2002/11/28 |
155 参院・法務委員会
法科大学院関係2法案につき、50分間質問をしました。
名古屋事件に触れた後、(1)司法制度改革関連の具体的提案は、すべて改革全体の目標を達成するためのパーツなのだから、法科大学院の教育も、例えば行政訴訟改革の趣旨に合致する必要があり、全体として国民主権の下にある司法の実現に寄与しなければならないこと、(2)法曹が、立法や行政から独立した司法の担い手であることを考えれば、第三者評価機関の法科大学院に対する評価も、行政からの実質的独立性が大切であること、(3)プロセスとしての法曹養成は、単なる高度専門職業人を越えた能力や感受性を育て、憲法や人権の感覚を身に着けさせるものであること、(4)法曹にノーマライゼーションを実現するため、試験に配慮が必要なことなどを強調しました。
平成十四年十一月二十八日(木曜日)
○江田五月君 おはようございます。
法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案並びに司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案の質疑でございますが、質疑の前に、ちょっと急なことではあるんですが、法務大臣に例の名古屋の刑務所の関係のことについてお伺いをしておきます。
昨日、名古屋地検が被告人五名、特別公務員暴行陵虐致傷事件で名古屋地方裁判所に公判請求をされたと。さらに昨日、今の被告人五名のうち二名について名古屋地検が別の被害者に対する特別公務員暴行陵虐致死事件で再逮捕、そして捜索に着手をしたという報道がございます。
これにつき、昨日の衆議院の法務委員会で法務大臣が報告をされ、そして質疑が行われたということですが、事案の概要を簡単に、どういうことであったかをお話しください。
○国務大臣(森山眞弓君) お話がございましたように、昨日、名古屋刑務所刑務官の五名が特別公務員暴行陵虐致傷事件で公判請求され、また、そのうち二名が別件であります今年五月の特別公務員暴行陵虐致死事件につきまして名古屋地方検察庁に再逮捕されたということでございます。
誠に重大極まりない事件でございまして、国民に矯正行政に対する著しい不信感を生じてしまったということは大変遺憾なことでございまして、私としてもこの事態を極めて重く受け止めております。全国でまじめにきちんと職務を遂行している多数の刑務官にとっても実に悔しいことではないだろうかと思っているところでございます。
この事態を極めて重く受け止め、今後、検察においてこの事件について厳正な捜査がなされるというふうに思いますし、矯正局におきましても徹底した調査を行うように私から既に指示いたしております。このような事件が二度と繰り返されないように万全の措置を講じまして、一日も早く国民の信頼を取り戻さなければならないと決心しております。
○江田五月君 もう少し伺いたいと思いますが、まず、こうした事案についてなんですが、この特別公務員暴行陵虐致傷事件の公訴事実の要旨を見ますと、懲らしめの目的で革手錠を使用して傷害を負わせたと。これ、懲らしめの目的でこういう戒具を使用することは認められるんですか、られないんですか。
○国務大臣(森山眞弓君) そういうことは認められません。
○江田五月君 そうですね。ですから、もう懲らしめの目的自体がそもそも職権濫用であるということだと思いますね。戒護という、あるいは戒具という、そういう戒護の戒は戒めですから、もう名前自体がちょっと古めかしくなっているんじゃないかと思うんですが。
このそもそもの目的である在監者の逃走や暴行や自殺の防止のために保護房に入れるだけでは足りないというような場合というのは、そうめったにあるわけじゃないんです。その場合でも革手錠で緊縛するというような必要が一体あるのかどうか。それは、懲らしめだったらあるかもしれませんが、そうでなければ、革手錠というものを用いることの是非、是非というのは、制度として革手錠という制度を残しておくことの是非についても検討されて、革手錠というものはもう廃止をすると、そういう意向もあるやに報道がなされておりますが、これは森山大臣、いかがですか。
○国務大臣(森山眞弓君) いろいろな場合が考えられます。中には非常に極端に暴れるとか大声を上げるとか、収容されている人がその建物を壊そうとするとか、その他いろいろな行動が従来の経験からもあり得ますので、あらゆる場合を考えて、どうしても必要なときには仕方がないということで認められている手段でありますので、これからそれに、そのような場合にこれに代わる方法があるのかどうか、あるいは、ない場合はどういう方法でやるかというような様々なことを検討しなければいけないと思いますが、確かに革手錠というものが、ちょっと、特に名古屋刑務所においては最近使用回数が多かったというようなことが調査によって分かっておりますので、その辺の背景事情も併せてよく勉強してみたいと思っております。
