと思います。それで、数字、言いますか。言う必要ありますか。言った方がいいですか。(発言する者あり)はい。私は、そういう実務的なというのは余り党首討論に適さないと思うんですが、言えというのなら言います。
十四年三月期の不良債権については、積極的な最終処理により九・二兆円が処理された一方、その残高は四十三・二兆円と前年度末に比べ九・六兆円の増加となっております。
○鳩山由紀夫君 総理は、またあるいは政府は、できるだけ低目な話をするんでありましょう。我々の見る限り、不良債権額というのはもっとはるかに多いんであります。したがいまして、何度いろいろと九兆円、十兆円処理をしても、ますます減るどころかふえてしまうというのが実態だというふうに御指摘を申し上げておきます。
そこで、公的資金の投入、今それでも四十数兆円というお話がありました。それをもとにして銀行に対してさまざまな査定を行い、引き当てをされるんでしょうから、その中で国民の税金としての公的資金の投入を辞さずというお話であれば、これもどのぐらいの規模を考えておられるのか。何千億円程度の話なのか、あるいは何兆なのか、あるいは数十兆のオーダーの公的資金まで辞さないと考えておられるのか。その辺を確認を申し上げたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず公的資金投入ありという考えはとっていないんです。これは、結果としてそういう事態になれば公的資金は投入せざるを得ないという考えはありますが、最初に公的資金投入をしようということが先にあってはならない。まず厳格な資産査定が先であります。そして、十分な引き当て、自己資本どうなのか、また経営体質等、健全な経営、取り組みどうなのかという、金融機関の健全性に対して十分な見通しといいますか見きわめが必要だ。そこでこれは公的資金投入なしには無理だなといったときに初めて公的資金導入の問題が出てくるわけであって、最初からもう公的資金導入だという考えはとっていないということを御理解いただきたいと思います。
○鳩山由紀夫君 明確にお答えをいただけませんが、竹中大臣はどのぐらいの規模かというのは念頭に置かれているものだというふうに私は理解をいたします。
これはやはり、現状認識を真剣に行わなければ、不良債権の処理、減りませんよ、これ。幾らやっても不良債権の処理、いつまでもいつまでも続くという話になりますよ。国民の税金を投入するという、大変、本当にこれまでやるのかというようなところまで覚悟を決められたんですから、そのぐらいの規模ぐらいを国民にはやはり知らせる義務が私は説明責任としてあると明らかに申し上げておきます。
そこで、どうもこのデフレ対策、竹中さんの、大臣の最初の案と比べてどんどんどんどん後退をしてくる。銀行の言いなりになってくる、あるいは自民党の皆さんの言いなりになって、どうも骨抜きになってきたというふうに我々には思えてならない。
その一つとして、銀行の経営者の責任問題でありますが、最初は、いいですか、銀行の経営者の更迭という話もあったんですが、その議論が消えてしまっておりますね。それでも、銀行の経営者に対する厳しい責任というものは、もし公的資金の投入というものが必要になったときには、当然なさるんでしょうね。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、不良債権処理を早くしろという民主党の主張、前から私も承知しております。
また、与野党の中に、余り急ぎ過ぎると倒産がふえるし、かえってデフレを加速させる、失業者もふえるということだから、そんなに急ぐべきでないという意見があるのも承知しております。
鳩山代表の民主党としては、加速させろという方針としては賛同いただけるのではないかと思いますが、その際に、それなりに不良債権処理をする過程で、無用な不安とか混乱を起こさせないように、どういう手だてが必要かということを今各方面からいろいろ意見を聞いているわけでありまして、私はその両面の手当てが必要だと思っております。
不良債権処理を加速させるという決断をしたわけでありますから、鶏が先か卵が先かというような議論もありますけれども、私は、やはりここは腹を決めて不良債権処理に向けてやるべきことはやる、そして、その後の副作用といいますか、いろいろなマイナスの反応というものは総合的に考えなきゃいけない問題だと思っています。
