2000/11/09 衆議院・青少年問題に関する特別委員会 |
石井郁子(共産党)質問
青少年問題に関する件(有害環境について)
○青山委員長 次に、石井郁子さん。
○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
日本の子供たちが、性や暴力シーンという、むき出しの、本当に悪質な描写にさらされている、そして無防備な状態にあるという点では、私もそうですが、多くの皆さんが胸を痛めておられるわけであります。
私ども日本共産党としましても、今、子供と教育をめぐる危機的な状況が進行していることの一つに、文化の問題、子供たちを有害な情報から守るという点で、文化の面での社会としての自主的なルールづくりというのが求められているんじゃないかというふうに考えてきたところであります。
きょう各省庁から御説明いただきまして、それぞれ省庁としても、そういう認識のもとにいろいろな姿勢を示され、また一定の取り組みをされているということを伺いましたが、同時に、今の事態というのは本当に憂慮すべき事態だということが強調されたように思うんですね。その点でも、私はきょう、この問題での対応というか取り組みというのが急がれるということを、認識を新たにいたしました。
それで、諸外国でも、この性や暴力の問題でいいますと、やはり暴力事件というのをきっかけにして、社会的な世論が起こる、行政も動く、いろいろな団体が動くという形の取り組みが始まっているんですよね。相当長期にわたってこの問題の取り組みがあるということなわけであります。
その一つの到達点として、私は、カナダの例が大変興味深いわけであります。
カナダでは、CRTC、カナダ・ラジオ・テレビ・電気通信委員会が、ここは通信・放送行政を担当する独立行政委員会なんですけれども、一九九六年にこういう文書を発表しているわけです。「カナダとテレビ暴力――協力と合意」、その文書では、テレビと暴力に関するアプローチで、放送業界の自主的なコード、まさに自主的な規制という問題でしょうけれども、それと番組評価システムというのが一〇%、Vチップが一〇%の効果で、残りの八〇%は市民の意識の覚せいとメディアリテラシーにあるということであります。それで、この報告書を作成した行政当局が、テレビと暴力の問題を解決する大部分の力というのは、上からの規制ではなくて市民の側にあるというふうに言っているんです。私は、こういうふうな結論を九六年に言えたというのは、八〇年代から始まって九〇年代を通して、各界挙げて議論を進めてきた中での一つの到達点だというふうに思うんです。
カナダの場合、放送業界、研究者、教育者、子供の精神科医、専門家、親、連邦政府、そういう関係者の対話と共同というのが本当にいろいろな形で進められてきたということが言われているわけであります。こういうことを参考にしながら、私たち日本でもいろいろなことをやっていきたいということをまず最初に申し上げておきます。
私は、そうした世論を喚起するという上で、まず調査研究というのが大変重要だというふうに考えるんですね。この点でも、もう既に午前中から審議もございましたし、いろいろ各委員が触れておられますけれども、改めて私も一つ二つ尋ねておきたいというふうに思います。
総務庁の、青少年とテレビ、ゲーム等に係る暴力性に関する調査研究報告書、平成十一年の九月ですが、これをいただいたときに、日本では初めてのものだと聞いて、私も改めて、やはり今始まったばかりかというふうに思ったのです。
これは、先ほど来いろいろ御紹介されていますけれども、テレビの格闘技というのがありますね、あるいはゲームの格闘技、それなどでは、やはり、ゲームセンターで毎日遊んでいる子供が非行とか問題行動に、より走っていくというか、そういう傾向が見られる、こうありますよね。それから、家庭でのテレビゲームでも、四時間以上見ているんですね。大体、四時間からデータをとらなきゃいけないというのも、やはり子供の世界にこういうことが相当入り込んでいるなというふうに私は思うんですけれども、そういう四時間見ている子供のうちの半分が非行、問題行動に走る、遊ばない子供というのは本当に低い数値だということが出ているわけですね。
こうした調査研究は一つの大変大事な点だと思うんですが、アメリカの例で申しますと、アメリカでは、もう一九五〇年代からこうした取り組みがあると言われているわけです。私ども、その紹介の文書を幾つか見ましたけれども、七二年にも一定の調査結果がある。八二年も、国立精神衛生研究所の、「テレビと行動――十年間の科学的進歩と八〇年代に向けての課題」という形で、十年間の追跡調査をされて、報告書がある。九〇年代に入ったら、さらにそれが深められるということです。