○江田五月君 罪を犯して刑務所へ入れられているんだから、郷に入れば郷に従え、刑務所へ入れば刑務所に従えといったって、やはりそれは自由刑で、自由の束縛という限度では拘束は当然ある。で、懲役ですからいろんな労役はあるでしょうが、やはり、しかしそれ以上に、基本的人権はもう一切ないという話ではないんで、やはり受刑中の者、在監者、これも人間ですから、そこは人間扱いしなきゃならぬし、人間扱いしなけりゃ矯正の成果だって上がってこないわけで、人間扱いされることによって初めて人の情も移るし、人の道も分かるしということだろうと思いますが。それはそれでひとつ十分検討していただきたいと。この問題、また後で、いずれ機会を見て更にただしてまいります。
もう一つ、今のお話の名古屋の刑務所で、先ほどもちょっと聞いたら、平成十二年が三十二件ですか、革手錠の使用。革手錠ですか保護房ですか、これは、三十二件というのはどちらでしたかね、後ろの人。後ろの人というといかぬか。
○国務大臣(森山眞弓君) 今、突然のお尋ねなものですから資料がございませんで、正確なことはお答えできませんが。
○江田五月君 三十二件かどうかが正確かどうかは別として、革手錠だと思いますけれども、平成十二年が三十二件、十三年が五十四件、しかし平成十四年は九月までで百五十八件、名古屋で。とにかく異常にどんと上がっているわけです。これはやっぱり、受刑者が全部その期間、通常と全く違って暴れ出したんだという話ではないだろうと思うんですよね。
私は、名古屋もさることながら、やはり全体に矯正施設の中でそういった雰囲気があるのではないか。矯正施設だけなのかなと。法務省は、こういう矯正施設もあるし、それから入管のような施設もあるし、そういう施設を所管をしておるわけですが、そういうところでこうした人権侵害が起きているという、これについて一体どういう覚悟をお持ちなのかということだと思うんですね。
今、法務省は、一方で人権擁護法案を提出をされていて、これは今この委員会で審理の最中なんですけれども、やっぱりこういうものが起きたということについて、私はもっと、これは法務省、法務大臣始め、皆さんもう顔色が変わって、こんなことは絶対にあってはならぬ、したがって、この事案全体について、この事案というのはこの特定の事案ではなくて、こうしたケース全体についてよく調査をして、そしてどこに根っこがあるんだ、そこをえぐり出して再発は絶対に防ぐ、あるいはまた関係者については厳しい処分で臨むと。
これまで我が国では、例えば警察だっていろんなことがあって、本当に皆苦しみながら信頼回復の努力をしている、あるいは外務省だっていろいろやっている。もう全庁挙げて、全省挙げてやっているわけですよ。法務省は一体何だと。これが今問われているんじゃないかと思いますが、どういう覚悟がおありなのかを聞いておきます。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございまして、これは一名古屋刑務所だけの問題ではございませんし、一矯正局の話だけでもないということはもうおっしゃるとおりでございます。
法務省が、全体として姿勢を正して再発を防止する、絶対に二度とこのようなことが起こらないようにしなければいけないという覚悟を持って今一生懸命取り組んでおりますので、見守っていただきたいというふうに思います。
○江田五月君 ただ見守ってと言われてもどうも、もう少し我々も、見守ってよりももっと積極的に皆さんにいろいろお尋ねをしていきたい。
検察当局それから矯正局、これもやりますが、人権擁護局も、事案の重大性にかんがみ、いろいろ人権侵犯事件として調査を進めているということでありますが、人権擁護局も、一方で人権擁護法案を出していながら、これについては、いや、鋭意調査していますなんというぐらいじゃちょっと済まない話だと思いますが、今日はそのくらいにしておきます。
そこで、冒頭の二法案について伺います。
私どもは、この二法案、民主党は賛成でございます。しかし、いや、これは本当によくできたいい制度ですね、もう何の問題もありませんから賛成しますというのではありません。むしろ一杯懸念があります。一杯たださなきゃならぬところもあると思います。しかし、法科大学院だけでなくて、例えば法曹人口の飛躍的な増大であるとか、あるいは裁判官の給源多様化であるとか、あるいは裁判員制度であるとか、そのほか司法制度全体、行政法の改革見直しもやるとか、司法制度全体について、今司法制度改革というのが大きく前へ進んでおりまして、この司法制度改革については、私たちは、戦後改革はありました。立法も行政も大きく変わりました。司法も戦後改革の中で変わった。しかし、実は、表題は変わったけれども中身はそれほど変わっていなかったんじゃないかという反省を持っています。
