2007年3月27日 |
166 参院・法務委員会
10時から、法務委員会に出席。裁判所職員定員法と執行官法の各改正案の一括審議で、自民党委員に続いて私が50分弱、質問し、司法制度改革の中で裁判所が変わろうとする方向、国民主権の下での裁判所としての意識改革、裁判官や書記官以外の家裁調査官などの職員の充実の必要、検察官の増員の必要、向井亜紀さんのケースについての最高裁決定と母子関係、民法772条の推定と父子関係などにつき質問しました。その後、公明党、共産党、社民党の委員が質問し、採決。両案とも全会一致で可決と決まり、両案にそれぞれ付帯決議を付しました。
平成十九年三月二十七日(火曜日)
○江田五月君 裁判所職員定員法一部改正案、それと執行官法一部改正案について質問いたしますが、執行官法の方は、予想してましたとおり、既に岡田委員から質問ございまして、私もそれ以上特別の質問あるように思いませんので、これは通告もしていませんし、いたしません。
裁判所職員定員法の方について伺いますが、これは司法制度改革をどういうふうに実効あらしめるかということでございまして、今日は財務省椎名財務大臣政務官ですよね、来ていただいておりますが、ちょっと聞いておいていただいて、最後に締めくくり的に御答弁いただければと思います。
総人件費抑制と、行政改革事務局がこの主導的な役割を果たして国家公務員全体についてスリム化を図っていて、そういう中で裁判所もそれに協力するという姿勢ではあるけれども、協力はしながら、しかし、さはさりながら司法制度改革という大きなこの流れの中で、また他の行政改革スリム化ということが迫られている行政各部と違った要請があるということを是非御理解をいただきたいと、よく聞いておいていただきたいと思います。
さて、最高裁判所に伺いますが、前にも伺ったんですが、司法制度改革審議会が審議を重ねて意見書を出して、それに伴って推進本部ができ法律ができいろいろやってきておるわけで、この司法制度改革というのはまあ百年に一度といいますか、本当に歴史的な改革をやろうと。裁判所ももちろんそうした歴史的な改革に伴って、裁判所あるいは裁判官というもののあるべき姿というものについて何か大きなデザインがあってしかるべきだと思うんですが、どうもこの改革の方向に従って一生懸命やりますという、それはいいですけれども、何か個別のことに、状況対応型に終始をしていて、本当にこれからのこの社会の紛争解決の中で裁判所あるいは裁判官はこういう役目を果たすんだという、そういうグランドデザインが一向に聞かれないと。
前にも伺ったと思うんですが、もう一度、何かその後お考えがあれば聞かせてください。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) 今般の司法制度改革の意義ということで御質問でございますけれども、この今般の司法制度改革におきまして、裁判における審理の充実、それから専門的知見を必要とする訴訟への対応などの事件処理体制の充実強化というところから始まりまして、法曹養成制度の改革などの司法を支える人的基盤の充実、さらには国民の司法参加にまで及ぶ非常に広範囲な領域にわたる改革であったわけでございます。
この改革は、国民の価値観が多様化し複雑困難な訴訟が増える中で、事前規制型の社会から事後救済型の社会への移行が求められ、そうした事後救済の中心的役割を果たす司法、裁判所の役割が今後ますます重要になるという共通認識の下になされてきたものと理解しております。また、少子高齢化社会など社会状況の変化によりまして、成年後見制度でございますとかドメスティック・バイオレンスの問題、それから児童虐待の問題など、伝統的な司法といいますか、民事、刑事の裁判であります司法というような枠から、さらに司法の後見的な役割、福祉的な役割が期待される分野にまで裁判所に対する期待が広がりを見せているという認識を持っております。
裁判所といたしましては、このような社会経済状況の変化に伴う司法機能の充実強化を求める国民の期待にこたえ、中立公平な立場から個々の紛争に法を適用しこれを適切に解決していくという司法の中心的な役割を全うすることができるように今後とも努力を続け、個々の事件において適正迅速な裁判を積み重ねていくことが国民の期待にこたえる道であると考えており、そのための司法の基盤整備にも努めてまいる所存でございます。
