2001/03/22 |
151 参議院・法務委員会
私の質問は、まず福岡事件のコピー問題。コピーしたのは、令状請求署のほか疎明資料すべて。捜査報告書など20数通、30数通という、膨大な捜査書類一式です。担当者がひとりでコピーし、後にシュレッダーにかけたというのですから、秘密漏洩に当たるという認識があったのではないでしょうか。
次ぎに、最高裁の調査報告書の取り扱い。最高裁関係者はひとりも聴取されていません。その上、マスコミや国会議員にはこれを配布したのに、最高裁のHPには載せられないと言うのです。理由は関係者のプライバシーへの配慮で、例えば子どもが学校でいじめられたりすると言うのです。法務省は調査結果をとっくにHPに載せており、著作権のことなど考えていないと言います。
詰めていくと、今朝は概要を作って載せると言い、質疑の中では仮名処理をして載せると変わってきました。理屈に自信が無くなってきたのでしょう。しかし、最高裁が「都合の悪い」ところの処理を済ませたものだけしか、国民はアクセスできないとすると、おかみ意識丸出しで、司法の信頼は回復できません。最高裁の調査報告書が、そのまま国民の検証に晒される過程を経ることが、不可欠だと思います。最高裁の情報処理が身勝手でないかどうかを検証し、また私の批判が的はずれかどうかを判断していただくため、このHPに、最高裁から入手した調査報告書を全文引用します。なお、最高裁判所規則で、司法行政の情報公開制度を作ることを提案しました。
最後に、公証人について。判検事の天下り先になっていないかとの疑問です。判検事OBばかりが10人も、税の申告漏れというのですから、驚きです。
○江田五月君 裁判所予算の執行状況について伺います。
いわゆる福岡事件について三月十五日にいろいろ伺いましたが、その前日の夜、最高裁判所の調査報告書をいただいたものですから十分な質問はできておりません。
そこで、この調査報告書についてですが、平成十二年十二月十三日、福岡県西警察署からの令状請求の際に福岡地裁でとられたコピー、紙のサイズと枚数、これを令状と捜査記録のそれぞれについてお教えください。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 昨年十二月十三日にコピーされた令状請求関係書類というのは、令状請求書そのものと令状請求の際に提出された捜査資料、疎明資料全部ということでございますが、こちらで現在把握しておりますのは疎明資料が二十三通あるということで、今お尋ねのそのサイズでありますとか、そこまではちょっと現在こちらでわかっておりません。
○江田五月君 令状の請求書、これは請求書と被疑事実がありまして、多分二枚ですかね。そして、捜査記録が全部で二十三通というのは、一通ごとに何枚かになっているから、これはかなり大部のものですね、違いますか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) ある程度といいますか、かなりの分量があるものだというふうに聞いております。
○江田五月君 捜査記録というわけですから、そうすると、例えば捜査報告書であるとかあるいは電話聞き取り書きであるとか、その他もろもろ一切合財、つまりこの令状請求の際につけられた捜査記録、これを全部一人で一時間以上かけてコピーされたと。こういうことなんで、私もさらさらと読んで、令状関係の要所要所だけコピーしたのかと思ったら、ずっと一連の、二十三通ですからね、捜査報告書をすべてコピーされている、しかも一人で、時間をかけて。かなりというか、奇異な感じがしますね、確かに。
十二月二十二日、それから今年になっての一月九日、一月二十九日、一月三十日、三十一日について、これはそれぞれ何枚ずつ、あるいは何通ずつですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) その後の令状請求におきましては、既に十二月十三日のときにつけられておったものが再度疎明資料としてつけられていたものがあったようでございまして、それを除く形でコピーをしたようでございまして、十二月二十二日は疎明資料が十八通、一月九日は四通、一月二十九日は三通、それから最後の逮捕状のときには逮捕状と捜索差し押さえ許可状の請求、両方があったようでございまして、疎明資料が三十二通ついていて、これをコピーしたということでございます。
○江田五月君 さっき私ちょっと感想めいたことを言いましたが、この二十三通とか三十二通とか、これは捜査記録の、したがって今のちょっと申し上げた捜査報告書その他かなり大部のものになるとやはり異常だと。人事局長、これはそういう認識でよろしいですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) このコピー、捜査資料をコピーまでしたのは不適切であったという判断を調査報告書でも、このたびの大法廷の決定でもしておりますが、やはりここまで含むのは感覚的にも非常に異例の感じを与えるというふうに思います。
○江田五月君 異例と言うと言葉はいいけれども、私はやっぱり異常だと思いますね。