国民主権の下での司法という、そのために例えば裁判官、最高裁判所の国民審査の制度があるとか、いろいろ制度はあるけれども、制度自体が持っているいろんな問題もあって、国民主権の下の司法、自分たちが司法を運営しているんだというような意識を国民の皆さんに持っていただけるような司法になっているかというと、そうじゃない。これはやっぱり変えなきゃいけないと。それに、今のこの時代に裁判というのが追い付いていないとか、あるいは二割司法と言われるように、国民がいろんな法律上の、法律によって解決が本来されるべき困難に逢着しても、なかなかそこに資格のある法律家が解決のために関与をするということができない。そのために、やくざが横行したり、あるいはいろんな事件屋その他のものがあったり泣き寝入りがあったり、こういう二割司法じゃいけないといった、そんなこともあります。
そういうようなことをすべて考えて、私ども民主党は、司法制度改革については我々は与党になろうということで、司法改革与党を自任して審議会に意見書も出したり、いろんな提言もしたりしてまいりました。それが必ずしもすべて審議会意見書に取り込まれているわけではありませんが、しかし一定の前進はあったという判断をして、これを最大限尊重をし、また尊重をしていただき、更にもっと改革の方向へと、こういう提言もしていくということで、司法制度改革全体をむしろ推進をしていくということから、この法科大学院についてももう細かなところは、誤解を恐れず言えば、あえて目をつぶってでも賛成をするというのでやっていまして、しかし目をつぶらないんで、そこについては一々の議論はやはりしっかりとやっていきたいと思っております。
この司法制度改革というのは、今、私が申し上げた法科大学院あるいは裁判員、あるいは給源多様化、あるいはこの規模拡大などなど、全部がそれぞれパーツになって、別個にもちろん存在するんですが、それがすべて別々に何か回っているんじゃなくて、全部がパーツになって一つの司法制度改革というものをこれを進めていこうとする、そういうものだというふうに考えておるわけですが、これはそれでいいんですよね。司法制度改革全体の中で法科大学院というのは役割を果たすし、したがって法科大学院をどうするというときに、司法制度改革全体の理念なり哲学なりあるいは目的なり、そういうものとの兼ね合いでここはああしようここはこうしようということが決まってくると、そういう思考回路、これは共有されていますよね。いかがですか。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございまして、司法制度改革というのは非常に、明治以来百年以上続いてきた現在の司法制度を大きく今の時代に合うものにしていこうという大きな仕事でございますので、一度に全部はできませんので少しずつやっていこうというその最初の取っ掛かりがこの法科大学院の考え方でございますが、これはこれだけで別に動くのではなくて、大きな司法制度改革の仕事の中の一部としてしっかりと機能し、かつほかのところとも関係深く全体として動いていくものだというふうに思っております。
○江田五月君 というところで、一つ、一杯テーマがあるわけですけれども、それを全部やっていたら幾らやっても時間がないので、今、司法制度改革の中で行政法改革、これは検討会もできてやっているわけです。しかし、審議会の中では行政法については余り時間がなかった。したがって、余り細かなことまでは意見書に書いていないんですが、しかし恐らく問題意識は皆共通している。
つまり、国民主権の時代になって行政に対する司法チェックというものが非常に重要なんだけれども、だけれども、どうも行政に対する司法チェックが実効性が上がっていない。それはいろいろ、例えば訴えの利益であるとか当事者適格であるとかいろんな制約があって、あるいは行政の方はあらかじめ、後で訴えられたら困るからというのでシナリオもちゃんと書いて、証拠もちゃんとそろえながら事を進めていく。一般の国民の方はそんなことは分からないものですから、いろいろ言われたら、ああそうですか、ああそうですかと。後で気が付いた、あのときだまされた、いやだましていないんだ、ここはこうなっているじゃないか、こう説明しているじゃないかなどということで、どんどん市民は敗訴していくわけですよね。
これではいけないというので、行政法改革検討会で今やっているところだと思いますが、法科大学院も三千人からの法曹をここを通って新たに養成していって、そしてその三千人が皆言わば行政の守り手になる。市民に対する不平を抑え込む。あんた、これはどうせ訴訟をやったら負けますよ、やめておきなさいなんという法曹が三千人毎年毎年出てきたら、これは市民はたまらぬわけですよね。
