2002/06/28

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154 参院・政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会

衆議院から送付された与党案と参議院で私たちが提出した野党案の2つのあっせん利得処罰法改正案の質議が始まりました。私は、野党案の筆頭提出者として、与党委員の質問すべてに対する答弁を担当します。

9時半から3時間15分、質疑が行われ、自民党の木村仁さんと公明党の山本保さんの質問に、私が答弁。質問は、野党案は厳しすぎるというもの。しかし、不祥事一色の国会に、国民がどれほど失望したことでしょう。政治倫理につき、国会からの鮮明なメッセージが必要なのです。そこに思い至らないのでしょうか。感度の違いとしか、言いようがありません。


○委員長(沓掛哲男君) 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(衆第一六号)及び公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(参第一七号)の両案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○木村仁君 おはようございます。自由民主党の木村仁でございます。自由民主・保守を代表いたしまして、提案されております両案についての質問をさせていただきます。
 まず、現下の情勢にかんがみ、この両法案を御準備いただきました提出者の皆様に心から敬意を表したいと存じます。
 現在のように政治の廉潔性、清廉潔白性が疑われ、国民の信頼が失われつつあるときに、このあっせん利得処罰法を改正して罰則を強化しようということは、誠に時宜に適した発想であって、誠に結構なことであると考えております。
 この廉潔性、清廉潔白性、そして国民の理解、支持を得るための努力ということは非常に大きな法益を守ることでありますが、併せて、私は、国民の代表として自由な政治活動をする国会議員、地方議員あるいは首長、こういう者の政治活動の自由ということも憲法に保障された権利であって、両者の兼ね合いということも極めて重要ではないかと思います。それだけに、犯行の範囲、その他量刑等について慎重な検討をするとともに、特に構成要件が明確、合理的であるということが非常に重要ではないかということを前提にしながら質問をさせていただきたいと思います。
 まず、与党三党と申しますか、自由民主、保守そして公明党の提案され衆議院送付となっております法案について御質問を申し上げます。
 平成十二年の十一月の第百五十国会でこの法案、法律が成立し、十三年の三月一日から施行されたわけでありますが、その当初の法案審議におきましても、いわゆる私設秘書を公設秘書とともにこの法案、法律のいわゆる犯罪主体と申しますか、そういうものの対象にしようという意見は強くあったように理解をしております。施行後一年にしてこれを加えるということになったわけでございますが、当時の議論の背景、そして、これを今回追加して犯罪主体とする改正を行うことの経緯について簡単に御説明をいただきたいと思います。

○衆議院議員(白保台一君) お答えいたします。
 本法制定時においては私設秘書を犯罪主体に加えておりませんでしたが、先ほどもお話がございましたように、昨今の国会議員の私設秘書等の一連の不祥事等により政治に対する国民の信頼が揺らいでいる、こういうことにかんがみ、政治に対する国民の信頼を回復するため規制の拡大を図る必要があると、このように判断したものであります。

○木村仁君 今回、犯罪主体として私設秘書を国会議員、衆議院議員、参議院議員に加えたわけでありますが、野党の案によりますと、私設秘書というものは地方議会議員あるいは地方公共団体の長にもないわけではない、多くの人々がそういう秘書を持っていないというのが実態でありましょうけれどもいないわけではない、そしてその方々がまた同じようなあっせん利得行為を行うのではないか、したがってこれを入れておくべきであるという法案になっているわけでありますが、今回、三党案においてそれを入れていない理由、根拠を御説明いただきたいと思います。

○衆議院議員(白保台一君) これまで国会議員の秘書については、公設秘書のみが国民の税金から給与を支払われる公務員であり、さらに法律上も国会議員の政治活動を補佐するものとして明確に位置付けられております。国会議員の権限に基づく影響力を行使し得る立場にあることから、独立の犯罪主体とされてきたところでありまして、本法の性格に照らすと、基本的には議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体の中核は公設秘書である、そのように考えられます。
 しかしながら、最近の国会議員の私設秘書等に係る一連の不祥事に端を発する政治不信を重大に受け止め、政治に対する国民の信頼を回復するためには、国民の側から見れば公設秘書あるいは私設秘書、この区別は判然としない、そういうことがあります。国会議員の政治活動を補佐するという実態という面に目を向ければ公設秘書も私設秘書も変わりはないことなどから、議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体に国会議員の私設秘書を追加する必要があると考え、本法改正案を提案したところであります。
 したがいまして、犯罪主体の中核となる公設秘書の存在しない地方公共団体の議会の議員又は長の私設秘書についてまで犯罪主体を拡大すべきでないと考えたところであります。

○木村仁君 いま一つ、与党の提案されました法案との関連で野党案が非常に犯罪主体の面で違うところがありますのは、公職にある者の父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹を犯罪主体に野党の案では加えているわけでございます。これはかなり広範な犯罪主体の拡大というふうに私も理解し、どうかなという気がいたしておりますが、また後に野党提出者からの御説明もあると思いますけれども、与党案の提出者としては、この公職にある者の親族と申しますか、こういう者を犯罪主体に入れないと御判断になった根拠、背景を御説明いただきたいと思います。

○衆議院議員(白保台一君) お答えいたします。
 本法の罪は公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を保護しようとするものであるところであります。このためには、国会議員の私設秘書に対象範囲を拡大することで十分であると、このように考えます。
 一方、公職にある者の親族である父母、配偶者、子供若しくは兄弟姉妹を犯罪主体に加えるとする立場は、国会議員等の公職にある者の政治活動に全く関与しておらず、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得ない親族まで処罰の対象としてしまう半面、親族以外の公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得る立場の者をすべて処罰の対象としてはいないのでありますから、要するに、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得るか否かにかかわらず親族という身分にあることのみを理由に犯罪主体とすることになり、相当でないと考えております。
 なお、与党案では、親族であっても衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するものに該当する者は新たに私設秘書として独立の犯罪主体となるので、公職にある者の父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹を犯罪主体に加える必要はないと、このように考えたところであります。

