2006年3月23日

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164 参院・法務委員会

10時から、法務委員会。裁判所職員定員法改正案の質疑で、10時半から私が40分間、司法制度改革、裁判所の将来像、刑務所・検察庁・裁判所の情報漏洩、国民意識調査と量刑検索システムなどにつき質問しました。


○江田五月君 裁判所職員定員法の一部改正案、これは、今も荒井委員から御質問ございましたが、非常に技術的な法律で、判事の員数、判事補の員数の増加、四十人、三十五人ですから、これはかなりのものですよね。一方、しかし裁判官以外の裁判所職員の員数は三人増加と。三人増加というんでは何が何だかさっぱり分からないと。しかし、この中には相当大規模な配置の変化、事務官を書記官にするとか速記官を書記官にするとか廷吏はどんどんなくしていくとか、そういう入替えをやって全体の差がわずかに三人ということなので、この法律の表面だけを見ていたんではよく分からないのだと思うんですね。

 そこで、その裁判所における人的資源の配置、さらにその基にある今の司法の大きな変化、これが一体この改正案にどういうふうに表れているかということについて、まず法務省と最高裁の方にお聞きをしておきたいと思います。

 今、司法制度改革、これは幾つかの、幾つかといいますか、かなりの数の法律も既にできまして、これが実行の過程に入っているわけですね。例えば、ロースクールはもう間もなく最初の修了生というんですかね、出てくるということになって、さらに裁判員制度もあともう三年少々でスタートをすると。あと何日かで来年度という年度が始まるわけですが、その年度にはいわゆる、従来司法ネットと言っておりましたが、正式には日本司法支援センター、現場では愛称が法テラスと決まったそうですが、こういうものも始まると。

 実は、私ども民主党は、この司法制度改革についてはむしろ、もう出された提案をいいか悪いかチェックをするということを超えて、むしろ我々の方が司法制度改革の牽引車になって、言ってみれば、立法の過程の中で言えば与党的な立場で提案をして実行を迫っていくという、そんな気持ちで今日までやってまいりました。

 私は、その司法制度改革は二つの必要性があったと。一つは、御承知のとおり、我が国は戦後、戦前と大きく制度を変えたわけです。憲法も全く新しい憲法にして、そして国民主権、民主主義、平和主義、基本的人権、こういった新しい制度でスタートしてきたわけですが、残念ながら司法制度については戦後改革というのは極めて不十分であって、その言わば、かなり後れましたが、完成をしなきゃならぬという意味で、国民主権の下の司法制度をつくる。もう一つは、時代が大きく変わってきた。ITといったこともあるでしょう、あるいはまた最近よく言われる事前調整型から事後チェック型へといったこともあるでしょう、そういう時代の変化に見合った司法制度にしていかなきゃならぬという、この二つの要請から司法制度改革やっていかなきゃならぬというところで、今もう改革の真っただ中にあるわけです。

 来年度予算を編成する最中の昨年十二月に、超党派でつくった司法改革推進議員連盟というのがありまして、この議員連盟がこれは財務大臣に申入れをいたしましたが、今の法テラスの体制整備、裁判員制度の啓発活動の推進、ロースクールを含めた法曹養成制度の充実、ADRの更なる充実など、思い切って司法制度改革に本気で取り組むという、そういう予算獲得をしてほしいということを言ったわけですが、これは単なる予算だけじゃなくて、この数年にわたって司法制度改革をどうするかと、どれだけの意気込みを持ってどういう問題意識でやっていくかと、このことを問題提起をしたつもりでおります。

 そこで、今この法律、法改正案を出されるに当たって、司法制度改革の全体の決意の中でこの法案をどういう位置付けで出そうとしておられるのか、ちょっとざくっとした質問ですが、法務大臣、そして最高裁、今日は事務総長お見えいただきたいと言ったんですが、総務局長がお見えですので、お答えください。

