2001/06/28

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151 参院・法務委員会

司法制度改革の集中審議で、私は45分間、主として改革の理念につき佐藤司法制度改革審議会会長、森山法相、堀籠最高裁事務総長に質問しました。


江田五月君 最初に、特に佐藤会長には、お忙しい中を本当にショートノーティスだったと思いますが、お見えくださいましたことのお礼を申し上げます。

 きょうは、多分、講義がおありになったんだろうと思いますが、学生は休講で、うれしいか悲しいかわかりませんが、本当に我々のためにありがとうございました。

 そして同時に、司法制度改革、この二年間、本当に改革審の皆さんが精力的に審議をされて、密度の濃い、中身の濃い意見書を出してくださいましたことにも心から敬意を表します。

 すごいですよね。六十九回会議をやって、公聴会が四回あって、実情視察に海外までということで、見ますと、去年の夏なんというのは、地獄のかまのふたがあいているようなときに、夏に五回、八月に五回もやっているという、本当に御苦労さまでございました。

 私ども民主党は、このスタートから司法制度改革というのは今最も必要なこの国の改革の一つであるということで注目をし、さらに意見もいろいろ申し上げてきた。去年の七月には、党としてまとめまして、私の名前で出しておりますが、「市民が主役の司法へ」、副題が「新・民主主義確立の時代の司法改革」ということでさまざまな角度からの提言もさせていただいてきて、またその後も、法曹養成について、あるいは国民の司法参加について、あるいは行政訴訟改革についてなどなど提言をし、最終の意見書取りまとめの直前ですが、ことしの五月十七日には我々の方も最後に意見をまとめてお出しをいたしました。

 その都度、樋渡事務局長にお目にかかって文書もお渡しをしたりで、六月十二日に最終意見が出されましたときにも、きょうここにおられる小川敏夫、彼は民主党の法務ネクスト大臣という役割を担っておりますが、私の方は司法制度改革ワーキングチームの座長ということで、談話を出させていただいて、まず審議の進め方自体、これも実質的な議論が委員の皆さんの中で行われている。そのことがもう手にとるようにわかる、直ちに経過が報告をされるということで、こうやりますと、もちろんいろんなところからわっとすぐに意見、反論など行ったと思いますけれども、そういうことが議論を巻き起こしたわけだと思います。

 しかも、大変困難な中を全員一致の意見をまとめられた、こういう委員の皆さんの努力に敬意を表しておきたいと思いますし、また全体に国民主権の司法実現という姿勢に裏づけられている、そういう姿勢に貫かれているということで意見書を高く評価しております。裁判員制度のことであるとか法曹人口の飛躍的増大のことであるとか、もうちょい行かないかなというところもあるんですけれども、しかしそれはこういう状況の中で一生懸命お出しになっているということなので、同じ方向を向いていることは確かだと。

 ただ、何とかならなかったかというところもないわけじゃないんで、それは申し上げたいと思いますが、今後、これをどういうふうに具体化していくかということはなかなか大変で、立法府の方としても大いに汗もかき、知恵も絞りながら最大限、あるいは意見書よりもう一歩さらに進める実現方も模索をしながら努力をしていきたいということをまず冒頭申し上げておきます。

 さて、その上で、私は今もちょっと申し上げましたが、やっぱり一番重要なのは、何のための司法制度改革なのかということ、そこだと思います。これはもう会長が本当にまさに心血を込めてといいますか、お書きになったのではないかと推測をするんですが、意見書の一番最初、「T」の「今般の司法制度改革の基本理念と方向」というところにいろいろ書いておられます。

 確認なんですが、まず、「司法制度改革の根本的な課題を、「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、「この国のかたち」となるために、一体何をなさなければならないのか」、「日本国憲法のよって立つ個人の尊重(憲法第十三条)と国民主権(同前文、第一条)が真の意味において実現されるために何が必要とされているのか」を明らかにすることにある」、改革審の課題が、「と設定した。」と。

 「真の意味において実現される」とお書きになっているのは、やはり今までまだその法の支配やあるいは国民主権、これが真の意味において実現されていないという、そういうお気持ちがおありになったということなんだろうと思いますが、その点、会長、いかがですか。