司法機能の充実強化のニーズの拡大に対応するために、裁判所としましては、平成十三年、司法制度改革審議会におきまして、裁判の迅速化、専門化への対応のために、今後十年間で裁判官五百人プラスアルファの増員が必要であると意見を述べたわけでございます。そして、この意見に基づきまして、平成十四年度から計画性を持って増員を行ってきておるところでございます。さらにこれに加えまして、平成十七年度以降は裁判員制度導入のための態勢整備を計画的に行っているところでございます。
今後とも、裁判所に与えられた機能を十分に果たし、国民の期待にこたえることができるように、委員御指摘のとおり計画性を持って必要な人的体制の充実を図っていきたいと考えております。
○江田五月君 よく分かりました。
というのは、つまり、やはり個々の事件の処理を一生懸命やって国民の期待にこたえたいと、まあそれしかないといえばそれしかないのかもしれないけど、しかし、私はやはり、事前規制型の社会から事後救済型の社会に変わっていく、あるいは裁判員制度というものを取り入れて国民の皆さんに裁判に、主体的な裁判をするという側にもう入ってきていただく、そして裁判所が本当にこの国民主権の下の裁判所になっていく、これはやっぱり司法というものの大きな変化だと思うんですよね。
私も十年足らずですが裁判所にいたことがありまして、当時思い出すんですが、横浜の地方裁判所にいました。判事補十年目でございましたが、横浜の地方裁判所はたしか常置委員会と言ったと思うんですけども、各裁判官からグループ分けをして代表者を出して、委員会を作ってそこで司法行政を決めていくということをやっていて、私は判事補を代表してその常置委員になっておりまして、そしてその当時に一番問題だったのが法廷をテレビでどう映すかというのが問題になりまして、アメリカでは御承知のとおりすべてをもうテレビで映して洗いざらい国民に同時中継するということをやっている。日本もマスコミからそういう強い要求があってどうするか。私も当時は、やっぱりまあ裁判の場というのはそういう場じゃないだろうと。ですから、メモをこっそり取っていただく程度にしてテレビはどうぞ御遠慮くださいというような、そんなことで横浜のマスコミの皆さんといろいろ私も折衝に携わったようなこともあったりしたんですけれども、やはりこの同時中継がいいかどうかは別として、本当に裁判所がもっともっと国民のものになっていかなきゃいけないと。
ところが今はどうでしょう。裁判所へ、それはだれも、もちろん民事で被告にはなりたくないけど原告にだってなるのはそれは嫌ですよ。まして被告人になって裁判所へ呼ばれるのはそれはだれにとっても嫌だから、裁判所というのはやっぱり行きたくない場所ですよね。その行きたくない場所にそれでも裁判員で来てくださいという、国民が裁判員になるの嫌だというのは当たり前の話で、それでも来てくださいと言うには、裁判所というのがやっぱり行ってそこでいつお縄ちょうだいになるか分からぬということじゃなくて、もっと、裁判所へ行ったら何かほっとするねとまではいかなくても、何か行きやすい場所になっていかなきゃならぬ。
そうすると、裁判所の例えば玄関の受付はもっとにこにこするとか、あるいは書記官室へ入っていったら書記官が眼鏡の下から上目遣いでじろっと見ると怖くてもうすぐ帰ってしまうというんじゃなくて、もっと何か優しい裁判所になっていかなきゃならぬ。とりわけ家庭裁判所なんていうのはそうだと思うんですよね。
そうすると、そうすると、今の裁判官を増やしていくのはそれはいいです。もちろんもっと増やさなきゃならぬと思います。そして書記官も増やしていく、これもいいけれども、今やっているのはあれでしょう、書記官以外の職員の定員枠を振り替えて書記官にして、ほかの職員はどんどん減っていっているわけでしょう。そうやってほかの職員がどんどん減るというので本当に国民に優しいにこっとほほ笑む裁判所になるのかどうか。どういう気持ちでおられるのか、お聞きいたします。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) お答え申し上げます。
