2015年1月29日

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平成27年1月28日
参議院本会議  柳田稔議員「補正予算の財政演説」に対する参議院本会議質疑
参議院議員  柳田 稔


【はじめに】
 

民主党・新緑風会の柳田稔です。
会派を代表しまして、財政演説に対し質問をいたします。

【岡田新代表のもと民主党の目指す社会について】
 

  民主党は、年末の衆議院選挙において、改選前より多い議席を獲得させていただきましたが、未だ党勢の回復途上にあり、国民の皆様から十分な信任を得られているとはいいがたい状況と痛感しました。
民主党においては、党員・サポーター、地方議員、国会議員により開かれた代表選挙を行い、岡田・新代表のもと、本格的な活動を開始いたしました。民主党が二大政党制の一翼を担い得る政党として再生できるよう、私もその一員として、全力を尽くしていく決意です。
個別政策の議論は重要ですが、依って立つ「理念」「主義主張」を明確にすることこそ、政党政治の基本であると考えます。民主党は、今いちど、結党時の原点に立ち返り、2年前に決定した綱領に基づいて、今後の党活動、政策立案に取り組んでいきます。
  民主党は、「生活者」「納税者」「消費者」「働く者」の立場に立ち、政治改革、行財政改革、地域主権改革、規制改革など政治・社会の大胆な変革に取り組みます。
  一人一人がかけがえのない個人として尊重され、多様性を認めつつ互いに支え合い、すべての人に居場所と出番がある、強くてしなやかな共に生きる社会をつくること、国を守り国際社会の平和と繁栄に貢献すること、憲法の基本精神を具現化すること、国民とともに歩むことに力を注いでいきます。

【平和と外交】
 

(テロ対策)
  それでは質問に入ります。まず、平和と外交についてお尋ねします。
  「イスラム国」により日本人が拘束されるという事案が発生しました。罪のない人命を盾に取り、脅迫・要求する残虐で卑劣なテロ行為は絶対に許されるものではありません。非常に厳しい情勢ではありますが、民主党としても、政府の外交努力をしっかり後押ししていきたいと考えています。
中東やイスラム諸国においては、戦後日本の驚異的な経済発展に対する評価とあわせて、西洋とは異なる文化や価値観を持ち、また唯一の被爆国として、国際平和に積極的に貢献する日本の姿に対し、好意的な感情をもつ人々が少なくありません。憲法9条にもとづく平和主義国家としての日本の外交姿勢が、国際的にも高く評価されてきたことが、その要因のひとつです。
これら日本に対する好意的イメージこそが、日本の有するアドバンテージであり、西欧諸国にはない強みです。これを維持することが、今後の対応にとって非常に重要であると私は思いますが、この点、安倍総理のご見解を伺います。