参考人(佐藤幸治君) 温かいお言葉をいただきまして、どうもありがとうございます。
 日本国憲法が発足のころ、法の支配という意義が非常に強調されたものでありますが、その後、明治憲法時代以来の行政主導といいますか、行政各部主導の体制というものがやはり存続したんだろうというように思われるわけであります。そういうこととの関係で、法の支配というものの影がだんだん薄くなってきたように思われます。しかし、そういう行政主導あるいは行政各部主導の体制がグローバル化の進む中でなかなかもう難しくなってきたということで、政治改革とか行政改革とかさまざまな改革が試みられてきたと。さっきも申し上げたように、事前規制社会から事後監視型社会に転換しなければならない、規制改革をしなければいけない、地方分権をやらなければいけない、そういう状況になってきて、この法の支配という意味が再び本格的に問われるようになってきた。この時期に、法の支配とは一体何であり、なぜこの国に必要なのか、血肉化するためには何をしなければいけないのかという問題を投げかけられたのが私どもの審議会ではなかったかという、そういう思いでございました。

 この問題は、国民主権との関係は決して司法制度改革だけの問題ではなくて、行政改革会議で平成九年の十二月に最終報告を出しておりますけれども、その中で、要するに行政改革は国家の減量を図り国民意識の転換を図る中で、より質の高い統治能力を持った政府をつくろうじゃないかということをうたっているわけです。その中で、統治客体意識から統治主体意識への、お任せ主義から自分たちの政府だという方向へと転換を図らなければならないということを強調しているわけであります。

 情報公開は、この四月から御承知のように施行されましたけれども、情報公開とか行政改革、政治改革、一連の改革を合わせますと、我々が今目指そうとしているのは政治の復権であり、国民の政府というものをつくり出そうとしていることだというように理解しております。それとパラレルに法の支配、司法というものをしっかりとこの国に確立する必要がある。政治を生み出すと同時に法の支配を同時に確立する、あるいはエンジンを非常に強力にするとともに、よくきくブレーキも同時に用意しておく必要がある、そういういろんな思いでこの機会に法の支配、司法権がより十全に機能できるように確立することが極めて重要だと、そういう思いがこういう表現になっていると。ややこれは私の個人の思いもちょっと入っているのかもしれませんけれども、その辺は多かれ少なかれ、審議会の委員の皆さんにも共有していただいているのではないかというように考えております。

江田五月君 確認ですが、今の会長のお話の中にもあるんですが、どちらかというと法の支配というところを強調されておるんですが、法の支配と国民主権というものが、何か共通のものがあって、常にここへ出てくるには、法の支配ともう一つ国民主権というのがちゃんと出てきておって、そして法の支配というのは何か法がどこかにあってそれが支配していればいいという話ではなくて、「国民の一人ひとりが、統治客体意識から脱却し、自律的でかつ社会的責任を負った統治主体として、互いに協力しながら自由で公正な社会の構築に参画し、」云々と、これが法の支配の一番根本に流れていないといけませんね。そのことはそれでよろしいですね。

参考人(佐藤幸治君) 全く御指摘のとおりでありまして、先ほども申し上げましたように、法の支配を国民主権のもとで確立しようとするならば、国民の理解を得る、そしてしっかりとした国民の基盤に立たせる必要があります。そのために、国民の司法参加、いろんな方法を提言しておりますけれども、そういうものをしっかりしないと、今までわき役でしたから何となく国民はそちらでしかるべくという面があったと思うんですけれども、主役としてやっていただくということになりますと、しっかりした国民的な基盤を確立する必要があると。民主党の先ほどお触れになったペーパーにございますように、市民が主役の実現といったそういうことと相通ずる考え方に立っているということは申し上げてよろしいかと思います。

江田五月君 司法という場も政治の部門と並んで公共性の空間である。公共性の空間というのはどこかに漠然とあるのではなくて、やっぱり国民が主役で公共性の空間をつくっているというそういう理解だと思いますが、今、佐藤会長、御自分の思いもにじんでいるかもしれないが、委員みんなの共通の思いであると思うということをおっしゃいましたが、そういう思いをこの意見書を受けた内閣においても、あるいはこれは直接意見書を受領した立場ではありませんが、最高裁においてもそういう思いを共有されているのかどうか、まず最高裁の方から伺います。

