2004/04/08-1

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159 参院・法務委員会

 ・ 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(閣法第61号) 
 ・ 難民等の保護に関する法律案(参第14号) 


平成十六年四月八日(木曜日)

○千葉景子君 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
 昨日、本会議におきましても、今回の入管難民法そして江田五月議員外提案の難民保護法等につきまして質問をさせていただきましたが、少し今日はそれを具体的にお聞きをしてまいりたいというふうに思っております。

 その前に、先ほどから岩井先生が私の方を向いて人権問題を語られますので、私が答弁に立たなきゃいけないかなと思ったりいたしましたが、そういう立場にございませんので、それはまた個別御議論させていただきたいというふうに思いますが、その中で、やはり歴史を踏まえなければいけないというお話がございました。私もそこはよく分かるところでもございます。その歴史を踏まえるということで、ちょっとこれは質問ではございません、多分いろんな部分で指摘がなされてくるものだろうというふうに思いますので、ちょっと関心を持たせていただいているという点だけ述べておきたいというふうに思います。

 それは、昨日、福岡地裁で小泉総理の靖国参拝問題について違憲であるという判断が出されました。裁判自体としては、損害賠償請求訴訟でございますので、それについては国が勝訴をしたというような形になりますが、そんな判断があり、改めてこの問題の大きさを感じているところでもございます。

 これはまたいろいろな機会に御議論になろうかというふうに思いますので、ちょっと冒頭感想だけ述べさせていただいた次第でございます。

 さて、今、ちょうど四月に入りまして、様々、学校への入学あるいは就職等の時期でございます。そういう時期でございますので、ちょっと冒頭、それにかかわって質問させていただきたいというふうに思います。

 昨日の本会議の場でもちょっと指摘をさせていただいてまいりましたけれども、政府の方では、昨年来、留学生、就学生の問題、そして大変極めて問題のある日本語学校等々の問題があり、特定の国からの学生の査証審査を大変厳格にしたという経過がございます。その結果、確かに問題のある部分もあるのかもしれませんけれども、たくさんの、日本で勉学をしたい、そういう皆さんの査証の発給が大変遅れている。本当はこの四月から勉強したいという人もたくさんおられるわけですけれども、なかなか新学期が始まっても査証が下りない、で、学校に行かれないと、こういう状態が出ているというふうにも受け止めさせていただいております。既に学費とか入学金なども納めているというケースもあるようでございます。

 そういう意味で、問題点をやっぱり厳格にするということは、それは私も否定するものではございませんけれども、本当にまじめに勉学をしようと、日本でいろんなものを学ぼうという、そういう皆さんがそのチャンスを遅らせられているということはやはり問題なのではないかというふうに思われます。

 そこで、今厳格な審査をしているということですけれども、それによりまして査証の審査、どんな実情になっているでしょうか。どのくらいの例えば数で、どのぐらいの期間が掛かっているのか、そして今、たまっているといいましょうか、それが一体どんな状態になっているのか、ちょっと実情を御説明いただけませんでしょうか。

○政府参考人(増田暢也君) 最初に一つお断りをしておきますけれども、今お尋ねの留学生、就学生について、入学希望者に対する審査は、法務省で行っているのは在留資格認定証明書交付申請を受けたことに対して認定証明書を交付するかどうかの審査でございまして、ただいまの御質問に出た査証審査となりますと、その交付の許可を受けた人が本国で我が国の領事館などで更に留学の査証申請をして査証を受け取ると、こういうものですので、私はあくまで入管の立場でどのような状況にあるかということをお答えさせていただきます。

 留学又は就学の目的で新たに入学しようとする方からの在留資格認定証明書の交付申請につきましては、従来から、申請時期にかかわらず、その直前に申請が行われた場合とか、あるいは偽変造書類が提出されている疑いがある場合のように特別な場合があれば別ですが、そうでない限りは申請者の入学時期に間に合うように審査を行っております。

 なお、本年四月期に日本語教育機関に入学を予定して在留資格認定証明書の交付申請をされた方、申請受理件数は二万三千二百八十五件に上りました。これらにつきましては、おおむね入学時期の一か月前にそれぞれの地方入管ごとに一斉に在留資格認定証明書の交付を行っております。四月五日現在、未処理件数は十件でございます。

 また、それとは別に、既に我が国に在留している留学生や就学生、こういった方から進学を理由にして在留資格を変更したい、あるいは在留期間を更新したいと、こういう申請もございます。実は、こういったものの申請受理件数あるいは申請期間等の正確な統計は取っておりませんが、私どもの承知している限り、例えば東京入国管理局の場合は、特に問題のない案件の場合、おおむね申請を受けてから一か月以内に審査を終了していると承知しております。

○千葉景子君 今の御説明によりますと、四月五日現在で未処理が十件ということでございますので、この数を見ますと、まあたまっていたのかもしれませんけれども大分スムーズに処理がなされているのかなというふうに思いますが。

 どうでしょう、大臣、一応きちっと確認をさせていただきますが、先ほど申し上げましたように、確かに一方で厳格にという、厳密にといいましょうか、そういうことがあることはございますけれども、やはり留学、就学等で勉学をするような人がやはり困惑をすることがないように、先ほどもお話ございましたように、やっぱりでき得る限り受入れを気持ち良くしていただくような、そういうことをやはり今後とも気を付けていただきたいし、進めていただきたいというふうに思いますが、その点確認をさせておいていただきたいと思います。

○国務大臣(野沢太三君) 留学生、就学生の皆さんは、将来、日本とそのそれぞれの母国とをつなぐ重要な懸け橋となっていただく方々でございますので、私どもといたしましても、もう留学生十万人目標という目標も既に達成した中で、更にこの皆さんが入学が間に合うように、あるいは円滑にいきまするように、手続につきましても万全の措置を取って努力をしてまいるつもりでございます。

