平成十八年十月二十六日(木曜日)
○江田五月君 久しぶりに私、委員会の質問に立つということになりました。緊張しております。
長勢甚遠さん、法務大臣御就任、本当におめでとうございます。席外されておりますが、水野副大臣、そして奥野法務大臣政務官、それぞれ御就任、おめでとうございます。
長勢大臣におかれましては、満を持しての御就任だと思います。今、周辺から対決、対決とプレッシャー掛けられておりますが、決して大臣と対決しようと思っておりませんので、ひとついい法務行政のために切磋琢磨しながら知恵を絞り合っていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
私は、長勢大臣とは、ちょっと個人的なことをいろいろ申し上げますが、大学の卒業が同期なんですね。一緒のときに卒業いたしました。長勢大臣のホームページを見ますと、大臣、卒業式には御両親が一緒に来られたんですかね。私なんかは両親は全然大学なんか来てくれなくて、大臣は大切に育てられたんだなと、そんな感じがしたり。それから、しかし、大学入学が私、二年早いんですよ、六年おりまして。ということは、大臣が入学をされたときに、私は、東京大学教養学部学生自治会自治委員長の二期目の選挙やったときでありまして、私に投票をしてくれたかどうかまでは聞きませんが、そんな時代を一緒に過ごしてきた。
私は司法研修所へ入りましたが、大臣はすぐに労働省へお入りになって、官僚でずっとやってこられて、今政治と。私はどうも、ストレートですとんと東大へ入って、そのままストレートで官僚になって、官僚で一定の仕事をしてという、これは人間としてかなり足りないところが多いんじゃないかと思っておるんですね。
新聞に、「「必修漏れ」十道県六十三校」、公立学校、本社まとめの最初に富山県が出てくる。高岡南というのが出てきまして、富山高校は出てないんでちょっとほっといたしましたが、このように大学受験に必要な科目だけを教えていく、習っていく、そしてインチキをやって自分だけが良ければいいというそういう習性を育て上げられる、そうやってストレートで官僚まで行った、これがこの政治の場に出てくるというのは、政治を冷たくするんじゃないかという気がして仕方がないんですが、仕方がないんですが、長勢大臣は違う。
いや、本当にこれまでいろんなお付き合いをして、労働省というところが良かったのかよく分かりませんが、人間味あふれて、手紙はやはり巻紙に筆で書いた方がいいとか、そういう人の機微をよく心得ておられて、いろんな判断も、本当に困った人、苦しんでいる人、そういうところにちゃんと気配りが行き届く、そういう人だと思って、本当に尊敬もし、法務行政を一緒にやっていきたいと思っておるんですが、そこはちょっと持ち上げて、次にもう一度落とします。
この法務大臣あいさつは、これは何ですか、これは。私は、これはやっぱりちょっと大臣の言葉じゃないと思うんですね。大臣はもっともっと御自分の言葉をお持ちのはずなんで、御自分の感覚をお持ちのはずなんで、これはもう全く終始官僚の皆さんが調整をされたものをそのまま読んだだけという感じがするんですが、どうです、これで大臣、私は所信はこれですと言えるんですか。もっともっといろいろ思いがあるんじゃないかと思いますが、最初にそのことを伺っておきます。
○国務大臣(長勢甚遠君) どうもいろいろ御指導いただきまして、ありがとうございます。必修漏れと、富山県が必修漏れの最初と私とは余り関係はないと思いますが。
経歴はそういうことですけど、学校にほとんど行ったことがなかったんで、大学時代はですね。また、先生は大変その当時から著名であらせられましたので、立て看板等で名前は見てましたけれども、お顔を拝見したのは相当、国会議員になってから初めてでございます。今日、法曹の大専門家である先生から御質問いただけるということで、私も大変緊張しておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
所信についての御叱責でございますが、私も法務行政、少し関与はしてまいりましたけれども、不慣れでありましたので、役所の責任者として、今後、省として取り扱わなければならない課題を役所が整理をしたものをそのままといいますか、ごあいさつとさせていただきました。それはそのとおりでございます。
と同時に、やはりこの一か月、法務行政に携わらさせていただきましたが、私のいろんな思いが、思うことがありましたが、この役所はいわゆる法の番人という役所の役割でありますけれども、しかし、刑法であれいろんな裁判ざたであれ、我々が直面する問題というのは非常に切実な状況になっている方々の具体的な問題を扱うことが多いわけでありまして、法を執行するということと個々の事情、これはまたいろんな事情がありますので、考えなきゃならない問題がたくさんある。この間をどういうふうにしていくかということは非常にたくさんの考えなきゃならぬことがあるなということをしみじみと考えております。社会全体としてやらなきゃならぬこともある、しかしその中で個人の事情もあると。こういう中で法務行政は大変批判にさらされることもあり、また悩むこともあるということを思っております。
是非、職員も一生懸命やっておりますので、今後とも御指導賜りますようによろしくお願いをいたします。
○江田五月君 しみじみと考えておるという言葉、ありました。本当にしみじみと考えてほしいんですね。
もう少し突っ込みたいと思うんですが、法務大臣として法務行政というものはどういうものだと思っておられるかですね。
我が国は法治国家で、法の支配、ルール・オブ・ローというわけです。ルール・オブ・ジャングルではありません。ジャングルのルールが支配する国であってはいけないんですね。ジャングルのルールというのは何かというと、これはもう弱肉強食、優勝劣敗、力の強い者が勝つんだと、弱い者は食われてしようがないんだと。我が国はそうじゃないんで、法が支配している。
ところが、その法の中にどうもいろいろまだ足りない部分があるんではないか、これをきっちり整備をする、これやはり法務行政の重要な課題であろうと。例えば、今飲酒運転の事故、これでちょっと法が足りない部分があるんじゃないかというのが課題になっております。あるいは多重債務者が取立てを迫られて自殺まで強要されるようなことになる、これもどうも法がおかしいんではないかというようなところがある。こういう法の整備がある。
しかし、法を整備しただけでは駄目で、やっぱり法がルールになる、法が、どう言うんですか、行き渡っているということがなければならぬ。どうも行き渡っていない部分というのもあるので、その辺りもきっちりさせなきゃならぬ。公務員の犯罪が多いとか、知事まで犯罪をやるとか、弁護士も犯罪があるとか、今の必修をちゃんと受けさせていないなんていうのもそういうことかもしれません。
そういう意味で、法務行政、何か専門的な学者の言葉で、あるいは官僚の言葉で答えろと言っているんじゃないんで、是非大臣のお感じ、法務行政というのは何だろうと、ひとつ何かおっしゃってみてくれませんか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 口頭試問を受けているような感じで大変、何を申し上げてよろしいのか、よく分からないわけでございますが。
我が国は、先ほどもどなたかから話がありましたように、日本の伝統文化は決して弱肉強食ではないと。家族、地域社会を中心に、そのきずなの中で仲良く支え合っていく一種の共同社会であったと、あると、あるべきだと私は思っております。
そういう意味で、ルール・オブ・ローとおっしゃいましたけれども、ちょっとそういういわゆる厳密な意味での法治主義とまた違う、人治主義と言っていいか、そういう国であるべきである、それが伝統文化であるんではないかと私個人はずっと思っております。
しかし、そういう中で、先生もちょっとお触れになられましたけれども、そういう社会規範を基盤として、全体として守るべきものを明示的にするという手法が特に明治維新以降強化をされてきたのが今日の法治国家の姿というふうに私は思っております。そういう中で、当然、この法を守る、正義を守ると、その成文化されたものを守っていくということをつかさどっておるのが、これは刑事であれ民事であれ我が省の務めであると思います。
