2004年8月3日 | >>質問原稿 |
160 参院・本会議 小泉首相のサミット報告に対する代表質問
小泉首相のサミット報告を聞き、自民党議員の15分弱の質問に続き、私が質問。与えられた20分を使い切りました。冷静に、しかし強調するところは語気を強めて、メリハリの利いた質問をしたつもりです。答弁はおざなりでした。さすがに参院選挙の勝敗については、「勝ったとは言えない」と、敗北を認めました。しかし、それが有権者の審判だという認識は乏しいようで、政策判断や国会運営に反映させる考えは聞かれませんでした。
(民主党ニュース)
【参院本会議】江田議員、年金、イラク問題めぐり首相を批判
民主党・新緑風会の江田五月議員は3日、参議院本会議で小泉首相のサミット報告に対する質問に立ち、参議院選挙総括、日歯連事件、イラク問題、改正年金法の問題点等について、静かな口調ながら厳しく小泉首相を追及した。
江田議員は冒頭、欧米先進国と比べ飛びぬけて高い自殺率、ほぼ最低に位置する1・29を記録した合計特殊出生率、農業をないがしろにした結果として陥った食糧自給率40%といった日本の現状を指摘した上で、「こうした日本の国民生活に対してサミットに出席し、何か感じるところはないか」と首相に質した。首相は「子育ての喜びを実感しながら次世代を育むことができる社会を目指す」などと、原稿の棒読みに終始した。
続いて江田議員は、民主党が改選議席数、比例代表の獲得票数でも第一党となった参議院選挙について「自民党、与党は勝ったのか」と首相に質問。3年間の小泉政権の信任を問い、年金制度改革、自衛隊の多国籍軍参加を争点とした参議院選挙で示された民意をどう受け止めるか、答弁を求めた。首相は「自民党は勝ったとは言えない。しかし与党全体で60議席を確保している」とし、民意については「自民党も野党の声にも耳を傾け、反省すべきは反省し、しっかりと改革を進めろとの声と受け止める」などと語った。
日歯連疑惑については、自民党が何も変わっていないことを象徴する事件だと江田議員は指摘。1億円の小切手を受け取りながら「記憶がない」などと居直り続ける橋本元首相に対して、証人喚問を行うよう首相に求めた。しかし、首相はあくまで「調査中なので見守る」との姿勢に終始。江田議員が「粉飾決算は厳しく処罰される行為だ」と厳しく指摘し、収支報告書の記載義務の強化、記載内容の確認システムづくりの必要性に言及したのに対して首相は「各党・会派においてさらに議論を深めていただきたい」などとごまかした。
イラク問題については、江田議員が自衛隊の多国籍軍参加をサミットの日米首脳会談時に首相が単独で表明し、国会や国民への説明を後回しにした点を改めて批判。「非戦闘地域に自衛隊を派遣する」というイラク特措法が定める派遣条件を満たす地域が存在しない今、自衛隊を撤退させるべきとの考えを示した。小泉首相は「サマワは非戦闘地域の要件を満たしていると判断している」などとして、撤退の意思がないことを改めて表明した。
改正年金法の問題点について江田議員は、負担の上限と給付の下限、年金財政を見通す元データとなる合計特殊出生率等が法案成立まで偽りの数字であったこと、また改正法には40カ所もの過誤が判明した点を列挙し、「改正年金法は形式的にも内容的にも破綻している」として改正年金法廃止法案の正当性を主張。年金審議を避けるために国会会期をたった8日間に短縮した小泉首相の政治姿勢を「国会を何だと思っているのか。民主主義は単なる形式ではなく、精神だ」と厳しい口調で批判した。
平成十六年八月三日(火曜日) 午前十時一分開議
○議長(扇千景君) これより会議を始めます。
日程第一 国務大臣の報告に関する件(第三十回主要国首脳会議出席に関する報告について)
内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。小泉内閣総理大臣。
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 報告に先立ち、一言申し上げます。
