2003/07/10

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156 参院・法務委員会  

司法制度改革のための裁判所法等改正案の質疑で、90分間質問。

まず45分間、長崎の幼児殺害事件を取り上げました。小泉首相も政府関係者も、今回は慎重に発言されています。森山法相が、「少年法適用年齢にも該当しない少年」と発言されましたが、触法少年に対しては、児童相談所からの送致を受ければ、少年法の規定により、家庭裁判所が審判権を有し、保護処分が出来ます。14歳未満に刑事責任能力を認めないのは、刑法の規定であり、衝撃的な事件だけに、正確な発言が望まれます。(1)触法少年の少年院収容を可能にする少年院法改正や(2)同じく刑訴法の捜査手法を使えるようにする改正を、問題提起しました。私自身も、よく考えてみます。

後半は、法案の質疑。司法試験合格後、国会議員を5年務めれば、司法修習を経なくても、弁護士資格を付与するという部分は、どう考えてもお手盛りなので、民主党はその部分を削除する修正案を提出します。衆議院では、修正協議が合意に達せず、この修正案が入れられなかったので、その他の部分は賛成でしたが、法案に反対しました。


平成十五年七月十日(木曜日)

○委員長(魚住裕一郎君) 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○江田五月君 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案の質疑でございますが、まず、午前中の千葉委員の質疑でも触れました昨日の少年の事件についてもう少し伺っておきたいと思います。

 大変、皆、沈うつといいますか、暗い気分の中で今朝を迎えたと思っております。種元駿君、こうやってにこっと笑うあの笑顔の写真が全国に衝撃を与え、そしてその後、どうも少年ではないか、中学生ではないか、最初、十三歳という報道がちょっと流れたんですが、結局、十二歳の中学一年生の子供が加害者だということが分かった。本当に衝撃的な事件だったですね。殺された駿君の御両親、関係者の皆さんにも心からお悔やみを申し上げます。かわいそうだったですね。

 同時に、この十二歳の加害少年、この子も本当に、やったことは大きい、その責任はそれはこの子なりの取り方をしていかなきゃならぬ。しかし同時に、この子がこれからまだまだこの先ずっと長い人生を生きていかなきゃいけない。どういう人生行路を送るのか。その人生の中でどれほど今回のことが大きな重荷になっていくのか。親御さんもそうだと思いますけれどもね。本当にこういう事件が起きることを防げなかった社会の、あるいは我々の責任も痛感をしなきゃならぬと思っております。

 法務大臣、午前中、今の思いを話してくださいましたが、繰り返しということだと恐縮ですが、簡単にで結構ですが、今の思いを一言お述べください。

○国務大臣(森山眞弓君) 全くどういう言葉で表したらよろしいか、非常に沈痛な、また複雑な気持ちでございまして、亡くなられた駿君の御冥福をお祈りするとともに、加害少年の長いこれからの人生のことを考えますと、これもまた別の意味でどうしたらいいのか、途方に暮れるような気持ちでございます。

 大変年が若過ぎてといいましょうか、少年法の該当もしないというような小さい幼い少年でありますので、やはり法務省の仕事というよりは、児童福祉や教育、あるいは家庭環境等の問題なのではないかなと思いながら、ではどうしたらいいのかということになると、本当に答えのしようもないような苦しい気持ちでございます。

○江田五月君 最近、どうも世の中、非常にみんな何か気が短くなっていまして、もう何か事があればすぐ、解決策は何だ、どこをどうやったらいいんだ、さあこれは十五秒で話してくださいとか、短答式の問題というのが世の中多過ぎるんじゃないかという感じもするんですが、この事件もまだ分かっていない、分かっていることは本当にわずかで、分かっていないことだらけなんですけれども、それでももう、やれ、少年法をどうしよう、刑法をどうしようというような議論がわっと起きてくるので、ちょっと待てよと。もう少しじっくり落ち着いて反すうをしながら、自問自答しながら考えていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、それなら今日ここで質問するなと言われても困るんですけれども。

 私は、どうも、例えばこの間の心神喪失者等医療観察法の審議のときにも申しましたが、精神障害を装った人間が何かの犯罪をやる、それは大変ショッキングな犯罪で、小泉総理がばっと瞬間的に反応して刑法というようなことを言ったものですから、なかなか問題が複雑になってしまったんですが、幸いなことに、今回は小泉首相も慎重な物言いをされているのでほっとしていますし、また森山法務大臣も言葉を選びながら、そして言葉がないというお話をされているので、じっくり腰を落ち着けて取り組んでほしいと思うんですけれども。

 ただ、私は、これは法務省のお役人の皆さん、あなた方は何のために付いておるのかと言わなきゃならぬ。今、少年法の該当年齢にもならないと、午前中もそういう答弁をされたんですよ。それは後ろにそれだけ役人の皆さん並んでいるのに、なぜ一体訂正しないのか。少年法は十四歳未満の子供も扱うじゃありませんか。触法少年ということで審判できるじゃありませんか。少年法のどこにこの事件について欠陥があるというんですか。

 これは法務大臣に聞いてもまずいので、今日は刑事局長ですか。

○政府参考人(樋渡利秋君) 確かに、少年法によりますと、こういう場合には、十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年ということで触法少年に当たるわけでございます。

 しかし、この触法少年として扱われますということは、犯罪捜査のための強制処分といいますか、そういう捜査はできないということでございまして、あとは、この場合には、少年の保護という、育成という観点から、第一義的には都道府県知事や児童相談所長による、いわゆる児童福祉法上の措置にゆだねられることになるわけでございまして、そのゆだねられた児童相談所長等が必要があると認めるときには、一時保護を加えた上で、又は適当な者に委託して一時保護を加えさせることができると同時に、家庭裁判所に送致することができるわけでございまして、家庭裁判所に送致されますと、家庭裁判所の審判によりまして、保護観察、児童自立支援施設送致などの保護処分などの決定ができることになっております。

 もう少し詳しく言いますと、保護観察には年齢の定めはございませんので、保護観察ができるということで、あとは児童自立支援施設に送致されまして、その施設において育成を図っていく、保護を図っていくということになることになるわけであります。

○江田五月君 御丁寧な答弁もいいんですけれども、少年法の、この事件についてですよ、少年法のどこに欠陥があるということが、何かあるんですかと聞いたんです。

 触法少年ということで、十三歳以下の少年についても家庭裁判所は権限を持っているわけですよね。で、捜査権限がないと。しかし、少年法のどこにも、触法少年には捜査権限は及ばないと書いているわけじゃないんですよね。これは、そうではなくて、刑法の刑事責任年齢の問題でしょう。

 ですから、何かこういう事件が起きればすぐ少年法と、こう言うんですが、法務大臣、午前中おっしゃったとおり、少年法は二年ちょっと前でしたか、三年ほど前に、これも大変な議論をしました。そして、少年法のいろんな処遇の区分があるわけですが、その全体の年齢を引き下げたり、あるいは処分の方法を厳しくしたり、被害者の保護にいろんな手当てを加えたり、そういう改正をしました。後ほど聞きますが、この改正によってそれなりの処遇がこの二年ほど行われてきているわけで、すぐ少年法と、こう言うのは短絡に過ぎるんですよ、これはもう明らかに。

 ちょっとこの事件で、この事件でと言うと語弊がありますが、触法少年の場合の事件の流れというのを、これはどなたがいいんですか、警察庁あるいは家庭局、最高裁、説明をしてみていただけますか。