最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) これは今回の意見書でも指摘されておりますように、複雑多様化する我が国の社会状況に的確に対応して国民の期待にこたえる司法制度を築くためのものであるというふうに考えております。

 最高裁といたしましても、政府部内で行われる司法制度の改革につきましてはできる限り協力するとともに、国民の皆様の期待にこたえる司法制度の実現に向けて努力していきたいと考えておるところでございます。

江田五月君 裁判所は余り先へ立っていろいろやるというよりも、むしろ後からついてくるというところでしょうから、事務総長の今のお話に余りがぶっとかみつくということはしたくないんですが、しかしやっぱりひとつ考えておいていただきたいのは、国民は向こうへいます、我々はこっちで裁判所をやっています、国民のいろんなニーズがあって時代の変化も起きてきているでしょうから一生懸命私たちはあなた方に尽くしますよという、そうじゃなくて、裁判所自体、司法権自体が実は国民主権で、国民から権限を預かって国民にかわってやるんだという、そこのところがしかし実は今まで本当の意味で実現していなかった、真の意味において国民主権の司法というものを実現するんだと意見書は言っているわけですよ。それが今非常に必要なことなので、そこを、これ以上詰めませんけれども、ひとつ……(「詰めたらいいんだよ」と呼ぶ者あり)詰めてみるか。

 どうなんですか、どうも裁判所は別ですよという感じを受けるんですよね。国民主権のもとの司法に変わらなきゃならぬと言われているという御自覚がおありかどうか。

最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 今回の司法制度改革審議会の意見書でも指摘されておりますように、国民のための司法を実現するという理念に立っていろいろな改革が唱えられているところでございまして、その点は裁判所としても十分理解し尊重し、国民のための司法制度の実現に向けて努力してまいりたいと考えているところでございます。

江田五月君 さらに言いますと、国民のためのよりも、国民が主人公ですから、国民が主体ですから、裁判所はむしろ客体ですから、よろしくお願いします。

 法務大臣、後で、ちょっと伺ってからの方がいいのかもしれませんが、今回の司法制度改革については法務大臣が内閣を代表して国会への説明など事に当たられると聞いておるので、あえて伺いますが、六月十二日にこの意見書が出されて、「内閣総理大臣あいさつ」というものがございます。その中で、これはどう読むのか。「今般の司法制度改革は、昭和二十二年に施行された「日本国憲法」に基づいて発足した現行の制度を、半世紀余を経て初めて、利用者である国民の視点から抜本的に改革するものであり、」と。どうもこれまでは国民の視点でなかった、憲法はできたけれども、形はつくっていたけれども、そこに本当は精神が入っていなかった、今回初めて魂を入れようという改革だというように読んで読めないわけじゃないんですが、そういう理解でいいんですか。それとも、たまたま初めてと書いただけで、そこまでの意味はないということなんでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君) その趣旨は、今の憲法が新しくできたときに国民主権ということははっきりとうたわれておりますし、それに基づいてさまざまな司法制度もできて今日までやってまいったわけでございますが、やはり国民の実際の生活や意識の中で十分そういうことがこなされていなかったという反省なのではないかというふうに思います。

 今、新しい時代を迎えて二十一世紀、これからいろいろな問題が山積してまいりましたものを何とか打開して、希望の持てる新しい時代をつくっていこうというときに、改めてそのような認識を強く持って、国民主権の司法というものを力強くスタートさせていきたいという気持ちでございます。

江田五月君 言葉だけの話だといえばそうかもしれませんが、やっぱりそういう精神が全体に貫いていかなきゃならぬのですよね。時代が変わってきた、したがって司法も変わらなきゃならぬということが一つあります。確かにそれはあります。ありますが、同時に、戦後改革が実は本当は十分でなかったんだということがあると思うんです。国民主権ということは言われたけれども、例えば、さっきもちょっとお話あったと思いますが、大正デモクラシーの流れの中で日本で陪審制度というのが導入されていた。陪審制度というのは、やっぱりこれは何とか裁判も国民のものなんだということをどこかに形で示しておこうということで一生懸命つくっていたものなんですよ。それが戦争の気配が高まっていく中で次第に使われなくなって、そして停止をされて、停止された法律の中に、今次戦争が終わったら直ちに、直ちにとは書いてなかったかな、早急にこれをもう一遍復活するんだというような趣旨のことが書いてあるけれども、それがそのまま眠らされたままずっと来て、私はやっぱり戦後改革の中で司法というのは取り残されてしまったと。