そこで、公的資金投入の場合に、経営者の責任という問題になりますが、それはその状況を見て、しかるべき責任はやはり経営者にあるという観点からなされるべきだと思っております。
○鳩山由紀夫君 伺いたいのは、なぜ文言が消えたのかということでありまして、経営者の更迭という文言が、どうも総合デフレ対策の中からは消えて、見えなくなってきていると。どうもそうなると、厳しい経営責任は追及しないのだなと、安心して公的資金の投入、受け入れなさいと、それでも入れさせてやりますよ、責任はとりませんよ、こういう話だと、結果として不良債権の処理も十分いかない懸念があるから、私どもとしては、この部分、経営者に対するやはり厳しい処分、ただやめれば済むなんという話じゃないんですよ、こういう話は。それを超えて、きちんとした処分ができるかどうかということをもう一度お尋ねします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今晩には基本的な方針を出せるように、今作業を進めておりますし、その際に、公的資金投入の際には、しかるべき経営責任というものは当然なされるべきだ、これは今お話にありましたように、常識な線で経営責任を問うということも私は当然だと思っております。
○鳩山由紀夫君 どうもあいまいではありますが、経営責任はとると、しかるべき責任はとるというふうに明言されましたから、そのように私どもとしても期待を申し上げておきます。
さてそこで、デフレ対策でありますが、これを拝見しますと、やはり不良債権の加速、我々はもう四年前から言っておりました。これは四年前に実現していればこんな苦労は今なかったのでありますが、大変遅まき、もう四年たっていますから、さらに大きな対策が必要になってきた。そこで、御承知のとおり、セーフティーネット、雇用対策などのセーフティーネットが必要になってきているし、さらに、企業の再生策とか、あるいはこの中小企業対策といったものを万全を期さなければならなくなった。
もっと早くやっていればこういうところまで来なくなったのに、こういった対策が必要になった。三位一体の政策、我々もそう思っています。それを、じゃ、実現させるためには、やはり予算措置が必要だと考えていますが、我々は、当然、前から予算の組み替えというものを要求しています。この予算の組み替えの中で、今、きょうじゅうに出されるのでありましょう総合デフレ対策に必要な予算措置をするために、補正予算というものを臨時国会の中で出されるおつもりはあるんでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 臨時国会で補正予算を出す考えはございません。本年度予算、今、十四年度予算が執行されておりますし、その中で、今までにないような各歳出の見直し、そしていろいろな事業が今執行されているわけでありますので、いろいろな対応が出てきている。この臨時国会で補正を出すというのは、私は考えておりません。
○鳩山由紀夫君 私は、大変にスピードというものが求められている、遅きに失しているというふうにも言えますが、そこで、もう何本、同じような経済対策、八本目か九本目ですよね、出されて、ペーパーだけ出せばいいという話じゃないです。当然、そこには予算というものを措置しなければならない。できるだけ早く、もう泣いている企業はたくさんあるわけですから、そういう企業のためにも予算の措置というものを図らなきゃならないのは言うまでもないことだと思っていますが、それならば、次の通常国会には補正予算を出すということでよろしいんですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、すぐ手当てをしたから、補正予算を組んだからすぐ解決するという問題ではございません。今の十四年度の予算の中で、改革すべきはいろいろ改革しているわけですから。今後、税収動向も見て、そして新たな経済状況も勘案しながら、必要な対策に対しましては私は大胆かつ柔軟に対応すると言っているわけでありまして、今国会でその補正予算を出すという状況にはなっていないと見ております。
○鳩山由紀夫君 今のお話で、大胆かつ柔軟というお話を、大分お好きなようで使っておられますから、多分それが意味することは、来年の通常国会にはお出しになるんだなというふうに解釈をします。臨時国会で本来ならば私は急いで出すべきものを、何でそこまでおくらせるのかなと、改めて、本来ならば臨時国会中に出すべき予算措置ではないかと申し上げておきます。