同時に、これは、法律というのはどうしても国民の皆さんには、特に昨今この社会規範が乱れた中では非常に分かりにくくなっておるというのも実感をしております。是非、もう少し言葉だけではなくて、理解されるようにしていくという方法はどういうふうにしたらいいんだろうということはやっぱりみんなで考えなきゃいかぬなとつくづく思っておるわけでありまして、ただ法を厳正に適用すれば世の中が良くなるとかみんなが幸せになるとかという問題ではないと。といって、個々の事情だけでやっておったんでは、これまたルールは守られない、これは混乱を招くと。このことも大事でありますので、このバランスは個々の問題で考えていかなきゃなりませんけれども、法制度だけではうまくいかない。このことの前線に立っておるのが法務省であり、特に切実な状況、深刻な状況にある方々を扱う役所であるということはどの分野においてもやっぱり心して行政に当たらなきゃならぬというふうな思いを持っております。
○江田五月君 ちょっとよく後で読み返してみたいと思いますが、法治主義ではなくて人治主義が我が国だというようにおっしゃったのだとすれば、よくよくそこはまた議論してみなきゃいけない。もし、人治主義という意味が、上に立つ者の裁量で下にいる者をみんなかばって連れていくんだということだとすると、それはちょっと違う。やはりそれは法なんですよ。そして、国民みんなが主人公なんで、国民主権なんで、その国民主権の下で法を作って、その法を使いこなしながら上に立つ、上に立つといいますか、法を執行する立場の者が世の中を治めていくということなんで、裸の人治主義になってもらっては困ります。
それともう一つ。私は、法というものは確かに厳格です。しかし、厳格だけど、同時に法は冷たくはないんですね。法律には血も涙もあるんで、その血も涙もあるというところをひとつ、今大臣人治主義という言葉で言いたかったのかなと善解をいたしますが、そこのところはやはりあるんですよ。この冷たい法を冷たく適用すれば世の中はちゃんと治まるわけではないという部分が一杯法務大臣の下には出てくると思うんですね。
入管行政の中で、これはちょっと冷た過ぎるとか、あるいは、先ほど死刑の議論、後でちょっと議論してみたいと思いますが、死刑の執行、死刑の執行だけなんです、大臣が執行指揮するのは。ほかの刑罰は全部普通の検察官の執行指揮、それから民事の方の執行指揮は、これはもう裁判所でやるんですよね。死刑だけが法務大臣が執行指揮をするということの意味、これはやはり単に官僚的判断だけではない意味がそこに深く深く込められている、政治家が判断をするということで。そうすると、記録を精査して間違いがありませんからだけでいいのか。世の中の状況、世間の流れ、日本の、もしあるとすれば長い歴史と伝統、後で申し上げますが、日本は死刑というのは決して歴史や伝統じゃなかったんですね。そんなことなどをひとつ言っておきたいと思います。
さて、大臣の方も新しくなられましたが、最高裁判所の、お見えですよね、長官も新しくなられました。これもちょっと個人的な事情で恐縮なんですが、昨日、さすが我が国会図書館大したもんで、法務大臣官房司法法制調査部、難しい名前ですが、の「イギリス裁判所法(一九七一年)」というのをありますかって聞いたら、さっと出てきたんですね。これをずっと見てますと、「訳者の序」という翻訳した者の序というのがありまして、そこに第十というところに、訳出は、ビーチング報告書前半を島田仁郎、報告書後半を江田五月、裁判所法を本吉邦夫がそれぞれ分担したとか、こう書いてあるので、島田仁郎って知ってますかって言ったら、昔、最高裁長官やった人かなってだれか言われましたが、そうじゃありません、なったばかりの人でございますが。何かそんな留学制度が始まりまして、もうフルブライトとかなんとか外国におんぶにだっこの留学じゃ駄目だと。日本が自分の国で自分の留学制度を持とうというんで公務員の二年の留学制度が始まって、島田仁郎さんは一期生です。二、三がアメリカで、一期と、私は四期なんですがイギリスへ行って、もうその当時から正に尊敬する先輩で兄事しておりまして、その島田さんが最高裁長官になられて本当におめでとうと申し上げたいので、是非お伝えをいただきたいと思いますが、その島田さんの下で最高裁判所はどういう裁判所をこれから目指していかれるのか、新たな長官になってどういう決意でおられるのかというのをまず伺っておきます。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) 委員御承知のように、裁判所は裁判官が独立して職権を行使し、具体的事件の適正、妥当な処理を通じて国民の権利の擁護等、法秩序の維持を図り、法の支配を確立するという使命を負っているものでございまして、裁判事務について、長官の交代によって直ちに一定のカラーが出るというものではございません。
もっとも、島田新長官が辞令交付式におきまして新任判事補に対し、裁判官は、人に批判されることが少なく、裸の王様になりやすい。初心を忘れず、謙虚に、人の心の痛みが分かる人になってほしいと語り掛けられましたが、私はこの新長官のお言葉は裁判事務に携わるすべての裁判官が心すべきことではないかと考えております。
他方、司法行政事務につきましては、島田新長官が就任に当たり、裁判所の本来の使命は適正、迅速な裁判の実現でありますが、さらに、国民の司法に対する期待にこたえるには、国民に分かりやすい裁判、利用しやすい裁判所を目指すことも大切であると考えますと。現に、一連の司法制度改革はそのような方向で進んでおり、私もそれを引き継ぎ、制度改革が順調に進むようその円滑な実施と必要な体制整備に全力を尽くしたいと、その抱負を述べられました。
また、裁判員制度につきましても、実施に向けて最終ラウンドに差し掛かったところで、非常な重要な局面であり、二年余りの任期は相当密度の濃いものになると思いますと、円滑な実施に向けた強い意欲を述べられております。
私ども事務当局といたしましても、長官のこのような司法行政に取り組む姿勢の下で、その意を体して司法行政事務に当たっていきたいと考えております。
○江田五月君 もちろん裁判官は独立して職権を行使するわけですから、最高裁長官といえども下級裁判所の裁判官にこの事件はこうしろというようなことを言っちゃいけないのは、それは当たり前の話なんで、古い大津事件その他を持ち出すまでもなく。しかし、今おっしゃるとおり裁判官というのは批判されることが少ない、それゆえにより一層しっかりと自分自身を保ってやっていかなきゃならぬし、それから、やはり裁判所も司法権も国民主権の下にあると。国民が主人公で、国民に自分の裁判をするという権限は由来しているんだと、このことを忘れてもらっちゃ困るんで、くれぐれも全裁判官によくそのことを、命令ではなくて、心底分かっていただくように、司法行政をお願いしたいと思います。
さて、時間がどんどんたっていっているんですが、司法制度改革、今正に改革の真っ最中で、既に幾つかのものが始まった。始まったけど、まだでき上がりのところまでたどり着いていない、激流を一生懸命舟をこいで渡っているところだと思いますが、そういう過程の中にある裁判員制度、あるいは法曹養成、あるいは法テラスその他聞いていきたいと思うんですけれども。
まず、司法制度改革というのはどういう、これは大臣も重要な立場で取り組まれました。私は、自分が司法に身を置いたことのある人間として司法制度改革というのはやらなきゃいけないと。まあ我々は野党ですけれども、事司法制度改革に関する限りは、皆さんが提案するものを我々はチェックをするという姿勢じゃなくて、むしろ提案する、その側にお許しをいただけるならばなるべく入り込んで、提案のところから我々の意見を反映させようといろいろ努力をしてまいりまして、まあ司法制度改革与党だと、我々は、という決意でやってまいりましたが、長勢大臣、司法制度改革に、端的に言って、余り長々要りません、どういう決意で取り組まれてきたのか、これからも取り組まれようとしているのか、お聞かせください。
