2008年1月4日

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新春特別メッセージ

参議院議長・江田五月

えださつき 1941年生まれ、東大卒。1977年参議院初当選。衆議院4期。社民連代表、科学技術庁長官、民主党副代表、参議院議員会長など歴任。07年8月から参議院議長。

 新年明けましておめでとうございます。昨年の夏の選挙で、参議院が始まって以来初めて、野党が第一党となり、満票で議長に選出されました。議長就任に伴い党の会派を離脱、無所属となりました。読者、党の支持者の皆さんにこれまでのご支持に感謝を申し上げます。また、今後もご支持、ご支援よろしくお願い申し上げます。

情報の共有が議論の前提

 私は以前から、民主主義には五つの原則が必要であると考えてきました。

 一つは、情報の共有です。国政に関する情報は与野党が共有していなければなりません。共通の情報を基にすることで初めて深い議論が可能になります。

 2番目に議論の公開です。国民の目に見えるところで、議論がなされなければなりません。3番目に議論の相互浸透です。言いっぱなし、聞きっぱなしの平行線ではなく、より良い結論を導くための議論が必要です。4番目に多数決の原理。5番目が少数意見の尊重です。

 参議院をこの原則に沿った議会に近づけたいと考えています。

 参議院は戦前、戦中と貴族院でした。戦後改革で貴族制度が廃止され、参議院は誕生、まさに、戦後レジームそのものです。その意味では、昨年の夏の選挙結果は、戦後レジーム頑張れという民意だったと思います。

 参議院では採決の押ボタン方式の採用、決算審議の重視など、さまざまな改革がなされてきました。

 しかし、定数是正、1票の格差是正は、昨年の選挙でも4・86倍で、選挙区への定数配分方式、各県に定数1を割り当てる方式では、最高裁の要請に応えられないところまできています。そこで、各会派が参加する参議院改革協議会に、選挙制度の抜本的な改革を諮問しました。次の選挙に間に合うよう、成案を得たいと考えています。

「ねじれ」を生かす改革

 昨年の参議院選挙の結果、両院の意志が異なる「ねじれ国会」となり、その「ねじれ」のエネルギーをうまく引き出す、2院制のあり方を生かす改革が必要となっています。

 参議院で野党が多数となり、野党の主張が、参議院では法律の形で示すことができるようになりました。そのため、与党・政府も野党の主張、法案が国民のためになるのか、成立させることが与党のためになるのかを、真剣に検討せざるを得なくなりました。私の考える民主主義の3番目の原則が実現できる環境になったと言えます。

 その代表的な例が、改正被災者生活再建支援法です。参議院から法案を衆議院に送り、可決・成立しました。政治資金規正法の改正、これは衆議院からでしたが同じです。野党、与党が法案の一本化に向けて努力し、双方の案を取り下げ共同提案する方法は、これからの立法、議論のあり方の参考になります。これからもこうした方法で、国民のための法案が成立していくことを期待しています。

 さらに、今まではどちらかと言えば、くさいものに蓋だったことが、国政調査権の発動によってかなりの情報が出てくるようになりました。防衛省の事件もこれまでなら、明らかにならなかったかもしれません。これも逆転の成果です。しかし、国政調査権は諸刃の刃ですから、その発動に関して新たなルールづくりが必要です。

 いずれにしても、参議院改革に、これで終わり、はありません。走りながら考える、やってみてダメならまた考えることが肝要と思います。議長としてこれからも改革に取り組んでいきます。

議員は重い荷物を持つ

 最後に、若い議員の皆さんに申し上げたいことがあります。

 私は30年前に、36歳で議員になりました。その時は自分でも若いと思い、世間からも若いと言われました。いまは30代前半の議員がたくさん誕生しています。ずいぶん国会の風景も変わった、若返ったと実感しています。旧来の陋習にとらわれず、議会のあり方を模索してほしいと思います。

 また、国会議員になると何か偉くなったかのような錯覚をもつ人がいますが、そうではなく引き受ける荷物が重くなった、と考えていただきたいと思います。

 議員は、選挙にも労力を割かなければならず、大変です。しかし、真面目に国政に取り組み、自分の専門分野の勉強をしていただきたいと思います。

 参議院は良識の府、再考の府と言われています。自ら実践してきたのかは反省するところもありますが、与野党を超えて専門性をもつ高度な議論が行われるようにしていただきたいと願います。

走りながら考える、やってみてダメならまた考える

プレス民主177号(2008年1月4日発行)掲載
2007年12月5日取材)


2008年1月4日

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