○千葉景子君 それでは、少し難民問題に関してお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 日本の難民の受入れの実情でございますけれども、この数を見ますと、これも昨日も指摘をさせていただきましたが、やはり世界の国に比較いたしまして大変その数が少のうございます。昨年の、昨二〇〇三年の難民申請者三百三十六人、そして認定された者が十人と、こういう数になっていることはもう皆さんも御承知のところであろうというふうに思っております。

 この難民、認定される人が少ないことは問題ございますが、その母数となる、そもそも日本に難民申請をする難民申請者の数そのものも非常に諸外国と比べると少のうございます。

 これだけ世界の中で様々な、自らの国を去らざるを得ない、そういう人々がもう世界の中に本当にたくさんおられる。そういう実情を踏まえますと、日本にこれだけたくさんの外国の方が来られている、そういう中で、難民として申請をするという人はわずか三百人程度というこの実情、どうでしょうか、大臣はどういうふうに御認識をなさっておられますでしょうか、まずお尋ねしたいと思います。

○国務大臣(野沢太三君) 委員御指摘のとおり、我が国の難民認定申請数は欧米諸国と比べて少ないのは事実でございます。

 今、二〇〇三年のお話がございましたが、少しさかのぼって二〇〇二年でちょっと申しますと、ドイツが七万一千人、イギリスが八万六千人、フランスが五万一千人に対しまして、我が国は二百五十人と欧州各国の一%にも達しないという状況にございます。
 どうしてこういうことになっているかということなんですが、我が国は難民の出身国とのかかわりが歴史的に乏しいということや、言語が異なっている、日本語が難しいということ、さらには我が国が難民の出身地域とは遠距離にあり、また我が国への交通手段が海路又は空路に限られるというようなことが大きな要因ではないかなと、こう考えておるところでございます。

 この問題をどうこれから取り組むかということについては、御一緒にまた考えていかなければならない大きな課題と考えております。

○千葉景子君 今大臣がおっしゃいました、確かに地理的な要因とか歴史的なつながり、これは従来から、政府からそういうことが原因ではないかという御説明をいただいてきたところでもございますが、本当にそうなんだろうかと。

 今、欧米諸国などの数がございました。その国々でも必ずしも、何でしょう、大陸でつながっているという国々ばかりではありませんし、あるいは、歴史的に見ても必ずしも一様な国々ばかりではないということが言えようかというふうに思います。

 日本がどうして数が少ない、そして日本へ、自分の命とそして暮らしを日本の場で、何とか庇護を求めようとしてくる人が少ないのかということについて、UNHCRなどでも大変厳しい指摘をしております。

 やはり条件として大変厳しい難民の審査要件があるのではないか、あるいは難民に対して十分に受入れ体制がありますよという情報などもなかなか日本に入国したときに十分にされていないと、こういうことも指摘をされておりますし、あるいは難民の安心していられるような施設等々がきちっと整備をされていない、あるいは逆に強制的に収容をされたり、あるいは摘発をされるなどという形で、なかなか庇護を求めようとしてもその条件が厳しくなってしまっている。こういうところがやはりそれぞれの人々の情報として伝わり、日本に難民申請をするという人が少ないのではないかと。

 こういう指摘なども、これはUNHCR、難民問題の言わば国際的な機関でございます、そういうところから指摘をされているということもございますが、どうですか大臣、先ほどの理由、否定はいたしませんけれども、更に日本として、そういう体制の備わっていない部分、あるいはそういう受け入れる温かい、何というんでしょうね、環境、そういうものがやっぱり乏しい。そういうところにまずはきちっと目を向けておかないと、やはり難民問題の根本的な解決、あるいは問題の進展というのはあり得ないのではないかと思いますが、その点、改めてこういう指摘も踏まえて御認識を聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(野沢太三君) 難民の数が少ないというのは、日本の難民審査の在り方が特別に厳しいのではないか、あるいは他国と基準が違っているのではないかと、こういうような御疑問を持たれることもあろうかと思いますが、それは私どもといたしましては、国際的な標準を取り入れました今のルールの中で、難民条約で定められております人種、宗教、国籍、あるいは特定の社会集団の構成員であること、そのほか政治的な知見、いろいろを理由に迫害を受けるおそれがあるか否かを適正に判断をしまして、これに該当する者を難民と認定しているということで、我が国だけが特別に違うということではないと考えておるわけでございます。

 認定者が少ないということは確かに御指摘のとおりでございますけれども、難民の申請者自体が少ないということからそのような結果になってきているわけでございますが、割合といいますか、認定率という点で見ると国際的にも決して見劣りのするものではないと思いますので、この点につきましてはちょっと事務局から補足をさせていただきたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 我が国において難民として認定される率、これは認定した者と不認定の者を分母として認定された者を分子とした場合の認定率は、昭和五十七年の制度発足以来これまでの二十一年間ぐらいになりますが、認定率は一二・四%でございます。また、それとは別に、不認定にはしたけれども、しかしその情状にかんがみ在留を特別に許可すると、そして我が国で庇護しようと、ということで庇護した率、これも認定した者と不認定にした者を分母として、その分子は認定した者と庇護した者、在留特別許可した者ですが、これは二三・二%になります。つまり、我が国で難民認定申請した方の、結論としては、これまで二十一年間で四人に一人近くが我が国で庇護されているという実情にございます。

 ちなみに、諸外国との比較で申しますと、例えばドイツは、今、私、手元に二〇〇〇年から二〇〇二年までの三年間の数字を持っているのですが、認定率で申しますと、ドイツは四%、七%、三%、フランスは二二%、二一%、二〇%、例えばスウェーデンが三%、二%、二%、イギリスは三二%、二二%、二〇%というように、国によってかなりばらつきはございますけれども、先ほど申しましたように、日本のその認定率一二・四%、庇護率二三・二%は、庇護の実績としてはそれほど諸外国に比べて著しく劣っているということはないと考えております。