例えば、行政法改革といったことも念頭にありながら法科大学院構想というのは立てられているんだと。どこがどうというのは、これはこれから細かく聞いていく話であり、あるいは制度設計をしていく話ですが、そういうメカニズムというもの、これはいかがですか。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃいますような様々な問題がたくさんございまして、いろいろな問題を抱えておる、あるいは今まで取り上げられにくかったものもどんどん取り上げられる世の中になっていくということになりますと、従来の法曹では手に負えない、あるいは数が足りないというようなことがございますので、今度はそういう新たな事態に対応できるような法曹を養成していこうというのがこの法科大学院の構想でございますので、おっしゃるようなことにも十分こたえられる法曹が養成されるというふうに考えております。
○江田五月君 おっしゃるようなことにも十分こたえられる法曹が養成されていくというところに重大な意味が含まれていると理解をいたします。
法科大学院は本当に、私もこの制度設計のために大変努力をしている皆さん、本当に御苦労さんだと思うんですね。しかし、いろいろ聞かれると、いやそこはこれからと言わざるを得ないところが山ほどあるんだろう。やっぱりある意味では試行錯誤。試行錯誤で大切なのは、間違ったときには改めるということですが、これはそういう間違ったときに改めるんですよね。この法案の中に、どういうところがあって間違ったら改めるようになっていますということが言えますか。
○国務大臣(森山眞弓君) 今御審議いただいております連携法案におきましても、その施行後十年を経過した場合に、法科大学院における教育、司法試験及び司法修習の実施状況等を勘案し、法曹養成制度について検討を加え、所要の措置を講ずるものとするとなっております。
しかし、十年待って初めてというのではなくて、その前にも新たな制度の実施状況を踏まえまして、見直しや改善が必要であるということになれば検討を加え、柔軟に対応していきたいというふうに考えています。
○江田五月君 是非これは柔らか頭を持っていただきたい。ところが、だれが一体柔らか頭を持つのかということなんですね。
法科大学院、そして新しい司法試験、理念や目標どおりに行われているかどうか、審議会の意見書を最大限尊重して行われているかどうか、これをだれが責任を持って判断し、間違いがあれば改めるのか。
最高責任者は一体だれなんでしょう。現在だったら、当然、司法制度改革推進本部は本部長が小泉内閣総理大臣。しかし推進本部、これはこれからちょうど二年後、二〇〇四年十一月三十日には消滅をする。その後の最高責任者は一体だれだと。法科大学院は文部科学大臣、法務大臣はそれに物が言えると。更に第三者評価機関がある。新しい司法試験については法務大臣、その下に司法試験委員会がある。司法試験委員会は現在は司法試験管理委員会、これは国家行政組織法三条委員会、三条委員会の名に値するかどうかの議論は今日はしませんが、そうなっていますが、今度は三条委員会ではない。最高責任者はだれですか。
○国務大臣(森山眞弓君) 現在御審議いただいております連携法案におきましては、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的連携を図るということを国の責務といたしておりまして、国は、国の機関、大学その他の法曹養成に関係する機関の相互の協力の強化に必要な施策を講ずるものとするということになっております。
具体的には、法科大学院の教育と司法試験との連携の確保につきましては、法務大臣と文部科学大臣の相互協力等に関して規定しておりまして、司法修習につきましても、法科大学院の教育との役割分担を踏まえて修習の内容等を工夫するということになっておりまして、今後とも、国民の要請にこたえることのできる質、量ともに豊かな法曹を養成するために、関係機関相互の協力、連携の強化に努めてまいりたいと思います。
法務大臣も文部科学大臣も緊密な連絡を取りましてこれに当たってまいりたいと思っております。
○江田五月君 有機的連携で緊密な協力、国の責務だと。国というのは何ですかね。国会は国権の最高機関ですから、国会が一番責任あるということになるのか。あるいは国、行政、そうすると内閣総理大臣が一番責任あるということになるのか。もちろん、文部科学大臣と法務大臣が密接に連携していただかなきゃいけません。いけませんが、連携しろといったって、例えば意見が違うということだってそれはありますよね、それは意見が違うことはある。その場合はどうするんだと。あるいは連携した結果が正しい、連携しているんだから正しいということはないんですよ。連携した結果が間違っているということだってあるので、そうしますと、私は、これは最高責任者のないシステムになっちゃったかなと。