 この三権、司法、立法、行政、だれが担うかということで、これは立法はもちろん選挙された代表者が担うわけです。私は、立法府はいろいろ問題はあるけれども、それでも官僚の皆さん方が立法府の我々議員を自由に操ってなんということにはなっていないと思いますよ。そこは言えると思うんですが、行政の方はそうじゃなくて、試験に受かった官僚の皆さんが官僚制度というものをちゃんと動かしていくということでやる。司法は、選挙で選ばれた代表者でやっている国もあるけれども、それではないと。しかし、試験に受かって、あとはもう一生涯ずっとキャリアでやっていくというのでもない。何か立法と行政と違った司法の担い手のつくり方というのがなきゃいけなかったんじゃないかと。その辺の強い問題意識を佐藤会長お持ちになって、今回、法曹人口のことであるとか法科大学院のことであるとか裁判制度のことであるとかいろいろ御苦労されたんじゃないかと、私は佐藤会長の気持ちをそうそんたくしておるんですが、いかがですか。

参考人(佐藤幸治君) 御指摘の点は、私も共感できるところがございます。
 従来、司法というのは、もちろん国民主権のもとですから、民主的な正統性、裏づけを持たなければいけないということは皆さん、これはお感じになってこられた。そこは、例えば下級裁判所の裁判官ですと最終的には内閣によって任命される、内閣によって任命を通じて民主的正統性を得ているということだったと、そういう理解であっただろうと思います。

 けれども、これから、後でもあるいは出てくるかもしれませんけれども、これまで日本の裁判所が非常に立派な役割を果たしてこられたということは、私もそこは全くそのとおりに思っているのでありますが、これからグローバル化だとかいろんな厳しい環境の中で司法がもっとたくましくなっていただくためには、やはり民主的正統性といいますか、これは国民主権といいましても政治部門に対する働き方と司法部門に対する働き方、これはおのずから違いがあるし、違いがあるから司法権の独立が大事だというのは、これは改めて申し上げるまでもなく、そのとおりなのでありますが、それを大前提とした上で、やはりこの正統性というものをもう少し強く持っていただく方が、これからの司法・裁判官制度を考えたときによろしいのではないか。

 ということで、この最終意見では、さっき事務局長の方から御紹介がありましたように、弁護士任官を進めるとか、あるいは判事補の皆さんに裁判官の職以外の多様な法律家としての経験を積んでいただくとか、あるいは特例判事補制度を段階的に解消するとか、あるいは国民が関係する機関が下級裁判所の裁判官の指名過程に関与していただくとか、さまざまな工夫を凝らしたわけでありまして、これらはやはり国民によって負託されていると。政治部門と違った負託の仕方でありますけれども、負託されているという思いを強く持っていただく、裁判官に。そして、もっと伸び伸びと、もっとたくましく活動していただきたいという思いがそういうさまざまの提言の背景にあるというように私は理解しております。

江田五月君 その今の民主的正統性で、教科書的説明の民主的正統性の制度というのはありますよね。しかし、例えば国会によって選ばれた内閣総理大臣が組織する内閣、その内閣で任命をする裁判官制度、そして裁判官に対しては国会の弾劾裁判所の制度もあるし、それから国民審査もあるしなどという、そういう説明はそれでいいんですけれども、本当に躍動していないんですよね、これが。それは政治の側の責任も私はあると思うんです。

 やはりそこは、今回いろんなことをとにかく通じて、知恵を最大限絞りながら本当の意味の民主的正統性を裁判という場面でもちゃんと確立していこうという、そういうお気持ちであったんだろうと思いますが、最高裁の方は、どうも時々、最近、抵抗勢力というはやり言葉がありますが、どうも最高裁は抵抗勢力じゃないかというような声も、そんなことはないと思うんですけれども、聞くんですが、今のような、本当の意味で実質的に民主的正統性を司法という場でもちゃんと確立していこうといういろんな働きかけ、いろんな知恵、そういうものに本気で取り組んでいこうという気持ちがあるのかないのか、その点を聞かせてください。