そこで、今、泣いている中小企業の話をいたしましたが、私どもは、中小企業の方々のところ、大分調査をしてまいりました。生の声というものを聞くということが、政治家にとって、総理にとっても大変に重要なことだと私は思っています。
この中小企業のところで、世論調査、いろいろアンケート調査をしたわけでありますが、大変厳しい、一つ一つ、ことしも悪くなった、来年も景気はもっと悪くなりそうだ、実績が半分ぐらいに減ったという企業もあります。しかも、貸し渋り、貸しはがし、こういったものに悩まされている実態というものが極めて浮き彫りになってきています。大変ショッキングなところでは、質問として、身近なお知り合いの方に借金苦が原因で自殺された方はいらっしゃいますか、これにもイエスと答えておられるんです。もうそういう事態になってきている。本来ならば、一刻の猶予もない例えば中小企業、零細な企業対策というものが求められているときに、この臨時国会ではペーパーを出すだけ。それでは彼らは泣いてしまいますよ。
こういう現実をどこまで御存じなのか、伺っておきます。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 厳しい状況が続いておるのは事実でございます。そういう中で、この十四年度予算の中で対策も打っております。雇用対策あるいは中小企業対策、その面で手当てできるものもあるし、できないものを、今後できたらどういう対策が必要かということを、今いろいろ作業を進めている段階でありますので、厳しい状況がありながらも、この困難な状況にめげず前向きに取り組んでいける企業と、みずからの努力ではどうしてもいかんともしがたい企業もあると思います。
そういう点に対して、今後、雇用面、あるいは実際に産業が活性化できるような、やっていける企業、再建できる企業、これについては、意欲を持って立ち向かっていけるような対策はどんなものかという面もやはり考えていかなきゃならない。厳しい状況は続いていると私は思っております。
○鳩山由紀夫君 今本当に一秒を争っているような、そういう状況の中で、作業中でありますという話を聞いたら、やはり彼らはがっかりするでありましょう。今こそ本当に具体的な施策というものを打ち出していただかなきゃならない大事なときだ、改めてこのことを申し上げながら、やはり総理も生の声をもっともっと聞いてくださいよ、ぜひともお願いを申し上げます。
ペイオフの話もそうでしたが、総理が、国債の三十兆円の枠の問題、ペイオフ、道路特定財源の見直しの問題、さらに一内閣一閣僚、こういった公約がことごとく破られてきています。公約の将棋倒しじゃありませんか、これでは。まさに小泉ドミノ内閣だというふうに申し上げなきゃならない。まさにドミノ倒しのように公約がどんどん倒れてしまっているという状況を私は大変に深刻に考えます。
さて、持ち時間があと五分になりました。
北朝鮮との間の日朝国交正常化交渉が始まったと伺っています。私は、この五名の拉致された被害者の方が日本にお戻りになられたということに関しては、率直に、総理、よくやりましたというふうに感謝も申し上げたいと思うんです。
ただ、この問題、拉致事件、さらに核開発のさまざまな疑惑がまた出ていますね。こういう問題の解決なくして国交正常化というものはやはりやってはいけない。それは当然総理もそうお考えになっておられる。だとすれば、どうも初動が、小泉総理、甘かったなと私には思えてなりません。
そこで、伺いたいのは、拉致事件の全面解決なくして国交正常化なしというふうに言い切られましたから、拉致事件の解決というのは具体的にどのようなことなのか、それをぜひ国民の皆さんに聞かせてください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、この日朝交渉で初動がおくれたという御指摘は納得できません。どこの初動がおくれたのか。むしろ鳩山代表は、交渉再開は時期尚早と反対されていたんじゃないですか。
私は、交渉せずに何が解決できるのかと言って、交渉再開に踏み切ったんですよ。しかも九月十七日に訪問して、そして日本の主張はすべて盛り込まれる日朝平壌宣言、そしてこの約束が誠実に履行されるならば日本は正常化に踏み切ろう、今回、その点についてはすべて書き込まれているわけです。それを読める読めないは人の問題であります。今回におきましても、拉致の問題についても安全保障の問題につきましても、これは交渉の中で解決していこうと。