これから裁判員制度が始まりますと、毎週あるいは毎月五十人あるいは百人の方が裁判所を裁判員となる候補者としておいでになるわけでございます。そのときに、やはり刑事訟廷が中心になると思いますけれども、そこで接する職員がやはりきちっと対応できる、接遇できると。まあ喜んで来られている方というのはそれほど多くないかと思うんですけれども、ただ、まずやってみて良かったというふうに思っていただけなければやはりいけないと思います。その意味で、委員御指摘のとおり、裁判部門の書記官の充実、事務官の充実、人的体制の充実というのはこれは非常に重要なことだと私ども思っております。
今般、書記官を百三十人増員しておりますが、先ほど申し上げましたとおり同数の削減もしております。ただ、この削減の内容は、そういった裁判部門を削ったわけではございませんで、庁舎の掃除をしてくれる方々であるとか警備をしていただく方々だとか、いわゆる技能労務職員、こういったところを削っております、削減していただいております。ですから、裁判部門につきましては従来どおり充実して、そういった委員御指摘のような御懸念のないように十分な人的体制の整備を図っていきたいと、さように考えております。
○江田五月君 懸念じゃなくて本当に心配しているんですよ。
それは、受付だって、何か裁判所へ行ったら怪しいやつが来たというような目でぎょろっと、どこかで怪しいのが来たら困るというんで目を光らせている必要はあるんですよ。それは、裁判所というのはなかなか大変なところですから、いろんな事件も起きるところですから、どこかで目を光らせているんだけれども、しかしやっぱりそこは、国民との接点というものはもっとソフトになっていかなきゃいけないんで、掃除のおばさんもそれはにこっと笑ってもらわなきゃ困るわけですよね。
書記官百三十人増員をされるわけですが、これで一体どの程度裁判機能が充実をしていくのか。百三十人をどういうふうに配置をされるおつもりですか。何か具体的な案が今もうあるんですか。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) お答え申し上げます。
今回、百三十人書記官を増員いたしますけれども、それは先ほど申し上げましたとおり、依然高原状態にございます、医療、建築等の複雑、困難な事件が増加傾向にある民事訴訟事件、それから同じく事件が増加傾向にございます刑事訴訟事件や家庭事件、特に家事事件、成年後見事件等は非常に増加しております。それに適切に対応、対処するため、それから、二年後に参ります裁判員制度の円滑な実施のための態勢整備を図るために増員をお願いしているところでございます。
裁判所書記官は、具体的には民事訴訟事件においては、委員御承知のとおり、調書作成事務等の公証事務に加えまして、いわゆるコートマネジメント事務を行いますほか、刑事訴訟事件においても事前準備、特に公判前整理手続とかこれからますます増えてくると思いますけれども、それから期日管理の準備を含めまして、裁判官と協働しながら審理の進行管理に重要な役割を果たしておるわけでございます。
また、家事事件におきましても、成年後見につきまして、様々な申立ての要件審査や当事者への説明等を担当しております。家事相談などにも応じておるわけでございます。
さらに、裁判員制度が導入されますと、先ほど申しましたように、これは年に一度の事務でございますけれども、裁判員候補者名簿を毎年作って、事件ごとにその名簿から裁判員を選任する手続というものが更に加わります。
書記官の担当する事務が相当数増加することが予定されるわけでございまして、これらの事務を今回の増員をお認めいただくことによりまして更に適切に行うことができるようになると、さように考えております。
○江田五月君 コートマネジメントという、初めて聞きましたが、これは日ごろ使われている言葉なんですかね。
要するに、訴訟法上の裁判所のマネジメントもあるし、それから具体的に法廷のマネジメントもあるし、さらに国法上の裁判所全体のマネジメントもあるし、いろんな場面、今私三つ挙げた、ぱっと気が付いただけでそれだけあるわけですが、そういうものを書記官がやっておると。
国法上の裁判所のマネージは、書記官というよりも、それは書記官という官職ではあるかもしれないけれども事務局長を中心にしてやるということになる、事務官になるんですかね、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) コートマネジメント業務というふうに先ほど申し上げましたのは、書記官として事件の進行を管理する、当事者との事前連絡、法廷の前の事前連絡でありますとか、そういう事件の進行を管理するという意味で先ほど申し上げましたけれども、様々な事務局長が担当する部分もありますけれども、先ほど申し上げましたのはそういう意味でございます。