○国務大臣(長勢甚遠君) 御答弁申し上げる前に、先ほど、私も言葉が下手なものですから、人治主義と言いましたんで誤解を与えたようで、決して人が人を支配するという意味で申し上げたわけではございません。言いたかったことは、法といっても、法というのはみんなが自然、普通と考えることが基盤のないものは法と、それをやるだけじゃ法にならないということが基本であるということを言いたかったわけでございまして、御理解いただければ幸せでございますが、そういう思いでこれからも努めていきたいと思っております。
正にこの司法制度改革も、社会のルールといいますか、司法制度はその一つの大きな役割を持っているわけでございますが、それが国民により身近で理解されて、頼りがいのあるというものでなければ平和な安心した暮らせる社会というものは実現できないと、それにおいていろいろな意味で今いろいろ議論が、問題があるということを、そういう観点から改革をしていこうということであると思っております。
今までもたくさんの議論が行われてきて、今具体的に進める段階に来ております。私も裁判員制度等関与させていただいてまいりましたが、是非そういう目的を達成するように全力を挙げて努力していきたいと思っています。
○江田五月君 最高裁の方も司法制度改革、なかなか苦労をしておられることと思いますが、今改革真っ最中ですよね。どういう覚悟で臨んでおられますか。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) 一連の司法制度改革は、行政による事前の規制が行われる事前規制型の社会から、規制が緩和された事後救済型社会への移行が求められる中で、公正で透明な手続により紛争を解決する司法の果たすべき役割が今後ますます重要になると、司法に対する需要が増大するであろうという共通認識の下で行われてきたものでございまして、今般の改革の背後には国民の司法に対する大きな期待の高まりがあるものと理解しております。
今般の司法制度改革は、専門的な知見を必要とする訴訟への対応などの事件処理体制の充実強化から、法曹養成制度の改革などの司法を支える人的基盤の充実、さらには国民の司法参加にまで及ぶ極めて広範な領域にわたるものでございます。知財高裁の設置、労働審判制度の導入、法テラスによる総合法律支援制度、それから法科大学院による法曹養成等は既に実施され、運用の段階に入っているところでございます。
これらの諸制度につきましてはいずれも円滑に実施され、順調に運用がされているものと認識しておりますが、裁判所としましては、引き続き国民の司法に対する期待、要請を的確に受け止め、改革の趣旨に沿った適切な運用がされるように努めるとともに、必要な体制の整備を図っていきたいと考えております。
また、これから実施が予定されております大きな制度改革として裁判員制度がございます。裁判員制度は国民の司法参加を実現する極めて重要な改革であり、その施行まで二年余りと実施時期が迫っております。裁判所としましては、裁判所内の人的、物的な面の体制の整備を図るとともに、裁判員制度に対する国民や関係機関の理解と協力を得ながら、この制度の円滑な実施に向けて全力で取り組んでいきたいと考えております。
○江田五月君 日本の司法制度は、六十年たって時代がいろいろ変わった、それに追い付いていない部分があると、これを変えなきゃならぬ。それが今の知財とかそういった面、ほかにもあるでしょう。
それから、裁判所がどうも国民から遊離してしまっている、あるいは国民の方も裁判所が遠い、裁判所もどうも国民の感覚と外れているんではないかと、これを国民の感覚に近づける裁判員制度。
それから、戦後改革の中で実はこの司法という部分が取り残された部分があって、天皇の名による裁判が国民の名による裁判で、名だけは国民だけれども、実際の司法の動きが国民主権の下になってない、市民が主役のものになってないと。だから、例えば民事の紛争でいえば、二割司法なんて言われる。いろんな紛争があっても、どうも裁判所あるいは法曹が関与して解決するという場が小さくて、暴力団であったり地域の親玉であったり、時には市会議員から国会議員まで含む議員であってみたり、そして多くが泣き寝入りであってみたり、そういうものを本当に充実した司法に変えていかなきゃならぬと。そんな意味で法曹人口も格段に増やしていかなきゃならぬし、あるいは身近なものということで法テラスも必要だし、ADRも必要だし、などなどと広がっていってきたのだと思っております。
そこで、まず裁判員制度ですが、これ国民の中には依然としてまだ不安があるんですね。自分がそんな裁判なんて、私は法律のことなんて知らぬよとか、そんな裁判所へ行けと言われるけれども、仕事、私、抜かれたら困るんだとかいろいろあるんですが、そういう不安を解消するためにどういう制度設計をされておられるのか。どういう広報啓発に努力をしておられるのか。これを、もう細かなことはいいですから、法務大臣、お答えください。
○国務大臣(長勢甚遠君) 国民の皆さんが裁判員制度ができたら自分はどうなるんだろうということについて不安をお持ちのことは、そのとおりだろうと思います。そのために、法成立以来、法曹三者協力をして御理解いただくように相当なエネルギーを使ってきたと思います。もうあと二年半になりましたので、あと一息、もう一息、知恵も出し力も出していかなきゃいかぬなというのが今率直に思っております。
国民の皆さんの不安は、一つは、それはそんな、今おっしゃったように、法律なんか分からないよと、そんなところにおれは行って何もできないよという不安がまずあるんだろうと思うんですけれども、裁判員制度は、御案内のとおり、法律知識がある人でなくていいんだというか、ない人、普通の感覚の人たちでやろうというのが裁判員制度ですから、そのことはまず十分御理解いただくようにしていかなきゃならぬと思います。
それから、時間がないよという方もおられると思います。こういう方についても、これは企業の御理解等々もありますし、そういうことをこれから一生懸命御理解いただくようにしていかなきゃならないと思います。
もう一つ、やっぱり人を裁くというのは相当重く感ずる方もたくさんおられるわけですし、何か気分的にも嫌だなという方もおられると。こういう方々をどうするかということは、若干制度の面もありますので、辞退の仕組みとか、こういうことを今もう少し検討しておりますけれども、整理をして国民の皆さんになるべくそこら辺を分かっていただいて、やはり皆様をそれならという気持ちになってもらうようにしていかにゃいかぬと思いますが、総じて実際どういうことになるのかというのが、やっぱり現実に見ることはないわけですから、今パンフレットを配ったり、講演会をやったり、いろんな苦労しておりますけれども、やはりビデオも作ってやっておりますので、しかしこれをなるべくたくさんの人に見てもらうことが大事だろうと思いますし、まあこんなもんかと、なら安心だというようなことにでもなるように、何とかもう少し知恵も出してやっていかなきゃならぬかなと。全力を挙げて取り組みたいと思っております。
○江田五月君 裁判員裁判の映画が何本かできていますね。ビデオになっておりますが、これは、法務大臣、ごらんになりました。
○国務大臣(長勢甚遠君) 私自身としては、まだ制度ができる前、日弁連がお作りになった、あのときは裁判官が一人のときでしたけれども、それと、その後、あれは法務省で作ったんでしょうか、野沢元法務大臣も御出演なさっているのは見ました。ほかのはちょっと私はまだ見ておりません。
○江田五月君 見ていただいていて本当にほっとしました。是非ひとつ、自分が見ていないと人に見ろとは言えない。
それから、例えば裁判員休暇制度というのを有給休暇のようにつくることは考えていないというふうなことのようですが、企業にやはりそこは理解をしてもらうために、例えば法務大臣と経済三団体のトップとそんな話をするとか、そういう皆さんと地方へ出ていって是非休暇を取らしてやることが必要なんだというような啓発活動をするとか、大臣にもひとつ是非汗をかいていただきたいと思います。
これ新聞の今朝の広告なんですが、「ともに。裁判員制度」というので、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、三者の、この三者のだれがこの広告を出しているのかなと思ったりもしますが、そういう細かなことはまあいいとして。最高裁、これ仲間由紀恵さんなんですね。彼女をひとつ、模擬裁判の役を担っていただいたりしたら人が関心持つんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) まだそこまでの準備を進めているわけではございませんけれども、仲間由紀恵さんも含めて、こういう裁判員制度の趣旨を理解し、こういうPR活動に加わっていただける方については、いろいろな面でもし可能であればPRしていただきたいと、このように思っております。
