参議院 法務委員会 1999/11/11 |
午後一時四分開会 ○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。 ○江田五月君 臼井大臣、御就任おめでとうございます。 私は、ずっと以前に参議院に籍を置いていたことがありまして、そのときに法務委員会をちょっとだけ担当したことがありますが、全く久しぶりに、多分二十年ぶりぐらいに法務委員会にやってまいりました。素人ですので、ひとつよろしくお願いいたします。 臼井大臣、山本総括政務次官御就任のころに、実は私ども民主党の方も党の大きなつくりかえがございました。 この秋ですが、自民党が総裁選、私どもの方は代表選と申すわけですが行いまして、そしてその後、イギリスなどにあるシャドーキャビネットといいますか、やっぱり政治の議論というのは理屈の議論だけでなくて顔が見えた議論の方がいいだろう、臼井法務大臣が何かおっしゃる、それに対して野党の方が、ああこれが次の法務大臣なのかなという人が、顔が見えて議論が行われるということになれば、国民の中でも政治の議論がもっとわかりやすくなるんじゃないかと。そんなことでネクスト・キャビネットというのをつくリまして、イギリスのシャドーキャビネットではどうもシャドーというのは影ですから、それよりはネクストの方がいいだろうというので、ネクスト大臣、ネクスト・キャビネットというものをつくりました。 私は、次に法務大臣になるかどうかそれは別として、鳩山新体制のもとでの民主党の司法ネクスト大臣という役を仰せつかることになっておりまして、臼井法務大臣のカウンターパートでございますので、ひとつよろしくお願いします。 きょうは、その最初の議論ということで、法務行政、いろいろ細かな、しかし重要な課題は山ほどありますが、そういうものに先立って、ひとつ今の政治課題について政治家同士の議論をぜひさせていただきたいと思っております。 実は、きょうは私、けさ八時半ごろ成田に着いてこちらに飛んで帰ってきた。それは何をやってきたかといいますと、私たちの羽田幹事長と二人で東ティモールヘ行ってまいりました。 東ティモール問題、これはもうことしの春過ぎ以降ぐらいですか、またとりわけ夏の終わりから九月、十月にかけて大変国際社会で大問題になったものですから法務大臣も御承知いただいているかと思いますが、一九七五年にポルトガルからの独立宣言をした。しかし、その直後にインドネシアが陸海空で侵攻して、自分の領土にしてしまった。国際社会はずっとこれを認めなかった。長い植民地の民族自決の運動がずっと起きて、でもインドネシアの政変に伴って、国際社会もこれはやはり住民自治、住民の皆さんの気持ちを尊重しょうというところで住民投票をした。圧倒的多数で独立という答えが出た。 しかし、その後、インドネシアの国軍あるいは民兵、こういう人が大暴れで、とにかくすごいですよ。私も行ってみたら、ディリというのがその東ティモールという州の、州といいますかこれから国になるんですが、この首都なんですが、もう家が全部焼かれているんですね。本当によくもあそこまで御丁寧に焼いたと思うぐらい完全に焼いて、外壁はあるけれども黒くすすで汚れて、中はもう完全に焼けただれている。山の奥の方の一軒家まで御丁寧に全部焼いているということでしてね。 私もいろんなところを見てまいりましたが、修道院をちょっとのぞいたら、修道女の皆さんの部屋がずっと個別にあるわけですが、それぞれの部屋にそれぞれ居室があって、あと洗面所があります。洗面所に洗面台とトイレがある。これはもちろんセラミックですが、どこの部屋を見ても全部きれいに同じように完全に壊してある。よほどこれはすごい組織立った破壊工作だったと思うんですが、しかしそういうものにめげずこれを乗り越えて、国際社会もいろんな協力をして、INTERFETなども繰り出して、今独立の道をやっと歩むことになって国連暫定統治機構がスタートするということになっておるわけです。 これは日本政府も役割を果たさなきゃならぬということをいろいろ言っていると思うんですが、閣議で東ティモール問題について議論されたことはございますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 私が閣僚になりましてからはそうした議論は行われておりません。 ○江田五月君 閣議のあり方ということなんですが、私もわずか八ヵ月ではありますが科学技術庁長官を務めさせていただいている。恐らくあの当時と今と、私自身がそういう閣議の構成員であったから人のことを悪く言えないんですけれども、今も変わっていないと思うんですが、官房副長官が案件を読み上げる、各閣僚は皆一生懸命花押をサインするのに忙しくて、気がついたら閣議が終わっておる。