平成十六年七月梅雨前線豪雨は、新潟県、福島県、福井県等に大きな被害をもたらしました。お亡くなりになった方々の御冥福をお祈りするとともに、被災者の方々に心からお見舞いを申し上げます。
政府としては、被災者への支援、被災地の復旧・復興に全力を尽くしてまいります。また、現在でも大きな被害が懸念される四国地方を中心とする大雨への対応にも万全を期してまいります。
私は、六月八日から十二日まで、米国のシーアイランドで行われた主要国首脳会議に出席するとともに、米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、ヨルダンの首脳と個別に会談いたしました。
今回のサミットでは、世界経済や開発、大量破壊兵器の拡散、テロ、北朝鮮、イラクの問題など、世界が今直面する様々な挑戦につき、二国間の会談を含め、率直で実り多い意見交換を行うことができたと考えます。
明るさを増しつつある世界経済については、構造改革の促進による一層の成長への決意と、WTO新ラウンド交渉の推進を確認いたしました。私は、我が国経済に回復の兆しが見えてきていること、また、これまでの成果を基に今後とも改革を推進し、持続可能な成長に結び付けることが重要であることなどを説明いたしました。また、石油価格高騰の途上国への影響を考慮すべきことなどを指摘しました。WTO新ラウンド交渉では、このサミットの議論を受け、八月一日に中間合意が採択され、交渉が再び軌道に乗りました。バランスの取れた最終合意を達成するため、更に努力していく考えであります。
中東については、中東和平、改革支援などについて幅広い議論を行い、中東和平推進の重要性を確認するとともに、拡大中東・北アフリカ地域の改革支援に関するG8としての支援計画を発表できたことは重要な成果でありました。我が国としては、地域の自主性と多様性を十分尊重した上で、改革努力を支援するとの基本姿勢で臨み、支援計画はそのような我が国の主張が反映されております。今回のサミットでは、イラク暫定政府のヤーウェル大統領、アフガニスタンのカルザイ大統領を始め、中東七か国の首脳とも有意義な意見交換を行いました。
イラクについては、サミット開幕直前に全会一致で採択された国連安保理決議に基づいて、イラクの政治プロセス推進及び経済復興のため、国際社会が一致して支援すべきことを確認いたしました。
イラクが復興し、安定した民主的な国となるためには、イラク人自身による努力が何よりも重要であります。サミットにおいて、私はこの点を強調いたしました。我が国として、そのような努力を支援するために、引き続き自衛隊の派遣とODAによる資金協力を車の両輪として人道復興支援活動等を推進し、国連決議に基づく国際協調に貢献していく考えであります。
大量破壊兵器の不拡散とテロ対策については、不拡散体制を強化するための行動計画と旅行者の安全に関するテロ対策を盛り込んだ行動計画に合意し、引き続きG8として取組を強化していくことで一致しました。
北朝鮮については、私は、五月の訪朝の際の金正日国防委員長との会談について説明し、G8首脳との間で率直な意見交換を行うことができました。その結果、北朝鮮に国際社会の一員としての責任ある対応を促し、拉致問題や核開発などの諸問題の包括的解決を支持するG8の一致したメッセージを出すことができました。我が国としては、こうした国際社会の声も踏まえつつ、諸懸案の早期解決に向け、北朝鮮側への働き掛けを一層強めていく考えであります。
サミットにおける地球環境問題への取組も重要であります。私は、我が国の経験に触れつつ、経済発展と同時に環境保護を重視して取り組むべきことを強調いたしました。そして、その観点から、循環型社会構築のため、世界的に三つのR、いわゆるリデュース、リユース、リサイクルを推進する提案を行い、各国の賛同を得て行動計画が採択されました。
また、今回のサミットでは、昨年に引き続き、アフリカ六か国首脳の参加を得て、アフリカの諸問題について対話を行いました。国際社会全体の安定と繁栄を考える際、アフリカ問題の解決は不可欠であります。この対話では、我が国はTICAD、アフリカ開発会議に積極的に取り組んできたことについてアフリカ側より高い評価を受けました。