○千葉景子君 今、認定率のお話をなさいましたけれども、基本的に、先ほど言いましたように母数ですね、それがもう圧倒的に違うわけでございます。そういう中で諸外国と比べて必ずしも低くないというお話ですけれども、先ほど私が指摘させていただきましたように、やっぱりなぜ、審査をすれば庇護をしなければいけないという人がいるわけで、それにもかかわらず、これだけ日本に難民として庇護を求める人たちが少ない。それだけやっぱり私たちの国が非常に閉ざされた、あるいは難民に温かい目を向けていない、心が通じていないと、こういう部分がやっぱりあるのではないかと。ここは改めて認識をしておかなければいけない部分ではないだろうかというふうに思っております。

 是非、今回の改正に当たっても、そういう点が本当に、一番の根本的な認識が本当に正しく置かれて、その上でこの改正というのがなされているのかどうかと。私は大変その辺りが疑問を感ずるところでもございますので、是非具体的な質疑の中で、その辺りも踏まえながら是非御答弁をお願いをしたいというふうに思っております。

 そこで、こういうどうも認識において、どうもちょっと足りぬところがあるのではないかなというふうに思いますが、そういうことを多分踏まえながら難民保護法という対案が出される結果になってしまったのではないだろうかというふうに思います。政府の案が、今の国際情勢、そして今の難民の置かれている状況を十分に踏まえての案であれば対案ということにはならなかったのであろうと。しかし、そうではないからこそ別な案が出されているものだというふうに思いますので、この難民保護法の提案者の方に何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、今回の難民保護法、一番、政府から提案をされておりますものと抜本的に異なりますのは難民認定に関する業務、これをやはり法務省から分離して独立させようと、ここが法案としては大きく抜本的に異なる部分であろうというふうに思います。この独立の機関に難民認定という問題はゆだねようというこの趣旨はどういうところにあるのでしょうか。

○江田五月君 御指摘のとおり、入管業務と難民業務を別にするというところが政府案と私どもとの根本的な違いでございます。これは、一体入管業務というのをどう考えるのかと、基本的にはそこに由来をすると思います。国の主権というものがオールマイティーのものとしてあって、難民であろうが何であろうが入管はすべて一元的に厳しく取り扱うということでいいのかと。

 そうではなくて、日本が一九八一年に批准をいたしました難民条約で、国際社会がいろんな国際社会の厳しい条件の中で出てくる庇護を求める各国の人々に対して共同でこれを庇護していこうという、そういう体制を組んできているわけですね。そんな中で、UNHCRも難民について各国を超えた一つの監督的な立場も与えられると。そんなことになってきているわけでありまして、私どもは、入管業務と別の観点から難民認定業務というのは行われなきゃならないという、そういう根本的なまず立場の違いがあると思っております。

 元々、この入国管理局が出入国管理と難民認定の両方行うという制度、これは今の哲学的な問題を別にしても根本的な矛盾をはらんでおるわけで、難民の申請をしてくる者はどういう立場で来ているかというと、正規の旅券やビザを取得するいとまもない、本国から命からがら逃れてきていると、そういう者が多くて、これが本邦に上陸して難民申請を求めるとなると、まず第一には、不法滞在、不法入国ということになってしまって、出入国管理の言わば厳しい目にさらされるわけですね。そういう立場と、そしてもう一つは、難民というものを求める、そういう温かい国の保護を求める立場と、一人の人間が両方の立場に立って、しかも扱う人間が、人間といいますか、扱う機関が一つの機関でやるとすれば、それはその対象者から見ると混乱をしてしまうわけですよね。

 本当にそういう状態の下で公平公正な難民の審査ができるのかということが根本的な疑問でありまして、さらに、難民の認定に当たっては通常の出入国の審査とは違う高度の専門性あるいは迅速性が要求されると。そうなりますと、制度の立て方としては、これは難民認定に関する業務を専門的に行う独立の第三者機関を作った方がいいというのが私どもの考え方でございます。

○千葉景子君 今、独立の専門的な機関を置くべきだという御指摘でございました。それと関連をいたします。

 現在、難民の認定に当たっての様々な調査は入管の職員の皆さんが当たっているということになります。今のやはり専門的な立場でということになりますとそれだけでいいのだろうかということになり、難民保護法では難民認定調査官というものを独立に置こうという内容になっていると承知をしておりますが、この趣旨について御説明をお願いします。

○江田五月君 難民認定の手続の場合に、難民であることの立証責任というのは一体だれが負うのかと。

 これは、法律的に厳密に言えば、難民申請者の方が自分が難民であるということの立証をしなきゃいけないということになるでしょう。しかし、そこは実際の運用として、あなたが立証責任を負っているんだから全部証拠を出しなさいというのも現実には酷ですね。先ほども申し上げたとおり、迫害のおそれから逃れて庇護を求める者が命からがら逃げ出してくるときに、証拠などはそれは持ってくるわけにいかないじゃないですか。あるいは、精神的な動揺、言語の相違等のために十分な立証が尽くせないということはもう火を見るよりも明らかでありまして、そういう難民申請者が抱える困難は、やはりこれは庇護を与えようという国の制度であるならば国の方でしっかりと支えていかなきゃならぬ、その困難を取り除いていかなきゃならぬということで、難民認定調査官というものを設けて、ここがむしろ難民申請者の立場に立って事実を調査をし、資料を集め、そして適正迅速な難民認定手続を保障しようという配慮からでございます。こういうことによって実質的に難民の庇護という制度が保障されていくんだと。

