2001/10/25

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153 参院・法務委員会

10時から、法務委員会。10時半から40分間、私が法務大臣の所信に関し、(1)高祖事件、(2)司法制度改革、(3)司法修習、(4)テロ対策、(5)人権擁護、(6)民法改正について質しました。夫婦別姓選択制については、森山法相は明確に積極姿勢を示され、小泉首相から「しっかりやって下さい」と言われたことも披露されました。抵抗勢力は僅かですが、自民党の中にいるので、手強いです。


○江田五月君 おはようございます。
 私は実は、九月十一日の同時多発テロの三日前なんですが、九月の八日に民主党のネクストキャビネットの法務ネクスト大臣という役職に再任をされまして、僣越でございますが、森山法務大臣のカウンターパートとこちらでは思っております、片思いかもしれませんが。

 そこで、きょうは法務大臣の先日の、あいさつということでございましたが、所信についてカウンターパートとして質問させていただきたいと思っております。

 本題に入る前に一つ質問しておきたいんですが、先日、十月九日の参議院の予算委員会で、我が党の浅尾慶一郎委員が郵政OBの選挙違反事件であるいわゆる高祖事件について質問いたしました。この高祖事件は、行政組織が選挙に使われたということだと思います。大変な事件だと思いますが、そのときの浅尾委員の質問の趣旨は、逮捕、起訴された元近畿郵政局長が公職選挙法百三十六条の二の公務員の地位利用罪で訴追をされた、しかしこれは二年以下、それより刑罰が重い国家公務員法百二条の政治的行為の制限という規定がありまして、この違反に問われていないのは一体なぜかということなんですね。一つの行為で二つの罪に当たることが考えられて、その場合は、刑法の規定によると観念的競合ということになるんでしょう。重い方で処罰をするということになるのに、重い方に当たる可能性があると思うんですが、そちらの方の捜査はどうもされていないようなんですが、警察庁、捜査はされているんですか、していないんですか。

○政府参考人(吉村博人君) ただいまお尋ねの国家公務員法違反がなぜ立件されないのかということ……

○江田五月君 いや、捜査しているか、していないか。

○政府参考人(吉村博人君) 捜査は、全体の選挙の取り締まりの中でもちろんやっております。

○江田五月君 じゃ、国家公務員法違反容疑は捜査はされたが、この国家公務員法違反で送検するとか、あるいは検察庁としては起訴するとかということに至っていないということですか。

○政府参考人(吉村博人君) 本件につきましては、厳正な捜査を行いました結果、証拠関係、擬律等を総合的に検討いたしまして公職選挙法上の公務員の地位利用による選挙運動の禁止違反だということで立件送致をいたしまして、検察庁においても同法違反として公訴が提起されたということであります。

 なお、あくまで一般論でございますが、委員御承知のとおりでありますけれども、公職選挙法の第二百三十九条の二の第二項、それと国家公務員法第百十条第一項第十九号とは、当然のことながら犯罪の構成要件を異にしておるわけであります。したがいまして、公務員の地位利用による選挙運動の禁止に違反する行為、それが国公法百二条において制限されている政治的行為に直ちに該当するとは言えないと思いますので、証拠関係等が検討された上で、その立件の可否が決められるべきものと承知をしております。

○江田五月君 証拠関係、もちろんそれはいろいろあるでしょうが、私が聞いているところでは、これはもう既に人事院総裁の他の委員会でのお答えもつい先日あったようですけれども、政治的目的とか政治的団体とかというところでどうもぴたりと当たらないという、当たるとは言えないと、証拠関係上、ということのようですが、国家公務員が地位を利用して行った行為によって公職選挙法で処罰される、しかし一方で国家公務員法上はそれは許されるというのは、まあ説明はあれこれできるとしても、どうも市民感覚からするとちょっとおかしいかなという気がするんですがね。

