2001/04/02

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151 参議院・本会議

「犯罪被害者等給付金支給法改正案」につき、私が15分間代表質問をしました。

この法律は、私が1977年、参議院に初当選した直後から問題意識を持ち、1978年3月2日の法務委員会の一般質疑で制定を提案したものです。当時まだ36歳でした。その2年後に内閣提出で法律が出来、今回の改正となったもので、感慨深いものがあります。しかし、まだここまでしか育っておらず、忸怩たるものもあります。


○江田五月君 私は、ただいま議題となりました犯罪被害者等給付金支給法の一部を改正する法律案につき、民主党・新緑風会を代表して質問します。

 この法案については、実は、私にはちょっとした思い出があります。昭和五十年代の議事録をめくってみたのですが、第八十四回国会の本院法務委員会で、一九七八年三月二日、「真剣に犯罪被害者の救済の立法というものに取り組んでいただきたい。」と、さらに「犯罪被害者の救済の制度がないというのは、刑事司法と行刑についての制度を補完すべき一つの不可欠な制度が欠けているということであろう」との問題提起があります。国会史上初の問題提起だと思います。その質疑者は実は私、当時三十六歳のことです。

 その後、二年たってこの法律ができました。このときこの法案を審議した本院地方行政委員会でも私が質疑をしています。私にとっては、国会議員になって最初に手がけた法律です。以来二十一年がたちました。今回の改正は、制度をさらに充実強化しようというものですから、私たちももちろん賛成です。しかし、これでこの制度が十分育ち上がったと言えるかどうか、内心じくじたるものがございます。

 当時、私が一番言いたかったことは、新しい時代の社会のあり方です。犯罪はもちろん、ないにこしたことはありません。しかし、犯罪の芽を完全に摘もうとすると、犯罪予備軍を社会から完全になくさなければなりません。だれが犯罪予備軍の判定をするのか。ここで間違いをすると、ナチスドイツも顔負けの全体主義社会になります。犯罪の芽を摘むのに熱心な余り、何の自由度もない社会になってしまったら、角を矯めて牛を殺すのたぐいになります。世の中、ほどほどが肝心。社会の自由度を保って住みやすい社会をつくるには、事故も犯罪もある程度覚悟しなければなりません。

 大切なことは、そのとき特別の人の身に降りかかった事故や犯罪の被害を、その人一人の負担にするのでなく、社会全体で引き受けることです。つまり、リスクの共同管理です。これが憲法二十九条の基本にある思想だと思いますが、犯罪被害者給付金支給制度と憲法二十九条との関係をどう認識しておられるか、国家公安委員長に伺います。東京地方裁判所昭和五十九年五月十八日判決、判例時報千百十八号二十八ページを参照してください。

 犯罪被害者が社会でどう扱われるかはその社会の質の問題です。国連は一九八五年、国連被害者人権宣言を採択しました。犯罪被害者には、その受けた傷がいえるよう社会から助力を受ける権利があるというのです。政府はそのような国際社会の要請を当然とお考えですか、外務大臣に伺います。

 さらに、我が国の犯罪被害者をめぐる環境をごらんになって、こうした権利を有する者に対してこの程度で十分だとお考えですか。もしノーなら、今後どのような手だてをお考えですか、国家公安委員長に伺います。

 私たち民主党は、第百四十七回国会で、犯罪被害者基本法案を衆参両院で提出し、今国会でも衆議院で提出しております。この法案をつくるに当たって、私たちは多くの被害者の皆さんから御意見を伺いました。悲惨な体験や、持って行き場のない心の傷を聞かせていただき、犯罪被害者に社会から援助を受ける権利があることをはっきりと認めなければならないと確信しました。私たちの法案は、この権利を前提として、被害者保護の徹底を図ろうというものです。

 確かに、政府は昨年、刑事訴訟法の改正などにより、法廷での扱いを改善するなど、刑事手続の中での被害者の立場を強めました。現実にそのとおりになっているかどうか検証が必要ですが、法改正は、もちろんしないよりした方がよろしい。そこで私たちも賛成しました。しかし、これだけでは著しく不十分だと思います。そこで、犯罪被害者の権利を前提とした基本法をつくるつもりはあるかないか、法務大臣に伺います。

