2001/01

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アメリカ憲法、旅日記


1月7日(日) 訪米出発

今日は、いよいよアメリカに向けて出発です。ただいま日本時間午前8時。これから議員宿舎を出発し、11時10分成田発のNH002便でワシントンへ。到着は日本時間23時15分。ですから今日の活動日誌は、終日機内となります。資料を読んだり、飲んだり食ったり、眠ったりです。それでは、行ってきます。


1月7日(日) 赤い鱗模様、ワシントン到着、市内散策、接続成功

今日は、奇妙な日です。日本を11時過ぎに出発したのに、ワシントンに到着したのが同じ7日の9時過ぎ。時計が逆戻りです。

機内では、3時間くらい寝たでしょうか。資料を読んだり、映画を見たり。「カサブランカ」をやっていました。

現地時間の7時半頃、東の空が地平線にそって赤く変わり、見る見るうちに真っ赤な太陽が昇ってきました。眼下は雲が波のように折り重なり、太陽に照らされたところだけ赤い筋目を作り、巨大な赤い鱗模様です。やがて高度を下げると、一面雪に覆われ、ところどころに氷の張った池が、白いえくぼのよう。アナウンスが、地上は零下7度と伝えました。

空港には、安藤裕康特命全権公使が出迎えてくれました。以前、南東アジア2課の課長をされていた当時、東チモール問題で難問を持ち込み、お悩ませしました。すぐ、モナークホテルに直行。日本で想像するよりずっと質素なホテルです。大使館の人に手助けして貰って、1時間ほどインターネット接続に挑戦。時間切れ。

小松公使の昼食会。中華料理をいただきながら、大統領選のことなどの話を聞きました。2時前から2時間ほど、市内見学。ホワイトハウス、国会議事堂、最高裁、ワシントンモニュメントと回って、リンカーンメモリアルで散策。ベトナム戦争の戦死者をすべて刻み込んだ壁に、多くの人々が見入っていました。反対側には朝鮮戦争の壁も。リンカーン像は、さすがに大きく聳えています。大勢若者も見に来ているのに、携帯を耳に当てている姿は見あたりませんでした。日本のIT化はちょっとおかしいのかも。

その後、さらに接続に挑戦して、成功!!万歳!! びっくりでしょう。只今午後5時ですが、今日は日曜日なので、この後、八木公使の夕食会でおしまい。  


1月8日(月) NPO団体s(HRW、IS、TNC)、米国経済、安藤公使

今日は、10時から2時間、私とは旧知のHuman Rights Watch(人権監視団)ワシントン支局長のマイク・ジェンドリージックさんとの意見交換。アムネスティ・インターナショナルに次ぐ世界第2の人権団体で、1978年ヘルシンキで組織されて以来、100名を超える地域専門家などの職員を擁し、政府組織に頼らずに、1300万ドルの資金をフォード財団などから受けて、米国を基盤に活動しています。人権は、21世紀の地球規模の憲法的ルールだという点で、完全に意見が一致しました。

今後の課題は、(1)国際刑事法廷の実現、(2)紛争地域て行われている子どもの徴兵などの反人道的行為の廃止、(3)難民保護の充実だということ。これらの課題のほか子どもの人権や性差別についても意見交換しました。ニューヨークの本部とのテレビ会議をセットしてくれ、ジョー・ベッカーさん、ショーン・ジェファソンさんもテレビ参加。NPOがここまで出来ていることに、びっくりしました。

性差別禁止については、1972年の憲法修正の試みは挫折しましたが、94年に女性に対する暴力防止法が連邦法として成立しました。憲法修正よりも連邦法制定の方が、目的達成のためには容易で迅速ですが、連邦法では政権交代により予算措置がなくなったりするので、憲法修正の魅力は失われていないとのこと。

差別問題としては、憎悪犯罪(hate crime)が重要。黒人や同性愛者が憎いからという理由でこれを殺害する場合、連邦法がなければ、州裁判所で裁かれますが、そうすると州によっては差別を容認し、軽い刑で済ませたりします。連邦法でこれらを犯罪と決めると、FBIが捜査権を持ち、連邦裁判所で裁かれるため、差別禁止に実効性を持たせることが出来ます。しかしそうすると、州の独立性を侵すことにならないか、という問題です。憲法問題として、面白い論点です。

