2003/04/01 |
156 参院・法務委員会
10時から45分間、法務委員会で質問。裁判官定員法改正案と裁判所管轄法改正案で、いずれも準日切れ法案です。
最初の質問は、一昨日の名古屋刑務所での受刑者死亡事案。答弁する横田矯正局長は、今日が発令で、初答弁がこのような事案となりました。質問するほうも決して嬉しくありませんが、これが私たちが直面している現実です。次いで、行刑に関する調査検討委員会の中間報告と改革会議の役割について。森山法相の責任問題について。司法制度改革と予算について。裁判官の定員と評価基準、裁判所予算について。あっという間に、時間が過ぎました。
平成十五年四月一日(火曜日) 午前十時一分開会
○委員長(魚住裕一郎君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。
○江田五月君 裁判所職員定員法の一部改正案、それから下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部改正案、衆議院では何の質疑もなかったということのようですが、参議院ではきちんと質問をさせていただきます。
今日は、大勢の政府参考人の方にも来ていただいて盛りだくさんの通告をしましたので、かなりスピードを上げなきゃならぬと思っておりますが、質問の前に、三月三十日未明ですか、また名古屋刑務所で保護房、革手錠の対象であった受刑者が死亡したということのようですね。事件性があるのかどうだかよく分かりませんが、取りあえず、現段階で分かっていることを簡単に御報告ください。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
死亡した被収容者でございますが、この者は、本年三月二十六日、大声や騒音を発するために保護房に収容した後、三月二十八日午前に保護房収容を解除して、病舎の独居房に収容されていた覚せい剤中毒の後遺症、四十歳代の男性受刑者でございます。
死亡の状況でございますが、三月二十九日の深夜、同房内の床でこの受刑者が横たわっておりますのを職員が発見し、ベッドに戻そうとしていた際に、容体が急変して自発呼吸が確認できない状況となったことから、直ちに人工呼吸などの救命措置を講じますとともに、救急車の出動を要請し、外部の病院に搬送いたしましたが、三月三十日午前一時過ぎ、同病院で死亡が確認されたものでございます。
本件につきましては、名古屋地方検察庁により司法検視が実施され、特に外傷等の所見はないとのことでございますが、念のために司法解剖が実施されたという報告を受けております。
ただいま承知しているのは、この以上の点でございます。
○江田五月君 覚せい剤の中毒症状と言うんですが、保護房に十回ですか、何かかなり頻繁に収容されていたとか、革手錠もあったとか、事件性があるのかどうだかよくは分かりませんが。
横田矯正局長、今日、発令ということで、最初の仕事が今のような御答弁と。今あなたの前にある矯正行政の現状というのはこういうものであるということを、ひとつよく肝に銘じて仕事をしていただきたいと。激励です。
昨日は年度末、いろいろありました。大島農水大臣がお辞めになった、株価は八千円を割れた、名古屋刑務所事件では行刑運営に関する調査検討委員会の中間報告があった、行刑改革会議が発足をした。
株価のことは質問をしませんが、まず森山法務大臣、行刑問題がこういう状態で、これは大島前農水大臣の場合はいろいろ不明朗、不透明のことがあってその説明責任が十分果たされていないというその責任ということだったと思います。これは政治家としてあるまじきということだと思うんですが、森山法務大臣に対しても、私どもは、ひとつ御自身の出処進退をお考えになってはどうかというようなことを申し上げております。
それは、政治家としてあるまじきという話じゃない、むしろ逆に、これだけのことが起きて、国民にこれだけの不安を与え、行政に対する信頼を傷付けている、その責任はだれかが取らなきゃならぬ。これは正に、政治家として最高の責任を取っていただくということをお考えいただけないかということを言っているわけですが、そのほかに、身内に甘いとかいろいろあるかもしれませんが、大島大臣の辞任について、そしてその辞任に際して御自身のことも含めて今どのようにお考えでいらっしゃるか、お伺いします。
○国務大臣(森山眞弓君) 大島大臣の件につきましては、昨日の朝、ニュースで知ったわけでございますが、私も長い間お付き合いをしてまいりました方でございますので、大変残念な思いがいたします。