○国務大臣(杉浦正健君) 江田先生は、司法制度改革全般について、おっしゃったとおり先頭に立って御尽力いただいてまいりましたわけで、私は自民党の方でやってまいりましたが、心から敬意を表し、感謝しておるところであります。

 先生おっしゃったとおり、司法制度改革は法制的にはほぼ仕上がっておりますが、実施はまあ法科大学院等着手したばかり、あるいはこれから着手するものとしては裁判員制度、司法支援センター、ADRの拡充等々あるわけでございまして、正に真っただ中にあると言ってよろしいかと思います。そういう状況を踏まえてこれもお願いをし、この定員増も予算についても全力を尽くしてきたところでございます。

 まず、その人的拡充につきましては、ここでお諮りしておりますとおり、裁判官の実質七十五人増、検察官は別途四十五人ですか、増員をお願いをしておるところでございます。定員五人の純増ですけれども、これ、政府全体で見ますと純増というところは極めて少ないわけで、大体おおむね各省庁とも純減であります。法務省は大幅増で三けたの増員、刑務所刑務官等増員が要りますので、独り勝ちと、内閣の中では、という状況でございます。人数的に二百八十三人の純増でしたけれども、法務省は、まだまだ不十分だと思っております。しかし、これだけ厳しく査定しているところから見るとまあまあかなと思っております。裁判所についても後ほどまたお答えあると思いますが、五人の純増というのは、これは政府部内との比較でまいりますと、合理化する反面大幅な増員を認められたということだと思います。

 先生方の御要望に沿って予算面について若干御説明申し上げますと、まず日本司法支援センターの設立、運営に関してですが、百十三億余の要求をしたのに対しまして百二億七千七百万円認められました。これには、扶助協会が今年秋解散いたします。しかし、その分だけ、扶助協会の方へ付けておりますので、二十何億ですかね、それは丸々こちらへ参りますと、来年度からはその分がこちらに乗るということになります。それから、国選弁護費用も継続分が最高裁に計上されておりますから、ここに計上されているのは新規分だけでございますので、新年度予算としては相当大幅なといいますか、大きな予算を付けていただいたというふうに思っております。

 これによりまして、本部と地裁の、百五十一ですか、現在、そこに地方支部を立ち上げるということは今年度中に実現することになるんじゃないかと思います。司法過疎地域等、そのほかも若干含まれておりますが、百五十一も、ほかにもちょっとありますが、初期のこのネットワークを司法過疎地域に特に配慮して全国に張り巡らすということについては、まだ時間が三年、五年掛かっていくと思いますが、スタートとしてはいい予算を付けていただいたと思っております。

 裁判員制度の広報啓発三億二千万、法令国際発信には六千八百万、ADRの充実、活性化に二千四百万など、先生方の要望におこたえできる内容になっておると思っております。

○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) このたびの司法制度改革に臨む裁判所の姿勢について、まず御説明を申し上げます。

 社会の複雑多様化と国際化が進展するにつれまして、法人、個人を問わず当事者間の利害の衝突が複雑、深刻化してまいりまして、透明なルールによって紛争を解決する存在である司法についての機能強化を求める声が高まっているという認識でございます。また、我が国が事前規制型社会から事後チェック救済型の社会への転換を図ろうとする最近の一連の諸改革の中で、事後チェック及び救済の中心的な役割を担い、かつ公正で透明な手続を有する裁判所への国民の期待は今後ますます大きくなっていくものというように考えております。

 このような中で、このたびの司法制度改革が、司法を取り巻くこのような状況を踏まえまして司法機能の充実強化をするために、経済活動を始めとする時代の要請に応じた司法制度の整備、これらのニーズにこたえるに足りる法曹の確保、国民的基盤の強化という三つの柱に基づきまして司法制度全般の改革を図るものであるというような理解の下に検討をしてきておるわけでございます。

