2000/11/09 衆議院・青少年問題に関する特別委員会 |
水島広子(民主党)質問
青少年問題に関する件(有害環境について)
○青山委員長 次に、水島広子さん。
○水島委員 民主党の水島広子でございます。
今の馳議員の御質問でも、ガイドラインづくりなどに関しても、この一連の取り組みが極めて消極的であるという点には私も全く同感でございます。
それと同時に、先ほど馳議員は、この領域は科学的にその根拠を示したりデータを集めたりすることが非常に難しいという趣旨のことをおっしゃっておられましたけれども、ただ、私は、有害環境、有害情報と言うのであれば、やはり、何が有害であって、それがどのような害をどの程度及ぼすのかということに関するデータは、地道に集めていく必要があると思っております。
この日本におけるさまざまな政策決定の場にそのような基礎的なデータが余りにも欠けているということに、私は常々驚きを持って見ておりまして、やはり何か法律をつくったり法律を変えようというときには、それをきちんと説明するにふさわしい、十分でなくても、その方向性を示すような根拠となるようなデータを持つべきであると思っております。
そこで、私は、まず初めに、この有害情報に関するデータにつきまして、先ほども多少御質問はございましたけれども、改めて確認をさせていただきたいと思います。
有害情報が精神面に及ぼす影響、あるいは有害情報と問題行動との関係についての国内での研究は、どの程度今までになされているでしょうか。それはもちろん、相関関係を調べるものと因果関係を調べるものがあると思いますけれども、それぞれについて、今まで国内で行われている研究についてお答えをいただきたいと思います。
○川口政府参考人 私ども総務庁の青少年対策本部で行った結果につきまして、幾つかございますけれども、御紹介いたします。
私ども、平成十年に、非行原因に関する総合的調査研究というのを行いました。この中では、非行群というのとそれから一般の少年、非行群というのは、補導された少年とかあるいは少年鑑別所に収容された少年、そういった非行少年と、それから補導歴のない一般の少年と、こういったものをグループに区分しましていろいろと分析した結果、非行群の方が有害情報に触れた程度が高いということが確認されております。
先ほども御紹介申し上げましたけれども、ポルノ雑誌とかアダルトビデオを見たことがあるという中学生は、ごく普通の一般の中学生では二七%、非行の中学生では五七%程度。それから、高校生で比べてみますと、一般の高校生で見たことがあるというのが五四%、それに対して、非行歴のあるとかあるいは鑑別所の高校生につきましては七一%ということで、明らかに差が出ております。これは、いわゆる相関関係というふうに学者の世界では言っておりますけれども、そんな関係がございます。
そのほかにも、私どもがやった諸調査の中では、青少年とテレビ、ゲームなどに係る暴力性に関する調査、これは平成十年の十月から十二月にかけて行いました。
これは、専らテレビとかあるいはゲームの暴力場面、暴力場面の定義もいろいろとありますので、この調査では一定の、人を殴ったりしたらこれはもう暴力だというふうに、通常の暴力とはちょっと離れるかもしれませんけれども、そういったものを含めて調査しました結果、テレビの暴力シーンを一生懸命見ている子供ほど非行、不良行為を経験している者が多い、あるいは、そういったテレビとか暴力シーンを見た子供ほど暴力行為の経験が多い、そんな結果が出ております。
例えば、この調査によりますと、友達と酒やビールなどを飲んだという子供でございますけれども、テレビの暴力場面を余り見ない子供、それにつきましては六%程度が酒とかビールを飲んだことがあるというふうに答えております。それに対して、テレビの暴力シーンを多く見た子供、そういったものは一四%が飲酒の経験があるというふうに答えております。いわゆる相関関係が示されたものというふうに私どもは理解しております。
○水島委員 その中で、例えば強姦を犯して捕まった子供が、それまで強姦や性暴力を肯定するようなメディアにどの程度さらされていたかとか、そのような個別の調査はされているでしょうか。
○川口政府参考人 そこまでの区分はしておりませんで、私どもが選んだのは、少年鑑別所とかあるいは補導歴のある子供ということで、そういった個々の、こういった犯歴のあるという調査はしておりません。