国がですから内閣総理大臣。ところが、ここで問題は、法曹養成、法曹というのは一体何だと。法務省と文部科学省が責任を持ってといったって、これは行政でしょう。法曹というのは何かというと、三権の一つである司法を担う人材を育てるんですよ。法務省と文部科学省、法務大臣と文部科学大臣が密接に連携をしてがちっと一寸の狂いもありません、何らのすき間もありませんというものでやったけれども、実は法曹を支える人材を養成していくというところで大きな穴が空いてしまったらこれは大変なことになる。内閣総理大臣も行政ですから、ここは大変制度として難しい。その点は私どももこれは認めざるを得ない。
ただ、それでもそこについて何かきちっとした制度を作れば、最高責任者はこの人だというのを作ればそれでうまく動くのかというと、必ずしもそんなものではないので、やっぱりこれはいろんな機関がそれぞれ正にチェック・アンド・バランス、トライアル・アンド・エラー、いろいろやることが大切で、その場合、法科大学院に関してだけ言えば、第三者評価機関というのは非常に重要だと思うんですね。
これはむしろ文部科学省に伺った方がいいのかと思いますが、第三者評価機関、制度設計は伺っております、文部科学大臣が認証する。しかし、その第三者評価機関の評価基準については第三者評価機関と、ちょっと舌がもつれそうですが、にゆだねられているということのようですけれども、その評価基準についてどういう、何かこういう考えで評価基準というものは作られていくだろうという、そういうお考えはありますか、文部科学省。
○政府参考人(工藤智規君) 今の前段の御質問の趣旨に私どもの立場から申し上げますと、新司法試験があるわけでございますが、その前段階で、プロセスの養成として法科大学院を設立していこうと。それは……
○江田五月君 制度設計は分かっていますから、聞いたことだけ答えてください。
○政府参考人(工藤智規君) 認証評価の関係でございますけれども、これは評価基準、それぞれの法科大学院をどう評価するかという評価基準については、それぞれの評価機関が定められるものでございます。
具体的にどういうことが定められるだろうかというお尋ねでございますが、当然、これまでの審議会の最終意見なども踏まえまして各評価機関がお定めになるわけでございますが、私ども、学校教育法の改正によりまして、改正法の六十九条の四でそれぞれの評価機関の認証をさせていただくという仕組みになってございますが、認証の基準に当たって、公正かつ的確な審査を行える仕組みが整えられていること、そのためには的確な評価基準が定められていることということがございます。
そのメルクマールとしていろいろ考えられますのは、当然のことながら、これまでの御審議、それから各委員のいろいろな御心配なども踏まえて、しっかりした法科大学院が立ち上がり定着しますように教育課程、カリキュラムの関係でございますとか、入学者選抜の在り方、あるいは教員構成、あるいは授業の遂行、少人数教育であるとか厳格な成績評価でございますとか、そういうメルクマールが当然、アメリカのロースクールの評価なども参考にしながら定められるものと思っているところでございます。
○江田五月君 大変申し訳ないんですが、全然分かりません、何をおっしゃっているか。抽象的な言葉が並んでいるだけです。しかし、これ以上聞いてもそんなことなんでしょうから伺いませんが。
重要なことは、評価機関は、これはそれぞれの大学についての評価と同時に分野別の評価もあって、大学一般についてのことはこれは学校教育法の審議のときいろいろ聞かれたことと思いますから省略しますが、法科大学院についての評価は、やはり法科大学院というのが立法や行政と違う司法という営みを担う人間をつくっていくのだということをしっかり踏まえながら、行政的なコントロールを十分利かせるのでなくて、むしろ第三者評価機関というものの、そういう司法という人材を育てていくのだという意識をしっかり持った評価基準でやっていくということを大所高所から見ていただくと。
あわせて、その評価機関がやっぱり一つじゃ駄目だと思うんですね。幾つもある。最後はやっぱりいい司法を作るかどうかは国民なんですよ。国民がそれぞれの評価機関、あの評価機関は適切な評価をしているとか、この評価機関はこういう評価についてはすばらしいとか、そういう判断をしながら、評価機関の評価というものをよく見極めながら、見比べながら、学生が法科大学院を選択していくと。国民がそういういろんな評価機関の評価など十分な情報を受けながら判断していくという一つのメカニズムの中で動いていくという、それが有機的連携ということなんだろうと思うんですが、そういう意味で評価機関というのは非常に重要だと思いますが、いかがですか、そういう問題意識はお持ちかどうか、文部科学省。