 裁判所といたしましては、このような司法制度改革の趣旨を実現するために、事件処理体制の一層の充実強化を図るとともに、既に導入されました制度について改革の趣旨に沿った適正な運用に努めてまいったところでありますが、今後導入される新しい制度につきましても、その円滑な実施に向けて総力を挙げて準備に取り組んでいるところでございます。

 今後もそのための努力を続けていくという所存でございますが、この増員の計画に関しましては、平成十三年の四月に、司法制度改革審議会の場において、裁判所の人的体制を充実させる方策について、訴訟の迅速化、専門化への対応等のため、今後十年間で約五百人プラスアルファの裁判官の増員が必要であるというように述べてきたところでございまして、その延長線上で、平成十八年度につきまして、裁判官については七十五名という増員を求めておるところでございます。このような中で今回の定員法の改正をお願いをしておるというところでございます。

○江田五月君 意気込みは分かります。大いに頑張っていただきたいと思います。私どももできる限りの支援をしていきたいと思っておりますが、ただ、やはり依然として、そうやってつくっていった後の裁判所の全体像というのは一体どういうことになっていくのかと、これが必ずしも定かでないような気がするんですね。

 特に、この裁判所職員を増やしてくれという、毎年のようにこれ出てくるわけですが、全体に、例年、事件の類型を挙げて充実の必要を説明するというのがまあ常であったわけです。今ここに出されている来年度のものについては、民事と労働、さらに刑事事件の適正迅速な処理、裁判員制度導入、医療観察事件処理と、ぽんぽんぽんとこう書いてありまして、去年の場合には、これ、去年といいますか、今年度ですか、これが倒産事件と知財と、そうやって個別の類型を挙げて言うだけで、少しずつ増やしていって、さてどこへ行き着くのかなと。今五百人の増員ということを言われましたが、どうも全体像がよく分からないと。

 私ども、もう超党派といいますか、与野党挙げて、毎年毎年、法務についても司法についても、人的、物的充実の請願もみんなで採択をしておりまして、皆さんがやる御努力は多としながら、さはさりながら、やっぱりどういう裁判所の全体像に向かっていくのかということは、一体だれかが考えているのかどうか。裁判所の全体像というのは、恐らく裁判所は現実に事件に直面して毎日事務を取り扱っているわけですから、一定のものはお分かりになっている。しかし、やはり裁判所というのは、こういう裁判所になりましょうと言って、自らどんどんリーダーシップを持つ役所とはちょっと違う。そうすると、裁判所が現実に毎日の事件処理の中で得る様々な生きた情報をどこかで集約しながら裁判所の全体像というのを考えていかなきゃならぬ。

 そうすると、これは法務省ということになるのかなという気もするんですが、今この時代の変化に伴って、例えばADRというのがもっともっと拡充してくる。そうすると、この細かな一つ一つの事件について全部裁判所が扱うんじゃなくて、裁判所は一定の方針、指針を出して、あとはそのADRの中で紛争を解決しろという、そういう仕組みもできてくるかもしれない。もうかなりできているかもしれません。あるいはまた、例えば心神喪失者、医療観察制度、あるいはDV、あるいは成年後見、あるいは性同一性障害者の扱いなど見ていくと、裁判所が社会に対して一定の後見的役割を果たしている。訴えられなければ何もしないんですよというよりも、むしろもっと前へ進んでいかなきゃいけないという、そういうような裁判所の全体像ということも出てくるかと思うんですが、こういう裁判所の全体像をどうやってだれがどこで考えているのか。これを法務大臣そして最高裁の方から御説明ください。長々とでなくていいですから、ぴたっと。

○国務大臣(杉浦正健君) ぴたっとお答えするのは非常に難しい御質問でございますが、政府においては、法務省は司法制度に関する企画及び立案に関することを所掌事項としておりますので、先生のおっしゃる趣旨は、政府としては法務省が責任を持って当たるべきことだと思います。