○木村仁君 ありがとうございました。
 そこで、与党案の、衆議院送付案の中身はいわゆる私設秘書を犯罪主体に加えるということでございますから、このいわゆる私設秘書の定義が一番問題になるわけでありますが、この定義につきましてはもちろん十分議論が尽くされておりまして、連座制における秘書の定義、公職選挙法の中にありますように、当該公職にある者に使用される者であってかつ政治活動を補佐するもの、こういうことで、これは判例上もいろいろ議論をされて明確にされているところでありますから特に問題はなかろうかと思いますが、念のために一、二質疑をしておきたいと存じます。
 まず、衆議院議員、参議院議員との間にしっかりした雇用関係があって、もう言わば公設秘書の定数が足りないから私設秘書として雇っているというような人々の場合は明確なのでありますが、そうでなくて、特に雇用関係はない、極端な場合は、もう好意で日々秘書業務を行い、本当に公職にある者の使用人としてその指示に従って働いているという場合がないわけではありません。そういうような、雇用関係が明確でない、あるいは賃金も支払われていないという者であっても、使用されかつ政治的活動を明確に補佐しているものというのはかなり広範囲にこれに含まれてくるものでありましょうか。

○衆議院議員(白保台一君) まず、秘書の定義の問題もございましたので、今回の改正で加える国会議員の私設秘書の定義は、「衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するもの」としております。これは公職選挙法の連座制における秘書の定義と同様であります。そして、公職選挙法上の連座裁判の最高裁判決においても同定義の明確性が認められていることから、あっせん利得罪における私設秘書の定義としても構成要件の明確性という観点から十分に合理性があると、このように判断いたしました。
 今お尋ねの雇用関係等の問題でございますが、国会議員との間に雇用関係がなく賃金を支払われていない者でも私設秘書とされる場合があるのかということについて、本法改正案の私設秘書の定義である衆議院議員又は参議院議員に使用されている者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するものというものの意味は、国会議員の指揮命令に従って労務に服し当該国会議員の政治活動を補佐するものということであり、このような実態があれば私設秘書に該当し、必ずしも雇用契約や賃金が支払われているということを要しないと思います。
 したがいまして、国会議員との間に雇用関係がなく賃金も支払われていない者であっても、実態として国会議員の指揮命令に従い当該国会議員の政治活動を補佐していると認められれば、このような者も本法改正案の私設秘書に該当すると、このように思います。

○木村仁君 お知らせいたしましたちょっと順番が変わりますが、私ども地元に参りますと、参与とか顧問という肩書の名刺を持って、そして地域で活動しておられる方々がいらっしゃいます。
 この方々は、必ずしも公職にある者に使用されているという関係ではなくて、友人関係とか煩悩があるとか、そういうことで活動されておりまして、しかしかなり影響を持っている人がいないではない。そういうような、常時政治活動を補佐しているわけではないけれども折に触れて時折手伝ってあげると、しかし名刺はきちっと持っているというような方は入ってきますでしょうか、入りませんでしょうか。

○衆議院議員(白保台一君) お尋ねの、参与、顧問等の肩書で随時政治活動を補佐しているものは私設秘書か否かということについてでございますが、参与、顧問等の肩書で随時政治活動を補佐するものについても、先ほど申し上げましたように、そのような肩書を持つ者が国会議員の指揮命令に従って労務に服し当該国会議員の政治活動を補佐していると認められれば、本法改正案の私設秘書に該当するのであります。

○木村仁君 まだこの法律が制定され一年三か月で、事件も橋本市の市議会の議員のわずか一件であるということで、その辺りの秘書、公設秘書についても判決がないということでありますから、この辺りは少しあいまいと申しますか、今後の事案等に見ていかなければならない部分であろうと思います。
 そこで、先ほどお尋ねいたしました父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹がどの程度この網に掛かってくるであろうかという問題でありますけれども、典型的なのは配偶者であります。これは、もし秘書としての勤務の実態が備わっておれば、公設の秘書にすることも法律上は認められていると理解をいたしております。政治的にそういうことをする人は少ないということでありますが、認められております。そういうことで、常時勤務の実態を持ちかつ公職にある者の指示に従って言うなれば使用されているという配偶者がいることは事実でありますが、このような者があっせん利得を独自に行った場合に入ってくるのかどうかということであります。
 実態を申し上げますと、配偶者でありますから、本人は使用人だとは思っていないでしょうし、指示をすれば全部ことごとく嫌がったり反発したり反対のことをしたりすると、そういうことでありますけれども、形としてはやっぱり秘書という形を持っていると。そういう者が入ってくれば、別にあえてそれを犯罪主体として法律に規定しておく必要はないのではないか。これは子、兄弟についても全く同じことが言えると思いますが、その点はいかがでございましょうか。

○衆議院議員(白保台一君) 国会議員等が本法の罪につき何らかの形で私設秘書に該当しない父母、配偶者、子あるいは兄弟姉妹を関与させた場合において、国会議員等と父母等とが意思を通じて行ったときは、国会議員等と父母等は共犯となり、国会議員等と父母等の双方に本法の罪が成立する。そして一方、父母等には犯罪の認識がない場合など共犯関係にあるとは言えない場合であっても、国会議員等が言わば自己の手足として父母等を使ったと認められる場合には国会議員等本人について本法の罪が成立することとなると、このように思います。

○木村仁君 もう一度確認いたしますが、そうしますと、親族、特に配偶者等が国会議員の言う言わば指示を受け使者としてあっせん利得行為を行った場合には、本人のあっせん利得の処罰はないかもしれないけれども、共犯とかあるいは使者として、本人、公職にある者本人が罰せられると、こういうことになるということでございますね。

○衆議院議員(白保台一君) そのとおりでございます。

○木村仁君 そのような実態があるとすれば、あえて配偶者を別途犯罪主体と構成するまでもなく、公職にある者の廉潔性、清廉潔白性は保たれると申しますか、大体一緒に責任を取るような形になるなという気がいたします。
 そこで、時間がございませんので総括的にお尋ねをいたしますが、民主党外三党の参議院で提案されました法案によりますと、現行のあっせん利得罪に係る構成要件の重要なものの多くが削除され、あるいは利得、財産上の利得というものが賄賂に変わるというような範囲を広げる、そういうことで非常に大きな網をこの問題について準備することになりますが、例えば、あっせん行為の範囲を限定しない、請託を不要とする、権限に基づく影響力の行使も必要としない、財産上の利益を賄賂とする、収受だけでなく要求、約束を加える、そしてまた第三者供与を加えると、こういうことになっているわけでございますが、このような大きな網をかぶせていくということについてどのようにお考えか、また、ここの問題について特にコメントをしておく必要があるとお考えのところはお答えをいただきたいと思います。