調査報告書二十五ページの下段、「なお、例えば、被疑事実が複雑であるなど特別な事情がある場合に令状請求書の被疑事実の部分のコピーを取ることが一切許されないとは言えないにしても、」と書いてありますが、本件の場合、これは被疑事実の部分のコピーのことだけですが、この特別の事情がある場合にこれは該当するんですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 該当しないと思います。
○江田五月君 そうですね。
同じところで、「捜査書類のコピーをとって報告資料とすることは、極めて例外的な場合に限られるであろう。」とありますが、本件の場合は極めて例外的な場合に当たりますか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 本件で、この捜査資料全部をコピーしたということは不適切であって、そこまで許される範囲に当たらない、そういう意味ではここで言っている例外的な場合にはもちろん当たらないということでございます。
○江田五月君 例外というのは、それは世の中例外が全くないというのはなかなか難しいですけれども、しかし令状請求のときにその令状請求に添えられた疎明資料をすべてコピーするというのは、これはやはり相当異常で、しかも今の特別な事情あるいは極めて例外的な場合でもないと。そうすると、本件は、分限及び国家公務員法、これは準用ですかあるいは適用ですか、行政上の措置をとられたということになりますが、守秘義務違反の方についても、やっぱりこれはちょっと当たるんじゃないかと。
守秘義務違反に当たるか当たらないかの判断というのはどこに聞けばいいんですかね。最高裁は当たらないような判断をしているようですが、最高裁としてそういう判断をする立場にあるんですか、ないんですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 刑事事件として国家公務員法上の犯罪が成立するかどうかにつきましては、一義的には捜査当局において御判断されることだと思います。
行政的に、これが司法行政的に適切かどうかという観点から最高裁の調査委員会は判断をしたわけでございます。
○江田五月君 そうですね。
ちょっと質問通告していないかもしれないんですが、この裁判所の関係の皆さん方の守秘義務違反、秘密漏えいに当たるかどうかの判断というのは、これはどういう判断になったんですか。嫌疑不十分で不起訴ということになったんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 結論的な事件処理としては、嫌疑不十分ということでございます。
○江田五月君 そのことについては報告されて、報告というのは、つまり世間にあるいは国会にあるいはマスコミに報告はされていないですよね。法務省の調査結果にはそのことは触れられていないですよね。
○政府参考人(古田佑紀君) その調査報告書は山下次席の問題についての調査報告でございますので、そこで裁判所の関係する部分についての事件処理については触れてございませんが、裁判所の関係の問題についての事件処理については、これは検察庁の方で記者会見をして発表しております。
○江田五月君 検察庁でそれは刑事事件の処理として発表されているということだと思いますが、やはりどうも縦割り風の、裁判所のことは裁判所だけで、法務省のことは法務省だけでというので仕切りがきっちりできて、相互のチェックといいますか、相互乗り入れの調査というのがないんですね。
私は、秘密がこれ以上漏れないようにという配慮だと言うんですが、しかし一人で時間をかけてコピーをこっそり、本当にこっそりとったとか、あるいは後でシュレッダーにかけて全部消したとか、これはやっぱり守秘義務違反というのをどこかで心の痛みを感じながらやったからそういうことをしたんじゃないかと。逆に、今度はシュレッダーにかけたことが証拠隠滅になるんじゃないかという、そんな感じさえ持ちます。
膨大な量の捜査記録が三部コピーされ、二部は地裁事務局長、高裁事務局長が長期間持っていた。重大な問題で、今後もこれは検証をしっかりしなきゃいけない。
とにかく信用を回復しなきゃいけないんですから、検察にしても、特に裁判所というのは信用だけが命ですから。裁判所は後ろに、それは強制執行のときの警察権限を活用することができるとかなんとか言ったって、そこに頼っていたんじゃ裁判なんというのは成り立たないんですから、信用だけが命なんですから、その信用を回復するためにはやはりきれいごとで済ませちゃいけない。国民の皆さんに、黙って聞いておけ、おまえら文句は言うなという態度であっては、これは信用は回復しないと思います。もっとしっかりと検証をしていきたいと。
さて、この三月十四日の夕方に議員会館の部屋に最高裁からの調査報告書が届けられて、その翌日だったと思うんですけれども、三月九日の法務省の調査結果は、これはちゃんと法務省のホームページにも登載されている。そこで、最高裁の方はどうするのか。
どうもそのつもりがないというので、まあそのつもりがなぜないのかということも聞きたいんですが、まず法務省の方に、これもちょっと突然になるかと思いますが、ホームページにこの調査結果を登載されていますね。その目的は何ですか、簡単に答えてください。