 今回の改正では、依然として過失犯の被害は除かれています。しかし、過失犯にも極めて悪質なものがあり、また被害状況の悲惨さは彼我に違いはありません。犯罪被害者支援に関する検討会の提言でも、被害者等の打撃は看過できないものがあり、今後もその救済状況について引き続き注視していくことが望まれるとしています。さらに、自然災害など犯罪によらない被害の場合でも、黙って見ていられない被害状況の方々がおられます。国家公安委員長、どうされるおつもりですか。

 我が国の現在の制度は、同じ人身事故であっても、その被害の回復は、犯罪か自然災害か、犯罪でも故意か過失か、過失でも自動車事故か否かなどによって全く異なっています。

 ですから、例えば学校災害の場合、特定の生徒に起きた損害を社会のみんなで分担しようとすると、今の制度では、教育施設に欠陥がなければ無理やりにでも教師の皆さんの過失を認定しなければならなくなります。そうでなければ、低額の学校災害補償しかありません。これは合理的ではありません。リスクの共同管理の制度設計としては配慮が足りないと思います。

 犯罪でも事故でも、場所が学校であっても国道であっても、すべてまず社会が、つまり国が損失の補てんをし、後に原因者から取り立てる制度の導入を真剣に検討することを提案します。もちろん、自動車の保有者のように、社会に一定の危険を引き起こす行為をするものには保険制度が必要です。これはかなり以前から外国で実施されている制度だと聞いていますが、法務大臣、いかがお考えですか。

 ここで、幾つかの具体的な質問をします。国家公安委員長、お答えください。
 今回、政府は、この法案で、まず給付額につき、遺族給付金を最高で一千万円強から一千五百万円強に引き上げるなどの改善を提案しています。警察や援助団体による被害者救済の制度も設けます。そのことは率直に評価します。しかし、金額においては交通事故との差は歴然としています。被害者の立場はまだまだ悲惨です。本当にこの措置で十分でしょうか、伺います。

 次に、重傷病給付金の支給要件について伺います。
 今回の改正案においては、犯罪行為により重傷病を負った者に対して重傷病給付金を支給する制度を新たに設けることとしています。

 支給については、全治一カ月以上の治療と二週間程度の入院という二つの要件を設けるお考えとのことですが、二週間程度の入院という要件は不要です。この要件に固執すれば、強姦や強制わいせつなど、外傷よりも後に述べる心的外傷後遺症の方が重大だという被害について、入院が足りないとして支給対象から除外される可能性が高くなるのではないでしょうか。

 次に、重傷病給付金の給付内容について伺います。
 重傷病給付金の額は、犯罪行為により生じた負傷または疾病についての被害者負担額、具体的には三カ月程度を限度として保険診療による医療費の自己負担部分相当額ということですが、これだけでは不十分です。

 医療関係の費用は、純粋に治療費だけではありません。重傷病の場合、治療費以外にも決して無視できない金額が被害者の負担となっています。家族の付き添い看護費用、装具、衛生用品、栄養費など被害者が支出した医療に関係するすべての費用を給付内容とすべきです。いかがですか。

 次に、重傷病給付金の給付期間の限定について伺います。
 今回の改正案では、給付期間を被害に遭った日から起算して政令で定める期間を経過するまでの間に限定しており、検討会の提言では、その期間を三カ月とすべきだとしています。しかし、一律に三カ月という給付期間に限定してしまうと、長期間の治療と多額の療養費を必要とする重傷病の場合に、治療途中で給付を打ち切られてしまうことになります。したがって、これを一律に定めるべきではなく、現実に療養に要した期間に応じて給付すべきだと思いますが、いかがですか。

 次に、仮給付金制度の活用について伺います。
 今までも、犯人が不明のときなど、速やかに給付金の支給裁定ができない事情があるときは仮給付金の支給をする制度がありました。しかしながら、仮給付金決定は、制度が始まった昭和五十六年から平成七年までは一件もなく、平成八年以降も年間数件と、残念ながら十分機能しているとは到底言えません。

 被害者は、被害当初に医療費等の支出で大きな経済的負担を強いられます。ここで、今回新設される重傷病給付金の支給が効果を発揮し、被害者に金銭的不安がないようにするため、仮給付制度についてもっと周知徹底を図るべきではないでしょうか。