○江田五月君 分かりました。事件の進行管理もあるけど、コートというのは、そういう裁判部としてのコートもあるけど、そのほかにもいろんな意味のコートがありますので、すべてやはり、裁判官はもちろん最終的な、それぞれの訴訟法上の裁判所については最終的な責任を負っておるけれども、やはり中心になって、裁判所の庁舎管理などなど行うのも書記官がかなり大きな役目を果たすだろうというような感じはしますので、そうしたところで、書記官あるいは事務官、あるいはその他のいろんな技能労務職員など、すべて皆本当に国民の公僕として、国民が主権者なんだと、国民に奉仕をする立場なんだと、そういう意識をしっかり持ってもらわなきゃならぬと。
県庁とか市町村役場とか、これは知事や市町村長が選挙で選ばれるので、選挙のときに本当に市民に身近な市役所にしますというようなことで、そしてそれを実行するためにいろんな努力をしますよね。今はもうそういう努力をしない市長さんなんというのは、おれは市長だと言って威張っているような市長はもうすぐにこれは首ですよ。東京都がどうだかちょっと気になるところではありますが。
しかし、裁判所はそういう意識を、本当に意識的にそういう意識を、駄じゃれじゃなくて、やっぱり付けていかなきゃいけないと思うんですね。そうすると、一番重要なのはやはり裁判官がそういう意識を持つかどうかということもあるし、それから、裁判官がこれ間違っても、例えばセクハラだとかパワハラだとか、そういうようなことになっちゃいけないというようなこともあるし、裁判官の研修、今のような新しい裁判所をつくっていくという意味での研修は非常に重要だと思いますが、どういうふうにお感じになっていますか。
○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 今委員からお話がありましたように、新しい時代に裁判官に対する要求は様々なものがあり、また裁判官として律していかなければならない場面というのもいろいろ時代とともに変化してくると思います。そういうことについてきちっとした研修が必要だということは、委員御指摘のとおりだと思っております。
今、セクハラ、パワハラというようなこともありましたが、それに関連して若干御説明いたしますと、司法研修所では経験年数等に応じて実施している各種研修におきまして、専門の学者による講演などによりまして、人権擁護に関するカリキュラムあるいは国際的な人権に関するカリキュラムといったものを実施し、裁判官の人権感覚あるいは国際人権水準についての理解を深めるように努力しております。
それから、いわゆるセクハラ、パワハラ等の新しい問題でございますが、こういった点につきましても、今申し上げましたような各種の研修、あるいは支部長それから部総括、こういった人たちを対象とする研修などにおいて、問題となり得るケースにも言及するなどして問題の具体的な重要性を認識させるとともに、相手方の受け止め方というものにも配慮した言動が求められている状況についてきちんとした理解を深めるように、このように努めております。
○江田五月君 ちょっと、やはりもう一歩踏み込んで聞きますが、先ほど言ったとおり、司法制度改革というのは裁判所も変わっていくんだと。変わっていくというのは、国民主権の下で国民に、主権者である国民に奉仕する裁判所なんだと、そういう意識を裁判官がしっかり持たなきゃいけない。その国民というのは、その辺にだれかいる抽象的な国民じゃなくて、正に一人一人の国民、裁判所の目の前に来るあなたに私たちは奉仕をするんだという、そういう意識を持って、そういうことが単に頭の中だけでなくて体に言葉に手足に表れてこなきゃいけない、そういう意識改革の研修というものを裁判官に対しておやりになるかどうか。
○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 正に裁判員制度というのもその一つのだろうと思いますけれども、広い意味でのコートサービスといいますか、国民からのアクセスがきちんとしたものとして成り立つように裁判官を中心とした裁判所がこれを受け止めていかなければならないと、この点はもう委員御指摘のとおりだと思います。
