2003/07/23 | >>会議録全文 |
(民主党ニュース・トピックス)
【党首討論】菅代表、無責任なイラク派兵法案を批判
今通常国会で5回目の党首討論が23日に行われ、民主党の菅直人代表はイラク新法問題などについて小泉首相を厳しく追及した。主なやりとりは、以下の通り。
■鴻池大臣発言
菅 (長崎児童殺害事件をめぐる)鴻池大臣の発言(「(加害少年の)親は市中引き回しのうえ、打ち首に」)は、政府与党の人権擁護における怠慢を棚に上げ、被害者の報復感情を煽り立てるもので、あまりにも行き過ぎだ。犯罪被害者の人権を擁護するということと加害者の人権はどうなってもいいということはイコールではない。
小泉 不適切な発言もあったが、本人は強く反省している。
菅 民主党が提出した犯罪被害者基本法案の成立に、与党としても努力すべきだ。
■イラク新法問題
菅 イラクに大量破壊兵器が存在する疑惑があることを誇張して「存在する」と断定したのは、情報操作だ。それをもって国民に戦争支持の理由を説明した責任をどう考えるか。
小泉 大量破壊兵器がないと言い切れるのか。
菅 疑惑の段階で存在すると断定したことが問題なのだ。 (全土で戦闘行為が行われているイラクへの自衛隊派遣は憲法違反だとする)元防衛庁教育訓練局長の要請書をどう受け止めるか。
小泉 よく状況を見極めて非戦闘地域に限って派遣する。憲法に抵触しない。
菅 今のイラクに非戦闘地域があるのか。一カ所でも言ってみよ。
小泉 私に聞かれたってわかるわけない。法案が成立すれば、よく調査する。
菅 それが自衛隊員を戦地に送る責任者の答弁か。こんな無責任な総理に内閣は任せられない。野党の不信任案を受けて立つ勇気があるなら、解散して国民の信を問え。
平成十五年七月二十三日(水曜日) 午後三時開議
○会長(瓦力君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
本日は、私が会長を務めさせていただきます。
国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
これより討議を行います。
討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理は、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行うようお願い申し上げます。
また、委員各位におかれましても、議事の妨げとなるような言動のないよう、御協力をお願いいたします。
発言の申し出がありますので、順次これを許します。菅直人君。
○菅直人君 今、世の中の母親の皆さんが一番心配な問題は何か。やはり何といっても、子供たちを巻き込んだ犯罪が本当に多くなっている、あるいは悪質化していることだと思います。このことを少なくしていく、なくしていくためには、一つは、犯罪に対する捜査能力をもっと高めて、そして、原因を解明して再発を防止する、そのことが一つであります。もう一つは、同時に、やはり教育というものをしっかりと考えていかなければならない。
今から百年ほど前、宗教教育のない日本でどういう倫理教育をするんですかと問われた新渡戸稲造氏が「武士道」という本を書かれております。その中で新渡戸稲造氏は、少年教育において恥ということを知ることが一つの徳目である、笑われるぞ、そんなことをしたら恥ずかしくないのか、体面を汚すぞ、こういう一つの恥という概念の中で子供たちがある意味での価値を身につけていくということを述べておられます。
私も、大変難しい問題ですけれども、日本における一つの、道徳という言葉がいいかどうかわかりませんが、価値というものをきちっと位置づけていく、そういうことが必要だろう、こう思っております。
そういう中にあって、鴻池大臣がいろいろな発言をされております。加害者の人権ばかりを考えて被害者の人権を軽視しているんではないかと。私たちも、被害者の人権が非常に軽視されている、犯罪被害者基本法を何度も提出をしておりますけれども、与党の皆さんが大変怠慢なためにこの審議が進んでおりません。
加害者の人権については、もしこれが余りにも軽視されるようなことになれば、いわばリンチというものにもつながりかねないわけでありまして、被害者の人権を守るということと加害者の人権がどうなってもいいということとは、決してイコールではないわけであります。