 これは人事院総裁の方にちゃんと聞かなきゃ、警察庁にこれは聞いても困ると思うかもしれませんが、どうです、法務大臣。今の、公務員がその地位を利用して行った行為で、それは公職選挙法違反に当たる、しかし国家公務員法上は許されるというのは、どうです、政治家としてちょっと変だと思いませんか。

○国務大臣(森山眞弓君) 大変難しい問題でございまして、なかなかお答えはいたしにくいのでございますけれども、先生のおっしゃったような疑問を持つ人もいるかなという気はいたします。しかし、捜査当局が十分調べました結果でございますので、それを信用したいというふうに思います。

○江田五月君 これはその事案の特質というよりも、むしろ国家公務員の政治的行為というのをどういうふうに概念するか、規定するかという問題なんですよね。それはそれでおいておきます、問題提起。

 それから、公選法二百五十一条の四という規定があって、いわゆる特別連座制、これによって当然当選が無効になるという事案だろうと思いますが、報道によると、本人が辞職したんだから特別連座制の適用はないと言われている。

 きのう、担当者の方とやりとりしましたが、この特別連座制には当選無効という規定はあってもその後の立候補禁止の規定などはないから、本人の辞職によって訴えの利益がなくなるので、特別連座制の適用はない。

 まだ判決が確定していないから、今その特別連座制の適用ありということで当選無効の訴えを起こすということにはなっていない。それはそうなんですが、本人が辞職したらもう連座制で当選無効というようなことは関係ないんだとなるんですか。法務省、これはどうなんですか。

○政府参考人(古田佑紀君) ただいまのお尋ねは、公職選挙法の解釈ということではございますけれども、検察官が当選無効の訴訟を起こすという立場にございますので、そういう観点から申し上げますと、当選無効の訴えと申しますのは、委員御案内のとおり、当選の効力を失わせるということでございますが、被告とされるべき公職の候補者等が当選はいたしましても辞職をしていると、そういう場合には、もうこれは既にその当該当選に係る公職を離れているということになるわけでございまして、こういう場合にはいわゆる連座制による当選無効の訴えの目的は、これは達成されているというふうに考えられるわけで、そういうことから法律上は訴えの利益は消滅していて当選無効の訴えを提起することができないと考えているところでございます。

○江田五月君 その本人が公務員の地位を離れているからもう目的は達成されているというんですが、しかし離れていても、その他の規定で次の立候補制限、立候補禁止などの効果があるときには離れていてもこれはやるんですよね、と聞いているんですが。

 我々議員の側からいうと、当選無効になれば初めから議員じゃなかったわけですから、私どもの仲間ではなかったというので身も心もすっきりしますけれども、一時は仲間であったということになると、どうもそれはすっきりしないなという感じがします。この点も問題提起です。

 高祖事件に強い関心を持っていまして、実はことし三月八日、参議院の予算委員会で片山総務大臣初め自民党の官僚出身の比例代表候補の出身官庁である国土交通大臣、厚生労働大臣、農水大臣に質問しました。自民党の比例代表選挙では、公選法百三十六条の二の公務員の地位利用罪に当たる選挙犯罪が起こるおそれが非常に大きい。そこで、片山大臣初め各大臣に、通知などでよくこの行政組織の中にその点周知徹底してそういうことが起きないようにしてほしいと申し上げたんですが、各大臣、お答えはなかなかよかったんですよね。しかし、その後出された通知はこの百三十六条の二には直接触れられていない不十分なもので、それ見たことか、だから言ったじゃないかと、こう言いたいんですが、我が国の選挙制度の公正を保つ上での重大問題なので、今後とも強い関心を持っていきたいと思っております。

 本題に入ります。
 森山大臣のあいさつで、まず第一に司法制度改革について、「司法制度改革の実現なくして二十一世紀の我が国社会の展望を開くことは困難である」と、大変格調高くおっしゃっていただいて、司法機能の質的、量的な充実強化に格段の決意をお持ちだと思っております。