昼は北島公使らとインド料理。アメリカ経済の説明を受けました。景気の鈍化は確実だが、それが本来望ましい程度の成長率に軟着陸出来るか、混乱に陥るかが問題とのこと。東南アジアを初め、日本も含めた世界経済に与える影響が懸念されます。

2時半から4時まで、Independent Sector(独立団体セクター)副会長のジョン・トーマスさんと意見交換。100万を超える慈善、教育、宗教、健康、福祉等の多様な民間非営利団体の集合体で、個別の課題よりも、これらの団体の共通課題につき、ロビー活動などに取り組み、昨年20周年を迎えました。

NPOによるサービスは、国民所得の6%を占め、1999年には、成人の56%、109百万人が何らかのボランティア活動に参加し、これは9百万人のフルタイム労働者、2250億ドルに該当するとのこと。政府が登場する前から活動しており、憲法に根拠がないからといって問題はなく、所管の役所がないので、政府の介入もないとのことです。税の優遇は、すべての団体に与えられるそうですが、寄付控除は慈善団体に対する寄付のみ。細かな議論をする時間はありませんでした。

4時半から6時まで、The Nature Conservancy(自然管理委員会)副会長のアレクサンダー・ワトソンさんと同ブラッド・ノースラップさんと意見交換。1951年に設立された世界最大の民間自然保護団体で、生物多様性の保全のため、土地保全を中心に活動し、その範囲は世界中に広がっています。会員は78万人、職員は1150人、年間予算は3億776万ドル。例えば米軍所有地に生息する希少生物保護のため必要な活動をし、そのため米軍からも資金拠出を受けているとのこと。

憲法との関係を訪ねましたが、憲法上政府に与えられた権限で環境保護のために役立つものが多いという答で、憲法は問題になっていないようです。

面白いたとえ話。「飛行機が、ネジをひとつ、またひとつと、落としながら飛行を続けたとしましょう。個々のネジは直接乗客に影響ないでしょう。しかしその内、飛行機は空中分解して墜落し、乗客全滅になります。生物多様性はこういう問題です。」

私は団長のため、質問の口火を切り、質疑の司会もしなければならず、居眠りをすることも出来ません。通訳の辰巳由紀さんが極めて優秀で、助かります。6時半から、安藤公使とスペイン料理。8時半ホテルに帰る頃には、1日降り続いた雨はやみ、街路樹の梢には雨が凍って光っていました。


1月9日(水) ブルッキングス、FEMA、最高裁オコナー判事、議会調査局、ジャズ

今日は、9時から10時半まで、Brookings Institute(ブルッキングス研究所)のケント・ウィーバー上席研究員とビル・フレンゼル客員研究員と意見交換。フレンゼルさんは20年ほど共和党の下院議員を務めた人です。

「米国建国当時、『政府』と言えば英国の政府が念頭にあったので、政府の権力を最小限にすることに務め、立法と行政については、徹底した権力の分散と相互の抑制の仕組みを作りました。また司法は、極めて独立性の高いものにし、州の権限を強力に認めました。ですから、国会議員は政党の拘束力よりも選挙区事情の方により強く影響され、党議拘束は極めて弱いものとなります。」

「2院制は、上院は任命制、下院は選挙制で、違った構成でした。今は上院も選挙制になりましたが、人数も任期も権限も異なり、下院は個々人の重要性は低く、審議方法の制約は強く、上院は個々人が重要で、審議方法は議事妨害も含めて自由です。」

「立法機能の強化のため、委員会スタッフ、議員スタッフ、議会調査スタッフの3部門で総数2万人の人が働いています。さらに会計検査院(GAO)、議会予算局、法制局があります。議員スタッフの80%は政策を担当します。」

「2院制を変えることについては、『もし壊れていないなら、直すな。変えたら、動かなくなるかも知れない。』と言う言葉を紹介しましょう。」

11時から12時まで、Federal Emergency Management Agency(FEMA,連邦緊急事態管理庁)のジェームス・ウィット長官。クリントン大統領の任命なので、ブッシュ大統領が就任する今月20日までが任期。寂しそうに見えました。