やっぱりそういう閣議を今もやっていらっしゃいますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 恐らく、江田先生が大臣をやっておられたときとお話を伺いますとほとんど変わりないように思います。 ○江田五月君 どうでしょう、ああいいう閣議で本当にいいのか。もちろん国政のテーマはもう森羅万象、いっぱいありますから、それを一々すべてみんなの閣僚で議論してというわけにはいかないでしょうが、しかしやっぱり時々のテーマ、これはひとつ閣議でみんなで議論してみようというような議論が閣議にもなきゃならぬと思うんですが、どう思われますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 私も今回大臣にならせていただきまして、会議の状況を見ておりますと、まだ相当諸先生方緊張しておりましてなかなかほぐれてこない。閣議の中では御承知のとおり閣議といわゆる懇談会と二つに分かれておりまして、比較的自由な雰囲気の中でもって自由に発言するという場も用意されておりますので、そうしたものを十分使うことによって今おっしゃったような機能は十分に果たせるものと考えております。 ○江田五月君 閣僚懇談会はどのくらいやっていらっしゃいますか。二回閣議がありますね、毎週。その後閣僚懇談会が必ずあるという感じですか。それとも、それほどはなくて何回かに一回というようなぐあいでしょうか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 今までの中で全体を十とすれは七、八割方意見が出ているように思います。 ○江田五月君 閣僚懇談会での閣僚の発言、これもあらかじめ事務方の用意したペーパーがあるんじゃありませんか。そんなことはないですか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 他省庁のことはわかりませんが、私も二度ほど発言をいたしましたが、事務方に資料の用意はさせております。しかし、その場で発言をすべきと判断したのはもちろん私自身でございますし、発言の要旨はやはり法務省というものを背負っているという中で正確を期したいということで準備させたわけでございまして、そういう意味では私は、メモがあるなしというのは条件の一つにすぎないと思います。 ○江田五月君 冒頭申しましたとおり、私自身も人を批判できる状態じゃなかったと思って内心じくじたる思いもかみしめながら申し上げているわけですが、自分の後ろに法務省がある、自分の後ろに科学技術庁がある。その障壁というか、省の意見を代弁して、閣僚懇談会でメモまでちゃんと用意してもらって発言するというのでは、やっぱり政治家の議論ではないと思うんです。(「賛成」と呼ぶ者あり) 国会の議論も大いに変わらなきゃならぬ、閣議の議論のやり方も大いに変わらなきゃならぬ。本当に十分な議論の中で政治的な決断が下されていく、そういう政治に変わっていかなきゃならぬと思っています。賛成という声をいただきまして、ありがとうございます。 私は、自分自身法曹の出身ではありますが、だからといって法曹の実務からは離れて随分長いですから、余り細かなことまで今すぐに思い出すことはできないんですけれども、法務大臣の立場というもの、これは非常に重いものだと。法律というものの権成を大臣がいわは体で表現されているということでして、大変な重責だと思うんです。 最近のことで言いますと、その法務大臣の資格がどうも疑われるんじゃないかということが国会で議論になったことがある。言うまでもなく、ことしの通常国会の予算委員会で議論が出まして辞任された中村元法務大臣のことなんです。私も予算委員会で取り上げさせていただいたんですが、いろんなテーマがあったんです。あれほど早くおやめになるとは思っていなかったら、あっという間にやめられていったんですが、しかし辞任は当然だと思うんです。 そこで法務大臣、中村法務大臣はなぜ辞任しなければならなかったか、どのように認識をされていますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 大変恐縮でございますが、かつて法務大臣をされた先輩、もちろんだれにやめさせられたわけではなく、御自身の判断と決断でおやめになられたわけでございまして、そのことについて私から申し上げる立場にはないと思います。 ○江田五月君 しかし、前者のいろんな経験というのはやはり後者の参考になるわけでして、前車の轍を踏んじゃいけない、よく吟味をされる必要があるんじゃないか。 