2004/03/23

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159 参院・法務委員会

 ・ 弁護士法の一部を改正する法律案(閣法第15号)

10時20分過ぎから40分間、弁護士法改正案につき質問しました。一定の大学の法律学の教授らに弁護士資格を与える現行法を見直し、司法試験合格者に限り、5年の教授経験と研修を条件として、弁護士資格を与えることにするもので、細部にわたる質問をし、最後に、法務大臣の裁量による在留特別許可制度の運用についても、質しました。


○江田五月君 今日は、弁護士法の一部改正案についての質疑を行います。

 昨年の通常国会で司法制度改革のための裁判所法等の一部改正案によって弁護士法が改正をされ、これによって弁護士になる資格が整備をされました。

 弁護士は、大原則は、これは司法研修所での修習生の修習を終了した者、つまり法曹資格を持っている者ということでございますが、そのほかに特例としていろんな弁護士資格取得の道筋があると。これを整備をしましたが、一部、大学の教授、助教授というものが残っていたわけで、これについての改正が残っていたわけで、昨年の附帯決議においてもその点を整備をするようにということが注文付けられておりましたが、今回はその部分についての整備と。さらに、経過措置、あるいは既にそういう特例によって弁護士になる資格を持っている人たちに対する手当てと、こうしたこともなされまして、これで弁護士資格に関する法整備というのはもう終了したと、こう考えてよろしいですか。

○政府参考人(山崎潮君) 現行の弁護士法で定めております弁護士資格の特例制度の見直しについては、今回が法改正の仕上げと考えております。

○江田五月君 そのことをまず確認をしておきます。

 さて、そこで、この今の大学の教官という特例、これは一体なぜ今まであったんですかね。どういう理由かはお分かりでしょうか。

○政府参考人(山崎潮君) 元々は、明治時代から帝国大学の法科の教授に対して弁護士資格を付与していたという制度がございました。もっと前では、国立大学ですか、旧帝国大学の法学部を卒業していれば弁護士資格がもらえる制度もございました。これは、やはり法曹人口が極めて少なかったという時代に設けられたものというふうに理解しております。その後、帝国大学卒業、法学部卒業者につきましては制度が廃止されましたけれども、その先生につきましてはそのまま残ったわけでございます。

 戦後、昭和二十四年の現在の弁護士法の改正のときにこれが拡充されまして、帝国大学の先生と同等の学識が認められるというふうに考えられます国公立及び私立大学の先生にもそれを拡充したと、こういうことでございます。

○江田五月君 私も、弁護修習のときの教官は実務修習の弁護士さん、帝国大学の卒業生で弁護士資格を取ったという方でございまして、古い時代にはいろんな資格があったなというようなことを痛感するんですが。つまり、そういう国公私立大学の一定の教授スタッフについては沿革的な理由で弁護士資格があったと。何かそこに特別、弁護士資格を与える、どういいますか、論理的な根拠というものがあったんでしょうか、なかったんでしょうか。

○政府参考人(山崎潮君) これにつきましては理由もあったというふうに理解されます。すなわち、これら先ほど申し上げました学者等につきましては、その学識、見識等において法律専門家としてふさわしく、相当な範囲について実務家として必要とされる知識、必要とされる程度の知識を有すると、こういう理由によるものというふうに理解をしております。

○江田五月君 なるほどね。法律専門家としての知識、学識を持っていると判断されると、すなわち、そういう一定範囲の大学の法律学の講師という者が法律専門家を養成するまあ根幹の制度になっていたとみなされていたわけですね。

 しかし、今回の司法制度改革によって、法律専門家というものは法科大学院というのが主たるコースになってきた。法学部の人材養成というのは法律専門家というコースとはちょっと違うものになってきたと。まあ、そちらの大学の法学部というのがこれからどうなっていくのかというのは、これは大問題で、そのことはそのことで重要だと思いますが、それと別に、法律専門家を養う養成の仕方というものが大きく変わってきたので、大学で法律学を教えているということが法曹資格を有する論理的根拠を持たなくなってきたと、これが今回のこの改正の理由ではないかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(山崎潮君) 御指摘のとおりでございまして、従来の点による選抜、いわゆる司法試験による選抜のみという体制から、やはり法科大学院を中核といたしまして、司法試験、それから司法修習、これをプロセスとして一体としてその法律家を育てていこうと、こういう政策を取ったわけでございまして、そういう政策、考え方からいきますと、この大学の教授につきましては、従来の考え方とやはり異質なものになってくるんではないかということから廃止を検討しろということで、昨年附帯決議もいただきまして、今回提出をしたと、こういうことになるわけでございます。