今年のサミットは、第三十回目のサミットでした。三十年の間に課題は変わりましたが、世界が直面する主要な課題について、サミット参加国が前向きに協力しようという姿勢に変わりはありません。私は、今後ともG8各国との協調を図り、我が国として積極的な役割を果たしていきたいと考えております。(拍手)
○議長(扇千景君) 江田五月君。
〔江田五月君登壇、拍手〕
○江田五月君 このたび民主党・新緑風会の議員会長となりました江田五月です。会派を代表して、ただいまの御報告に関連して小泉内閣総理大臣に質問します。
(災害ボランティア)
まず冒頭、先日発生した集中豪雨災害でお亡くなりになった方々にお悔やみを申し上げ、第十号台風も含めて、被災された多くの方々に心からお見舞い申し上げます。
子供たちから国会議員に至るまで、老若男女を問わず多くの人々が、痛みを共有し、災害ボランティアとして現地に出向き、復旧や災害弱者支援を手伝っています。さらに、多くの国民が、その情景をテレビで見て心を動かされています。支え合いの社会の基盤が政治とは別のところで確実に育ってきているのに、政治は何をしているのかと自問しています。
小泉さん、あなたはどのような感想を持たれましたか、伺います。
(サミット出席の感想)
小泉さん、あなたの今日の報告は、シーアイランド・サミットに出掛けて多くの要人と意見交換されたというものでした。その結果、あなたはどのような感想を持たれたのでしょうか。
例えば、日本の自殺率は、欧米諸国と比較すると飛び抜けて高く、イギリスの三倍以上です。合計特殊出生率も一・二九とほぼ最低で、いまだに減少傾向に歯止めが掛かっていません。食料自給率は四〇%で、農業をこれほどないがしろにしている国がほかにありますか。ホームレスはどうでしょう。これが日本の政治の結果なのであります。サミット参加国はいずれも、もっともっと政治の可能性を大きく花開かせているのではありませんか。
小泉さん、企業は従業員をリストラできるでしょう。しかし、国は国民をリストラできません。うれしい縁であっても悲しい縁であっても、縁あってこの国に生活を構えた人は皆、私たちの仲間なのです。あなたは、サミットに出席し、他国の指導者と会われて、自殺や出生率など自国の国民生活の現状について何か感じるところはなかったのか、お伺いします。
(参議院選総括)
さて、先日の参議院選挙で、私たち民主党は、公認で五十議席を得、改選議席では第一党となりました。また、比例代表では二千百十三万票強を獲得し、自民党に四百三十四万票もの差を付け、昨年の総選挙に続いて再び第一党となりました。与野党で見ると、改選議席は、与党は六十議席、野党は六十一議席、比例代表でも野党が三百万票も多く、与党二十三議席に対し野党は二十五議席です。
そこで質問します。
自民党は、そして与党は、今回の参院選に勝ったのですか、負けたのですか。非改選を含めた数のことを聞いていません。今回の選挙結果です。あなたの認識を明確にお聞かせください。その理由も答弁いただきたい。
また、この選挙では三年間の小泉政治の信任が問われました。とりわけ、年金制度改革、自衛隊の多国籍軍参加などが争点でした。そこで、この選挙結果で示された民意をどう受け止めるのか、自らの政治責任にどうけじめを付けるのか、この民意を今後の政策選択や政治運営にどう反映させるのか、あるいはさせないのか、お答えください。
私たちは、この選挙結果により、民主党が政権交代への重い責任を負ったと受け止めています。もちろん、政権交代は総選挙の課題であり、参議院は政権争奪の舞台ではありません。しかし、日本の政治の最大の問題は、政党政治のシステムを取っているのにこれまで有権者の選択によって政権交代が行われてこなかったことです。これは衆参を超えた日本政治の課題です。
そこで民主党は、参議院に籍を置く私たちも含め、この選挙の結果を生かして、次期総選挙での政権交代を目指します。しかし、私たち参議院の民主党・新緑風会は、衆議院での攻防と同じことを参議院で繰り返すことが良いとは思っていません。参議院での与野党の論戦は、形式も内容も衆議院とは違ったものであるべきだと思っています。
