2000/08/09

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参院・法務委員会

10時から3時間、法務委員会。私は司法ネクスト大臣として35分間、保岡法務大臣と「大臣対決」を行いました。まず靖国神社公式参拝問題。靖国神社が宗教施設であること、公式参拝は宗教活動となること、A級戦犯合祀で外交問題になることを挙げて、注意を促しました。戦没者追悼のための適切な施設が必要とも述べておきました。

次いで司法制度改革問題。2月の日弁連ら主催のシンポジウムに出席した政治家のパネリストは、保岡大臣と私だけでした。共に弁護士です。そこでその時の感想から始め、司法改革にかける決意、政治のリーダーシップの必要性、法曹一元や陪審への考え方などを質しました。やはり保岡さんも大臣になると発言が慎重になります。しかし法曹一元への理解はあると思っています。


○江田五月君 保岡法務大臣、まずは御就任を心からお祝い申し上げます。
 私は、一九六六年から六八年、司法研修所で研修を受けました二十期でございまして、保岡さんはその一年前から二年間、十九期で研修を受けておられまして重なりますが、ちょうど重なったときの、たしか実務修習、検察修習で御一緒だったですね。東京地方検察庁の大部屋で、十九期と二十期ですから私どもは後輩ですが、十九期の皆さんのことを仰ぎ見ておって、その中に保岡さんがおられた。懐かしく思い出しております。たしか、共産党の簑輪さんも一緒だったですね、簑輪さんは十九期だったと思いますが。

 そんなことで、私たち民主党は、総選挙後の第二次森内閣を、どうも相変わらずの派閥順送りで滞貨一掃、不適材不適所内閣、来年一月の省庁再編までのつなぎ内閣だなどと大変批判をしておるわけですが、私は保岡法務大臣だけは例外、まさに適材適所、殊に二十一世紀の日本の国の形を決める重要な要素である司法制度改革の最も重要な時期に、長年この問題に中心的に取り組んでこられた保岡さんの法務大臣御就任は本当にすばらしいと思っております。来年一月の省庁再編までのつなぎなどと言わずにもっと長く、これは保岡さんに申し上げてもいけない、森さんに言わなきゃならぬのでしょうが、やっていただきたいと思っております。

 実は民主党の方ではネクストキャビネットというものを制度化いたしまして、私が司法ネクスト大臣ということで、どうもそんな名前も面映ゆいんですが、保岡大臣のカウンターパートということになっておりまして、きょうは私の保岡大臣への、最初のこちらとしては大臣対決という思いの質問をさせていただきたいと思いますが、時間も限られております。

 本来なら、今もお話がありました少年犯罪、少年法改正問題とか、あるいはさっきの大臣の所信の説明の中にございました人権侵害救済システムについての人権擁護推進審議会での議論の方向性とか、きょうは残念ながら請願採択にならないようですが、いろいろ請願が寄せられている通信傍受法廃止に関することであるとか、あるいは選択的夫婦別姓制導入に係る民法の改正の問題であるとか、きょうのごあいさつの中ではどうも出入国管理の関係では厳正にという、厳しい取り締まりということが強くなっているような書きぶりですが、その方向もありますが、同時に日本が国際的に開かれていくために外国人も一緒に住めるような、そういう行政はどう進めていくべきかとか、いろんな議論をしなきゃなりませんが、きょうのところはひとつそういうことは後に回して、司法制度改革一本に絞って議論したいと思います。

 ただ、その前に一つだけ、一番最近のホットニュースについてお伺いしておきたいんです。
 保岡大臣は八月十五日の靖国神社への公式参拝について、これは閣議後の会見なんでしょうか、公式に参拝されると、そういう意見を述べられたということですが、私も戦没者に対して弔意を表すること、これは大切なことだ、またそのための適切な施設があることが望ましい、そのこともそうだと思うし、これを十分みんなで検討しなきゃならぬということはそう思います。

 しかし、今の靖国神社というのがさまざまな角度から、そのような政府の閣僚が公式に戦没者に弔意を表する機関としてふさわしいのか、これが実は問題になっていて、森総理ほか多くの閣僚の皆さんがちゅうちょされているということなんですが、そのあたり、ほかの閣僚の皆さん、総理大臣も含めちゅうちょされているということを保岡さんはどうお感じですか。