○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 触法少年につきましては、まず家庭裁判所は直接警察等からの送致を受けることはできませんで、まず児童相談所等の児童福祉機関、知事等から送致を受けたときに限り審判を行うことになります。

 送致を受けますと、そこでいろいろやはり調査を行いまして、その結果、審判を開始するのが相当であるというときには審判の開始決定を行います。その後、審判で非行事実、その触法事実ですが、それが存在するかどうかということを認定した上で、非行事実ありということになりますと、次にその処遇をどうするかということで、先ほど刑事局長から御説明がございましたように、保護観察にするとか、あるいは児童自立支援施設に送致するというような形で保護処分を行うというような流れになるかと思います。

○江田五月君 最高裁としては、こういう触法少年の保護について、少年法に何か不備があると、そういうことはお感じですか。

○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 運用に当たる者としましては、現在ある制度の下で一番最適な方法を考えるということでやっておりまして、特段、立法の問題についてはちょっと意見は差し控えさせていただきます。

○江田五月君 家庭裁判所が触法少年の保護に当たるについて、ここをこうやってくれなきゃ困るというような意見は、控えるとおっしゃいましたが、特にないと思います。

 もう一度、刑事局長、少年法には、触法少年の処遇について特にこの点が困っているんだというのは、私はないと思うんですが、いかがですか。少年法にはですよ。

○政府参考人(樋渡利秋君) 私といたしましても、どの点が必要かということを今この段階で意見を言うことは差し控えさせていただきますけれども、世の中にはいろいろな考え方があると思うんでありまして、先ほど先生は、これは刑法の刑事責任年齢の問題だと、それはもちろんそうでございます。

 しかし、刑法で罪は問われないといたしましても、犯罪はどのようにして行われたかという調査ができるようなものがあってもいいんではないかというようなお考えも世の中にはあるのかもしれませんし、そういうようなことをいろいろもし御指摘があれば我々も考えなければならないのだろうなと思いますけれども、我々の方として、何かが欠陥あるというふうに思っているわけではございません。

○江田五月君 警察庁、お見えですよね。

 この事件は、もちろん加害少年の保護に支障のない限度でですが、今、どういう流れで、どうなっているかということを説明してくれますか。

○政府参考人(栗本英雄君) お尋ねの事件につきましては、本年の七月一日の午後七時過ぎころに、長崎市所在の家電量販店におきまして四歳の幼稚園男児が誘拐をされ、同日の午後九時過ぎごろに、同市内の別のところに所在いたしますパーキングビルの屋上から突き落とされ、殺害されたという事件でございます。

 本件につきまして、長崎県警察といたしましては、七月の二日に事案を認知をいたしまして、捜査本部を置いて、その後、所要の捜査、調査を推進した結果、十二歳の少年の行為であることが判明をいたしまして、昨日、七月九日に児童相談所に通告をいたしたものでございます。

○江田五月君 二日に認知をして、捜査本部を立ち上げて捜査をした、その結果、十二歳の少年の行為であることが判明をして、昨日、児童相談所に、これは通告ですか、をしたと。

 それで事件の処理は終わったわけですか。

○政府参考人(栗本英雄君) 今申し上げましたように、児童相談所の方に通告をいたしておりますので、その後は児童相談所の方から家庭裁判所に送致され、今後、調査等がなされるものと承知をいたしておるところでございます。

○江田五月君 私が聞いたのは、警察としての事件の処理はそれで終わったのかということなんですが。

○政府参考人(栗本英雄君) 今後の事案につきましては、家庭裁判所との連携協力を図りながら、警察としてやるべきものがあるのか否か、どのような形でやるのかということにつきましては、今後考えていかなければいけないと考えております。

○江田五月君 児童相談所が家庭裁判所に送致をした後、恐らく、新聞報道によると、身柄は、昨日の段階では警察署で泊めたんですかね、今日は恐らく家庭裁判所で、私の想像ですけれども、観護措置でも取られて、あとは鑑別所ということになるのかと思いますが、先ほど刑事局長の話にそこから入っていくんですが、十二歳ですからどうやっても犯罪にはならないんで、そうしますと、犯罪にならないものを捜査をするという権限は警察にはない。警察どころじゃない、どこにもない。そうすると、家庭裁判所と協力をしてというんだけれども、何を、どういう協力の余地があるんですか。それも、その前に、事件の処理としては、警察ではこれでもう終わっているんですか。それとも何かまだ残っているんですか。どうなんですか。

○政府参考人(栗本英雄君) 先ほども申し上げましたように、事件の処理としては既に通告をしたところということで判断すべきかと思いますが、そのほか何かこの事案をめぐって警察としても関係すべきものがあるか等々については、家裁等々との連携協力が必要になろうかと思っております。

○江田五月君 これ、私も実は悩みながら聞いているんです。警察としては児童相談所に対する通告でこれは終局処分だろうと思いますね。したがって、捜査はそれでおしまい。で、家庭裁判所は、少年法の十六条ですか、援助の規定があって、そして警察官にも援助の要求ができる。その援助は、これは最高裁決定が何かこの六法には書いてあるんですけれども、援助によって警察に、援助ということでなくて警察に補充捜査を促すこともできるし、それから援助という規定で補充捜査をしてくれと頼むこともできるということはあるんだけれども、元々捜査の権限がなければ、幾ら援助で捜査してくれと言ってもこれは捜査のしようがないですよね。警察庁、いかがですか。

○政府参考人(栗本英雄君) 先ほども申し上げましたけれども、事件の捜査という観点から警察として今後するということはもちろんないわけでございますが、今までの、いわゆるどの段階までの捜査、調査という大変難しい問題がございますが、これまで警察として行った活動で得たものについて、先ほど申し上げましたように、例えばその一部の資料を提供するとか、そういう形での具体的な家庭裁判所との連携協力という問題はあろうかと思いますが、今、具体的にどのようなものかということについては差し控えたいと思います。

○江田五月君 私どもは報道でこの事件のことを知るほかないんで、ほかに全然資料がないんで、皆さんも恐らくそういろんなことが分かっているわけじゃないだろうと思うんですね。しかし、冒頭申し上げたとおり、反射的に何かぱっとこうするというのが出てくるわけじゃないんで、じっくり腰を落ち着ける、そして事実をしっかりと把握をするということが本当に大切なんだろうと思うんですよ。

 そうすると、こういうときに、もう児相への通告で捜査というものはもう手の出しようがないというんで本当にいいんだろうかなというのをやはり感ずるんですね。もちろん、任意のいろんな調査はいろいろできると思いますよ。やらなきゃならぬと思いますけれども、事案が一体どこまで分かっているのか。突き落としたという表現なんですけれども。

 例えば、法務大臣、ごらんになっていただいておれば大変うれしいんですが、最近、弁護士会が「裁判員」という映画を作ったんです。まだごらんになっていないですか。

○国務大臣(森山眞弓君) 見ました。

○江田五月君 あれは突き落としたんですよね、と言われたんですよ。で、起訴された。介護が必要な義理のお母さんをお嫁さんが、お寺だったかな、の階段から突き落としたということで殺人で起訴されている。しかし、突き落としたんだか、あるいは御近所の人が来て、やあ、おばあさんと言って、ふっと振り向いた拍子に、お年寄りですから、足下がふらついて落ちたんだか分からないという事案で、映画の説明してもしようがないんですけれども、そういうことは世の中ある。よく事実を見てみないと分からない。