 将来像がどうなるかということなんですが、漠と申せば、政府は小さなものにすると、しかし司法は大きくするというのはいかがか、まあ中くらいの司法にすると。要するに、小さくはできないと、しっかりした司法にしていかなきゃならないという将来像を描いて、司法制度改革審議会でずうっと議論されてきたと、私はそう思っております。いろいろな意味で、これから政府としても努力していかなきゃいけないと思います。

 個人的感想を一言申しますと、国民の目から見ますと、やっぱり信頼できる、頼れる司法でなきゃいけないということじゃないでしょうか。そういう意味で申しますと、私、司法改革が始まったころ、橋本内閣のときですが、最高裁判所は前向きでした。今も前向きでしたけれども、改革をやろうというお気持ちになられた。そのお気持ちを幹部の方といろいろ話をしておって感じたことは、やはり裁判を行うのは裁判官です、最終的には。当時、今の最高裁の幹部そうだと思いますが、現在の裁判官の質、在り方について相当危機感を持っておられるなという印象を受けました。

 私は古い人間ですから、私どもの同期は、戦争中、子供でした。就職、僕らの仲間は裁判官になっていますが、連中の話聞くと、裁判官の中にも戦争から帰ってきて、戦火をくぐり抜けて、戦争の惨禍を体験して、死中に活を得てきた方々がたくさんおられた、これは社会全部そうですが。その裁判官が非常に温情あふれるといいますか、寛大な裁判をなさったようですね。そういう先輩から受け継いで、受け継ぐにしても要素はあった、戦争中子供でしたから。

 ところが、今の裁判官の若い方々は、この園尾さんもそうですけど、戦争を知らない、全く。戦後の発展の中で、まあぬくぬくととは申しませんが、素直に育ってこられた方々で、社会は激動の中にあります、競争が激しくて、企業も倒産する、国際競争激しい。そういう激動の中で、本当に今の裁判所が国民の目から見て頼りになる裁判所かどうか、信頼できるかどうかという疑念が若干、おおむね信頼できるけれどもプロの裁判官は。まあ分かりやすい言葉を使えば、裁判官は世間知らずじゃないかとか、例えば、そういう、何というか批判が出てくるような裁判所であることを心配されているような印象を受けました、私は。

 ですから、そういう中くらいの司法を大きな司法にしていかなきゃなりませんが、もちろん弁護士も検察官も大事であります、隣接業種も大事でありますが、特に裁判所、裁判官がやはり三権の一翼を担っておられるわけですから、しっかりした国民から頼りがいのある質の高い、人格、識見ともに、そういう裁判所になっていってほしいと、こう思っております。

 法曹一元という言葉がありますが、私はそうなっていくと思うんです、自然に。弁護士から裁判官になる、裁判官も弁護士になる。自民党の改正草案からは弁護士の任期外しました、十年、短期任用も可。裁判官が弁護士になって、また裁判官に戻ってくる、そういうのがあってもいい。経験を積んで、社会のことをよく知った方が裁判をやるのがいいわけで。

 それから、裁判官も世間へ出る。例えば、司法支援センターは現職の裁判官、検事にどんどん入ってもらおうと思っています。弁護士になって仕事をしてもらおうと思っています。そういうことを通じて、司法に携わる方々が国民の目から見て信頼するに足る方々になってもらうことがやっぱりそのかなめではないかと私は思っております。

○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 裁判所といたしましては、裁判所が目指すところといいますのは、やはり裁判所は国民から申し立てられた事件について判断をするというところでございますので、そのような国民からの負託にこたえられる裁判所をつくっていくということでございます。

 これにつきましては、まず、今法務大臣からもお話がありましたように、裁判官の資質についてしっかりとした向上策を更に講じていくというようなこと、それから、裁判官のその量的な側面につきましても、これを負託にこたえられるだけの、それだけの陣容を備えていくというようなことをやっていかなければいけないということで検討しているわけでございます。

