2000/11/09 衆議院・青少年問題に関する特別委員会

戻る目次ホーム


原陽子(社民党)質問

青少年問題に関する件(有害環境について)

○青山委員長 次に、原陽子さん。

○原委員 社会民主党・市民連合の原陽子です。
 質問が幾つか重なるところもあるかとは思いますが、青少年とか、あと私たち若い世代にもわかりやすいように答弁をよろしくお願いいたします。

 まず、先日、少年法の改正が衆議院で可決をされました。今は参議院での審議が始まっています。

 ここのところ、十代の少年による事件が続いたのは事実です。しかし、ここ数年の殺人事件の処理数と検挙数についての統計を見れば、これらより多い年は過去に幾つかあります。

 これまでの少年犯罪というのは、例えば生活が苦しいとか家庭が貧しい、または両親がそろっていないといった、ある意味ではわかりやすい理由を挙げて理解されていました。しかし、最近の少年事件については、進学校に通い、成績もよいといった、括弧つきの一見いい子だと私は思うのです。いわゆる親とか学校に都合のいい子の犯罪であるなど、簡単に動機づけをすることができないために、なぜ犯罪を犯したのかがわかりにくく、それゆえ大人たちが不安になっていると私は思います。

 しかし、政府は、若者たちがどのように変化をしているのか、または変化をしていないのかについて、これら大人への不安の解答として、納得できる理由を示せていないと私は思います。

 私は、少年法を改正するのではなく、現行法における取り組みをさらに丁寧にしていくことの方が、よりよい効果があると考えています。もしも今回少年法が改正されたとしたら、何がどう変わるというのでしょうか。結局、私は、子供たちの心を理解できず、ゆえに彼らの行動におののき、彼らにそのような行動をさせてしまった背景について理解をする努力を怠った大人たちが、自分たちだけ何かをしたと胸をなでおろすことができるだけで、大人の自己満足に終わってしまうだけのような気がします。私は、今こそ、私たち大人が冷静になって、現状を分析して、そしてその手だてを判断していかなくてはならないと考えます。

 以上のことを青少年問題に深くかかわっている皆様に強く訴えさせていただいて、質問に入らせていただきます。

 まず、法務省の方にお聞きをいたします。
 平成十年に、東京少年鑑別所において収監されている少年に対する意識調査の中で……(発言する者あり)済みません、ちょっと黙って聞いてください。有害環境についても調査されているようですが、非行を犯した少年と有害環境の関連について調査を行っていらっしゃいますか、お答えをお願いします。

○渡邉政府参考人 お答えいたします。
 いわゆる有害環境と青少年の関係あるいは非行との関係につきましては、朝から総務庁の方からも御紹介がありますように、総務庁において多数の調査を実施しておられます。
 青少年を取り巻く有害環境が非行の一因となる場合があることは否定できませんけれども、少年が非行に至る背景には多くの要因が重なっております。

 法務省といたしまして、少年の犯罪や非行の要因として、有害環境のみを取り上げて調査をしたことはございませんが、少年非行の要因としての犯行の動機とか原因、その中には環境との関係も含みますが、あるいは犯行の計画性、共犯関係、あるいは被害者との関係、あるいは被害の状況、程度などについては適宜調査を行い、犯罪白書あるいは今おっしゃった少年鑑別所の公刊物等において公表もしているところでございます。

○原委員 それでは、次に総務庁にお聞きをいたします。
 これまで、青少年と有害環境との関連について、その状況を分析するために、どのような調査を行ってこられましたか。それぞれの調査が有害環境として何を対象にしているかもお答えください。

 また、有害環境が少年の非行に影響しているという判断をするためには、できれば同じ質問項目について、非行を行った少年と非行を行わなかった少年とで比較をしなくてはその影響を確認することはできないと思いますが、このような比較が可能になるような有害環境についての調査は行われていますか。

○川口政府参考人 私ども総務庁としましては、平成四年度から有害環境に関する調査を行ってきております。私ども、その時々におきまして、これは問題だというふうに思っている項目を中心にして行ってまいりました。

 平成四年度には、青少年とポルノコミックを中心とする社会環境に関する調査、こういうのを行いました。それから、平成五年度には、青少年とアダルトビデオ等の映像メディアに関する調査、平成六年度には、青少年と自動販売機等に関する調査、平成七年度におきましては、青少年と電話などに関する調査、平成九年度におきましては、青少年とパソコンなどに関する調査、平成十年度には、青少年とテレビ、ゲーム等に係る暴力性に関する調査、こういったものを実施してきております。