○政府参考人(工藤智規君) 正におっしゃるとおりでございまして、私ども、大学に対する関与については設置段階で設置認可という形の国の関与があるわけでございますが、これも行政府の恣意的な考えを入れないように専門の審議会での専門家の御審査をいただいているわけでございますが、それをできるだけ事前の関与を少なくして、事後的なチェック体制を正に国から離れたところで置かれる第三者評価によってしっかりやっていただこうと。しかも、それも、評価結果については公表をいただくことになってございますので、評価者が唯一絶対のものではなくて、評価する側、される側がそれぞれ双方向での意見交換もする仕組みを作り、かつ評価機関自身が社会から評価される、そういう仕組みの中で評価の質を高め、それがひいては大学の自己改善の努力につながっていく。
そういう仕組みの下で、今回、学校教育法の改正により、おっしゃるような重要な位置付けとしての第三者評価制度をお願いしているところでございます。
○江田五月君 よく分かりますが、別に批判するわけじゃないんですが、言うはやすくというのはもうそのとおりで、言葉で言えばそれはそのとおりなんだけれども、実際やるとなるとなかなか大変ですから、頑張ってください、応援しますから。その代わり、間違ったら厳しく追及しますので。
連携法の第二条で、高度に専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹と、こういうことを書いてあるわけですが、それはそのとおりなんですが、私は、ほかの高度専門職業人がどうだというふうに言うとちょっと語弊が、誤解があると困るんですけれども、やっぱり法律家という高度専門職業人と、例えばビジネスの世界であるとかあるいは貿易の世界であるとか、医学もそうかもしれません、いろいろある、それとちょっと違う面がある。それはそれぞれに違う面があるのでどちらが優でどちらが劣じゃないんですけれども、高度に専門的な職業人としての法曹というのは、やっぱりさっきから申し上げている司法、立法、行政の三権の一つである司法を担うと。しかも、二十世紀の司法がいろいろと反省をしなきゃならぬところがあった。二十一世紀の国民主権の下での司法、これを担うそういう法曹を養成するんだという法科大学院は歴史的使命、社会的責務を負っていると。
そういうことについて、行政機関としての文部科学省の認識、覚悟、これを伺っておきたい。高度専門職業人の養成という言葉の中に、法曹としての、法曹の高度専門職業人の特色というのをどういうふうに認識をしておられるか。
○政府参考人(工藤智規君) これは、推進本部が設けられましたように、新しい法曹養成のために政府を挙げていろいろ知恵を出そうという中で取り組んでいるわけでございますが、少なくとも大学は学問の府でございますので、そこでの教育研究の内容について私どもなり国の立場からあれこれ言うものではないのでございますが、今回求められている役割に対しまして、私どもは法科大学院の設置基準というのを関係の専門家の方々の御審議で制定いただく必要がございますが、そこで枠組みとしてこれまでの御審議の成果を踏まえた大枠を定め、それから、先ほど来御指摘ございますように、正に第三者評価によってそれを、設置後のフォローアップをしっかりやっていただく。それは、法曹人に必要とされる例えば法曹倫理でございますとか、いろいろな思考力、分析力、説得力など、社会の医者という役割も言われておりますけれども、法曹人に求められるしっかりした教育が行われるよう、全体の制度設計の中で私どももしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
○江田五月君 私は他のいろんな専門的な職業人と法曹としての違いというのは、恐らく法曹の場合には高度に専門的な職業人と言えるためにはやっぱり、例えば憲法ですよね、今の憲法の一言一句という意味で言っているんじゃないんで、憲法感覚といいますか、憲法であるとか、あるいは人権であるとか、あるいは正義や公平、公正、そういうような価値規範とか、そうしたものがしっかりと根付いている人間、意識された人間、そしてそういうものに基づいて、たとえ立法府であろうが行政府であろうが、これは正義、公平に反すると思ったらあえて突き進んでいくファイティングスピリット、こういうものがない、いたずらに法律だけ知っているというんじゃ、これは高度に専門的な職業人とは言えないんじゃないかと。