 そこで、司法制度改革を推進するために今国会に法案が出されているわけですが、具体的な問題はいろいろあると思いますが、大枠としては私どもも賛成でございます。審議会の意見を十分生かしてさらに発展をさせなければなりませんが、そのためには、一番重要なことはやっぱり何といっても先立つものは何とやらで金なんですよね。財政的裏づけが必要不可欠ですが、どの程度の予算措置が必要とお考えですか。今、まだ漠然とはしていると思いますけれども、どんな見通しを持って、またこの点について総理大臣、財務大臣などと話し合いとか折衝とか、もうこれは始めておられるのかどうか、お伺いいたします。

○国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革を総合的かつ集中的に推進いたしますために、内閣に全閣僚から成る司法制度改革推進本部を設置することなどを内容といたします司法制度改革推進法案を本国会に提出しているところでございます。

 司法制度改革に関する財政上の措置の具体的な内容につきましては、司法制度改革推進本部が設けられました後、司法制度改革推進計画の作成や、これに基づく具体的施策の策定、実施の過程で検討されることになると思いますが、司法がその役割を十分に果たしていくことができますように所要の予算を確保し、司法の機能やその基盤の充実強化に努めていくことが必要だと思っております。

 この問題が話題になりましたとき、ぜひ財政的な応援もお願いしたいということを財務大臣にも申し上げまして、財務大臣もどんどんやってください、応援しますからというお言葉はちょうだいしておりますが、まだ具体的なことは残念ながらはっきりいたしておりません。計画ができてからということになろうかと思います。

○江田五月君 これはやはり司法の容量をとにかく今までよりも格段にふやすということですから、司法修習生の合格者も、僕らのときは五百人ぐらい、これから三千人にしようという、今は千人ですけれども。ですから、よっぽどもう財布はしっかり覚悟しておかなければできない話で、具体的になってからというよりも、日ごろから財務大臣にも、あるいは総理大臣にも金かかりますよ、頼みますよと、こう言っておかなきゃ、やっぱりその気になってこないですから、ひとつよろしくお願いをいたします。

 及ばずながら応援もしたいと思っておりますが、一方で司法機能の質的充実強化という点で、今ちょっと申し上げました修習生のことについてちょっと伺っておきたい。

 予算の制約からくるところも関係するのかもしれませんけれども、司法修習生の皆さんの厳しい状況というのが私のところなんかにも届いてまいります。

 最高裁に伺います。
 司法研修所の現状について、今年六月に発生した三件の死亡例、それにつながる修習生の健康問題、それから女性修習生に対するセクハラ問題というのもある。修習期間の短縮によるカリキュラム過密化の問題、一クラス七十名という、七十名というのはちょっとね。僕らのときは五十人ちょっとぐらいですから大変だと思いますね。

 それから検事任官者、女性の任検者というんですか、クラス枠の問題とか、法曹三者共同で研修所を運営したらいいんじゃないかとかいうような指摘とか、いろんな指摘がありますが、ちょっとざざざっと言いましたけれども、簡単にそれぞれについて、簡単にというか、中身は充実してそれぞれについてお答えください。

○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 御質問の点について概括的にお答えしたいと思います。

 まず、六月に三名修習生が死亡したという、これは一名は判事補になった者のことだと思います。

 いろいろな点がございましたが、まずクラスの人数に関しましては、かつてよりふえまして七十人になっているわけでございますが、この点、長年にわたって蓄積されたノウハウを生かしまして、きめ細かい指導をして、また班別討議等によってできるだけ多くの修習生に発言の機会を確保するなどの工夫をして、従前と変わらない教育効果を上げるように努めております。

 修習内容が過密ではないかという御指摘があるわけでございますが、この点は、修習期間が短縮されました結果、一日の授業時間は確かにふえております。ただ、原則として午後五時には終わっておりますし、一般社会と比べましてそう厳しいと言うわけにもいかないんじゃないかというふうに思います。

