2003/05/26 |
156 参院・法務委員会・厚生労働委員会連合審査会
14時20分から17時過ぎまで、法務委員会・厚生労働委員会連合審査会に出席。心神喪失者医療観察法案の審議です。16時過ぎから20分間、西川潔さんが民主党案についても質問され、私が答弁に立ちました。地域で精神障害者のケアに携わっている人々の努力に対し、政府案提出が与えた悪影響と、他害行為を行った精神障害者に対する処置の現状が有する問題点についてです。
平成十五年五月二十六日(月曜日)
○西川きよし君 西川でございます。よろしくお願い申し上げます。
私は私の視点から、ひとつよろしく、いろいろ細やかな部分までお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いを申し上げます。
まずは、民主党案の提出者にお伺いを申し上げます。朝日先生、よろしくお願いいたします。
趣旨説明の中で、政府・与党の一連の動きは、全国各地で地道に取り組まれている障害者支援の活動に水を差すものとなったばかりか、新たな差別感情をあおることにもつながり、結果として障害者の社会参加を促進する動きを逆流させるものといった発言が先生の方からございましたですが、この発言の背景について先生の方から御答弁をいただきたいと思います。
○江田五月君 お答えを申し上げます。
まず最初に申し上げておきたいのは、本政府案の提出の森山法務大臣の御答弁によると、非常に重大なきっかけとなったのが大阪の池田小学校事件ですね。これについて小泉首相の発言もあったと。大変痛ましい事件だと。これはそのとおりで、そして精神的に問題がある人の医療法と刑法の不備なところを対応しなければならないと、こう言われて山崎幹事長に指示をしたと、こういうことでございます。
しかし、この小泉発言というのは、これは結果的に重大な事実誤認だったわけですよ。つまり、犯人は今、被告人になって、この間、求刑もありましたよね。精神障害者でなかったわけですよね。それどころか、精神障害者をかたって、その前にいろんなことをやっておったと、そういう人であったわけで、それをもう、すぐに精神障害者の皆さんに大変な打撃を与えるような発言をされたというのは非常に軽率であったと思いますね。
今、この小泉首相の発言だけでなくて、社会一般にも、あるいはこの国会の中でも、精神障害者は危険だから、だから野放しじゃいけないなんという言葉が使われるわけですね。閉じ込めていなきゃいかぬというようなことも言われる。これはしかし、危険だと言うこと自体がまず偏見で、で、閉じ込めていなきゃという、差別です。そういう偏見、差別がやっぱり社会の中にある。しかし、それでは本当の医療にならないので、やっぱり社会でしっかり受け止めて、そして社会の中でこういう皆さんも一緒に暮らせるように、そういう施策を取っていかなきゃならぬと。
ところが、どうも政府のこの施策は、そういう社会内処遇をしっかりとレベルアップするというところに行かないわけですね。だけれども、その分を、言ってみれば地域のいろんな皆さんが一生懸命本当にもう大変な努力をして、精神障害者だけじゃありません、いろんな障害者の皆さんの社会の中での暮らしのために努力をしている人たちがおられるわけで、そういう皆さんからすると、もうこの池田小学校事件、小泉発言、そして今回の政府案、これは、自分たちが障害者の皆さんを地域で受け止めようという努力に言わば水を掛けるといいますか、あるいは逆なでするというか、そういうことになっていて、そしてみんな本当にこれはもうがっくりきたということであったわけで、それを申し上げたのが先ほどの委員御指摘の発言ということでございます。
○西川きよし君 確かに、会館にも連日のように多くの精神障害者の方々が要請活動にお見えになります。そして、今お伺いしたような御懸念、いろいろお伺いするわけですけれども、大変皆さん心配をしておられますし、やはり私自身も今いろいろ答弁をお伺いいたしまして、精神障害者をお持ちの方々が不安を持たれたままでのこの新法の制定には問題があるのではないかなというふうにも思いますし、また、この点については政府はどのようにお考えなのか。
大分前ですが、坂口大臣さんにお願いをいたしましたポリオの二次感染、五百八十万分の一という、でも本人にとっては一分の一であるというような、そういったお話もさせていただいたんですが、今回の法案でも大変細かい部分、双方から考えますと大変私自身も悩むわけですが、今御質問申し上げたこと、厚生大臣の方からよろしくお願いいたします。
○国務大臣(坂口力君) 先生から今御指摘になりまして、江田先生からも民主党の立場でお答えあったわけでございます。御尊敬申し上げる江田先生でございますが、若干意見を異にいたしておりまして、私は私の立場からお答えをさせていただきたいというふうに思っております。
精神障害者全体の問題につきましては、御指摘をいただきましたとおり、私はやはり後れているというふうに思っております、制度として。したがいまして、全体のレベルアップをしなければならない。
先ほどからも御議論がありますように、ベッド数が多くて長期入院が多い、そして地域の受皿がない、あるいはまた精神医療そのものの中の機能分化というようなことも進んでいないというようなことがあって、これらのことの改革を行っていかなければならない、前提条件として。そういうふうに思っているわけでございまして、いよいよスタートをさせて、来年度予算から本格的にそれを始動させたいというふうに思っているわけでございます。
その中で、御議論になっておりますように、またこの法律の中にございますように、心神喪失等の状態で重大な他害行為が行われる事実がありましたとき、被害者に深刻な被害が生ずるだけではなくて、精神障害を有する人自身に対しましてもその病状のために加害者になると大変に不幸なことが重なるということもあるわけでございます。
したがいまして、そうした皆さん方に対しましては、完全に社会復帰がしていただけるような体制を整える、そういう思いを何度かさせないようにするということもまた大事ではないかというふうに思っておりまして、こうした制度を作らなければならないというふうに思っている次第でございます。