そういった意味で、鴻池発言というのは、与党のそうした被害者に対する人権の擁護というものの怠慢さを、逆にそうした加害者に対する国民の怒りをあおり立てるような、報復感情をあおり立てるような発言として、私は余りにも行き過ぎではないか、こう思いますが、小泉総理、いかがお考えですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まず、お答えする前に、今回の豪雨によって災害に遭われました福岡、長崎、熊本、鹿児島等の被災者の方々に対して、心からお見舞いを申し上げます。
政府としては、今後、災害復旧、支援、その他の対策について万全を期したいと思います。
ただいまの御質問でございますが、最近、犯罪につきまして、多くの国民が、日本はどうなってしまったのか、このままでいいのだろうかと大変深刻に憂えている状況だと私は認識しております。
そういう中にありまして、特に少年犯罪、こういうことに対しては、単に少年のみならず、やはり今までの社会全体といいますか、教育のあり方あるいは家庭のあり方、今菅党首が言われたような、恥を知るというような、そういう道徳観念といいますか倫理観、いろいろ原因があると思います。
私どもは、こういう問題というものを真剣に受けとめて、これからどのような青少年教育、あるいは犯罪をできるだけ少なくして、世界一安全な国日本というかつての神話といいますか、いい評判というものを取り戻すためにはどのような対策が必要かということを、これからも政府として一体として考えていかなきゃならない問題であろうかと思います。
また、鴻池大臣等の発言に触れられまして、加害者の問題、被害者の問題、これは確かに鴻池大臣の発言の中に不適切な発言もございましたが、鴻池大臣も強く反省されております。
私も、先日、犯罪被害者の代表の方々とお会いしました。その際に、被害者の家族の方々は、今余りにも被害者の立場というものが軽視されているんではないか、加害者の人権も結構ですが、被害者の人権というものも十分配慮してくださいというふうな話を伺いました。捜査状況が全く被害者の兄弟、家族、親にも知らされていない、裁判にも立ち会わせてくれない、これは一体どうなんですかという非常に憤慨の気持ちを受けました。
これから、犯罪被害者の代表の方々のお話を伺いまして、もっともな点も随分あると思いました。加害者の人権もそれは当然十分配慮しなきゃなりませんが、同時に、被害者の立場というもの、人権というものも十分配慮して、少しでも今のような憂うべき状況を改善するように、これは党派を超えて考えなきゃならない問題だと思っております。
○菅直人君 我が党が提出をしてきた被害者の人権を守るこの犯罪被害者基本法を、ぜひ与党の皆さんも率先して成立するように協力をしていただきたいと、重ねてお願いを申し上げておきます。
さきの予算委員会の翌日、総理はイギリスのブレア首相と箱根で会談をされたと報道で伺っております。
今、小泉総理とブレア首相はある意味では似たような立場にあるのではないか。
つまりは、イラクの開戦に当たってイギリスは、大量破壊兵器の報告書の中で、生物化学兵器は命令から四十五分以内に実戦配備が可能、こういうことを盛り込みまして、そうしたことをブレア首相がいろいろな機会に述べられております。しかし、最近の調査では、その表現は誇張であった、つまり、事実とは言えなかった。その情報源とされたケリー博士が、板挟みに遭って自殺をする。今、イギリスのメディアは、そうした誇張を通しての情報操作ということで、ブレア首相に対して、辞任要求を含めて厳しい批判が集中しております。
それに対して、小泉総理のこれまでの発言はどうだったでしょうか。先日の予算委員会で、何度も質問をいたしました。開戦時に、小泉総理は、みずからのメールマガジンの中で大量破壊兵器がイラクに存在すると断言をされておりますけれども、さきの予算委員会の議論で明らかになったことは、国連の査察団が、そういうものを持っている、残している、まだまだおそれがある、疑惑がある、これにとどまっている。つまり、疑惑というものを誇張して、存在していると言い切ったところに、私は、まさに表現の操作、さらに言えば情報の操作があったと言われてもいたし方がない。