○衆議院議員(白保台一君) 御質問の中で六点にわたる御質問がございました。大変大事なことでございますから、一つずつきっちりとお答えをさせていただきたいと、このように思います。
 まず最初の、あっせん行為の範囲を限定しないことについてということであります。
 本法があっせん行為の対象を国及び地方公共団体が締結する契約と特定の者に対する行政庁の処分に限定している趣旨は、公職にある者は本来、国民、地域住民全体の利益を図るために行動することを期待されているところでありますが、契約や処分の段階でのあっせん行為は、国民、地域住民の利益を図るというよりは、むしろ当該契約の相手方や処分の対象等、特定の者の利益を図るという性格が顕著であり、そのようなあっせん行為を行って報酬を得る行為は、公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性及びこれに対する国民の信頼を失う度合いが強いため、処罰することとしたものであります。
 次に二番目の御質問ですが、仮に処罰の対象となるあっせん行為の対象を特定の者の利益を図るという性格が顕著である契約や処分の段階でのあっせん行為に限定することとせず、野党案のように公務員の職務に関する行為全般に拡大するならば、処罰の対象があいまいに広がるおそれがあります。その結果、国民や住民の声を吸い上げて通常の政治活動として行われる行政計画や予算案に対する公職にある者の働き掛けを不当に萎縮させ、ひいては政治活動の自由を害するおそれがあると考えます。
 次の二番目、請託でございますが、請託を不要とすること及び権限に基づく影響力の行使を要件としないことについてにお答えいたします。
 請託を要件とした理由は、本法制定時における質疑の中で答弁したとおりであります。あっせんは請託を受けてされるのが通常の形態であることに加えて、公職にある者等が他の公務員に何かを働き掛ける場合には、だれかに何かを頼まれてその人のためにいわゆるあっせんをする場合と国民や住民の声を吸い上げて通常の政治活動として働き掛けを行う場合のものがあろうと思いますが、請託を要件としなければ、この両者の区別が不明瞭になり、処罰範囲があいまいに広がり、ひいては政治活動の自由を害することがあると言えることから、処罰の対象となる犯罪構成要件を明確に規定するため、請託を要件とするのが適当であります。
 権限に基づく影響力の行使を要件とした理由についても、本法制定時における質疑の中で答弁したとおりであり、あっせんの方法を公職にある者が法令に基づいて有する権限に直接又は間接に由来する影響力を行使したときに限定しない場合には、公職にある者等の身分を有する者が行政府の公務員に対して行うあっせん行為のほとんどが対象となって、処罰範囲が過度に広がり、公職にある者による正当な政治活動を萎縮させるおそれがあるからであります。
 このように、請託も権限に基づく影響力の行使もいずれも必要であって、本法の構成要件から外すべきではないと考えました。
 なお、「請託を受けて」、「権限に基づく影響力を行使して」を要件とすることについては、請託があったことや公職にある者の権限に基づく影響力を行使したかどうかの立証の難度は具体的事案における証拠関係に左右するものであり、これを要件としたことによって直ちに立証が困難になるとは一概に言えないのであります。
 財産上の利益を賄賂とすることについて、賄賂とは、財産上の利益よりも広範な概念であり、情報、職務上の地位の提供、異性間の情交等の非財産上の利益であっても、およそ人の需要、欲望を満足させるのに足りるものであれば賄賂に当たります。本法が、賄賂ではなく、財産上の利益の収受を処罰の対象とした理由については、本法制定時の質疑における提案者答弁にもあるとおり、本法の罪は賄賂罪と保護法益を異にするものである上、前提とするあっせん行為は、公務員等に正当な職務行為をさせ、又は不当な職務行為をさせないというものであってもよいこととされており、本法の罪の保護法益である公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を端的に保護するためには、処罰対象は公職にある者等の活動において最も問題とされる財産上の利益の収受であれば足りると考えられるからであります。したがって、財産上の利益に加えて非財産上の利益を含む賄賂の収受までを処罰の対象とすべきではないものと考えます。
 次に、収受だけでなく要求、約束を加えることについてお答えいたします。
 本法が財産上の利益の収受のみを処罰の対象とし、要求や約束を処罰の対象としなかった理由については、本法制定時の質疑における提案者答弁にもあるとおり、本法の罪が対象としているあっせん行為は、刑法のあっせん収賄罪と異なり、公務員に正当な職務行為をさせ、又は不当な職務行為をさせないというものでもよいことを考慮すれば、あっせんの報酬として財産上の利益の授受が現実に行われた場合にのみこれを処罰すれば足りる。本法の罪において言わば単なる言葉のやり取りにすぎない行為にまで処罰対象を広げれば、本法の罪の存在を悪用する者がいないとも限らず、かえって正当な政治活動を萎縮させるおそれがあると考えられるからであります。したがって、財産上の利益の要求や約束までを処罰の対象とすべきではないと考えます。
 次に、第三者供与を加えることについてであります。
 本法の保護法益である公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を保護するためには、国民の政治不信を招くような行為、すなわち、実質的に公職にある者等、本人があっせん行為の報酬たる財産上の利益を収受した場合にのみ処罰すれば十分であります。
 すなわち、外形的には本人以外の者があっせん行為との間に対価性があると認められる財産上の利益を受け取ったとされる場合でも、当該財産上の利益に対して本人が事実上の支配力、実質的処分権を有すると認定できる場合には本人が収受したものとして本人に本法所定の罪が成立する可能性があり、第三者供与の処罰規定を設けなくても本法の保護法益は十分保護されるものであると考えます。逆に、本人が事実上の支配力、実質的処分権を有すると認定できない場合にまで広く第三者供与の処罰規定を設けることは、不当に処罰範囲を拡大するものであり、妥当でないと考えます。
 以上、お答えします。

○木村仁君 大変詳細な御答弁をありがとうございました。
 二十分、二十分と思っておりましたが、少し短くなりましたので、簡潔に質問させていただきます。民主党始め四党の法案であります。
 この親族、父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹を犯罪主体とすることは、やっぱり社会通念から見ると少し広過ぎるんじゃないかなと。例えば、私の子供のうちには、おやじが政治家やっていることが我慢ならないと、一切そういうこととは関係なく生活している子供がいるわけですよ。しかし、面倒見がいいから人の世話はしております。役所に友達がいるかもしれない。で、世話をしてお礼をもらったらそれは罰せられるというのはちょっと余りぴんとこない気がいたしますが、それを全部お入れになった理由を御説明いただきたいと思います。