「1993年、クリントン大統領になってから初めて、私のような緊急事態の仕事をしてきたものが、長官に任命され、仕事が大きく改善されました。しかしFEMAの仕事は、あくまで州や地域社会の要請を受けて、連邦の力を提供することと、関係機関や住民の協力を調整することです。緊急事態だからといって、私どもが市民の権利を奪うことはありません。“Project Impact”という仕組みで、協力ネットワークを作っています。『木陰を得たいならば、木の種をまかねばなりません。』日常的に、非常事態に備えたパートナーシップを作ることが何より大切です。」

お寿司やさんで昼食を掻き込んで、1時半から連邦最高裁判所のサンドラ・オコナー裁判官。初めての女性裁判官で、現在はもう1人います。9人中の2人ですから、悪くはないでしょうが、もっと女性が増えてもいいのでしょうか。「その可能性はなくはないですよ。」

30分の予定が1時間になり、お一人で話されました。「差別禁止のため積極的是正措置は、平等に反しますが、過去の不平等を是正するための限られた例外措置として認められます。だからその方法も期間も限定的でなければなりません。」「報道の自由は極めて重要ですが、責任ある自由報道でなければなりません。」

「年間7500件の上告事件の内、審理をするのは100件程度。裁量上告制ですから。その内、憲法問題を含むのは3分の1。」「裁判所は、強制力はありません。国民が尊敬してくれているから、制度が成り立っているのです。」

「『憲法裁判所』でなくて本当に有り難いと思っています。第1審として、紛争の火が燃え上がっているときに、時間もなく判断を迫られるのは大変。先日の大統領選の判断なんて、大変ですよ。」

「陪審制は国民に支持されています。国民は、裁判官の判断より、陪審員の判断の方をより信頼しています。」

話が終わると、ご自分で鍵を開けて法廷の中を案内してくれました。9人の裁判官席の内、右から4番目。裁判長の右隣ですから、重鎮です。裁判官席はそれほど高くなく、日本より威圧感がないので、そう言うと、「それでも高いですよ。」

2時40分から1時間、連邦議会調査局のディック・ナントさんとケネス・トーマスさん。憲法修正条項とその手続きについてです。「修正1条から10条までは『権利の章典』で、原文制定直後のものですから、原文と一緒です。修正13条、14条、15条は、連邦と州の関係。今後は、堕胎、安楽死、環境権など議論はあります。安定と変化のどちらを取るかで、憲法修正は困難で変化に対応できず、連邦法制定で賄う方が、現実的かも知れません。」

「『憲法裁判所』は、常に政治問題が持ち込まれ、機能しなくなります。最高裁が大統領選問題を処理できたのは、最高裁が日頃政治問題を扱っておらず、だから国民が政治的に偏っていないと信用したからです。」

これから柳井大使の夕食会。その後19時から、“Blues Alley”に本場のジャズの生演奏を聴きに行きます。今日はベースが主体だとのこと。


ジャズの切れ味、各国料理

只今、9日から10日へ変わる真夜中です。ジャズ・コンサートから帰ってきたところです。憲法は文化のこと、文化といえば音楽ですから、団長の私が特にお願いして組み込んだプログラムです。

耳をつんざく音量、切れ味のいいリズム。ドラムの迫力は、さすがアメリカです。楽しみました。

柳井大使の夕食会は、イタリア料理。そう言えば7日の八木公使の夕食会は、韓国料理。各国料理を楽しんでいます。ないのは、アメリカ料理だけ。どこかでハンバーガーが要りますね。お休みなさい。明朝のルーガー上院議員が、ドタキャンになりました。ロックフェラー上院議員に交渉中。


1月10日(水) 議会見学、立法補佐官、ロックフェラーさん、ホーナー教授、団長招宴

今日は、ワシントン最後の日です。夕食は団長招宴で、生きのいい魚料理で有名な“Sea Catch”で賑やかに盛り上がりました。おかげで、すっかり酩酊したので、今日の書き込みはやや雑になります。

午前中は、ドタキャンのためゆっくり議会見学。久しぶりにCapitolのツアーを楽しみました。やはりアメリカの方が、日本の国会より段違いに、市民と密着しています。いたるところに、自由と民主主義のために闘った歴史を記念する物が、なかなか面白い挿話と共に飾られ、知らず知らず“American democracy”に確信を持ってしまいます。町の名前にも、“constitution avenue(憲法通り)”というのがあります。憲法が生活の中に生きているのですね。