(戦後70年談話)
  さらに、日本の戦後一貫してきた平和主義が、安倍内閣で変わるのではないかという点について質問します。
今年は、太平洋戦争終結から70年の節目の年にあたります。
  安倍総理は、戦後70年にあたっての談話について、「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」としつつも、「日本としてアジア太平洋地域や世界のために、さらにどのような貢献を果たしていくのか。世界に発信できるようなものを、英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく考え」であることを表明されました。
  しかしながら、総理の考える積極的平和主義が、これまで以上に自衛隊の海外での活動範囲を広げ、武力による日本のプレゼンスを国際社会に示すことで、国際社会にアピールすることが目的だとしたら、それはこれまでの歴代内閣や民主党の立場とは、異なるものだと言わざるを得ません。
  皆さん御存じの通り、日本国憲法第9条第1項には、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と記されています。即ち「国際紛争の解決のために、武力は用いない」ことを明確にしているのです。であるからこそ、戦後50年における村山談話では、「責任ある国際社会の一員として国際協調を促進」する方針を示すとともに、それだけではなく、武力を用いない国際平和を希求する観点から、「国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要」と併記されているのです。国際協調と軍縮、これこそが憲法9条の理念に基づいた日本独自の国際貢献策ではないでしょうか。
  安倍総理の言う積極的平和主義からは、この観点、すなわち憲法9条にもとづく日本独自の国際平和への貢献策に関して、オリジナリティがみえてきません。安倍総理の言うように、歴代内閣の立場を踏襲した談話とするのであれば、この点の有無が重要なポイントです。予定される70年談話について、総理のお考えをお尋ねします。
(核軍縮・核兵器廃絶への取り組み)
  つぎに、核兵器廃絶についてです。世界唯一の被爆国である我が国は、核兵器廃絶に向けた国際社会の取り組みにおいて、大きなプレゼンスを有しているとともに、多くの国々からの期待を背負っています。我が国は、日本国憲法の根本規範である「平和主義」を基調にして、戦争による惨禍がこの世界に繰り返されることがないよう、国際社会の平和と安定に全力で取り組んでいかねばなりません。
  特に民主党政権時代においては、日本・オーストラリアを主導とする有志国グループにて、「軍縮・不拡散ネットワーク」、略称NPDIを発足させ、国家横断的なネットワークにて、核兵器や核保有国を増やさない取り組みに着手しました。NPDIは自民党政権においても引き継がれ、昨年4月には広島にて、第8回のNPDI外相会合が開催され、「広島宣言」が採択されました。また今年は、5年に一度開催されているNPT再検討会議が開催される予定です。
  しかしながら、核兵器廃絶に向けての安倍内閣の取り組みと意欲は希薄であるとの感を禁じ得ません。総理の掲げる「積極的平和主義」においては、抑止力強化や防衛体制構築、日米同盟強化、防衛装備等における技術協力などが中心となっていますが、本来ならば、「積極的平和主義」とは、唯一の被爆国としてのプレゼンスを活かす等、これら核兵器廃絶の取り組みこそ中心となるべきではないでしょうか。
  そこで総理にお伺いいたします。今年開催予定のNPT再検討会議をはじめとして、核軍縮・核兵器廃絶への取り組みについて、どのようにお考えになっておられるでしょうか。総理の掲げる「積極的平和主義」における位置づけも含め、総理のお考えをお尋ねします。

【自然災害】
 

(自然災害への対策)
  つぎに、自然災害についてお尋ねします。
昨年は、広島市の土砂災害や御嶽山の噴火でも多くの方々が犠牲となりました。亡くなられた皆さまに改めて心よりお悔やみを申し上げます。わが国は、地震をはじめとする様々な自然災害に常に襲われる国であるという、厳しい認識を持たなければならないという思いを新たにしました。政府や地方自治体においても、個々の災害を決して「想定外だった」ということで終わらせるのではなく、従来の想定、行動基準、マニュアルなどを詳細に点検し直す必要があります。
  国会でも昨年、土砂災害防止法の改正案を成立させました。この改正法だけで十分というわけではありません。住民の皆さんの理解と協力なくして防災は成り立ちません。
  政府においては、「国土強靱化」の言葉ばかりが踊り、災害対策を地方自治体任せにするのではなく、ソフト面での体制づくりにも力を入れていただき、国と地方自治体、そして住民の皆さんが密接に連携できる災害対策こそが求められているところだと考えます。
  総理大臣のご見解と多発する災害に立ち向かうご決意を改めてお聞きします。

(阪神・淡路大震災)
  さる一月十七日は、あの阪神・淡路大震災から二十年という節目の日となりました。天皇・皇后両陛下にも神戸にお越しいただき、追悼式典が開かれました。あの震災で犠牲となられた皆さまのご冥福を改めてお祈りするとともに、被災地の真の復興とは何なのかを、改めて問い直される一日となりました。外遊されていた総理は、陛下ご出席の追悼式典をご欠席されました。なぜ二十年という節目の追悼式典を欠席し、外遊されたのでしょうか。お答えください。
戦後最大の都市直下型地震となった阪神・淡路大震災から二十年が経ち、国の最高責任者として、この大災害を受けた教訓は一体何だったのか、国としてこうした都市直下型地震災害にどう立ち向かっていくのか。ご決意、ご見解をお聞きします。