 現状を見ますと、各出入国港に置かれている難民調査官はほとんどが入国審査官等との兼務であると、こう聞いておりまして、しかも二、三年程度の短い年数で交代すると、そういうふうにも聞いているので、これでは専門性を備えたということにもなりません。そこで私どもは、難民認定調査官を置こうということでございます。これは専任の職として仕事に当たってもらうということにしております。

○千葉景子君 難民の認定についてそういう専門性を持った機関で行うということになりますが、難民申請をする人にとってはなかなかそういう手続を進めるということになっても難しい、そして一人で本当に困惑をするということも多いのではないかと、現状もそうだというふうに思います。

 そういう意味で、やはりそれを補佐し、サポートする、そういう体制も必要になろうかというふうに思うんですが、そういう意味で難民保護法では補佐人という制度を作っていると承知をしておりますが、これはどういう意味合いがあるのでしょうか。

○江田五月君 今申し上げたとおり、難民申請者は大変な困難な中で手続を進めていかなきゃならぬ。そうした手続の在り方を、難民申請を難民の地位を求める者に対して適切に教えていく、いろんな知恵を授けていく、そういうための相談員というものを私ども設けておるんでありますが、調査官にしても相談員にしても、いずれもこれは国の側の人間でございまして、そうではなくて、やはり手続の際に本当に申請者と常に心を通わせながらこれをサポートしていく、そういう立場の人間が要るということで、補佐人とともに手続の中に出頭してくることができるということにいたしました。

 この補佐人については、念頭にありますのはやはり弁護士さん方ですね。今、そういうことで一生懸命努力をしておられる弁護士さん方もおられますし、この皆さんが手続の中で必ずしも十分にアドバイスの、あるいはコンサルティングの実を上げているとは言えないという、そういう状況も聞いておりますので、ここはやはり法律できちんと弁護士、通訳等の補佐、こういう者を得られるために補佐人とともに出頭できるということにいたしました。

○千葉景子君 さて、冒頭のこの政府の案とそして難民保護法で大きく異なるところは、やはり難民認定をする機関を独立をさせるということだというふうに思いますが、それと同時に、政府の方では今回、難民申請者に仮滞在という、そういう一定の資格を設けようということがございます。それに対して難民保護法の方では、難民申請者に特別な在留許可の制度、こういうものを設けたらどうかという内容になっております。

 政府の方も一定のそういうことを検討されたということでございますが、これ、その違いというんでしょうか、やはり政府の方の仮滞在だけではどうも足りないなということでこういう資格を検討されたものだというふうに思われますので、この点について御説明をお願いします。

○江田五月君 現行の入管法では、我が国に在留する外国人には在留の資格というものが必要だと、こういうことになっております。そして、有効な旅券を持って入国し、入国審査官の上陸審査を受けなければならない、これに違反したら退去強制ということになると。したがって、難民の認定を申請しようとする者は、まあ在留資格を適法に持っている者で来るというのは珍しいだろうと思いますね。在留資格を持っていない、あるいは申請する前に在留資格が切れてしまった、あるいは不法入国という場合もあるでしょう。

 したがって、この難民の認定を受けることを希望する者が不法滞在等の発覚によって強制退去処分を受けることを恐れて難民認定申請を行いにくいと。また、難民認定の申請中の外国人が退去強制処分を受けることもあり得ると。このような問題が指摘をされていたわけです。

 そこで政府の方は仮滞在ということを作ったんだろうと思いますが、仮なんですよね。難民の申請者というものを、もっとこれは国際的な約束事でこういう皆さんを庇護していこうというわけですから、仮というのはいかにも及び腰だということでございまして、私どもは、やはりそうではなくて、難民を申請すると言ってきた者は難民申請者という立場で上陸の特別許可、もちろん特別許可ですよ、ですから一般のものとは違うんですが、上陸の特別許可や、あるいは在留の特別許可を与えると。これは仮ではないんだと。そういう難民申請者というものを大切にするんだという、そういうメッセージとしてこういう制度を作りました。

○千葉景子君 現状ですと、やはり難民申請をしているという立場と、やはり不法であるという非常に不安定な立場とでなかなか難民の申請もしにくい、あるいはしてもいつどうなるか分からないという大変不安な状態に置かれているという現状もございますので、私も、こういう安心できるような地位をまず持ってもらうということは大事なことであろうというふうに思います。

 難民保護法の提案者の方にもう一点お聞かせをいただきたいと思います。

 これまで、難民についてはインドシナからの難民もございました。それから、現状で条約難民として認定されたそういう方々にも政府としても一定の生活支援、様々な施策、こういうものを講じてはございます。しかし、なかなか統一的に、そしてまた十分な生活支援になっているのかどうかと、こういう指摘もありまして、この生活支援という問題というのは非常に重要だろうというふうに思っております。

 この難民保護法、正に保護法ということで、この生活部分、生活のサポート、こういうところにかなり重きが置かれているというふうに思いますが、これまで政府がやってきたものとは異なり、この生活支援について難民保護法でどういうやっぱりプラスといいましょうか、があるのでしょうか。その辺の説明をお願いします。

○江田五月君 難民受入れのための政策というのは、申請に至る入口のところ、ここから進んで、難民と認定された者が本邦に定住して安定した生活を始めるという出口のところ、ここまでを全部カバーしなければいけないと思うんですね。

 もちろん、申請段階では、これはまだ立場が、難民申請者ということでは庇護が与えられなきゃならぬと思いますが、しかし、本邦に在留する資格があるかどうかはまだ手続中ですから、そこで生活支援をすぐするというわけにはそれはいかないので、ここは生活の一定の援助ということにとどまっておりますが。しかし、難民と認められた、難民条約に言う、あるいはまた一定の政策的な配慮から、特別に条約難民以外にいわゆる条約外難民として本邦への在留資格を与えた、そういう者に対してやはり生活支援というものを本格的に行わなければいけないということでございまして、そこでこれら条約難民、そして条約外難民、こういう難民等という定義を私どもしておりますが、それらの者に対して生活相談、日本語の習得などなど、生活支援推進計画を策定して、そしてNGOなどとの協力の下にこの支援を行おうと。