○水島委員 今御紹介いただいたデータというのは、御指摘のように、あくまでも相関関係を示すものであって、相関関係を示すデータが得られたら、次は因果関係を調べていくというのが常道であると思いますけれども、今後、因果関係を調べていくためにどのような研究を今計画されているのか、何を知るためにどのようなデザインで調査をしていこうとされているのかを教えてください。
○川口政府参考人 私どもとしましては、いわゆる有害な環境というものは青少年の生育に影響を及ぼすんだ、こういったことを考えておりますので、このほかにも、いわゆる有害と考え得る環境についてもいろいろ調査を進めていきたいと思っております。
ただ、先ほど先生がおっしゃった、相関関係が済んだから因果関係ということでございますけれども、因果関係というのは本当に実験でもしないとわからない。そうすると、そういったような発育途上にある子供について実験するのかとか、いろいろな問題がありますし、学問的にもなかなか難しい問題だろうなというふうに私どもは感じております。
私ども、相関関係があるというこういった調査結果がありますし、また、相関関係があるということは、これは因果関係を否定するものでは当然ありませんので、相関関係ということで何らかの影響があるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、いずれにしましても、こういったいろいろな青少年の有害情報と行為、行動の関係にどんなものがあるか、今後も引き続き調査を進めたいと思っております。
○水島委員 今、因果関係は実験でもしないとわからないというお答えだったんですけれども、実際には、大規模な、子供たちをランダムに選びまして、それでプロスペクティブに前向きに一定期間追跡していくことによってある程度の因果関係というのは得られるというのが、ある意味では常識だと思いますけれども、そのような常識を知るためにも、私は海外での先行研究というものはきちんと調査すべきであると思っております。
先ほどのお答えでは、総務庁としては国内の調査だけをやっているのであって海外のことについてはわからないというようなお答えを馳議員に対してされていたように思いましたけれども、実際に、海外の今までの学術研究をどの程度集めて、そこからどのような結論あるいは推測を導き出されているのかを簡潔にお答えください。
○川口政府参考人 私ども、ある意味では手薄というおしかりを受けるかもしれませんけれども、私どもも限られた人員の中で一生懸命やっておりますけれども、海外の情報につきましては十分把握はしておりません。
国内に関しましては、比較的予算的にもそんなにかかりませんので、いろいろな情報を集めて、私どものやった調査結果もありますし、あるいはそのほかにも、各都道府県でやっている調査でありますとか、いろいろな関係団体でやっている調査、あるいは学者の方々がやっている調査、そういったものがございますので、私どもは、そういったものを取りまとめまして、その上で、どういう施策が講じられるかということも検討していますし、また、そういった調査結果をまとめまして、関係省庁あるいは関係団体等にも送付しております。
○水島委員 今、国内のものであればお金がかからないというお答えでしたけれども、海外の今までの学術研究で論文になっているものにどんなものがあるかを知るためには、もうインターネットの時代ですから、人一人いれば一瞬にしてそれを調べることができるわけです。お金がない、人手がないということは私は全く言いわけにならないと思いますので、因果関係は調べることはできないなどと情けないことをおっしゃらないで、まず、海外ではどのようなデザインで研究が行われてきたかということをよく勉強していただきたい。
何といっても、そのような前向きの大規模な調査が全く欠けているというのが日本の一つの大きな欠点であると思います。病気の有病率を知ることもできない。また、どのような習慣がその後生活習慣病につながっていくかということも、日本人をきちんとしたデータとして使っていくこともできない。ですから、私は、もうこれは省庁の枠を超えて、きちんと、大規模な、子供たちなら子供たちを囲い込んで、そして長期間にわたって、どういう習慣のあった子供がその後どういうふうになっていくということを調査していくのは政府にしかできないことではないかと思っておりますので、ぜひ、外国ではそのような大規模な研究をどのように行ってきたかということをよく調べていただいて、これから研究にも、また、郵政省の方でも予算を要求されているようでございますけれども、そういう国民の税金から賄われる大切な研究ですので、ぜひ一円たりともむだにしないように、しっかりとした成果を上げていただきたいと思います。