(東日本大震災からの復興)
  東日本大震災から、はや四年の月日が流れようとしています。震災からの復興を進めるにあたっては、もちろん与党も野党もありませんし、党派的対立を持ち込むなどもっての外です。安倍総理は内閣の基本方針として、復興の加速化を第一に掲げ、「まず何よりも、『閣僚全員が復興大臣である』との意識を共有し、省庁の縦割りを厳に排し、現場主義を徹底する」としていることは率直に評価いたします。
  しかし、「被災者の心に寄り添いながら、東日本大震災からの復興、そして福島の再生を、更に加速していく」と言いながら、あの原発事故以降に福島県に行ったこともない政治家を経済産業大臣に任命したのには驚きました。復興道半ばの昨年冬、被災各市町村が最も多忙な時期に平然と解散・総選挙を行ったことも理解に苦しみます。
  この国会では「地方創生」なる言葉が踊るのでしょう。以前は、「成長戦略実現」という言葉も踊っておりました。被災地の皆さんから見れば、こうした踊る言葉の陰で被災地が忘れ去られてしまうのが不安なのであり、地方創生ができれば復興も進む、成長戦略が実現すれば復興も進む、では如何にも他人行儀に聞こえます。総理、被災地の皆さんに声が届くよう、「被災地、そして福島の復興なくして日本の再生はない」、「震災復興が第一である」とのご決意を、改めてお聞かせ下さい。
  また、被災各地から聞こえてくる声として、来年度で区切りとなる集中復興期間が延長されるのかどうかという問題があります。先ほども申し上げたように、被災地が忘れ去られるのではないかという漠然とした不安感は日々拡がっているように思います。集中復興期間の延長について、政府ではどのように検討が進んでいるのか。被災地の皆さんに安心して生活の再生に取り組んでいただけるよう、総理大臣の見解を伺います。

【格差拡大について】
 

(都市と地方の格差・地方創生)
  つぎに、格差拡大についてお尋ねします。
  先の総選挙においては、「アベノミクス」が争点となりましたが、自民党の大都市、大企業、富裕層だけが発展して、下には“おこぼれ”がいけばいいとする「トリクルダウン」に対して、私たち自身が民主党の経済政策の基本理念をしっかり訴えることができなかったことも率直に反省したいと思います。
  民主党は、個人の自立を尊重しつつも、格差を是正して、一人ひとりが能力を発揮しやすい社会をつくっていくことに全力を注ぎます。各地域、中小企業が経済を引っ張っていけるよう、とりわけ若者、女性、高齢者へのきめ細かい支援を行い、厚みのある「ボトムアップ経済」への転換をはかることが、民主党の経済政策の大原則であります。
 
 さまざまな格差の一つとして、まず、都市と地方の格差についてお尋ねします。都市と地方の格差は、地方都市におけるシャッター街が象徴するように以前から課題として提起され、これから進む高齢化と人口減によって、将来的に全国の地方自治体の半分が消滅する可能性があると指摘されています。都市部と格差がさらに広がりかねない地方の活性化は急ぐ必要があります。
  しかし、政府の掲げる「地方創生」は、これまでと同様の、国主導の経済中心の視点になっていないでしょうか。国の「まち・ひと・しごと総合戦略」をみると、2020年までの5年間累計で東京圏から地方への10万人の人材還流や地域の若者雇用の30万人創出などの数値目標ばかりが並び、それを実現するための具体的な処方箋は見受けられません。そればかりか、政府の戦略を地方も習えと地方版の総合戦略の策定を要請し、それに沿ったところに交付金を支給するとすれば、単なる国主導の経済政策にしかなりません。
  あくまでも地方創生は、地方の考えで、眠っていた知恵と地域独自の居場所感が十分発揮される仕組みづくりを進めるとともに、それを推し進めるため資金面で国から支えるというスタンスで構築すべきです。
  地方創生はどのようにあるべきか、総理に理念をお聞きします。
 