先ほど来、相関関係と因果関係ということが言われましたけれども、子供の攻撃的な行動、態度を招く重要な要因とか、あるいは心理状況にそれがどうかかわっているかというところまで入った研究というのは、やはりなかなか進んだものがあるなというふうに思うわけであります。
そこで伺いますけれども、総務庁としてもこういう調査を始められた、今後も進めていくだろうと思うんですが、今後の計画として、どういう内容、あるいはどういう体制でこういう問題に取りかかるのかということについて伺っておきたいと思います。
○川口政府参考人 私どもの有害環境調査は平成四年ぐらいから始めておりますけれども、私どもが考えているいわゆる有害環境と思われるもの、中には、有害環境そのものでなくとも、使い方によっては有害になるというものもありますけれども、そういったことで、これは平成十年に行ったものでございますけれども、今後、有害と思われるようなもの等についても調査をやりたいというふうに思っております。
それから、来年一月六日、中央省庁の再編によりまして総務庁の青少年行政の総合調整部門は内閣府に行くことになりますけれども、この有害調査につきましては、今後警察庁の方で行われることになると思います。
いずれにしても、私ども青少年行政を担当する者としては、こういった有害環境がどういうふうに青少年の非行とかに及ぼすのか、そこは、今後ともしっかりやっていきたいと思っております。
○石井(郁)委員 午前中の御報告を伺っても、各省庁でそれぞれ、調査の方向というか、予算も計上していたりということを少し伺うことができましたけれども、何かやはり省庁別になっていますよね。子供の問題では本当に総合的な取り組みが要りますから、何かやはりそういう体制がとれないのかどうかということを非常に感じたところであります。
それと、私申しましたのは、別に調査がなければ対策がとれないということじゃなくて、もう既に外国で、そういう結果に基づいての一定の行政の対応というか、いろいろな対策がとられているわけですから、これは同時並行なんですよね。午前中でも、外国の例はまだつかんでいないという話がありましたけれども、それはもう、すぐにもつかめる話です。だから、やはり世界的な到達点に立って日本でも進めるということ。ただ、私は、やはり日本の現状があると思うんですよ、ほかの国とも違う、今起こっている。その現状をしっかりつかむ、そういう調査が要るだろうというふうに思うんですね。そういう点で、ぜひこの問題、しっかりやってほしい。
それから、先ほど御紹介しましたカナダの例も、やはり政府と議会のバックアップがあったからこそ大規模な調査ができたということが言われているんですよね。そういう意味での私ども国会の役割も大変大きいというふうにも思いますので、重ねてこの点での要望をしておきたいというふうに思います。
それで、私は、きょうは主にメディアリテラシーについて少し聞いておきたいなというふうに思うんです。
この点も、実はカナダが世界で初めて公教育の場にメディアリテラシーを制度化したと言われているわけで、一九八七年に導入され、既にいろいろな実践を積んでいるわけですね。
それは、カナダのオンタリオ州というところの例なんですけれども、それをちょっと御紹介しながら、これから二十一世紀に向けて日本の学校教育の中でこの分野をどうされるのかなということをちょっと文部省に伺わなきゃいけないなと思っているわけです。
というのは、先ほど郵政省のサイドでは、一定の、教材も開発されるとか放送が始まっているとかということを伺いました。しかし、文部省からはどうもそういう内容は聞こえてきませんので、伺っておきたいわけであります。
そのカナダの例で申しますと、これは国語の授業で、あるアニメ映画を見ながら、勇敢でたくましいプリンスが出る、一方で、助けを求めるプリンセスが出てくる、こういうのを見ながら、これはちょっと一九三〇年代じゃないか、では、あなた方だったらどうするのか、こういう映画にはどんな価値観が反映されているのか、自分が映画をつくるんだったらどんなふうにつくるのかということを議論させる。実際にも何かそういう取り組みをされるんでしょうけれども、そういうことをするんですね。
それから、もう一つ、ちょっとおもしろいのを御紹介するんですけれども、グローバル企業と大衆文化を教える授業の中で、まさにメディアリテラシーとして考えているんですが、子供たちの大好きなスポーツの有名メーカーのバスケットシューズがありますけれども、その原価は五ドル六十セントだ、ところが、市場では十倍の値段で売られる、それは、有名スポーツ選手を莫大な契約金で広告に起用しているんだ、一方で、このシューズの工場で働く途上国の女性労働者には一日一ドルも支払われていないというようなことを事実として出しながら、企業とメディアの結びつきだとか、それからまた大衆文化や消費社会をつくり上げている仕組みなどがここで解説され、子供たちが考える。つまり、ここでは、メディアがどういう役割をしているのかということを考えさせていくというような授業をしているわけですね。