○江田五月君 いや、これ本当に相当、私もこれ計算していないけれども、相当高いと思いますよ。これだけやるんだったら、もうそれこそ本気でひとつ裁判員制度のキャラクターはこの人というようなのを作ってやっていったらいいんじゃないかと。仲間由紀恵さんがどうかというのは私知りませんけれども、例えばの話で。
裁判所の方は、これ裁判員ということになると、法廷をどうするとか合議室どうするとか、いろんな手当てが必要だと思いますが、準備はいかがですか。進んでいますか。
○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 今お話のありましたとおり、裁判員制度の準備としては施設の面についても重要なポイントということになるわけですが、既に平成十七年度までの予算において認められました裁判所庁舎の建て替え工事の中で裁判員制度の施行に必要な法廷あるいは評議室等の施設準備を進めておりまして、これまでに合計七庁において必要な施設整備工事に着手済みでございまして、この中にはもう既に完了したものもございます。
加えまして、平成十八年度予算には三十八庁において必要な施設整備を行うための経費が計上されておりまして、今年度には既に着手済みの分と合わせて合計四十五庁において裁判員制度実施に向けた物的整備の、体制の整備が進むことになります。その余の庁につきましても、所要の予算措置を講じた上で制度施行までに必要な物的整備を、体制を整備していくと、このように考えております。
○江田五月君 次に、捜査の可視化について伺います。
裁判員制度ということになると、調書の任意性でああだらこうだらと長々やるというようなことは、それはもうとてもみんな耐えられないんで、ここは捜査の状況を録音、録画をしておいて、こういう捜査で取調べをしたんだから任意性はあるよということをもう一目瞭然とするということで、杉浦前大臣そして但木検事総長の、まあ私は、当たり前といえば当たり前なんですが、状況から見ると大英断だったと思いますが、検察官の取調べを可視化するということにされました。
これは長勢大臣、バックギアに入れることはないでしょうね。
○国務大臣(長勢甚遠君) 私が自民党の裁判員制度の小委員長という立場で議論しておりましたときにこの可視化の問題が大変な深刻な対立点の一つでありました。当時、双方の言い分はそれなりに私なりにそういうものかなと思っておりましたが、検察当局がこういう方向で一つの第一歩を踏まれたということは評価をすべきことだと思っております。
検察当局としては、裁判員裁判における分かりやすく迅速で的確な主張、立証の在り方についての検討の一環として、対象事件における検察官による被疑者の取調べについて自白の任意性の効果的、効率的な立証という観点からこういう可視化を試行することになったというふうに承知をしておりますが、非常に、前大臣もおっしゃったようでありますが、重要な意義があることだと思っております。
○江田五月君 何かだんだん声が小さくなって、自信持ってやってください。可視化は本当に必要なことなんで、もう胸を張って、我々も一生懸命応援しますので、是非、何かだんだんだんだんしりすぼみになるようなことのないようにしていただきたい。いいですよね、もう。答えますか。
○国務大臣(長勢甚遠君) ちょっと字を読んで下見たから声が小さくなったんで、御安心ください。
○江田五月君 本当によろしくお願いします。
それで私は、今は検察段階の調べで、しかも裁判員制度の対象事件だけの可視化ということのようですが、それでは本当は足りないんで、警察段階で完全に料理を作り上げておいて検察庁のところへ持ってきて、それで検察庁が食べるときにはもう料理は煮上がって、仕上がっていると、それは可視化だなんて言ったってどうしようもない。警察のところがどうなっているかというのが実は本当は問題であるし、それから、裁判員対象事件だけではやっぱり駄目なんで、特に法務大臣、少年の取調べ、少年の取調べは本当大変ですよ。これ、取調べ自体も大変なんですが、そこに後になって何だか訳が分からなくなっちゃったというのは少年に多いんです、結構。これは、やはり少年の取調べの可視化というのはまず次の緊急課題だと考えていただきたいと思います。まあこれは答弁いいでしょう。お願いをしておきます、この際。
そうそう、これは聞いておかなきゃ。
八月から試行されているんです。ところが、どうも弁護士会、日弁連は全国の弁護士のネットワークを持っているんですが、いまだに一件も、いや自分の取調べのときには録音、録画があったという、そういう情報が日弁連へ上がってきていないというんですね。どうしてかなと、もうそろそろあっていいんじゃないかと思うんですが、試行の状況、これ細かく要りませんから、お答えください。
○国務大臣(長勢甚遠君) 今、八月、七月ですか、実際は、実施は八月からかと思いますが、八月から東京地検で試行を実施ということで、これまでに五件やっておるというふうに聞いております。
○江田五月君 初めちょろちょろですね。中ぱっぱといきましょうね。本当に、そしてきっちり制度が定着したら、赤子泣いてもふた取るなと、ちゃんと仕上げなきゃいけないと思っております。
さて、次、法曹養成ですが、やっとロースクール一期生が、これは既修ですが、誕生して、そしてその皆さんの新司法試験が行われた。従来、司法試験というのは合格率三%程度だったと。いや、三%、もっと低かったのかな。しかし、まあ四八%か、五割にまで上がったと。
しかし、司法制度改革審議会の意見書は、これは制度設計をそういうふうにきっちりするという意味じゃないけれども、イメージとして、ロースクールはプロセスで養成をして、ロースクール卒業生は八割程度は司法試験に受かるような、そういうイメージでいたわけで、そのイメージで、これは新しい制度ができる、自分はこの制度の下で法曹になりたい、こういって現に今得ている職をあえてなげうって、自分の人生懸けてこの新しい制度の下での法曹を目指した。ところが、八割と思ったら五割で、人生設計がまるで狂った、そういうような若者も、若者だけじゃないかもしれません。いろんな人が法曹を目指すという、それが制度の目的だったわけですからね、たくさんいるわけです。
法務大臣ね、これは私はその皆さんをすぐ救済せよとかそんな話をしているんじゃないんですが、法は血も涙もあるんだと、法務大臣はその皆さんに対して何かやっぱり温かい言葉を掛けてあげる必要があると思うんですが、機会を提供しますので、温かい言葉をひとつどうぞ。
○国務大臣(長勢甚遠君) この問題は、この職に就く前に大分前に伺っておりましたが、今御指摘の意見書も、七、八割を云々ということは、教育内容なりそういう問題として述べられておることであって、それを約束するというものでなかったと、それはもう先生もお分かりのとおりであります。そのことをやはり十分に周知をして、何で受からなかったんだろうなと、いかにも来たらみんなうまくいくよと言わんばかりの話でやっておったんだとすれば、私はそこもおかしかったなと。これは試験の制度の性格上、言うまでもないことでございますが、もうここまでは必ず合格させるとかというわけにいかないことは分かり切ったことでありますから、それを約束するということはなかなか難しいと思うんですけれども、という思いをずっと持っておりました。
現実に、ただ、おっしゃるように、そういうことで転職を希望された、入学された方もおられるやには伺っておりますので、どういいますか、その方々には御同情申し上げるということなんですけれども、これ、試験制度また大学院の在り方、これをひとつ今後これからの法曹の有為な人材の研修の場として発展していただくように我々も期待しておりますし、また、できることはやっていかないかぬと思っています。