 亡くなった方の話が出たわけですが、修習の期間中に亡くなる修習生が、これまでも大体一期で一名ぐらいは、大分前からずっと出ているというのが実情のようでございまして、この点からいいますと特に増加しているというわけでもないというふうに思います。

 それと関連することでございますが、定期健康診断につきましては、修習生が採用された際に健康診断を受けてもらっていますし、その後も半年ごとに健康診断をしております。この点もメンタルヘルスなどの点も含めまして配慮しているつもりでございます。

 セクハラ、セクシュアルハラスメントのお話も出ましたけれども、この関係で事実関係が認められたものにつきましては、もちろん謝罪させて注意、指導を行うという措置をとっておりますが、言われているところが、すべて調べてみると問題となるような言動が認められるものではなかったというものもございます。

 この関係で、研修所では随時、ジェンダーとか女性に関する諸問題をテーマとする講演を実施いたしまして、修習生、教官に受講させておりますし、カウンセラーも置きまして、来期からはセクハラを含む各種の問題について相談する窓口を開設する準備を進めております。

 今後ともセクハラの防止と排除に努めていきたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、司法修習につきましては今後とも関係者の意見を聞きつつ、より効果の上がる、研修効果の上がる充実した司法修習がなされるように努めてまいりたい、こう思っております。

○江田五月君 もちろん司法修習というのは片手間でのんびり遊び半分でやってもらっちゃ困るので、まさに「司法制度改革の実現なくして二十一世紀の我が国社会の展望を開くことは困難」と大臣がおっしゃっている。その二十一世紀の展望の一番根本が司法修習生がどういう修習をするかということにあるので、この点はひとつ本当に真剣に考えてほしい。

 なお、セクハラ問題は、研修所の中でセクハラが起きちゃいけないというのはそれは当たり前の話で、問題は、そうやって研修所から育っていく将来の法曹が、セクハラはだめだという意識を修習の間にちゃんとつけておかなきゃいけないということだと思いますよ。

 ですから、中でセクハラがあったら、いや、教官に注意しまして謝らせましたとかじゃ済まないので、そういう芽がもう修習の間からちゃんと摘まれていなきゃいけないという課題だと思いますので、しっかりお願いをいたします。

 具体的なことをいろいろ聞きたいところですが、時間が余りありませんので、次に行きます。

 大臣のあいさつで二番目に取り上げられているのが安全な社会の実現、維持。公安調査庁に伺います。

 日本国内での、イスラム過激派とかあるいは国際テロ組織とか、そういうことが一体どうなっているのか。我が国のこういうテロというものの危険度は一体どうなのか。今回の米国の同時多発テロ以降、我が国のテロ危険度は一体増大するのか、増大するとすればどのくらいなのか。

 ちょっと漠然とした質問ですが、これは、余りまたこれも細かく聞くとなかなか厄介なことになるので、ちょっと漠然としていますが、質問の趣旨を体してお答えください。

○政府参考人(書上由紀夫君) 大変難しい御質問なわけですので、安全度、危険度がどうかというのはこれはなかなか言いにくい問題でございます。

 ただ、せっかくのお尋ねですので、一般的にお答えを申し上げたいと思いますが、その前に、私ども言うまでもなく、お尋ねのようなイスラム過激派あるいは国際テロ組織といったものにつきましては重大な関心を持って日ごろから調査をしております。

 今回の同時多発テロの発生に際しましても、直ちに私どもの次長を責任者とする特別体制をとって、全国に号令をかけまして、関連情報の収集、そして必要な情報の関係機関への提供等を行っておりますし、また今月に入りまして、米英のタリバン攻撃以降、私どもはやはり一つステージが上がったという認識をしておりますので、もう一つ高い段階から、私を本部長とする緊急特別体制をとりまして、さらに情報収集の徹底を今図っているわけでございます。

 ただ、何といいましても現在、我が国にこうしたイスラム過激派といいますか、その母体になるイスラム教徒、あるいはイスラムから来られた人というものの実態が、私どもでもなかなかこれは把握の仕方が難しいわけですけれども、私どもの把握では、外国人登録者の数等を見ますと、大体六万から十万ぐらいという総数になっているんではないかというふうに見ているわけです。