○江田五月君 というわけで、今回は非常に小さな、言ってみれば重箱の隅のような場面ではございますが、大きく司法制度を改革する、法曹養成の制度も大きく変える、それと軌を一にするものであると、こういうことで今回、司法制度改革推進本部からこの法案が提出されているということだと理解をしております。

 しかし、既にその法律学の教授等を長年勤めていることによって一定のプロセスを経さえすれば弁護士になることができる、そういう期待権を持っておる方々も大勢おられるわけで、その皆さんについてはこれからもその道は残しておくということですが、どのくらい今そういう有資格者というのはおられるんですかね。

○政府参考人(山崎潮君) これは現在登録している、弁護士登録している方は今年の三月一日現在で二百五十八名ということでございますけれども、先生方で潜在的にどのぐらい予備軍がおられるかというのはちょっとなかなか難しいのでございますが、文部科学省の方の平成十四年度の学校基本調査報告でございますか、これによりますと、法学部の教授、助教授の数が三千七十八名とされているわけでございますが、これがすべて該当するかどうかというのはまた違う問題でございますので、この中からの何割か、かなりの数は該当してくるのではないかというふうに考えております。

○江田五月君 今回の措置によって、これからは大学の先生の場合も司法試験の合格ということがありますよね。そして、経験要件、研修要件、さらに認定要件、法務大臣による認定、そして弁護士会による受付といいますか、ということになると。これがもう経験要件だけで弁護士会の登録によって弁護士になる部分がまだ三千人前後その資格を持っている人が残っているということになりますので、この弁護士会による登録ですね、これは制度がこれだけ変わってきますと、従来よりは多少チェックをきっちりしたことをやるということになるべきではないかという意見もありそうな気がするんですが、その辺りいかがですかね、ちょっと質問通告はしていないと思いますが。

○政府参考人(寺田逸郎君) 弁護士会の登録でございますが、これはおっしゃるとおり、従前は経験要件ということを主として見ていたわけでございます。

 今後は、しかし、どちらかといいますと、それは既に研修を受ける段階で一定の判断がされるということになりますので、この新しい制度の下におきましては、登録におけるややこしい問題というのは若干は緩和されるのではなかろうかというふうには思っております。

○江田五月君 いや、そうじゃなくて、そうじゃなくて、その新しい制度でこの試験に合格して研修、経験要件、研修要件、法務大臣の認定要件をクリアして登録するのじゃない、今まで既に資格を持っていてすぐ登録で弁護士ができる人が残るわけです。その皆さんに対する弁護士会のチェックというものも、そうしたこれから新しく出てくる人たちはこれだけの審査が要るんだということを踏まえて、多少今までとは違ったチェックというものが、スクリーニングが厳しくなるのかなと、そういう質問なんですが。

○政府参考人(寺田逸郎君) その点は、これはもう事実の問題としてはともかく、理論上は全く同じ認定の仕方になろうかというふうに理解しております。

○江田五月君 日弁連のペーパーがございまして、その中には改正施行、改正法施行後も従前と同様の手続で、今の皆さんについてはね、審査が行われることになるが、現行五条三号が廃止されることにかんがみ、資格審査の在り方についても今後検討を要するところであると、日弁連の方ではそういう覚悟でおられるようなので、その辺りはひとつ十分な意思疎通をお願いをしておきたいと思います。

 さて、こういう特例によって弁護士資格が与えられる。これは法曹資格ではなく、したがって判事補とか判事とか検事への任命資格というものは、これはないんですよね。確認です。

○政府参考人(山崎潮君) その点は別問題でございますので、御指摘のとおりでございます。

○江田五月君 ところが、一方で裁判所法では、一定範囲の大学の法律学の教授、助教授に十年以上あった者、これは司法試験合格とか研修とかということなく判事及び高裁長官任命資格は与えている。検察庁法では一定範囲の大学の法律学の教授、助教授に三年以上あった者については検事任官資格を与えている。これは一体どうしてなんですかね。これも何かの関係で残ってしまったんですかね。