しかし、実際にどういうことがあったのか、大島大臣がどのようにそれにかかわっておられたのか、その辺のいきさつがほとんど分かりませんし、今までの御説明によれば御本人がそう深くかかわっていらしたのではないと、周辺の秘書さんたちの問題であるということのようでございますので、もしそれがそうだとすれば、これから後の農林水産省の法案その他、国会審議に影響を及ぼしてはいけないということで昨日、辞表を出されるということになったのかなと思うのでございますが、これについては本当にお気の毒であり、また私としては大変残念だなという気がいたしております。
しかし、御自分が決心されまして実行されたことでありますので、私としてはこれ以上のことを何とも申し上げようがございません。
私自身のことにつきましては、国会におきましてもいろいろな御意見をいただきまして、今回の行刑問題に関する様々な、特に名古屋刑務所の事件につきましては私も本当に申し訳ないことというふうに考えております。犠牲になった方々、あるいはその遺族の方々、あるいは多くの国民の皆さんに誠に申し訳なく、おわびを申し上げなければいけないというふうに深く考えておりますが。
しかし、この際、法務大臣として責任を果たすという意味ではおわびをするということも重要でございますけれども、それよりも更に、このような事件が再発しないようにいろいろな仕組みあるいは方法を考えまして、そして再発防止のために全力を尽くすということも非常に重要な責任だというふうに思っておりまして、昨日、ようやくいわゆる行刑改革会議というものも顔ぶれが決まりまして、四月半ばにはスタートするという予定にすることができました。
省内においては、そこに御提起を申し上げるために、様々な問題点を整理いたしまして中間報告なるものを昨日、一応まとめたところでございますが、そのようなものを材料にしていただいて、更に広いお立場から国民の声ということで厳しい御指摘をいただくために、御存じのような顔ぶれの皆様方に御自由に御意見をちょうだいするという仕組みが取りあえずはできたかなと思っております。
これを十分活用させていただきまして、行刑の在り方、新しい世紀に新しい行刑はいかにあるべきかということを十分議論していただき、またそれを、その御提言を尊重させていただいて新たな道を探っていく、その取っ掛かりを何とかして作っていかなければならないというふうに考えまして、私としてはこの問題について全力を挙げていきたいというふうに考えているところでございます。
○江田五月君 調査検討委員会の中間報告がまとめられた、それに基づき更に広い角度から行刑改革会議をスタートさせたと、これを取っ掛かりに正していきたいとおっしゃられましたが、この行刑改革会議、いつごろ結論を出されるおつもりですか。
○国務大臣(森山眞弓君) まだ、これから始まりますので具体的にいつごろということはなかなか申しにくいんでございますけれども、私どもの希望といたしましては、そんなにゆっくりはしていられないという気がいたしますので、また膨大な問題ですから全部を結論出すということはにわかには難しいかと思いますので、問題によってはかなりの時間も掛かるものもあるかと思います。
いろいろ考えますと、いつごろと今、私が申し上げるのは不適当かと思いますけれども、私の希望といたしましては、基本的な方向付けがまずは今年一杯ぐらいにできるといいかなというふうに思っています。
○江田五月君 今年一杯、いつスタートされますか。
○国務大臣(森山眞弓君) 四月十四日を予定しております。
○江田五月君 四月十四日スタート、それでこの行刑改革会議で鋭意検討して問題点をえぐり出し、更にいろんな方向を出して、で、今年一杯というようなイメージを法務大臣としてはお持ちになっておると。そのとおりにいくかどうか、それは分からないがということですが。
ということになると、それでさっきの話とつなげると、今年一杯はもう法務大臣をやると、こういう決意になってしまうんですけれども、それで一体国民が納得するかどうかですね。
ここは、繰り返すようですが、決して何か御自身の不祥事に責任を取れと言っているんではなくて、むしろ、それは役人だったらこれは身分の保障もあるし自分が汚名挽回、仕事を一生懸命やってお返しするということでしょうが、大臣の場合は別にそういう身分の保障とかという話じゃないんで、やはりこれは本当に政治家として行政の一番トップに立って指揮をしている人の、としての名誉ある出処進退というものを是非、森山法務大臣、さすがだったなあという、だったなあですよ、という決断を期待をしておりますが。
ちょっと話を元へ戻しますが、報道によれば、この行刑改革会議で監獄法の廃止、そして行刑法という名前も出たりしておりますが、新たな法律を作る方針を示されたということのようですが、法務大臣、これは新たな方針を示されました。