中村法務大臣の場合にはなかなか元気のいい方で、頭のかたい法曹界に対して、法曹界の中にいないいわば法律の素人であるからこそ、そこへ切り込んで法曹界の頭のかたさをぶち破ってやろう、そういう思いがあって、そこに一定の国民の期待があったことも事実だと思うんです。ですから、中村法務大臣に私なんかがかみつくと、何だ、あいつは法曹の出身じゃないか、頭のかたい法曹がぐるになってみんなで中村正ちゃんをやっつけようとしている、けしからぬなどという声もあった。そういう声もある程度わからないわけじゃないんです。しかし、やっぱり法務大臣にふさわしくない軽率な言動があったので、私は全部で八項目不適切な言動を批判いたしましたが、やっぱり致命的だったのは、中村大臣の指揮権発動に対する無知といいますか、理解がなかったということだと思うんです。 中村大臣の場合に、就任早々法務省の担当の、きょうは松尾局長おみえですが、局長の皆さんから指揮権発動については十分レクチャーを受けておったということですが、臼井法務大臣は指揮権発動についてレクチャーをお受けになりましたか。レクチャーと言うとちょっと言い方はおかしいですが、説明をお受けになりましたか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 従来、法務大臣がどのような流れの中でもって歴代御発言しておられたかということは伺っております。 ○江田五月君 いや、従来じゃなくて、あなたは指揮権発動というものについて説明はお受けになリましたか。 ○国務大臣(臼井日出男君) したがいまして、従来どういうふうな形の発言だったということは聞いております。 ○江田五月君 従来どういうものというように理解されてきたかという説明を受けたという意味ですかね。 では、あなた自身は指揮権発動というものをどういうものだと認識されていますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 指揮権というのは行政権の一部をなすものであるということはそのとおりでございまして、内閣の一員である法務大臣としては検察権の行使、これは必要な指揮権を監督ができる、できなければならないというのはそのとおりだと思います。 一方、司法権の独立を確保するためには検察権の独立というものも確保していかねはなりません。その職権は不党不偏、厳正公平で運用していかなければならない。したがいまして、検察権の行使につきましては、法務大臣が指揮権を行使するに当たってそのことを十分に考慮して行うべきものと考えております。 ○江田五月君 指揮権というのは、検察庁というのは、検察一体の原則というので各検察官がすべて一つとなって検察業務、検察事務を行うわけですね。 具体的な事件については、これはそれぞれの検事がそれぞれ自分の所掌の事件としてその職務を行うんだけれども、そのそれぞれの検事を指揮しちゃいけない、具体的な事件については。これは検事総長だけを指揮、そしてその場合には、しかし検事総長は自分の部下の検事を言われるとおりに指揮するかどうかというのは、今度は検事総長の職責をかけて、あるときには、大臣、それはいけませんと断ることもあり得る。そのときには検事総長は命をかけて断る。命をかけてと言うと大げさですが、職務をかけて断る、そういう構造になっていて、それだけ指揮権の発動の対応について検察庁法が一条を置いて、そこに物すごく微妙な、しかし大変な火花を散らすような力関係の衝突で調整をしているという、そのことはおわかりですか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 今、委員がお話しの点は検察庁法第十四条に関することだと思っておりまして、法務大臣に対して検察権の行使に関する一般的な指揮権を規定いたしておりますが、一方では、具体的な事件に関する場合は検事総長のみを指揮することができる、こういうふうに定められております。 検察権が行政に属することによる法務大臣の責任と検察権の独立確保の要請、この調和を図ったものであるというふうに解されておりますが、私といたしましては、具体的事件の捜査処理に関しては検察権の行使に不当な制約を加えるというようなことはいたさない、このように考えております。 ○江田五月君 中村法務大臣の場合は就任早々、検事総長をたしか呼ばれたんですね、自分の法務大臣の部屋に。そして、検事総長といえども行政権の一部として自分のもとにあるので、そのことを十分理解して自分の、どういう言葉だったか言葉自体はちょっと正確に覚えていませんが、要するに自分の気持ちを十分体して検察行政をやるようにと、そういう一般的なことを言われた。