 それで、先ほど、非行を犯した少年とそうでない少年ということでございますけれども、これらの調査におきましては一般の少年を扱っていますので、特に刑法事件を起こしてという少年は区別しておりません。

 この結果でございますけれども、一般的に言いますと、ポルノコミックとか、あるいは先ほども申し上げましたけれども、暴力的な傾向のあるテレビとかゲーム、そういったものをよく見る子供というのは非行をしている子供が多い。これは本人の申告でございますからどの程度の信憑性があるかわかりませんけれども、そういったような結果がございます。

 そして、私ども、こういった、その時々におきます青少年にとって有害と思われることの調査をやっております。今後ともやっていきたいというふうに思っております。

○原委員 今、総務庁の調査の中で有害環境の対象となったものを挙げていただきましたが、有害環境という言葉は非常にあいまいで、その定義が難しいように感じます。

 また、これも総務庁にお聞きをしたいのですが、総務庁では、この有害環境という言葉をどのように定義なさっていらっしゃいますか。

○川口政府参考人 私ども、有害環境というものにつきましては、発達途上にある青少年にいろいろな意味で悪い影響、有害な影響を与える可能性のある社会環境、例えば、いろいろな媒体でありますとか物であるとか場所であるとか、そういった、発達途上にある青少年に有害な影響を与える可能性のある社会環境というものを考えております。

 具体的には、性的感情を著しく刺激したり、あるいは粗暴だとか、あるいは残虐性を助長するおそれのある出版物でありますとか、ビデオ、パソコンソフト、映画、広告物、放送番組、あるいは享楽的な色彩の強いスナック、ディスコ、深夜喫茶店、ゲームセンター、カラオケボックス、こういったものを私どもは言っております。

○原委員 まだまだその定義についてはあいまいだなというふうに私は感じていまして、今の定義の中で聞きますと、何か世の中すべてのものが有害環境と言ってもおかしくないんじゃないかなというような印象を私は受けます。

 総務庁さんの方ですよね、この第三回の非行原因に関する総合的研究調査報告書の中で、私もちょっと読ませてもらったのですが、横浜少年鑑別所首席専門官の近藤氏が、「有害環境とは、青少年の非行化を助長し、非行の誘引となるなど、青少年の健全育成を害するおそれのある社会環境をいうが、それが具体的にどのような場所であるかはその時代の一般常識による判断に任されている。」と述べられておられます。やはり、この定義も極めてあいまいであります。この問題は、表現の自由と表裏一体の問題であり、慎重な対応が必要と考えます。

 また、このアンケート調査を私は読ませてもらったんですけれども、非常によくまとまっていらっしゃると思います。

 アンケート調査が行われていても、それだけでは有害環境が非行やその他の悪い影響を与えていると断定はできないと思います。有害環境について、さまざまな手法や観点から、このような立派な調査も行われていらっしゃいますが、さらに慎重な調査及び分析が十分になされる必要があると思いますので、今後ともこういった調査を進めていっていただきたいと考えます。

 私が子供であった時代というのもそんなに遠くなく、本当にちょっと前だったんですけれども、私が子供だったときと今の子供たち、子供自体にはさほど変化はない、子供はやはり子供だというふうに私は感じます。しかし、それを取り巻く環境には確かに大きな変化があるということは否めません。そして、環境というのはどんどん変わっていくものなので、そのような状況の中で、子供自身が、まだまだ子供で、子供であるにもかかわらず、自分で判断する能力を身につけ、そしてみずから身を守らざるを得ないのかもしれません。
 そこで、私は文部省にお聞きをしたいと思います。
 そのように、子供たちが自分の人生を守るために、例えば性についてとか、お酒、たばこ、薬物について、またはメディアリテラシーといったことについて、学校でどのような教育を行っていますか。これはできるだけ具体的にお願いをいたします。

 そして、もし今おわかりであれば、一人の子供が十八歳になるまでにどのような教育を受けているのか、また、どれぐらいの時間そういった教育を受けているのかということも含めて、お答えをお願いいたします。

○遠藤政府参考人 御指摘のように、近年、性に関する情報や産業などのはんらん、青少年における覚せい剤等の薬物乱用の増加など、児童生徒を取り巻く社会環境は大きく変化してきておりまして、学校教育におきましては、児童生徒がこれらの情報等に惑わされずに、みずからの判断で自分の健康を適切に管理できるよう指導することが極めて重要だ、こう考えております。