○国務大臣(森山眞弓君) 昨日は、ようやく行刑改革会議の顔ぶれを決めさせていただいたというだけで、これからその皆様方に御議論をいただくということが次の課題でございますので、どのようなテーマについても新たな方針が決まったわけでは全くございません。ですから、評論はいろいろあるようでございますけれども、すべてはこれからでございます。
○江田五月君 すべてはこれからですが、そして、特に新たな方針として出したというわけじゃないけれども、恐らく、先ほどの表現で言うと、イメージとしてはやっぱりそれは明治何年かの監獄法で今も行刑をやるというのはいかにもそれはどうにもならないと。監獄法に代わる新たな立法といったことも視野には入っているんですか、いないんですか。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおり、現行の監獄法は明治四十一年に制定されて以来、ほとんど実質的な改正が行われないままに今日に至っておりますので、その間の社会情勢の変化とか犯罪情勢の変化ということはもう大変に著しいものがございますから、内容的にも今の監獄法では十分ではないということはみんなよく分かっていることでございます。
ですから、見直さなければいけないということで、法務省といたしましても三回ほど国会に提案しようということで具体的に動いたわけでございましたけれども、結果的に成立を見ないままに現在に至っているわけでございます。しかし、監獄法をいずれは改正しなければいけないというその必要性は少しも今も変わっていない、むしろもっと重要な問題が出来しているわけですので、何とかしなければいけないという気持ちは多くの人が持っていることだと思います。
そういうことで、先ほど申し上げました行刑運営に関する調査検討委員会の整理いたしました問題の中にも、また行刑改革会議において議論していただこうという考え方の中にも、それを視野に入れながら、これではちょっと現在のままじゃまずいんではないかということで、最終的には監獄法の改正も視野に入れた方がいいんではないかという気持ちがあるということは確かでございます。
○江田五月君 明治四十一年の当時の行刑の法律関係なり、あるいは行刑のやり方についての考え方、これは今ではもう到底通用しないんで、だから、現に法務省設置法その他でも監獄法とは全然違って、用語だって全然違うものを使っているわけですから、今現在でも当然、監獄法は見直さなきゃならぬと、現に法務省も、その努力も実らなかったけれども、やっておられる。
しかし、今現在のこの行刑行政、これも変えていかなきゃならぬというわけですから、これはもう監獄法改正が初めにありきではないけれども、やっぱり監獄法に基づいてどういう行刑をやっていくかということを考えたんではどうにもならぬという、それはそのとおりでよろしいですよね。監獄法に基づいて行刑の改善をするんだという話ではないと、これははっきりさせてください。
○国務大臣(森山眞弓君) 御存じのとおり、監獄法、明治四十一年にできたわけでございますので、そのころ人権というようなことはほとんどだれの念頭にもなかったと言ってもいいんじゃないかと思いますので、少なくともそのような基本的な考え方は改めなければいけない、それはもうみんな承知していることだと思います。
○江田五月君 昨日発表された調査検討委員会の行刑運営の実情に関する中間報告ですが、さて、これを説明していただこうかと思っておったんですが、その説明をやっていたら時間がないので、これはここへいただいたものを読ませていただいたということで。
そして、これを実現をしていくために行刑改革会議をお作りになったと、先ほどのようなお話なんですが、私は、一つこの中間報告、あるいは行刑改革会議の中で検討が必要だということで、この中間報告にある「行刑制度改革実現に向けての課題」といったような仕切りで七項目ばかりお書きになっているわけですが、この中に一つ抜けていることがあるんじゃないかと。
それは、職員と被収容者との関係、これはいろいろお書き、あるいは職員の中の人権意識の欠如その他のこと、これも書いておられるわけですが、行刑行政を担当する組織全体の在り方、どうも職員と被収容者との関係が、いわゆる担当制というのですか、家父長的、情緒的な信頼関係、これによって年上の受刑者であっても年下の刑務官に対しておやじさんと言って頼ると、よしよしと、自分が、刑務官が被収容者を言わば庇護するような感じで扱っていくというような、そういう関係が職員と被収容者の間に成立して、それをうまく動かしていって矯正行政をやっていたわけだけれども、それが今、うまくいかなくなったと。元々、そこを、過収容になってきたからとか被収容者の性格が随分変わってきたから変えなきゃいけないということだけでなくて、そういういわゆる家父長的な関係で受刑者を矯正していく、受刑者を処遇していくということ自体がもう今なかなかうまくいかない、そういう時代に変わってきている。そこは実は、どういいますか、行刑組織の在り方の延長線上にそういう問題があるんで、行刑組織の在り方自体の中にもうちょっと何か考えなきゃならぬ問題点が潜んでいるんじゃないかと。
