1999/04/27 |
参院・総務委員会
○委員長(竹村泰子君) 行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。
○江田五月君 国においても行政情報公開制度をつくろうという大きなテーマがいよいよ最終場面に来ておりまして、大変感無量のものがございます。
情報公開の制度ができますと、行政文書についてその管理、保管、これが大変大切なことになってくると思います。これについては、本委員会で法律でしっかりした制度をつくるべしというような議論もなされましたが、現在のところ政令でそうしたものをつくっていこうということになっておりまして、既に政令についてのいろんな検討も行われておると聞いております。
さらに続いて、行政機関において保管をしておる文書が保管の期限を経過した後にこうした文書を一体どうするかということについて、国立公文書館法というものを議員立法でつくろうという段取りになって、この委員会、本日の情報公開法の採決の後に国立公文書館法を仕上げようという段取りになっておるので、これは政府においてもそうしたことは、議員立法ではありますがいろいろ検討していただいているものと思います。
そこで、官房長官に二、三、この国立公文書館法について伺っておきたいと思います。
国立公文書館法の案文は、後に提案理由の説明がございますが、これは国立の公文書館に行政文書だけでなくて司法や立法の機関の保有する歴史的価値のある資料もこちらに移管しようということになっておって、したがって三権分立ということに留意をすれば行政が担当する国立公文書館のところへ全部よこせと一律に決めてしまうというわけにもいかなくて、協議とか合意とかというそういう仕組み、制度の設計をつくっております。
それはそれでよく配慮された制度設計だと思いますが、現実に行政文書については、外交文書とか防衛文書とかの一部の例外を除いて原則すべて現在既に存在する国立公文書館に移管をして、そして国立公文書館でその管理の仕方あるいは廃棄などについて検討することになっておるんです。そういう行政文書についての現在の扱い、原則国立公文書館に移管をさせるという、これについて、その制度が変わって協議とか合意とかというものがあるからというので各行政府が自分のところにしまい込んで出さないというふうなことになることはない、むしろ逆に公文書館に移管をし、そこにアーキビストをしっかりと養成し、現在まだ十分に養成できておりませんが、しっかりした養成をしてアーキビスト的観点から歴史的重要性というのを判断して適切な保管の方法あるいは廃棄できるものは廃棄ということにしていくべきものと考えておりますが、官房長官、いかがでしょうか。
○国務大臣(野中広務君) ただいま御指摘ございました行政文書の扱いについてでございますが、現在、各省庁におきまして永年保存と定められました公文書等につきましては、作成後三十年以内に国立公文書館に移管することとされておりまして、今後とも委員御指摘のように適切な移管を推進してまいる所存でございます。
いわゆるアーキビストなどの養成につきましては、御指摘ございましたように現在まだ十分ではありませんし、国及び地方公共団体におきましてこの公文書館等に勤務する職員に対しましてアーキビストに必要な専門的知識を習得させたり、またこれによりまして公文書館の中核的な業務を担当するにふさわしい専門職員の養成に資するよう、今公文書館専門職員養成課程を実施いたしておるところでございます。
今後とも、関係する学識経験者や団体等との相互の緊密な連絡を図ることによりまして、国民共有の財産であります歴史資料としての重要な公文書等を保存いたしまして利用に供するという公文書館制度の一層の発展を図るとともに、またその要員の養成に努めてまいる所存でございます。
○江田五月君 永久保存というものは三十年という制度にして移管をする。永久保存でないものは十年とか五年とかいろいろと政令で文書の保管についての制度をきめ細かくおつくりになると伺っていて、それについても同じように国立公文書館への移管が図られるものと理解をいたします。
次に、情報公開法ができて行政情報というものは原則公開ということで、これから新しい情報公開の時代が始まるわけですが、国立公文書館法ができますと、行政府に文書が保管されるときは原則公開なんだけれども、公文書館に移るとたちまち秘密文書になるというそういう扱いはないだろうと思っておりまして、これは国立公文書館の保存する公文書等も公開が原則で、そしてさらに一定の年限がたったものになるわけですから、現に行政府が保有しているものよりもさらに一層進んだ情報公開が図られるべきものと理解をしたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(野中広務君) 国立公文書館が保存をいたしております公文書等につきましては、お話しのように公開が原則となっておるわけでございます。したがいまして、個人の秘密の保持等の観点から例外的に非公開とされます場合につきましては、その要件を定めた明確かつ客観的な基準の策定を検討しておるところでございまして、策定後はその適切な運用をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
さらに、現時点におきまして例外的に非公開とされたものでありましても、時の経過や社会情勢の変化に伴いまして将来非公開とする理由が消滅をいたしました場合は公開するなど、公開の促進に努力してまいりたいと考えておるところでございます。
○江田五月君 個人の秘密の保持等の観点も重要ですが、諸外国の例を見ますと、その個人の死亡後何年というようなことでそうしたものも公開するといった制度が多いので、ぜひそうしたことも配慮をいただきたいと思います。
さて、三点目ですが、国立公文書館の閲覧制度でございます。