研修に関しましては、今後ともそういう点に配慮しながら充実に努めていきたいと考えております。
○江田五月君 コートマネジメントに続いて今度はコートサービスという言葉が出てきて、追い掛けるの大変ですが。
裁判官もそうだし、そして、念を押しておきますが、書記官も、あるいは事務官もその他の職員もすべてそういう意味で意識を改革してもらわなきゃいかぬというので、この意識改革は是非お願いをしたいと思います。
意識だけじゃ駄目で、やっぱり人手が足りなかったら、人間忙しかったらそんな国民の方まで見ていられないですからね。やっぱりこれは人手もしっかりとなければそういうことができないということだと思うんですね。
検察官も最近、これは法務大臣に答弁をお願いすることになります。この間の志布志の事件でも、もっと検察官がしっかりしていなきゃ駄目じゃないかという声はやっぱり強いですよ。それから、法廷をずっと検察官立ち会っているわけです。その法廷の一つ一つの動きを見れば、私は細かくずっと検証はしていませんけども、節目節目で、おお、これはちょっとおかしいぞというようなことがもう明らかになってきているケースのように思いますね。それが最後に論告求刑のときに、それは起訴したときにあらかじめ求刑も決めて起訴していますから、それを述べるということの枠を外せとまでは言いませんけども、それでもやっぱり訴訟というのは生きていますから、民事だけじゃなくて刑事だって訴訟は生きていますから、起訴したときのその思いのままを論告で述べればよろしいというんじゃ、立会い検事は要らないんですよ。
やはり私は、最近の事件をずっと見ていますと、やっぱりこれ、検察官もちょっと忙し過ぎて、もう立会いは半分寝ていようと、捜査が忙しいというようなことになっていたんだとするならばこれは大変なことで、さらに裁判員制度が導入されると、今までの、今までのと言うと悪いですけども、形だけ立会い検事がいるという、それで刑事裁判は一応体を成しているというだけじゃ駄目なんで、立会いの検察官が裁判員に、素人の裁判員に分かるような法廷活動をしていかなきゃならぬということになったら、やっぱりここも人が大切。人というのは質もあるけど量もある。検察官をもっと大幅に増員するように、これは法務大臣、頑張っていただかなきゃならぬと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) まずもって、いろんなことで検察に対しまして御批判をいただいていることにつきましておわびを申し上げたいと思いますし、また、検察におきましても、いろんな事件を踏まえて精査をして、これからの在り方に生かしていきたいと今努力をしておりますし、そうなることを私も強く指示をし、また期待をしておる次第でございますので、今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。
今、検察官の増員についての御提案でございます。我々も全く同じ考え方でこの必要な体制の整備に鋭意努力をしてまいっておるわけでありますが、何せ定員の問題は政府全体の中でいろいろ問題もあり、大変苦労しておりますが、毎年四十名、五十名ぐらいずつは増員をさせていただいております。しかし、これで大変非常に十分だというふうには全く思っておりませんので、今後とも検察体制が国民に信頼をされるように、十分な機能が発揮できるように全力を挙げていきたいと思っております。
また、今、法廷の中での検察の在り方についても御提案がございました。どうしても、私は役人上がりでございますし、また役所においてもそういう傾向がありますし、まあ余計なことかもしれませんが、政党間の議論においても前の言ったことにこだわるというところがどうしてもありがちでございまして、こういうことも正直言って勇気を持って対応できるような検察であってほしいなと私自身は思っておる次第であります。
○江田五月君 そのほか、例えば家裁調査官ですね、これもどうも今年は増員を求めていないようなんですが、少年事件、あるいは人訴移管とか成年後見などの導入による家事事件、いずれもやはりこれからますます重要性は増してくるし、質もまた、もっともっと調査官というものが得意分野とする様々な分野に裁判所が役割を発揮をしていくということはますます求められていくんだろうと思います。