例えば、今、名古屋の刑務所でああいう刑事事件がスタートしておる。これに対して、実は刑務官の中では、漏れ伺うところによると、起訴された刑務官に対するある種の同情や共感が行き渡っていて、そして守る会とかそういうものが、守る会という名前があるかどうかは別として、できてきているとか、その皆さんの中には、何言っているんだ、おれらは現場で体を張ってやっているんだ、ああいう連中とやり合うにはこうでなきゃできないのに、そんな霞が関の矯正局長だか何だか知らぬが偉い者が何が分かるかという、そういうような感じもあったり、片や今度は霞が関の方では、現場の皆さん、人権感覚なんと言ってやると。
人権感覚はもちろん大切なんですが、そういう現場に対してちゃんと指揮監督をしていく皆さんが現場の皆さんの実は心服を得ていないんではないかという、その辺りをどうするんだという、これは非常に私は重要な、行政組織をどう変えるかという課題があると思うんですが、それがこの中間報告の中では抜けているような気がするんですが、いかがですか。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるような問題意識は非常に強くございまして、今引用されました行刑運営に関する調査検討委員会の中間報告の中でも、「はじめに」というところにもその問題意識が出ております。例えば、二番目のパラグラフの、「行刑組織全体の問題として、」という言葉がございますし、その一つ置いて、同じページの下の方ですが、行刑運営の組織とシステムを変革することは容易ではないが、やらなくてはならないというようなことが書いてございます。
しかし、それが一朝一夕にできないということもまたよく分かっておりまして、二万人近い関係職員を擁する、全国津々浦々にあります、その土地の事情によってもいろいろ違うでしょうし、様々な行刑施設におけるいろんな問題を解決していくというのには相当慎重に、かつ思い切った改革が必要であろうというふうに考えているわけでございまして、御指摘のような問題意識は十分持っているつもりでございます。
○江田五月君 是非お考えいただきたいと思います。
行政組織の動かし方、あるいは行政と国民、あるいは被収容者と職員、これはある種の権力の関係であると同時に権威の関係でもあって、昔、学生時代に行政学の辻清明先生が言っていたのを思い出すんですが、権威というのは何だというと、あらがい難い上に光るものじゃなくて、権威を感ずる側からのある種の心服とか信頼とかというもの、これが権威なんで、こっちに、権威を持っている側に権威があるんではなく、権威を感ずる側に権威を感ずる何かがあると。そういうものをどうやって作っていくかという、大変難しいことですけれども。
やっぱり今、矯正行政を見ていて、現場の皆さんの起訴された人々に対する同情、共感がいいとは私は全然思いません。思いませんけれども、そういうものが生まれてくる土壌というのはやっぱりある。そこへメスを入れる必要もあるんだということは是非認識を、今認識されているということなのですが、しっかりそこは見忘れのないようにしていただきたいと思います。
行刑改革会議をもう少し聞きますが、どのくらいの頻度で開かれますか。
○国務大臣(森山眞弓君) 皆さん、大変お忙しい方ではございますけれども、第一回の会合のときによくお打合せをさせていただいて、例えば月の第二、第四何曜日とか、そういうふうにお決めして、できるだけ出ていただくようにしていただくということを考えておりますが、まだ御本人、皆さんが一堂に会することがございませんので、第一回によく御相談して、できるだけ十分な回数を重ねていきたいと思っています。
○江田五月君 スピードアップと言いながらなかなかスピードが上がらない、時計を見ておりますが。
事務局、これはどこに作るか、どのように作るか。
○国務大臣(森山眞弓君) 事務局長は事務次官が務めることに決めております。事務次官一人では難しゅうございますので、省内の各局から、矯正だけではなく、もちろん、いろんな局のスタッフを必要な数だけ集めようと考えていますが、人員が非常に足りなくて苦しいところでございますけれども、何とかやりくりましてこの仕事が順調にいくようにしたいと考えています。
○江田五月君 もう御承知のとおりですが、事務局というのは非常に重要で、事務局が全部おぜん立てをして、事務局が全部青写真を書いて、委員の皆さんはそのとおり後から裏判を押すだけというのではどうにもならないんで、これはそういう思いを込めてなかなかの人たちを人選されていると思いますので、しかし事務局がしっかりしないとこれまた物事は進まないわけですから、その辺の呼吸をよろしくお願いしたい。