 そういうことで、平成十四年には、これから十年間ということを見越して裁判官の数を五百人プラスアルファという、そのような計画を立てたわけでございまして、その延長線上で努力をしておるわけでございますが、しかしながら、その後、裁判員制度の導入について立法がなされ、医療観察法、労働審判制度などの新たな制度の立法が続くというようなことで、裁判所に新たな負託が更に加わってくるというような状況にございまして、その変化もかなり急であるという認識をしております。

 このような中で裁判所の将来像を描くためには、ただいまのグランドデザインということを考慮に入れておるわけですけれども、なお急激に動く状況にきちんとこたえるというために、この情勢に柔軟に対処する必要性も出てきておるということで、このようなことを併せながら、検討を進めておるという状況でございます。

○江田五月君 言葉ではまあいいんですけどね。例えば、裁判所、確かに訴えがなければ裁判はないんだと、まあ不告不理ですかね。しかし、さはさりながら、やはり裁判所としてどういう世の中をつくっていきたいかという一定のものを持っておく必要があるんだろう。

 園尾総務局長がぬくぬくと素直にお育ちになっているかどうかはよく分かりませんが、例えば私ども、私も裁判官やっていたことあるんですけれども、私どものときには、やはりいわゆる代用監獄というのはどうも自白偏重、自白に偏る傾向が出てくるからなるべく被疑者の勾留も拘置所へ置こうとか、あるいは少年も警察の勾留じゃなくて鑑別所へ観護措置で身柄を確保してもらおうとか、そういうような一定の方向を持ってそれなりにやっていた。

 ところが、最近聞くと、被疑者勾留を拘置所にというのはもうほとんどない例外的なものであって、もうほぼ全部代用監獄、まあこれはこれからまた法案が出てきますけれども、そういうことになっているというようなことで、ぬくぬく素直がそれじゃ困るなという感じがするんです。

 やっぱり裁判所として、どういう世の中をつくりたいかと。あんまり裁判所がどんどんどんどん前へ行くと困るんですが、やっぱり一定のものは持ってほしいなということを感じます。

 今日はいろいろな質問は用意したんですが、どうもあんまり、どんどん時間がたつので、ちょっと最近気になることを伺っておきたいんですが、裁判所も法務省もしっかりした役所だと思うんですけれども、しかし、例えば刑務所だとかあるいは検察庁だとか、それから裁判所からも情報漏えいというものが出てきたと。

 新聞報道なんですが、二月に鹿児島刑務所、福岡拘置所の収容者、刑務官ら計五千七百人の個人情報が流出したと。宮崎地検に関する、これは容疑者情報が流出した。

 これ一体どういうことなんですか。これも手短に、まず法務省の方は、これは一体どういうことでこんなことが起きたのか説明してください。

○国務大臣(杉浦正健君) 大変遺憾な事態が発生いたしまして、本当申し訳なく思っております。
 京都関係ですが、京都刑務所の職員を含む十二名、調査の結果十二名が関係しておりますが、職員が平成十三年十月ごろから十六年十二月ごろにかけて、福岡刑務所ほか四庁で作成された処遇上の実例や内規文書等の電子データを研修あるいは執務の参考資料に使用したいなどとしてコンパクトディスク等外部記録媒体に複写したものを職員間でやり取りしておったわけでありますが、京都刑務所の職員が保有するCDに保存されていた約一万ファイルが流出したと。その情報の中には、被収容者三千三百八十人分及び職員二千二百八十三人分の氏名等個人情報の電子データが含まれていたものでございます。

 検察庁、ついでに申し上げますと、宮崎地検の職員が、平成十二年の人事異動に際し、自己が担当していた事件の引継ぎのために作成した資料一通が流出したという事案でございまして、当該引継ぎ資料には交通関係の被疑者八名の氏名及び罪名等が記載されていたものでございます。