あるいは、そのほか、弁護士任官の話もありますし、全体として検察官も含んで司法の質的な変化と言えるような大充実が必要なんで、これを踏まえながら財務省としてしっかり予算措置を考えていっていただきたいと。
裁判所の予算は、財務省の思惑を気にしながらじゃなくて、どんともう思い切ってやって、それを入れてもらえないんだったら自分の案も付けて国会へ提出するという仕組みになっているんですが、裁判所もそのくらいのことを一遍、かつてやったこともあるようですけども、聞きますと、何か裁判所宿舎、裁判官の官舎の関係でそんなことをやったことがあるということで、大変、裁判官上がりとしてはうれしいことというか、今もそんなことをやるというんじゃ、これはもう何をか言わんやですが、そうじゃなくて、その程度の意気込みで予算要求してほしいし、財務省としても、そういう司法に携わる者の切なる思いというものをしっかり理解しながら予算措置を講じていただきたいと思いますが、覚悟を聞かせてください。
○大臣政務官(椎名一保君) お答えをさせていただきます。
著しい犯罪情勢の変化と裁判員制度の実施を目前にいたしまして財務当局として今日呼んでいただきまして、大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まず江田先生に感謝を申し上げる次第でございます。
法務大臣からも答弁がございましたけれども、特にこの五年間、裁判所におきましては、伸び率は、総定員の伸び率は一・四%でございますけれども、裁判官につきましては一〇・四%。検察庁につきましても、全体が二・三%の伸び率の中で検察官につきましては九・五%と。それなりに考えて配慮をしてきたところでございます。
ただいまの御意見、十分に承りまして、今後、司法制度改革と諸般情勢の変化に対応できるように十分に財務省としても対応をしていきたいと思っておるところでございます。よろしくお願いいたします。
○江田五月君 司法に関しては、行革事務局の主導で総人件費抑制という、そういう中でやるんじゃなくて、もうそれは外に出したらどうだと言いたいぐらいの思いではありますが、今日はそこまではお尋ねをいたしません。どうぞ、もう結構です。
そのほか、裁判員制度フォーラムのこととか、あるいは裁判員制度の広報経費の転用があったとか、契約書が最後の段階になってやっと書面にされるとか、いろんな問題がございまして、最高裁判所の経理局長にも来ていただいておりますが、ちょっと時間の方がないので、これらのことについては、来ていただいて大変恐縮ですが、そういう点について国会が問題意識を持っているということはひとつ是非御理解をいただいておくということで、次に移ります。
〔委員長退席、理事松村龍二君着席〕
親子関係について法務大臣、伺います。
親子関係というと紳士淑女の関係じゃありません、親子の関係なんですが、法律家はもう親子関係というのでそう言っておりますが、母子関係、母と子の関係について最近最高裁が注目すべき決定を出しました。向井亜紀さんのケースですがね。私は、これは高裁がなかなかいきな計らいをしたなと、あれでよろしいと思っていたんですが、最高裁はそれを入れませんでした。
司法の判断ですから、それを立法府にいる我々が批判めいたことを言うのはどうかと思いますので、この判断が司法の判断だと、これを受け止めて、その上で一体立法として何をすべきなのかということを考えなきゃならぬと思いますが、それにしても、この司法の判断をどういうふうに理解をすればいいのか、法務当局としてどう理解をされているかということを若干聞いておきたいんです。
朝日新聞に棚村教授という人のコメントで、新しい問題、古い理屈で判断という、正にそのとおりじゃないかなという気がするんですが、法務大臣、母親と子供との関係というもの、法律をちょっと離れて、何によって成立する関係だと思いますか、母親と子供の関係。
○国務大臣(長勢甚遠君) 当然生物学的な要素もないわけではないと思いますけれども、やはり子を慈しむという母親としての役割をきちんと持っている女性と、またその親に対して親しむというか頼ろうというといったらいいんでしょうか、そういう特に若い子供のころの時代はそういうものが社会的に認められるものを母子関係という社会であってほしいなと私自身は思っております。