メンバーの皆さんにどういうことをやってもらうかなんですが、私は、一つはやっぱり、かなりプライバシーまで突っ込んだ、あるいは捜査情報にまでちょっと及ぶようなケースもある。そこまでの情報をこの皆さんにはちゃんとお渡しをして議論していただくということが必要なのかなと。そうだとすれば、この皆さんに国家公務員法上の守秘義務がやはり掛かっていかなきゃいけないんじゃないかなと思ったり。
そちらはそちらで、しかし一方で、今度、改革の議論については、改革の議論についてはこれはやっぱり国民的に議論していくということが必要で、そうしますと、しゃばの風の吹かない、しゃばの道理の通じない社会であった日本の刑務所に市民の風、市民の常識を通ずるようにするということが目的ですから、司法制度改革そのものでもあるんで、司法制度改革の各種の会議と同じように、プライバシー部分はこれはもちろんいけませんが、それ以外はリアルタイム公開にすべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(森山眞弓君) 御存じのように、行刑改革会議にお願いする方々は純然たる民間人の方でございますので、この会議は民間の立場から率直な御意見を承るということが非常に大きな目的でございますので、委員の方に公務員のような守秘義務を課すということは考えてはおりません。
なお、委員の方から的確な御意見をいただくために、必要に応じていろいろな情報を、あるいは記録を御参考に供するということはできるだけやりたいと思っておりますけれども、その取扱いにつきましては、委員の方々にしかるべき御配慮をお願いしなければならないかなというふうに考えておりますけれども。
なお、議事の公開につきましては、会議の先生方御自身で決めていただくことになろうかと思いますので、今、私の口からどうこうするということはちょっと申し上げにくいわけでございます。
○江田五月君 刑務所行政、行刑行政ももちろん国民のための行政です。主人公は国民です。国民と一緒に議論して、国民の理解と協力を求めなければいい行刑行政ができるわけもないんで、これは委員の皆さん方に、是非リアルタイム公開でやってくださいよという強い意見があったということをお伝えいただきたい。
刑務所が、かくのごとく、それこそ塀の中で全くしゃばの風が通らないということになって、それではいかぬというので、石川さん、それではいけないというので拷問禁止条約の選択議定書、これ、この間から聞いているんですけれども、なぜ日本は批准に積極的でないのか。理由をずっと聞いたら、全部、いや、だから日本はやりますという結論になるかと思ったら、最後は、いや、やりませんというのでよく分からないんですが、ちょっと、簡単でいいですから、なぜ批准しないのか分かるように言ってみてください。
○政府参考人(石川薫君) 江田委員にお答え申し上げます。
この拷問禁止条約の選択議定書でございますけれども、先日、この場でお答えする機会を与えていただきましてありがとうございました。現在、セネガルとコスタリカの二か国が署名済みというのが状況でございます。
政府としましては、この議定書で視察ということが規定されておるわけでございますけれども、それが具体的にどうなっているのかと、どうなっていくのかということが決まっていないというところがございますものですから、この視察の具体的な態様など、選択議定書の中身と国内法との関係等について調査しているというのが現状でございます。
その具体的な調査について申し上げたいと思いますけれども……
○江田五月君 いや、短く。
○政府参考人(石川薫君) はい。欧州が一つのモデルになり得るということがございますものですから、担当官を欧州に派遣をしてその調査をするといったことを現在やっているところでございます。
○江田五月君 調査しているということなので、早く調査して早く結論出してください。これは批准しましょうよ。
さて、法務大臣、司法制度改革、今回、司法制度改革については、これはもう法務大臣、法務省のトップということを超えて、言わば内閣で取り組む司法制度改革、内閣総理大臣が本部長、その副本部長として重大な責任を負っておられるわけですよね。そのことはもう質問しなくても当然のことと。
政府の司法制度改革推進計画、それから審議会意見書、これらを見ると、推進本部が存続をしている間であっても、やれることはどんどんやっていきましょうと。それは人的、物的あるいは財政面での十分な裏付けを持った改革をやりましょうという、そういうことで。
そこで、これこそ本当に思い切ったことをやっていただきたいんですが、平成十五年度予算、司法制度改革に対しては特段の配慮をした予算になっているんですか、いないんですか。それともう一つ、平成十五年度予算の概算要求のときに司法制度改革の概算要求というのは一体幾らだったんですか、お答えください。前の質問は法務大臣で、後の質問は推進本部。