最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 先ほどから申し上げておりますように、最高裁判所といたしましても、司法制度改革審議会の意見書を尊重してその実現の協力に努めてまいりたいと考えているところでございます。私どもが、国民のための司法制度の改革に対し抵抗するというようなことは全く考えていないところでございます。

江田五月君 抵抗勢力になったら困ります。
 さて、意見書を出されましたが、これは内閣に提出されたんですが、内閣としてはこれからどうされるんですか。

国務大臣(森山眞弓君) 六月十二日に御提案をいただきまして、先ほど引用されました総理大臣の談話も出してございますし、もちろん法務省といたしましても、内閣の一員として、かつ司法制度を所管する主省庁といたしまして、司法制度改革審議会の意見を真剣かつ積極的に受けとめまして、国民や社会のニーズに的確にこたえることのできる司法制度を構築するために、その実現に向けて最大の努力をしていきたい、全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 まず、七月一日付で内閣官房に司法制度改革推進準備室を設置する予定でございまして、そこで司法制度改革推進法、まだ名前は仮称でございますが、そのようなものの立案に着手したいというふうに予定しております。その後の推進体制はその推進法に基づきまして設置される予定でございまして、その推進体制のあり方については、今後その法律案を策定する過程で検討されると考えております。

江田五月君 今の御答弁の前提として、内閣に意見書が出された、内閣に準備室をつくる、それをなぜ法務大臣がここでお答えになれるのか、その根拠はあると思うんですが。

国務大臣(森山眞弓君) 先ほど申し上げましたように、司法制度に関する責任者として法務大臣という仕事をいただいておりますので、そのような立場でお答え申し上げたわけでございます。

江田五月君 確認ですが、法務省を所管している法務大臣ということを超えて、内閣に意見書が出されて、その意見書を実現していく内閣の仕事を担当している内閣の一員としての法務大臣としてお答えになっていると、そういう理解でよろしいですか。

国務大臣(森山眞弓君) 先ほどの内閣総理大臣の発言の中にも、いろいろおっしゃいました最後に、この閣議決定に基づく司法制度改革の実現に向けた取り組みについての国会への対応は法務大臣にお願いするということを総理大臣からも改めておっしゃっていただいております。

江田五月君 そこは結構、実は大切なところだろうという気はいたしますよ、法務省がやる仕事を超えている話だと。特に、裁判所に対していろんなことをこれからやっていかなきゃならぬというのは法務省がやるということを超えているわけですからね。その辺の仕切りについては結構、神経を使っておいていただきたいと思います。

 準備室で推進法、仮称をおつくりになると。そうすると、その推進体制、推進本部といいますか、そういうものをどう制度設計するかというのは準備室で行うのだろうと思いますが、その準備室はどういう構成になるんですか。

国務大臣(森山眞弓君) 準備室につきましては、その準備をいたしますのに必要な知識、経験を持っている者を集めまして推進体制に抜かりないようにいたしたいと思いますが、今まだ最終的な決定はいたしておりません。

江田五月君 七月一日ですからもうすぐで、準備室長はそれは早く決めなきゃならぬでしょうが、そういう推進本部の制度設計をするための推進法というのをどういうふうに構想していくかということについては、やはり衆知をそこの段階から集めなきゃいけない。

 そこで、例えばこういう体制で推進本部をつくりたいというようなことについて、これは例えば国民の意見も聞くとか、あるいは役所の皆さん方だけを各省庁から集めたりということではなくて、例えば弁護士出身の人をそういう推進室の何か適切なポストにちゃんと公務員としてつけてその制度設計に当たらせるとか、そういう用意はございますか。

国務大臣(森山眞弓君) 例えば、弁護士さんのような専門家の方を民間からお願いするということも一つの意義のあることではないかというふうに考えております。

江田五月君 そして次に、今度は推進本部、仮称をつくると。これもやはり同じことだと思いますけれども、その推進本部はその後のいろんな法律改正などを含む全体の司法制度改革の大変な仕事をしていかなきゃならぬわけですが、そこに例えば今回の司法制度改革審議会はシナリオを書いたと。書きっ放しでおしまいというのでは、やっぱり会長、これは気になるだろうと思うんですね。

 ですから、その推進本部の中に、今回の司改審の皆さん、何か位置づけをお与えになって、しょっちゅう意見書に照らして、おかしいぞとか、ここは足りないぞとか、こんなことを言ってもらうような、例えば佐藤会長に顧問をお願いするとか、それはまだまだ今、人事の話は全然別ですが、そういうことも考えていかれたらどうかと思いますが、いかがですか。