このところ何回か、衆議院で議論が十分熟さないまま、案件が参議院に送られてきて、参議院で先鋭な対決が繰り広げられたことは極めて残念です。この点の直接の責任はもちろん参議院側ですが、小泉さん、あなたは自民党の総裁ですから、衆議院でヒートアップした対決案件であっても参議院では十分議論を尽くし、高度な判断から良識を発揮して合意を得る努力をされるかどうか、参議院選を終わったばかりの今なのであえて伺っておきます。もちろん、私たちも努力します。
(日歯連事件)
小泉さん、あなたは高い世論の支持をバックに自民党内の抵抗勢力を抑え込んで政権を運営してこられました。自民党をぶっ壊すという言葉にしびれた国民も結構多かったと思います。そういえば、「自民党は変わった」というコピーもありましたね。
その自民党は、あなたの三年間で何か変わったのですか。何も変わっていないことを衝撃的に示す事件が日歯連疑惑です。
橋本元首相は、二〇〇一年七月に超豪華料亭で、派閥の最高幹部である当時の青木参議院幹事長、野中元幹事長とともに、当時の臼田日歯連会長と内田常任理事と会食し、一億円の小切手を受け取りました。しかし、これは日歯連の収支報告書にも橋本元首相が会長を務めていた平成研究会の収支報告書にも記載されていませんでした。
日歯連は、その理由として、再三要求したのに平成研から領収書を発行をしてもらえなかったとしています。領収書を発行しない、収支報告書に載せない、載させない。つまり、巨額の、しかも使い放題の裏金を作ることが自民党内でいまだに行われているのです。自民党は何も変わっていません。
派閥もいろいろ、政治献金もいろいろ、事実解明は司直の手に任せるといった他人事のような答弁でなく、小泉さん、あなたの率直な御感想をお聞きしたい。
橋本さんは、派閥の会長を辞め、派閥からも抜け、小選挙区から立候補しないことを表明されました。しかし、橋本さんを始め、派閥の幹部はだれもこの件の記憶がないのだそうです。超豪華料亭ですよ。一億円ですよ。幹部ばかりが勢ぞろいですよ。小泉さん、あなたもこんな出来事を忘れることができるんですか。ところが、自民党ではこんなことがまかり通るのです。司直の捜査も必要だと思いますが、政治家としての説明責任を果たすためにも、関係者の証人喚問を行う必要があります。小泉首相はどのように考えるのか、明確に答えていただきたい。
(政治資金規正法改正)
日歯連からの献金については、平成研以外にも多くの政治資金収支報告書が訂正されました。現在の政治資金規正法では、個々の収支報告の内容が形式的に正しければノーチェックです。また、寄附や会費を出した側と受け取った側の記載が異なっていても、表立って問題にならなければ何のチェックもありません。今回のように、過去の収入を一億円増額し、その分は翌年に繰り越されたとする訂正が認められるのであれば、何のために収支報告をしているのか分かりません。
民間においては、粉飾決算は厳しく処断をされる行為です。政治の世界は別だとすることはできません。収支報告書の記載義務の強化、記載内容の確認システム作りが必要だと思いますが、この点について小泉首相の考えを伺います。
(多国籍軍参加表明)
さて、小泉さん、あなたは、サミットに先立つ日米首脳会談において自衛隊の多国籍軍参加を表明されました。国会や国民への説明は後回しにして、ブッシュ大統領に言われて反射的に回答したという、誠に唐突な表明でしたね。それとも、この表明の時点以前に、あなたは既に決断をされていたのですか。そうならば、それはいつのことですか。そのことを、ブッシュさん以前にだれかに言われましたか、お答えください。
多国籍軍への自衛隊参加は、日本国内で随分長く議論してきたテーマです。これまでは、答えはノーでした。それは理由のあることだったはずです。今回の表明は、初めてこの態度を変えるのですから、まずは国民や国会に対して説明する責任があったはずです。それともあなたは、自分が決断しさえすれば、それですべてで、意見は同じ者はもとより、意見の違う者にも何の説明も要らないと言うのですか。あなたは説明をし議論を尽くすことの価値をどう考えているのですか。お答えください。