○委員以外の議員(江田五月君) 私どもの対案についても御質疑いただきまして、大変ありがとうございます。
 今、国民の皆さんが政治に対して一体どれほどの不信感を抱いておるか、政治に対する信頼感がどの程度傷付いておるかということについての認識の違いだという気が私はいたします。あっせん利得処罰法、本法施行後一年少々で、期間が短いとはいえ、それでもやっぱり、この間に一件しか該当事例が出ていないというのは、やはりこの本法の規定がいかに狭いか。逆に言えば、このいろんな要件に当たらなけりゃ何やってもいいということを規定しているというふうに受け取られているかということだと思うんですね。
 私どもは、今延長になりましたが、この通常国会、元々は景気対策であるとか構造改革であるとか、そういう非常に大事なことを審議をしなきゃならぬ。その国会が、もう政治と金の問題でこれほど荒れた国会はいまだかつて見たことがないという状態になっているわけですよ。そういうときにこのあっせん利得処罰法を改正をしようというわけですから、私はやはり、本法の保護法益である公職にある者の廉潔性に対する国民の信頼や、あるいは公務員の職務の公正さに対する国民の信頼、これをもう一度しっかりと立て直すために厳しい改正をしなきゃならぬと、こう考えたわけでございます。
 先ほど与党案の提出者からの説明がございましたが、やはり今、公職にある者の周辺にいる、例えば私設秘書であるとかあるいは親族であるとか、こういう者がいろいろと動き回っていろんな金を手に入れている、もちろんそれは公職にある者の大きな財布の中に入ってきてしまうと。少なくとも世間的にはそういうふうに見られるわけでありまして、親族、それが父母であれ配偶者であれ子であれ兄弟姉妹であれ、そういう者がそういう立場であっせんをして、そして賄賂を収受する、あるいはそういう約束をするとか、そういうことはすべてこれはいけないんだと。そういうことを我々政治家はここで明確に国民の皆さんに、私たちはそういうことはもういけないとしてやらないと、そういうメッセージを発するんだということが今大変大切である、そういう事態に至っているということを考えて、こういう親族にまで広げようと考えたわけでありまして、しかもこれは公職選挙法二百五十一条の二の連座制の規定にございますよね、そういう規定が。これはもちろん、ほかの要件いろいろあるから同じものじゃありませんが、しかし父母、配偶者、子又は兄弟姉妹と、そういうところにまで公職にある者の、どういいますか、公職選挙法の場合には選挙の公正さ、これを害する行為者の対象に広げるということは既に私たちやっているわけでありますから、これはやはりあっせん利得処罰法においてもそこまで広げる必要があるということを考えたわけでございまして、是非御理解いただきたいと思います。

○木村仁君 選挙の場合の連座は、兄弟姉妹どこにいても、一生懸命やったやつが違反を犯したときに本人に及ぶわけで、これはもう全く別にやっていることで、本人の政治と関係なく、だから少し事態が違うのではないかと思いますが。
 そうしますと、全く政治に関係していない、私は熊本ですが、北海道に子供がいて、全くこれはもうおやじは好かぬと。そういう人が例えば人の世話をしてやった場合に、たまたま私の子供でなければ罰せられない。しかし、ほかの人は同じことをやって同じものをもらっても罰せられない、ところが、たまたま子供であるばかりに罰せられましたというのでは、これはどうも法の前の平等に反するのではないかという気もせぬでもございませんが、一言コメントを。

○委員以外の議員(江田五月君) 先生も時間のことも気にされているでしょうから、短くお答えをしたいと思いますが。
 たまたまだれかがあっせんをして何かの利益を得たと、よく調べたら、たまたまだれかの兄弟か何かが田舎の方のどこかの市会議員か何かをやっていたというところまでこれが入るのかどうかということですけれども、刑罰法規というのは、全体に書いてあることが社会通念上そういうものとしてちゃんと当たるという、ある種の構成要件的な限定があって、それは構成要件的故意という、そういう刑法上の議論も、別にこれは妙な議論じゃありません、もう全く通常の議論としてございます。
 つまり、公職にある者の親族がこういうことを行ったという場合には、その親族がというのは、親族の立場をもって行ったということであって、たまたま調べたらどこか田舎の方の町会議員さんを兄弟がやっていたねとかいうようなときには、そういう立場をもってしているというようなこととは全く関係ありませんから、御心配のようなことはない、法の下の平等にも反しないと、こう考えております。

○木村仁君 江田裁判官は有罪の判決をしないと、こういうことでありますから安心をいたしておきます。
 そこで、もうほとんどの要件が外されてしまいましたので、ポイントになるところは恐らく特定の者に利益を得させる目的ということであろうと、こういうふうに思います。
 そこで一、二お尋ねしたいんですが、例えば住宅税制の改善をすると、こういう場合、これは翻って考えれば住宅建設業者には利益がいくんでしょう。そういう場合には、その結果、特定の業界団体から皆様の場合ですと賄賂をもらったと、こういう場合はやっぱりこの特定の者に利益を得させる目的ということに当たるわけでしょうか。

○委員以外の議員(江田五月君) お答えいたします。
 特定の者というのは、これは一般的にいろんな法律の場面で出てまいりますよね。ですから、これは特定の個人だけを示すというものではもちろんありません。ある一定の特定性を備えたものであれば、それが例えば地域の団体であれ、あるいはいろんな業界団体であれ、それは当たると。
 ただ、特定の者に利益を得させる目的、例えば今の住宅税制であれば、それは建築業者の利益ということもあるかもしれないけれども、そういうものを通じて全体に、例えばそれは景気対策になるとか、あるいは一般の国民の住宅事情を改善するとか、いろいろありますよね。ですけれども、特に特定の集団の利益ということが目的として特定されておればそれは当たると。
 ただ、もちろん、言うまでもないことですが、財産上の利益あるいはその他も我々含めますが、そういう何か利益を得なかったらこれは元々当たらないんで、政治を利用して金もうけその他の利益をすることがいけない、政治を使った錬金術がいけない、口利き政治がいけないと、そういうことを我々言っているわけでありまして、どうぞそこは、政治家として自信を持って、国家国民のために大いに政策活動をやるということまで制限されるなどと考えていただかなくて全く結構だと思っております。

○木村仁君 例えば、利益というのは何かということでありますが、特定の例えば労働団体の全国組織、これが国の官庁に対して交渉をしたいと。そうすると、国の官庁は、私は交渉の主体ではありませんということでお断りをします。そうすると、政治家がお見えになって、まあ、そう言わないで話合いをしろよと。話合いのつもりでやりますが、交渉という名前で労働団体は呼ぶわけであります。このあっせんは利益を与えたことになるんですか。