○政府参考人(古田佑紀君) この調査結果は報道機関にも配付したわけでございますが、非常に国民の関心を引いたものでございますので、やはりできるだけ広い国民からアクセスが可能になるようにした方がいいという判断でございます。
○江田五月君 調査結果の著作権は法務省にあるんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) こういう公用で作成したものの著作権というのがどうなるのか、ちょっと私は直ちにはわかりませんが。
○江田五月君 余り著作権なんということを考えずにやっているということですよね。国民の皆さんに広く伝えようという、そういう気持ちの方がむしろ先に立ってちゃんとやっておられると。
それはそれでいい。別にこれで著作権だなんといってどこかから金を取ろうとか、法務省がこの調査結果をどこかへ出したら幾らか金をよこせなんということを考えないのは全く妥当だと思いますし、またホームページに載せられているこの調査結果をどこかがリンクで張ってもっと広く国民の皆さんに見せるようにいろんな人が努力をしている、それに対して差しとめ請求なんということはもちろん考えられませんよね。
○政府参考人(古田佑紀君) いずれにいたしましても、法務省として作成した公文書でございます。それで、公開しているものでございますので、ただいま御指摘のような問題にはならないと思っております。
○江田五月君 さて、そこで最高裁ですが、私、最高裁に、最高裁の方がお出しにならないんだったら私のホームページに載せるから、この調査報告書は電子情報になっているだろうからEメールで送ってほしいと言いましたら、送れないと言うんですね。では独自にこれをスキャナーか何かで読み取って私のホームページに載せてもいいですかと言ったら、まあ最高裁に著作権があるんでしょうから了解を得ようと思ったら、それはだめだと言うんですが、これはなぜだめなんですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 最高裁の調査報告書の方は、お読みいただいておわかりと思いますけれども、関係者の行動とか供述等の事実関係を非常に詳細に記載しておりますので、その取り扱いについては、この事件が非常に一部では興味本位に取り上げられたというふうなこともありまして、インターネットの場合には子供まで容易にアクセスできるとか、そういう面もありますところから、そういう点で、その取り扱いについてプライバシーへの配慮が必要である、そういうところからそのように申し上げたということでございます。
○江田五月君 この事件が一部興味本位に取り上げられた、ホームページは子供もアクセスできる、だからプライバシーの関係上だめだと。これ、理屈になりますか。本当にそれでいいんですか。
既にこの調査報告書はマスコミにも配付をされておる。我々国会議員にも配付をしているんですよ。自分たちが好ましいと思うところだけは配付するが、興味本位のものは近寄るな、子供は見ちゃいかぬと。
この中に、私もざっと見たんですが、プライバシーといったって何のプライバシーですか。裁判所職員が裁判所職員として仕事をしていることがプライベートなことなんですか。今の説明、それでいいですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 子供云々というのは、関係者の子供に対する配慮、例えばいじめの発生などといったことも心配したようでございます。
ただ、そういうことで、この報告書はマスコミに公表いたしましたし、国会議員の方々にも配付したわけでございまして、その際にはプライバシーに配慮した扱いをお願いしたところでございますが、ただ事柄の重要性にかんがみまして、国民に対して十分に御説明をするという観点からホームページへの掲載の可否についても検討は進めてきておりまして、仮名処理などプライバシーの配慮にも十分な配慮を施した上で近いうちにホームページへの掲載を行う予定を持っております。
○江田五月君 私がそこまで言ったからそういうことになってきたんだろうと思いますけれども。
これは私も本当に残念に思っている。それは職員の子供の学校でのことというようなことはあるかもしれません、確かに。だけれども、事の重要性にかんがみ、これはやっぱりそういうことはそういうことでいろんな配慮をしながらマスコミにも公表している、国会議員にも配っている。いや、公表と公開は違います、そんなむちゃな話はないと思いますよ。
いろんな処理もいいですけれども、さっき法務省の方は、著作権のことなんか別に考えずに、大いに国民の皆さんに自分たちに困ることも公表して、そして国民の批判を仰ぎながらこういうことで信頼回復に努めておるという努力を国民に見せようという態度を示されたわけですが、最高裁の方はそれについてどういうお考えですか。著作権をやっぱり主張されるんですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 私も著作権の関係が詳しくわかるわけではありませんが、今問題にしておりますのはそういうことではございません。
○江田五月君 違いますよね。