しかも、事は、イギリスの場合は戦争に参加する、そして日本の場合には米英の戦争を支持するためのいわば国民に対する理由でありますから、その理由が情報操作をされていたとすれば、私は、イギリス・ブレア首相にまさるとも劣らないそういう責任がある。総理には、国民に対して少なくとも知り得る限りの正確なことを伝えて説得するのは大いに結構ですけれども、事実とは、少なくとも誇張によって大きく正確でない情報をもたらしてそういう判断を説得したということは、私は情報操作としての責任が総理にもある、このように考えます。
この責任について、小泉総理は、私にではなく、国民の皆さんにきちっと説明をしていただきたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、情報操作など一切しておりません。
まず、では、大量破壊兵器はないと菅さんは断言できるのか。私はそうは思わない。(菅直人君「国民に答えてください」と呼ぶ)私は、これは国民に答弁しているんです、国民に向かって答弁しているんです。
それは、十二年前からイラクは、国連の決議を無視してきた。そして、かつてイラクは、イラク国民に対しても化学兵器を使用している。多くの国民を殺害してきた。なおかつ、たび重なる査察団、これについても、無条件、無制限に大量破壊兵器があるかないか、疑惑を証明しなさいということに対しても誠実に対応してこなかった。国連の決議、たび重なる決議、十回以上にもわたる決議に対しても、無視あるいは軽視し続けてきた。だからこそ、国連安保理決議で、一四四一初め決議が行われてきている。疑惑を晴らす、これをイラクが証明しなさい、証明責任をイラクに最後に与えるといったこの決議にも、イラクは誠実にこたえてこなかった。そういう状況から、私は、イラクに大量破壊兵器が今でもあると思っております。
菅さんは、ないと断定できるのかどうか。そして、これほどアメリカを支持したこと、イギリスを支持したことを非難しておりますけれども、最も重要な同盟国であるアメリカを、野党第一党の党首が、これから私にかわって次の選挙で政権をとろうとしているんでしょう、アメリカとの同盟関係をどう考えているのか。
しかも、ブッシュ政権を危険な政権だと断定している。フセイン政権が危険な政権だと断定するならわかる。それを、ブッシュ政権は危険な政権だと断定していながら、これから日米友好をどうやっていこうとしているのですか。(発言する者あり)
○会長(瓦力君) 静粛に願います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私はそれを聞きたい。きょうは党首討論ですから。まさに基本問題ですよ。
○菅直人君 今の総理の答弁は、さきの予算委員会と全く同じです。つまり、私が申し上げたのは、総理自身が断定をしたことが、疑惑であるということ以上の根拠がなくて断定したことが、誇張ではないのか、いいですか、誇張ではないのかと言ったんです。ブレア首相は、そのことによって、大変今苦境に陥っております。
もちろん、私たち野党のこの議論の詰めが甘いのか、総理の逃げがうまいのか、あるいは日本のメディアが弱いのか。つまりは総理大臣は、一つとして総理大臣としての答弁をしていない。もし国民の皆さん一人一人に、あなたは大量破壊兵器がないと証明できますかと言ったら、ないものの証明はできないというのがこれは倫理学の前提でありまして、私が申し上げているのは、あるとかないとか言っているのではなくて、疑惑という段階で、それを総理という立場で存在すると断定したところに最も大きな問題があるということを申し上げているので、このことを答えられない総理に対して、一方的な質問に私から答える必要は全くありません。総理大臣が総理大臣としての答えをしていないわけですから。(発言する者あり)
○会長(瓦力君) 静粛に願います。
○菅直人君 そこで、次のことに関連をしますから、よく聞いてください。総理大臣がやじを飛ばすのも結構ですが、次のことをちゃんと聞いてください。
ここに、元防衛庁教育訓練局長、現在の新潟県加茂市の市長さんである小池さんが、全国会議員に対して要望書を出されています。総理はこれを読まれたんでしょうか。
少し読んでみますと、「イラク全土は、常にロケット弾攻撃、自爆テロ、仕掛爆弾攻撃等の危険が存在する地域であり、戦闘行為が行われている地域であります。このことは、米国による戦闘終結宣言によって左右されるものではありません。」
「二 「戦闘行為」を「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」と定義し、一に掲げる攻撃が」、ロケット弾等の攻撃が「「戦闘行為」に当たらないとするイラク特措法の考え方は詭弁であり、強弁であります。」