さて、この件を今伺ってまいりましても、メディアが子供たちに与える影響が社会的な話題になってから随分久しいと思います。今回調べましたところ、国会でも一九七〇年代には既にテレビと子供の関係について取り上げられているわけです。このような状況にありながら、自国内の研究はもちろんのこと、海外における状況も調べていないというのは、私は、一種の行政の怠慢と言われても仕方がないのではないかと思います。先ほどの、ガイドラインすらつくっていないということに関してもそうでございますけれども、どうもこの件に関する危機感が随分足りないのではないかというような印象をどうしても持たざるを得ないと思います。
さて、日本の国内の状況はそうでございますけれども、有害情報に関する海外における法制化の状況について、また、有害情報というものを海外ではどのように定義をしているかということについて、簡潔に教えていただきたいと思います。
○川口政府参考人 私ども、平成十年におきます調査がございます。若干日時がたっておりますけれども、平成十年の、諸外国における青少年施策等に関する調査というものによりますと、アメリカとかイギリスあるいはフランス、ドイツなどの制度につきましては、出版物とかテレビ放送等の各メディアを規律するそれぞれの法律あるいは法令や自主規制などによって青少年保護対策がとられているというふうに承知しております。
先ほど先生がおっしゃいました有害情報という概念につきましては、こういった国々につきましては、それぞれの法令とか、あるいは業界で行っております自主規制の中で決められているようでございます。
例えば、ドイツの有害図書規制法という個別法がございますけれども、この中では、児童とか少年を道徳的に危険に陥らせる性質の文書、こういったものを青少年有害文書と規定しまして、こういったものについては、児童、少年への販売、陳列、貸し付けなどの行為を禁止しているというふうに承知しております。
○水島委員 平成十年というと少し前になりますので、ぜひ直近の海外の情報を早急に調べていただきまして、そして、私たちが、どのような規制が必要であれば規制をしていくべきなのか、どのようなシステムを採用すれば自主規制がうまく動くのか、そのあたりについて御検討をいただきたいと思います。
ただ、いずれにしましても、日本では、この点、先ほど申しましたように、随分と長いこと危機感が持たれずに野放し状態になってきたというような印象を持っておりますけれども、海外では、表現の自由という問題をわきまえながら、それでも子供たちのために一定の努力をしてきたという足跡がうかがわれると思います。日本も、もう遅きに失した感もございますけれども、本当に今からでも早急に取り組んでいくことが必要であると思います。
さて、その日本の現状の一つでございますけれども、先日、ある方からお手紙をいただきました、その方の高校生のお嬢さんが読んでいたアンアンという雑誌に何かこんな広告が載っていたと。これは伝言ダイヤルの広告でございます。アンアンという雑誌は、特に成人向けの雑誌でもございませんし、普通に中学生や高校生がおしゃれのために買ったりする雑誌なわけです。
その雑誌の中に、このような伝言ダイヤルの広告が載っておりまして、確かに、下を見ると小さな字で十八歳未満の方お断りと書いてございます。でも、このお母さんが試しにこの一つに電話をかけてみたところ、何と、割り切ったおつき合いとか、援助でとか、堂々と中高生対象に金額を提示して交際を募っているものが多かったという、そのような報告をいただきました。
先ほどから青少年向けのメディアというような話は出てきているわけですけれども、子供というのは別に青少年向けのものだけを読むわけではなくて、その辺にある、だれでも目にすることのできるメディアに子供たちは常にさらされていると考えるべきでありまして、まさにこのアンアンに伝言ダイヤルの広告が載っているというのがその一つの代表的な事例ではないかと思いまして、今御紹介させていただいたわけです。