私も一国会議員として、これは自分の手元に別に秘密でもらったわけじゃありません。職務上知り得た秘密とかじゃなくて、ちゃんと最高裁が調査報告書というものをまとめられて世間にマスコミも通じて発表する、国会の審議にも資するようにというのでこういう報告書をいただいているわけですから、これを国民の皆さんに私どももお示しをする、国民に皆知ってもらっていろんな批判を仰ぐ、これは我々国会議員としても当然の職責だと思うので私のホームページに載せたいと思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 私もちょっと技術的なことはよくわからないんですが、最高裁でインターネットへ載せた場合にはそれにアクセスしてほかの人が使えるようになるようにも聞いておりますので、その辺はもう御自由かと思います。
○江田五月君 その辺はの後がちょっとわからぬ。聞こえなかった。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今度インターネットの方へ載せることを検討しているということを申し上げたわけでございますが、そのものにつきましては仮名処理などのプライバシーへの配慮などもいたしますので、それはインターネットへ載って差し支えないだろうというふうなものになるということでございますので、それについては、いろいろな方がアクセスされて、自分のホームページですか、そういうところへ転載されるというんでしょうか、いろいろな活用の方法はあるのかもわかりませんが、そういうことは御自由なのではないか、こういうふうに申し上げたところでございます。
○江田五月君 人事局長をいじめても仕方がないんですけれども、最高裁の事務総局、あるいは一番責任があるのはやっぱり裁判官会議ですよね、司法行政全体をつかさどっているわけですから。司法行政は司法の独立の範囲に入るので、我々も余りそこをせんさくすることは控えなきゃならぬことはよくわかりながら申し上げるんですが、差し支えないということじゃだめなんですよ。
情報公開をするということは差し支えがあるんですよ。だけどやるんですよ。それでなければそれは情報公開の意味がないので、行政が本当に透明性を高くして国民の皆さんのいろんな批判も得ながら進んでいかなきゃいけない、裁判所の行政だけは別ということはない。裁判は別ですよ。別ですが、裁判所の行政だけは別だということはないと思う。
これも人事局長はちょっと答弁される適任者じゃないかもしれないので恐縮ですが、裁判所は情報公開ということをどう考えておられるのか。
行政の情報公開法は間もなく、この四月一日から施行になりますよね。その法律では裁判所は対象機関になっておりません。国会はいろんな形で情報公開をやっております。地方自治体も既に情報公開条例ができて、しかも日々これをさらにいいものにしようといろんな努力をしています。最高裁の司法行政は情報公開ということについてどういう態度でおられるのか、もしお答えできれば答えてください。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 所管でございませんので私から適切なお答えはできないかもしれませんが、情報公開は、情報公開法もできまして、裁判所の方でもそういう流れの問題については十分意識をして研究しておりますし、しかるべき対応をしていかなきゃいけないというふうに考えていると承知しております。
○江田五月君 この司法の関係の行政事務についての情報公開をやろうと思うと、やはりこれは最高裁判所規則でしょうね。ぜひともお伝えください。最高裁判所規則で情報公開規則をおつくりになってはどうでしょうか。提案をしておきます。伝えていただけるかどうか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 江田委員のただいまの御意見については伝えたいと思います。
○江田五月君 せっかくホームページをつくっているんですから、そして裁判所のお金といったってしょせん国民の税金なんですから有効に使ってもらわないと。国民から取るものは取ったけれども、あと国民に知らせるのは自分たちに差し支えあるものは知らせないという、そういう態度ではやはり司法の信頼は回復しない。
この調査報告書も、最高裁がお出しになる過程の中で仮名処理などあるとは思いますが、しかし余りそんなことを言われていると、本当にその過程で、ああまたいろいろ手を加えたな、国民に都合の悪いところは消したなというふうに思われるんですよ。それだけ信頼が傷ついているんだということをわかっておいていただきたいと思うんですね。その上でこれからのことを間違いなくやってほしい。
私は、何度も繰り返すように、これはもう既に公表されたわけですから、これをどういうふうに受け手がホームページに載せようが何をしようが、そこに変な加工があっちゃいけませんけれども、これがそのまま載るということについては、それは当たり前の話だと。情報公開時代、そんなことは裁判所があれこれ言うような話ではないと思います。強くそのことを申し上げておきます。
さて、もう時間が余りありませんが、同じように国民の司法への信頼を損なう問題として、先日、公証人問題が報道されました。
我が国の公証人の数、そのうちの判事出身、検事出身、法務事務官出身者、それぞれ何人ですか、法務省。
○副大臣(長勢甚遠君) 平成十三年三月一日現在の公証人の合計数は五百三十五人でございますが、うち判事出身者は百五十八人、検事出身者は二百二十四人でございます。