○江田五月君 これ、五割ということになると、これから、今あるロースクールが全部ロースクールとしてずっとやっていけるということにはなかなかならぬのじゃないか。厳しい評価を受けてしまうロースクールもあるだろうし、その中にはこれはロースクールとして存続は無理だというようなところも出てくるかもしれない。言わば、制度を立ち上げてそれが定着するまでの過程で起きているいろんな混乱というのはやっぱりあるんですね。
そんな中で、この志を持った若者が自分の志を達成できないということが起きてくる。だけど、私はこの皆さんが法曹を目指そうというその気持ちは、やっぱりその人の個人の人生にとっては大切なことだし、まあ気休めかもしらぬけど、人生至るところ青山ありで、そういう皆さんもその気持ちを大切にしながらこれからの人生をやっていくと。ここでもう挫折で、もう自分の人生終わりなどと、それはそんなことはないんだと、皆さんのそういう、再チャレンジというのが今盛んですが、再じゃなくてチャレンジの精神が次の道を開くんだからという、そのくらいな言葉は是非掛けてあげていただきたいと、これは私が代わって申し上げておきます。
しかし、さはさりながら、やっぱり七、八割程度だと。つまり、いろんなところから抽出されて、ロースクールというのもなかなか関門ですから、それをクリアすれば、その中でまじめに、一定の能力はもちろん必要ですが、ロースクールの教育を受ければ法曹の道が七、八割は開けているんだという、そういう制度にしていきたいというその思いは、これは捨ててはいないんでしょうね、法務大臣。
○国務大臣(長勢甚遠君) 合格率を基準にこの話をするということよりも、むしろこのロースクールが法曹養成として十分な役割を果たしていただき、そしてきちんと質量ともに充実した法曹制度を確立する上での試験委員会の決定というか、試験制度になるように、私どもとしては期待をいたしておるということだと思います。
○江田五月君 ロースクールだけでは法曹は養成できません、養成は完成しません。最後の試験があります。いわゆる二回試験というんですが、司法修習考試というんですか、考試は、考える試験の試。今年はすごいことになりましたね。何か百七人が合格できなかった。大部分は更にそれこそ再チャレンジの機会が与えられるようですが、もう完全にアウトというのも十人程度はおられると。昨年の約三・五倍、合格基準は変えていないというんですが、これはどういうことだと理解をしておられるんですか、最高裁。
○最高裁判所長官代理者(山崎敏充君) ただいま委員からお話しのとおり、本年九月に、一年六か月の修習の後、考試を受けた五十九期司法修習生、これ千四百九十三名でございますが、そのうち百七名の者が合格の判定を受けることができなかったわけでございます。
このような大量の不合格者が出たことにつきまして、我々も実は非常に驚いたわけでございますし、また憂慮すべき事態であると思っておりまして、その原因を探る必要があろうかというふうに思っております。
近ごろどうも司法研修所の教官などから基礎的能力に疑問のある司法修習生が増加しているように感じられると、こういった感想が寄せられていたところでございまして、どうも残念ながら教官たちが抱いていた感覚が客観的な数値として表れてしまったのかなというふうにも思うわけでございます。
ただ、御質問の点、このような事態に至ったそもそもの原因は何かと。これをきちんと解明するのはなかなか難しゅうございます。今問題になっております五十九期から修習生の数が千二百人規模から千五百人規模に増加しましたので、どうも、どうしてもこの点に関心が向くわけでございますが、そのことと大量の不合格者を出したこととの関連、これは今後の推移をいましばらく見定めた上でないと結論めいたことを申し上げるのは難しいのではないかというふうに思っております。
私ども、少し時間を掛けまして、司法研修所の教官などからこれまで以上に司法修習生の実情をよく聞くなどして、その原因を探っていきたいというふうに思っておるところでございます。
いずれにいたしましても、今後とも国民に質の高い司法サービスを提供できる法曹を養成し続けるためには、そのプロセスの各段階におきまして適切な教育あるいは厳正な能力検証を行う必要がございますが、とりわけ司法修習生考試というものは、法曹養成の最終段階におきまして法曹としての必要最低限の能力を有しているか否かを検証するものでございますので、この考試によりまして最低限の水準に達しない者は厳格にチェックし排除していくという機能をきちんと果たしていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
○江田五月君 旧試験だけしかない司法試験の最後の期ですね。旧試験というものの持っているある意味の欠陥が最後に出てきたということかもしれないし、ロースクールというものがあって、そっちへ行っている者が旧試験を受けたら受験制限、回数制限に引っ掛かるから受け控えというようなことがあったのかもしれないし、分かりません。しかし、重大な関心は持っていただきたい。やはり質の高い法曹をちゃんと輩出させていくことは重要な課題なので、関心を持っていただきたいと思います。
次、日本司法支援センター、法テラスですが、十月二日にスタートいたしました。さて、このスタートは、具体的に国民に見える形というのは何だと思われますか、法務大臣。
ちょっと、もうちょっと質問しようか。スタートは、例の多分私コールセンターだと思うんですね。コールセンターが立ち上がってそこに電話がわっと来る、これを全国にずっとつないでいく。そのコールセンターへ行かれたことはありますか。
○国務大臣(長勢甚遠君) まだ行っておりませんので、なるべく時間を見付けて行きたいと思っています。
○江田五月君 実は私もまだ行ってないので大きなことは言えないんですが、やはり現場を見ていただいて、どういうスタートを切っているのか、そしてどこを手当てしていかなきゃいけないのか、そんなことは是非、これは本当に法テラス、重要なスタートですので、失敗をさせないようにやっていただきたいと思いますが。
この法テラスをうまく動かしていくためには、これまだまだ、スタッフ弁護士をちゃんと整えるとか契約弁護士をしっかり確保するとか、あるいは今全国五十か所でしたか、しかしそれでは足りなくて、五十か所以外にいろんな出張所とか何ですか、何か置かれているようですが、これから相当そのボリュームを増やしていく、そういう努力が必要だと思うんですね。
それから、弁護士ということでいえば、国選弁護事務がこの法テラスに移りました。国選弁護が今被疑者弁護も入るようになって、しかし、まだこれはスタート段階で、これから被疑者弁護は増えていくんですね。今どうだったっけ、あれは法定合議だけかな、それを必要的弁護に持っていくのかな。何かそういうように増やしていく。さらに、裁判員制度になったら、これは裁判員対象事件のかなりの部分は国選で、しかも、その国選の弁護人の役割というのは今までよりももう格段に質的にも時間的にも増えていくというので、弁護士の皆さんに法テラスに協力をいただく体制というのは、まあ弁護士会考えてくれだけではちょっと済まない、例えば国選弁護の報酬とかそういうことがあると思うんですが、もう簡単に、覚悟のほどだけ具体的に聞かせてください。
○国務大臣(長勢甚遠君) 支援センターの弁護士確保、特に国選弁護に向けてそれが必要であることはおっしゃるとおりだと思っております。日弁連さんともそんな話をよく聞いておるわけでありまして、今報酬の問題その他おっしゃられましたが、今具体的に案を持っているわけじゃありませんが、これは確保していかなきゃならぬことはもう言うまでもないことだと思っておりますので、全力を挙げて充実に努めていきたいと思っています。
○江田五月君 法テラスに対する財政的支援というのは、これはもう法務大臣の重要な職責だとお考えください。
午前はこのくらいにしますか。
○委員長(山下栄一君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
正午休憩
─────・─────
午後一時開会
○委員長(山下栄一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○江田五月君 引き続きお尋ねをいたします。
司法制度改革のことを尋ねていたんですが、大勢の皆さんにお見えいただいているんですが、どうも時間の方が足りなくなって、少しすっ飛ばしていきますので、せっかく準備したのにと怒らないでください。おわびを申し上げます。