まず、今の日本においてアンアンにこのような広告が載っているということがなぜ起こるのか、これは自主規制というもののすきをついて起こった問題なのか、あるいは現在は全く規制対象になっていないのか、そのあたりについて、今の日本の状況を踏まえて御説明をいただきたいと思います。
○川口政府参考人 アンアンの事例を例にとってお尋ねでございますけれども、一般的に言いますと、刑法に触れるようなものが一方にございますけれども、それは日本の法律では刑法等で取り締まっております。しかしながら、それ以外の一般的なものにつきましては、現行法上、法制度はございません。
そして、私ども、そういったことでいいのかということが一つありますし、そうすると、現行法制度上何ができるか。例えば憲法のお話もございますけれども、私どもの立場としては、自主規制をお願いします、こういったこと、それからほかにも、例えば住民運動をもっと活発にしていくとか、あるいは現行の法令で違反するものは取り締まるとか、こういったことが挙げられますけれども、一般的に言いますと、まず自主規制でやってほしいということでやっております。
そして、御指摘の点につきましては、多分、日本雑誌広告協会という団体の所管というか、そこに関連していることだと思いますけれども、日本雑誌広告協会におきましては、雑誌広告の掲載基準というものを定めているというふうに伺っております。その中で、「風紀に関する広告」で、風紀を乱す広告は掲載しない、特に青少年の育成に害を与えるものであってはならないというようなことを定めておるように伺っております。
現行法制度上では、ある意味では、こういうように自主規制をつくってくださいという、一種のお願いといいますか、そういったことでやっております。確かに、そういったいかがわしいものが一般の青少年の目に触れるということは余り好ましくないことだろうとは思いますけれども、制度上そんなふうになっております。
○水島委員 自主規制をお願いする場合であっても、具体的に何も提示しないで自主規制でお願いしますと言ったら、判断する側もどうしたらいいかわからないと思うのですが、その場合にどのような自主規制をお願いされているのでしょうか。
○川口政府参考人 私ども、メディア等に対するいろいろなお願いとか、大分昔から、昭和二十年代ぐらいからやっておりますけれども、各団体も、いろいろな団体がありまして、そこでいろいろな自主規制を行っております。
私どもの立場は、青少年に害を与えるものはやめてほしい、そういったことで自主規制してほしいというふうな一般的なお願いはしております。
○水島委員 そうしますと、特に青少年向けのメディアでは青少年に害を与えてくれるなということではなく、だれでも目にする可能性のあるメディアに対して青少年に害を与えないようにということをお願いしているというふうに理解してよろしいのでしょうか。あるいは、青少年を守るといった場合に、それは青少年向けのメディアという世界に限定されて今まで議論されてきたのでしょうか。
○川口政府参考人 私どもの立場としましては、有害な社会環境というのは青少年の生育に悪影響を及ぼす、こういった立場からやっておりまして、基本的には、いろいろな団体でそれぞれ自主規制というものを持っておりまして、その励行をお願いしますということでやってきておるわけでございます。
他方、一般的に言いますと、いわゆる有害図書とかテープにつきましては、長野県を除く各都道府県では条例を設けて、有害図書として指定されたものは、条例上、青少年には見せないように区分して陳列しておくとか、青少年には売ってはだめだ、こんな規制をかけている都道府県もございます。
○水島委員 何か、お答えを聞けば聞くほど、やはり何らかの取り組みを早急にしなければいけないのではないかという気持ちが私も強くなってまいるわけです。
ただ、この領域は本当に、ともすると危険なことになってしまう領域であると思っております。情報を規制するということになってまいりますと、それが公権力による検閲というような形をとってしまうと、当然、表現の自由を脅かすことになりますし、また価値観の単一化につながっていくものであると思います。