ある意味では一般的ですが、ある意味ではこれは非常に微妙ですね。 その後、法務大臣がいろんなことをおっしゃる。そうすると、最初にばっと網をかぶせているわけですから、そこで後で具体的なことをほかのところで言えは、それは言われた検事総長は、あの事件については法務大臣はそういうことを思っているのか、なるほどこれはそうしなきゃならぬなと思う、あるいはそういうふうに法務大臣は思えよと言っているのかと惑ずる、そういうことがあってこれで問題になったんですが、臼井法務大臣はそのような指揮を検事総長に対してなさるお気持ちはありますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) ございません。 ○江田五月君 もう一つ、中村法務大臣のときの勘違いは、自分が直接検事総長に言うのでなければ指揮権発動にならないと思った。だけれども、臼井法務大臣、法務省というのはあなた一人じゃないですね。法務行政をつかさどる行政庁というのは、法務大臣ただ一人ですが、その行政庁である法務大臣の職務の執行を助ける法務省の機構がございますね、特に刑事局、今の検事総長の関係では。その自分の手足として自分の意を体して動く行政システム、これを使って検事総長に対して指揮するということがあり得るわけですが、それはおわかりですか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 承知をいたしております。 ○江田五月君 あなたの手足として動くあなたの部下である刑事局の皆さんに、この事件についてはこういうふうにすべきだとかしろとか、あるいはそう受け取られかねないような言動、こういうことについては一切厳に慎まれる、そういう覚悟がおありかどうか聞かせてください。 ○国務大臣(臼井日出男君) そのように心がけて おります。 ○江田五月君 その辺は法曹の出身であろうがなかろうが、法務大臣としてはそこは絶対踏み間違えてはいけない非常に微妙な、しかし重要なポイントですので、ひとつよろしくお願いしますし、また補佐をされる法務省のお役人の皆さんにもぜ ひそこはよろしくお願いをしたいと思います。 さて、いよいよ国会活性化法というんですか、施行されて、きのうは党首同士のクエスチョンタイムというのも初めて行われた。私自身は、先ほど申し上げたようにちょっと外国、東ティモールヘ行っておりましたので直接拝見はできなかったんですが、いろんな国政上の問題について議論をされたと思っております。 そこで、私も臼井法務大臣と小渕自自公連立政権の政治のあり方について若干の議論をしたいと思います。 もし時間が許せば、その上でさらに今の法務行政の重大課題である司法制度改革であるとかオウム真理教の対策であるとかあるいは法務省の人権擁護政策の今後のあり方とか、いろいろ質問したいんですが、時間がどこまであるかちょっとわかりません。 小渕新政権、これは私はどうもスタートから大きくつまずいたという気がいたします。これまでは小渕総理は真空総理で、何だかわからないけれども、あの人の顔を見ると安心するなという感じで支持率が随分高かったようですが、どうもそろそろ満月がだんだん欠ける時期に入ってきたのかな。初日から既に六連敗をしているのじゃないか。あと二つでいよいよ負け越しが決定だと思います。 まず最初の黒星は九月三十日、東海村での臨界事故。我が国の原子力史上最悪の事故。その事故が起きて中性子がずっと放出され続けた。十九時間でしたか、その間、小渕さんは何をやっていたか。小渕さんは総裁選の報復人事に夢中になっていたのかどうか、加藤紘一さんと言い争いをして、あなたは私を追い出そうとしたじゃないかとか。一体何だこれはと。現に現場では中性子がずっと出続けていて、この現場から八十メートルのところでは、一般の人が年間に許容きれる量一ミリシーベルトの七十倍とか百倍とかというような放射能を、それも十数時間のうちに受けていたというようなことが起きていたのに、総理大臣を本部長とする事故対策本部ができたのは事故後十一時間近く。しかし、このときは臼井さんはまだ法務大臣に任命されていなかったんですね。 二敗目は、これは参議院長野の補選の敗北で、どんどん行きますと、三敗目は西村政務次官の更迭、四敗目が藤波さんの議員辞職勧告問題、自民党の皆さんは勝ったとお思いかもしれませんが、そうじゃないと思います。 五敗目は企業・団体献金策で右往左往、これも何だか随分みっともない右往左往。六敗目が選挙目当ての介護保険見直し。大体もうこれで六つ黒星。七つ目は何だろう、楽しみにしていますが。 