○政府参考人(山崎潮君) 御指摘のとおり、裁判官の、裁判官というか判事ですね、判事の任命資格につきましては、大学の先生十年以上、それから検察官の場合には三年以上ということになっておりますけれども、これはやっぱり判事、検事の給源として多様な法律専門家を確保しようと、こういう趣旨でございまして、そういう趣旨からこれを残しているということになります。

○江田五月君 弁護士の給源の方は絞って、どうも判事、検事だけは残る。しかも判事は残るけれども判事補はなれないんですよね。何のことだろうかなと、ちょっとよく分からないですね。よく研究をしてください。

 そこで、これは判事とか検事とかはそういう資格要件のほかに任命行為というのがあるから、任命のところでちゃんとチェックできるので大丈夫なんですというような説明は受けたんですけれども、まあ次へ行きましょう。

 司法制度改革審議会の意見書では、この法科大学院の教官、これは多様な給源から採用することが望ましいということを書いてあるんですね。同時に、法科大学院の教官は法曹資格を持っている者が望ましいということも書いてある。この二つは、法科大学院による法曹養成というのが制度が成熟すれば、それは多様な給源から出てきた者が法曹資格を持つ、そしてこれが教官もちゃんと占めていくということで完成するんですが、そこへ行くまでの間、つまり立ち上げの段階で多様な給源から採用する、そうすると必然的にこれは法曹資格のない教官ができる、その法曹資格のない教官に法曹資格を与えることが望ましいということになれば、その二つの条件を満たすには、少なくとも立ち上げのときの非法曹教官は一定の期間法科大学院で教官経験を持つことによって弁護士資格を付与する道を残すべきである。つまり、大学の法律学というのは、これは法曹専門家の養成のプロセスのわき役になっているけれども、主役の方で、一定期間教官をやっていれば、それは今まで法律学でずっと五年やっていれば弁護士になれたと同じように弁護士資格を与えてもいいんじゃないかという、そういう説があるんですが、いかがですか。

○政府参考人(山崎潮君) 確かに、今委員がおっしゃられたような御意見があるということは承知はしております。

 ただ、この法科大学院の役割でございますけれども、法科大学院はこの中で理論的な教育と実務的な教育、これを両方やるということでございまして、そこを一体として教えていくというところに特徴があるわけでございます。基本的には相当実務経験の高い、実務能力を有する教員が多い方がいいわけでございますが、ただやっぱり理論教育も必要であるということでございます。

 この法科大学院の実務家の教員のいわゆる専任教員の割合でございますけれども、これがおおむね二割以上とされているわけでございまして、その他のいわゆる研究者教員によるそれぞれの専攻分野における法理論的な教育も必要であると、こういう構成になっております。

 したがいまして、法科大学院の教員のすべてが弁護士資格を有している必要はなくて、今回の改正によって法科大学院の教育に支障があるというふうには考えておりません。

○江田五月君 どうも今の説明はよく分からないんですけれども、なるべくそういう資格にいろんな複雑なバイパスを残すのはやめようということであろうと思うので、その点自体は結構だと思いますけれども、しかし、今の説明は何だかよく、すとんと胸に落ちません。

 次へ行きます。
 改正案での所定の研修、これは一体どの程度のことを考えておられますか、御説明ください。

○政府参考人(寺田逸郎君) 既に昨年の法改正によりましてこの研修が行われることが決定をしておりますので、その準備を現在いたしているところでございます。

 研修を行う機関としては、これは日弁連を既に指定してございまして、今回の改正法が仮に成立いたしましても日弁連がそのまま研修の主体として維持されるだろうというふうに見込んでおります。

 内容でございますが、現在そういう準備段階でございますので、日弁連といろいろとお話合いをさせていただき、また日弁連の方でも御準備をいただいているところでございますが、基本的には全員が集まりまして集合研修と申しましょうか理論的な研修を行う。これは、当然のことながら、準備書面というものはどういうものでどういうふうに書くかというような書類の書き方もございますし、それから、いわゆる要件事実、民事裁判における要件事実のような理論的なものもございますが、そういうところがまずございます。

 しかし、実際にやはり弁護士実務を経験していただくというのも非常に大事ですので、それぞれ個別に弁護士事務所に配属をしていただきまして、そこでの実際の弁護士の方に付いた研修も行っていただく。トータルといたしましては約百九十時間程度を予定いたしておりまして、四分の三が個別の研修と、こういうプログラムで現在検討をしているところでございます。