価値観が単一化されていくと、やはり心を病む人がふえてくるわけであって、例えば子供たちに対して有害環境が悪影響を及ぼすのと同じように、最近得られたデータでは、親がうつであるということが子供たちの発育に重大な影響を及ぼすということが示されております。
社会全体が息苦しくなって、表現の自由が認められなくなって、単一の価値観が押しつけられるような社会になってしまうと、結局それは、回り回って子供たちに悪影響を及ぼしていくということがここのところの理解であると思います。
ですから、本当にこの領域は、多様な価値観を表現する自由を守っていくということで、極めて慎重に、かつ対象を限定して、しっかりとした合理性に基づいて行っていかなければいけないものであると思います。
また、子供たちの教育という観点からいきましても、単一の価値観をただ粛々として受け取るような子供を育てることが私たちの目標ではなくて、やはり多様な価値観を受け入れることができる、また、メディアリテラシーの考え方もそうだと思いますけれども、自分の頭で考える、自分でその問題に対してどう対処していくかを自分で考えられる子供たちを育てていくということが私たちの目標であると思いますので、本当にここは、ただ規制をすればいいという考え方ではなく、子供たちの能力を伸ばしていくような形での取り組みが必要になってくると思います。
そのような観点から、今私たち民主党でも、子供たちを有害情報から守るための法律を準備しているところでございます。
ただ、なぜそれでも今規制が必要かということに関しては、今までもずっと議論してきたことが根拠となっているわけですけれども、またもう一つ、現在は、親が子供に適切な情報を与えたいと思ったときに、それを判断するような情報が全くないというのが現状でございます。
先ほど、その格付のガイドラインもまだ準備されていないということであったわけですけれども、青少年と放送に関する調査研究会の委員も務められておりました岩男寿美子先生は、放送事業者は自主的に批判にこたえるべきであり、時間帯の規制だけではなく、番組に関する情報を提供する責任がある、各番組のプロデューサーが、制作した番組にどのような暴力あるいは性描写がどのような文脈でどの程度含まれているか、またその番組は小中学生にふさわしいと考えるかどうかを二百字程度にまとめて公表するという方式を提案されております。
この方法であれば、画一的な基準によらず、国家による検閲という形もとらずに、メディアと視聴者の双方向のコミュニケーションができるという点でも、極めて有用な提案であると思っております。また、この方法であれば、格付のガイドラインづくりを待つこともなく、やる気になればあすからでも始められる方法であると思います。
この提案は議論の経過で採用されなかったということでありますけれども、なぜこの提案が採用されなかったのか、その経緯を御説明いただきたいと思います。
○金澤政府参考人 今先生がおっしゃいましたような、さまざまなメッセージを提供していけばどうかというお話でございますが、現実にそれをやり始めている局がございます。
やらないということではなくて、まだ非常に不十分な段階ではございますけれども、この番組にはどういう暴力場面が含まれているかということを番組宣伝のときに必ず明示していくとか、番組の冒頭に明示するとか、そういうことを行っている局があるということでございます。
○水島委員 引き続き先ほど来と同じような御回答しかいただけなかったわけですけれども、今私が伺いたかったのは、なぜその提案が採用されなかったのかという理由を伺いたかったわけで、現在どの番組がどういうことをやっているかということではなかったわけです。ただ、今のようなお答えがずっと続いていて、結果的に、一般の市民から見て自主規制というものが十分な効果を上げていない。
今小さな子供を持つ親たちからすれば、十年後にそれが完成したとしても遅過ぎるわけです。もう本当に今すぐに何とかしてほしい問題でありながら、自主規制が十分な効果を上げていないように見える。そして、それに対する行政の対応も、今のような極めて消極的な印象がある。そのような状況の中で、メディア規制に関心を持つ人の数が非常にふえてきているように思っております。