ちょっとそういう一例を御紹介しましたけれども、それで、一体日本では、こういうメディアの問題を学校教育の中ではどう位置づけられていらっしゃるのか、どう進めようとされていらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。
○御手洗政府参考人 お答えいたします。
我が国の学校教育におきましては、メディアリテラシーに関する取り組みにつきまして、単一の教科で系統的に教えるという形はとっておりません。
しかしながら、国語の中では活字メディアを中心とした理解と表現、あるいは社会や公民といった教科ではテレビやラジオなどを含めたより広いメディアについての理解、さらには美術や音楽といった教科の中では映像、音声に関するメディアを扱った表現と、それぞれの教科の中で教科の目標と照らし合わせながら扱うこととしているわけでございます。とりわけ、中学校の技術・家庭科におきましては、コンピューターの基本的な操作とあわせまして、情報化社会におきます日常生活や社会への影響、こういったことを現在教えているところでございます。
新しく平成十四年度から全面的に実施されます学習指導要領におきましては、中学校の情報の分野を全員が必ず必修として実習いたしますとともに、高等学校の普通科におきましても、平成十五年度からは、すべての高校生が必ず情報の教科を学習するということにしているわけでございまして、ここでは、コンピューターを使う基礎的な知識や技能の習得とあわせまして、誤った情報に惑わされることなく、必要な情報を主体的に収集し、判断し、創造し、みずからの情報として発信できる能力ということで、基礎的な技術や理解ということに加えまして、情報社会に参画するための情報モラルの必要性や情報に対する責任、こういった、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度、こういったものを含めまして、体系的に、情報化社会に対応する、情報を主体的に発信できる能力の育成ということを中心にして教育を行おうと考えているところでございます。
○石井(郁)委員 どうも、いろいろと言われて、もう一つ具体的なイメージがわいてこないんですね、残念ながら。それから、情報という言葉はありますけれども、今私が強調しているメディアリテラシー、そういう技能あるいは考え方というのはどうなのかと聞いているところがはっきりしないんですね。
何度も紹介しますが、カナダの場合ですと、教師用の指導手引書というのが作成されていますし、そういう中では、幼稚園から高校生までの全教育課程で学習するというようなことが出されている。
ここで言うメディアリテラシーですけれども、言うまでもないのですけれども、リテラシーというのは読み書き能力のことですから、メディアを通して分析、評価する、コミュニケーションをする基本的な力みたいなもののことなんでしょうけれども、アクセスするということを前提としながらそういうものを身につけることだというふうに思うんです。しかし、文部省に今御説明いただきましたけれども、やはり日本の学校教育の中では、なかなかまだそれがされていないという状況ですね。
それから、中教審答申、これは、それこそこれから二〇〇二年度から実施される学習指導要領のもとになるものですけれども、中教審答申で、このメディアの問題でも、主として親と家庭の責任というのが強調されている、Vチップの導入などが提案されていますけれども、この報告書のどこを探しても、教育の場でメディアにどう接するのかとか、まさにメディアリテラシーという考え方は出ていないんじゃないですか。情報という言葉は出てきます、それはもう今まさに国会でも議論されているようなレベルでのことだと思うんですが、それはありますけれども、やはりリテラシー、読み書き能力ですから、そこのところがどうなのかという問題が、文部省、抜けているんじゃないですかということを言わなくちゃいけません。
今度の学習指導要領というのは、二〇〇二年から始まって、今までどおりでいけばそれこそ十年間使われる。今一部には、学習指導要領十年は長過ぎる、もうどんどん変えるべきだという御意見も出ておりますけれども、やはり二十一世紀ということを考えたときに、本当に、これからメディア社会だという中では、文部省はもっと真剣にこの問題に取り組むという必要があるんじゃないでしょうか。