継続的あるいは適切な医療を実施をする、あるいは病状の改善、そしてそれによって社会復帰ができるような体制、今まで社会復帰といいましても地域でそれを受けていただく皆さん方がおみえにならなかったわけでございますから、そういう地域で受けていただけるような体制を確立をしながら社会復帰をしていただくようにするといったことで、全体的なレベルアップをしていくというのが私たちの気持ちでございます。
○西川きよし君 続きまして、もう一度、民主党案の発議者の皆さん方にお伺いしたいんですけれども、政府案では司法精神鑑定の在り方、司法と精神医療の連携、あるいは措置入院制度の実態等々、現行制度上の問題点は一切目を向けることなくという大変厳しい指摘があるわけですけれども、皆さん方が、専門家、そしてまた特に朝日先生、専門家のお立場から是非お答えいただきたいと思うんですけれども、それぞれの問題点、そして具体的にはどのような点をおっしゃっているのかというのをここでただしておきたいと思うんですが。
○江田五月君 これも私からお答えをいたしますが、この現状ですね。まず、先ほどもちょっと申し上げました社会の偏見や差別、そういうものに言ってみれば裏打ちされて、あるいはこれを温存する、そういう制度が今あるんだろうと思います。そして、さらにそうしたものを温存する、あるいはそれを助長する制度を今作ろうとしているのではないかと私たちは心配をしています。
制度としては、長期入院あるいは社会的入院が先ほどの七万二千人、地域のケアが非常に弱体である、そういったようなことがあるわけですね。そして、精神医療の現場の皆さんからこんなことが言われております。一つは、検察官の起訴、不起訴の判断がどうも恣意的になっているんじゃないかとか、あるいは二つには、偏った精神科医による安易な簡易鑑定が行われているんじゃないかと、これ、起訴前ですよね。あるいは三つには、刑事施設等の中での精神医学的な援助体制というのは非常に不十分ではないのかとか、あるいはまた精神保健福祉施策の立ち後れに問題があるなど、制度の不備より先にまず現行制度の運用に問題があるのではないかと、そうしたことがいろいろと言われております。
そこで、不幸にして犯罪行為に該当するようなことになってしまったそうした人たちの施策として、起訴前の鑑定、これをもっともっとしっかりさせて起訴、不起訴の振り分けがちゃんとできるように、あるいは刑事手続の中での鑑定、これをもっとしっかりさせてそこで本当に的確な、あるいは確度の高いそういう鑑定ができるように、あるいは刑事手続、これは捜査の段階あるいは公判の段階、さらにまた刑の処遇の段階でもそうですが、全体にわたってもっと精神医療というものがしっかり行われるように、こうしたことがしっかり行われることが今一番必要なんじゃないかと。ということで、私ども、精神保健福祉法の改正、さらに起訴前の鑑定、そして裁判手続の中での鑑定、こういうものをしっかりさせようと、こういうものを法案として出し、さらに精神医療全体の底上げのための施策、これを提案をしたということでございます。
○西川きよし君 時間の都合で最後の質問とさせていただきますが、いろいろ御指摘もございました。ただいまの御指摘、そして司法精神鑑定、司法と精神医療の連携、そして措置入院制度についてただいま御質問いたしましたこの質問を、御答弁は法務大臣そして厚生労働大臣から、政府側の見解として是非お聞かせをいただきたいと、このように思います。よろしくお願いいたします。
○国務大臣(森山眞弓君) 今お話がございました精神鑑定につきましては、特に簡易鑑定に関して適正に実施されているかどうかなど、様々な御意見や御批判があるということを承知しております。
法務省といたしましても、一層その適正な運用を図りまして、不十分な鑑定に基づいて安易な処理が行われているとの批判を決して招くことのないようにする必要があると考えます。
このような観点から、専門家の意見等も踏まえながら、捜査段階において精神鑑定が行われた事例を集積いたしまして、精神科医等も加えた研究会等においてこれを活用すること、検察官等に対し、いわゆる司法精神医学に関する研修を充実させること、鑑定人に被疑者に関する正確かつ必要十分な資料が提供されるような運用を検討することなどの方策を講ずることを検討しなければならないと思っております。
また、司法と精神医療について適切な連携を図ることが肝要でございます。特に、本法案における対象者である心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する適切な処遇の確保、矯正施設等における適切な精神医療の確保など、様々な分野においてこれまで以上に司法と精神医療の連携を図ることが重要であると考えております。
また、修正案にありますように、本制度の指定医療機関における医療について、司法精神医学の知見を踏まえ、その水準の向上に努めることが司法と精神医療の連携に資するものと考えております。
○国務大臣(坂口力君) もう法務大臣からお答えいただきましたから十分ではないかというふうに思いますが、確かに江田先生がおっしゃいましたように、運用に不十分な点があるということは、それは私たちも反省をしていかなきゃならないというふうに、率直にそう思っているわけでございます。
今お話ございましたとおり、特に司法と精神医療との連携というのは、これはやはり不十分であったその典型だというふうに思っておりまして、是非ここは改善を加えていかなければならない。とりわけ、医療の中でもこの司法精神医学というのは特に日本の中では未成熟であったわけでありまして、これは是非成熟をさせていかなければならない分野であるというふうに思っておるところでございます。
それから、措置入院制度につきましては、これはもう法務大臣の方の御答弁にありましたから多くを申し上げませんけれども、その措置入院制度の運用につきましても、これは入院患者数でありますとか入院期間に大きな地域格差があることも事実でございまして、地域格差があるということはその基準が明確になっていないというふうに御指摘を受けてもやむを得ないというふうに思いますので、そこはそうしたことのないように私たちもしていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
○西川きよし君 ありがとうございました。
2003/05/26 |