○国務大臣(保岡興治君) ネクストキャビネットの民主党の法務大臣である江田五月先生と、こうやって委員会を通じて意見の交換ができることを大変意義深く、またありがたいと思っております。検察修習で実務修習を御一緒したことも懐かしい思い出でございます。友情にもとらないように頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今お尋ねの点については、私は、確かに森総理初め公式参拝を慎重に考えている閣僚の皆様方は、近隣諸国とかに対する配慮、あるいはまた憲法二十条の、国は宗教活動を一切行ってはならないということとの関係で慎重にされているものとは思います。

 しかし、私はやはり閣僚として平和を祈念する機会をしっかり持ちたいと。それは、さきの大戦で犠牲になられたとうとい戦死者などに対して哀悼の意を表する一番重要なときだと考えておりまして、八月十五日の記念すべき日に祭られている皆様方のところに伺って、いろいろ国家が宗教的活動を行ってはならないという配慮などから方式が決まっておりますので、そういう方式にのっとってお参りをしてまいりたい、こう考えておるところでございます。

○江田五月君 私は、靖国神社というのは、幾ら理屈をこねてみてもそれはへ理屈で、宗教的施設であって、そこへ参拝することは宗教的な行為になるし、また靖国神社に合祀されている仕方がやはり近隣諸国の神経を逆なですることになっておる。慎重に考えなきゃならぬ。しかし、慎重に考えてと言うだけでなくて、みんなで戦没者に哀悼の意を表する、そういうやり方は何がふさわしいのか、本当に知恵を絞らなきゃならぬという気持ちでおります。ひとつそこは、そういう意見もよく御理解いただくようにお願いをしておきたいと思います。

 さて、今年二月十八日、日本弁護士連合会などの主催で司法改革・東京ミーティング、「裁判が変わる 日本が変わる わが国司法改革のゆくえ」というタイトルのパネルディスカッションが開かれました。政治家としては、保岡大臣と私の二人がパネリストとして参加をいたしました。その結果がこういうパンフレットになってできております。

 私は、これは保岡大臣も同じ印象をお持ちになったかと思うんですが、会場へ行ってみまして、有楽町のよみうりホールですが、有楽町駅の改札口からホールまでずっと人の行列でつながったんですね。驚きました。定員が千五百名のホールが人であふれ、立ち見も出て、入れなくて帰られた人も大勢おられる。しかも、二千五百用意した資料が全部なくなって資料ももらえずに帰られた、そういう人が大勢おられると。

 また、ディスカッションの中でも、私は初めは弁護士事務所の皆さんが事務員の人を動員したのかと思ったんですね。ところが、どうも拍手の出方なんかを見るとそうじゃないことは明らかですよね、弁護士に対する批判にも拍手をと、こうなるわけですから。

 やはり今この盛況ぶり、単に社会のニーズの変化に対応する司法だとか、国際化への対応だとか、そういうものを超えて、何か国民の中に我が国の司法のあり方あるいは司法改革というものへの熱い思いというものがあるんだと。今の司法に対するあるいは怨嗟の声かもしれません、弁護士制度も含めて。しかし、それを変えたいという思い、こういう国民、市民の皆さんの司法改革への思いというものを大臣はどう受けとめておられますか。また、それを受けての保岡大臣の司法制度改革への決意、これを改めてお聞きしたいと思います。

○国務大臣(保岡興治君) 先ほど国井先生からも同趣旨の御質問をちょうだいして、一応きちっとしたお答えを申し上げたつもりでございますが、端的に江田先生のお話にお答えしますと、この間のよみうりホールでの日弁連主催のあの会は、私もすばらしい会だったと思います。国民の中にああいう司法制度について強い関心、高い期待があるということは、私も大変心強く感じております。

 私自身、今、江田先生が御指摘のように、党にあって二年余り前から司法制度改革の会の責任者をしてまいりまして、法曹三者に御出席をいただきまして、そして各方面からも意見もちょうだいして、二次にわたって報告書も取りまとめてまいったものでございます。