東海村の事故で、昨日発売きれた雑誌の中で、有馬前科学技術庁長官は、非常に申しわけない思いで反省をしていると率直に述べておられる。臼井さん、そのときはあなた大臣じゃなかったから、そのときあなたどうしましたかと聞くわけにいきませんが、政治家として、この事故に村する政府の対応をどういうふうに思われますか。反省すべき点があるかないか。あるとすればどこか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 今、委員御指摘ございました点につきましては、ただいま挙げられました六項目につきましても、他省庁に関係することがございましてなかなか発言しにくい部分もございますが、ある部分においては、個人的な意見ということでお開きをいただきたいという部分もあるわけでございますが、やっぱりこうした災害、事故が起きた際には、もうできるだけ早くその情報というものを正確に知らせるということが大切でございまして、そういった意味で、日ごろから総理を中心とした防災対策会議というものも設けているわけでございまして、こうした情報を正しく早く伝えるという点については多くの反省があるものと思っております。 ○江田五月君 他省庁に関することなのでお答えしにくいというのはよくわかります。しかし、その省庁のことをどうこうしろというふうに法務大臣におっしゃってくれと聞いているんじゃないので、そこはひとつ。 今回の国会は補正予算が出るのが十一月の終わりだと、それから予算委員会というので、予算委員会で国政全般にわたってすべての大臣の皆さんに聞いていただきながら議論をするその場が持てていないんですね。 そこで、私どももあえてこういう場でそれぞれの大臣の国政全般についての考え方をただしておるわけですが、私はこの事件で、これは十時三十五分に事故が起きて、十一時過ぎには現場、ジェー・シー・オーから科学技術庁に臨界事故の可能性ありという一報が届いているんです。それなのに、いや、臨界事故はぽっと起きたけれとももうおさまっちゃったんだろうというような対応だったので、全く甘かったんですが、それが一つ。 もう一つ、これは法務省でもどこでも同じですが、いいですか、科学技術庁は現場でああいうマニュアル無視、裏マニュアル、その裏マニュアルさえ無視というようなことが行われていることはわからなかった。現場へ行って毎日毎日の作業を見ていればそれはわかるだろうけれども、まさか毎日現場へ行って見ておるわけにもいかない。現場の作業員がそういうマニュアルも無視、無視も大無視をされたんじゃ、それはどうにもならない。しかし、どうにもならないじゃ、これは国民に対して、いやそれはどうにもならないんですでは済まない話ですね。 私は、これはどこでもあり得ると。法務行政についても、法務大臣も局長の皆さんも霞が関にいて事態を見ている。しかし、それじゃ刑務所の一番最先端で刑務官が受刑者に対してどういうふうなことをしているかということが必ずしもわからないことが起き得るんです。 そういうことについて法務大臣、これからどういうふうにしていこうと思われますか。 ○国務大臣(臼井白出男君) 先生お話しのとおり、このことは大変大きな、他山の石と言うと他人行儀になりますが、一つの事例として、私どもも心して、自分のこととして反省をしていかなければならないと思います。 特に、私どもは、刑務所初め少年院、鑑別所それから入管あるいは人権擁護の場、それぞれ大変幅広い業務というものを統括しているわけでありまして、そういう意味では、それらの現場の皆さん方一人一人が非常に緊張していただいて、誠意を持ってその仕事に励んでいただくということが非常に大切だと思っておりまして、私も就任以来、できるだけ早くそうした現場を拝見させていただいて、皆さん方に元気を出していただくようにお願いをしてと、そう考えておりまして、今、暇をつくりながら、一生懸命に現場も視察をいたしているところでございます。 これからも先生お話しのとおり、現場もあるいは本庁の方も、心を一つにして頑張っていくようにさらに努力をいたしてまいりたいと思います。 ○江田五月君 そこは本当によく注意を行き届かせた行政を行っていただきたいと思うんですが、ただ、本庁も現場も皆心を一つにしてと。それはもういつでもそうですよ。だれでもそんなことは疑わない。それでも違った事態が起こり得る。刑務所も少年院もあるいは入管の場所でもいろんな話が聞こえてくるんです。中には、それはちょっと思い過ごしじゃないかとかいうこともあるでしょうが、中にはやっぱりちょっとこれはというようなこともある。 私は、やっぱりそこは一つシステムのことを考えなきゃいけないと思うんです。