○委員以外の議員(江田五月君) 正に今の利益を得させる目的を得る特定の者というところで問題にされているのかと思いますが、労働団体であれ業界団体であれ、それはそういう特定性があれば特定の者に当たると。そして、いろんな仲介の労を取る、それがあっせんに当たる場合もあろうと思いますが、ただ、あくまでもそのことによって何か対価性のある利益が、利益といいますか、あっせんをした公職にある者に対して何かの利益がなければそれはこの犯罪類型には当たらない、これは当然であります。

○木村仁君 よく分かりました。
 ただ、賄賂でございますから、その議員の選挙のときにその労働団体から手伝いが出たらこれは捕まる場合があると、こういうことで、各々方、用心召されという感じでございます。
 それからもう一つ、例えば町内会のコミュニティーセンターを造る補助金、こういうものについて議員はもちろん一生懸命あっせんをするわけであります。これも、後で何かもらったらあっせん行為に当たると、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。

○委員以外の議員(江田五月君) はい。そういう場合がございますので、お互い注意をしなきゃいかぬと思います。

○木村仁君 もう時間がありませんので最後にお尋ねいたしますが、構成要件の緩和等について一々与党がおっしゃったことに反論があろうかと思いますけれども、また他の人に譲ります。
 最後の第六条を削除されるわけです。これは、今のようなソフトな小泉内閣のような政府がいる場合は大丈夫ですけれども、暴虐な政府ができたとして、そしてこの法案、法律を野党案で成立した場合に、活用してこれをいじめてやろうというと、ちょうどマッカーシーの赤狩りみたいな、ともかく活動全部をチェックして、どこかで何か賄賂をもらっていないかというのをチェックできるわけでありますから、もう本当にそういう恐怖政治みたいなことが起こり得ないとは限らない。これは歴史でありますから分からないんです。
 この規定がなくとも、私は、司直といいますか、法的立場にある人はそれを十分尊重して政治家の政治的自由を尊重しなきゃいけないと思いますが、あるものを消してしまうということは、もう余り尊重しなくてもいいよということになってしまいますが、いかがでございますか。

○委員以外の議員(江田五月君) 第六条は入念規定でありまして、ある意味では言わずもがなのことですよね。やはりここも、私は、今、我々政治に携わる者の国民に対する姿勢、どういう姿勢を私たちが示すのかということにかかわると思うんですね。
 私ども、あっせん利得処罰法というものを作った。作りながら、どうもしかし余りやられるのは困るなという、そういう思いがにじみ出ているというふうに国民に見られたらたまらない。そうではなくて、今は私たち自ら襟を正すんだと。国民の皆さんひとつ、一から出直すから、心掛けを完全に入れ替えるから、政治に対する信頼をもう一度ひとつ持ち直してくださいという、そういうことが必要なので、あえてこういう入念規定は取り払うという覚悟が我々に要るんだということで、この入念規定も削除という提案をさせていただいているわけでございます。

○木村仁君 こういう法律があるなしにかかわらず、我々は襟を正して政治に当たるということを申し上げまして、終わります。
 ありがとうございました。


○山本保君 公明党の山本保です。
 私は、先回のときの議論には参加しておりませんので、そういう点では、今、佐藤先生からやはり大変専門的な観点からの御質問があった後では誠に私にとっては厳しい場でございますけれども、私はただ、法律というのは基本的にそのとき作られた状況から変化していく、立法者の考え方とか、当時、公務員というものを基本に考えていたという状況が変わったというときにその一番近い法律を変更して新しい場面に対応していくということは基本的に大事なことだと思っております。
 参議院議員として衆議院の方に申し上げるのは失礼かもしれませんけれども、たしか論語に、過ちて改めざるを誤りと言うというのもたしかあったようでございまして、そういう意味ではないでしょうけれども、しかし私は、対応をここで早くしていくということは構わないのではないか。特に今回、そこで、野党の方が以前言っていたことを入れようということであるならば、速やかにこれについては野党も賛同されればよろしいのではないかなという気もいたします。
 そこで、私何点か、時間の限りもありますのでまず最初にお聞きいたしますが、これは与党の方の提案者にお聞きいたします。
 今回の条文で、先ほどから何度も議論になっておりますけれども、「補佐するもの」という言い方をしている、定義しているわけですけれども、もう一度確認をしたいと思います。親族の方であっても、これはここの中に入るというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○衆議院議員(町村信孝君) 補佐するものの定義ということのお尋ねでございますが、補佐するというのは、これは大阪高裁の判決の中に触れられておりまして、政治活動を行いやすくするために役立つ行為や政治活動の効果をより大にするのに有益な行為等、各種の労務提供を指すと、こういう具合になっておりまして、単なるこう、どういうんでしょうか、事務的なお手伝い、受付だけをするとか、電話の交換だけをするというような業務、単純労務を提供するものはこの政治活動の補佐には当たらないで、やっぱり一定程度裁量を持って事務を遂行するというものについて補佐をすると。したがって、そういう活動をする人が親族であっても、その場合は当然補佐をするということで、親族であろうとなかろうと、そういうものは対象になるということでございます。

○山本保君 先ほど自民党の木村先生からも顧問とかなどの相談役ですか、そういう名前の名刺の場合はというお話がありましたので、ちょっと私も、質問には書いてなかったですが、よく使うものとして、例えば後援会の幹事というような形で応援をしていただいている方がいますけれども、例えばこういう方についても当てはまると、これは常時動かないと、ボランティア的に例えば休日などに動いているというような方もいるわけですけれども、その状況に応じてでしょうけれども、入り得るというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○衆議院議員(町村信孝君) いろいろな名刺にいろいろな肩書を書いて、実際に今ここで言ういわゆる補佐をするという業務をしていなくても秘書という名称を書いて、あるいは自分が全く知らない人が何々議員、何々秘書と、こういうケースもある。そういうのは幾ら名刺に書いてあったからといって、いわゆる私設秘書には該当しない。逆に、後援会幹事長と書いてあれ、あるいは何も書いていなくても、その人が先ほど申し上げたように使用され補佐するという立場であるならば、そこは正に実態認定の問題でございますけれども、それはいわゆる私設秘書に該当するということになると考えております。

