2002/03/26 |
154 参院・予算委員会 BSE問題集中審議
(民主党ニュース)
小川議員、調査検討委報告原案踏まえ農水相辞任迫る
民主党・新緑風会の小川勝也議員は26日、参議院予算委員会の食品安全問題等に関する集中審議で、厚労相と農水相の私的諮問機関「BSE調査検討委員会」が22日にまとめた報告書の原案の骨子をパネルで示しながら、あらためてBSE問題での武部農水相の失政の責任、小泉首相の改革姿勢を厳しく追及した。
小川議員は、今回の報告書原案が肉骨粉規制での重大な失政、農水省の生産者偏重の姿勢や族議員との癒着などを指摘したことを挙げ、「私たちが予算委員会などで主張してきたこととほぼ軌を一にするもの」と評価するとともに、今後、4月2日の最終報告に向けて武部農水相に「重大な決意」を迫った。併せて、熊沢前農水次官の参考人招致について「首相がリーダーシップを発揮すべき」と質すと、小泉首相は「誰であろうと調査の必要があったら委員会で人を呼んでいただいて結構だと思う」とこれに応えた。
小川議員はまた、「食の安全を確保するために行政システムを大きく改革しなければならないと認識しているか」と首相の考えを質した。首相は「食の安全を確保するために、今回のBSE問題を契機に、よりいっそう体制の強化を図っていかなければならない。調査検討委員会の報告・提言を踏まえ、あるべき方策を検討したい」と述べた。
これを受けて小川議員は、「農水族ではない武部氏を選んだ小泉首相の意図は分かるが、いまや国民の信頼も失い、野党からは辞めろと言われ、農水省と農水族からは足元を見られている武部農水相でそのような改革ができるのか」と小泉首相に厳しく迫った。
「農水相に対してそれぞれ批判があることは分かっているが、これからの農水行政を変えて行くためには、よほどの胆力が必要。不当な圧力に屈せず、断固として安全確保の体制整備をするんだという決意に燃えている武部農水相には、これまでの不備な点は反省して全力を尽くしてもらいたい」と首相はこれを拒んだが、小川議員は「そんなことを言っているのは小泉首相だけだ」と一蹴し、あくまでも武部農水相罷免を強く求めた。
○委員長(真鍋賢二君) 関連質疑を許します。小川勝也君。
○小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。
残余の時間、江田議員に引き続きまして食の安全の問題について質疑をさせていただきたいと思います。
先ほど江田議員が使用しましたパネル、私もこの報告書の原案を非常に感銘を受けながら読ませていただきました。大体、省庁の審議会からの答申というのは、大体その省庁の局長さんとか偉い方の顔色をうかがいながら、文字を抑制して、表現を抑制して書かれるのが普通であります。私たちにとっては余り楽しい読み物ではありませんけれども、今回の報告書原案は非常に思い切った表現も使われておりました。
新聞の見出しには、「肉骨粉規制に「重大な失政」」あるいは小見出しに、「農水省は生産者偏重 族議員との癒着言及」と、こうなっているわけであります。私たちがいろいろな委員会やこの予算委員会で主張してきたこととほぼ表現を一にしているものであります。
四月二日が最終答申であります。残念ながら、どういういきさつかは分かりませんけれども、表現が少し弱まるのではないかという報道がありますけれども、そのことについてはまた後で触れることとし、また今回のBSE問題については、いわゆる武部大臣の御就任以前あるいは就任してから、様々な形で大臣御本人や農林水産省の責任を追及してまいりました。そのたびごとに、大臣が自身や役所としての責任をどのように受け止めておられるのか答弁を求めたわけでありますけれども、実はその調査検討委員会に様々な検討をゆだねているのでちょっと待ってほしい、こういうお話もございました。
四月二日の答申が明らかになるにつれて、多分重大な決意をされているんだろうというふうに思います。今、江田さんには、しっかり頑張りたいという旨の発言があろうかと、あったと思いますけれども、もう一度確認のため御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(武部勤君) 何度も申し上げておりますし、小川委員からはこういった場で厳しい御叱正も賜りましたが、お互い政治家として、九月十日のBSE患畜が初めて発生したときに、私どもはこれは行政上に構造的な問題があるということを直感いたしまして、これは役人任せにできないと、政治主導で徹底究明しようと。そこから始まって、私どもは厚生労働大臣とこの私的、農林水産大臣の私的諮問機関としてこの調査検討委員会を設置したわけです。