国務大臣(森山眞弓君) 大変貴重な御意見で、参考にさせていただきます。

江田五月君 参考にしてください。
 それから、もう一つ伺っておきたいのは、推進本部にそんなに予算は要らないと思いますが、別に機密費、報償費など要りませんよね、そんなところに。しかし、その本部ででき上がる推進体制をさらにしっかりしたものにし、そしてその後すばらしい司法制度というものを実現するために、やはりこれはかなり予算措置というものはかかると思うんです。

 この意見書は本当に何というか気持ちがにじみ出ている。一番最初のところに予算のことを書いておられて、一番最後のところにも予算のことを書いておられて、そこがなければ絵にかいたもちになるというそういう思いがもう強くにじみ出ておるんですが、予算措置について、これはずばっと聞きますが、もう覚悟はお持ちなんですか、どうですか。

国務大臣(森山眞弓君) 御指摘のとおり、全く重要な部分は予算措置がその一つであると思います。審議会の意見におきましても、おっしゃいましたように、あちこちで財政面での十分な手当てが不可欠であるということを指摘していただいておりまして、特段の配慮をしていただいたというふうに考えているわけでございます。

 先ごろの閣議決定におきまして、この司法制度改革審議会の意見を最大限に尊重して司法制度改革の実現に取り組むというふうにされたわけでございまして、当然、これは内閣全体の姿勢というふうに私は理解しているわけでございまして、法務省といたしましては、その実現に向けまして最大の努力をしていきたいというふうに考えております。

江田五月君 もう一つ、意見書の中では特に三年というような期限を切ったような表現はないかと思うんですが、これを受けた内閣の方の考え方として、三年以内をめどに関連法案の成立を目指すなどというようなことをちゃんとお書きになっております。これはどういう経過で三年ということが出てきたのか。三年というものを本当に期限としながら、エンジンフル回転で頑張るという決意がおありかどうか、その二点を伺います。

国務大臣(森山眞弓君) この司法制度改革は非常に重要な国家戦略の中に位置づけるべき課題でございます。緊急性も高いものが非常にたくさん含まれておりますので、これを迅速かつ集中的に取り組む必要があるというふうに考えまして、司法制度改革審議会の意見を最大限に尊重して、三年以内を目途に関連法案の成立を目指すという趣旨のことを閣議で決定いたしたわけでございます。

 私といたしましては、この閣議決定の方針にのっとりまして、内閣の一員として、かつ司法制度を所管する法務省の責任者として、審議会の意見を真剣かつ積極的に受けとめてその実現に向けて努力してまいるということは先ほど来申し上げているとおりでございますが、三年というのは一つの重要なめどでございまして、一日もオーバーしないかどうか、そこまでは厳密にちょっとお約束いたしかねますが、それを大きな目標として努力していきたいという趣旨でございます。

江田五月君 それは三年が一日延びたからといってどうということはないんですが、やっぱりその覚悟ですよね。カキ八年じゃなくて、やっぱり桃、クリぐらいなところで頑張るんだということでやっていただきたいんですが、これは三年という閣議決定の対処方針なんですが、こういうことを閣議決定される前に最高裁の方は何か相談にあずかっているんですか。

最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 司法制度改革をどう進めていくかということは純粋に政策問題でありまして、三年というふうなことでいいかどうかということについての協議はなかったというふうに承知しております。

 ただ、政府において三年をめどに関連法案の成立を目指すなど所要の措置を講ずる旨の方針を明らかにされておりますので、最高裁といたしましても政府の検討にできる限り協力するとともに、裁判所にかかわる課題については裁判所だけでも鋭意検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

江田五月君 実際、三年で全部でき上がるわけじゃなくて、三年で方向を定めてそれを順次実現していくというようなこともたくさんあるだろうと思いますが、方向を定めるだけでも三年というのはなかなか大変だろうと思います。それは裁判所の皆さんの頭痛いなという感じはよくわかるけれども、それはやっぱり頭痛めてもらわなきゃいけないので、閣議決定で三年という方向を打ち出していることはこれは重要で、覚悟を新たに取り組むということをぜひお願いしておきます。