○山本保君 ここの辺は大変大事なところだと思いますので、もう一つお聞きします。
 先ほども御答弁の中に、その場合は雇用契約を結んでいなくとも、賃金というような形を払っていなくとも、実態的に補佐している場合には入りますよという御答弁だったと思います。そうしますと、当然奥さん、配偶者には賃金も払っていませんし、そういう契約は結んでおりませんけれども、この奥さんが議員のために動いたとなれば、これは当然この言葉の中に入るというふうに理解してよろしいと思いますが、いいでしょうか。

○衆議院議員(町村信孝君) お尋ねのとおりでありまして、実際に賃金の有無等々は関係なく、先ほど申し上げたように、使用され補佐するという関係であれば、それらはこれに該当するということになるわけであります。

○山本保君 ありがとうございます。
 それでは、ちょっと順序を変えますが、これに関連しまして、この補佐するという言葉は公職選挙法ですか、この連座制の適用規定に「補佐するもの」というのがあり、これと同様であるというたしか御説明だったと思いますが、総務省ですかね、参考人の方、おいでいただいていると思いますけれども、この辺についての解釈をまず今までの解釈について御説明ください。

○政府参考人(大竹邦実君) 公職選挙法におきましては、第二百五十一条の二の連座といたしまして秘書の連座があるわけでございますけれども、これにつきましては、「公職の候補者等に使用される者で当該公職の候補者等の政治活動を補佐するもの」と規定しているところでございます。
 これにつきましては、実態として公職の候補者等の指揮命令に従って労務に服する者で、相応の裁量と責任を持って事務を処することにより、当該公職の候補者等の政治活動を支えているものをいうと、このように解釈しております。

○山本保君 その相応の裁量、責任ということで、先ほどあったように、ただ受付をするというようなものは入らないということなんだなというふうに分かりました。
 それでは、野党案の提案者の方に同じ分野についてお聞きしたいわけですけれども、これは先ほどお話もあったと思うんですけれども、親族であっても、特にここで言う「父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹」、この中でも政治活動に全く関与していないという人もいると思うんですけれども、おりますが、私の周りでも。こういう方についてもこの中に入れてしまうと。しかも、今回この条文を拝見しますと、「兄弟姉妹が、特定の者に利益を得させる目的で、公務員」と、こういうふうに書いてありますから、この公務員というのは正に議員と全く無関係な関係であっても、この条文からいえば、そういう方が公務員に対してあっせんをし何か、特にまた賄賂ということですからお金でなくてもいただいたとなると、これはこの条文でいけば含まれてしまうというふうに読めると思うんですけれども、これではちょっと実態的にまずいんじゃないかという気もしますが、いかがでしょうか。

○委員以外の議員(江田五月君) 先ほどからの委員の御質問で、親族であっても、その前のいわゆる私設秘書、つまり使用されそして補佐するものに当たる者、これは当然そちらで処罰されるということになりますが、そうでない親族でこういうあっせん行為を行って利得を得るというような者がいるわけですよね、現実に。今、この国会、通常国会のこれまでの議論の中ででも、いろいろ奥さんがどうしたとかそういう話もずっと聞こえてくるわけです。しかも、公職選挙法連座制の規定の中では、親族の行為についても選挙の公正さを害する対象に取り込むというところまで私たち決断をしているわけですから、したがって、このあっせん利得処罰法の行為者の拡大の場合にもそこまで広げることが妥当であると。
 先ほどの佐藤委員の質問を聞いていても、今、私設秘書まで広げて、そうすると必ず何か逃れようとして親族まで実態が拡大してきて、そのときに私たち慌てたんじゃいけないということで、今日、将来どこまでこうしたことが広がってくるかを見越してここまで処罰の範囲を広げておこうとしたわけでございまして、私は決して御懸念のようなことはないと思っております。

○山本保君 江田先生、ちょっとそれでは細かくお聞きいたしますが、先ほどの私お聞きした答弁では、当然親族であれ配偶者であれその裁量と責任を持って仕事をしておれば含まれるというふうに私は理解しているんですけれども、野党案のこれ条文を読みますと、こういう書き方が、「公職にある者の秘書」、そして括弧で「国会法」云々と、こうございます。「当該公職にある者の政治活動を補佐するものをいう。」、そして括弧閉じまして、「又は公職にある者の」という、ございますね。
 そうしますと、この括弧の中身にあります「政治活動を補佐するもの」という中には配偶者は含まないということになりますですね。こういう解釈は、しかし先ほどの総務省の御説明とは違う説明になると思うんですけれども、これでよろしいんでしょうか。

○委員以外の議員(江田五月君) 私は、先ほど答弁したのは、親族であってもその前段の秘書、括弧、使用され補佐するものというところに当たれば、これはそちらに当たるということでございまして、「又は」ですから両方に当たって、そして別に両方ですから二罪が成立するなんてことはこれはないんで、両方の立場で一罪が成立するということになると理解をしております。

○山本保君 前半が掛かっていればもちろんそのようになるわけですから、後段を書く必要はないと思うわけですが。
 じゃ、もう一つお聞きしますけれども、例えば、兄弟までで、兄弟の子、つまりおい、おいごがやっておると、これよくございます。この先生の条文でいきますと、おいの場合は入らないことになりますですね。これはどういうことでしょうか。

○委員以外の議員(江田五月君) 親族ということで該当する場合は、父母、配偶者、子、兄弟姉妹と、こう限定をしております。したがって、それ以外の親族は、親族という身分においては当たらないんです。しかし、たとえおい、めいであっても、前段の私設秘書の括弧内の定義に当たる者であれば、これは前段、前段といいますか、「又は」の前のところで当たるということになります。

○山本保君 そこをお聞きしたかったんですが、そうしますと、親族であってもその補佐するものでない者、これは入るんでしょうか、入らないんでしょうか。今のをお聞きしていますと、補佐していなければならないというのが絶対条件のように聞こえます。

○委員以外の議員(江田五月君) 前段、前段といいますか、「又は」の前の使用され補佐するものでない親族、その場合は、親族もそれはたくさんあります。姻族もあるし、一杯、おい、めいまでありますが、ここで書いてあるのは、父母、配偶者、子、兄弟姉妹ですから、その限度で限られる。この何が兄弟姉妹か、何が子であるかというのは、これはもう民法で決まることですから、ここで別に書く必要はないということでございます。

○山本保君 しつこく言うようでも確認させていただきます。
 つまり、子であっても、配偶者はもう話がややこしいですからおきますが、じゃ、子であっても兄弟であっても、であって、なおかつ政治活動を補佐するものでない者もここに含むと、こういうことでございますね、そうしますと。