○江田五月君 最初の一週間の集合研修で準備書面とは何であるか、要件事実とは何であるか、一週間でやるというのはなかなか大変だろうと思いますが、まあ頑張ってください。

 この研修は、これは今回の大学の教授、助教授に対するものだけではなくて、すべての、企業法務もあります、国会議員もあります、いろんなところから来る人に対する研修なんですが、様々な過去の経験があるわけで、そうすると、研修も様々なカリキュラム、様々なコースで行われなきゃならぬのじゃないかという気も一方でする。しかし、そんなに細かく細かく分けてしまうと、それは、制度設計はとてもできないという気もするんですが、そこはどういうふうにお考えなんですか。

○政府参考人(寺田逸郎君) おっしゃるとおり、従前の司法修習と比較いたしますと、多様なバックグラウンドをお持ちの方ということになるわけでございます。

 現在、先ほど申し上げましたようにプログラムとしては検討中でございますが、基本的な骨格としては、その方が、例えば行政官であった方、あるいは企業法務に従事されていた方、あるいは国会議員、今度新たに大学教授等も含まれるわけでございますが、そういう方々による差は設けないということで準備をいたしております。

 ただ、先ほど申しました残りの四分の三の実務研修の中において個別の弁護士事務所に配属されるわけでございますけれども、どういう弁護士さんを選べばこの方にふさわしいか、あるいは弁護士さんと付いて実際に行われる実務のうち、どういうところに比重を掛ければこの方のいろんなバックグラウンドを足して実際の弁護士の活動の準備ができるかどうか、そういう考慮は当然のことながらいたす、こういう考え方でおります。

○江田五月君 三月八日の法務省令で指定法人は日弁連と決めたということで、これはよろしいですよね。

 さて、そこで、この研修とそれから司法研修所による修習と、これはどのくらい違うものかということなんですが、機関の違いは当然ありますけれども、どういう違いがあるんですかね、機関の違い以外に。

○政府参考人(寺田逸郎君) まず基本的な性格といたしまして、司法修習はそれを必須要件として、これまで学理的な基礎のある方、能力のある方を実務に適合させようということで行われるものでございます。実際には例外もございますけれども、しかし、大体はバックグラウンドも学生の方々ですので、行われる内容も当然のことながら相当画一的な内容になっております。

 地位の面で申し上げますと、この司法修習生は国の方から公務員ではございませんけれども採用されると、これは実際には最高裁に採用されると、こういう形を取っておりまして、その立場も、修習に当たっては知り得た秘密を漏らしてはならないということ、あるいは品位を辱めるということなどがありますと最高裁によって罷免がされるというような立場に置かれておられます。身分関係においては、したがいまして、公務員に準じた扱いでございますので、他方で、修習期間中には国から一定の給与を受けると、こういう立場にございます。

 これに対しまして、研修の受講生においては全く地位という形で法律上の規定があるわけではございません。事実上研修を受けるという立場にあるわけでございます。したがいまして、法的な身分というものを特に決めてあるわけではありませんし、先ほど申しました守秘義務でありますとか、あるいは何らかの法的な制裁を国によって受けるというようなことは予定されていないわけでございます。

○江田五月君 司法修習生はもちろん一般の公務員ではありません。しかし、たしか共済の短期、長期のいろんな掛金も取られたりしていたような、そんな気がしますけれどもね。

 いずれにしても、そこは言葉の問題かもしれませんが、一定の立場というものがあって、そして、例えば、民事、刑事の修習をするときには生の記録に触れることができるわけですね。あるいは、裁判所では裁判官と同じひな壇に並ぶようなことさえ、みんながみんなではないかもしれませんが、ある。あるいは、当事者のところへ修習するときには検察官の横に立って法廷で存在を示す。代理人のときにもその代理人の席に座って実際に代理人になったつもりでいろんな実感をするというようなところまでやるわけで、検察修習は、これは意見、議論はありますが、私なんかは平気で取調べの修習もやっておりましたけれども、取調べまでやる。調書は、それは確かに修習生が作った調書に証拠能力を与えるというわけにはいかないでしょうから、そこまではないでしょうが、接見にも一緒に行って接見の様子を自分で体感すると、そういうことまでやる。