 私どもがそういう中で関心を持って見ておりますのは、大体イスラム系の方というのは、多くは善良なイスラム教の方なわけですが、その活動の中心というのは、どうしてもいわゆるモスク等での礼拝あるいはそこにおける集会等を中心にやっているのではないかということで見ておりますが、現在我が国に、このモスクもピンからキリまでありますが、おおよそ百五十ぐらい現在あるわけです。かなりの部分は首都圏に集中しているわけですけれども、そうした中でやっておりますところ、何らかの資金活動をしている疑いがあるのではないかと思われる者、若干いないわけではありませんけれども、しかし大半の方はやはり今回のテロ事件に際しましても、巷間言われるところの、イスラム・イコール・テロというようなイメージがありますので、そういったイメージの払拭という方向へ、何とかならないかというような対応をしているように私どもでは見ておるわけです。

 ただ、いずれにしましても、これは今、アフガニスタンで大変問題になっておりますように、このイスラムテロ組織というのもこのイスラム教徒の、非常に私どもの社会ではなかなか理解できないんですが、宗教とかなり密接な関連を持って動いているというところから、今後の全体の事態の推移、これいかんによってどうなるのかということを関心を持って今情報収集に努めているところでございます。

○江田五月君 なかなか微妙な問題ですよね。過激派の母体となるといいますか、そうですね、母体となるイスラム教徒というとらえ方がいいのかどうか。大部分のイスラム教徒は善良でといったってそんなことは当たり前で、別にイスラム教徒でなくたって、無宗教の人だって何教の人だって大部分の人が善良な人であって、それは何もその宗教というのが何か過激派の母体だというとらえ方で、そして公安調査庁がその宗教を特に監視のもとに置くとなると、これはまた、それはそれで問題だと思いますね。その辺の頭の回路の整理はひとつしっかりとしておいていただかなきゃならぬと思います。

 公安調査庁の方もそういうテロについての情報収集、対応をしておられると思いますが、法務大臣、法務省のテロ対策、それから十月八日に内閣に緊急テロ対策本部が設置されたと、ここではどのような措置になっていますか。

○国務大臣(森山眞弓君) 十月八日に緊急テロ対策本部が設置されました。内閣に置かれましたことにかんがみまして、法務省におきましても、十日、事務次官を本部長とする法務省緊急テロ対策本部を設置いたしました。そして、法務省において緊急にとり得るテロ対策のための措置等について協議するなどをしております。十日と二十三日に開催いたしました。

 各局等におきます具体的な取り組みといたしましては、まず入国管理局におきまして、厳格な出入国管理のさらなる徹底を全国の地方入国管理局に指示するとともに、成田空港等の主要な空海港に職員を応援派遣する緊急措置を行いました。加えて、不法入国防止等対策の一環といたしまして、既に全国の主要空海港に配置済みの最新鋭の偽変造文書鑑識機器二十一台のほかに、さらに同じ機器二十三台を国際定期便の運航している全空港等に早急に更新、配備することにいたしました。

 また、公安調査庁におきましては、今月八日に長官を本部長とする緊急特別調査本部を設置しましてテロ関連情報収集体制の一層の強化を図っておりますとともに、検察庁におきましても、今月九日、次長検事を本部長とする最高検察庁のテロ対策本部を設置いたしまして全国検察庁における警戒態勢の強化の徹底等を図っております。

○江田五月君 新たな脅威が出てきて、炭疽菌対策、それからその他の生物・化学テロ対策、プラスチック爆弾対策、こういうものはどうでしょうか。

 それからもう一つ、ワールドカップ対策ですが、これは、従来はこのワールドカップはフーリガンによってぐじゃぐじゃにされるのを何とかしなきゃならぬという、しかし一方で、今度、同時多発テロ事件以降、ワールドカップをテロから守らなきゃならぬという要請も出てきているというので、韓国の金大中大統領はワールドカップへのテロ対策の検討を指示したようですが、我が国の対応はどうか、お願いします。