先ほど申しましたように、この領域は本当に、ともすれば民主主義を後退させてしまう危険性もはらんでいる領域でありますので、ぜひ民主主義が日本で後退することがないような、本当に、きちんとしたモラルを持った大人たちが、きちんとした形で子供たちを守れるような取り組みを早急に進めていかなければ大変なことになってしまうのではないかという危機感を持っております。
そして、私は、この件についていろいろと調べ始めましてから、何かを質問させていただくと、これは郵政省だとか、これは総務庁だとか、例によってそのような担当省庁があるわけですけれども、この有害環境と青少年の関係というのは決して縦割りで語れるものではなくて、きちんと包括的に取り組んでいかなければいけない重要なテーマであると思っております。
改めてお伺いしたいのですけれども、今まで各省庁では、どのような組織図で、だれが責任を持って取り組んでこられたのか、また、だれに聞けばこの問題を包括的に語っていただけるのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。
○川口政府参考人 現在の行政組織というのは、各省庁がいろいろな仕事を分担してやっている、そういったことで国家行政組織法というのはでき上がっております。
ただ、一方においては、確かに、各省庁にまたがっていろいろな大事な問題であるとか、そういった問題につきましては、いろいろなレベルで調整が行われております。先生の御指摘の有害なメディアの問題につきましては、私ども、青少年の健全な育成を図る、現在の青少年対策本部がございますけれども、政府全体の青少年行政、青少年施策が統一を持って総合的に進められるようにということで、私ども、全体の立場で調整しまして、先ほども申し上げましたように、青少年育成要綱というものをつくりまして、そこで調整をやっているわけでございます。
いろいろな分担所掌、これはこういう省庁がやっているんだということは要綱の中で明示しておりますけれども、一カ所に聞けばすべてがわかるというような仕組みになっておりません。各省庁におかれましてもまた別な行政目的があって、その中の一環として青少年関係の施策もやっているということでございますので、私どもは、青少年が健全に育成するように、ほかの目的を持った施策であっても青少年の健全育成という目的にも合致した政策をやってもらう、こういった立場でございますけれども、そんなことになっております。
○水島委員 日本の子供たちをきちんと育てていくというのは、私はもう重大な行政目標であると思っておりますので、各省庁の行政目標の隅っこに子供がいて、それが切り張りで何かされているというような状況ではなくて、子供というものをきちんとメーンに据えて、そのために各省庁が知恵や人手を出していくというような体制をぜひ早急につくっていただかないと、日本はもうこれだけ諸外国に比べておくれをとっているわけですから、ここからそのおくれを取り戻すというのは大変な努力が必要だと思います。
もちろん、今まで海外で行われた先行研究ですとか、海外でどのような制度がどのように機能したか、そのような情報を手に入れられるという点では、ある程度楽かもしれません。ただ、いずれにしても、社会的な関心を一つにまとめて、またこの領域できちんとした取り組みをしていくためには本当に大きな努力が必要であると思いますので、ぜひ、どこの省庁が何だというような縦割りではなくて、子供のことを本当に大切に据えるような組織図をきちんとつくり直していただきたいと要望いたします。
さて、残りの時間で、たばこの問題を質問させていただきます。
子供の有害環境ということになりますと、先ほども厚生省の方の御説明で、たばこというものが入ってくるわけですけれども、この喫煙の害、そしてまた受動喫煙の害というものについては、国際的にも広く研究されておりまして、ある程度周知の事実となってきております。
WHOでも、たばこ枠組み条約の二〇〇三年の採択に向けて取り組みをしているわけです。青少年に対してたばこが直接与える影響、またその受動喫煙というものが与える健康被害も無視できないわけですけれども、一九九八年度の喫煙と健康問題に関する実態調査報告書によりますと、現在喫煙をしている人の四一・五%が未成年のうちに喫煙が習慣化しているということになっております。この点から考えましても、未成年に対するたばこ対策は、私は非常に重要であると思っております。苦笑いをされている委員の方もいらっしゃるのですが、お耳が痛いかもしれませんけれども、日本の子供たちの健康のために、ぜひ皆さん一緒にお考えいただきたいと思います。