裁判外紛争解決手続、いわゆるADR、これ飛ばします。
行政法制度改革。行政事件訴訟法を先般改正をいたしました。これは私ども、国民の期待をしっかり受け止めて、国会の方から裁判所ひとつ頑張れと、こういうエールを送るという、そういうことで改正をしたわけでございますが、その後、下級裁判所もいろいろありますが、最高裁では、例えば小田急線連続立体交差事業認可処分取消し請求事件というので、これは大法廷が当事者適格についてかなり画期的な判決をされたり、あるいはその後、在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件、これも大法廷で画期的な判断が出たりということになって成果が上がっていることを大変うれしく思っております。
しかし、これで行政法制度改革、行政争訟制度の改革が終了したというわけにはいかない。現に見直しの条項も入っていますし、また日弁連の方で大変御努力いただいて更なる改革、第二弾の行政法制度改革ということでいろんな提案があります。特にその中に、地方で行っている例の住民訴訟、ああいう訴訟形態をひとつ国にも用意をしてはどうかというので、名前は公金検査訴訟制度というような言い方をしているようですが、納税者訴訟という類型をつくろうという提案がございます。
法務省としては議論ぐらいされているんでしょうか。それとも知らぬ顔でしょうか。法務大臣お答えください。
○国務大臣(長勢甚遠君) 御指摘の日弁連さんの要望書の中で、今おっしゃいました公金検査請求訴訟制度というものを設けたらどうかという御提案があることは承知をしております。
この制度の導入について政府の行政訴訟検討会において検討の対象とされましたけれども、そこでは、憲法上、国の支出の当否については会計検査の制度が設けられていること、また内閣は決算を国会に提出することとされていること等、財政に関して国会がこれをチェックする権限が認められていること、こういう関係について更に検討する必要があるのではないかなどの問題点が指摘されておるところでございます。
また、国民の意見を会計検査院の検査に反映させる手段としては、平成九年の国会法及び会計検査院法の改正により、国民の代表者としての国会の各議院、委員会等が会計検査院に対し、特定の事項について会計検査を行い、その結果の報告を求めるという検査要請の制度が設けられております。したがいまして、この公金検査請求訴訟制度につきましては、こういう問題を踏まえて十分な検討が必要であると考えております。
法務省だけで検討すべき範囲を少し超えている部分もありますので、更に検討してまいりたいと思います。
○江田五月君 法務省だけの範囲を超えているという趣旨のことですが、これは私どもも行政争訟制度というのを更にブラッシュアップしていきたいと思っておりますが、自民党の皆さんはもうこの点については本当に無理解で、でもないんです、実は。今の官房長官の塩崎さんとか、あるいは世耕さんとか林芳正さんとか、そういう点で非常に何か先手を切っていきたいという、そういう人もおられまして、我々の方がちょっとたじたじというところもあるんで、是非とも省庁を超えて、法務大臣、ひとつエンジンになって官房長官辺りもつっついて、この行政法制度の改革を更に進めていただきたいということをお願いをしておきます。我々の方ももちろん頑張ります。
いじめの問題などの話。どうも文部科学省、いかぬですね。何かいじめの件数が減っているって、減らせといって数字だけ減らして実態は何も解決付いてないとか。これに対して法務省の方は、国、各県にずっとある法務局、地方法務局で人権救済がしっかり事案として挙がってきているということで、こういう問題も含めながら人権というのを一体どうするのか。人権擁護法案が大変まだ迷走中ですが、これをどうするのかという話もありますが、ちょっとこれも後に回します。
調達の問題も聞きたいと思いますが、これも時間があったらということにして、さて、代理出産について伺います。
個別の事案についてどうするというお話を伺おうと思っているのではありません。しかし、個別の事案の紹介だけちょっとしておきたいと思うんですが、私は、やはり法には血も涙もあるんだと、法の適用の結果、血も涙もないということになるならば、それはやっぱり立法府あるいは行政府協力して、法に血も涙もあるような、そういう法に変えていかなきゃいけないと、それが私たちの仕事だと思うんですね。
この事案は、御存じの方も多いと思いますが、向井亜紀さん、本名は高田と言うんですが、高田延彦さん、お二人。これは当然、届出をした法律上の夫婦です。しかし、この亜紀さんは子宮がんで子宮を摘出するということになった。だけど子供が欲しいというので、放射線治療の際に御自身の卵巣を骨盤の外に移して、そして手術、治療をされたと。何とか自分たちの子供が欲しいというので、日本ではなかなか難しい、アメリカに渡った。ネバダ州で御自身の卵子に夫の精子を受精をさせて、そしてアメリカの女性、この女性も結婚しておられる方ですが、と契約を結んで、いろんな、後々の養育の関係、あるいは費用の関係などなど、いろんなかなり厳重な契約を結んで、その女性の子宮に着床させて出産をさせたと。卵子二つで子供が二人というケースですね。
ネバダ州に法律、法制度があって、その出産について裁判所で、この出生の事実、この卵子の提供者である亜紀さんとその夫、精子の提供者、この二人が両親だという、そういう法律上の父母であることを確認をする、そして出生届、出生証明書、こういうものの関係についての一定のことを命ずる、こういう主文の裁判ができました。同様の裁判類型というのはカリフォルニア州やマサチューセッツ州などでも存在していて、しかも、これは対世効、つまり、当事者の中だけの効力じゃなくて、一般的にもそういう、この出生の事実については裁判所の決定が効力があるという、そういうことになっているということなんですね。
この裁判が、これが日本でどういうふうに扱われるかというのが問題で、民事訴訟法百十八条では、外国の裁判所の確定判決は日本でも公序良俗に反しない限り有効だということになっているので、この判決を基に亜紀さんは品川区役所に出生届を出した。しかし日本では、分娩の事実がないから、亜紀さんにですね、だからこれは母ではないということでその出生届を受理をしなかった。これに対して家庭裁判所に審判を申し立てたら、東京家庭裁判所がそれを却下をしたので、東京高裁に抗告をした。それで、東京高裁の、原審の審判を取り消して品川区長は受理をせよという、そういう決定を出したと。
こういう事案で、これは法律上いろいろな問題を含んでいますから、私は、法務大臣と協議の上、品川区長が許可抗告を最高裁にされるということがけしからぬと、そういうつもりはありません。これはしっかり判断いただければいいと思うんですが、しかしこれ、なかなかこの決定は本当に苦労して書いておられて、この外国判決の中身をきっちりと精査をした上で、これは外国判決、外国判決として扱うべきものであると。公序良俗という点については、ああだこうだいろいろありますが、やれ医学界がどうだとか法制審議会がどうとか、いろいろなことがありますが、そういう意見があるにしても公序良俗に反するということはないと。
この過程で、私はこれは一つ法務省に文句言っておきたいんですが、大臣よりもむしろ法務省にですね。この外国、ネバダ州修正法とかその他の制度について申立人がいろんな主張をするのに対して、決定で見るだけでいうと、法務省の方は多分訟務の検事さんか何かが代理人で出ている、品川区長の代理人かな、出ているんですが、知らないって言うんですね。何で一体調べないんだと、ちゃんと。調べて、そしてこの制度はこうなっているというふうにして、両方の間でそんなことを何か一々立証活動を一生懸命やらなきゃならないようなことをする必要あるのかと。まあ、もっとも人訴ですから立証しなきゃいけないでしょうけれども、というような気がしますが、いかにも不親切であり冷淡じゃないかと思いますが、それはまあ言っておくだけで、答弁要りません。