 この事件は、裸にしてというんですから、恐らくそこに故意の行為が何かあったということは十分推測できるけれども。そうすると、これは例えば現場の検証をしっかりとやるとかそういうときに、例えば立入りを拒まれたら令状を持って入っていって捜索をしなきゃいかぬとか、いろんなことが出てくる。出てくることは、今すぐ具体的に何がとは言えなくたって、十分あり得る話で、やっぱりそういう、最大限事案を解明するそういう手法があるのに、それが全く使えないというのは何かもどかしいなという感じがいたします。

 刑事責任年齢を十四歳より未満に下げろという、これはまだ分かりません。本当によく議論して考えてみなきゃ分かりません。だけれども、こういう場合であっても、あるいは精神障害などの場合であっても、構成要件該当の行為があって法益侵害が起きているわけですから、それはやっぱり事案を解明して、そして次のことに資するという意味で私は、例えば親告罪で告訴がない状態だって捜査はできますよね、何か捜査はできるという考え方は十分あり得る考え方だと思うんですが、法務大臣、私が言っていることはお分かりですよね。ちょっと感想を聞かせてください。

○国務大臣(森山眞弓君) 真相を解明するということは多くの場合に大変必要なことだと思いますし、そういうことを先生も求めていらっしゃるんだろうと思いますので、そのお気持ちはよく分かります。

○江田五月君 これはもうすぐ今答えを求めても無理なんですが、問題提起をしておきます。事案をしっかりと解明をしなきゃいけない。それをどこまでオープンにするかというのは、またこれ次のこれもまた難しい難しい課題なんですけれども、何よりもやはり事実をしっかり踏まえる、そのためにはやはり最大限この持てる力を振り絞って事案を解明していただきたいと。

 それから、この触法少年の場合に、家庭裁判所へ送られる。観護措置は取れる。そして、鑑別所で十分な鑑別はできる、保護処分はできる。しかし、その保護処分の中の、児童自立支援施設への送致はできるし保護観察もできるけれども、少年院送致だけができない。こういう少年の場合に初等少年院がいいのか医療少年院がいいのか、それも今すぐ答えといったって、まだ何も分かっていないんですから答えの出しようもないんですが、法律上あらかじめもう少年院は駄目なんだと決めてしまっているんですけれども、これもちょっと、やはりその結論はまだ別として、検討すべきテーマかなという気はするんですが、これも私も結論を持たず、悩みながら質問しているんですが、矯正局長、いかがですか。

○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
 少年院法の第二条でこの少年院の種類の規定がございまして、その中の二項で初等少年院の規定がございますが、これは、「心身に著しい故障のない、十四歳以上おおむね十六歳未満の者を収容する。」という規定がございます。これが現行の規定なんですが、実はこの二条は昭和二十三年に施行されたんですが、その施行当初の規定は、「初等少年院は、心身に著しい故障のない、おおむね十四歳以上十六歳未満の者を収容する。」という規定であったわけです。この規定で成立、施行したんですが、そのわずか五か月後に、この「おおむね十四歳以上」の「おおむね」が取れまして、「十四歳以上」というふうに現行の規定に決まったといういきさつがございます。

 それはなぜかということですけれども、これ、当時の記録によりますと、この理由といたしましては、十四歳に満たない少年は、十四歳以上の犯罪少年又は虞犯少年と同一に取り扱うことは適切でなく、もしこれに収容保護を加える必要のあるときはすべてこれを児童福祉法による施設に入れるのが妥当と思われという、また、少年院の運用もその方が一層効果的になるので、少年院法の第二条二項を改めて十四歳以下の少年は少年院に収容しないことにしたんだと、こういう提案理由になっております。こういう経過があるということをまず申し上げさせていただきます。

 当局といたしましては、このような経過もございます。その上で、十四歳未満の少年による犯罪、非行の質的、量的変化、これは大きく変わってきておりますので、そういった変化、それから、十四歳未満の少年を少年院に収容して矯正教育を行うことの効果等、様々なことについて幅広く配慮して慎重に検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○江田五月君 慎重にということはやらないということと同義だと言われたりするんですが、慎重にでもちろん結構なんですが、私も、繰り返すように、結論を持って聞いているわけじゃないんですけれども、今の児童自立支援施設がどういうことができるのか、少年院だとどういうことができるのか、あるいはもっとほかのいい知恵があるのか、これはみんなで知恵を絞ってみなきゃいけないところで、一つの検討の対象だということで、問題を指摘をしておきたいと思います。

 いずれにしても、本当に言葉もない大変悩ましい事件なんですが、恐らくこの事件は、しかし私は、全く特異なケースだと言えないところがあるんじゃないか、それだけに余計に深刻なのではないかと思うんですね。今の我が国の子供たちの成長の過程で子供たちがどんな状況に置かれているのか、その中にどんなに心の中に暗い暗いやみが広がっているのかといったこと、もちろんこの事件、まだ分からないからそう直截にこうだと言うわけにはいかないんですけれども、そういうことについて私どもが問題意識を持たなきゃいけないと。少年事件の傾向が随分最近また変わってきているところもあって、本気でこれはみんなで考えていきたいと思っております。

 矯正局長、もう結構です。

 報道によれば、今年になって少年の殺人は五十二人あったということですが、より正確には、十四歳以上十九歳までの少年で殺人及び殺人未遂で検挙されたのが五十二人。この中、これは殺人が何人で殺人未遂が何人か、それから事件数でいうと殺人が何件で殺人未遂が何件かということは、これはお分かりですかね。

○政府参考人(瀬川勝久君) 今年になって発生しました十四歳以上の少年による殺人事件の件数でございますが、三十件でございます。うち、既遂は十件、未遂は二十件というふうになっております。なお、更に申しますと、少年のみによる事件が二十六件であり、成人との共犯事件は四件というふうになっております。

○江田五月君 五十二という数字を聞いたんですが、これは、じゃ違うのかな。

○政府参考人(瀬川勝久君) 件数についてのお尋ねかと思いましたので、件数を申し上げました。人数につきましては、五十二人ということでございます。

○江田五月君 済みません、失礼しました。
 じゃ、その五十二の人数は、殺人が何人で殺人未遂が何件かというのはお分かりなんですか。

○政府参考人(瀬川勝久君) 申し訳ありません。現在、手元にちょっとその数字がございません。

○江田五月君 十三歳以下の今年になってからの殺人の人数と件数、殺人未遂の人数と件数、これはどうですか。

○政府参考人(瀬川勝久君) 十三歳以下の殺人につきましては、今年に入りましてからは五月までの統計で一件一人ということになっております。

○江田五月君 殺人未遂。

○政府参考人(瀬川勝久君) 失礼しました。
 この一件一名というのは殺人未遂でございます。殺人はございません。

○江田五月君 今回の事件はいわゆる触法少年の事件ですが、十三歳以下で法に触れる行為で補導あるいは保護をされた事件とこの触法少年事件の最近の動向というのは、これはどういうことになっていますか。

○政府参考人(瀬川勝久君) 触法少年による事案でございますが、ちょっと大きな流れで見ますと、刑法犯少年のピークは昭和五十八年でございまして、十九万六千人余りとなっておりました。触法少年につきましてもこの辺がピークでございまして、触法少年は昭和五十六年に六万八千人という数字がございまして、これが最大のものでございます。以後、減少をしてきておりまして、過去十年で見ますと、最近では、平成十年に二万七千人というのが過去十年では最も多い数字となっておりまして、ここ数年は二万人程度で推移をしておるところでございます。