昼食はホーナー共和党議員総会会長事務所立法補佐官とワーキングランチ。テーマは3つで、(1)憲法修正、(2)連邦制と2院制、(3)人権。

連邦制について。「最近は、裁判所は州の独立性を尊重する傾向にあります。」「連邦制の利点は、まず州と連邦と両方が一致しないと、市民の自由を剥奪出来ないこと。もう一つは、困難な問題につき、州によって様々な対処の仕方をとるので、どの方法がよいか実験できること。例えば教育改革につき、現在州により様々な試みがなされています。」(チャーター・スクールなんかがいい例でしょう。)

人権について。「アメリカでは、連邦最高裁の判決が、権利の根源だと考えられています。判決は何かしら神聖な意味を持っているのです。」

2時からロックフェラー上院議員。2時半までとの約束なのに、彼の方が20分以上遅れ、これが幸いして、約1時間話が出来ました。(1)憲法確信、(2)政党制、(3)議員スタッフ、(4)cross voting、 (5)党議拘束、(6)議院内閣制と大統領制、(7)選挙人制度。

憲法確信について。Q.「日本では、大統領選挙について、アメリカはなんていい加減なことをやっているんだろうというのが、一般的印象ですが。」 A.「違います。国民は、この危機に直面し、果たして憲法はどう機能するかを注視しました。その結果、すべての憲法上の機関が、連邦制度も司法制度も、最大限機能し、危機を乗り切りました。憲法に対する信頼は、より一層深まりました。」

政党制について。「政党は、異なった政治哲学を表現しており、そのことによって政治に緊張感を与えており、極めて重要です。」

議員スタッフについて。「私の事務所では、40人のスタッフがいますが、その給与はすべて国費で支弁されます。国費の額に従って事務所の年間予算を決め、これに従って消費していくのです。その中には、私のアジアへの出張も含まれます。」

党議拘束について。「私は、民主党所属ですが、民主党の大統領を公然と批判します。鉄鋼の貿易を自由にすると、私のWest Virginia州は大損害を受けます。そこで私は、クリントン大統領を批判しました。ある時、大統領が私のところに来て、『なぜ君は、私をそんなに困らせるのか?』と聞きました。そこで私は、『それはあなたが、国際通商法規違反をしているからですよ』と答えました。」

議院内閣制について。「私は、一度大統領を上院に呼びだし、いろいろ聞き正したいと思います。イギリスの、毎週のように議会が首相を聞き正すのは、本当に面白いですね。しかし同時に、イスラエルのように、連立の1小政党が首相を支持しないと決めたら、たちまち内閣が崩壊するというのは、困りものだと思います。大統領制の方が、安定していますね。」

選挙人制度について。Q.「winner takes allの制度を止めたらどうですか。」 A.「州によって違うのです。メイン州とネブラスカ州では、下院議員の選挙区毎に選挙人を選ぶのです。」

4時前に、かなり遅れて、ジョージタウン大学のマーク・タシュネット教授。大学の雰囲気はいいですね。面白い話がいっぱいありました。私の関心だけをメモ風に。
(1)なぜ、Majorityが複数あるとか、chuseというスペルを使っているとか、今では奇妙になっているところがあるのに、原文を直接改めずに、修正条項を付け加えるのですか。(2)“日本国憲法の先駆性”という議論をどう思いますか。

今日も1日、辰巳さんのperfect interpretationに助けられました。

明日は、6時半に荷物を出して、サンフランシスコへ。接続問題に、再び直面します。神の恵みがありますように。


1月11日(木) 嵐のシスコ、サクラメント、州議会、住民投票、電力危機、教育改革

今日は、9時のUA857便でワシントン・ダレス空港を発ち、6時間強の飛行で12時半にサンフランシスコ空港到着。つまり時差が3時間あるということで、アメリカの大きさに改めて驚きます。

機内で2度食事。機内放送の9チャネルで、管制塔と機長とのやりとりを聞くことが出来ます。「濃霧、強風、豪雨。滑走路は1本しか使えません。」「分かりました。」
といったやりとりで、ひやひやしました。海は湾内まで白波が立ち、しぶきが道路にまで上がってくるほど。今まで見たこともない悪天候だそうです。