○江田五月君 残りが法務事務官等百五十三人ということですね。
公証人法十二条の試験合格者の任命はゼロで、いやゼロどころか制度始まって以来いない、いやそれどころか、そもそも試験の法律も規則も、試験制度そのものがないと、こう聞いているんですが、それでいいんですか。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘のように、試験制度、法律上は規定されております。これが省令に委任されているという形になっておりますが、それの省令はできておりませんし、試験を実施したこともございません。
○江田五月君 私もびっくりしました。省令ができていない、試験をやったことがない、しかし法律ではちゃんとそういうことになっていると。国会が法律をつくっても何もならない、ばかにされたということかなという気がいたします、ばかにしているんじゃなくていろいろお考えなんでしょうけれども。
何か聖域として税務調査ができなかったが最近国税庁が調査した、公証人十人が申告漏れ、追徴課税、それが全員判検事OBだった、判検事OBの公証人には高額の再配分制度というものがあって云々といろいろ報道されています。
この報道についてどう思われますか。
○政府参考人(山崎潮君) この新聞報道の件につきまして、大変お騒がせしていること、おわび申し上げます。
現在、私ども鋭意調査を始めているところでございます。ただ、この問題につきましては、税法上守秘義務という問題もございまして、どれだけ客観的に調べられるかという問題がございます。しかし、我々としては、やはり公証人の品位とかそういう問題にもかかわるということで、現在、調査を命じているところでございます。まだ結果が出ておりませんので、しばらく御容赦願いたいと思います。
○江田五月君 調査をして必ず報告をいただきたいと思います。
公証人がこういう状態というのは、これはもう国民からするとある意味では青天のへきれきですね。しかし、中の人間からすると、まあそんなもんだなということなんですよ。もう皆さんもよく御存じのとおりで、これは法務大臣もぜひわかっておいてほしいんですけれども、関係する人間はよくわかっているんですよ。
つまり、人事の関係で、そろそろこの人は外へ出した方がいいなというようなのを、ちょちょっと早目に肩をたたいて、早ければ公証人のポストがあるよと言って送るんですよ。そして、合理化といいますか、いやいや、検察官には天下り先がないから、裁判所にも天下り先がないからと。裁判官は民事もやれるけれども、検察官で長くやった人はとても民事で食っていけないから公証人でというようなことが、ちまた、その関係の中の人間の間ではもう当然のごとく言われているので、だから試験制度で外から採ってくるなんていうのはとんでもない話だというふうになっていたんだと思いますよ、今まで。
法務大臣、これを改める気はございますか。
○国務大臣(高村正彦君) 公証人につきましては、現在、原則として、公証人法第十三条に基づいて任命資格を有する者のうちから公正中立に公証事務を行う者として適任と認められる者を任命しているわけであります。同法第十三条ノ二に基づいて、公証人を任命する場合は公証人審査会に公証人に任命することの当否を諮問し、同審査会の答申を得た上で行っているわけであります。
このように、公証人として任命するにふさわしい者を選考することが今できているわけでありまして、現在の選考方法はそれなりに適切であると考えておりまして、公証人法第十二条に規定する任用試験を実施する等の予定は現在のところありません。
また、過去に弁護士出身者を任命したことがありましたけれども、最近は弁護士で公証人任用希望を申し出た者がないというふうに承知をしております。
○江田五月君 高村法務大臣、ペーパーをお読みにならないときはなかなか、我々もなるほどと、信頼できる法務大臣だなというようなことをお答えになるんですが、今のような答えをされますとちょっとがっかりいたします、本当に。
公証人の問題というのはあるんです。そうでなきゃ十人もの判検事OBというのが税務調査で追徴課税なんかされるはずがないと思いますよ。やっぱりこれは問題があるという認識だけは持ってほしい。どうやるのがいいのかというのは、これはなかなか難しいです、確かに。しかし、そういう認識だけは持ってほしい。
きょうはもう時間がありません。福岡事件、これがストーカー規制法違反だったのか脅迫事件だったのか、あるいは山下次席があれこれやったとき主任検事は何していたんだ、一月三十一日の容疑者逮捕のときの家宅捜索でフロッピーディスク、これが見つかっていない、それが後に地検に任提、これが何だったのかと、いろんな問題がございます。
法務省であるいは検察庁であるいは最高裁で調べました、調べた結果はこうでした、国民の皆さんどうぞ我々を信頼して御安心いただきたいという、その我々を信頼してというところが今崩れかけているわけですから、危機感を持ってほしい。そして、そのいろんな調査の過程もひとつ国民の皆さんにちゃんと検証してもらわなければ信頼は回復しないんだという、そこのことをぜひわかってほしい。それをしっかりやらないような予算だったら、これはもう予算を使う資格がないということを申し上げて、質問を終わります。
2001/03/22 |