 ちなみに、昨年の触法少年の補導人員は二万四百七十七人ということでございまして、十三年に比べまして四百十人、二%の増ということであります。その中身を見ますと、凶悪犯は百四十四人ということで前年比二十一人の減少ということでございまして、ただ、殺人はそのうち三人ということになっております。

 今年に入りましてからですが、触法少年の補導人員は七千二百六十三人ということで、前年同期に比べまして約七%減少しておりますが、非常に特徴的なのは凶悪犯が九十一人を占めているということで、昨年の同時期に比べまして三十四人、約六〇%増加をしているという、今年に入ってからの特徴が見られるところでございます。

○江田五月君 全体に減少傾向もあるが、しかし凶悪化もしているという、その辺りのことを統計的にもまた個別にもよく分析もしていかなきゃいけないと思います。

 今回の事件は、四歳の子供を裸にしているという一つの特徴があるので、これがどういうことであったかというのはまだ私ども知る由もないんですけれども、十三歳以下、つまり触法の少年の性犯罪、これは強姦罪、強制わいせつ、過去十年でそれぞれ何件ずつあったか、あるいは性犯罪と殺人とが結び付いた触法事件は過去にあったのか、ないのか、あったとすればどういう事件があったか、これは説明できますか。

○政府参考人(瀬川勝久君) 強姦と強制わいせつのそれぞれの数字というのはちょっと持ち合わせてございませんが、過去十年間の統計で、過去十年間を累計してみますと、強姦と強制わいせつで補導された十三歳以下の少年の数でございますが、九百六十六人となっております。うち、既遂は八百九十六人、未遂は七十人というふうになっております。

 それから、性犯罪と殺人が結び付いた触法少年の事案でございますが、統計的に網羅的に把握したこの種数字は持ち合わせていないところでございますが、ただ、私どもに残っている記録を手繰ってみたところでは、承知している限り三件ございまして、年齢は、触法少年の年齢は十三歳、十一歳、七歳ということでございました。昭和四十六年、昭和五十四年、昭和五十五年にそれぞれ一件ずつ発生しているというものが、手元の資料としてはございます。

○江田五月君 三件、四十六年に十三歳、五十四年に十一歳、五十五年に七歳、なかなかショッキングなケースがやっぱりあるということだと思います。

 今回の事件、再発防止の観点からも、加害者のプライバシーその他不必要なことはもちろん除きますが、事件の経緯や手口、動機あるいは他の事件との関連など、情報公開を求める声は強いと思うんですね。

 そこで、これは最高裁としては、改正少年法でどこまで可能か、お尋ねします。

○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 少年事件につきましては非公開が原則でございますが、先ほど委員御指摘のとおりの平成十三年の改正少年法で、一定の場合にはその当事者に対する開示を認めております。
 その運用の件数等も必要ですか。

○江田五月君 いやいや、私が質問されたんで。
 そうじゃなくて、改正少年法でこの事件について情報公開、あるいは公開でなくても被害者への開示、それはどこまで可能なのかという質問をしますとどういうお答えになりますかということです。

○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) この事件につきましては、被害者からの要望があればその記録というものは被害者に対しては開示されることになると思います。

○江田五月君 たしか神戸の事件でしたかね、審判書、審判のその決定を公開しましたよね。これは最高裁がどうと言うとまた別の意味で問題が起きるかもしれませんが、ああいうような、この事件の審判の決定を公開をするというようなことはお考えになるでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 神戸の事件におきましても、その結果、結果だけは開示なされると思いますが、その審判書全体を開示することはしておりません。その要旨が開示されたんだろうと思います。

 こういうような事件で、その要旨が開示されるということはあり得ることだろうと思います。

○江田五月君 やはり、これは社会みんなで考えていかなきゃならぬことで、もちろん単なる興味本位というんではなくて、みんなで考える素材を社会に提供していただくことは必要なことかなと思っております。法務大臣おっしゃるとおり、少年事件としての処理だけでなくて、子供の生育過程の環境であるとか福祉の観点であるとか、いろんなことからこれは光を当ててみなきゃいけないんで、ここはみんなで協力をしなきゃならぬ重い課題だと思っております。

 改正少年法ですが、平成十三年の四月一日施行後二年がたちました。運用の概況がまとまったようなので、最高裁の方でまとまった概況を御報告ください。これは二十条一項の刑事処分年齢の引下げ、二十条二項のいわゆる原則検察官送致、この概況をまず説明してください。

○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 施行日でございます平成十三年四月一日から平成十五年三月三十一日までの二年間に終局決定のあった事件のうち原則検察官送致対象事件は百五十二人でございまして、うち検察官送致となった者が八十九人、保護処分となった者が六十三人でございます。

 その内訳を見ますと、殺人が二十三人中十人、傷害致死は九十二人中五十一人、強盗致死二十二人中十四人、危険運転致死十五人中十四人がそれぞれ検察官送致となっております。

○江田五月君 そのほか、裁定合議のことであるとか検察官関与であるとか、あるいは抗告受理申立てであるとか被害者への配慮であるとか、いろいろ結果はまとまっておるんだろうと思いますが、ちょっと時間の方が気になり出したのでこの点はおいておいて、本来の司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案の方に移ります。

 私たちは、この法案は反対でございます。司法制度改革については、これはもう積極的に推進するという司法制度改革与党であると、こういう立場で協力もし、叱咤激励もし、通してまいりました。審議会の意見書にのっとった法案には賛成が基本でございますが、この法案は反対。具体的には、弁護士法改正案の五条の二の弁護士の資格の特例で、司法試験合格後五年以上国会議員の職にあった者は司法修習を終えることなく弁護士の資格を取得できるという、この規定ですね。

 これは衆議院で修正をされました。今日は修正案の提出者がお見えですので、修正案の趣旨について伺います。

 この政府原案のどこに問題があると考えて修正案をお出しになったのか、修正によってここは問題だというところは解決されるのか、それから、大変聞きにくいんですが、国会議員が立法によって自らに特権を与えるのはお手盛りではないかという批判もお耳に届いておるかと思いますが、その三点、お答えください。

○衆議院議員(漆原良夫君) 政府原案によれば、今回新たに弁護士資格を付与することとなる者のうち、企業法務等の担当者には所定の研修を要件としておりますが、国会議員や特任検事には研修要件となっておりませんでした。しかし、実務的な知識、能力という点に関しては、国会議員や特任検事についても、必ずしも民事、刑事にわたる幅広い分野について弁護士として活動するために必要となる知識、能力を十分に備えているとは限らないと考えられます。そういうことから、より慎重を期して、企業法務等の担当者と同様に研修を課すべきであると考えたものであります。国会議員や特任検事が研修を受けることによって、弁護士として活動するために必要となる実務的な知識、能力が身に付くものと考えております。

 お手盛りではないかという批判、これはもう私どもの耳にも届いております。国会議員については、立法事務の中核として幅広い分野についての高度の専門的知識、能力を必要とする法律事務にかかわっておりまして、その職務は定型的な評価が可能であるという点で弁護士の資格の特例に国会議員を加えること、そのこと自体は合理性があるというふうに考えております。したがって、お手盛りという批判は当たらないのではないかというふうに考えておりますが、更に企業法務担当者と同様に研修を課するという修正を加えることによって、慎重を期すというふうに考えておるものでございます。