○委員以外の議員(江田五月君) そのとおりです。

○山本保君 それとなりますと、ここは別に意見を言う場ではないですけれども、ちょっとそれではこの法律の目的とはずれるのではないかなと。正に何か封建時代の一族郎党全部責任を取れというような、これは冗談ですけれども、そんな発想なのかななんていう気もしないでもないんですけれども、問題点を整理させていただきましたので、じゃ、次の方に移ろうと思いますけれども。
 先ほどお話にもあったんですが、顧問でありますとか、そういう名刺又はその実態ということになりますと、与党案の提案者にお聞きしますが、そうしますと、やはり地方議員等においても同じ実態があるんではないかという気もするんですけれども、公設秘書がなくてもというのは、正に先回の法律の範囲の枠の議論だったんじゃないだろうか、先ほどの議論をお聞きしていて。今回、そことはまた別に私人であってもというふうに広げたとなりますと、公設秘書のいない首長さんとか地方議員さんであっても、それを実際的に補佐しているものであれば対象に含めるべきではないかという気がいたしますけれども、いかがでしょうか。

○衆議院議員(町村信孝君) 議員本人のあっせん利得罪と、それから議員秘書のあっせん利得罪と二つ分けて考えますと、議員秘書のあっせん利得罪の主体、犯罪主体の中核というのは、私どもは依然として公設秘書であると、こう考えているわけであります。その公設秘書と実態的にいろいろな理由から区別の付かない等々で、議員の、国会議員の私設秘書も今回対象に加えたらどうかという御提案をさせていただいているところでありますが、地方議員には公設秘書というのがいないわけであります。したがって、その中核である、犯罪主体の中核である公設秘書の存在しない地方公共団体の議会の議員又は長のその私設秘書にまで犯罪主体を拡大するということはいかがなものであろうかというふうに考えたものですから、それを対象にしていないわけであります。

○山本保君 一つの判断ということでお書きになったのだなというふうには分かりますが、私設秘書という言葉を使わずに実態的に補佐するものという概念を作るとなると、これは地方、先ほどの例からいって地方議員においても同じものがあるのではないかという気もいたします。ここはまたもう少し議論を深めたいなと思っております。
 次に移りまして、与党案提案者にお聞きしたいんですけれども、こういうふうに何か議員に口を利いてそして便宜を図っていただくということが何か悪のように思われるのではないかなと私も懸念するんです。といいますのは、先ほどのお話にもありましたが、確かに国会議員が何かを口を利いて、行政の不備であったところを早く便宜を図ってあげる、若しくは網に漏れていた人をそうではないよという注意を喚起する、これは私は国会議員の、それだけの仕事ではもちろん駄目ですけれども、しかし大事な仕事だとは思います。
 といいますのは、私も国会議員にならしていただいて、正にその程度の仕事なのかと思ってやってみますと、実はその中に、正に法律の不備でありますとか今の制度の基本的な不備というものがあったということがもう何回もあったわけでありまして、その中から新しい仕事が出てきた、法律改正若しくは制度を変えた、通知を変えさせたということもあるわけであります。
 ですから、一概にこういう仕事が、何か国会議員にとっては主たる仕事ではないというような、何か親分がやればいいのだというようなものでは私はないと思っておるわけですけれども、この辺についてはいかがでございましょうか。

○衆議院議員(町村信孝君) 議員御指摘のように、政治活動の自由というものは大変私は重要な憲法上の権利であろうと、こう思っているわけでありまして、だからこそ現在の法律の六条で、この法律の運用に当たっては、公職にある者の政治活動を不当に妨げることがないよう留意しなければいけないということが書いてあります。
 したがって、実際にいろいろなお願い事がある。それは個別のお願いであるかもしれないし、業界あるいは労働組合全体のお願いかもしれないし、あるいは日本国全体の言わば国益に関するような、安全保障等々に関するそういう要請がいろいろなところからあるかもしれない。それは様々な要請があるということであろうかと思いますが、要は、政治活動と密接な関係があるあっせん行為で利得を得ること、ここを処罰しようということであるわけでありまして、したがって、この処罰の対象となる構成要件はできるだけ明確であった方がいいだろうと、こう思うわけであります。
 いずれにいたしましても、政治活動の自由というものを保障しながら、公職にある者の政治活動の廉潔性、清廉潔白性とこれに対する国民の信頼を確保するために必要な規制を行う、そのバランスをいかに取っていくのかということを考えた上で私どもの今回の提案をさせていただいているということでございます。

○山本保君 ありがとうございます。
 それでは次に、この請託についてちょっとお聞きしたいと思います。
 最初に、与党案の提案者にお聞きしますけれども、この犯罪成立の要件として請託があるかないかということであると、先ほどそんなお話もありまして、正に偶然とかそういうものではないと。また、明らかにそのようなものがなければもちろん政治家としても動かないだろうなという気はするわけですけれども、しかし、こういう請託というものを要件にすれば立証が大変難しいという意見もあるようでございます。その辺についてはどのようにお考えでしょうか。

○衆議院議員(町村信孝君) 請託の有無ということについては、既に刑法で請託を要件にしているものもございますけれども、必要あらばこれは法務省の方から関連してお答えをいただいてもいいんですが、請託が要件になっているからといって直ちに立証が困難になるということでもないというのが、現実の立証されたその案件数といいましょうか、それによって明らかではないだろうかと、こう思っております。
 そして、今、委員御指摘のように、あっせんというのはやっぱり、請託がなくてあっせんというのは本当にあるんだろうかと言われれば、やっぱりこれは請託を受けて行われるのが当たり前というか通常の形態であろうと、こう思うんでありますが、他方、私どもが公務員に対して何か働き掛けをする場合に、だれかに特定のことを頼まれてやる場合と、正に先ほど木村議員でしたか、お話があったような地域のコミュニティーセンターあるいは住宅産業のケース等々、あるいは労働組合からの、と政府の交渉のあっせん、幾つかの例をさっき挙げられたと思いますが、様々なケースがあるわけでありまして、その際に、やっぱり請託というものを要件としておくということは、やはり処罰の対象となる犯罪構成要件を明確に規定をするという必要上から、私はこれは必須のものであろうと、こう考えているわけであります。

