平成19年11月27日
於 九段会館
天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、ここに財団法人日本遺族会が、創立六十周年の記念式典を盛大に開催されたことを、心からお喜び申し上げます。お招きをいただき、感謝に堪えません。
先の大戦により、わが国全土が焦土と化し、数え切れない悲劇が生じました。ご家族のもとを離れ、戦地で命を落とされた方々はもとより、最愛の肉親を失い、心に大きな空洞を抱えながら戦後の厳しい生活を送ってこられたご遺族の苦しみや悲しみは、まさに筆舌に尽くしがたいものであったと思います。当時のことを思うとき、私は今も、戦争の非業さに痛惜の念を禁じ得ず、二度とあの悲劇を繰り返してはならないとあらためて決意し、これを後世に伝える責任を痛感するのであります。
ご遺族の皆さまは、この想像を絶するご労苦を背負いながら、戦後間もなく、日本遺族厚生連盟を、そして後に日本遺族会を結成され、相互の扶助と生活の立て直しや地位の向上のために、活動を続けてこられました。そして今、六十年の星霜を重ねられ、本日の式典を迎えられたことに、心よりお祝いを申し上げます。
この間、私たちは廃墟の中から立ち上がり、日本国憲法の掲げる平和と民主主義の理念の下で、国民のたゆまぬ努力によって、飛躍的な発展を遂げてきました。私たちが享受している現在の平和と繁栄の礎には、戦争の犠牲となられた多くの方々の存在とご遺族の皆さんのたゆまぬご努力があることを、決して忘れてはなりません。そしてまた私たち国民一人ひとりは、平和の尊さとそのための努力の大切さをあらためて胸に深く刻み、わが国だけでなく世界のすべての人々の平和と幸福の実現に、これからも努めていかなければなりません。
結びに、戦争で亡くなられた多くの方々にあらためて哀悼の意を表し、ご遺族の皆さまのご健勝とご多幸をお祈りして、祝辞といたします。
平成十九年十一月二十七日 |
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参議院議長 江 田 五 月 |