○国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革審議会の意見を受けまして閣議決定されました司法制度改革推進計画によりますと、全体としての法曹人口の増加を図る中で、裁判官、検察官の大幅な増員等を図ることにしております。そして、司法制度改革推進本部の設置期間中においても、裁判官、検察官の必要な増員等を図るということになっておりまして……
○江田五月君 それは分かっているので。予算は。
○国務大臣(森山眞弓君) はい。予算は後ほど御説明申し上げますが、私といたしましては、法務省の関係の検察官、あるいは裁判所の方も裁判官の増員ということについて鋭意努力いたしまして、今、後ほど申し上げるような要求をさせていただき、認められたということでございます。
○政府参考人(山崎潮君) 予算の点につきましては、法務省の予算は法務省の方で、最高裁の予算は最高裁の方で独自に要求されているというふうに承知しておりまして、私どもそこの具体的なところまでは把握していない、そういう構造になっておりますので、御理解を賜りたいと思います。
○江田五月君 理解できません。だって、司法制度改革を人的、物的、財政面も含めて一生懸命やるというんでしょう。それで、概算要求は法務省で、裁判所で、全部は幾らになっているか分かりませんで。
やると言いながら、こういうことをやりたいというのがあって初めてやるかやらないかというのが分かってくるんで、いや、やるんですけれども全部ほかに任せていますから何だか分かりませんというんじゃ、これはどうも小泉改革と同じで口先だけの改革だという心配が出てくる。
何かおっしゃりたいようですね。
○国務大臣(森山眞弓君) 先ほど申し掛けました件で、具体的な数字を分かっている限り申し上げますと、最高裁におきましては、裁判官四十五人、それから裁判所の書記官二百二十二人、家庭裁判所の調査官三十人等の増員を要求しております。定員削減も一方ございますので……
○江田五月君 それは大体分かっていますから。
○国務大臣(森山眞弓君) はい。法務省におきましては、検事五十人、検察事務官百二十二人等でございます。
○江田五月君 そこで、今のこの定員法に入るんですけれどもね、司法制度改革推進本部の方でも、やはり全体を見回しながら、概算要求をここではこれだけやった、ここではこれだけやった、よって司法制度改革関連予算の要求は全体でこんなふうになっているというようなことをやっぱり把握をしておかれた方がいいだろうと思います。その方が迫力が出てくる。
裁判所の予算ですが、裁判所の概算要求はさっき数字を伺ったんでもう、概算要求三千二百八十七億二千九百万円、成立の予算額は三千百七十八億三千百万円、前年度が三千百七十一億ですから七億余増えただけということのようですが、推進本部存続中も司法制度改革のために財政面も含めて全力を挙げると。これは、挙げた結果が七億円増ということですか。最高裁。
○最高裁判所長官代理者(大谷剛彦君) 今、委員御指摘のとおり、平成十五年度の概算要求が三千二百八十七億、成立予算が三千百七十八億で七億の増ということになってございますが、大きな差が生じております、減の差が生じておりますのは、人件費で六十億円、これは戦後初のマイナス人勧等に基づくものでございまして、また施設費が約三十九億円の減ということになってございますけれども、これは概算要求基準におきまして対前年度二割の増の要求が認められる一方で、成立予算は公共投資関係経費を抑制し削減すると、こういう政府方針がございました。その結果、調整がなされた結果でございます。
概算要求と成立予算の差が大きいように見えますけれども、前年度の予算と対比して見ますと、この近年の厳しい社会経済情勢の中で、裁判のそのものに要する裁判費、その他の物件費はこれは充実、増加を見ております。そういう点で、全体として前年度の約七億円の増加となっておりますが、適正迅速な裁判の事務処理に支障のないような予算は確保されているというふうに考えてございます。
また、司法制度改革の関係の予算でございますけれども、これは平成十五年中の実施される予算というものは裁判所関係ではそれほど多くはございません。
例えば、人事訴訟の今度、家庭裁判所から地方裁判所へ移管されることに伴う家庭裁判へのいろいろな電話会議システムの整備の経費とか、あるいは下級裁判所指名諮問委員会を設置する際の経費とか、あるいは国民の意見を裁判所運営に反映させるための地方裁判所委員会を設置するための経費、それから調停事件、調停官制度の経費とか、こういうものは概算要求にも要求し、そしてそれが予算でも認められているというところでございます。