 司法制度改革については一生懸命全力を尽くしたいと思っておりますが、とにかく立法改革という意味で国会改革や政治改革が進んで、政界再編も怒濤のように始まって今日に至っております。また、行政改革についても、中央省庁の再編や地方分権、その他改革の理念に沿った措置がとられつつありますが、三権のもう一つである司法権、これは行革審の最終答申にも、この国の形を整えるためには司法の再構築が不可欠である、行政改革の最終結論は司法改革である、行政が担っていた事前チェック型の国家から事後チェック、事後救済型の司法を一つの社会の重要な基盤とする転換であると。

 したがって、行政から司法に役割が振りかわっていく部分が非常に多い。このことは、世界がボーダーレス化していわゆる国際化が進んで、世界が知恵と工夫、そういったものを競い合う競争社会になって、それに地球の将来の繁栄を求めよう、あるいは高度化、成熟化を求めようという流れにあって、我が国もまたそれに沿った対応が必要で、自己責任と透明なルールの社会、法の支配という民主国家としての最終の理念に至るということでございます。そういった意味での司法制度の基盤を質、量とも充実強化して、国民の求める、時代が求める司法改革というものが二十一世紀の日本の国家を建設していく上での大きなテーマであり、必要な点については各方面からも意見がどんどん出てきている、そしてまた、司法改革審も設置されて鋭意審議も進んでいる、そういう状況を踏まえて、法務大臣として適切に対応してまいりたいと思っております。

○江田五月君 今の御決意は、それはそれとして私は高く評価をしたいと思います。

 ただ、大臣、ぜひ考えていただきたいのは、そのような言葉が本当に国民、市民に響くかということなんですね、胸にどう響くかと。今、本当に国民の皆さんが司法制度、弁護士含めどうしてあんなに敷居が高いのか、どうして自分たちにわからない言葉でやっているのか、裁判へ行ったって何が行われるかわけがわからぬ、判決は一体いつになるのかなど、そういういらいらした思いを持っているわけです。そのいらいらした思いが、司法制度改革のパネルディスカッション、普通の人だったら、行ったってどうせちんぷんかんぷん、わけがわからぬと足が遠のくようなディスカッションにたくさんの人が押しかけるという現象が出てきているわけですね。

 もう一つ、これは日弁連が多分中心になってやっておられる司法制度改革審議会に対する署名運動がありまして、六項目で結構わかりいいんですね。司法関連予算を大幅に増額してくれと。公設法律事務所など、だれでも気軽に弁護士に相談できるようにしてくれと。それから、行政の不正や怠慢を正せるように行政事件訴訟法などを改正してくれと。あと、官僚裁判官制度をやめて法曹一元制度、法曹一元という言葉自体はちょっと難しいですが、これを実現してくれと。陪審、参審など、とにかく市民が参加できる制度にしてくれと。あとは、お金がなくても裁判ができるように民事、刑事制度を整えてくれと。もちろん、ここに書いてある文章は今私が言ったのよりはもうちょっと難しい言葉で書いてありますが、比較的簡単な言葉で書いてある六項目、この署名が随分集まってきておって、きのう段階で何と百三十六万七千二百十八人の署名が集まっていると。

 こういうこともやっぱり今、先ほども申し上げた国民の中に司法というものに対するもどかしさ、怒り、何とかしろという思い、こういうものがあると。保岡大臣、これはあなたに対する絶好の応援団じゃありませんか。どう思われますか。

○国務大臣(保岡興治君) 先ほどもお話ししたように、国民が時代の変化あるいは社会の変化というものの中で司法へのニーズを求めて、非常にいろいろな問題を抱えていろいろ苦しんでいる。そういった中から知恵と工夫をきちっと生み出して、そして政治がリーダーシップをとってそれを制度化して、新しい二十一世紀の司法を描いていくということだろうと思います。

 そういった意味で、そういう国民のエネルギーというもの、新しい二十一世紀の司法の全体像、国家、社会の中の位置づけというものが国民に本当にわかりやすく、私たちの問題を解決してくれる期待される司法というはっきりした絵が描けてくれば、また国民みんなで力を合わせて新しい司法をつくっていくエネルギーに変わっていくと私は思いますので、先生が言われたような応援団ではないかという趣旨はそういうふうに受けとめております。