正直に申し上げますと、最初はなかなか役所内に抵抗がありました。もう少し早くスタートできなかったのかなというふうに反省もしておりますが、したがいまして、この委員会の運営の在り方は、もう四千ページから五千ページに及ぶデータを全部出しています。さらには全部公開でやっています。そして、この報告はその委員の方々が自ら執筆しております。ですから、この報告がまだ出ていない段階でコメントはできませんけれども、私どもはここでいただく報告につきましては厳粛に受け止めて、これに盛られている今後の行政対応の在り方ということについて真剣に取り組んでまいる所存でございます。
○小川勝也君 考え方が異なりますけれども、私どもの考え方、次々に御質問させていただきたいと思いますが、まず一番と二番につきまして、これは残念ながら大臣御就任以前の話であります。
原因究明に非常に熱心な大臣であります。そんな中で、私どものこの参議院の予算委員会といたしましても、できる限りその情報を公開してもらいたいという要求がございます。この予算が仮に成立した後でも、この委員会でBSE問題の究明に当たりたいということで熊澤前次官の参考人招致の話合いを進めているところであります。国会には様々な慣例があって、前事務次官の参考人招致というのはなかなかハードルの高いことでありますけれども、委員長や与党理事の高い御理解もあって話が進んでいるようでございます。
武部大臣、原因究明に御熱心であります。熊澤前次官の参考人招致について御協力をいただけないでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 参考人招致に関しましては、これは院の問題だと、かように思いますので、私からコメントすることは差し控えたいと思います。
○小川勝也君 総理は外務省の様々な問題解明、疑惑解明にリーダーシップを発揮されました。今、食の安全は非常に重要な問題だというふうにおっしゃられた総理でございますので、そのリーダーシップをこの場で発揮していただき、その熊澤前次官の参考人招致についてのコメントをいただきたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) だれであろうと、調査に必要だったらば、委員会でしかるべき人を呼んでいただいて結構だと思います。
○小川勝也君 委員長はただいまの総理の重い発言を受け止めていただけたと思いますが、よろしいですね、委員長。
○委員長(真鍋賢二君) 委員長の立場でコメントするわけにはまいりません。
○小川勝也君 それでは、今、永田町で一番得をしているのはだれかという、こういうなぞ掛けがあります。今一番かわいそうな立場にあるのは辻元清美さんだと。その前は鈴木宗男さん、そして加藤紘一さんでありました。この通常国会が始まるときには、大きなテーマは雇用、経済の問題とBSEの問題だというふうに言われていました。そして、その後出たのが外務省疑惑の問題であります。だんだんそのテーマがずれていくに従って武部さんのことが風化されているんではないかというふうに武部さんが得をしているというのが、これは国会関係者や政府関係者の偽らざる気持ちだったように思います。
武部大臣の顔色もだんだん良くなっているように私は思うわけでありますけれども、そんなときに、この予算委員会で食の安全という本当に重要なテーマを議題にしていただいて、本当にうれしいなというふうに思っています。
今も議論がありましたけれども、元来日本人は水と安全はただだと思っているなんというふうに言われ続けておりました。いつの間にか水をペットボトルでお金を出して買うようになったのに、安全のことについてはまだ関心が薄いかもしれません。
今回このBSE問題で農林水産省の役所の方とお話をしたことがあります。イタリア産の肉骨粉の輸入で、いわゆる国際基準をクリアした薫蒸した肉骨粉を輸入していますということをやっておったのに、実は調べてみたら当該工場にはその薫蒸の施設がなかったと、こんな話もあります。国際的な相対の取引なので、こちらからも信頼してもらうんだから向こうも信頼しなきゃいけない、こんな話でありました。安全に対する意識が非常に低いということだろうというふうに思っています。
そんな中で、この委員会の中で様々な議論をさせていただきたいと思いますが、このBSEは、この私たちの国が二十一世紀になって、少し遅くなったかもしれないけれども、食の安全というのを本当に大きなテーマとしてとらえていかなきゃいけない重要なサジェストだったというふうに思うわけであります。先ほども議題になっていた、特に中国からの輸入野菜の残留農薬の問題、それから化学物質、遺伝子組換え食品あるいは水産物の薬品や抗生物質の問題など、食をめぐる安全の問題は大変大きなテーマだろうというふうに思っています。先ほど申し上げましたこのBSEの調査検討委員会の報告書の中でも、抜本的に食の安全の行政システムを変えなければいけないというような記述もありました。