拉致がどこまでいったら解決かということでありますが、この問題につきましては、まず御家族、御本人の希望が受け入れられるように政府としては全力を尽くす。相手が信用できる、信用できない、両方ありますから、この点は向こう、北朝鮮側が死亡されたと報告している方々、日本の御家族の中にはそれは信用できないという面もあるでしょう。今回、帰国された方と残された御家族の方、できるだけ早く帰国するということを今求めております。そして、今後、不明な点、なぜ死亡したのか、なぜ死亡されたという方に対しての情報も、できるだけ詳しく日本側に知らせるよう、政府側としては全力を尽くして解決に向けていきたいという態度でこの交渉に当たっていきたいと思います。
いずれにしても、拉致の問題、安全保障の問題、過去、現在、将来にわたる問題、包括的、総合的に、この日朝間の正常化を来すためには、交渉しなきゃ始まらないと思うんです。時期尚早だ、時期尚早だ、交渉するなと言ったら、この拉致の問題も何も解決しないですよ、ほかの問題も。
だから、そういう点において、私は初動がおくれたとかいう批判は当たらないと思っております。
○鳩山由紀夫君 ごまかしてはいけません。私は、初動が甘かったというふうに申し上げているんです。
八名の方が亡くなったということを向こうに行って三十分前に聞かれたというような話は、これは本来外務省怠慢なんです。もっと前にわかっていればどういう話になっていたか、全く別の話です。
そもそも、もっと言えば、いいですか、この平壌宣言の中で、核開発の問題に関して、どう考えても米朝合意違反であるということがわかっていながらあえてそれを無視してそのまま書き入れたというところがおかしいし、そうなると、向こうだって核の開発の話はこれで合意したんでしょうという話になればどうしようもないじゃありませんか。
また、拉致の話も同じですよ。拉致という言葉自体が入っていない。これは読み取れないですよ、普通は。その問題を最初にきちんと平壌宣言の署名の前に議論をするべきだった。
○会長(瓦力君) 鳩山君、時間が来ておりますので、簡潔に願います。
○鳩山由紀夫君 もう一つ言わせていただければ、本来ならば、金正男さん、キム・ジョンナム、あの人が日本に来られたときに、何で特別機まで配慮して、偽造旅券でありながら帰してしまったんですか。こういうところにしっかりと、毅然とした対応をしていれば、拉致の問題はもっと前向きに解決していた可能性があるんです。
それをやらないで、だから初動のところに甘さがあったというふうに申し上げている。このことが、これからの日朝国交正常化交渉に大変な暗雲を投げかける可能性がありますよということを指摘して、私の議論を終わります。
○会長(瓦力君) これにて鳩山君の発言は終了いたしました。
次に、志位和夫君。
○志位和夫君 日朝国交正常化交渉が継続中でありますが、我が党は、日朝平壌宣言に基づいて、拉致の問題、核の問題、道理ある解決に向けた努力を引き続き行っていただきたいと強く求めたいと思います。
私は、イラク問題についてきょうは質問いたします。
米国のブッシュ大統領がイラクへの軍事攻撃が必要となるかもしれないと公言したことに対して、世界から非常な強い批判の声が起こっております。
我が党は、この間、緒方靖夫参議院議員を団長とする訪問団を中東諸国に派遣しました。
我が党の代表団は、ヨルダン、エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦という、まさに中東の心臓部に位置する諸国の政府と会談しました。それから、アラブ連盟、イスラム諸国機構というアラブ世界、イスラム世界の国際組織とも会談しました。
どの会談でも一致して確認されたのは、イラク攻撃に反対し、この問題の平和的な、政治的な解決を図るという点では強い一致が得られました。
会談の中では、イラクの攻撃に賛成するアラブ人は一人としていないという声もありましたし、イラク攻撃は中東における地獄の門をあけることになるという声もありました。
そして同時に、中東諸国の政府から共通して出されたのは、日本政府に対する強い要望でした。