さて、日本のたばこ対策は世界的に見て大きくおくれておりまして、男性の喫煙率は五二%と、先進国の中では突出して高くなっております。ここに十月十六日付の朝日新聞の記事のコピーがございますけれども、この記事に書かれておりますのは、WHOが二〇〇三年の採択を目指しているたばこ対策枠組み条約について、政府は各国の自主性を重んじる緩やかな内容にするよう求める方針を固めたと書いてございます。厚生省としては規制強化をねらっているが、大蔵省やたばこ産業の規制強化への抵抗が根強いことから、規制を骨抜きにする主張となりそうだと書かれておりますが、まず、この記事に書かれている内容が正しいのかどうか、また、その経緯を御説明いただきたいと思います。
○堺政府参考人 たばこ枠組み条約に関しての御質問でございます。
たばこ対策というのは、世界的にも重要な健康政策上の課題となっておりまして、我が国政府といたしましても、健康増進、それから疾病予防の観点から、WHOのたばこ枠組み条約作成に向けての努力というものを基本的に支持しております。我が国を含む多数の国がこの条約に参加するということが、たばこ対策を国際的に推進するという観点からも非常に大切だというふうに認識しております。
他方、たばこ対策枠組み条約の締結に向けた作業部会というのがございまして、これまでのその議論を踏まえますと、たばこというのは世界各国において合法的な嗜好品として扱われている、そういうことから、条約によって厳しい規制を課す場合には、各国の国内事情ということがございますので、条約への参加というのが非常に困難になる国がふえるおそれが高いということが判明いたしました。
したがいまして、たばこ対策の国際的な推進という本条約の趣旨の実現のためには、できるだけ多くの国がこの条約に参加できるよう、いたずらに厳しい規制措置を本条約に盛り込んで、本条約への参加のハードルを高くするということのないようにということが大切なんじゃないかということで、多くの国の受け入れが可能な内容の条約の策定というものを求めるということにした次第でございます。
以上でございます。
○水島委員 今のお答えにもありましたように、本条約という言葉を使っておられましたが、御承知のように、条約というのは、基本原則を定めた条約本体と個別的な取り組みを定めた議定書から構成されるものでありまして、条約本体に関しては多くの国が批准できるような内容にして、そして議定書の方でより細かな厳しい取り組みを定めておけば、条約は批准するけれども議定書は採択しないという選択もあり得るわけでございまして、議定書に関しては、ある程度厳しい、WHOが提示しているような目標を定めるということについては、日本政府は賛成はしておられるのでしょうか。
○堺政府参考人 お答え申し上げます。
まさに、本条約と議定書がございまして、現在は、条約についてどうしようかということで議論されておりまして、議定書の議論にまでは進んでおりません。ということで、どうしようかというところまで議論はいっていないというところでございます。
○水島委員 議論がいっていないというのは、厚生省の中というか、日本政府としての議論が行われていないというふうに理解してよろしいんでしょうか。それほど日本のたばこ対策というのは、WHOから提示されない限り、何も議論されないものなんでしょうか。
○堺政府参考人 WHOの中でも、どこまで本条約にしようかというところの議論でございまして、それに今我が国としても最大に関与しているというところでございます。
以上でございます。
○水島委員 何かよくわからないんですが、そうしますと、比較的緩やかな条約本体をつくって、より厳しい議定書をつくった場合には多くの国が参加することができると思いますけれども、その場合、日本は、その議定書も採択するようになるんでしょうか。先ほどのお答えだと、より多くの国が参加できるようにという、非常にグローバルな視点のお答えだったと思いますが、ドメスティックな視点に関してはいかがなんでしょうか。
○堺政府参考人 いつも言葉足らずで申しわけございませんが、本条約本体だけ批准すればいいのか、あるいは本条約に付加して議定書を何項目か、例えば一項目なら一項目とか、何項目とか、それも含めて批准するという手続なのかというところもまだ現在決まっておりません。まだ議論している最中であります。