○江田五月君 繰り返すようですが、今までですと裁判なんというのはお上がやること、昔なら天皇の名でやること、庶民がいろいろ遅いだの言葉が難しいだの、そんな文句を言うようなのも恐れ多い、こういう感じだったんだろうと思います。

 しかし、それがだんだんそうじゃなくなって、司法というのも実は国民主権の中での国の営みなんで、自分たちの方が主人公なんだぞと。裁判官は威張るんじゃないよと、悪い言葉で言いますと、そういう思いさえあるような時期になってきた。だから私はここで、司法というのも国民主権の一つの営みなんだと、そういう方向に大きく改革をするチャンスだというように考えております。ぜひそういうことで、一緒に単なる妥協点を探るとかではなくて、心合わせまでやりながら司法改革をしたいと思っております。

 今年五月十八日に、保岡大臣が会長を務められていた自由民主党司法制度調査会が「二十一世紀の司法の確かな一歩 国民と世界から信頼される司法を目指して」という報告書を発表されましたね。私たち民主党も、ちょっとおくれましたが、七月十二日に「市民が主役の司法へ 新・民主主義確立の時代の司法改革」という文書を党の機関決定を経て私の名前で発表いたしました。

 保岡大臣たちが大変な努力をされた自民党の報告書と私たち民主党の改革案には共通する内容も非常に多く含まれていると私は思っております。違いもありますが、共通する部分も非常に多い。

 保岡さん、民主党の文書は読んでいただいていると思いますが、御感想はいかがでしょうか。

○国務大臣(保岡興治君) 民主党の御提言については興味深く拝見させていただきました。示唆に富む内容でございまして、精力的に取りまとめに当たられたと伺っている江田委員長に対しても心からの敬意を表する次第でございます。

 各党を初め国民の各界各層において、それぞれの立場から司法制度改革について検討されまして、その主張を公にされていることは、本当に国民的基盤に立った議論を可能にするという点で大いに意義があると思っております。

 骨太には、司法のあり方の基本というところはみんなほとんど変わりがないんだということを、私はいろんな意見を伺いながら、江田先生がまとめられた民主党の案も含めて、非常にその点は一致していると思っております。

 したがって、先生が言われるように手を携えて、ともに共通の認識や理念のもとに、具体的な施策については大いに論議を深めながら国民の求める司法を実現したいと思っております。

○江田五月君 二月十八日のディスカッションで、保岡大臣は、最終的には江田さんや各党と協議して国会で法律という形で制度をつくります、我々は国民の代表ですから、骨太にこの国の形、その中での司法のあるべき姿をきちんと方向づけようと、また縦割りですから官僚にできっこない。官僚制度というのは縦割りだからという意味ですね。だから、政治がやはりリーダーシップをとる、しかし現状に苦しむ国民の知恵と工夫から政策を立案して政治が主導しようというのが我々が努力しているポイントですと。あるいは、司法は影が薄かったんです、しかしこれからは審議会と一緒になって、江田さんたちみんなと一緒になって、皆さんの知恵と工夫を将来の日本に結びつけるように頑張りますと。このような発言をされておられる。

 私の名前を言ってくれたからという意味じゃなくて、その部分は除いても結構ですが、どれもすばらしい発言だと思いますが、これは就任されても変わっておられませんね。

○国務大臣(保岡興治君) 今、江田先生が述べられたそのときの私の発言は心を込めてお話ししたつもりでございまして、先ほどから述べておりますこともそのことを踏まえてのことでございまして、全くそのつもりで大臣になってからも対応したいと考えております。

○江田五月君 各論に入ります。

 自民党の報告書と民主党の改革案でまず文句なく一致しているのは、法曹人口の増加あるいは司法関係職員の増員、司法予算の充実、法律扶助制度の拡充、裁判外紛争処理制度、いわゆるADR、オルタナティブ・ディスピュート・リゾリューションの充実、隣接専門職種の活用などで、私どもの案には行政書士がちょっと抜けておりましたが、これは加えるつもりでおりますけれども、こういうことなど、たくさんあります。

 まず、法曹人口の増加について、これは中坊さんは例えば六万人体制とか、私たち民主党は十年で五万人、もちろんこれは法曹養成制度を変えてから十年ですが、十年で五万人、さらに将来は十万人体制。自民党はフランス並みと言うんですが、人口換算で六万人ぐらいになるんでしょうかね。