閲覧の諾否、これは国立公文書館の方でなされる。それに対して、諾の場合はいいですが、否の場合にどういう不服処理の方法があるかということが一つ検討課題になりまして、法律上の争訟は最終的に司法府が判断するわけですからそれは今ここでいろいろ論議すべきものではないだろうと思いますが、少なくともそうした諾否の判断が恣意に流れることがあってはいけないので、一定の基準を設けるとか、あるいは拒否する場合には一定の手続を設けるとか、公文書館内部での再検討などについても一定の制度を検討すべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(野中広務君) 今御指摘ございましたように、閲覧制度には一定の例外があるわけでございますが、例外的に非公開とされます文書につきましては、その要件を定めた明確かつ客観的な基準を策定いたしまして、それを適切に運用いたしますことによりまして、今、委員御指摘のように恣意的に非公開扱いとすることは十分避けられるものと確信をしておるところでございます。
さらに、個別の案件につきまして非公開扱いとされることに疑義があるような場合等につきましても、基準に適合することを中立かつ公正な見地から確認をいたすための何らかの手続を検討することを含めまして、今申し上げたような基準の運用につきましても客観性を担保するための措置を講じてまいりたいと考えております。
○江田五月君 終わります。
○委員長(竹村泰子君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律案について、椎名素夫さん及び佐藤泰三さんから発言を求められておりますので、順次これを許します。椎名さん。
○椎名素夫君 私は、参議院の会を代表して、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案に対し修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
その提案理由と趣旨について御説明申し上げます。
本法律案につきましては、衆議院で既に修正がなされ、情報公開訴訟の土地管轄については、現行の行政事件訴訟法の特例として、被告の住所地のほか原告住所地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所を特定管轄裁判所とし、ここにも訴訟を提起することができることとなっております。これは、当事者間の公平、証人の便宜等を考慮した措置であり、国民の利便にかなうこのような修正を行った衆議院に対し、敬意を表するものであります。
しかしながら、衆議院での修正によっても、沖縄県につきましては、県民が情報公開訴訟を提起する場合の負担が他の都道府県民と比較して依然大きなものとなっております。この点にかんがみ、特定管轄裁判所に那覇地方裁判所を加えるべきであります。
すなわち、沖縄県は全県が離島である上、県庁所在地から高等裁判所所在地に行くのでさえ飛行機を使わなければならないという他の都道府県とは著しく異なった地理的状況に置かれております。各県の県庁所在地から高等裁判所の所在地への交通費をもとに訴訟費用を比較した場合、最も費用を要するのが沖縄県で百九十万円となり、これは二位の青森県の約二倍という試算もなされております。私どもは、このように沖縄県民に格段の負担を求めることを見過ごすわけにはいきません。
また、従来からの沖縄における司法制度の経緯、沖縄県の苦難の歴史、「沖縄の心」などを考慮すれば、特定管轄裁判所を那覇地方裁判所に拡大することについて広く国民の理解を得られるものと確信しております。
このような趣旨から我が参議院の会は修正案として、衆議院修正により加えられた行政機関の保有する情報の公開に関する法律案第三十六条に定める特定管轄裁判所に那覇地方裁判所を加えることといたしました。
以上が修正案の提案理由とその概要であります。
なお、本法案の本院における審議に当たって、衆議院段階での全会一致の経緯をそのまま本院に持ち込むような議論があったことは、まことに遺憾でありました。しかし、本院における修正をめぐって、本院の各党各会派が二院制の趣旨に基づき真摯な審議に終始されたことには深く敬意を表します。
本修正案が委員各位の御賛同をいただき、速やかに可決されますことを要望いたしまして、私の趣旨説明を終わります。
○委員長(竹村泰子君) 佐藤泰三さん。
○佐藤泰三君 私は、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び自由党を代表いたしまして、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案に対し修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
これより、その提案理由と趣旨につきまして御説明申し上げます。
本法律案につきましては、衆議院において、行政事件訴訟法の特例として、情報公開訴訟については被告の住所地のほか原告の普通裁判籍を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所を特定管轄裁判所とし、ここにも訴訟を提起できる旨の修正がなされております。これは、当事者間の公平、証人の便宜等を考慮した措置であり、国民の利便にかなうこのような修正を行った衆議院に対しまして、深く敬意を表するものであります。
しかし、本修正によりましても、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、政府の諸活動を国民に説明するには十分とは言えません。特に、国民が情報公開訴訟を行う場合に要する交通費等の負担はなお大きいものがあり、この点については何らかの措置が必要と考えられます。さらに、衆議院での修正により、行政事件訴訟の管轄のあり方に根本的検討を加えることが求められております。
しかし、その一方、本法案の早期成立を望む声が非常に強いことを考慮し、情報公開訴訟における土地管轄の問題については、本法施行後四年を目途に本法の施行状況について行われる検討の際に、情報公開訴訟の土地管轄の問題についてもあわせて検討を加え、その結果により必要な措置を講ずるべきものと考えます。
このような観点から、参議院の四会派は修正案を作成いたしましたが、その概要につき御説明申し上げます。
本修正案では、衆議院修正において加えられました附則第三項を改め、政府は、本法施行後四年を目途として、本法の施行状況の検討に加え、情報公開訴訟の管轄のあり方についても検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることといたしております。