 しかし、この受講生は、これはどうなるんですか。例えば、記録について弁護士が持っている閲覧権以上のものがあるのかとか、そういうことはどうなりますか。

○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほど申しました立場上の違いがございますので、この研修を受ける方については、先ほど申しました秘密についての守秘義務ですね、そういったことがないことの反面、裁判所の合議の中に参加する、加わって傍聴すると、あるいは弁護士会に委託して行うという研修においても、接見でありますとかあるいは和解期日に直接立ち会うということはできないことでございます。

 ただし、先ほどおっしゃった生の記録でございますが、これは特別な措置はいたしておりませんけれども、その記録にどれだけ接することができるかということは弁護士会と現在協議中でございまして、できるだけ実務のエッセンスのようなものには近づいていただきたいというふうには考えております。

○江田五月君 やはりあくまでこの研修というのは、弁護士事務所で弁護士さんがやっていることを傍らで見ながらなるべく、しかし傍らといっても中まで入れさせていただくという形のものだろうと思います。

 なぜそんな違いがあるかというと、やはり司法研修所の修習というのは、これは法曹資格というものを得させるために、言ってみればそういう社会的な要請で公的な制度として研修というものがあると。これは、したがってまだ法曹資格まで持ってはいないけれども、そういう資格を取らせるために、取らせるということが社会的な要請であるからいろんなそういう便宜を図りながら育てているということだと思うんですね。

 そこに今の司法修習生の給費制と、つまり給料を払って養成をするという根拠があって、一方でこの弁護士会が行う弁護士資格のための研修というものは、そういう公的な面がもうないわけじゃもちろんありませんが、しかしやっぱりそういう資格を得ようとする者がその利益のために受ける研修だと、そこに大きな違いがあるので、片や司法研修所の修習生の場合は給費制になって、片やこの研修の場合には聞くところによりますと受講生から受講料を取ることが検討されているということのようですが、そこはいかがですか。

○政府参考人(寺田逸郎君) 受講料を取るということで検討をいたしております。

○江田五月君 どのくらい考えておられるんですか。

○政府参考人(寺田逸郎君) まだ現在検討中で、失礼、まだ現在検討中でございますので確たることは申し上げられませんけれども、それほど、何といいますか、多額でこの研修を受けるのに困難が生ずるというような額は考えておりません。

○江田五月君 なるべく安い方がいいかとは思いますけれども、つまり、つまりこの受講生からはお金を取るんだから、だから司法研修所の修習生からも金を取ろうとか、あるいは司法研修所の修習生には、これはもう給費制にしないとかという、だからこうというその連関、関連性はありませんねと、そこのところを確認をしておきたいと思います。

○政府参考人(寺田逸郎君) これは先ほど委員の方からも御指摘ありましたように、司法修習生の場合は国で養成をする必要があるということでそういう立場に置き、そういう処遇もいたしているわけでございます。今回の制度は多様なバックグラウンドをお持ちの方に弁護士として御活躍いただく余地があるだろうということで検討されたもので、今度の措置が取られるから給費制の問題の議論にどういう影響を与えるかということと直接の関連はないものというふうに私は理解いたしております。

○江田五月君 間違っても、この今度の受講生から金取ることを口実に修習生の方の待遇に何かの変更を加えるような、これを口実に加えるようなことは考えていただかないようにお願いをしておきます。

 研修の内容について、これは日弁連の方でおやりいただくということなので是非お伝えをいただきたいと思うんですが、法曹は、これは言うまでもなく基本的人権に一番かかわる仕事をするわけですね。ところが、その法曹の人権感覚というのがどうも疑われる事例がいろいろと出てきているわけで、裁判官についてさえそうした事例があったということもあるので、是非この人権教育、人権関係の研修はしっかりと、わずか一か月少々という間ではあっても、やっていただくように、これはまずそういう人権関係の研修はしっかりやっていくべきものであるという認識があるかどうか、法務大臣。

○国務大臣(野沢太三君) 人権を守るということは、司法に携わる関係者が最も基本とすべき資質であり前提であると私は考えております。先生も既に長年この御経験を積んでおられますが、日本の憲法もその基本的人権を守るということについては大きな柱ということになっておりますので、この点は、今後の教育制度がどうなりましょうとも、一番基本の問題として我々は取り組むべき課題と思っております。

 特に弁護士さんは、この司法制度の一翼の中で国民の人権を擁護しまして社会正義を実現するという重大な仕事、使命を持っておる専門家でございますから、人権に対する深い理解とこれを尊重する職業倫理を身に付けている必要があると考えております。