○国務大臣(森山眞弓君) 炭疽菌とかプラスチック爆弾などを使用して人を殺傷する行為というのは刑法の殺人罪や傷害罪等に当たるわけですが、そのほかプラスチック爆弾は爆発物取締罰則に言う爆発物に当たりますので、その使用、製造等についてはそれぞれ所定の罰則が適用されるわけでございます。

 また、このような行為を犯罪化し、国外犯処罰を義務づける国連条約としましてテロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約がございまして、テロに対処する国際協力を推進する上でこの条約の早期締結が求められておりますが、法務省といたしましても、関係省庁と協力いたしまして、この条約を締結するために必要な国内法の罰則整備を進めておりまして、その一環といたしまして、炭疽菌等の生物剤については生物兵器等を使用する罪や生物剤等を発散する罪の新設を検討いたしております。この罰則整備のための法案については、早ければ今月中にも国会に提出できるように鋭意作業を進めております。

 また、来年の日韓両国におけるワールドカップサッカー大会でございますが、これにはまず、いわゆるフーリガンに対する効果的な対応策を講ずる必要がございます。

 その一環といたしまして、これらフーリガンの上陸を拒否し、また迅速な退去強制を行えるように、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を提出する予定にさせていただいておりまして、これを成立させていただいた上で、これらの法令の適用により厳正に対処したいと思います。

 また、テロに関連いたしましては、もちろんその九月の事件の直後から厳格な出入国審査を徹底しておりますが、この大会に関しましても、テロリスト等の入国を阻止し、テロ行為の発生を未然に防ぐというために、関係機関との緊密な連携を図りながら、出入国管理の強化を推進していきたいと考えております。

○江田五月君 大臣あいさつで、本年七月の国際組織犯罪等対策推進本部の設置に触れておられます。これはどのようなことを行うのか、行ってきたのかについてはどうですか。──どうせ書かれたものをお読みになるだけだろうから、飛ばします。次へ行きます。

 大臣あいさつで、人権擁護行政の一層の充実強化について言及されました。この点について質問いたします。

 昨年成立した人権教育啓発推進法の衆議院、参議院での審議の中で附帯決議が付されました。この附帯決議は、文言は多少違いますが、基本計画の策定に当たっては、地方公共団体や人権にかかわる民間団体等関係各方面の意見を十分に踏まえて策定せよと、こういうことになっております。

 そこで、基本計画の策定前に地方公共団体、人権にかかわる民間団体等関係各方面から十分ヒアリングをする、そして策定されたもの、これを公にしてパブリックコメントを求める、そして最後に決定をするという、そういう手続になっていかなきゃならぬと思っておるんですが、この点、見解の違いはないでしょうね。

○国務大臣(森山眞弓君) 基本計画の策定に当たりましては、附帯決議の御趣旨を踏まえまして、広くパブリックコメント、意見募集手続を行うほか、全国の知事会とか市長会など、関係する主要な民間団体等にあてて計画案を個別に送付するなどしまして、その御意見を聞くことにいたしたいと考えております。

○江田五月君 私と見解の違いがあるのかないのかよくわからない。
 つまり、わざわざ基本計画策定前に地方公共団体や人権にかかわる民間団体等関係各方面から十分ヒアリングをするようにという附帯決議をつけている趣旨は、パブリックコメントというのは一般、もう社会全部、オールジャパンですから、そうじゃなくて、特にこういうところの意見をよく聞きながら基本計画をつくりなさいよと、それでつくったものをオールジャパンに意見を求めて、その上で決定をしなさいよという、そういうことだと思うんですが、その点の見解の違いはあるんですか、ないんですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 基本的にはないと思います。