これは文部科学省には是非お考えいただいておきますが、法務大臣もこの関係についてはいろいろ物も言えるようですから、そこはそういう覚悟をお持ちでこれから物を言う立場に立つんですということでよろしいですね。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございまして、法曹養成というのは単に知識が多いとかいろんなことをよく知っているというだけではなくて、司法の理想といいましょうか、正義を貫く、公正さをきちっと追求するという精神が基本にきっちりとなければいけないと思いますので、そのようなことを志す学生は当然そういうことに多大の関心を持っているはずでございますが、養成の間にそのような考え方が更に高まって、強くなっていくということが必要だというふうに思っております。
○江田五月君 点による選抜じゃなくてプロセスによる養成ということが言われて、それはそうだということなんですが、よくよく考えたらこれもなかなか難しい。プロセスによる養成というのは何のことかと。
私も、去年は弾劾裁判所の判決の取りまとめの責任者の主任裁判員をしたりしまして、法律の知識がどんなに豊富でどんなに法律的な能力が高くても、やっぱり人権の感覚一つなくて町の未成年の女の子に平気で手を出すというようなことでは、これはやっぱり法律家としての高度に専門的な職業人ではないと言わざるを得ないんだと思うんですよね。
そういうことを非常に重要だと思っておりまして、法科大学院の教育の中で、法律の知識や技能、これももちろんですが、やっぱり社会的な医師と言う以上は、いろいろと社会生活の中で困難に逢着している人に対して、人は皆そういう問題についてすぐに全部自分の問題、抱えている問題を説明できたりしませんからね。ですから、じっくり話を聞いて、この人が抱えている問題は何なんだということを粘り強く聞く、そんな能力とかあるいはそういう人の気持ちと共感をしていく、そんな心の琴線とか、あるいはいろんな議論、多くの人が議論するその議論をちゃんと整理して、そこから問題を探り出しながら一定の法律的な整理をし、そしてそこに紛争解決の、あるいは予防の、紛争の予防の手をちゃんと講ずる能力とかそうしたものが養われなきゃならぬ。しかも、それはある意味で意識してある一定のカリキュラムの中で養われないと、なかなか、社会生活やってりゃそんなものは自然に身に付くというものじゃない。
私は、特に今、裁判官は本当にじっくり当事者の言うことを、正に心耳を澄まして聞くというそういうことがなくなってしまっているような気がするんで、そうしたことを養成をしていくそのプロセスだと、こういう理解でいいんでしょうね。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございまして、そのような人材を養成していくのには、いわゆる点による試験、選抜では十分ではなく、司法試験に至るまでのプロセスによる養成ということがとても重要だというふうに考えられます。
そのプロセスの中で重要な地位を占める法科大学院の勉強というのは、単に本を読んだり講義を聞いたりするだけではなくて、双方向のあるいは多方向の人々との話合いをする、議論をする、説得をする、あるいは人の言うことをよく聞く、そしてそれを整理する、あるいは相談に応じるというような、非常に多方面にわたる様々な才能を磨き、伸ばしていくということを考えられているわけでございまして、正にそれがプロセスによる養成という言葉に表れているわけでございますが、そんな多方面にわたる様々な能力を持ち、かつその人格も幅広く様々な面で磨いていって、人間関係に対する感度の高いと申しましょうか、そういう人物を養成していきたいというふうに考えております。
○江田五月君 そういう意味でいえば、法科大学院の学生自体の中に様々な人が入っていて、そしてその学生の中でいろんな切磋琢磨、お互いの人格陶冶ができていくということが必要で、これを余り抽象的に言っても仕方がないんで一つ例で言いますと、法科大学院の学生の中に障害者がいるということは私は結構重要なことだと思うんですね。
障害者もいろいろいますから、一つ例を取って、視力障害者の皆さんに対して受験の門戸はどう開かれるつもりか。
○政府参考人(寺田逸郎君) まず、現状を私の方から御説明申し上げます。
これは、受験生の側から昭和四十七年に御要望がございまして、昭和四十八年度の司法試験の第二次試験から、点字による受験というものを認めてございます。現在は、その受験をなさる方もかなりおいでになりますし、合格者も出ているというような運用でございます。
今後もこの点についてはいろいろと検討をしてまいりたいと、このように考えております。
○国務大臣(森山眞弓君) 現在の司法試験におきまして今のような運用でやっておりますが、今後の養成におきましても、例えば法科大学院の入学試験あるいはその後の司法試験その他におきまして、障害のある方がそのために受けられないとか勉強できないということがないように十分気を付けていきたいというふうに思います。