そして、一つ飛ばしますけれども、四番目には、「このような地域へ自衛隊を派遣することは、明確な海外派兵であり、明らかに憲法九条に違反する行為であります。イラク特措法が定めるような海外派兵さえも、憲法九条の下で許されるとするならば、憲法九条の下でできないことは、ほとんど何もないということになります。」これは私が言っているんじゃありません、元の防衛庁の局長が言っているんです。
そして自衛隊の教育の責任者でしたから、「自衛隊の本務は、祖国日本の防衛であります。自衛隊員は、我が国の領土が侵略された場合には、命をかけて国を守る決意で入隊し、訓練に励んでいる人達でありますが、イラクで命を危険にさらすことを決意して入隊して来た人達では」ありません。「「国から給料を貰っているのだから、イラクへでもどこへでも行って命を落とせ」とか、「事に臨んでは危険をかえりみない職業だから、どこへでも行って命を落とせ」ということにはならないのであります。」これは、自衛隊員を募集して教育してきた人たち、そのある時期の責任者の発言であります。
自衛隊というのは、なぜ自衛隊という名前がついているのか。まさに日本の憲法からして、まず第一に、日本が万一他国なり何らかのグループから攻められたときに守る、専守防衛の任務が第一であります。もともとはそれに限定されていたわけですけれども、それに加えて、国連によるPKO活動は国際貢献としてやろう、これが第二番目に入りました。そして第三番目には、九・一一のテロのときに、アメリカがいわば攻撃された、日本人もあわせて死んだわけですけれども、それに対する反撃に対しては、テロを撲滅するという大義名分のもとに協力しようではないかと、インド洋に艦船を派遣したわけであります。つまり、アメリカの自衛のための攻撃に対して、あるいはテロ撲滅に対して日本も協力をする、これがテロ特措法でありました。
しかし、今回のイラク攻撃は、アメリカが攻撃を受けたわけではありません。アメリカの自衛戦争ではありません。イラクがまさに悪の枢軸の一角だ、大量破壊兵器があって危ない国だと、先制攻撃を行う。国連のいわゆる湾岸戦争のときのような武力行使容認決議もないまま、アメリカを中心とした国が強引に戦争に踏み切って、そして、その占領状態の中で今日のイラクがあって、C130が地対空ミサイルでねらわれている、そういう中に自衛隊を派遣する。
この行為が、今の日本にとって、日本国民にとって、そして自衛隊の皆さんにとって、本当に納得できることなのか、本当に憲法の上からも認められることなのか。私は、とてもそうではない、このように考えますが、総理、この要請書に対していかがお考えですか。お答えください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) イラクと米英との開戦の前に、私ははっきり言明しております。今回の米英の行動を日本としては支持するが、戦闘行為、武力行使は一切しない。しかし、戦後の復興に対しては、日本政府としてできるだけのことをする。
そして、主要な戦闘が終わり、イラクとの戦争に反対してきた国々も、国連安保理におきまして、イラク復興支援のための決議を全会一致で採択いたしました。そういう状況の中で、日本としても今回、イラク復興支援のために、自衛隊も非戦闘地域に限って派遣することができるための法案を今提出しているわけであります。
これから日本としては、政府職員も民間職員も、そして場合によっては、自衛隊も非戦闘地域に限って必要な支援をこの法案が成立すれば出せる状況になる。そういう際には、法案の趣旨にのっとって、非戦闘地域に限って、自衛隊派遣が望ましいかどうか、よく状況を見きわめて時期とか規模については考えていきたいと思っております。
もとより、自衛隊ですから、我が国を守るために存在する、我が国を防衛する、これが主要な任務であることは言うまでもございません。しかし同時に、今や国際社会の中で、日本として国力にふさわしい役割を果たす、また果たさなければならないということについては、大方の合意を得ていると思います。
そこで、PKO活動とかいろいろな場において、既に自衛隊が海外派遣されております。しかし、これは、今菅さんが言われたような海外派兵という、武力行使を伴いかねない、そういう活動は自衛隊はしないんです。