 このため、学校におきましては、児童生徒の発達段階に応じまして、性教育、薬物乱用あるいは喫煙、飲酒防止教育などにつきまして、体育あるいは保健体育、特別活動等を中心に、学校教育全体を通じて指導をすることとしております。

 具体的な指導の内容でございますが、新学習指導要領におきましては、性教育につきましては、小学校では、道徳という時間で、生命を大切にする心を持つこと、体育におきまして、思春期になると次第に大人の体に近づき体つきが変わるなど、体の発育、発達について理解すること、中学校、高等学校では、保健体育におきまして、異性の尊重、性に関する情報への適切な対処や行動の選択などが必要であることなどにつきまして指導するということになっております。

 また、薬物乱用、喫煙、飲酒の防止、こういったような教育についてでございますが、具体的にということでございますので、ちょっと長くなりますが、お許しいただきたいと思います。

 小学校では、体育におきまして、薬物乱用、喫煙、飲酒などの行為が心身に影響を与え健康を損なう原因になること、中学校、高等学校では、保健体育におきまして、飲酒、喫煙に関する適切な意思決定や行動選択が必要なこと、薬物乱用は心身の健康などに深刻な影響を与えることから行ってはならないことなどにつきまして指導をするということになってございます。

 これらのことを十八歳までにどのぐらいの時間で教えているのか、こういうお話でございますが、例えば保健ということで枠取りをしています時間は、小中高等学校で約百四十時間強ということでございますので、この中で今言ったような内容が教えられる。このほか、特別活動あるいは道徳といったような時間がプラスされる、こういうふうに理解しております。

 今のは授業だけの話でございますが、例えば薬物乱用でいいますと、中学校あるいは高校では、薬物問題に関する専門家であります警察官あるいは麻薬取り締まりのOB等の方に来ていただきまして、薬物乱用防止教室を開催していただいておるということでございます。全学校で開催してくれとお願いをしておりますが、現状では、高校では七五%、中学校では六三%といったような状況になってございます。
 以上でございます。

○原委員 子供たちを教育する場というのは、学校というところは、すごく大切なところになってくると思いますので、今の数値が一〇〇%になり、そしてもっと徹底した、そういった性教育とか、薬物、たばこ、お酒等に関する教育も行っていってくださいますよう、ぜひよろしくお願いをいたします。

 もう時間がないので、繰り返しになる部分もありますが、先ほどお話をしたように、今、私たち大人が、冷静になって、子供を取り巻く環境というのをしっかりと見ていかなくてはならないと思います。十七歳が、十七歳がというような報道がたくさんある中で、それに振り回されてしまわないで、やはり、大人が冷静になって正しい判断をしていくべきだと私は考えます。

 そして、有害環境の定義というのもまだまだあいまいなところがありますので、そこに関しても慎重な対応が必要と考えます。

 今、本当にたくさんいろいろな情報が私たちの周りには転がっているというか、目にしたくなくても自然に目に入ってきてしまうような、先ほどのピンクチラシとか、いろいろな情報があります。

 水島さんがアンアンの話をなさったのですが、そのアンアンの中にツーショットダイヤルのチラシが入っている。それを見て、えっと驚く世代と、私たち世代なんかは、別にそれはそのページで何とも感じない。そういった環境で育ってきてしまったというか、私たちにとってはそれぐらいのイメージしかもうないのです。

 今こそ本当に教育を徹底して、まずは子供たちが賢くならなくちゃいけない、そして、これから母親になっていく私たち世代も、子供たちに正しい情報を伝えられるように賢くなっていかなくちゃならないというふうに思います。

 これは余談になるのですけれども、もちろん子供たちも賢くなってもらいたいということと同時に、今これから、私たち世代が、母親になるということ、また親になるということはどういうことだというのをしっかりと考えていかなくてはならないと思います。子供にとって一番の教育環境というのはやはり家庭だというふうに私は思うので、そういった意味で、子供たちがお手本にできるような大人にならなくちゃいけないというふうに思います。親になる私たち世代が、これから一生懸命にしっかりと生きていく。その中から、子供たちに正しいものを伝えていって、そして子供たちが本当に健やかに育っていけるように、私たち自身も努力しながら、子供たちを取り巻く状況、そして今の子供たちを、どういうふうに変わったのかということをしっかりと分析していくことが今問われていると私は考えています。

 そういうことで、最後は私の意見を述べさせてもらったのですけれども、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。


2000/11/09

戻る目次ホーム