○江田五月君 いろんなことを一緒にやってきた漆原先生と余りここで口角泡を飛ばすのも気が重いんですが、漆原先生のお言葉とも思えない、国会議員に優し過ぎる言葉ではないかと思うんですね。

 弁護士資格には司法試験に合格したことプラス修習というのが要るので、修習というのは二年、我々のときは二年だった。今は一年半。一年半の間、それも片手間で修習をやるのではとても修了できない修習です。これは本当に、まあいろんなやり方もあるんでしょうけれども、私などは二年、楽しかったけれども忙しかったですよ、やはり。今もう一年半になって、時々、修習生から、あんな詰め込み修習で病気になる者が続出しているじゃないかなどという、そういう苦情さえ来るような、いやいやそんなことを、弱音を吐くようなことでは駄目だと言って、それでもやっぱりちょっとやり過ぎなんじゃないかなと思うような修習をやっているわけですよね。

 それを、国会議員、五年ですか。国会議員のどこが一体、何か専門的なんだかかんだか、弁護士になれるような、これで何か、皆どう思います。恥ずかしいと思いませんか、同僚の皆さん。これ、お手盛りじゃなくて何ですか、これは一体。本当に、本当に漆原さん、そう思われますか。どこかで心の隅が痛みませんか。

○衆議院議員(漆原良夫君) 厳しいお言葉をちょうだいいたしましたが、五年間という、一般の修習生は、我々のころは二年、今は一年ですか、そういう修習が要るわけなんですが、その修習に代わるものとして実務の、司法試験受かって国会議員になった人は五年間というある意味では実務を担当されてきているわけでございまして、それに匹敵するのかなという考えであります。しかし、特に研修ということも必要だろうということで、実際の民事、刑事、家事にわたった弁護研修をしていただくというふうに修正をさせていただいたわけでございます。

○江田五月君 いや、五年の国会議員の経験というのは、まあそれでおっしゃるような評価ができるのかなという微妙な言い回しで言われたわけですが、しかしそれでも、それだけでは駄目なので研修を加えたと。五年の経験が必要な資質を身に付けさせるので十分だという評価ができると。

 これは法案の提出者の方に伺いますが、だれがそんなことを言い出したんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 御案内のとおり、この原案というんですか、元の議論は司法制度改革審議会の中でも行われておりまして、もちろん企業法務の関係を中心に行われていたわけでございますけれども、この国会議員の問題についてもそこで議論がされております。

 議論のそのまとめの中には「企業法務等」というふうに書かれておりまして、その「等」の中に公務員の場合も、国家公務員の場合もいろいろ入るわけでございますが、これをきちっと検討を続けろという趣旨でございます。私どもの方の検討会を設けましてこの議論を進めてきたわけでございますが、企業法務で考える、そういう考え方はほかのジャンルでも活躍されている方、そういう方にも当然同じ場面があり得るだろうということで、最大限どこまでそういうものが入っていくのかという議論をしたわけでございます。

 ある一部分だけを取り上げて、ある一部分も取り上げないというわけにまいりません。法制上の問題もございます。そういうバランスで議論をしていったら、企業法務、公務員、それから国会議員と、こういうふうに出てきたわけでございます。

○江田五月君 司法制度改革審議会の中で議論をされたと。それはまあ、されたのかもしれませんけれども、「企業法務等」、企業法務が怒るかもしれませんね。逆に、国会議員も怒りますよね。こっちは企業法務とはかなり違う仕事をしていると思って、それが「等」で同等視されたと。企業法務の方は、国会議員みたいなそんな大ざっぱなことではない、自分たちは企業の法務ですから、企業が右へ行くか左へ行くか、傾くかどうかの運命を担って法務をやっているわけですよね。一緒にしてくれちゃ困ると言うかもしれません。

 何で企業法務と国会議員の仕事が「等」で結び付くのか。いや、本当にそう思いますか、これ。「等」でいいんですか。我々の方の仕事は、これは党と。党務はやりますよ、いろいろ。だけれども、それはトウが違うんで。
 ちょっと違うんじゃないですか。

○政府参考人(山崎潮君) そのまとめについて私、全く関与しておりませんので何とも申し上げられませんけれども、文言の問題というよりも、先ほど江田議員の方から研修の問題が指摘されておりました。私も二年の研修は受けておりますけれども、司法試験受かっても、これは座学をやっているだけでございまして、現実に法律の一部の知識を知っているだけでございます。これを実際使えるようにするための、それが研修だろうと思います。

 要は、具体的な事案に即してどういうような解決方法を求めていくのか、その中にはいろいろ、人生観の問題とかいろんな問題が入ってくるわけでございます。そういう訓練をするのが正に、その訓練の端緒をやるのが研修だろうと思います。

 じゃ、その研修は必ずしも研修所へ行かなければできないのかということでございまして、企業法務でも、ある限られた部分かもしれませんけれどもそういうような経験はするわけでございますし、国会議員の先生方は、社会に起こった事象、先ほどから御議論もございますけれども、そういうものについて法律をどうしていくかと、そういうような議論をしているわけでございます。現実に、法律になれば御審議をいただくわけでございまして、正に法律事務に特化した仕事を五年間行われるわけでございます。

 そういう意味では、法制局、衆議院、参議院の法制局の参事という現在認めているものがございますけれども、それと同じような位置付けになると、こういうことでございまして、同じに扱ったということです。

○江田五月君 いや、山崎さん、もうちょっと渋い顔をして答えたらどうですか。ちょっと余りまじめに答え過ぎるんじゃないかという気がしますよ。

 ひどいですよ、本当にね。それは、法制局のやるような仕事を皆やっていると言うんだったら、もう衆参の法制局はなしにしましょう。我々、法制局の仕事できる、そうはいかないでしょう。法制局は法制局の仕事をしているんで、法制局の手助けがなければ僕ら議員立法できない。

 やっぱり違いますよ、それは。国会議員はいろんな仕事をやります。いろんな仕事をやるけれども、別に国会議員の仕事だけが偉いわけじゃないんで、国会議員の仕事をやっていたら人生の機微に触れることまで全部分かるわけじゃない。もしそれでいいというんだったら、じゃ、いいですよ。司法試験受かって五年間、国会議員じゃなくたって、会社でもよろしい、どこでもよろしい、家庭の中でもよろしい、何でもよろしい、フリーターでもよろしい。五年間経験積んであればそれはもう立派な人になっているんだから、五年たったらみんなにもう弁護士資格を与えたらいいじゃないですか。そういうことになりませんか。何か国会議員のお手盛りを皆さんやっているんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 私が申し上げているのは、単に社会の経験を積めばいいと言っているわけではございませんで、それは法律的なものでございますので、例えば会社でも、契約事務あるいは会社の運営に伴ういろいろ、事業計画とか、それからあるいは裁判手続、公務員でも同じでございます、立法事務あるいは裁判手続、こういうものに関与している。国会は、国会議員は国権の最高機関で、法律、様々な法律について御審議をいただくわけです。あるいは、議員立法として提案をいただくわけでございまして、それは同じではないでしょうか。