そういう判決で、もう一つ問題は、準拠法というのがあるんですね、どこの法律で親子関係決めるんですかと。この場合には、今言っているのは、亜紀さんと御主人とが親、それで二人の子が子、その関係が成り立つかという話だから、これは両方日本人だから日本法だと。日本法で言えば分娩の事実、だからこれは親子関係ないと。さて、じゃ実際にその分娩をした女性とその夫かなと、その子二人と、この間に親子関係あるのか。これは準拠法はアメリカ法だから、アメリカ法でこういうふうになって、現に裁判まであるわけだから、そこでも親子関係ないと。この子、現に子がいる。いるのに日本でも親子関係がない、アメリカでも親子関係がない、どうなるのというのがこの裁判所の指摘なんですね。
これは、要するに国際社会の法の谷間に落ちてしまったケースであると。そのことというのは重要なこれは事情だと。そのことを踏まえて考えていくと、確かにいろんな違和感はあっても、準拠法ということを考えなきゃならないのかどうかということで、国際私法学者を中心に、民訴百十八条の要件のほかに準拠法の要件も満たさなきゃいけないという、そういう主張があったが、裁判例や、それから戸籍実務、これは私見てないんですが、昭和五十一年一月十四日民二第二八九号法務省民事局長通達というのがあるんだそうですね。これによると、身分関係に関する外国の裁判所については民訴法百十八条に定める要件が満たされれば、これを承認するものだと、そういう民事局長通達が出ていると。そのようなことまでいろいろ認定をした上で、公序良俗に反しない。したがって、この場合は、これは本件裁判、これ、ネバダ州の裁判は外国裁判所の裁判に該当して、民訴法百十八条の所定の要件を満たすから、同条の適用ないし類推適用により承認の効果が生ずることになり、したがって本件子らは抗告人の子であると確認されるから、出生届も受理されるべきであると、こういう決定になっているわけです。私は、これは筋道通っていると思います。
ですから、我が国で今そういう事態も起きるんだと。それならば、このネバダ州あるいはカリフォルニアかそっちの方、アメリカのいろんな制度も現実に世界を見るとあるわけですから、これはやはりそういう制度を日本で、もちろんそのままじゃなくて、それはいろいろ日本流の知恵も働かさなきゃならぬでしょうが、そういうことを研究をして、やはりそういう場合にはこういう方法でちゃんと親子の関係をつくろうと。
まあ、分娩という事実で、これ、父親については血統主義なんですよ。母親の方だけ分娩主義なんです。分娩主義と血統主義は同じだったんです、昔は。こんな変な分離が起こることなかった。しかし、今はそこが、分娩と血統というのが分離してしまう時代が来ていますから。しかも、この戸籍上の親子関係というのは、やはり血族婚を避けるとか、そういう重要な機能も果たすわけですから、これはやはり遺伝とか血統とかということを重視した、そういう制度をひとつつくることを本気で考えたらどうだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 今、東京高裁の決定の内容、詳しくお話ありまして、そのように認識をしております。で、許可抗告の申出を区がなさったわけでございますが、それはそれとしてということでございますから、それは申し上げませんが。
この問題、私のところにもいろんな方というか、まあ正直言うと大抵の方の意見は、一般の方が多いんでしょうけれども、まあとにかくこういうのを認めろという意見が圧倒的に多いことは事実でございます。
いろいろ科学技術も発達してきましたので、前々からこの議論があったわけでございますね、御存じのとおりでございます。平成十五年に厚生労働省あるいは法務省において、審議会においていろいろ議論が行われて、その段階での結論というのは、今先生がおっしゃったような話にはなっていなかったわけで。
これは血も涙もないというお話がありましたが、二つ問題があると思うんですね。一つは、本当に欲しいけれども産めないという方に、まあ同情というか、その思いをかなえてあげるべきではないかという分野と、それからそれはそれとして、今のところ日本ではそういうものは認めないということになっていますから、そういう意味での違反、違反というか、違った形で生まれてきた子供をどういうふうに扱うかと。それも、これはアメリカでは親子関係は認められているわけですが、日本では認められてないということを、これは血も涙もないんじゃないかという、そういう意味で親子の関係、子供のことをどうするかという問題と、二つあると思うんです。法律関係でこのことを処理すべきかですね。しかし、その法律の基になる、基になるというか、それを形成する事実についての評価をどうするかということと二つあると。
今までの議論では、いわゆる医療界を始め、医療界等々で、そういう形で子供を産むということが許されるべきことかどうかということが議論になってきて、そこの結論が、それはまずいことだという結論を踏まえて、法制審の方でもそれを前提にした法制の在り方というのを考えたと思う、考えてこられたというふうに私は承知をしております。
これを、逆に法制の方から考えて結論を出して、それから、それが世の中で認め、あるべきことかどうかという議論もあるかもしれませんが、なかなかその関係も非常に難しいですし、私のところにはこの科学技術が発達した中で昔と同じことをやっておっておかしいんじゃないかとかという議論もたくさんありますけれども、どうもまだ、何といいますか、こういう生殖補助医療のこの分野について、みんながそういう形で子供をつくるということはいいというほどの合意に達しているという状況ではないんじゃないかなと。その合意をどういうふうにつくっていくかということが、また遅れているといえば遅れておると。非常に今悩ましいところだなと。むしろ、その合意をつくる筋道をつくること自体もどうしたらいいのかなと、正直言って、今悩んでおるというか、考えなきゃいかぬなと思っているというところでございます。
○江田五月君 悩みが深いことはよく分かりますが、認められていないといったって、何で認められていないかというと、私、それはいろんなところ、ほかにもあるかもしれませんが、厚生科学審議会生殖補助医療部会の報告書とか、法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会とか、それから日本産科婦人科学会の会告とか、そういうところであって、その皆さんがこれは医療としてそういうことをやることは妥当でないと、我が国のそういう医療にかかわる人たち、医療に携わる人たちにはそういう方法は認めないということを言っているということであって、別に法律上許されていないとか、これが罪になるとかという話とは違うんですね。
それから、今現に外国へ行って、そういうやり方で子をもうけている人たちがいるわけですね、現に。外国へ行ってだけじゃないんで、日本にもそういうケースがあったわけですよ、これは報道されましたけれどもね。そういう事態のときに、しかもさっきのように、子供の親が法律上決まらないというような事態になるんですね。
もちろん、日本で、日本でアメリカのその産んでくれた人を母親にして届ければ出生届は受理されるでしょう。したがって、それを受理してもらった上で今度は実際に卵子の提供をした母親に養子縁組すれば、それは一定の法律関係はできるだろうけど、本人たちの意思は全くそうじゃないんですね。したがって、それはやらないですよ。出生届を出している、それをあくまで受け付けてくれとしかないですよ。じゃ、アメリカの方へ行って、その実際に産んだ母親に出生届を出せっていったって彼女が届けるわけはないんですよね、今のこういう事案では。
ですから、やはり私はここはね、日本だけが世界に存在しているんじゃないんです。世界にはいろんな国があって、国境はあったって人は移動できる、移動して向こうで産むことがあり得るわけですから。だから、日本がこうなんだというだけではそれは済まない、とても済まないと思いますよ。
真剣にひとつ、もっと悩むのは、もう幾ら悩んでくれても結構ですから、血も涙もあるそういう道筋を、道筋付けるのは大臣なんですから、付けてほしいと思います。