 次に、親族間犯罪の支給制限について伺います。
 被害者と加害者の間に一定の親族関係があると給付金を支給しないことができることとなっていますが、単に一定の親族関係があることだけで支給の制限を行うことは合理的ではありません。特に、家庭内暴力や親族間の性暴力が深刻な被害をもたらしている実情を見ればなおさらです。今でもある「社会通念上適切でない」との要件だけで十分ではないでしょうか。

 次に、最近注目されているPTSD、つまり心的外傷後ストレス障害について伺います。
 現在は、犯給法施行令により、第四級の精神障害として支給の対象となっていますが、判断が困難で、また解釈による拡大運用であるため、適用の限界が指摘されています。

 今回の改正により、障害給付金の支給対象の範囲を第一級から第一四級までに大幅に拡大したことは評価しますが、これに伴い、心的外傷による障害について、重傷から軽傷までその程度に応じて各等級に分けて明文で規定すべきではありませんか、伺います。

 ところで、今回も外国人は除外されています。しかし、日本国内で犯罪被害を受けた者は、外国人であっても最小限の補償を必要としていることに変わりはありません。また、国際化の時代に外国人を除外するのは不適切です。国内に住所を有しない外国人も支給対象とすべきだと思いますが、いかがですか。

 また、被害者支援を充実させるためには、民間援助団体の活動が大切です。しかし、その数は全国でまだ十七にすぎず、いまだ設立されていない府県も多く、今後、民間援助団体の設立や運営に当たっての公的な支援措置の充実が課題となってくると思いますが、いかがですか。

 具体的な質問の最後に、昨年のいわゆる犯罪被害者保護のための二法の採決に当たり、衆参の法務委員会で、被害者等に対する支援をさらに充実させる観点からの附帯決議がなされています。現在までの政府の検討状況はどうなっているでしょうか。また、今回の改正に当たって、この附帯決議がどのように生かされているのでしょうか、伺います。

 最後に、もう一度伺います。
 日本の社会はまだ、ここで一緒に人生を送っている者がだれも漏れることなく、社会の相互扶助システムで温かく保護されることになっていません。

 自助努力は人生の基本ですが、社会にはさまざまなリスクがあります。個人の努力では防ぎようのない不幸が特定の人を襲ったとき、その人の人生にだけそのリスクを押しつけて、あとの者は知らぬ顔の半兵衛を決め込むのでなく、これをみんなで引き受け、特別に不幸な人をつくらない、仲間外れを出さないシステムを政治に携わる者みんなが知恵を出し合ってつくろうではありませんか。そうでなくても、だれも皆十分重い荷物を背負った人生を生きているのです。国家公安委員長と法務大臣のお考えを伺って、私の質問を終わります。

○国務大臣(伊吹文明君) 江田議員から思い出を含めて数多くの御質問がありましたので、逐次お答えをさせていただきたいと思います。

 犯罪被害給付制度と憲法二十九条の関係であります。
 御指摘は、公益目的のため行った行為により、結果的に一部の方に特別の犠牲が生じた場合には、議員のお言葉をかりれば、助け合いとして公的に補償すべきではないか、その根拠として憲法二十九条を類推適用できるものではないかということだと思います。

 犯罪被害給付制度は、私人の犯罪により被害が生じた場合を前提として、その場合、加害者である犯人がその損害を賠償するのが我が国社会の基本原則であります。しかし、犯罪被害給付制度は、これが機能しない場合に、被害者やその御遺族に国が社会の連帯共助の精神に基づき代位弁済ではなく見舞金的給付金を支給するものであり、犯罪被害者給付制度は憲法二十九条とは直接の関係はないものと考えております。

 国連の基本原則を踏まえた我が国の犯罪被害者支援をめぐる現状に対する認識についてのお尋ねであります。

 従来から、犯罪被害給付制度により国が一定の給付金を支給してきたほか、昨年には犯罪被害者保護のための二法が制定されるなど、被害者支援のための施策が講じられてきたことは御承知のとおりであります。