○江田五月君 私もよく分からないんですけどね、本当はよく分からないんですが、母親と子供の関係というのは、一つは遺伝的な関係というのがありますよね。それから、産む機械と言った人もいるようですが、機械じゃないと思うけれども、しかし、やっぱり子供を胎内に宿して、そしてこれを出産するというそういう関係もあります。それから、家庭の中で子供を慈しむ、今大臣言われた、そういう社会的な関係というか、人間同士の関係としての母子関係というのもあると思います。
これ、以前は一体だったんですよね。遺伝的な関係も出産の関係も、家庭で子供が家族の中で育っていくというのも全部一体だったんですよ。それが今ばらばらになってきたんですね。ばらばらと言うとおかしいけど、分離できるようになってしまった。遺伝的な関係と出産の関係も分けられるようになってしまった。出産の関係とそれから家族の関係と、ここはもうなかなか難しいですが、しかしそれはそれで分からぬわけじゃない。しかし、その遺伝的関係と出産の関係が分かれるようになったというのは、これは正に新しい問題なんですね。どっちを重視していくのか。
私は、やはり遺伝的関係を別にオールマイティーにするつもりはないけど、それでもやっぱり生命の萌芽というのは出産ではないんで、生命の萌芽というのはやっぱり母胎から生ずる卵子が刺激を受けて分裂をしていってそして胎児になって出産してくるという、その受精卵というのが生命の萌芽だと、これがあるから受精卵についていろんな今悩ましい問題を我々抱えてきているわけですね。受精卵なんというのは単なる物で、あんなものは生命とは関係ないんだと言ってしまったら余り難しい問題はなくなってくるのかもしれませんが、そうじゃないんで、そうすると、そういういろんな関係をどういうふうに法的に整理をして法的にこれに枠組みを与えていくかという話なんで、今度の最高裁の決定によると、遺伝的な関係で生ずる母子関係というのは法律上はむしろ公序良俗に反するみたいな言い方さえされているわけですね。実際に遺伝的関係で母に当たる人について母子関係は法律上生じないと。
〔理事松村龍二君退席、委員長着席〕
じゃ、出産の関係で母子関係が生ずる人はどうかというと、これはアメリカの方で遺伝的関係の母子関係を法律上母子関係と認めると、そういう裁判が出ているもんですから、そっちの、つまり出産の関係による母子関係もないと。子供は現にいる、子供は現にいるのに母親はどこにもいない、こんな変な法律関係になってしまっているわけですね。これ、大臣、何とかしなきゃいかぬと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(長勢甚遠君) 先生がるる御指摘になった状況といいますか、流れはそういうことかなと私も思います。つづめて言えば、医療の発達がこういう問題が起こる一つの大きな契機になっているんだろうなと思います。もうちょっと踏み込んで言えれば、いろんなもので科学が発達する、科学が発達したら科学の発達によって何でもしてもいいのかということが今一つの問題として問われているんだろうと思うんです。しかし、現実に今回の事件を含めていろんなことが深刻な問題を生じておることも事実でございます。
最高裁の判決について、私も先生ほど判決を読み取る力はありませんし、またいろいろコメントを申し上げることもなんでございますが、恐らくそういうようなことも含めて現在の社会のルールとしての法律の解釈としては正当だということを御決定になったんだろうと思っておりますし、私自身もそういうことなんだろうと個人的にも思っております。
ただ、そうすると、今先生言われたように遺伝子の問題もある、また社会としての問題もある。また、私が申し上げましたように、科学でできることは何でもしてもいいのかという問題もある。非常にこういう全体を総合した結果は、結局は国民の皆さん全体が納得できるようなルールを作っていくということが法律のありようだと思います。法律論だけで決めるわけにもいかない。まして医学だけの判断で議論するわけにもいかない。もっとほかの、どれとどれかと言われても私自身もよく分かりませんが、例えば生命倫理の問題だとか社会の倫理の問題だとか、いろんな観点からの御議論をしていただきたいというふうに思いまして、昨年、厚生労働省と法務省とで学術会議に御検討をお願いをいたしたところでございます。