○水島委員 なぜ私がこんなことをしつこく伺っているかといいますと、未成年がなぜ喫煙をするかという議論になると、自動販売機の問題だとか、入手可能性の高さという問題が大抵出てくるわけです。それは私は重要な視点であると思いますし、日本のように子供が余りにも簡単にたばこが買えるような国というのは何とかしなければいけないんじゃないかと思っておりますけれども、それと同時に、やはり周りでおいしそうに吸っている大人がいると、子供たちは吸いたくなるということがあると思います。また、受動喫煙で、いつも他人の煙ばかりかがされていて、これで健康被害があるんだったら、自分が吸っても同じじゃないかと思う人もいるかもしれないわけです。
ですから、私は、大人社会がどの程度のモラルを持ってこの問題に取り組むことができるのか、大人にとっては確かに嗜好品でしょうけれども、それが子供たちの権利を脅かさないようにしていくにはどうしたらいいか、そのためにもたばこ対策というのは必要ではないかと思っているわけでございます。
そして、そのような議論を進めていくために必要になってくるのは、未成年が喫煙をした場合に、その動機が何であったか、なぜ自分は未成年であるのにたばこを吸ったのか、そのような背景の調査というのはされていますでしょうか。
○堺政府参考人 これに関しましては、平成五年の喫煙と健康問題に関する報告書、いわゆるたばこ白書、改訂版第二版だったと思うんですが、それで中学生を対象としたいろいろな調査がやられておりまして、それをまとめますと、喫煙を開始する理由としては、おおよその傾向として、好奇心、何となく、わからないといったような、明確な動機がうかがえない理由というのが一番多い。次いで、友人あるいは先輩、それから親や家の人に勧められてといった、対人関係による理由が多くなっております。
以上が、調査の結果の概要でございます。
○水島委員 そうしますと、やはり、身近なところにあって、また、身近にたばこを吸っている人がいると好奇心に駆られるというようなことで喫煙の可能性が高まってくるのではないかと思いますので、ぜひ入手できないような環境づくりをしていくと同時に、本当に大人たちが、たばこを吸うのであれば、きちんとした責任に基づいて、分煙や、禁煙すべきところでは禁煙したりという、高いモラルを持ってたばこというものとつき合っていくことが子供たちに何かを教えていくのではないかと私は思っております。
そして、そうなってまいりますと、今度は、テレビの中のコマーシャルやドラマなどでよくたばこを吸っている人がいるわけですけれども、そのような中で、今自主規制とされているのは、子供たち、未成年の喫煙を促進するような内容については規制するということになっていたかと思いますが、大人についてはそのような規制はないというふうに理解してよろしいんでしょうか。
○金澤政府参考人 日本民間放送連盟の放送基準には、未成年者の喫煙、飲酒を肯定するような取り扱いはしないという規定がございます。これは未成年者に限っておりまして、大人についての扱いは、規定には含まれていないということです。
○水島委員 もちろん、たばこは合法的なものであって、違法性のある麻薬とは違うわけですけれども、例えば、テレビドラマの中で麻薬をとても幸せそうに打っているなんという番組は、考えただけでぞっとするわけであります。ですから、子供たちの好奇心をそそらないような環境づくりというものは必要になってくるのではないかと思っております。
そして、今はたばこというものを例に挙げてお話をしてきたわけですけれども、最近は、電車に乗りましても、本当に目も当てられないような露骨な雑誌やスポーツ新聞なんかを子供の目にも触れるような形で読んでいる大人たちの数が、ここ数年とてもふえてきているような印象を私は持っております。
子供たちの問題を考えるときには、子供たち向けのものをよりよくしていくことももちろん大切ですけれども、子供たちは大人社会の中で毎日暮らしているわけですから、大人社会の環境を少しでもよいものにしていく、そのような大人の高いモラルが必要とされるのではないかという点を最後につけ加えさせていただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
2000/11/09 |