 さてそこで、あといろいろ具体的な提案についてそれぞれ具体的な質問もしてみたいんですが、時間の方がだんだん迫っておりますので、飛ばしていかなきゃならぬと思います。

 人事事件の家裁への集中、これは提案されていて、既に法制審に諮問をされておりますが、これは具体化ということになるとたちまちいろんな問題が出てくる。法制審にこの改革審の問題提起というものがどの程度伝わるのか、あるいは十分伝わらないとして、今度その推進本部がやる仕事と法制審の関係が一体どうなっていくのか。その辺については、法務大臣、何かお考えはございますか。

政府参考人(山崎潮君) ただいまの点、改革審議会及び法制審両方で取り上げられている問題でございます。
 私どもといたしましては、このテーマはもともと我々もやらなければならないという意識をしていたものでございまして、家裁に移管するだけではなくて、人事事件のこの法律でございますが、まだ文語で書かれております。これを現代語化しなければならない。それから、新しい訴訟の類型もかなり出ておりまして、これは抜本改正をするということから、専門技術性が極めて強いことから法制審議会で少し時間をかけて審議しないと間に合わないだろうということから始めさせていただいたわけでございます。

 今後は、もちろん改革推進本部ができ上がりましたらいろいろ御意見があろうかと思いますので、その意見は十分、法制審議会の方で反映させていただいて議論をしたいというふうに考えておりまして、最終的にどのような形で法案を提出するかというのは、まだ推進本部の方もできておりませんので、また十分に相談をしてやっていきたいと考えております。

江田五月君 もうたちまち困難に直面すると思うんですが、困難といったって乗り越えられない困難じゃないので、法制審あるいは改革審のお考えと、それから推進本部の考え方と、さらに裁判所との調整とか、それは人事事件の管轄をぽんと移すというだけではちょっと済まないいろんな課題があろうかと思うので、努力をしていただきたい。

 それから、弁護士費用の敗訴者負担制度なんですが、これは佐藤会長、時の流れによって強調されたところがいろいろ変わってきたような感じは見受けられますが、私は、弁護士費用というのはその権利を主張する者がとりあえずは負担をするというのは、何か弁護士費用の負担制度について制度が置き忘れていた、忘れ物していたという話じゃなくて、やっぱり権利を実現するためにどうしてもかかる費用というものはあるんだという、そういう理解で今のようなことになっていたのではないかと思いますよ。

 ただ、提訴がいかにもおかしいとか、あるいは応訴がいかにもおかしいとか、権利を実現するための費用と言うには余りにも過大な費用が権利の実現のために相手の理不尽な行動によってかかるという場合に、そのものについてはこれを相手に負担させようというようなことが出てくるのであって、何か今度の意見書はその辺で理屈が余りすっきりしていないなという感じがするんですが、どうですか。

参考人(佐藤幸治君) 御指摘の点は私なりにもよくわかりますし、平成九年一月の民訴費用制度等研究会の報告書などにおいても委員御指摘のような意見があるということは私も承知しております。まさに竹下代理も専門家でございまして、その辺は重々承知していらっしゃったと思います。

 ただ、審議会の議論としては、先ほど御指摘のように、費用を勝訴者がなぜすべて負担しなければいけないのかと。かつても、なぜ自分で負担しなければいけないのか、やはり敗訴者に負担していただくしかるべき場合があるんじゃないかというような意見が当初からかなりございました。

 そして、外国はどうなっているのかということで外国の制度もいろいろ事務局を通じて調べたりしたんですけれども、それぞれの国はある考え方に立ちながらも別の、他方の考え方を絶えず考慮していまして、実質余り変わらないような感じのところもございまして、それなら一つの筋として敗訴者に負担していただくということを基本に考えようじゃないかと。

 しかし、それによってチリングエフェクトといいますか、提訴をちゅうちょさせるようなことがあってはいけないので、その辺は十分配慮する必要があるということで、中間報告の段階では、敗訴者に負担していただくのを基本としながら、それも全部じゃなくて一部でございますけれども、基本としながら、しかし労働訴訟とか少額訴訟などについてはちゃんとした配慮をしなければいけないとうたったんですけれども、どうも受けとめ方が原則、例外と、原則は敗訴者負担でこっちは例外だというように受け取られたことがありまして、やや私どもの真意にもとるようなところがございまして、最終的な取りまとめ、表現ぶりとしては、最終意見に書いておりますように、一定の要件のもとで敗訴者負担は考える、しかしそれは一律では導入はしないで十分いろいろな場合を配慮して立法していただくべきだというようなところに落ちついたわけであります。
 以上でございます。