 さらに、昨年の犯罪被害者保護のための二法の採決に当たっての附帯決議等を受け、今国会にこの法案を御提案しておりますので、これが成立した後は、盛り込まれた施策を的確に実施して犯罪被害者対策を円滑に推進したいと考えております。したがって、現在の国民の財政負担のもとでは、総合的に見ればかなりの対策になっていると考えております。

 極めて悪質な過失犯や自然災害による被害者への支援についてのお尋ねであります。
 故意による犯罪行為は、法秩序を破る意思を持って行われる悪質な行為でありまして、被害を放置することは国民の間に法秩序に対する不信感を引き起こしかねないため、その被害者を本法の対象としておりますが、過失犯による被害や自然災害は本法の支給に本来なじまないものと考えており、その被害者給付については別途検討さるべきものと考えております。

 交通事故に適用される自動車賠償責任保険制度と比較して給付額についてのお尋ねであります。
 自賠責制度は交通事故の被害者の損害を賄うための保険制度であり、その財源は加入者の負担する保険金によって賄われております。これに対して、犯罪被害給付制度は、共済制度ではなく、国の、社会の連帯共助の精神から支給される見舞金的な性格を有する制度であり、財源は国民が額に汗して納めている税金であります。したがって、両制度はその性格を異にするものであることは江田議員よく御存じのとおりだろうと思います。

 重傷病給付金の支給要件についてでありますが、本制度は、加害者の弁済にゆだね放置しておくと国の法制度全般に対する国民の信頼が失われるような重大な被害の救済を目的としております。そのために、加療一カ月以上の傷病を対象とするものでありますが、そのような傷病の中にも極めて重大な被害に該当しないようなものも含まれていると考えられますので、極めて重大な傷病は、一般的に十四日以上病院に入院することを要することを考慮して限定することとしたものでございます。

 なお、性的被害を初めとする御指摘のような精神的打撃の大きい被害については、障害事由に該当すれば障害給付金が支給されることもありますが、この種の被害については、警察、民間援助団体、関係行政機関によるさまざまな援助の措置によって手当てをしていくことが重要であり、今回の改正では、被害者に対する援助の措置に関する規定を盛り込んでおります。

 重傷病給付金の給付内容でありますが、本制度による給付は、犯罪行為で著しく重大な負傷もしくは傷病を受けた方が負担を余儀なくされる保険診療による医療費の自己負担部分に着目をして給付の金額を算定しております。また、給付に係る療養の期間は三カ月を限度としておりますのは、医療保険制度では、三カ月以上にわたり自己負担額が高額に達した場合は、医療保険制度そのものにそれ以降の自己負担額が相当程度軽減されるなどの措置が講じられていることを考慮したものでございます。

 次に、仮給付制度について周知徹底を図るべきではないかというお尋ねであります。
 仮給付金の支給実績は、施行以来の実績では、年間被害者数で十四件程度の支給がなされております。今後とも、仮給付制度の適切な運用に努めるとともに、本制度の存在を広くお知らせするよう、御主張に沿って努力をしたいと考えております。

 親族間の犯罪に対する給付金の支給でありますが、家族には本来相互扶助の義務があることは言をまちません。また、親族間の犯罪について給付金を支給することは、結果として親族である加害者を利するおそれがあることなどを考慮して、親族間の犯罪には原則として給付金の支給は考えておりません。このような考えは、現時点では基本的に妥当なものと考えております。今回の改正では、この支給制限は見直しを行わないことといたしております。

 心的外傷後ストレス障害を障害事由として明記すべきではないかという御主張でありますが、精神的な障害は現行法令でも障害事由として規定をされております。今回の改正により障害等級が一四級まで拡大充実されますので、救済の可能性も拡大されると考えております。ただし、お尋ねの心的外傷後ストレス障害は、その認定のあり方について、他の災害補償制度とのバランスを考え、今後とも適切に運用したいと考えております。

 民間被害者援助団体の活動に対する公的支援ですが、犯罪被害者のニーズに応じたきめ細かな援助を行うには、これらの団体の活動を促進することは御指摘のとおり極めて大切であります。これらの団体の設立や運営に関する公的援助については、関係機関と今後とも検討を進めたいと考えております。