 流出の原因については、いずれの事案もそうですけれども、その職員がファイル共有ソフトウエアであるウィニーを利用している自宅の私物パソコンに当該資料の電子データを保存していたところ、同パソコンがウィニー関連のコンピューターウイルスに感染したことにより流出したということでございます。

○江田五月君 これはかなり重大なことで、しかも、今行政各部に及んでいる、恐らく行政だけじゃないんですがね。細かくこれから私どもチェックをさせていただきたいと思っております。

 ウィニーをインストールして私物のパソコンに公の情報を入れて、このウィニーがウイルスに感染して流出していくということのようですが、自分が所管している情報じゃない情報もあるいはあるんではないかとかですね。

 それから、先ほどの検察の場合は、これは私は事務官と最初聞いたんですが、よく聞いてみると検察官事務取扱検察事務官、ですから仕事としてはこれ検察官なんですよね。今日は問題の指摘だけ。

 裁判所、東京地裁でも個人情報が出たと。これは書記官の情報だということなんですが、私はどきっとしたのは、私どものころには、判決の起案なりあるいは翌日の事件のために記録を自宅に持ち帰って、自分で持ち帰る場合もあるし、役所に届けてもらう場合もある、自宅でいろいろやっていたんですよね。

 今は裁判の記録は恐らくまだファイルにはなっていないと思いますが、しかし、こういう時代ですから、いずれ証拠関係にしても、あるいは事件記録にしてもファイル化されるということは当然予想される。そういうものを裁判官というのはやっぱり自宅に帰って夜中徹夜して起案するというのがどうも常でして、そうすると、裁判官のところからこの情報が出ていくということは、これは将来その危険性はやっぱりあるので、今から相当の対応、対策を取っておかなきゃいけないと思うんですが、最高裁、どういうような覚悟でおられるか、お聞かせください。

○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) ただいまの御指摘の事件は、東京地方裁判所民事部の書記官が部内検討用のメモを作成するために自宅に持ち帰りました執務関連の電磁情報を自宅のパソコンに入れておりましたところ、そのパソコンがウィニー関連のコンピューターウイルスに感染いたしまして、自己の個人的なファイルとともに裁判所の執務上使用したファイル約千個が外部に流出いたしまして、東京地方裁判所の民事部が民事執行関連の関係で執務上作成した文書を中心としまして、過去の決定例なども含めまして、住所及び氏名によって個人が特定できるものが約百五十名分流出したというような事態でございます。

 私ども、このような情報、電磁情報が流出するということに備えまして、これまでもこのようなものを庁舎外にやむを得ず持ち帰るという場合にはパスワードを設定するというような方法を指示をしていたつもりでございますけれども、このような事態が生じまして、最高裁判所ではまず緊急に二月二十四日、全国の職員に対しまして、執務上の電磁的な情報をインターネットに接続した私物パソコンからこれが存在する場合には消去するということ、それから保存をしないということ、それからファイル共有ソフトを執務上の電磁的情報を扱うパソコンにはインストールをしないということの指示をいたしました。

 これに加えまして、裁判所における情報セキュリティーの確保ということのために、改めて執務上使用する電磁的情報の管理についての注意事項を全職員に周知するという体制を取りますとともに、今後、この情報セキュリティーの水準を確保するという目的での情報の管理につきまして、これが適正に行われるように更に検討を続けておるところでございます。

 ただいま御指摘のような問題意識を持っておりますので、それに対処ができるように対策を立てたいというように思っております。

○江田五月君 こういうパソコン、コンピューターを使っていろんな処理をするというのは、これは時代の流れのある意味で必然でして、もうパソコン使っちゃいけないなんと言ったって、そんなこともう駄目ですよね。それは判決の起案だって恐らく今もう皆ワープロじゃないですよね、もうパソコンをどんどん使っておられるんだろうと思いますし、そういう時代の変化の中で、しかし情報流出というようなことが起きないように、締めるところはきっちり締めながら、しかし大いに新しい技術は使っていくという問題意識を持っていただきたいと思うんですね。