(現地情勢と法解釈)
懸念していたとおり、イラクの治安情勢は極めて悪化しています。主権移譲から一か月となった七月二十八日にも、百二十人以上の死者が出たと報じられました。主権移譲といっても、イラク国民の民意に正統性の根拠を持つ政府の樹立はまだ見えてこず、逆にイラクの情勢は、全土が戦闘地域と化しています。非戦闘地域に自衛隊を派遣するという、イラク特措法が定める派遣条件を満たす地域はありません。まして現状での多国籍軍への自衛隊参加など、到底法が予定する形ではあり得ません。とんでもないことです。サマワに展開する自衛隊は撤退すべきです。いかがですか。
(大量破壊兵器)
そもそも、イラク戦争の大義は、フセイン政権が大量破壊兵器を保有していたとされたことでした。そして、小泉さんたちは、イラク側に大量破壊兵器のないことを立証する責任があると言い続けてきましたね。ところが今、米英両国で、この点に関する両国の情報当局の情報は信頼できないのではないかと政治問題になっています。日本では、独自情報の収集や分析もなく、単に米英両国の危うい情報をうのみにして、専ら他力本願で、いち早くイラク攻撃を支持したのではありませんか。小泉さん、ここははっきりと、イラクの大量破壊兵器保有をどのような根拠で認定したのか、あるいは他国の情報のうのみなのか、端的にお答えください。
(改正年金法の問題点)
参院選の最大の争点であった年金改革について伺います。
改正年金法は、負担の上限と給付の下限を長期的に定めたことを看板としていましたが、その数字がまやかしであることが国会審議を通じて明らかになり、改正法に対する国民の信頼は失われました。そして、成立後に追い打ちを掛けるように、年金財政を見通すための最も重要なデータである合計特殊出生率につき、一・二九という数字が発表されました。なぜ審議中に隠していたのですか。こんな数字を隠していて、出血を止めるなどとよく言えたものですね。
一・二九の衝撃は、単に年金問題だけでなく、日本社会の根幹を大きく揺さぶっています。年金について最も重要な点は、改正年金法で政府が国民に対して行った約束が果たせなくなっていることです。いわゆる中位の人口推計は前提にし得ないということです。改正年金法は内容的に破綻しているのです。
その上、選挙期間中に、改正法に過誤があることが判明しました。浅尾議員の指摘は加給年金にかかわる過誤でしたが、それ以外に四十か所という前代未聞の過誤が判明しました。小泉さん、あなたもさぞびっくりされたことだろうと思います。
ところが、あなたの部下は、この欠陥を官報正誤という事務手続で修正しました。これによって、元の法律では罰則を科せられない人が、官報によって罰則を科されることになる。これは罪刑法定主義の否定であり、立法府の自殺です。
今回の改正年金法は、形式的にも内容的にも破綻しています。また、その過程において、政府の信頼は地に落ち、国会は瀕死の状態に陥っています。私たち民主党は、参議院選挙を通じてやり直しを国民に訴えました。そして、この約束を果たすため、今国会の冒頭に衆参両院で改正年金法廃止法案を提出しました。国民が見守っています。
(これからの方向)
そこで、小泉首相に改めて伺います。
国民は、改正年金法に対して強い不満を抱き、選挙でノーの答えを出しました。この結果をあなたはどう受け止めておられるのか、国民に現在の心境を率直にお話しください。
小泉首相、あなたに言われるまでもなく、私たちも三党合意のことはよく分かっています。年金改革も社会保障全体の改革も、与党だけでも野党だけでもできるものではありません。民主党は、この与野党協議を実りあるものにしたいと思っています。しかし、そのためには与党が自分たちの考えをもう少しはっきりさせてもらわないと、何を協議するかが定まらないのです。
既に、民主党は、年金改革はもとより、介護も医療も基本的方向を示しています。政府と与党も、一刻も早く基本的方向を示してください。とりわけ、選挙中から求めてきた一元化に国民年金を含むのか含まないのか、社会保障制度と消費税の関係をどうするのか、この二点について早急に結論を出してください。お考えを伺います。