 これは、従来の政府の方のものは、一定のものがないわけじゃないけれども、非常におざなり、非常に乏しい、非常に劣悪と言わざるを得ないと思いますので、私どもは、そこはしっかりとしたものをやっていこうと思っております。

○千葉景子君 ちょっともう一点だけ。
 今答弁の中でも触れられておられましたが、こういう生活支援等々、これから包括的にやっぱり必要だということになりますと、いろんな形で、政府あるいは行政機関だけでそういうことができるものではない。やっぱりNGO等との本当に協調連携ということが不可欠ではないかと思いますが、その辺りはどんな御認識をお持ちでしょうか。

○江田五月君 難民行政だけでなくて、今恐らくもうすべての場面において、一般の国民と行政との接点というもの、ここへいろんな工夫をしていかなきゃならないときが来ていると思うんですね。やはり行政というのはどうしても一定の、どういいますか、枠があって、その枠を超えていろんなことをやりにくい。しかし、かゆいところに手が届く、そういうサービスを提供しようと思うと、やはり一定の枠をどうしても超えていかなきゃいけない。そういうことはだれができるかといいますと、それはやはり市民のいろんな自由な活動だと思います。

 そういう意味で、難民の皆さんが本邦において定住していく、それは仕事の面でも学校の面でも地域社会の面でも、これはやはりそうしたことをしっかりと支えていこうというNGOの皆さんが活動していただかなきゃならぬ。そこでNGOは勝手にやれというわけにもいかないんです。やはり、ある意味で行政の仕事を委託を受けてやるといった、そういうNGOも必要なので、この際、私どもは、生活支援についてはNGOの皆さんと行政とのしっかりした連係プレーの下でNGOの皆さんに大いに働いてもらおう、そういうことを考えております。

○千葉景子君 ありがとうございました。
 今、何点か難民保護法の考え方についてお尋ねをさせていただきました。大臣にも聞いていただいていたかと思います。感想は求めませんけれども、今のをお聞きになると、おお、その法案の方がいいんじゃないだろうかと、率直にそう思っていただけたのではないかなと、そんな気もいたしますが、是非、そういう意味で、やはり考え方、そして良きやっぱり入管の、良き難民に対する日本の社会の本当にありようというものをこういう形でそれぞれ真剣に考えていくということができたらというふうに思いますので、どうぞ大臣もそんなことを素直に率直に感じ取っていただければというふうに思います。

 さて、こういう考え方、少しずつ違うわけですけれども、政府から出されております法案の方にもやはり何点かお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、先ほど、難民の受入れというのが非常に少ない、申請が大変少ないということを申し上げましたけれども、そういう中でやはり問題になるのが、一つはやっぱり難民認定申請をする場合の不安定さ、こういう部分も難民申請をやっぱり抑止する、そして、しても大変不安に置かれてしまうということの一つではないかというふうに思います。

 そういう中で、今回の政府案では、先ほど指摘をした仮滞在許可制度ということが設けられました。これは、これまでと比較をいたしますと一歩前進といいましょうか、そういう部分も全くないわけではございません。ただ、これが、制度はできましたけれども、その要件を見ますと、本当にこの仮滞在許可制度が十分に機能するのか、そしてその難民申請を行う人にとって一つのよりどころに本当になるのだろうか、そういう感じがいたします。

 その大きな問題の一つが、この仮滞在許可制度を出すに当たって日本へ、本邦へ直接入国をした者でなければ与えられないと、こういう要件が付けられているわけでもございます。これ、どうでしょうか。これまで難民申請をなさった方、そして難民認定を受けられた方等々、従来のケース、これから、そういうことがこれからも続いていくと予測はされるんですけれども、この第三国経由をすると駄目だということをこれまでのケース等に当てはめてみると、これで何かほとんど仮滞在許可与えられないという結果になってしまうのではないかという予測もありますけれども、これはどうですか。こういう要件付けることによって大変門戸がむしろ厳しくなるのではないかという懸念もいたしますが、この点についてどうでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 直接本邦に入ったということについてのお尋ねですけれども、これは第三国の庇護を受けることなく迫害地から本邦に直接的に逃れてきた状態を指します。その迫害のおそれのあった領域から直接本邦に入った者でない不法滞在者につきましては、出身国における迫害から逃れるためにやむを得ず我が国に、我が国を目指してやってきて不法入国した、あるいは不法残留しているという、その違法行為を行った点で、やむなく我が国に逃げてきた者だというその緊急避難性といいますか、そういった観点からしますと、ほかの国にある程度の期間滞在してから日本に来た人と、もう日本を目指して、日本に救いを求めて、日本に来て救いを、庇護を求めたという人はやはり違うであろうという、その緊急避難性という点での相違。

 そういったことから、仮滞在となりますと不法滞在者であっても退去強制手続はもう止めるんだと、こういうことで、言わば優先的、優遇する制度でございますので、仮滞在という特別な地位を認めるという場合には、やはり直接我が国に来て助けを求めた人か、そうではなくて、ほかの国でしばらく滞在してから、それから日本に来た人であるのか、その違いはやはりあるだろうということで、これを仮滞在許可の要件として取り上げたものでございます。