今回も、イラク復興支援のために、今、確かに各地区において、散発的ではありますが戦闘状況に陥っている地域があると思います。この法案が成立した場合におきましても、よく状況を見きわめて、非戦闘地域に限って自衛隊を派遣するわけでありますので、今回の問題も、法律も、憲法に違反する問題ではございません。
憲法の前文にある、日本としても国際社会の中でしかるべき活躍をしなきゃならない。と同時に、憲法九条の……(発言する者あり)憲法九条の条項というものをよく整合性を考えながら考えなきゃいかぬ。しかるべき地位というのを、今、やじって海江田さんが言っていますけれども、国際社会の中で名誉ある地位を占めたいと思う、そして、専制、隷従、これを除去するために、日本は自国のことのみに専念して他国を無視してはならないということもはっきりとうたっているわけであります。
そういうことで、日本としても、戦闘行為には参加しないが、イラク人のイラク人によるイラク人のための国づくりに国力にふさわしい活躍なり活動をしていかなきゃならない。そういう意味において、私は、政府職員や民間人のみならず、自衛隊の諸君にも活躍できる分野が多々あると思います。今後、状況をよく見て、自衛隊の諸君にもしかるべき任務を果たしていただきたいと期待しております。
○菅直人君 今のイラクに非戦闘地域というのがあるんですか、一体。これまでの答弁では、国際的な紛争という定義のもとで、組織的な攻撃とは言えない、いわば野盗なんという言葉を総理が使われたことがありますが、そういう散発的な行動はそういう意味でこの法律が言う国際的な紛争としての戦闘行為には当たらないという、これも変な理屈ですが、それで逃げておりました。
しかし、今や、現地の米軍司令官そのものが、組織的なゲリラ戦が行われているということを言っております。どこが非戦闘地域なんですか。逆なんじゃないですか、今総理が言われたことは。
これは防衛庁長官の議事録を読んでもそうですが、非戦闘地域でなければ出してしまうと憲法に反するから、非戦闘地域というものをどうしてもつくらなければいけない。フィクションじゃないですか。現実に、イラクの市内、あるいは北の方、南の方、ほとんどの地域で何らかの普通の言葉で言う戦闘行為が行われているのは、ニュースを見れば、新聞を見れば、テレビを見ればわかるじゃないですか。それを、非戦闘地域というものを観念の中でつくって、現実はそういうものに相当するものはないというのが、米軍の司令官の言葉からも明らかじゃないですか。
結局は、この法律はつくったとしても、非戦闘地域が見つからないから自衛隊は出せないということになるのかもしれませんけれども、少なくとも、非戦闘地域が例えばどこなのか、一カ所でも言えるんであったら、総理、言ってみてください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは、私はイラク国内のことを、よく地図がわかって、地名とかそういうものをよく把握しているわけではございません。今も、民間人も政府職員も、イラク国内で活動しているグループはたくさんあるわけですから、今でも非戦闘地域は存在していると思っています。
しかし、菅さん言われたように、日本政府が非戦闘地域をつくるなんという、そんな考えは毛頭ありません。日本政府が非戦闘地域をつくることなんかできるわけないんですから。
だから、今後この法案が成立すれば、よくイラク国内の情勢を見きわめて、そして非戦闘地域があるかないか、よく状況を調査して、そういう地域に自衛隊の活躍する分野があれば自衛隊を派遣することができるという法案なんですから、今後よく状況を見きわめなきゃ、それはわからないことです。
また、どこが非戦闘地域でどこが戦闘地域かと今この私に聞かれたって、わかるわけないじゃないですか。これは国家の基本問題を調査する委員会ですから。それは、政府内の防衛庁長官なりその担当の責任者からよく状況を聞いて、最終的には政府として我々が判断することであります。
はっきりお答えいたしますが、戦闘地域には自衛隊を派遣することはありません。
○菅直人君 まあ、すごい答弁ですね。自衛隊を最終的にその戦地に送ろうという総理が、私が知るわけはないじゃないですかと言って開き直る。
私が言っているのは、イラク全土が戦闘地域ではないですかと言ったんですよ。それに対して、そうでないのなら、例えばこの地域なら大丈夫だというのが一カ所ぐらいは、私だってあるかもしれないと思いますよ。しかし、ついこの間まで、バグダッドの国際空港の中は大丈夫そうだから、そこで水をくんで浄化しようとしていたら、C130がねらわれたために、バグダッド国際空港の中も決して非戦闘地域とは言えないのではないか。