中東の民衆は、日本に非常に強い親近感を持っている。それは、日本がこの地域への植民地支配を過去やったことがない、そういう国だからだ。だから日本政府はこの問題で独自の役割を果たすことができる、ぜひ戦争回避のために日本政府が行動してほしいという声が共通して上げられました。
私は、二十二日の代表質問で総理に対して、この問題の解決はあくまでも政治的交渉を通じて行うべきであって、戦争に訴えてはならない、イラク攻撃の反対を明言すべきだということを述べました。しかし、答弁では、定かな答えは返ってきませんでした。
私は、この場で再度伺いたい。やはりイラク攻撃は反対だということを言明していただきたい。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず、これは本会議の答弁で申し上げましたように、国際社会がイラクを攻撃しないで済むように、イラクがはっきりした態度をとるべきだと思うんです。それは、今まで国連の安保理決議、これを誠実にイラクが履行することが前提であります。幾つかの国連決議がなされています。それを即時、無条件、無制限にイラクが履行すべきだ。そうすれば、もう攻撃する必要はないんですよ。
それについて、今国連を通じて日本は国際社会に働きかけている。まず、アメリカに対しましてもはっきりと、国際協調が最も大事だと。そういうことで、アメリカも今国連の場で外交努力を続けているし、日本としても戦争を行わないでこの問題が解決できるように外交努力を懸命に進めるべきだ、その考えに変わりありません。
○志位和夫君 今言われたように、イラクが国連の決定に従って大量破壊兵器を廃棄するという義務を負っているのは当然です。
私たちの代表団も、イラクのハマディ国会議長と会った際に、あなた方は国際社会に隠し立てをしたり欺いたりしちゃいけない、この問題について真剣に真実を明らかにしなさいということを言いました。その際の会談では、先方も、八つの大統領施設も含めて、すべての施設、場所について無条件の査察に応じるという言明を、これは十月十三日ですが、いたしました。
そうしますと、やはりその査察を実行に移せば事は済むわけですね。ですから、戦争に訴える必要は全くなくなる。やはりこの点で、なぜ戦争反対をはっきり言えないのかということが問題になってくると思います。
もう一問聞きます。
ブッシュ大統領は、もし国連が決断できないなら、我々は平和のために同盟国を率いてサダム・フセインを武装解除すると言っております。すなわち、必要とあらば、国連の決定なしでもアメリカの勝手な判断でイラクへの軍事攻撃を行うということを言明しているわけですが、これは国連憲章違反になります。国連の憲章では、これは、国際的な武力の行使というのは国連の決定が必要だ、個々の加盟国の武力行使というのは侵略された場合の自衛反撃に限るというのが国連憲章ですから、先制攻撃というのは国連憲章違反になります。
私は総理に伺いたいんですが、国連の決定抜きの一方的な軍事行動については、これは絶対に認められないと、これは最小限この場で言明していただきたい。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、アメリカはいろいろな選択肢を残しておりますが、現在、アメリカは国連決議履行に全力を尽くしていると思います。そして、国際協調、国際法に違反するような戦争は毛頭考えていないと思います。
今、国際法に違反するようなそういう行動をとったらどうするかということは、予断するのは私は適切ではないと。私は、国際法、国連の中で今懸命にアメリカを中心とした各国が、何とか国連の権威を損なわないように、そしてイラクが戦争なしに危険を、大量破壊兵器除去に努めるように懸命に努力中ですから、その努力を我々は強く支援する。そして、日本としても、この外交的努力を続けるということが現在での私はとるべき措置だと思っております。
○会長(瓦力君) これにて志位君の発言は終了いたしました。
○志位和夫君 国連の決定なしにも武力攻撃をやるというのを繰り返し言っているわけですから、それに対してノーと言えないのは、これは自主性を問われるということを指摘して、終わりにいたします。
○会長(瓦力君) 次に、土井たか子君。
○土井たか子君 きのうから日朝正常化交渉が再開されました。拉致問題について、被害者の方々が帰国されておりますが、被害者の方々には、一日も早い原状回復を願っています。政府は全力を挙げてひとつ拉致問題の真相究明に取り組んでいただきたいという気持ちを、さらに強くしております。