 しかし、今申し上げたような趣旨から考えますと、第三国を経由して本邦にやってきた難民認定申請者でありましても、単に第三国を経由した、通過したにすぎない場合もあるでしょうし、あるいは第三国に滞在したとはいってもその期間が非常に短くて、その国で庇護を与えられなかったような場合もあるでしょう。それらの場合などについては、その人は第三国を経由したといいましても我が国に直接来たと評価していいだろうというケースは多々あるだろうと思います。そういった意味で直接性を要件といたしましたけれども、恐らくこれまでの実情から見て、この直接性に反するから仮滞在許可が受けられなくなるというケースはそんなには多くないのではないかというふうに考えております。

○千葉景子君 今、そういう御説明でございました。
 この第三国経由では駄目だ、直接来た者ではなければならないというこういう要件につきまして、先ほど指摘をしたやはりUNHCRなどが、この要件を厳格に適用したりすると、これまでのケース等の延長線上で予測をすると、例えば十人中八人ぐらい、八割はこの要件で仮滞在から除外をされてしまうのではないかと、こういう影響の予測などもしています。これは決していい加減なものではなくして、これまでのケースの具体的な日本への入国経路等々、それを実際に調査をしながら、それに当てはめて予測をしているものでもございますが、今のお話ですと、そういうことはないんだということですけれども、どうでしょうか、そんなことは決してないというふうに、八割が駄目になるなぞということはあり得ないのだということなのでしょうか。

○政府参考人(増田暢也君) お尋ねのとおり、八割が駄目になるということは多分ないだろうと思います。

 確かに、UNHCRが昨年でしたか、UNHCRの関与した申請者について自分たちが調べたところではということで、今委員がおっしゃられたような数字を明らかにしたことは承知しております。しかし、その際は、今委員がおっしゃったとおり、直接性を厳格に適用した場合はどうなるというような、そういうコメントが付いていたと思います。しかし、UNHCR自身が直接性についてはこういう解釈をすべきだというような言わば指針を示しております。
 私どもは、今後、直接性の解釈に当たっては、基本的にはUNHCRと同じ解釈を取るであろうと考えておりますので、そういった解釈を取る限り、そんな厳格に機械的に当てはめて、もう大半が排除されるというような運用にはならないと考えております。

○千葉景子君 分かりました。是非、そういう意味では国際的な基準といいましょうか、そういうものにやっぱりのっとってこの解釈はしていただかなければならないというふうに思います。

 先ほど、ちょっと確認ですけれども、単に第三国にいったん入っているといっても、言わば通過したような形だとか、あるいはそこで十分な庇護を与えられた形ではないというようなときにはこの要件は当たらないんだというお話でございました。なかなかこれは、じゃ第三国にどのくらいの期間とどまっていたら第三国経由になるんだとか、あるいはどのような庇護を受けて、また日本に来たら駄目なんだとか、なかなかここ、どこで区切るかというのは難しいところであろうかというふうに思いますけれども、一定のやはり基準といいましょうか、通過したにすぎないというのは一体どういうことなのか、第三国で庇護を受けられないで来たというのは一体どういうことなのか、少しそこをこれからの判断の基準になるような形で御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 第三国を経由して日本に来た場合に、それがそれでも直接来たと認めていいのだと言えるのがどういう場合であるのかは、やはりこれは個々の事案ごとによって判断されることだろうとは思います。

 ただ、お尋ねの、例えば期間について何らかの目安はないかということであれば、一つ考えられますのは、例えば我が国の場合にいたしましても、十五日以内の滞在許可、通過査証を所持する者に対して短期滞在十五日、ただ日本を通過して他国に行く場合、十五日という滞在許可を与えております。そういったことは一つの目安になるのではなかろうかと思います。あるいは、他国、第三国にいたといっても、その国にはそもそも庇護する機関がない、庇護する制度がない、難民条約に入っていない、だからその第三国にいたといってもそこではそもそも庇護なんかされる可能性だってなかったんだと、というようなケースはやはり直接性を裏付ける方向で判断する要素になるのではないかと考えております。

○千葉景子君 庇護をするような、もう受入れの体制がないというようなケースですと、確かにそこを経由して来たといっても庇護をされたわけではありませんから、日本に直接来たと同様なケースになるんだろうと思います。

 ただ、この十五日というのがいかがかなというふうに感じます。確かに、そういう通過査証のようなものが日本でもあると、これに照らしてということですけれども、やはり命からがら何とか庇護を求めて、最終的には何とか日本で庇護をしてもらおうというときに、途中で、やっぱりそうはいっても捕まってはいけない、あるいはいろんな意味でどうやって日本まで来るか、その経路を何とか探し当てと、こういうことになるわけですので、たかだか十五日というのでは非常に冷たいなという感じがいたします。やはり、置かれている状況を考えますと、ここは、十五日というのは余りそれこそ厳格に基準にすることなくして、やはり本当に、通過はしてきたけれどももう本当に必死の思いでその国を経過をし、そして日本に来たんだと、こういう実情をきちっとやはり見極めていただく必要があるのかなというふうに思います。
 是非、そういう意味では、この直接入国、第三国経由は要件とするといいましても、余りにもしゃくし定規に厳格に適用することがなきよう、そして国際ルール、こういうものに準拠して考えるということを確認をさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、今回は、従来大変批判も多かった六十日ルール、これは撤廃をするという形になりました。これは一つのやはり国際的な指摘や、あるいは多くの難民問題にかかわっている皆さんからの指摘というものを受け止めていただいた部分があろうというふうに思っております。

 ただ、この仮滞在許可の今度はやはり付与をする条件として、今度は六か月以内の申請と、こういう今度はまた別な意味での条件が付けられることになりました。この六か月条件といいましょうか、これの何か合理的な理由はあるのでしょうか。

○政府参考人(増田暢也君) 今回の法案の六十一条の二の四第一項におきまして、難民認定申請を行った在留資格未取得外国人に仮滞在を許可する場合の除外事由といたしまして、本邦に上陸した日から六月を経過した後、難民認定申請を行った者であるときを規定いたしております。