そのままバスで2時間走り、カリフォルニア州の首都・サクラメントへ。3時からマイク・マシャド州上院議員と会談。先日の選挙で当選したばかりだというので、議会は全くの新人かと思ったら、その前に6年間、州下院議員を務め、引退した上院議員に代わって上院に出たとのこと。なぜ。実は1990年に任期制限の住民投票が成立し、上院は8年、下院は6年しか務められないのだそうです。

アファーマティブ・アクションやバイリンギュアル教育も、住民投票で廃止されました。住民の政治判断が試されているのでしょう。

電力危機が大問題です。規制緩和で電力料金を下げようとしたら、逆に需要爆発に供給が追いつかず、異常な値上がりと供給不足が生じました。今日3時半から、第3次供給制限で、そのため会談を予定していた州下院議長は時間をとれないということ。やむを得ません。

3時半から、ポール・ジャックス州災害室長代理。災害対策に当たる多くの公共機関や民間の協力体制が大切ということを強調されました。

4時から1時間、議長に代わりナカノ州下院議員。州と連邦の関係や教育改革につき意見交換しました。教育制度は徹底した分権。地域の教育委員会が、市政府からも独立して運営するので、教師の給与も市によって異なります。教科書は州で何種類かを決め、その中から委員会が採用決定します。カリキュラムは州が決めます。

チャータースクール制度は、親たちでも地域社会でも、意欲を持った人たちが、自分たちで学校を作り、これを公認して公的資金で運営できるようにする制度です。カリフォルニア州はこれを認めていますが、まだまだ流動的とのこと。

雨の中をサンフランシスコに戻り、7時半から10時過ぎまで、田中総領事の公館で夕食をよばれました。高台にあって、金門橋など眺望の素晴らしい場所ですが、夜で残念。帰りには嵐が嘘のように去り、冬の月が煌々と照っていました。「三笠の山にいでし月かも」。


1月12日(木) 行政長官、PPIC、ブラウン市長、団長招宴

今日は9時から、サンフランシスコ市役所に、事務方のトップであるCityAdministrator(行政長官)のウィリアム・リーさんとスタッフのポール・ホッシャーさんを訪ねました。すっかり晴れ渡り、雨に洗われて、気持ちのいい朝の空気が広がっています。

「連邦は、国防、外交、通商などだけを扱い、州以下の地方政府がその他のすべての事務を扱います。税の基本は、連邦は所得税、州は消費税、郡は資産税の徴税権を有し、消費税の一部は郡に交付されます。税は、納めたものが使い、使うものが納めるのが基本で、事務の分配も税源の分配に従って決められます。」

「社会保障、住宅、拘禁施設などは、郡の事務です。郡の中に市があります。サンフランシスコは1市1郡で、特別です。郡や市の権限は独立していて、例えば電力についても、ロスアンジェルス市は独自の体制を取っており、危機はありません。」

「徴税権も独立性が強く、サンフランシスコ市では、911(日本では119番)税を採用しました。1989年の大地震の時、電話が使えなくなったので、その改善のため、電話1回線毎に月1ドルの税を決めたのです。住民に支持されています。フィラデルフィア市では、資産税の税率を、市内居住者には2%、市外居住者には4%とし、市内の居住を推進しました。」

「市の職員は2万6000人ですが、その内300人が政治任用です。リーさんはもともと他の市の職員でしたが市長の目に止まり、ホッシャーさんは政治任用です。」

「サンフランシスコ市の支出の内、15%は連邦、20%は州、それ以外は市の財源で賄われます。

「第2次大戦のつらい記憶をまだ中国系やアジア系の人々は忘れていません。時々酷い言葉が出ます。領事館の人々は良くやっています。」

11時から、Public Policy Institute of California(PPIC、カリフォルニア州公共政策研究所)にデビッド・ライオン所長らを訪ねました。政治的に中立で、財政的にも独立したシンクタンクです。資料を用意してくれ、州の財政の構造につき説明を受けました。

「加州には、人口2000人から1100万人までの58の郡、人口数100人から600万人までの485の市があります。その他に様々な特定の事務を行う全部で5000の自治体があり、その内1000は教育自治体です。州の歳入中、連邦から来るのは30%程度で、おおむね一定しています。州の歳入を支出するのは、州が25%程度、資本投資が数%、その他は郡以下です。」