 それで、別に単なる社会経験を言っているわけではないということでございます。

○江田五月君 それは、国権の最高機関だからといって偉いわけでも何でもないんで、国権の最高機関という役目を与えられているだけの話なんですよ。全く理解ができないんで。これは衆議院の方でも何か枝野さんと山崎さんとでかなりやり取りをしていて、それも拝見しましたけれども、例えば今度、ロースクールということになりますと、これはやっぱり一定のプロセスによる養成ということで、司法試験を受ける前にいろんな経験を積ませて、あとは司法試験受けたら最後のブラッシュアップ、職場へ出ていく研修をやるということですからある程度分からぬわけじゃないんですけれども、これまでの司法試験というのは合格して二年なり一年半なり、そういう研修、そこでやっと実務家として通用するというふうになってきているわけですよね。やっぱりこれはお手盛りだという批判を免れない。

 これは修正案によって、研修を行うことになるわけですが、この研修を行う法務省令で定める法人というのは何を想定をしておられるんですか。これは修正案提出者に聞くんですかね。

○衆議院議員(漆原良夫君) 政府原案においても研修は日本弁護士連合会というふうに考えておるようでございますが、我々、修正案も同じく日本弁護士連合会というふうに考えております。

○江田五月君 なるほどね。つまり、原案にあった企業法務などに携わった皆さんに対して行う修習、研修と国会議員や特任検事に対して行う研修と行う主体は同じだと。

 行う研修の中身はどうなんですか。違うんですか、同じなんですか。

○衆議院議員(漆原良夫君) 基本的にはどんなカリキュラムにするかという問題になりますが、例えば企業法務の場合であれば、ずっと民事の方が中心でやってこられた、そうすると刑事の方が手薄になっていますから、個別的な弁護士事務所に行って仕事する場合にはそっちの方を多くやるのかなと思いますし、あるいは特任検事の場合は、民事の方が今度は薄いわけですから、そういう場合は現場の弁護士事務所では民事の方が重くなるのかなというふうな感じでおります。

 したがって、それは法務省と日弁連の間でしっかり、どのぐらい、だれがどのぐらい何を研修すれば弁護士として一人前になれるかという、こういう観点からカリキュラムを作っていくべきだというふうに考えております。

○江田五月君 時間としては、何か月とか何時間とか、どういう言い方をするのか、どの程度の研修を考えておられるんでしょうか。

○衆議院議員(漆原良夫君) 期間をどうするかという点については結構議論があるところなんですが、私どもの方は、実際どういう研修をすれば弁護士としての必要最低限度の実務能力を取得できるのかという観点で、まず研修内容をきちっと詰めていただくことが先決だろうというふうに考えて、その積み上げの結果が期間になろうというふうな考え方でございます。

○江田五月君 積み上げの結果であると。

 司法書士の皆さんが、これはもうそういう法律実務に通暁しておられる皆さんですが、その皆さんが簡易裁判所で代理人として活動することができるようになる。しかし、研修を行うということになってきているわけです。司法書士の法律実務家としての素養に加えて、簡易裁判所という一定の限度の中での代理権限、そのための修習、研修。これと、よもやフル規格となる弁護士の研修とが同じということはないと思いますよね、時間にして。当然、司法書士の皆さんの研修の少なくとも二倍以上にはなるべきだと思いますが、修正案提出者、いかがですか。

○衆議院議員(漆原良夫君) 研修に要する期間、時間については、民事、刑事、家事といった研修の項目、あるいは講義形式にするか演習形式かといった研修の態様、さらには、一か所に集合するか個別の弁護士事務所で行うかといった研修の場所というふうな点について、法務省始め関係機関において、研修効果なども十分考慮しながら具体的なカリキュラムを作成する過程で決めていただく方がいいだろうというふうに考えておりまして、現時点では何時間というふうな考えを、数字を持っているわけではございません。

 司法書士の簡易裁判所業務についての研修期間との比較については一概には申し上げられませんが、確かに弁護士はフル規格になるわけでございますから、どれだけの時間があれば、どれだけの研修を積めばフル規格に等しい、匹敵する、ふさわしい弁護士としての業務が行えるかということは、先ほど申しましたように、具体的なカリキュラムの詰めの積み上げの結果だというふうに考えております。

 充実した研修を是非ともやっていただきたいというふうに希望しております。

○江田五月君 是非、充実したことになればいいんですが。

 この法案はいろんな内容があって、私どももその中には、この法案反対しますが、しかし大部分は実は、それはパスです、パスですという賛成のところなんです。この弁護士資格のところは、これはやっぱり同じ国会議員として、国会議員のお手盛りを認めるわけにいかないという、ある種の私どものけじめを付けようということですが、それでも、何とかこれだけみんなで頑張れよと、賛成で出発をさせたい要素がたくさんある法案だからというので、衆議院で修正ができないものかと、合意ができないものかという努力をしたんですね。

 衆議院で与野党の修正協議が行われたその経緯がどんなもので、どの程度歩み寄って、最後はどこが一致できなかったのか、修正案提出者としてそれお話しになれる限度で結構ですが、参議院の方の審議の参考のためにお聞かせください。

○衆議院議員(漆原良夫君) 私どもも、民主党の皆さんと一緒に、野党の皆さんと一緒に、新しい制度の出発に当たってはそういう制度として送り出したいなと思いまして、いろんな修正の打ち合わせ、検討をさせていただきました。

 その結果、国会議員や特任検事に弁護士資格を与える、付与するのであれば、その要件として研修を課すべきだという点では合意がほぼできたわけであります。問題なのは、この研修の期間をどうするか、時間数ですね。時間数について、野党の側では時間数を何百時間というふうに明記をするべきであるというふうにお考えだったのに対して、私どもはこれを明記するのは妥当でないと。先ほど申しました、いろんな必要なカリキュラムの組合せ、積み合わせの結果、必要な時間でよろしいのではないか、あらかじめ法案で時間を設定する、しておくということは必要ではないのではないかということになりまして、ここが唯一の相違点でございまして、合意に至らなかったわけでございます。

○江田五月君 私どもの方は、元々国会議員五年やっているというので、もうそれは昔々司法試験パスしていて、いや、はっきり言えば、昔々パスしていて国会議員五年ならまだいいかもしれぬけれども、十年も十五年もやっていれば、もうそんな昔パスしたものなんか全部どっか行っていますからね。それどころじゃない。私なんかちゃんとフル規格弁護士なんですよ、私だって。だけれども、もう二十何年も国会にいたら、今更、裁判所へ提出する訴状を書けと言われたってもう書きようがないですよね。ペーパードライバーもいいところですよね。だから、国会議員を五年以上やった者は弁護士だってもう一遍研修しなきゃ現場へ戻っちゃ困るぐらいの法律を作りたいぐらいな話で、とんでもないお手盛りだというところから我々は出発した。

 そして、それでも、まあ何とかほかにこれだけのものがあるんだから修正で何とかできないかと、ぐうっと。皆さんの方は、いやいや、国会議員はこれだけ五年もこういう仕事をやっていれば、それはすばらしい知識、経験を蓄えられているんですからもう研修なんか要りませんよというところから出発しているから、そもそも出発点が大違いだったから最後のぎりぎりのところでお別れしましょうということになったんだろうと思いますが、私たちはやっぱりこれはおかしいと思う。後に我々の方で検討しますが、この部分、そして特任検事の部分は削除をするという、そういう修正案を提出をしたいと思っておることを申し上げておきます。