○国務大臣(長勢甚遠君) 血も涙もあることは大変大事なことだと私自身も思っていますが、アメリカでやれるから日本で認めるということになれば、今度、日本の皆さんが日本でそういうのはもういいんだということになると。それはもちろん、今禁止しているといっても、禁止を破ったから罰則が掛かるということではありませんけれども、そういう意味では、しかし、今先ほどおっしゃいましたけど、それなりの方々が、みんな関係者の方々が集まって結論を出され、当時は出された。ただ、そのときも何らかの法的整備が必要なんじゃないかという目的意識を持ってやった結果、その結論も国民の全体の中では合意が得られないまま今日に来ておるという経過でございますよね。
ですから、今先ほど申しましたように、法的にきちんと認めたら世の中がみんなそれを認めるというような事案であろうかと。個々の問題としちゃ確かにおっしゃるとおりのことでありますけれども、それで社会全体としていわゆる生命倫理といいますか、そういうことも議論の一番の基本だと思いますので、私に余りせがまれ、せがむというか迫られても、迫られても、どうもこれ、厚生労働大臣にせがまれても厚生労働大臣も困るだろうと思いますが、正直言ってどういう形で議論して納得できる結論を出すのがいいのかなということすら難しいなという段階だと思います、正直言って。
また、アメリカの一部の州あるいはイギリスでは認められているというふうに承知をしておりますが、アメリカの一部の州あるいはイギリス以外の世界、例えばドイツとかフランスでも、ちょっと法の形式の中身までは正確には承知をしていませんが、こういう生殖補助医療は許されているというふうには伺っておりません。
○江田五月君 それは法務大臣に迫られても、せがまれても困るとかおっしゃるけれども、じゃだれに頼めばいいんですか。いや、それは、それならば我々議員立法考えなきゃいけないんで、これは本気で検討しなきゃいけないことになるのかもしれませんが、皆さんの方がそれだけ人がそろって、賢い顔した皆さんばっかりがそろっているんですから、やっぱりこれはやってくださいよ。まあ今日は、今日は陳情しておきます。
一つ、検察審査会についてちょっと伺いたいんですが、検察審査会が一生懸命仕事をなさっていること、そして国民が検察審査会を構成する割当てを受けて、そこへ行っていろんな仕事をしてよかったと思っていると、そういうこともあることもよく分かっております。
しかし一方で、どういう具合なのか、検察審査会にいろいろ申し立てても、何か本気でやってくれているんだろうかと、検審というのは結局はガス抜きになってしまっているんじゃないかというような声も届けられるんですが。
国民の声ですから、ここはひとつ検察審査会を、どういうんで、所管しているということになるのか、裁判所の方、検察審査会の国民へのアピールについて、国民への説明についてどうお考えなのか、お答えください。
○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 今御指摘がありましたとおり、例えば審査員、補充員の任期を終了された方のアンケートなどを見ますと、選ばれたときには六〇%以上の方が余り乗り気ではなかったと。しかし、任期終了時には九四%余りの方が非常によかった、よかったというような感想を漏らしておられます。
こういったアンケート結果も、これがすべてとは申しませんが、現在、検察審査会で真摯で充実した審査が行われているということの一つの表れではないかと思うわけです。
このほかにも、数字で申し上げますと、現在の起訴相当あるいは不起訴不当、要するに検察官の処分が相当でないということを含む議決というのは、平成十七年でおきますと全体の議決の五・六%、それから十六年におきましても五・五%というように毎年一定数出されておりまして、このことも、個々の事件についてどうこう申し上げることはできませんけれども、全体としては選ばれた国民の代表者である審査員あるいは補充員の方々が、忙しい中を審査会に出頭していただいて、そして検察官の起訴、不起訴処分の良しあしをしっかりと見ていただいていると、こういうことの一つの表れではないかと思っておるわけです。
もちろん、この制度の維持運営に当たる私どもといたしましては、制度がきちんと機能するように、今委員からも御指摘がありましたように、常に留意していかなければならないことは言うまでもありませんし、特に検察審査会法については、その改正法の実施というのが近づいております。そういう状況も踏まえまして、今後とも一層そうした努力を継続していきたいと、このように考えております。
○江田五月君 お話のとおり、我々検察審査会法を改正して、更に強い権限を持っていただくということにしていますので、是非よろしくお願いをしておきます。
調達について伺います。
これは、私、もうびっくりしたんですね。ぶっ飛んだと言ってもいいかもしれません。裁判所のこの契約が何とまあ、随契でやらなきゃ、いや、随契じゃないや、反対ですね、競争入札でやらなきゃならぬものが何と一〇〇%随契だったという、よくよく聞くとどうもそうじゃないんで、公益法人や、あるいは民間、OBを受け入れている、天下りを受け入れている民間企業などと結んだ随意契約で不適切だった割合というものがどのくらいあるかというと、まあそういうものがこれこれとテーマがありまして、それを全部見直してみたら何と全部これは不適切で、もうちょっと改善をすべきものだったというのが最高裁の場合であって、法務省の場合はそれが八八%だったというようなことのようですが、それでもやっぱり不適切だったということは当然許されるべき話じゃないんで、どういう事案であってどういうふうに変えようとしておられるのか、最高裁の方、お答えください。
○最高裁判所長官代理者(小池裕君) これまで、今委員御指摘のような随意契約というのはどういうものが行われていたかということを御紹介しますと、民事執行あるいは破産事件の補助業務、例えば郵便を出すとかいう業務とか、あるいは保存期間の過ぎました裁判記録を廃棄する事務がありますが、そういう業務とか、あるいは証人調べの録音テープの反訳の業務等について、委員が御指摘ありましたようなOBがおります公益法人との間で随意契約を結んでおりました。そこの専門性というところに着目しておりました。私どもといたしましては、こういった契約の結び方は会計法規にのっとって、沿っているという意味で適切さに欠けるところはなかったと考えております。
しかし、今政府で所管公益法人等の随意契約を徹底的に見直すという方針が出されておりまして、それを踏まえて十七年度に公益法人等で行った随意契約について見直しを行いましたところ、今後工夫をすればそのすべてについて競争等に移行できるという見通しを持てましたことから、これは良い機会だということで、より適切な契約を目指して積極的に見直しをすることにしたということでございます。
ちょっと長くなりますのではしょりますが、執行、破産あるいは記録の廃棄というところについては十九年度からこれを比較競争によることにしますし、録音、反訳の方につきましては、これは調書にかかわるところでございますので、民間業者の状況等を調査して安定供給の見通しを付けた上で競争入札に移行することにしたいと。そこで今、民間業者の実態の調査等を鋭意進めているところでございます。
以上でございます。
○江田五月君 これ、OBが作っておられる公益法人と司法協会ですね、そういうところに裁判所のOBがおられることを、どう言うか、けしからぬことだと言うようなつもりは毛頭ありませんし、司法協会は司法協会でいろんな仕事も、重要な仕事もあるだろうと思っておるんですが、しかし、やっぱり裁判所のOBがいるところへ、とにかく記録の廃棄だとかあるいはその反訳とかをもう随意契約で一括この仕事を下ろしているということになると、やはり国民から見ると税金を本当に適切に使っているかという疑問は生じてくるので、ここは是非改めていただきたいと、透明性高くやっていただきたいと思います。
法務省はこれについて、八八%は何か言うことはありますか。
○国務大臣(長勢甚遠君) ちょっと細部はあれでございますが、今最高裁から御答弁あったように、今まで契約相手は一つだなと思い込んできた節もありますので、この際法律等で契約の相手方が明示されているなど、国民から見てだれでもこれしかないんだということが分かるもの以外は移していこうということを方針としておるところでございます。
具体的に今までどうなっておったか、もし必要があれば当局から説明させます。
○江田五月君 時間になりましたので、終わります。