「税は大きく集める方がやりやすい。サービスは身近なところがやりやすい。そこで道路、社会保障、教育では、州が予算配分し、郡以下がこれを使って行政サービスを実施します。」

昼食後、3時半から1時間、オークランド市にジェリー・ブラウン市長を訪ねました。まず市の議事堂。8人の市議会議員が、ちょっと高い雛壇に弧になって座り、その前に事務局席があります。後方には傍聴席がたくさんありますが、その前に雛壇に向かってに発言者席があり、市民の有志が議員に対して発言します。マイクの前に、
「発言ははっきり」といった注意書きがあります。民主主義の原点です。

市長スタッフのロペス−ボーデンさんは、見事な英語を話す女性ですが、アメリカ国民ではありません。メキシコ人です。他民族国家ですね。

ブラウン市長は、一見禅のお坊さんを思わせる風貌。何が聞きたいのかと迫られました。Q.「まず何が問題かを見極め、次にその解決策を探すのですよ。」A.「そりゃあそうですが、日本の憲法問題は、何が問題かが問題なのですよ。」

「日本の憲法は、9条がありながら世界第2位の軍事費を支出するというのが現実です。世界の大量破壊兵器をなくするために、日本は出来る限りこの憲法を変えず、アメリカにももっと礼儀を弁えずものを言った方がいいのではありませんか。」

「地方にもっと自治権を与えた方がいいと思っています。アメリカでは、大気、水、バス、教育など、行政の各分野毎に自治体があり、選挙で選ばれたものが運営を決定します。加州でも5000以上の自治体があるのです。これが重なり合って行政を行っているので、決定は実に困難、複雑になります。解決できないときは、司法が訴訟の判断で決めます。これが民主主義で、非能率なものです。」

「今日は、警官の1人が射殺され、これからご家族のお見舞いに行くので、失礼します。」といった調子でした。迫力があり、大人気なのです。

6時半から団長招宴。田中総領事はじめ館員の皆さんと在留邦人の皆さんと共に、中華料理で盛り上がりました。結局ベイエリアでの観光は、ケーブルカーに乗っただけ。忙しいアメリカ旅行でした。

ところで、私の書き込みは、私が自分なりに大切だと思ったことを要約しています。
そこには、私の政治の考え方が入っていると思って下さい。また、発言の引用の体裁を取っていますが、正確な引用ではなく、文責は私にあります。活動の雰囲気をつかんで下さい。これ以上、報告を充実することは、時間の制約もあり、出来ませんので、悪しからず。


1月13日(土) 消えた1日

今日は、午前1時にサンフランシスコ発OZ213便でソウルへ。途中で日付変更線を越えるため、突然14日になって、1日消えることになります。ソウルから直ちに関空の予定です。


1月14日(日) ソウル国際空港から

I have just arrived at Seoul after a long fright which lasted for 12 hours.
Now, it is 7:10. Here, there is no time difference from Japan.
I will leave for Kanku at 10:00 by OZ112, and come back to Japan at 11:40 atlast.
I am sorry to write in English as there is no Japanese device here in the airport.


1月15日(月) 駅前演説、訪米報告

今日は、寒波の中岡山駅西口前で、石田みえ参議院議員、森本県議、羽場、田原両市議と共に、恒例の7時半からの駅前街頭演説「おはよう民主党です」に参加しました。私からは、新年の挨拶と訪米報告。

報告の要点は、次の3点です。(1)先の大統領選挙の混乱も、憲法が機能したから乗り越えられたというように、アメリカ国民がアメリカ連邦憲法に対し、強い信頼を寄せていること、(2)連邦憲法の原文に人権条項がなく、修正1条から10条も古典的な自由権の規定のみで、それも性差別禁止などに欠け、福祉、教育、労働といった社会権は規定がないのに、連邦の法律で憲法を補完しており、人権確保はしっかりしていること、(3)主権者は国民で、大気、水、交通、教育など、課題ごとに選挙された地域自治体(district)があり、これが重なり合って自治機構を作っており、市議会の議員数は、例えばオークランド市では8人、議場に市民有志が集まり、議員に意見を言う公聴会のような議会運営をし、民主主義の原点となっていること。


参考:参議院憲法調査会での「訪米調査団長報告


2001/01 アメリカ憲法、旅日記

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