一つには、やっぱり情報公開です。行刑現場、入管現場がどういう実態なのかということについて、もっともっと情報公開しなきゃいけないということ。それからもう一つは、現場のいろんな声に耳をそばだてなきゃいけない。一方通行行政というのはやっぱり間違ってしまうんです。見えるものが見えなくなってしまう。 だから、法務省、法務大臣、ここでいろんなことをお考えになって、自分たちはこんなに一生懸命考えているということを幾ら一方通行で下へ落としていってみても、一方通行行政だとやっぱり声が聞こえない。そしていろんな皆さんの気持ちに反するようなことが起きてしまう。いやそれは自分たちの気持ちと違うのでと言ったって、それはだめ。 ですから、やっぱり現場の皆さんの声がちゃんと上がってくるような、それは直接上がってくる場合もあるでしょうが、実際はなかなか直接上がってきません。そうすると、例えばその周辺の皆さん、それはマスコミであったり地域の社会であってみたり、あるいは被害者の皆さんであったり、そういう人たちの声に真剣に耳を傾けるという行政姿勢が必要だと思いますが、いかがですか。 ○国務大臣(臼井日出男君) おっしゃるとおりだと思います。 ○江田五月君 大変御理解いただいてありがたいんですが、おっしゃるとおりと言われてもちょっと困ってしまうのです。 科技庁の場合だってそうなんです。現場ではああいう、まさかバケツでウランを扱っていたなんて、何か、トンネルにハンマー、ウランにバケツかなとかいう川柳があるらしいですけれとも。まさかそんなと思っていてもそういうことが起きますので、それは、そういうことが起きないように、心がけだけじゃだめで、やっぱり何かシステムが必要だということだと思うんです。 長野の補欠選挙が次にございましたが、この結果は法務大臣、どういうふうにごらんになっていますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 法務省のことと直接関係ございませんので、私の私的な、一議員としての見方でございますが、今回私どもが負けたということは極めて残念なことでございます。しかし、もともと長野県というところは私ども強いところでもございません。したがいまして、このたびの敗戦が政権に大きな影響を及ぼすというように私どもは理解をいたしておりません。 ○江田五月君 この議論、いろいろしていたらもう時間もなくなってしまうのですが、やっぱり自由党の皆さん、公明党の皆さん、ついきのうおとといまで私ども一緒にやっておって、あれこれ差し出がましいことも言いたくないんですけれども、やっぱり自民党と自由党と公明党のこの関係というのは有権者には非常にわかりにくいんじゃないかという気がします。 これは余り入らずに、次に、西村問題ですが、これはどこが問題で、なぜ更迭につながったのか。これも他省庁ですか、それともこの際自分は政治家としてこういうことは言っておきたいということはございますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 私もこうした立場になりまして、個人的な政治家としてのいろいろな思いあるいは心情と、立場上そうではないものと必ずしもすべてが一致するというわけにはまいりません。 しかしながら、法務省という立場に立つ以上は、やはり法務省全体のことを考えて、従来からの流れ、そういったものをしっかりと見きわめていく必要があると思っておりまして、個人的な心情というものを公の場でもって披瀝をするということは好ましいことではございません。 ○江田五月君 臼井大臣の場合に、私も大臣のこれまでのいろんな御発言などについてもちょっと拝見をしてみたんですが、この人はこんなことを言っているから追及をしてやろうというような発言がなかなかなくて、手がたい、大変法務大臣にふさわしいのかと思ったりもいたしますが、やっぱり自分の個人的な心情をそのまま言っていいという立場ではない、それはそのとおり。 しかし、政務次官で、しかも制度が変わって政務次官の重要牲が増したその人が、核兵器をすることも検討すべきかというようなことを言って、諸外国から日本は核兵器をつくろうとしているんじゃないか、だって重要な政務次官がそんなことを言っている。いや、そんなことはない。日本じゅうどこを見ても核兵器をやっているようなところはどこにもない。何を言っているんだ。あなた方の知らないところで、現場でバケツで核兵器なんて言われたら、これはもう諸外国にとういうふうに説明していいのか。説明できないんですね、これは。