江田五月君 伺いたいことはいろいろあるんですが、例えば行政事件訴訟、行政に対する司法チェックというのはかなり問題意識の重要なところを占めておられる、しかしたじろがれたという感じがちょっとあるんですが、これはなかなか大変な課題で、これからさらにその課題はありますよということでお残しになっているということだろうと思うので、それ以上は伺いません。

 先ほどもちょっとお触れになっていましたが、法曹人口五万人ですね。五万人を二〇一八年ごろまでには実現したいと。そこから先をどう、これは書いてないんですけれども、どんなイメージをお持ちになっているか。私どもはちなみに五万人までとにかく持っていこうと。そこで一遍立ちどまって制度設計を、制度がうまくいっているかどうかをよく見て、さらに今度はそんなにどんどんどんどんじゃないけれども、徐々にふやしながら、まあ十万人ぐらいは要るんじゃないかというような提言をしているんですが、会長のイメージはどんなものでしょうか。

参考人(佐藤幸治君) 今が、現状が現状なものですから、とにかく早く五万人ぐらいまで持っていきたいということがまず私どもの頭にございました。まず、ここまで早く到達しなければいけない。しかし、その後をどうするかについては、まさに今、委員御指摘のようなことは委員の方々、多かれ少なかれ思っていらっしゃったのではないかと。

 少なくとも審議会として申し上げられるのは、合格者三千人というようにいって、これが決して、それに基づくあれがキャップになってはいけないと。これがもうこれで終わりということではなくて、その時点において今御指摘のように、いろんな状況を考えながら、市場の需要だとかいろいろ考えながら、必要であればまたふえていくでしょうし、その辺はそのときの状況、何しろ二〇一八年、これ三千人で頑張っていっても二〇一八年でございますので、そのときの日本の状況、世界の状況がどうなっているかということもございますが、認識は余り違わないのではないかというように理解しております。

江田五月君 認識は多分それほど違わないと私も思っておりますが、恐らく二〇一八年になったらまだ足りないという世の中になっていくんだろうという気はしますね。

 そうやって五万人にせよ、あるいはそれ以上にせよ、そのうちのかなりの部分は弁護士ということになるわけですが、そうすると、日弁連というものをどういうふうにイメージするかで、私はそう大きくなったらそれはなかなか大変ではあるけれども、やっぱり弁護士というのが自治を基本にしながら自立的に自分たちのことを決めていくということが、この公共性の空間としての、国民主権のもとでの司法を動かしていく一つの重要な理念だろうと思うんですが、その点は会長、いかがですか。

参考人(佐藤幸治君) この弁護士自治というものが重要であるということは、審議会の皆さん、皆御認識のところではありまして、ただこれは国民との接点を弁護士会も十分考えていただかなければならない。公益的な責務とか、国民に対する情報公開だとか、あるいは懲戒・綱紀手続に対する国民のより深い関与といいますか、参加だとか、さまざまな工夫を凝らして弁護士の自治が国民に開かれたものである必要があるという点については皆さん、一致した御意見かというように思います。

 ただ、これはこれからの弁護士自治のあれですけれども、弁護士人口がふえていったときに、弁護士会として今までのような形態の自治のあり方で済むのか、もっといろんな工夫の余地があるのか。あるいは、あるのかもしれないという予感のようなものは持っておりますが、そこは弁護士会がまさに自立的にお考えいただくべきことでありまして、これまでの審議会に対する弁護士会の御協力ぶりを拝見しておりますと、これからも十分私どもの思いに弁護士会としておこたえいただけるのではないかというように考えている次第です。

江田五月君 済みません、ちょっと私、時間を間違えまして。
 そのほかに法科大学院のこととか、あるいは修習のこととか、給源の多様化とか、あるいは重要なポイントである裁判員制度のこととか、いっぱい聞かなきゃならぬのですが、時間になりました。これからもずっと、折に触れ、いろんな提言もさせていただいたりしたいと思います。
 ありがとうございました。


2001/06/28

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