今後とも、引き続き努力してまいりたいと思います。
○江田五月君 いろんな説明はそれは当然できるんだろうと思いますけれども、現にある今の司法サービスを前提にして、やれ執行事件がちょっと増えてきたからとか、刑事事件がこうなってきたからとかいうのでこの分をちょっと手当てしなきゃいけないという、そういう発想じゃ駄目なんで、今、司法制度改革というのは、もう本当に歴史的な改革をしようという意気込みだけはそうなっているけれども、実際はよく見ると、前のところの今までのやつをちょっちょっと変えるだけというような印象では、これは国民は、おっ、司法制度が変わるぞという、そういう目が覚めるようなことにはならないと思いますね。
定員ですが、定員は、私たちもこれは定員についてもこの管轄の法案についても賛成をいたしますが、やはりこれも物足りない。今回は判事については三十人で、今の欠員の部分があって、相当、今日から始まる新年度の任用に当たってどんと増やしていかなきゃいけないという気がしますが、是非、この程度の定員増ではまだまだ足りないんだということでやっていただきたいと。
今年度の増員と、さらに来年度も今年度と同じように何十人という定員の増員を計画をしておられるのかどうか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お励ましいただいてありがとうございます。
平成十三年の四月に司法制度改革審議会で、裁判所はこれから十年間、現状の事件数が変わらないという前提で審理期間等を短くする、一年以内に平均審理期間を持っていくために四百五十人、さらには判事補の外部派遣等で六十人、計五百人の増員をこの十年間で実現してまいりたいと、こういうふうに外部に表明をしたわけでございます。
今回の四十五人増というのはその一環ということでございまして、執行事件、破産事件等が増えてきているからということではなくて、長い目で見て、しかもその充員状況がどう進んでいくかと。弁護士任官、ある程度日弁連の方でもお頑張りいただいておりますけれども、その辺りの状況も見据えつつ進めてきているところであります。
来年度以降につきましては、法科大学院の派遣問題、あるいは今後御審議いただくいわゆる迅速化法に対する対応、そういったところも考えまして、充員状況を見極めつつ、更に適正な人員になるように努力してまいりたいと、こういうふうに考えているところでございます。
○江田五月君 是非そこは本気で、本腰を入れて取り組んでいただきたいと思いますが、増やすだけでもいけないんですよね。
裁判官というものの中身というか、どういう人材が裁判官として配置されるかというのは非常に重要なことで、この点についても今、国民の中には随分不満があって、これはもう最高裁の方もよくお分かりで、したがって下級裁判所裁判官指名諮問委員会の発足であるとか、あるいは各地裁、高裁、地裁、家裁か、の委員会であるとか、そういうことをおやりになっていくということですが、その諮問委員会でも人事評価制度、これも今検討中ということですが、ここら辺りも是非議論をしたいと思っていたんですが、もう時間になってしまいました。
私は、今、刑務官の方もそうですが、裁判官、是非、私流の言い方で言えば市民化ですよね。普通の国民の一人一人、市民としての感覚を持ったそういう、あるいは市民生活が十分できる、そういう裁判官でなければいけないと。
裁判員というのを一方でつくって、裁判官と一緒に裁判やる。その裁判員と裁判官に何か質的な違いがあるということではやっぱりいけないんじゃないかと、同じ人間、同じ市民としてということでなければ。あるいは非常勤の裁判官もつくろうというような時代ですから、今までとかなり裁判官像というのは違ってきている。
この研究会の報告にもありますが、法的判断能力や手続運営能力、そういう事務処理能力は当然ですが、組織運営能力ですね、職員との人間関係がちゃんとつくれないような人が裁判官なんかできない。一般的なそういう資質、能力。例えば、傍聴に行った人なんかよく言いますよね、裁判官が寝ていたなんていってね。ちゃんと法廷中は、開廷中は起きていられる能力なんか当たり前の話ですよね。法廷で大きくよく通る声でちゃんと裁判を進めるとか、あるいは和解や調停でちゃんと当事者を説得できるとか、当事者の言うことをちゃんと十分、少々いらいらしても聞くだけのそういう忍耐をできる能力を持っているとか、そういういろんな能力、こういうことを裁判官の人事評価の中でも十分考えていっていかなきゃならぬところへ来ていると。えっ、裁判官ってこんなに人間的に魅力あるんだったのという、そういう裁判官つくろうじゃないですか。今日はその議論はもう時間がないのでやめておきます。
終わります。
2003/04/01 |