○江田五月君 寺田さんは、私は法科大学院のことを聞いたのに司法試験のことをお答えになったんで、大変早手回しでありがとうございます。
しかし、点字で試験をやっていて合格者も出ているというのではやっぱり足りないと思うんですよね。四十七年からですか、今日までかなり長くやっていて、私が聞いたところでは、点字で合格した人は二人だというんですね。
そもそも、もう時間がないから、後で点字で受験を努力している皆さんの要望書がありますから、この皆さんにいろいろ、どういうことを要望されるかを整えていただいてお持ちをしますので、是非聞いてみてあげていただきたいと思うんですが。
最近の例えば司法試験の短答式なんというのは、幾つか一杯問題があって、括弧が一杯あって、その中へ埋めなさいと。埋めなさいだけじゃなくて、一番目と三番目と五番目の答えの数字を足したら幾つになりますかなんという、そうすると、一番目の答えはこう三番目はこう、どこかにメモでもしておかなきゃ分からないですよね。それをひっくり返してこうなってああしたらどうなりますかなんということをやられたら、それは点字じゃたまらぬ。そんな問題がそもそもいいのかという問題もありますけれども、そういう皆さんに対して時間を一・五倍に延ばすというだけでやっているようですが。
これは、文部科学省は、例の大学の共通テストですか、あっちの方の問題もあるんですが、やはりそうしたことをしっかり十分根拠を持った制度設計で、視力障害の皆さんにもこうした分野の仕事が広がる、これはこの皆さんの仕事が広がるだけでなくて国民に対する司法サービスというものの質を上げることにもなっていくんだという理解を是非持っていただきたい。
それから、さっきのプロセスとしての養成のところで、これは山崎局長、あるいは前の答弁の訂正の機会をひょっとしたらお与えしたいなと思うんですが、もしその気があれば。
医者は解剖とかで実際そのプロセスの中で養成されなきゃならぬところはあるけれども、法曹はそうじゃなくて、何と言われましたかね、法律実務は社会できちんと生活していれば学べる、だから予備試験と、こういうところへつながっていくんですが、法律的素養、法曹としての高度の専門職業人としての能力というのも、さっき申し上げたように、単に社会生活を行っていれば学べるというものじゃなくて、やっぱり一定の意識されたプロセスの中で実際に体験を積みながら学んでいく、修得しなければなかなか修得できないものだと。そういう意味では、対象が違うから方法は違いますが、構造としては医学の場合と同じ構造だと私は思うんですが、山崎さん、この間の答弁はちょっと違うんじゃないですか。いかがですか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かにこの間、医学との比較で申し上げました。医学の場合は、確かに臨床面での教育のように医師として必要な能力を医学部における教育課程以外で身に付けることはかなり難しいと、これは事実認識としてはそのとおりだと思います。
この法律面、司法試験と予備試験の関係でございますが、こちらに関して若干説明が不十分だったかと思いますけれども、法律に関する実務は社会の広い分野に及んでいるわけでございまして、そうなりますと、その受験資格を一定の事由に限定するということが極めて難しくなると、こういう趣旨で申し上げたわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
○江田五月君 よく気を付けてください。
最後に、地域偏在があっちゃいけないということなんですが、これはもう今、全国でそれぞれ、ほとんどが大学だと思いますが、手を挙げておられて、その手を挙げて実際の設立の努力をそれぞれしておられるその皆さん方は、大体地域偏在なく全国に満遍なくといいますか、手がずっと挙がっていて、こういう皆さんが手を挙げているところへちゃんとできていけば法科大学院が全国にずっと適正に配置されるという、そういう進行状況になっているかどうか、そういうお考え、そういう認識でおられるかどうか、これを伺っておきます。
○政府参考人(工藤智規君) 昨年、司法制度改革推進本部の方で御調査された設立動向、それから法科大学院を準備しておられる大学の方々が参加して自主的に作っておられる法科大学院協会設立準備会、それぞれの参加校などを考えますと百前後ございますし、私どもに現に下相談といいますか、いろいろ御質問なども含めて御相談に来ていらっしゃるのが五十から六十ぐらいの大学がございますが、北は北海道から南は沖縄まで全国的な状況で御検討をいただいていると承知してございます。
したがって、私どももそれぞれの大学の自主性とか教育水準、研究水準の確保などを留意しなきゃいけませんけれども、各大学の御努力をバックアップして、全国配置に意を尽くしてまいりたいと思います。
○江田五月君 終わります。
2002/11/28 |