○山本保君 それでは、法務省からも参考人に来ていただいておりますので、今、町村議員からお話があった件でございます。
 実際に、確かに小説とかそんなのを見ていますと、こういうのがあったのかなかったのかと、この立証、自供させるぐらいしかできないんじゃないかとかいうことも聞かないでもないんですが、実際にこの立証というのは大変困難なことであるというふうに思われて、という形で運用されているのかどうかについてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(河村博君) お答え申し上げます。
 請託を要件といたしますことで立証事項が増えることは事実でございますが、一般に立証の難易は具体的事案におけます個々の証拠関係に左右されるものでございますので、請託という要件が存在するということによりまして直ちに立証が困難になるかどうかは一概に論ずることのできない問題でございます。
 なお、先ほどもお話ございましたが、刑法の賄賂罪におきましても請託を要件としている例は多いわけでございまして、それらの罪で立件される事件数も少なくないところでございます。

○山本保君 つまり、そのことがビデオに撮ってあったりとか、録音テープがあったりとか、又はその関係者がそのように証言をして判をつくとか、そんなことがなくとも立証できると、こういうふうに認識してよろしいですか。場合によってはですよ、もちろん、その状況によって。

○政府参考人(河村博君) 事実関係はそれぞれでございますので、関係者の供述あるいはその各種の証拠からよって認められます、その前後を含めました事実関係等によって認定、総合的に認定されるものでございます。

○山本保君 今のお話で、直接的な証拠がなくとも、その状況によって相当蓋然性が高いということであれば立件できるというふうに、私、言っておられるんだと思います。
 野党の方に、野党提案の方にお聞きしたいんですけれども、今度、反対に請託ということがなければ、原因と結果だけ見てある動きをして、ある利益があったと。しかも、この場合、野党案ではお金とは関係ないということでございますから、例えば所属政党に応援があったとかいうようなこと、これは全くその議員がそのことをお願いしているわけでもなくとも応援をしていただくというようなことがある、こういうことでもすべてこの中に入ってしまって、大変、そのときは、しかもそれを、裁量が、捜査当局の裁量によってしまうということになりますと、これは政治活動をする場合に大変やりにくくなるんじゃないかという気がするんですけれども、いかがでございましょうか。

○委員以外の議員(江田五月君) 請託というものは、私も法律関係無縁ではなくて、いろいろ関係をしてまいりましたが、やはりなかなか立証は実際には困難な場合がある。今、法務省のお役人さん、なかなかそこは苦しい答弁をされたと思いますよ。
 しかし、この、いや、ここへ一つの資料があるんですけれども、刑法の贈収賄事件について戦後五十五年間の単純収賄と請託を要件とする受託収賄罪の起訴件数、単純収賄罪は一万六千三十七件、受託収賄罪は千九百五十三件と、こういう資料があるんですね。
 もちろんこれはいろんな原因があると思いますが、この数字の大きな違いを見ると、やはりなかなか請託の立証というのは難しいと。そこで、残念ながら単純収賄で処理をせざるを得なかったと。捜査の担当、捜査に当たる皆さんが本当にほぞをかんだということがにじみ出てきているという気がするんですよ。
 実態を見ますと、その事実自体の中に事実行為として請託はもう当然推認されるじゃないかというのが一杯あると思うんですね。それは、いろいろあっせんを受けて、そして何かをしてやって、そして後で利得を得る、その行為自体の中に何かそれは請託的なものがなければそんなことにはならぬだろうと。そうすると、もうあえて請託という明確に立証することが困難な要件を入れなくても、そのこと自体の中に処罰の可能性といいますか、非難の可能性はちゃんとあるということだと。もう少し逆に言いますと、請託がある場合とない場合とどちらが本当に悪質なのかと。そのことの議論もこれまで法制審議会なんかの議論の中で行われていたとも聞いているわけです。
 それは、公職にある者がじっと見ておって、あそこで困っている人間がおる、これはちょっと役所へいろいろ口利いてやったら彼は何か見返りをくれるんじゃないかというので出ていって、おい、ひとつやってやろうかと言って、いやいや、先生結構ですよと言うのに、いや、やってやったからなと言って後で何かもらうなんという方がよっぽど悪質だということさえ言えるわけですから、あえてここで請託という要件を付けなくても私はいいし、逆に付けない方が保護法益の保護を全うするゆえんに合致すると思っております。

○山本保君 今お聞きしておりまして、付いていても付いていなくても余り変わらないんだなというようなのが私、実感です。
 そうなりますと、やはり私は江田先生と反対でして、もしそういうものがない形で捜査というようなものが進められるとなったとき、週刊誌や新聞などが書き立てたというようなことでそれですぐ事件になってしまうというような、先ほど申し上げた裁量というのはそういう意味でして、やはり請託という要件を入れることによって、より慎重にきちんと立証できるんじゃないかなという気が私はしますけれども、これはまたこれから議論させていただきます。ちょっと時間がありませんので、先生、また改めてやらせていただきますが。
 最後に、政治と金、今回のこの問題が出てきた不祥事をめぐりまして大変国民の信頼を、やはり不信感を払拭して信頼を取り戻さなければならないと思っております。
 我が党としては、官製談合防止という観点から、これに絡めて、またもっとより厳しいというんでしょうか、きっちり法律を作っていきたいということで提案していると思うわけでありますけれども、与党公明党の提案者からこの辺について御説明をいただきたいと思います。

○衆議院議員(西博義君) お答え申し上げます。
 突然の指名ですので申し訳ございませんが、公職にある者は公選によって国民の厳粛な信託を受けて選出されるものでございます。この公選による信任に違背しないように公職にある者自らの政治活動を厳しく律していく、これがまず基本だというふうに考えております。
 さらには、公共事業の入札、それから手続に関して、いかに不当な関与を防ぎ、そして透明性、公平性を確保していくことができるか、すなわち公共事業をめぐる口利き、関与、これに係る現行の法制度が適切に機能されているか、このことについて政治、行政の面から総合的に検討していく必要があるであろうと、こう考えております。
 この意味で、今、与党三党が共同提案をしております本法の改正案とともに、国、地方公共団体の職員が入札談合に関与することを防止する、こういう意味で官製談合防止法案の早期成立を図ることがもう焦眉の急であると、こういう認識をしております。
 なお、与党といたしましては、現在、労働組合の経理の適正化等、また公務員の政治活動の在り方、それから政治倫理綱領、行為規範の見直し等についても総合的に鋭意検討していると、こういうところでございます。
○山本保君 ありがとうございました。
 終わります。


2002/06/28

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