 保岡大臣、現在のお立場で法曹人口増加についてはどのようにお考えになりますか。

○国務大臣(保岡興治君) 二十一世紀のあるべき司法の根幹は、何といっても司法を支える人的基盤の整備の質、量の強化にあって、これなくしては新しい司法の姿は描けない、基本中の基本だと思っております。

 そこで、質の点については、いわゆるロースクール、法科大学院構想を司法制度改革審議会でも鋭意検討していただいているようでございます。

 一方、法曹の量の問題でございます。これについては、今、先生が各方面からの意見として述べられたいろんな御意見があるところでございます。そしてまた、民主党の御意見についても先ほどまとめられた提言の中にあることは承知しておりますが、例えば司法改革審で毎年三千人法曹を輩出できるようにしようではないかということでほぼ意見の一致を見たというふうに漏れ聞いたところでございます。

 そういうことを前提にしますと、やはり法曹の質を確保し、法曹養成制度との関係あるいは司法修習をどうするか、その受け入れの体制、その他もろもろの問題が現実的にはその前提となってまいりますので、そういう前提条件を一つ一つクリアしながら我々の目的とする法曹人口の量の確保ということを調和させて、できるだけ早く量の拡大をしてしかるべき法曹人口を得なければならないと思っております。具体的な目標については、今後、司法制度改革審議会の審議なども踏まえ、いろいろ御議論のあるところもまた参考にして答えを得ていくべきだと考えております。

○江田五月君 大臣になられますといろいろ慎重に御発言をしなきゃならぬというのはよくわかりますので余り突っ込みませんが、やっぱり質と量、量がふえるだけで質が悪ければだめよと、それは当たり前の話で、しかし質が幾らよくたって量がなかったらだめよと、これも当たり前の話で、それの調和をとって、そして各方面、養成のロースクールがどこまで整ってきたか、研修の期間はどういうふうになっているか、そういうことをちゃんと全体を見ながらというのは当たり前の話なんですね。

 それを言っているだけでは先ほどの国民のいらいらは解けないので、やっぱり何かこういうものというはっきり見えるものを、例えば十年後には五万人にするとか、そういうことをもう明確に打ち出してやる、それも一つの手法だと私は思うんですよ。そうでないと、今の大臣のお話はわかりますよ、お気持ちはわかりますが、そこを一歩踏み出すことを国民が今求めているんだという気がしますが、重ねてちょっと伺います。どうですか。

○国務大臣(保岡興治君) 具体的な一歩ということでございますが、秋には司法改革審で中間報告の取りまとめもあります。それに対してパブリックコメントを求めるということになっておりますし、来年の七月には最終答申も出るかに伺っております。その中で、お互いがいろいろ今まで思いを込めて、絶対必要だと思える司法改革の中心課題について、先生が今思われているようなある程度具体的な骨太のきちっとした答えが出てくるものと私も期待して、今後、改革審の審議のあり方に御協力をしていきたいと思っております。

○江田五月君 今の法曹の量をどおんとふやしていく、これは五万人か六万人か、あるいはそれが十年か五年か、いろいろそれはあると思います。しかし、そういう方向をしっかり見据えて、目標はここなんですよということをしっかり見据えて、そのことについては大臣のお立場もあるからぱっと言うわけにはいかないとしても、同じ思いを持っているんだということはお互い確認をしながらやっていければいいなと思っておるんです。

 次に、やっぱり今回の司法制度改革の最大のポイントは、裁判官をどう養成していくのか。研修所を終わってすぐ裁判官になって、判事補ですが、大学も優秀な者は三年ぐらいで通って、そして大学を卒業したらすぐ二年の研修で、後はもう判事補制度の中でずっと育ってというのではなかなかすばらしい裁判官が育ちにくいという感じを私は強く持っております。

 一人一人の裁判官のだれがどうということは全く思いません。皆それぞれまじめに一生懸命やっている、体をすり減らしてやっている、心もすり減らしてやっている、そういう裁判官の皆さんの御努力、これに文句を言っているわけでは全くありません。しかし、国民から見ると、今の裁判官はこれでいいのかという思いはやっぱりあるんですよ。やっぱり人を裁く人、どんな人でもそうですが、特に人を裁く人というのは人の中で育つんじゃないですか。一定の限られた裁判官という世界の中だけではなかなか育ちにくい。