先日、細田官房長官は、小泉総理の任期中に消費税の引上げを決定することもあり得ると発言しました。ところが、その日の夕方には、小泉さん、あなたはこれを否定されましたね。政府として一体消費税をどのように考えているのか、統一的な見解をお示しください。
(国会の会期)
私たちが提出した年金改革廃止法案を、小泉さん、あなたはどうされるつもりですか。国民が見ていますよ。国会のことだからと、ほおっかむりですか。法案いろいろですか。仮に反対だとしても、十分時間を取って審議を尽くすべきではありませんか。八日間という会期があなたの答えですか。それとも、法案が出てきたから再考されますか。
小泉政治の特徴は、国民の支持を頼りにしたところでしたよね。ところが、あなたは、今回の選挙結果で世論の支持が自分から離れると、今度は世論に対して正に馬耳東風、馬の耳に念仏。結局は、今までの自民党政治と全く変わらない国民無視の政治に戻ってしまったのであります。違いますか。
今挙げた課題はもとより、北朝鮮問題でもBSEでも聞きたいことは山ほどあり、少なくとも一か月以上の会期が必要です。たった八日間の会期にした政府・与党の姿勢は断じて容認できません。なぜ正々堂々と十分時間を取って議論することを避けるのですか。国会を何だと思っているのですか。意見や立場が異なっていても、話せば分かるという犬養木堂さんの教えに思うところはないのか。問答無用ですか。答弁をいただきたい。
(最後に)
小泉さん、あなたの姿勢で一番残念なことは、どうせ答弁してもあなた方は反対なんでしょう、だったら時間の無駄というあの態度です。民主主義は単なる形式ではありません。精神なのです。これだけ我が国の内外に問題が山積しているのに、短い会期になったことを極めて残念に思います。小泉首相の指導力に絶望的な思いで、なお期待しつつ、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 江田議員にお答えいたします。
先日の豪雨災害におけるボランティア活動と政治の対応についてでございますが、先日の豪雨災害で多数のボランティアの活動が被災者の支えとなっている様子を私も現地を視察してよく分かりました。大変心強く感じました。
災害対策は、政府、地方自治体、地域、ボランティア団体などが一体となって推進する必要があると思っております。各地の消防団、消防・警察の広域援助隊、自衛隊などが救援救助活動、応急復旧に全力を挙げて取り組んでおられます。政府としては、今後とも、被災者に対する支援、被災地の速やかな復旧に最大限努力するとともに、ボランティア活動の環境整備にも力を入れてまいります。
今回のサミットにおける各国首脳との意見交換についてでございますが、今回のサミットでは、回復基調にある世界経済の傾向を持続させるよう、それぞれの国が改革を進めていくことが重要であると認識いたしました。
私としては、国民一人一人、地域、企業が主役となり、努力が報われ再挑戦できる社会、子育ての喜びを実感しながら次世代をはぐくむことができる社会、国民の安全、安心を確保できるような社会を目指し、今後とも、各般にわたる構造改革を推進し、持続的な経済成長に結び付けたいと考えております。
参議院選挙の結果についてでございますが、勝ったのか負けたのかということでございますが、自民党の議席は確かに目標二議席足らず、これは勝ったとは言えない状況であります。しかしながら、与党全体で六十議席を獲得している。参議院においても、全委員会で過半数の議席を獲得することができた。野党を見ますと、民主党は躍進しましたけれども、それは共産党の議席を獲得したと。野党全体では同じである。正に、これは国民の判断で、痛み分けというか、野党もしっかり成長して、政権担当し得るような政党に成長していただきたい、自民党も政権を担当しているが、野党の声にも耳を傾け、反省すべきは反省し、しっかりと改革を進めろと、そういう声だと受け止めております。
年金問題とかイラク問題など、そういう批判がある中で安定多数を確保できたことを重く受け止め、今後とも改革を促進し、国民の信頼を得られるような政治を実行してまいりたいと考えます。