○江田五月君 そこは間違いなくひとつよろしくお願いいたします。
 さらに、附帯決議で、「人権政策は、政治の根底・基本に置くべき重要課題であることにかんがみ、内閣全体でその取組に努めること。」と、こういうことがございます。内閣全体でその取り組みに努める。

 国連のパリ原則に基づいた国内人権機関、人権救済機関でなきゃならぬと。これは教育啓発じゃなくて、その次のフェーズですが、そこで、これは人権救済機関をどうするかというのは今議論している最中だと思いますが、やはりこれは法務省のもとに国家行政組織法三条でつくるということではなくて、やっぱり内閣全体でとか、パリ原則もある、あるいは国際的にこういう人権救済機関のいろんなつながりがあって、そこへ入れてもらうにはやはり政府から独立しているというところが非常に重要だということになっていますので、ぜひとも国際社会のグローバルスタンダードに沿った人権救済機関、つまり内閣府のもとに置くと。法務省としては大変残念でしょうけれども、そういうことを強くここで主張しておきたいと思います。これについてはきょうは主張だけしておきまして、お答え求めませんが、よろしくお願いします。

 そしてもう一つ、大臣あいさつに触れられたことについていろいろお尋ねをしましたが、触れられていないことについてお尋ねをいたします。

 恐らく森山法務大臣、大臣あいさつには書かれていないけれども、心の内では最も強い抱負をお持ちであろうというのが民法改正問題、選択的夫婦別姓のことですが、最近の、直近の世論調査によれば、国民の理解も十分深まってきていると思われます。また、最近の報道では、福田官房長官も法案提出に意欲を見せておられるというようなこともあり、もちろん森山大臣はもうずっと強い意欲をお持ちだと。

 今がチャンスだと思うんですけれども、なぜ一体出てこないのか、なぜ触れられていないのか、何がこの民法改正の実現を妨げているのか、抵抗勢力はだれだ、これをお伺いいたします。

○国務大臣(森山眞弓君) 実は、世論調査の点はたびたびこの委員会でもお話が出まして、世論調査をことしの夏いたしまして、その結果を発表され、五年前とは大変進んできたという感じをいたしておりますが、さらに先日、男女共同参画会議基本問題専門調査会というところがありまして、そこで特に選択的夫婦別姓制度の導入を内容とする民法改正が進められることを心から期待するという中間まとめをしてくださいました。これを受けまして、官房長官がその方向に向かって進めなければいけないという政府全体としての意向を記者会見か何かでお話しになったわけでございます。この福田長官のコメントは私がこの委員会で所信表明をいたしました後でございましたもので、まだそこまではっきりしたことが政府の姿勢として明確になっていなかったということもございます。

 しかし、世の中だんだんと変わってきたということがいろいろな面で感じられておりますし、私といたしましては、ぜひ、女性の立場を特に考えますとこのような改正が必要ではないかというふうに個人的には考えておりますので、できるだけ早くこのような制度が導入されることを目指して、今関係方面にいろいろと説得させていただいているところでございます。

○江田五月君 大いに説得してください。
 この大臣の所信表明の後に福田官房長官がおっしゃったから、もう自由に物が言えるだろうではやっぱり困るので、できれば森山法務大臣が最初にやっぱり言ってほしかったですよね。

 小泉総理自身は、この問題ではこれは抵抗勢力ですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 小泉総理にはもう大分前、たしか世論調査の結果が大体わかったときに御報告申し上げまして、私の考えもお伝えしまして、非常に関心を持って聞いていただきまして、しっかり進めてくださいということでございましたので、私が考えていることには御異議がないというふうに理解しております。

○江田五月君 しっかり進めてくださいとおっしゃったというのは非常にエンカレッジングで、法務委員会あるいは法務省、この国会はもう法案山積で大変ですけれども、本当に大変ですけれども、もし民法改正をお出しになるなら我々ももう徹夜でも何でも、土日でも審議をしてこれは仕上げるというつもりでおりますので、ちょうど時間になりました、よろしくお願いいたします。


2001/10/25

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