 弁護士となる資格の特例の対象者といたしまして、今事務局からも大変るると御説明ございましたが、司法試験等の合格後に法律に関する実務経験を通じて既に優れた人権感覚を身に付けた方も多いと考えております。更に慎重を期するため、現在その内容を検討中でございますけれども、今後の研修では、集合研修において弁護士倫理に関する講義が行われる見込みでございますし、また実務研修におきましても、この特例の事件の処理を通して、弁護士の使命の一つである基本的人権の擁護の実践について様々な形で学んでいただけるものと見込んでおります。

○江田五月君 法務大臣から御答弁をいただきましたので、是非その旨は徹底をさせていただきたいと思います。

 せっかく法務大臣にお立ちをいただきましたので、恐縮ですが、ちょっとこの弁護士法とは関係ないんですが、一つお伺いをしておきます。

 昨年十一月二十六日の予算委員会で、私は法務大臣に、在日ビルマ人、キン・マウン・ラット氏御一家の強制送還の案件について、法務大臣の裁量による在留特別許可を認めるようにお願いをしました。小泉首相は強制送還やむを得ないと。あるいは法務大臣も、私の裁量で左右してはいけない案件だという答弁でございましたが、しかしその後、三月五日に法務大臣は家族全員にこれお認めくださいました。大変すばらしい裁量権の行使だと思っております。

 そこで、そのほかに、例えば今、トルコ国籍のクルド人タスクン君とフィリピン人のベルトランさんという夫婦の間に三歳の子供がいるという、こういう家族についての案件とかいろいろあるんですが、この種の、難民に当たるかどうかは別として、ある種の難民的な配慮も必要な事例というのがいろいろある。これは、やはり法務大臣の在留特別許可で裁量で行うということであっても、やはりその裁量に一定のルールが見えてきた方が法的安定性も、あるいは当事者からの予見可能性も高まっていって一定のこの秩序ができてくるんじゃないかと思うんですが、そういう事例の積み重ねでそうしたルールを作っていくには、やはりその事例が公表されていかなきゃならない。そうやって一定のルールを作っていこうと、そんなことが必要かと思うんですが。

 このキン・マウン・ラット氏の案件の細かな経過は結構ですけれども、そういうものを通じて、法務大臣、今こういう案件にどういう態度で臨もうとしておられるか、これをお答えください。

○国務大臣(野沢太三君) キン・マウン・ラット氏一家の問題につきましては、委員大変御関心をお寄せいただきまして、私もこの件に関しましては私自身の取組としてしっかりやってきたところでございます。

 それで、御指摘のように、この御家族をどう今後扱うかということと今後どうするかと、二つ大きな課題があろうかと思いますが、このキン・マウン・ラットさんの対応につきましては、我が国の司法判断では既に国の措置としての帰国という、お帰しするという方向は認められてはおりましたものの、一家をばらばらにしたくない、御一家一緒に暮らせるということを私は大きな一つの条件として考えたわけでございます。そして、できれば一家がそろってどちらか、お父さんかお母さんの母国に帰れればいいかなと思いまして、外交ルート等も通してその道も探ってみたわけではございますが、なかなかその保証が得られない。ということになりますと、やはり一家そろって暮らすという人道上の配慮、これが一つの考え方として大事なルールではないかと思うわけでございます。

 一方、我が国のいわゆる不法滞在半減という大きな方針はこれまた守っていかなければなりませんし、また特例措置が重なることによって不法滞在が増加するということもこれまたあってはならない。その中で熟慮を重ねまして、これから、私の判断といたしましては、人道上の配慮、それから個別、キン・マウン・ラットさんの個人的な家庭の事情その他すべて考えまして例外的な在留許可を認めたということでございます。

 あくまで、その意味で、個別具体的な御家族の事情、それから日本の大きな方針、そしてまたそのときの社会情勢、それらを積み重ねた形で慎重に判断を重ねるべき課題と考えておるわけでございます。私といたしましては、そういった様々なルールと個別の事情を十分勘案して今回の決定に立ち至ったものでございますが、また別な御家族の問題等もございますので、これについては十分調査を重ねまして慎重に判断したいと考えております。

○江田五月君 家族がそろって住む、特に子の福祉を優先する、これはもう国際社会の共通の大原則ですので、是非そこのところはよろしくお願いします。

 今日は裁判員制度についてもちょっと導入部分の質問したかったんですが、時間が参りましたので終わります。


2004/03/23

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