参議院の役割、位置付けについてでございますが、二院制の下において、参議院は衆議院に対するチェック機能などが期待されていると考えます。参議院の在り方については各党各会派でよく議論していただくべき問題と考えますが、今後とも、衆参両院がそれぞれ独自性を発揮していただきまして国権の最高機関としての役割を果たしていただきたいと考えます。
日歯連の政治献金でございますが、政治家が政治資金を受け取る際には政治資金規正法にのっとって適正に処理されなければならないのは言うまでもございません。日歯連の政治献金にかかわる疑惑については、現在、捜査当局において一連の事件を捜査中であり、その状況を見守りたいと思います。
いずれにせよ、政治に対する国民の信頼は改革の原点であり、国民の信頼を得ることができるよう、政治資金の在り方については、政治に携わる者一人一人が襟を正しく、対応しなくてはならないと思います。
政治資金の収支報告書の記載についてでございますが、政治資金規正法では、政治団体はそのすべての収入、支出を収支報告書に適切に記載する義務が課されております。この法律が、行政庁に対し御指摘のような実質調査権を付与していないのは、政治活動に対する行政庁の関与を必要最小限にとどめるべきであるという考えに基づくものであると理解しております。
御指摘の点については、各党会派において更に議論を深めていただくべき問題であると考えます。
多国籍軍の中に自衛隊が参加する、活動するという私の発言についてでございますが、国際協調が一層強化される中で行われたG8サミットの際の日米首脳会談では、政府部内での検討を踏まえ、私から、我が国としてイラク人道復興支援特措法に基づく支援を継続するとの基本方針を明確にいたしました。また、サミット終了後の記者会見において、多国籍軍との関係や我が国の自衛隊の法的地位については帰国後に検討する旨表明いたしました。
その後、多国籍軍の中で自衛隊が活動することについて、与党を始めとする方々の意見も踏まえ、政府において鋭意検討を行い、野党の党首の方々にも説明を行いました。また、さきの通常国会の会期末に私自身が出席して委員会審議を行い、六月十八日には基本計画の変更について直ちに国会に報告を行うとともに、閉会中審査も行われました。国内議論を行わずに自衛隊が多国籍軍の中で活動することを決定したものではございません。
自衛隊は撤退すべきだというお話でございますが、六月二十八日からイラク人によるイラク人のための統治が始まり、イラク暫定政府の要請を受けて多国籍軍が支援活動に当たるなど、イラク支援のための国際協調体制が再構築されております。イラクの治安情勢は全般として予断を許さない状態が続いておりますが、サマーワを始め自衛隊が活動する地域の情勢については、これまでの情報から総合的に判断して、現時点においてはいわゆる非戦闘地域の要件を満たしていると判断しております。
自衛隊は多国籍軍の中で人道復興支援活動に当たっておりますが、我が国の主体的な判断に基づき、我が国の指揮下の下でイラク特措法及びその基本計画に基づき活動を行っている点は何らこれまでと変わっておりません。我が国としては、国際社会の責任ある一員として、資金協力と人的貢献を車の両輪とした我が国にふさわしい人道復興支援活動を今後とも続けていくべきであり、今、自衛隊を撤退させる考えはありません。
米軍等によるイラク武力行使及び大量破壊兵器の存在についてのお尋ねでございます。
関係国際機関の査察報告書でも明らかにされているとおり、イラクはかつて実際に大量破壊兵器を使用していたほか、多くの大量破壊兵器に関する疑惑があり、査察への非協力を始め関連安保理決議の重大な違反を継続的に犯してきました。
米国等によるイラクに対する武力行使は、累次の関連安保理決議に合致し国連憲章にのっとったものであります。我が国がこれを支持したことは正しかったと考えております。