 結構です。どうぞ、修正案提出者、もう結構です。
 ちょっと済みません。速記止めてください。ごめんなさい。ちょっと十秒ぐらい、速記を止めてください。

○委員長(魚住裕一郎君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
○委員長(魚住裕一郎君) 速記を起こしてください。

○江田五月君 次に移ります。
 簡易裁判所の管轄の拡大でございますが、上限を九十万から百四十万に引き上げるという趣旨、そしてまた上限を百四十万とした理由、これはどういうことなんですか。説明してください。

○政府参考人(山崎潮君) 従来から、簡易裁判所の事物管轄の引上げに関しましては、例えばある時期に簡易裁判所で行われていた事件、これが経済情勢がいろいろ変わってくるということによりまして、それは地方裁判所で、実質的にはみんな地方裁判所で裁判を行うという形にもなってくるわけでございます。そうなりますと、国民が近い裁判所で裁判のサービスを受けられると、いわゆるアクセスの問題でございますが、これについてやはり不便が生ずるだろうと、こういうような観点から事物管轄の引上げをしてきたわけでございます。

 それは、じゃどういう範囲で行われているかということでございますが、様々な経済指標がございますけれども、大体基本的にはその経済指標の範囲内で上げていくということを行ってきたわけでございます。ただ、これだけではやはり足りないわけでございまして、元々簡易裁判所はどういう裁判所であるかという、その簡易裁判所の性格の問題がございます。簡易な事件を迅速に、その手続も簡易にやりましょう、あるいは法曹資格のない裁判官もやられます、そういうことから、それから定型的な金銭的な事件、そういうものをやるということで、その性格が変わってはならないという命題もございます。

 そういうことをいろいろ勘案いたしますと、その指標の中で大体百四十万、この辺ならば大きく性格が変わらないだろうということで選択をしたということでございます。

○江田五月君 なぜ百三十万じゃなく百四十万か、なぜ百五十万じゃなく百四十万なのかなどと言い出したらなかなか難しいんだろうと思いますが。

 衆議院で附帯決議が付いていまして、「不動産に関する訴えを提起しようとする者が、簡易裁判所の事物管轄の上限引き上げに伴い、訴訟の目的の価額の上限を超えない請求をする場合でも、簡易迅速に事件を解決する簡易裁判所の機能を十分に踏まえ、第一審裁判所を選ぶよう周知すること。」と。これは政府と最高裁と両方に周知せよと、こういう附帯決議をしているわけですが、周知せよと言うといけませんか、周知してくださいねと、そういう附帯決議をしておるわけですが、ちょっと分かりにくい。

 不動産訴訟では、上限を超えない場合でもいろいろ論点が難しいものもあるから地方裁判所を選ぶように周知せよと言っているのか、それとも簡易迅速に事件を解決する簡易裁判所を選ぶように周知せよと言っているのか、これは政府としてはどちらだと理解していますか。

○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘ございました前段でございまして、地方裁判所で行うようにと、こういうことでございます。

○江田五月君 最高裁も同じでよろしいですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 同じでございます。

○江田五月君 是非ひとつそういうことでお願いをいたします。簡裁は、やはり簡裁の機能、簡裁に適する事件というものがございますから。

 それから次に、最高裁に伺います。
 民事調停官それから家事調停官制度、これは当初実施するのは、最高裁では、東京、大阪、名古屋、福岡の大都市のみと言っておられると聞いているんですが、これはそのとおりなんですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) この制度につきましては平成十六年一月からの実施を考えておりますけれども、その際の配属庁は、民事調停につきましては東京、横浜、大阪、京都、名古屋、福岡、札幌、また家事調停につきましては東京及び大阪で実行することを検討しているところでございます。

○江田五月君 なぜ全国に展開しないんですか。準備が整わないというんですか。しかし、それはもう一生懸命準備をしていただければいいことじゃないんですか。なぜ全国に展開をしないのか、理由を聞かせてください。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) この制度は、議員も御承知のとおり、我が国で初めて導入する制度でございますが、目的は二つございます。

 一つは、弁護士任官の推進でございます。この十年間で弁護士任官は残念ながら四十名程度しかおりませんでした。そこで、いろいろな隘路があるわけでありますが、これを非常勤裁判官制度、いわゆる非常勤裁判官制度としてのこの調停官制度を制定していただくことによって一つのきっかけになるのではないかというところが一つであります。

 それからもう一つは、調停事件の審理の充実でありますが、これらが一体どの程度本当にこういうような制度の下で有効に機能しているかというところはきちんと見ていかなければなりません。例えば、調停事件の充実一つをとらまえましても、一週間に一度、裁判所に来られるということでありますけれども、先生も御承知のとおり、裁判官としての御経験からお分かりのように、書記官あるいは調査官と平素の連携を保っていかなければならない。そういう中で、本当にその辺の問題点が表れないで、しかも国民のためになる調停事件の審理の充実につながるのはどういう類型のものなのか、こういうところも冷静に検証していかなければならない。それから、弁護士任官でどの程度本当にこれが効果があるものかということも見ていかなければならないと思います。

 また、特に小規模庁におきましては、あるときは訴訟代理人として現れ、あるときはこういった中立公正の調停官として現れるということになりますので、裁判所のユーザーの方が、国民の方が一体その辺りどんなことになっているんだとかなりの戸惑いを持って迎えられる可能性もありますので、その辺りの国民の反応というものも見てみたい。

 それから、かつ、もうあと一点付け加えさせていただきますれば、弁護士としてのこれまでの経験あるいは知見、そういったものを有効に活用できる事件というのはある程度事件数が多くなければなりませんので、そういったところも見なければならない。弁護士数の多寡というものも見なければならないと。そういうところから、まずは先ほど申し上げた庁で始めるということにしたわけでございます。

○江田五月君 いや、分からぬわけじゃないんです、もちろん。しかし、この制度は、まあちょっと試しにやってみようか、駄目ならやめようというのじゃなくて、やっぱりそれは考えに考えを重ねた上で出てきた制度だと思いますので、これはあれですかね、受ける側の最高裁はそういうことで、どうなるかよく見なきゃと言うんだけれども、出す方の、こういう制度を作った方は、これは司法制度改革本部ですよね。そんな、まず部分的にちょろちょろと始めてみて試験的にとかいう、そういうものとして構想されたんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 制度としてはこういうルートをきちっと作ったということでございますが、それをどのように始めていくか、運用の問題でございます。

 先ほど最高裁判所の方からも御答弁がございましたけれども、いろいろな要素を考えながら、これは徐々にまた多分増やしていかれる、そういう予定だろうというふうに伺っておりますけれども。

○江田五月君 やはり、弁護士任官のきっかけを作るという意味でも、それから調停制度の充実という意味でも私はなかなか面白い試みだと思うんですね。ですから、どうぞ、例えば私の地元の岡山弁護士会、百五十名ぐらいの弁護士で十分対応できるんじゃないかと思うんですが、是非、始めたいという声が上がれば、今日言ったからあしたというわけにはいかないだろうけれども、やはり裁判所としても地元にそういう声があるところはなるべく展開をしていくと、なるべく全国に展開していくように努力していきたいという、そういう意欲を持っていただきたいと思いますが、いかがですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 私は、この関係で日弁連と協議してきている者の一人でございますけれども、所管局としては大いに期待したいと思っております。

 所管局として、局長としての個人的な思いでありますけれども、数年のうちには三けたまで乗せるような是非とも実績を作っていきたいというふうに思っているところでございます。