 犯罪被害者保護のための二法の採決への附帯決議に関するお尋ねであります。
 内閣に設置されました犯罪被害者対策関係省庁連絡会議の中で、関係省庁による施策の推進状況や検討課題の検討状況について報告が行われており、被害者の方に対する精神的支援や経済的支援についても、御指摘の附帯決議を踏まえ、関係省庁でただいま検討が進められております。

 また、今回の法改正でも、御指摘の附帯決議を踏まえ、犯罪被害給付制度の拡充だけではなく、警察本部長等による被害者への援助の促進、民間団体による援助活動の促進に関する規定を設けていることは御存じのとおりであります。

 最後に、社会の相互扶助や国民の権利は自己責務を果たすという国民相互の義務により担保されているのは、社会秩序の基本的なルールであると考えております。

 社会秩序は加害者が責任を負うことにより一義的には成り立つものであり、加害者がその責任を果たし得ないようなときに限り、社会として国民の額に汗して納めた税金により被害者を支援するのが適当なのであり、犯罪被害者等給付金支給法の改正法案もそのような考え方に基づいております。

 社会の相互扶助のためさらにどのようなシステムが必要かは、社会の基本的な理念や秩序、あるいはまた国民の財政負担とのバランスを考えて、今後、国民間で幅広く検討されるのが民主主義のルールであろうかと考えております。

○国務大臣(河野洋平君) 犯罪の被害者に関する一九八五年の国連の宣言についてお尋ねがございました。

 御指摘の宣言は、我が国を含めた百二十カ国強が参加して開催をされました第七回国連犯罪防止会議において無投票により採択をされたものであります。我が国は、犯罪被害者に対する適切な配慮及び保護は重要であると考えておりまして、このような観点から本件宣言の採択に加わったものであります。

○国務大臣(片山虎之助君) 私は、法務大臣臨時代理でございますので、その立場で江田議員にお答えを申し上げます。

 犯罪被害者基本法の制定についてのお尋ねがまずありました。
 犯罪被害者保護の問題につきましては、多岐の分野における種々の施策が必要でありますが、まずもって具体的、現実的な施策を充実させることが肝要であります。
 基本法の制定を検討することは意義があると考えておりますが、これにつきましては、ただいま申し上げましたように、種々の個別具体的な施策を充実させていく中で総合的な見地から検討するのが適当であり、また、その内容についても、被疑者、被告人の防御その他の刑事司法制度の適正な運用に与える影響など、もろもろの観点からの検討が必要であろうと考えております。

 被害者の損害回復制度についてお尋ねがありました。
 犯罪などを原因とする損害については、まず加害者にその賠償に努めさせることが原則であり、民事上の不法行為による損害賠償責任を直接被害者に対して負うものとされていること、例えば犯罪とその被害には多種多様なものがあること、さらに、犯罪とはされていない民事上の不法行為についての被害者との均衡などの事情があり、犯罪などを原因として被害を受けた被害者に国家がその損害を補償するというような方策については、慎重な検討が必要ではないかと考えております。

 最後に、社会の相互扶助についてのお尋ねがありました。
 社会において相互に助け合っていくことは重要で、その観点からさまざまな制度が設けられているものと承知しております。

 犯罪被害者に対する配慮につきましては、これまでも種々の施策を講じてきたところでありますが、この問題は、精神的支援、経済的支援など多岐の分野にわたるものであり、今後さらにさまざまな観点から検討していくべきものではないかと考えております。
 以上であります。

○議長(井上裕君) 答弁の補足があります。国務大臣伊吹国家公安委員会委員長。

○国務大臣(伊吹文明君) 大変失礼いたしました。
 外国人の扱いについて答弁漏れがございましたので、お許しをいただいて答弁を申し上げます。

 日本国内に住所を持たない外国人も支給対象にすべきではないかというお尋ねであったと思います。

 犯罪被害給付制度は日本社会の共助のための制度であって、我が国社会を構成していると認められる者が受けた犯罪被害について、御指摘のように社会全体でその軽減を図るものであります。

 したがいまして、日本社会の構成員として日本に住所を持っておられる外国人は当然給付の対象としておりますが、日本に住所を持っておられない外国人はこの法律では給付対象とはいたしておりません。

○議長(井上裕君) これにて質疑は終了いたしました。


2001/04/02

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