改正年金法に対する国民の声をどう受け止めているかということでございますが、さきの国会で成立いたしました改正年金法は、どのような年金制度であっても避けることができない給付と負担の均衡を確保するという課題に正面から取り組んだものであり、これを廃止することは考えておりません。政府としては、その内容を国民に一層説明するなど、施行に向けた準備を進めることとしたいと考えております。
なお、改正年金法に関し、合計特殊出生率の公表をめぐる問題、形式とはいえ法律に多くの過誤があった問題など、国民の信頼を損なう事態が生じたことは誠に遺憾であり、今後このようなことのないよう万全を期してまいります。
改正年金法の国会審議においては、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的な見直しを行うべきとの議論がございました。また、経済界、労働界から政府においても同様の議論を行うことの要請がありました。このため、政府としては、社会保障の在り方に関する懇談会を設置し、七月三十日に第一回の会合を行ったところであります。
今後とも、このような議論を通じ、国民の理解が得られる年金制度となるよう最大限努力してまいります。
社会保障全体の改革の方向性、年金一元化や消費税の扱いについてでございますが、さきの国会の年金改正法の審議においては、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的な見直しについて議論を進めていく旨の三党合意がなされました。また、政府としても、社会保障の在り方に関する懇談会を設置し、社会保障制度全般について、税、保険料の負担と給付の在り方などについて幅広く議論を開始したところであります。
年金の一元化については、どのような形で一元化するかについても様々な意見があるところであり、一元化の共通の認識を持つためにもこれらの機会を通じて幅広く議論を行っていくべきものと考えており、民主党の参加を得た三党協議も早急に進められることを期待しております。
一方、消費税については、総理就任以来、在任中には消費税を引き上げないと申し上げておりますが、税制全体の在り方として消費税の議論は大いに歓迎するとも表明しております。社会保障の在り方に関する懇談会においても、社会保障制度全般について幅広く検討していただく中で十分に御議論をいただきたいと考えております。
政府としては、昨年末の与党税制改正大綱を踏まえ、社会保障制度の見直し等と併せ、中長期的視点に立って税制の抜本的改革に取り組んでおります。
民主党提案の改正年金法廃止法案についてでございますが、民主党提出の年金改正法廃止法案は、年金一元化の内容を示さず改正法を廃止するために、給付と負担の均衡が確保されず、年金財政の悪化を放置するものであります。国庫負担の財源を明らかにせず二分の一への引上げを行うなど、極めて問題がある内容の法案であると思います。
いずれにせよ、その取扱いについては国会において議論されるものと承知しております。
世論の支持と今国会の会期についてでございますが、私は、これまで国会での議論などを通じて、小泉内閣が推進しようとしている改革、政策について国民の理解が得られるよう努力してまいりました。
改革の具体論を進めようとすると何事にも賛否両論がございます。反対の立場から見れば不満もあると思いますが、広く国民の理解と協力を得られるように引き続き努力していくことが必要だと考えております。
言うまでもなく、今国会の進め方については、与野党協議の上、国会自らが決めるべき問題でありますが、いずれにしても、重要な政策課題については今後とも国会の内外において国民に対する説明責任を果たしていくとともに、国民の理解にこたえられるよう引き続き改革を促進してまいります。
話せば分かるという犬養木堂氏のお話をされましたが、昭和七年五月十五日でしたか、その犬養首相も話せば分かると言いながら暴漢に撃たれて命を落とされました。話せば分かるということを言っても分からない人がおりますが、また分かろうとしない方もおりますが、できるだけ分かるように説明するよう今後とも心掛けていきたいと思います。(拍手)
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
2004/08/03 |