以上が修正案の提案理由とその概要であります。
委員各位の御賛同をいただき、速やかに可決されますことを要望いたしまして、修正案の趣旨説明を終わります。
○委員長(竹村泰子君) それでは、ただいまの両修正案に対し、質疑のある方は順次御発言願います。
○江田五月君 総務庁長官にお尋ねをいたします。
衆議院において、内閣提出の情報公開法案に対し、各会派共同の修正が行われました。この大変な御努力には、参議院の私どもも皆一致して深く敬意を表するところでございます。
しかし、参議院はまた別の院であることから、これに新たな角度から検討を加えた結果、その経過で、野党各会派が一致して特定管轄裁判所に那覇地方裁判所を加えることを与党に対して求めました。大変な修正協議が真剣に行われた結果、合意には至らなかったものの、附則でさらに那覇地方裁判所のことについて四年後に検討しようと。なお、衆議院での管轄問題の修正によって、行政事件訴訟法の管轄自体について、これは根本的な検討ももう一遍要るのかなという状況にもなっていることから、今回のこういう附則の修正というものを私たちは考えたわけです。
こうしたことについて、政府としてどういうふうにこれを受けとめておられるかを伺います。
○国務大臣(太田誠一君) 参議院において、与野党による修正協議が真剣に行われ、附則に情報公開訴訟の管轄のあり方等が加わったことを重く受けとめております。与野党協議の経過からして、沖縄の取り扱いも念頭に置いたものであることを認識いたしております。
○江田五月君 終わります。
○委員長(竹村泰子君) 他に御発言もなければ、これより両案並びに両修正案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
初めに、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案について採決を行います。
まず、椎名さん提出の修正案の採決を行います。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(竹村泰子君) 少数と認めます。よって、椎名さん提出の修正案は否決されました。
次に、佐藤さん提出の修正案の採決を行います。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(竹村泰子君) 全会一致と認めます。よって、佐藤さん提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(竹村泰子君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
次に、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(竹村泰子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
それでは、江田五月さんから発言を求められておりますので、これを許します。江田さん。
○江田五月君 私は、ただいま可決されました行政機関の保有する情報の公開に関する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、自由党、参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法律の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。 一 開示・不開示の決定について行政機関の長の恣意的な運用が行われないようにするため、各行政機関において開示・不開示の判断をする際の審査基準の策定及び公表並びに不開示決定をする際の理由の明記等の措置を適切に講ずること。 一 手数料については、情報公開制度の利用の制約要因とならないよう、実費の範囲内で、できる限り利用しやすい金額とすること。ただし、本制度が濫用されないよう十分配慮すること。 なお、開示請求に係る手数料は、一請求につき定額として内容的に関連の深い文書は一請求にまとめることができることとし、開示の実施に係る手数料は開示の方法に応じた額とし、また、実質的に開示請求に係る手数料相当額が控除されたものとなるようにすること。 一 情報公開審査会の果たす役割の重要性にかんがみ、その構成及び事務局の体制の十全を期すること。 一 情報公開制度が的確に機能するよう、行政文書の適正な管理の確保に努めること。 なお、本法律施行前の文書管理についても、本法律の趣旨を踏まえ適正に行うこと。 一 各行政機関は、本法律第五条に定める不開示情報を含む行政文書の配付等を地方公共団体に行う場合には、当該地方公共団体に対し当該文書の取扱いについて十分な説明を行うこと。 一 知る権利の法律への明記、行政文書管理法の制定等審議の過程において議論された事項については、引き続き検討すること。 右決議する。 |
以上でございます。
何とぞ皆様の御賛同をお願いいたします。
○委員長(竹村泰子君) ただいま江田さんから提出された附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(竹村泰子君) 全会一致と認めます。よって、江田さん提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、太田総務庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。太田総務庁長官。
○国務大臣(太田誠一君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、政府といたしましてもその趣旨を踏まえ適切に対処してまいりますことをお約束申し上げます。
○委員長(竹村泰子君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(竹村泰子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
1999/04/27 |