 また、26年度補正予算案で1700億円の地方創生先行型新交付金の配分が盛り込まれていますが、27年度当初予算では、このような新交付金は計上されていません。おそらく補正予算で27年度も乗り切るということでしょうが、そうした1回限りのような交付金で5年に渡る地方版総合戦略の実施を見通すことは、地方にとっても不安な要素です。自由度の高い一括交付金のような制度を恒久化していく所存なのか、総理にお聞きします。

 また、補正予算案では、消費喚起や生活支援を目的とした2500億円の交付金が新設されました。地元の商店街で使う商品券や、ふるさと名物の購入に使う商品券の発行などの事業が消費喚起効果の高いものとして挙げられていますが、はたして即効性はあるのでしょうか。2009年には、経済不安や物価高騰などに直面する家計への緊急支援策として、定額給付金約2兆円が家計に給付されましたが、内閣府の調査によると受給額の25%しか消費が増えなかったとされており、効果は限定的であったと見られています。今回の交付金について、過去の反省は活かされているのでしょうか、総理の見解を伺います。

(世代間格差・年金のマクロ経済スライド見直し)
  つぎに世代間の格差についてです。
社会保障の支出が高齢者に手厚く、子どもや子育て世帯には手薄であることなどから、社会保障の世代間格差が指摘されています。そのため、年齢にかかわらず、支える余力がある人がそうでない人を支える観点も取り入れて、格差是正を図ることが必要です。
 しかし、安倍政権では、支える余力が無い人にも負担を求めることになりかねない検討が進んでいます。例えば、安倍政権は、現在の高齢者の年金と現在の若い世代が将来受け取る年金を調整するため、年金のマクロ経済スライドを物価・賃金の伸びが小さい場合でもフルに発動できるようにすることなどを検討しています。現在の若い世代が将来受け取る年金を確保することは重要な課題ですが、やり方によっては今の高齢者の年金の目減りが大きくなり、年金受給者の生活が立ち行かなくなってしまうおそれがあります。マクロ経済スライドを見直すにあたって、具体的にどのような制度設計をお考えなのでしょうか。総理の答弁を求めます。

(子どもの貧困)
  子どもの貧困は特に深刻です。
17歳以下の子どもの貧困率は2012年に16.3%と過去最悪を記録し、子ども6人に1人が貧困の状態にあるといわれています。貧困問題は深刻な社会問題です。
 民主党は、子ども手当、高校の実質的授業料無償化を実現しました。その結果、高校中退者が減りました。
一方で、昨年8月に「子どもの貧困対策に関する大綱」が閣議決定されましたが、この大綱では、貧困削減に向けた具体的な数値目標は示されず、即効性のある経済支援もありませんでした。私は子どもの貧困対策こそ早急な対応が必要だと考えます。対策を1年、2年と遅らせるうちに子どもは大きくなってしまいます。日本の未来をつくる子どもたちの貧困問題について総理はどう対応するお考えでしょうか。お聞かせください。

(働く人の格差・労働法制)
  働く人の格差も深刻です。
2012年に1813万人であった非正規雇用の人数は、2014年11月時点で2012万人になり、安倍政権で約200万人増えたことになります。平成25年分の国税庁の民間給与実態統計調査によれば、正規雇用の平均給与が年収ベースで473万円であるのに対して、非正規雇用の平均給与は168万円と約300万円も格差があります。にもかかわらず、安倍政権は昨年、二度にわたって、正社員と派遣労働者の均等待遇の確保がないまま、派遣労働者を増やす労働者派遣改悪法案を提出しました。低い処遇の非正規雇用労働者がさらに増えてしまいます。
 労働法制の改悪によって潤うのは、働く人を都合よく使うことばかりを考えている企業なのではありませんか。総理の答弁を求めます。

【むすび】
   民主党は、すべての人に居場所と出番がある、強くてしなやかな共に生きる社会をつくるために、今国会でも精一杯努力していく所存です。ここに決意を表明し、私の代表質問を終わります。ありがとうございました。

2015年1月29日 平成27年1月28日 柳田稔議員「補正予算の財政演説」に対する参議院本会議質疑

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