○江田五月君 その意欲を高く評価をしたいと思います。

 民事調停官、家事調停官に非常勤、二年任期の弁護士を任命すると。この非常勤、要するにパートタイム裁判官というものをつくっていくということの意味、これは私は法曹一元という理念、ずばりそれにのっとっているかどうかは別として、そういう理念からしても大きな意義があることだと思っておりますが、推進本部としては、これはどういう意義をこの制度に認めてスタートをさせようと考えておられるのか、説明してください。

○政府参考人(山崎潮君) この制度、元々趣旨は、先ほど最高裁からも答弁ございましたけれども、弁護士任官を推進していこうという、そのきっかけになるという位置付けと、それからやはり裁判所外の通常の社会における感覚ですね、こういうものを調停の中に取り入れて、いい調停をやっていきたいと、これが二つが目的でございます。そういうことを行うことによって、裁判所がより一層やっぱり国民に身近なものになっていくと、そういう大きな流れも出てくるわけでございまして、そういう意味でこの意義は大変大きいというふうに思っております。

 また、この意見書の、改革審の意見書の中にも、今度、裁判官が逆に他職の経験をするということですね、その感覚を持って裁判をやっていくと、こういう提言されておりまして、今、私ども検討中でございますけれども、やはり両方がいろいろ感覚を持ち合って、いい裁判をやっていくという一つのきっかけになるだろうというふうに思っております。

○江田五月君 先ほど最高裁の方で、ちっちゃな都市だと、あるときは調停官として裁判官の立場に立つ、別のときには当事者の代理人として裁判所に現れる、あるいは弁護人として。世の中で、いや、どうなっているんだろうと思う、そういう混乱が生ずるというお話ありました。

 取りあえずはそういう混乱が生ずるかもしれない。しかし、よくよく考えてみたら、同じ人間が裁いているんだということですよね。だから、あるときは裁判官のいすに座っているけれども、同じ人が、もちろん当然、あるときにはプールで泳いでいたり、あるときにはテニスをやっていたりというのは当たり前の話ですから。それが、あるときには当事者として出てくるということもあってもおかしいことじゃないんだという、そういう裁判官像というものが世間に出てくると、私はそれはそれでいいことだと。裁判官というのは何かいつも官舎群で、もう隣近所が全部裁判官で、奥さん方も全部、自分の夫がその裁判所でどうなっているかというようなことを気にしながら生活しているなんというのは余り良くないと思いますよね。

 裁判所の中にこういうパートタイムの裁判官が現れることによって、裁判所と市民社会とのつながりがずっと良くなる、風通しが良くなる、そういうふうに生かしていく。そんなところもひとつ見ておいていただきたいと思いますが、今、推進本部、山崎さんはそういう趣旨を踏まえてお答えいただいたんだと思いますが、最高裁の方はどうですか。

○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) おっしゃることもよく分かりますし、そういった機能を是非とも果たしていってもらいたいと思いますけれども、先生御承知のように、裁判官としての御経験からお分かりのように、日常生活ずっと官舎の中におるなんということもございません。むしろ、そういったところは裁判所は意外と自由であるということで、宣伝の媒体になっていただけるかなというふうに非常勤の裁判官の方に期待したいという思いも持っております。

○江田五月君 しかし、結構不自由なところもあるんですね。それはまた別の機会に。

 特任検事を五年経験した者に弁護士資格、これはどういう意味なんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 特任検事というのは、法曹資格を持った検事と全く同じでございます、仕事をやる以上は。

 そこのステップが違うわけでございますが、例えば、例えばというか、失礼しました、副検事を三年以上経験をして政令で定める一定の試験に受かり、かつ、受かりますとそこでいわゆる正式な検事になるわけでございますが、なってから五年間の経験を経た者、これについて法曹資格を付与するということを考えているわけでございまして、これにつきましては、そのやる仕事は法曹資格を持った検事と全く同じでございまして、弁護士と対等に法廷でもやり合っているわけでございますし、経済事犯等、民事系の事件についてもやっております。

 それから、試験の科目も憲法、民法、商法、刑法、刑事訴訟法、そういうような基本的な科目を全部含んでいるものでございます。基本的な素養はそこでできており、かつ実務もやっていると、こういうことから法曹資格を与えていこうと、こういう発想でございます。

○江田五月君 司法試験、先ほどの国会議員の場合でも、あるいは企業法務の場合でも地方議員の場合でも司法試験を通っていると、これが共通のベースになっていると思うんですが、この特任検事だけは司法試験に合格する必要がないと。どうもこれは、司法試験をそんなに大したものだと思うなという、そういう趣旨かもしれませんけれども、ちょっとやっぱりすとんと落ちないですよね。

 検事の仕事をやっていると、それは検事の仕事はやっているけれども、あくまで公訴官あるいは捜査官としての仕事をやっているわけで、弁護士の経験がそれで積めるというのは、全然、弁護士の仕事の意味が分かっていないんじゃないかと思いますが。

 ということで言うと、例の一定範囲の大学等の法律学の教授、助教授、こうした者の弁護士資格、これもどうも、司法試験通っていないのはこのままに置いておくんですか、これ、どうなんですか。

○政府参考人(山崎潮君) 今回の立案に関しまして様々な御議論がございまして、大学の教授の点についてもいろいろ御意見がございました。意見としては、そもそも司法試験に受かっていないじゃないかと、実務もやっていないじゃないかと、これでいいのかと、こういう御意見でございました。

 私どもは、今回はこの御承認いただく範囲ということで、もう一度この考え方をベースにして全体を見直していきたいというふうに考えております。

○江田五月君 全体を見直すという意味でいえば、私は、やはり裁判所で国民の期待をしっかり受けて、そして個別の国民の委任を受けて、裁判所という中で基本的人権、社会正義の実現という大きな責務を負いながら行動していくと。刑事の事件も間違いなく、ちゃんと手続の権利をきっちり行使すると。あるいは、民事でいえば、しっかりとやっぱり事実に立脚した主張もし、同時に証拠調べもちゃんとやると、そういう能力が基本的にあるということは、やはり一番の基礎だと。

 それに加えて、さらに、そういう人間が今後、法廷の中だけではなくて、企業の中でも、あるいは政治の中でも立法の世界でもいろんなところへ出ていって仕事をしていく。そういう意味で、弁護士の資格というものが単に法廷の中だけでなくて広く広がっていく。そういう、広がっていって、新しい社会像の中で法律専門家としての弁護士がいろいろ活動する、そんな社会を想定しながら、構想しながら弁護士資格というのをきっちり見直していくというのは、それは必要だと思うんですよ。

 そういうことを司法制度改革審議会の意見書は書いていて、さっきの「等」というのもそういう意味で書いてあるわけで、やれ、「等」は国会議員はどうだ、何とかはどうだ、何とかはどうだと、そんな議論より、もっと根本のところの、弁護士というのは何だということをやっぱりしっかり議論して、そこから考えていただきたい。今の、もう一度、弁護士資格というものをトータルに見直してみたいと、いきたいということは、そういう意味で是非やっていただきたいと思います。

 外国法事務弁護士、これが今回手を入れることになるわけですが、それからまた日弁連の綱紀委員会の関係とか、あるいは弁護士の報酬の関係とか、こういうところにも手が入っていくわけですが、これらについてもいろいろ伺いたいところもございますが、ちょうど時間となりましたので、私の質問を終わります。


2003/07/10

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