 そこで法曹、今の弁護士を中心とした量の拡大に伴って、そういうものを基盤としながら、私は、やはり十年なら十年弁護士をやって、市民の中で育ってみんなから尊敬も集める、信頼も受ける、そういう人から裁判官というものを任用していく法曹一元という制度が我が国のあるべき裁判官の制度としてどうしても必要だと。これはそっちに向けて実現の努力を一歩一歩現実に進めていかなきゃならぬときが来ていると思いますが、いかがですか。

○国務大臣(保岡興治君) 社会がどんどん進んでいく中で、社会の実情あるいは時代の変化という中で出てくる司法のニーズというものに的確にこたえる、その基本はやはり優秀な裁判官に支えられる司法だと思います。優秀な裁判官は、もちろん法律の知識に精通しているということもありますが、今申し上げた時代の変化や国民のニーズを的確に把握できる、その本質を見きわめる能力のある、多様な経験を積み、広い視野と高い見識を備えた者を裁判官に登用する工夫が必要だと私も考えます。

○江田五月君 物をなかなか言いにくいところであろうということはよくわかります。今の御答弁、基本的には法曹一元制度はその実現を目指していくべき望ましい制度である、こういう趣旨だと理解をしたいと思います。

 司法への国民、市民の参加でもう一つの論点となっている陪審制ですが、自民党の報告書はどうも消極的なようです。二月十八日のディスカッションのときに、保岡大臣は、民事については別として、刑事については裁判官の裁判を受けたいという人の権利を保障することも重要ですから、選択制を前提に陪審の導入の検討も重要で、陪審での事実関係は市民の常識で御判断いただく。陪審では国民がそこに参加して、責任を持って社会のこと、犯罪のことを考えることがとても大切ですと。裁判官はそういうのをずっと眺めていて、世の中の市民がどう判断するのかを学ぶ機会にもなるので非常にいい仕組みではないかと思っておりますと。

 言葉で述べているところですから、文章を後で読みますと、ちょっとはっきりしないところはありますが、しかし基本的には陪審というのはいいというふうにおっしゃっている。これもすばらしい発言だと思いますが、改めてここでその発言はそのとおりでよろしいですね。

○国務大臣(保岡興治君) 日弁連の東京ミーティングの際の私の発言は、今、江田先生がおっしゃったとおりでございますけれども、陪審制については、今私が考えていることも一つの利点としてある、最も国民参加が直接行われる制度だと存じます。他方で、陪審制度についてはいろんな議論があることも事実でございまして、陪審による裁判に対する国民の信頼の確保とか、陪審員としての責務を担うことについての国民の理解や負担など、いろんな観点から検討をしなければならないと思います。

 そういった意味で、例えば私たちの自由民主党における調査会の報告が多少慎重な結論になっておるがという御指摘がございましたが、確かに我が党の中には、私の考え方というものもありますが、また他の、慎重にすべきという意見もあって、これからよく検討していこう、司法改革審の議論もいろいろ見ていこう、そういうことで、今後検討していく課題になっていると思います。

 個人的に私が考えていることと、大臣としては改革審等の結論を踏まえて、いろんな御議論を踏まえて答えを求めていく。参審制に対して自民党もかなり積極的な提言を行っております。私としては、そういう一歩を通じて司法参加を求めていく具体的な歩みをすることも大切かと思っております。

○江田五月君 時間が参りました。
 そのほか、例えば行政訴訟の改革であるとか、あるいは犯罪被害者、先国会でちょっとやりましたが、あれでいいか、十分かとか、いろいろあります。最高裁のジェンダーインバランスのこともちょっと伺いたかったんですが、保岡大臣、二月十八日におっしゃった、政治がリーダーシップを持って現状に苦しむ国民の知恵と工夫から改革を立案し、みんなで一緒に司法改革をやろうという政治のリーダーシップ、これをぜひ発揮していただくようにお願いし、私どももだめなときはもちろんだめと当然言いますが、すばらしいものについては一緒にやっていくことを表明して、私の質問といたします。


2000/08/09

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