こういうことになりますと、法案を出しておいて、これから調査をするからと言うのであれば、ちゃんと調査をした上で、こういうところなら大丈夫そうだから法律を決めてくれというのが本来のあり方で、私は、総理が、自分が言えっこないことを自慢する、この間の三十兆の問題でも、自分ができなかったことを自慢する、総理の得意は、自分で自分を褒めることが大変得意な総理であります。そして、何かできないときはすべて抵抗勢力の責任にしてみたり、野党の責任にしてみたりする、責任を転嫁することが大変うまい総理大臣であります。しかし、総理自身が、自分の責任でここはこういう判断でやるんだといって実行したことは、残念ながら何一つありません。
そういった意味で、このような無責任な総理大臣に我が国の内閣を任せることはできない、これが私は国民の過半数の考えだと思っております。
どうか、このイラクの問題や、さらには経済有事に対応できない小泉内閣に対して、私たちはこの国会中にきちっと不信任案を出しますから、総理が受けて立つ覚悟があるなら、勇気があるなら、ちゃんと解散をして国民に信を問うように最後に申し上げて、私の質問を終わります。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、率直にお答えしているんですよ、知らないものは知らないと。論語にありますよ、論語。「知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。」知ったかぶりしちゃいけない。率直に答えております。
○会長(瓦力君) 時間が参りましたので、菅君の発言は終了いたしました。
なお、申し上げますが、傍聴中の議員諸君には静粛に御案内いただきますことを重ねてお願いいたします。
次に、志位和夫君。
○志位和夫君 政府・与党は、あすにもイラク派兵法案の委員会採決の強行の構えでありますが、全土でゲリラ戦争という状況にあるイラクへの自衛隊派兵は、憲法違反の武力行使となることは余りにも明瞭であります。
加えて、私も党首討論で二度取り上げましたが、総理がイラク戦争支持の最大の理由とした大量破壊兵器はいまだ発見されず、米英による軍事占領への支援が不法かつ不当なものであることもいよいよ明瞭です。
我が党は、この法案に対する反対を貫き、野党の皆さんとも協力して、廃案に追い込むために最後まで力を尽くすということをまず冒頭述べておきます。
きょうの党首討論では、二十一世紀の日本の未来にかかわる重大問題の一つとして、私は、若者の雇用問題について取り上げたいと思います。
今、雇用をめぐる状況は戦後最悪となっております。一家の家計を支えている中高年の失業問題はもちろん深刻でありますが、若者の雇用問題は、私は、日本社会の存続自体を危うくさせる重大な内容をはらんでいると思います。
大学卒業者の就職率を見ますと、五七%まで下がっています。大卒就職率というのは、あの七〇年代の石油ショックの際にも七割台を割ったことはなかった。まさに、かつて経験したことのない異常事態です。就職活動に疲れ切った若者から、自分が社会にとって不要だ、人間として否定されたつらい気持ちになる、こういう声が寄せられていることに大変胸が痛む思いがいたします。
私がその中で注目したのが、内閣府がこの五月に、平成十五年版国民生活白書「デフレと生活―若年フリーターの現在」というレポートを出していたことです。これは、若者の雇用問題に政府として初めて、分析としては的確な分析を加えたものとして注目しておりました。
そして、この白書では、まず、フリーターと呼ばれる、パート、アルバイト、派遣労働など不安定な仕事を余儀なくされている若者が、一九九五年の二百四十八万人から二〇〇一年には四百十七万人へと急激に増加していることを重視しています。
そして、この白書では、なぜフリーターが急増したのか、原因は一体若者側にあるのか企業側にあるのか、この問題について、フリーターのうち、正社員になりたいという希望を持っている人の割合が七割を超えているということも示しながら、こう結論づけています。九〇年代後半以降の大幅なフリーターの増加要因としては、どちらかといえば企業側の要因が大きいと思われる、これは注目すべき分析です。