 その趣旨は、本邦に上陸した日から六月以内に難民である旨の申出をしなかった不法滞在者につきましては、出身国等における迫害から逃れるためにやむを得ず不法入国あるいは不法残留などの違法行為を行ったものとは認められず、迫害からの緊急避難性という観点を考慮しますと、それ以外の難民、つまり六月以内に申請した難民と比較して、仮滞在という特別な地位を認めるべき必要性が劣ることによるものであります。

 このような規定を設けることにより、専ら退去強制を免れることを目的として難民認定申請を行うなどの難民認定制度の濫用の防止にもつながると考えておりますし、難民認定申請事案の迅速かつ適正な処理にも資するものと考えております。

 委員御指摘の六月としたその根拠でございますけれども、我が国における難民認定の実情であるとか、あるいは一時庇護のための上陸の許可の上陸期間が六月と定められていることとか、あるいは短期滞在の在留資格により通常在留できる期間の上限、これらを踏まえてこのたび六月といたしたものでありますけれども、六月という期間は、外国人が我が国に来て難民申請を行う、申請を行うのを決める際、言語上の問題その他申請者の置かれた特殊な状況を考慮しましても、難民認定申請を行うためには十分な期間であると考えております。

○千葉景子君 今御説明をいただきましたけれども、この問題、また一番最初に戻ってしまうような気もいたしますけれども、やはり難民として日本に入国をし、そして申請をするということになりますと、これから認定の手続とかあるいは受入れの環境がどんどん整っていって、そういう現状であればまた変わってくるだろうというふうに思いますが、これまでの難民認定の在り方、そしてその受入れの環境、こういうことを考えますと、やはり申請をするといっても、やっぱり相当悩み、あるいは熟慮をし、そして情報を得たり、そしてサポートをしてもらえるようなそういう人たちのいろんなサポートをもらい、そういうことがようやく合わさって、何とか申請をして、安定をしたやっぱり立場を身に付けようと、こういう非常に長い苦労とかあるいは不安とかあるいは悩みと、こういうものを乗り越えて難民の申請がなされるという、こういう実情があるわけですね。

 申請したら安心できるように、せっかく仮滞在という、そういう地位を与えていこうと、ここまで考えたわけですので、そういう意味では、六か月、六月ということに本当にこだわる必要があるのだろうか。やっぱりいつでも申請をした、そして温かく仮滞在という一定の地位を認めて、そしてその代わり十分に、本当に難民性があるのかなと、こういうのは審査をすればいいわけですので、そういう意味では、この六月という期間を設けるという必要があるのかどうかという、私は率直に考えますけれども、改めましてその辺りの考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(増田暢也君) 先ほども申し上げましたが、これは仮滞在許可の要件の問題でございます。仮滞在許可というのは、命からがら我が国に逃げてきて難民として助けを求めたいという人に対して、不法入国であっても退去強制手続はしません、難民かどうかを先に審査しましょう、だから収容もしませんと、そのために、そういう優遇を与えるための制度がこの仮滞在許可であるわけです。

 したがって、日本に逃れてきて六か月以内に申請して日本に助けてくださいという人と、六か月を経過し、一年、二年たってから難民であるから助けてくださいという人では、その退去強制手続を止める、止めて優先的に難民審査を行うかどうかを判断する上でやはりそれは意味のある違いであると考えております。したがって、この六月を、六月以内に申請したかどうかを仮滞在許可の要件とすることには合理性があると考えております。

 ただ、これは今、現行の法律でもそうですけれども、仮に六月を経過した後に申請した事案であっても、その六月経過をしたことにやむを得ない事情があるような場合については、これは六月以内に申請した者と同様に取り扱うという運用をすることになりますので、その点では不都合はないと考えております。

○千葉景子君 今いみじくもおっしゃいましたように、必ずしもこれをしゃくし定規に適用するのではなくて、やむを得ない事情のようなものがあればそれを認めるということでございます。ということは、やっぱり個別に六月以内に申請する場合もあれば、いろいろと先ほど言ったように困難を乗り越えながら六月を超えてもやっぱり申請をするというケースもあり、あるいは場合によっては、何とか逃げてきた、いずれは国に帰れるのではないかなと心の中では思っていたけれども、やはり状況も大きく変化をして、時間がたって、たてばたつほどこれはもう自国に帰ったら迫害を受けるということが明白になってきた、こういうことだってあり得るわけですね。そういう意味では、これを余り期限で、期間で限定することなくして、やはり申請をしたということによって本当にこれは真剣に自分が庇護を求めているんだという、その意思をやっぱり受け止めて対応をしていくべきではないかというふうに思いますので、これを直ちに六月というのをなくしますということにはきっとならないのかもしれませんけれども、是非そういう実態を踏まえたやはり運用をしていただくようにまず求めておきたいというふうに思っております。

 仮滞在許可を受けられなかったということも考えられます。そういう際に、強制退去にはなさらないというような御説明をいただいているのですが、強制的な収容についてはどうなんでしょうか。退去強制手続が進むわけですが、その中で仮滞在許可を受けられなかったというだけで強制収容というような形になってしまうことを大変私も危惧をいたしますが、その点についてはどうお取り扱いになるのでしょうか。

○政府参考人(増田暢也君) 仮滞在許可されなかった人につきましては、これは現行法と同じでございます。難民認定手続と退去強制手続が並行して行われることになると。ただ、現行法を改めまして、難民認定の審査が行われている間は送還はとにかくしませんということでその保護を図っているわけです。