 ですから、ウィニーはインストールするなという、まあ取りあえずはそれは仕方がないのかもしれないけれども、そういう意識じゃなくて、もっと何か前向きの問題意識がなければいけないだろうと思っております。

 そんな中で一つ、あともう時間がほとんどなくなってきましたが、裁判員制度と今のデータとの関係について、これは私の問題はこういう問題意識なんです。司法研究、これは私なんかは懐かしい言葉なんですけれども、現場の裁判官が仕事の量を若干減らして司法研究というテーマを与えられてそして研究する、その報告書が出てくる、これが法曹会というあれは財団法人かな、から出版されて、なかなか読みごたえのある研究報告書がずっと出てきてというようなものなんですが、この司法研究で国民の意識調査をされた。

 その中で、量刑について裁判官と一般の国民の場合との比較がなされて、そしてそういう調査の、まあ細かなことはもう時間ありません、省きますが、そういう調査の結果、国民の方から、類似事件の裁判例というのがやはり欲しいと。特に、裁判員制度が導入されて裁判員の人たちに量刑まで決めてくれというわけですから、そうするとやっぱり類似事件の裁判例、量刑の言わばデータ化されたものが必要になってくるかと思うんですね。

 今、この量刑のデータ化というのは一体どうなっているんですか。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 今委員から御紹介ありましたとおり、今回のアンケート調査の中では国民の、回答者の約八割以上の方が量刑に際しては何らかの参考資料が欲しいということを言っておられまして、また各地で模擬裁判などをやりましても、裁判員役の方からは必ずそういう御意見が出ております。したがいまして、最高裁としましては、裁判員制度が施行されるまでの間にこの点についてきちんとした対応を取れるように検討をしているところであります。

 具体的には、今お話のありましたようなデータシステム、これは具体的には、評議においてその事件で重要であると認定された量刑因子を取り出して過去の判決のデータの中から類似した事件を検索して量刑の参考資料としていただくと、こういうものをこれからきちっとした形で対応し、裁判員の施行までにはこういうものについて具体的な設計を進めていきたいと考えております。

○江田五月君 現在でもこの量刑についての検索システムはあるというようにも聞くんですが、どういう形で存在しているんですか。

○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 裁判官の資料として検索に付するためのものというものもないわけではございません。ただ、これは罪種が限られておりまして、裁判員の事件すべてに対応するようなものでもありませんし、それから、裁判官の資料ということですので、これが裁判員の量刑の際にどういう形で使われるかということについては更に抜本的な見直しをしなければなりませんので、今後そういうものをこれからつくっていきたいと、このように考えているところであります。

○江田五月君 私も聞いてみたんですが、正にそういうことで、検索システムはあるんだそうです。あるけれども、それは個々の裁判所ベースぐらいですかね、にあって、その裁判所の裁判官が自分の参考のためにアクセスできる程度のものであって、私が見られると聞きましたら、いやいや、外部の人はとても見れるようなものじゃありませんという程度ですから、裁判員に見せることができる、参考にしてもらうことができるようなものには恐らくなっていないんですよね。

 昨日も前川委員の方から、裁判員制度導入についてどういう予算措置が今検討されているのかについてかなり厳しい指摘も含めながらいろいろなチェックもありましたが、今のような例えば量刑検索システム一つ取ってみても、相当これは練りに練ったシステムをつくらなきゃいけないんだろうと。一方でしかし、いや、裁判所の過去の例はこうですから裁判員の皆さん、こういうふうにしてくださいねと、それでも困るんで、参考にとどめると、しかし十分参考にはなると、そういうシステムをどうつくるかというのはこれからの大仕事だと思います。

 そのほかにもまだまだ尋ねたいこともあるんですが、もう中途半端に尋ねてもしようがないので、時間若干残して終わります。


2006年3月23日

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