さらに、この白書では、大企業ほど正社員の新規採用を抑え、パート、アルバイト、派遣に置きかえる動きが顕著になっているということも指摘しています。この点で、これは白書から作成したグラフであります。一九九五年と二〇〇一年とを比較しまして、若者の正社員数の増減です。青い棒は中小企業でありますが、この不況の中でも三万人ふやしています。赤い棒は大企業です。百八万人減らしている。今日の若者の雇用問題を考える際、異常な就職難とかフリーターの急増とか、この事態をつくった主要な原因は企業側にある、特に大企業の責任は重いんじゃないでしょうか。
そこで、総理に伺いたい。
政府として、大企業に対して、若者の雇用をふやすよう本腰を入れた働きかけを今やるべきじゃないですか。いかがでしょうか。端的にお答えください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) このフリーターの増加、これに対してやはり政府としても真剣に取り組まなきゃならないということで、今志位さんが取り上げたように、共産党の皆さんから評価されるような白書を出したわけでございますが、確かに、これは看過できない大事な今後の問題だと思います。
大企業にもっと若者を採用せよということでございますが、これは、本質的に実体経済をよくしていくことによって雇用をふやす、これが大事だと思いますが、今なぜこういうふうにフリーターが多くなったのか。職業訓練あるいは教育、いろいろな要因が考えられます。御本人の意識も、かつての若者の意識と今の若者の意識も違います。また、終身雇用から派遣社員という、それぞれの分野で活躍している会社も出てまいりました。企業もリストラに励んで、いかに人件費を節約しながら業績を上げるかというような会社側の理由もあると思います。一様ではないと思います。
そういう点を総合的に取り上げて、仕事の重要さ、就業することの価値といいますか、勤労意欲を持つことがいかに本人にとって大事か、こういう面からも今後取り上げていく必要があるんじゃないかということで、私は、学校教育も、高校、大学だけじゃなくて、むしろ小中学校から仕事の重要性を理解させるような対策も必要じゃないか。
今、大企業に対しましても、私どもはできるだけ……
○会長(瓦力君) 総理、簡潔に願います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 雇用について、政府と使用者側と労働界一体で取り組むような対策を厚労大臣中心にとっているわけでありますので、こういう御指摘の点も踏まえて、今後、雇用対策に一層力を入れていきたいと思っております。
○志位和夫君 私が聞いたのは、大企業に対して雇用をふやすための働きかけをやるべきだというふうに聞いたんですが、そのことについてのお答えがなかったのは本当に問題だと思います。
政府の分析は正しいんですけれども、処方せんはだめなんですよ。ここに問題がある。この問題に今本腰を入れないとどういうことになるか、それもこの白書には出ておりますよ。フリーターの急増がどういう事態を招くか。それについて、フリーター自身が不利益をこうむったり不安を感じたりする、日本経済の成長を阻害する、さらには、社会を不安定化させる、少子化を深刻化させる。まさに日本経済の再生産といいますか、あるいは日本社会の再生産、存続、これを不可能にするような事態になっている。ですから、私は、ここに大企業の社会的責任が必要だと言った。
例えば、この問題を解決しようと思ったら、この解決の方向は明瞭です。先ほど私、大企業がうんと正社員を減らしているということを言いました。しかし、労働時間はふやしているんですよ。長時間労働、すごいです。正社員の五人に一人が……
○会長(瓦力君) 志位君、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○志位和夫君 週労働時間六十時間、年間三千時間。この長時間労働にメスを入れる、そしてサービス残業を一掃する。サービス残業を一掃しただけで、第一生命経済研究所によりますと……
○会長(瓦力君) 志位君、発言は簡潔に願います。
○志位和夫君 八十四万人の雇用がふやせますから、こういうことを本気になってやるべきだ。もう一回お答えください。