 それでは、その仮滞在許可が受けられなかったことにより身柄がどうなるかということでございますけれども、退去強制手続が取られますので、そうしますと、法律上、退去強制手続においては原則身柄は収容するということになっておりますので、仮滞在許可を受けられなかった難民認定申請者につきましては収容されることとなります。ただ、その場合におきましても、主任審査官などは法の規定にのっとりまして情状あるいは仮放免請求の理由などの証拠も考慮して、個別にその人について仮放免をするかどうかを判断していくということで弾力的に運用するなどして、人道に配慮した取扱いを行っていくことになると考えます。

○千葉景子君 この収容につきましては、現状を含めて非常に問題があるところだというふうに思います。ちょっと、これについてはまた別途少し具体的にいろいろお聞かせをいただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 時間がちょっと限られてまいりましたので、あとちょっとの時間で生活支援の問題について何点か聞かせておいていただきたいというふうに思います。

 難民認定者、それから難民の申請をしている人等の生活支援、様々な社会的なサポート、こういうものは先ほど難民保護法の提案者にも聞かせていただきましたが、政府の方もいろいろなサポートや支援は全くしていないわけではないわけですね。ただ、これがどうもいま一つ、どこがどう何をやっているのかというのがいま一つよく分かりませんで、そこで多分一番それを統括をされておられるのが内閣官房に当たるのではないかということで、内閣官房に来ていただいております。

 この難民に対する生活支援あるいはいろいろな社会的なサポート体制、こういうものがどういう現状になっているのか。それぞれ各省にまたがっていると思われますけれども、その辺をちょっと簡潔に御説明をいただきたいというふうに思います。

○政府参考人(鈴木基久君) お答え申し上げます。
 条約難民として難民認定を受けた方々に対しましては、関係行政機関が相互に協力いたしまして、必要に応じ日本語習得のための便宜供与あるいは職業紹介又は職業訓練を行うこと、それから条約難民の就労先の確保に努力するものとする閣議了解が既にございます。これを受けまして内閣に、先生御指摘のように、内閣に難民対策連絡調整会議というのを設けております。これは、難民問題につきまして関係行政機関の緊密な連携を確保し、政府として必要な対応を検討するため内閣に設置されておるものでございますが、ここで政府としての支援策も取りまとめておるところでございます。

 具体的には国際救援センター、これはそもそもインドシナ難民の定住支援等のために設置された施設でございますが、そこに入所いたしました条約難民の方々に対しまして、日本語教育の実施、それから職業紹介や職業訓練の実施、あるいは生活援助資金の支給等を行っておるところでございます。

○千葉景子君 今御説明いただきましたこれだけだと、本当に何かよく分からないと。やっておられるというのは分かるんですけれどもね。そういう意味では、この生活支援という問題、やはり連絡会議という形で行っているのは分かるんですけれども、やっぱりそれをきちっと制度的に担保をするような仕組みを作る、法的にですね。どこがどういう責任体制で行うのだと、こういうことなどをやっぱりきちっと備えておく必要があるのではないかというふうに思います。

 特に、先ほどから指摘をさせていただいておりますように、生活支援になりますと、政府の関係機関、あるいは毎日生活をする自治体、地域、それからそこでいろんなサポートをするNGOや市民の皆さん、こういういろんな形でどこがどういうきちっとした活動をするのかというようなこと、そして、それを全体としてどういう財政措置をしていくのかというようなことも当然必要になってくるのだろうというふうに思います。

 そういう意味で、大臣にちょっとお考え方をお聞かせをいただきたいと思いますが、今、連絡会議ということでやっておられますけれども、これをやっぱりもっと包括的に、そしてシステムとして法的に担保していく、それからNGOあるいは自治体等を含めてきちっとしたそれぞれが責任を持っていくんだぞと、こういう仕組みをやっぱり法律などで備えておくということは必要なのではないかというふうに思いますが、大臣、その辺りどうでしょうか。全体を統括をするという立場ではございませんけれども、やっぱり難民の認定等の仕事をする担当部署として、認定をしましたその先をやっぱりきちっとしていくということにも御関心をお持ちであろうというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(野沢太三君) 今お話がありましたように、現在、連絡調整会議という形で協力して取り組もうということは進んでおるわけでございますけれども、それじゃ具体的に、じゃどこの窓口へ行ってどういう御相談をしたらいいかと、こういう点については必ずしも十分ではないのではないかと、この趣旨の御指摘かと思いますが、私どもは、この方策に対しましては、今回のこの入管法そのものの改正がその意味で大分前進をいたしておると思いますので、引き続き法務省あるいは関係の省庁の皆さん方がこういった新しいルールに基づいて一層協力を強化していくと。具体的には、やはり今お話ありましたような地方自治体における窓口の問題、それからNGOの皆様の御協力もこれまた大いに期待をするところでございます。

 それから、今度の司法制度改革の中でも提案されておりますが、総合法律支援というようなシステムの中でも法的な問題については御期待にこたえられるんじゃないかと思いますので、これからの課題としてしっかり取り組んでいかなければならないと思っておりますが、御意見しっかり賜りまして、御党御提出のまた対案につきましても、私どもも十分参考にさせていただいて取り組むつもりでございます。

○千葉景子君 大臣に御答弁をいただきました。やはりそこを明確に打ちながら、それからNGOなどの皆さんとの協力関係というのも、やっぱりそれはお互いパートナーというような意識を持っていくことが必要だろうというふうに思います。

 単に、この部分ちょっとお願いしますよ、あるいは、まあ声を掛けたからいいかなということではなくして、やっぱりお互いが、仕事をきちっとお互いやり合っていく、意見も交わしていくというパートナー性ということがやっぱり大事だろうというふうに思いますので、その辺りを改めて御認識をしておいていただくことをお願いをして、時間になりますので、今日の私の質疑はこの辺りにさせていただきたいというふうに思います。


2004/04/08

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