今、鋭意御検討をいただいておると聞いておりますし、また、今先生のようなお話も含めて各方面で御議論があるように伺っておりますので、そういうことを、その御議論を踏まえながら検討を進めていくべきことかなと今思っておる次第であります。
○江田五月君 私は、この最高裁のこれ判決じゃなくて決定なんですよね。古田裁判官、その裁判官の補足意見というのがありまして、この特別な本件の事情は十分理解できると、子の福祉も重要だと、しかし代理出産で生ずる問題について何らの法制度が整備されてない状況では向井亜紀さんと子供との法律上の母子関係を認めるのはちゅうちょするという意見なんですね。
法律の制度が整備されていないから、この子には母親は法律上は認めないんだというのも冷たい話ですよね。国連は特別総会でチルドレンファーストという大原則を宣言しているわけですよ。これから世界じゅうはすべてのことをやっぱり子供を第一に考えていこうと、こういうふうに宣言をしているそういう時代に、法制度が整備されていないから母子関係は認めないという、えらいことだなと思うんですね。
しかし一方で、この最高裁の決定は、遺伝的な事実としての母子関係は法律的な母子関係とは違いますというんで、そういう事実としての遺伝的な母子関係があっても法律上はそれを認めないという。ところが一方で、今度、七百七十二条関係、これ今いろいろ議論されておりまして、法律の枠組みがこうなっているというのがちゃんとあっても、いや、事実としての生物学的な父子関係はそうじゃないから、その生物学的な父子関係に法律の制度を合わせようという、そういう議論が今国会議員の中で行われている。
私、法務大臣、法務省がそこをそう簡単でもないんだといってちょっとちゅうちょされているように見える。それは分かるんです。ここは決して、法務大臣、そんなけしからぬと言うつもりもないんですが、しかし、やっぱり急いで何かをしなきゃならぬ案件であることは確かなので、これは学術会議が代理出産はもう禁止をするという方向をあるいは打ち出すかもしれません。私はそれもそれで一つの方向だと思います。思いますけど、幾ら禁止をしたって、そういう禁止されている母子関係が遺伝学上生じないというわけにはいかないですよね、それはいろんな世の中様々ですから。
そうすると、その場合に、あんたは、禁止されているんだから法律上の親子の関係は法律では認められませんといって切ってしまっていいのかという問題はやっぱり残るんで、真剣にひとつ検討して、そして、トータルな問題の解決が難しければ個別の案件の解決でもいいじゃないですか。最高裁によるとそういう特別の立法で個別の解決をすると公序良俗に違反するなんて怒られそうですが、そう最高裁もいつまでも古くはないと思いますので、ひとつ一緒に協力しながらやっていきたいと。これまでも長勢法務大臣とは法務大臣になる前にいろんなことで協力しながら立法の努力もしたこともございますので、またいろいろ知恵をお互いに絞りたいと思います。覚悟を聞かせてください。
以上で終わります。
○国務大臣(長勢甚遠君) もう法律の専門家の先生からそうまでおっしゃられると、大変恐縮に存じますが。
今、代理懐胎の話、また、七百七十二条のお話もありました。特に、おっしゃるように、仮に代理懐胎を禁止するということであれば、罰則をもって禁止するのかどういうことになるのか分かりませんけれども、だからといってそういうことは生じないという保障はないわけで、そうすればお子さんが生まれるわけで、それはもうほうっておくということはそれはあってはならないことだと私も思います。
それをどういう仕組みでどうしていくのかというのは大変難しいわけで、現行法制では、言葉が法律上適切かどうか分かりませんが、一種の実子相当の形にできるようなバイパスも用意をしておるわけで、それだけでいいのかどうかというような問題になるんだろうと思います。
私も今結論を持っているわけではございませんし、国民の皆さんの納得する形のものをどうやってつくるかというのは大変難しい作業だと思いますが、また先生方におかれましても十分御議論いただきたいと思いますし、法務省においてもそれらを踏まえながら検討していきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
○江田五月君 終わります。
2007年3月27日 |