そういう言動がある人をそうと知りながら政務次官にというので、これは今、あなた任命権者でないからここで言ってもしようがないですけれども、やはりそういう問題が今の政治の中で起きているということは十分認識をしておいていただきたい。 藤波元官房長官ですが、藤波さんの議員辞職勧告を私ども出させていただいておりまして、前には議員辞職勧告を一緒に出させていただいた同僚議員の皆さん方が今回はどういうことか反対だということになったり、だれがというわけじゃありませんが、なかなか微妙な問題ですけれども、この藤波さんはどうですか、議員をおやめになるべきだとお思いになりませんか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 今回、藤波問題、辞職勧告決議案が出たということも承知をいたしておりますが、大変申しわけございませんが、この件につきましてはお答えをいたしかねます。 ○江出五月君 なぜですか。答えを遠慮というのは、理由は何かおありですか。 ○国務大臣(臼井日出男君) 従来から、法務大臣としてはこうした個々の問題については言及をしないということにいたしております。 ○江田五月君 それでは政治家としてはいかがですか、政治家として。もし衆議院で藤波さんの辞職勧告決議案が上程されたらあなたは賛成されますか、反対されますか。 ○国務大臣(臼井日出男君) そうした仮定の問題にはお答えいたしかねます。 なお、私は藤波先生をよく存じておりまして、こうしたことになりましたのは極めて残念だと思っております。 ○江田五月君 いや、私もよく存じ上げています。あなたにはかなわぬかと思いますけれども。「控え目に生くる幸せ根深汁」、なかなか味のある川柳とか、一度私は話をしていて、政治家というのはとにかくあんなに外で大声ばかり張り上げて、だんだん頭の中空っぽになるんじゃないですか、自分でもじくじたる思いがあるとかいうことを言ったら、それでなお残る知性が本当の知性だよ君なんて言われて、そうかなと思ったりしたことがあります。 しかし、そういう方がああいうことになっているというのは大変お気の毒ではあるけれども、やっぱり国会で法律を変えて、贈収賄で有罪が確定したら議員の資格を失うという法津をつくった。それに藤波さんも賛成をされたんですよ、たしか。それなのに、自分の場合はその法津ができるより前だったからいいんだという、それはやっぱり国民に対して示しがつかない。うなずいておられるからあなたも同じお気持ちであろう、なおうなずいておられますのでそうであるというふうに理解をさせていただきますが、本当にここはけじめです。しっかりしたものをしなきゃいかぬと思っています。 企業・団体献金の同意、それから介護保険の問題、大揺れに揺れております。しかし、今の藤波問題もそうですが、どうも政治にけじめというものが何かなくなって国民は困ってしまいます。介護保険だって、地方自治体の皆さん方はこれからいよいよ四月からこうなるということで一生懸命に、それこそ不眠不休で、認定のこともあるし、いろんなソフト、ハードの提供のこともあるし、財政の問題ももちろんあるし、やっておったら、突然何か足元がぐらつくということになったんじゃ、地方自治体の皆さんは国政は一体何をやっているんだという思いで見ているわけですよ。 先日も私、ある人から手紙をもらって、自分は寝たきりで妻に大変迷惑をかけている、しかし妻がいろいろやってくれるから自分は生きていられる、その妻に一時金がもらえるのは本当にうれしいというその気持ちはよくわかる。よくわかるけれども、もう一つ考えてほしいのは、その奥さんが介護できなくなったときに一体どうするんですか、そのときのための制度をちゃんとつくっておかなきゃいけないんじゃないですかというところが今、そういう一時金で、選挙目当てなんでしょうけれども、先送りをしようという、これではやっぱり政治がきっちりけじめをつけながらやっていこうということになっていないと思うんです。 そういう課題いろいろございます。法務行政としても、先ほどちょっと申し上げた司法改革、これはこれから二十一世紀を目指して大改革をしなきゃならぬという課題だと思いますので、またこうしたことについては後ほど時間を改めてずっとお伺いしておきたい。 冒頭申し上げましたとおり、本当に我々は政府を追及する、重箱の隅をつついてでも追及して何とかぼろを引き出してというやり方ではなくて、堂々と国民の皆さんのためにどちらの方がよりいい行政サービスを提供できるかということで議論をしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。 以上です。 |
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