核開発の問題については、北朝鮮は、初めはアメリカとの間で解決すべき問題と言っていたようですが、これはとんでもない話で、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のためには関連するすべての国際的合意を遵守するということを取り決めた中身が、日朝平壌宣言ではありませんか。そうすると、ただいまの北朝鮮の核開発計画というのは、この平壌宣言に違反しているということは明らかだと思うんですね。
非核三原則を国是としている我が国にとっては、ゆるがせにできない問題です。核開発計画を即時撤廃させて、それにかかわるものをすべて廃棄するということが何といっても肝要だと思いますが、きょうのニュースによりますと十一月にも開かれます日朝安全保障協議の場で、ひとつしっかりと肝に銘じてこの問題に取り組んでいただきたいというふうに思っております。よろしゅうございますね。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 核の問題は、北朝鮮はアメリカとの問題だと言っておりますが、日本はそうはとっていないんです。これは、人ごとじゃない。我が国の安全にとっても重大な脅威であり懸念であるということで、これはやはり正面から取り上げる、議論するという立場でおります。
そういう中で、この問題については、アメリカ、韓国と密接な連携を持って、この核の問題について、日本としても人ごとでない、重大な問題だとして受けとめて、今後の交渉の場でも取り上げていきたいと思っております。
○土井たか子君 所信表明の中で、総理は、イラク問題について触れられている部分がございますけれども、「我が国として、国際社会と協調しつつ外交努力を継続してまいります。」というふうにおっしゃっているわけなんですね。
御存じだと思います。もう先刻御存じのところだと思いますが、この九月に、アメリカでは、ブッシュ・ドクトリン、新ブッシュ・ドクトリンと言っていいと思いますが、国家安全保障戦略が発表されました。その中では、自衛権の行使は、先制攻撃ということも含めて考えられているんですね。実は、これは、とんでもない問題をこれを実行した場合にははらんでいるということを、はっきり申し上げたいと思います。明らかに国連憲章の五十一条に違反すると私は思います。
国連憲章の五十一条というのはどういうことを決めているかというと、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」つまり、先制攻撃はだめですよと。個別的、集団的自衛というのは、これは攻撃を受けた場合に対してこれが認められるという中身なんですね。
もっと翻って言いますと、三百五十四年前、ウェストファリア条約というのがあります。それまでの数限りない戦争と殺りくの歴史を経てようやく確立したこれは国際ルールなんです。
○会長(瓦力君) 土井君、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○土井たか子君 ウェストファリア条約では、国家主権の相互尊重原則と、そしてその中では自衛権の行使を認めておりますけれども、顕在化している脅威についてのみ自衛権の行使を認めた。ここが大事なんです。
○会長(瓦力君) 簡潔に願います。
○土井たか子君 今の、したがって、先制攻撃ということに対しては国連憲章の五十一条違反、ひいてはこれを強行それでもするならば、国連に対する否定であると。したがって、これに対して日本とすれば支持はできない、協力はできないということをはっきりすべきだと私は思いますが、総理の御見解をひとつ示していただきたいのです。
○会長(瓦力君) これにて土井君の発言は終了いたしました。
総理、簡単に答弁願います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) どの国も国際法を守るのは当然だと思います。
○会長(瓦力君) 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
次回は、衆議院、参議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十六分散会
2002/10/30 |