○会長(瓦力君) これにて志位君の発言は終了いたしましたが、総理、発言ございますか、よろしゅうございますか。どうぞ。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 労働時間の問題につきましても、政府としては、各企業に対して、できるだけ政府の指導に沿うように対策を立てるように、常に督促をしております。
○志位和夫君 若者に夢と希望が持てるような政治をつくることこそ責任だということを指摘して、終わります。
○会長(瓦力君) 次に、土井たか子君。
○土井たか子君 討論を始めます前に、このたびの九州地方を襲った土砂災害で被害に遭われた皆様に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。
このたび、社民党の辻元清美前衆議院議員、私の秘書を務めておりました五島昌子元秘書、ほか二名が逮捕されましたことに対しまして、この場をかりて、皆様に一言申し上げさせていただきます。
社民党は、従来より、政治家とお金の問題に対しては、ひときわ厳しく対処してまいりました。この事件はあってはならない、許されないことであって、私どもにとっては悔やんでも悔やみ切れない痛恨のきわみです。改めて国民の皆様に心からおわびをし、申しわけない気持ちでいっぱいです。
私は、この事件が起こった一年四カ月前に、議員をやめる直前の辻元さんと、泣きながら、そして悩み、苦しみ、どうすれば皆さんの不信に報いることができるか、二人で話し合いました。そして、辻元さんは、過ちを反省し、議員を辞職し、秘書給与も全額返納いたしました。辻元さんは、この一年四カ月、心休まる日はなかった。その心情を思いますと、捜査にも応じてきた辻元さんたちのこの逮捕が本当に必要だったのかどうか、釈然といたしません。
改めて、私自身の責任も重々承知しております。こうした政治と金の問題に対して、社民党は真摯に向き合うとともに、二度とこのような事件を起こさないために、みずからを厳しく戒め、姿勢を正し、社民党に対する信頼回復に全力で取り組んでいきたいと決意をいたしているところでございます。
さて、現在審議中のイラク特措法について申し上げたいと思います。
小泉総理は、イラクに本当に自衛隊を送り出すおつもりですか。国会で議論をしてきたこの法案の中心的問題は、自衛隊を戦闘に巻き込ませてはならないということでした。先ほど菅代表も取り上げておられましたけれども、新潟の加茂市のただいまは市長さんであって、かつては防衛庁の教育訓練局長をしておられた小池さんは、イラクは小規模不正規軍によるゲリラ戦場、自衛隊を送れば明確な海外派兵になります、憲法第九条違反ですと非常に明確に述べておられます。
そして、つい最近の十六日に、アメリカの中央軍のアビザイド新司令官は、米軍はバース党の残党とイラク全土で戦っている、地域的に組織化されておって、間違いなく戦争だというふうに述べられているわけですね。
イラクは紛れもなく全土が戦争地域だと考えますけれども、総理のこの問題に対しての御認識を伺いたいというのが一つ。
加えて、もしそうだとすると、非戦闘地域に派遣というイラク特措法の根拠というのは基本から崩れます。この点について、二つ目に総理のお考えを伺いたいと思います。
要するに、非戦闘地域、危ないところには行かせないと言われながら、最近の審議の過程では、自衛隊が殺されるかもしれない、相手を殺したりする場合もないとは言えないというふうなことも総理は御答弁の中で言われたりいたしております。とんでもないことだと思います。
○会長(瓦力君) 土井君に申し上げますが、持ち時間が来ておりますので、簡潔に願います。
○土井たか子君 イラク特措法は廃案以外にないと私は考えますが、総理の、以上私が申し上げた二点についてのお答えをお願い申し上げて、終わります。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) かねがね申しておりますように、自衛隊を戦闘地域には派遣しないし、戦闘行為には参加させません。復興支援のために自衛隊でできる分野に派遣する、これが日本政府の考え方でありまして、今回のイラク支援法案もその趣旨にのっとったものであります。
派遣する場合には、状況を見きわめて、政府職員ができる分野、民間人ができる分野、自衛隊員が活躍できる分野、よく状況を見ながら判断したいと思います。
○会長(瓦力君) これにて土井君の発言は終了いたしました。
以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十九分散会
2003/07/23 |