○御手洗政府参考人 メディアリテラシーをどのように理解するかということでございますが、例えば郵政省の研究会の報告書を見ましても、メディアを主体的に読み解く能力、あるいはメディアにアクセスし活用する能力、メディアを通じてコミュニケーションを創造する能力というような形で挙げられているわけでございます。
私ども、情報教育の目標としての情報活用能力ということで挙げておりますのは、例えば情報活用の実践力ということで、情報手段を目的や課題に応じて適切に活用することを含めて、必要な情報を主体的に収集、判断、表現、処理、創造し、受け手の状況などを踏まえて発信、伝達できる能力、あるいは、社会に参画する態度と先ほど申し上げましたけれども、社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し、情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え、望ましい情報社会の創造に参画する態度ということでございます。
メディアリテラシー、これは一口で翻訳するというのは大変難しゅうございますけれども、基本的には、情報に対する主体的な判断、そして主体的な発信能力、こういった考え方をとっているわけでございますので、御指摘の、いわゆるメディアリテラシーに係る子供たちの能力の育成というものも、この情報教育の広がりの中で、私ども、それなりに十分身につけさせていくことができるものと考えているわけでございます。
○石井(郁)委員 先ほど郵政省の方は教材の開発も考えていらっしゃるということでしたから、かなり実践的ですね。文部省もどうですか、何かそういう教材開発的な、参考になるような、そういうものには取りかかりますか。
○御手洗政府参考人 例えば技術・家庭の教科書、あるいは新しく始まる情報の教科書では、当然、今申し上げたような目標に従いまして必要な教材が取り入れられるものと考えておりますし、現在も技術・家庭科の教科書等では、それなりの配慮をしながらこういった問題に十分取り組んでいるところでございます。
また、各省庁あるいは団体等でさまざまなすぐれた教材が作成され、普及されるということになりますと、それはそれぞれ各学校現場の判断におきまして、適切な教材を教師が主体的、積極的に活用していくであろうと思いますので、私どもも、関係省庁の情報を十分受けとめながら、必要な情報提供等を現場にしてまいりたいと考えております。
○石井(郁)委員 時間が参りまして、郵政省にちょっと一点お伺いしておきたいというふうに思います。
今、私は、むき出しの性や暴力シーンに子供たちをさらさないようにということで、そういう社会的な規律、自主的なルールというのをどうつくっていくかという立場で考えているのですが、そしてまたメディアリテラシーという、積極的にメディアにかかわっていく、それで、いいものを摂取していくという能力をつけなければいけないという点で申し上げたのです。
私は、やはり今、悪質なもの、悪いものを規制する、どうやって排除するかということもありますが、よい文化、良質な番組というものをどうつくっていくかという、同時に両方要ると思うのですね。
そういう点でいいますと、視聴者がもっと番組制作に参加する、あるいは子供自身が番組づくりに参加する、二十一世紀というのはそういう時代になっていくのではないかというふうに思うわけです。多チャンネル時代を迎えるわけですし、いろいろな形、いろいろなものがあると思うのですが、そういうことで、双方向で番組づくりというようなことが現実になるという時代を迎えるわけです。
それで、ちょっと郵政省にお伺いしたいのですが、NHKでも民放でも、子供向けの番組を、それぞれ三時間枠をとってされるとか、そういうことがいろいろされておりますけれども、そういう番組に一層子供の声を、あるいは子供自身がその番組に参加するというようなことを考えておられるのかどうか、伺っておきたいというふうに考えます。
○金澤政府参考人 子供に良質な番組が提供されるためには、番組制作に積極的に子供の声を反映させるということが重要でございます。
我が国におきましても、ここ数年、NHKや民放各社におきまして、子供を対象としたモニター制度や視聴者と制作者の意見交換会というものを開催いたしまして、青少年の声を番組制作に反映させる機会を設ける努力をしていると承知しているところでございます。
また、子供のメディアリテラシーの涵養のためには、子供に番組づくりを経験させること、これが有効であるというふうに考えておりまして、NHKにおいては、子供自身がニュースを企画し、実際に制作、収録体験ができる、訓練の場でございますけれども、そういう場を提供しているということでございます。
○石井(郁)委員 終わります。どうもありがとうございました。
2000/11/09 |