そのことは別の機会に譲るといたしまして、総理は、やはり食の安全を確保するために、今の制度を変えたり行政の中身を変えたり、大きく改革しなければならないと御認識しているでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 食の安全を確保するためにどう対応が必要かという点につきまして、今回のBSE問題を契機にいたしまして、より一層体制の強化を図っていかなきゃならないと思っております。
現在、BSE委員会の調査報告、あるいは提言というのが近いうちに出されると思います。その報告、提言を踏まえ、あるべき食の安全確保策について多方面から必要な施策を検討していきたいと思っております。
○小川勝也君 簡単にお答えいただきたいと思います。武部農林水産大臣にもそのお気持ちがおありになるでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) そもそも、BSE問題に関する調査検討委員会の目的というのは、過去の行政対応上の客観的な検証と畜産・食品衛生行政の一元的な在り方、食品安全問題についての抜本的な見直しということについていろいろ御提言を賜りたいと、それが目的の一つでございますので、是非御報告をいただいて、そういう決意で取り組んでまいりたいと、かように存じます。
○小川勝也君 私も江田委員と同じことを申し上げたいと思います。幾らお気持ちがあっても、武部農林水産大臣の御指導の下にはそれが不可能だということを申し上げたいと思います。
先ほども話題になりました、政策決定に族議員が関与しているという問題をお伺いしたいと思います。特に、牛肉在庫緊急保管事業についてお伺いをしたいと思います。
生産局長、おいでであると思いますが、この事業にはどのぐらいの予算が使われることになりましたか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) この事業、二つの事業から成っておりまして、最初が市場隔離の事業でございまして、これが約九十億、その後焼却をするという事業が加わりまして、これが約二百億でございます。
○小川勝也君 先ほど江田議員も取り上げました朝日新聞には、「牛肉処分 理屈は消えた 半端な制度に数百億円」という見出しが付いています。「族議員「枝肉も買い取れ」「焼却しろ」」、こういうサブタイトルであります。
これは、御承知のとおり、私もこの牛肉処分の施策がすべて間違っていたと言うつもりはありません。しかし、この食肉団体関係者でさえ、こういうふうに言っております。肉も牛乳も安全と言いながら買い取って焼いてしまう、理屈も何もないままこの制度になったと、我々業界は助かったけれどもと、こういう話であります。
当初、農林水産省はこの事業に消極的だったと思いますけれども、武部農林水産大臣、いかがでしょうか。牛肉の買取り保管事業。
○国務大臣(武部勤君) 当初の構想は、十七日以前の牛肉も元々安全なものであるには違いありませんけれども、しかし、十八日以降、全頭検査以降の牛肉に照らして、消費者の皆さん方の間にはやっぱり不安が残ると、念には念を入れて不安払拭が必要だということが第一にありました。
もう一つは、十八日以降、全頭検査になったにもかかわらず、これが円滑に流通しないということでは困るわけでございます。したがいまして、十七日以前の牛もできるだけ速やかに一気に市場から隔離しようということでありまして、いずれ落ち着いたらまた流通させることもあり得べしというのが当初です。しかし、その後、なかなか不安解消に至らないということで、私どもは政府の責任で流通させませんと、こういうことを申し上げていたのでありまして、その後のことについてはじっくり時間を掛けて考えたいと思いますというようなことを申し上げていた次第でございます。
○小川勝也君 これは、農林水産省はこの制度はやりたくなかったんであります。
農林水産省は、一貫して枝肉は、牛乳は安全と主張してきた。それなのに枝肉を買い取り、まして焼却処分することはできない相談だと書いてある。そして、この部会が十六日に開かれたその次の日の農林水産省の対策本部で岩永政務次官が、安全だと言ってきたのを信じ、学校給食で牛肉を使い続けてくれている教育委員会、先生がいる、信頼は裏切れない、肉自体は安全ですと、こう訴えているんですね。それよりも何よりも武部大臣御本人が全頭検査の前に肉を皆さん、カメラの前で食べて、おいしい、安全だと言っているんですね。安全な肉を買い取って焼却する。それに二百数十億円使ったので半端な制度だと、こう言っているわけです。
そして、その制度をどういうふうに使った人たちがいるのか。雪印食品、それ自体は悪いと思う。しかし、この制度にどこか節穴か抜け道か欠陥点があったんではないか。それもそのはずであります。本来、役所というのは、農水省もそうでありましょう、しっかりしているところであります。自分たちが温めてきたプランであれば、もう瑕疵がないように、漏れがないようにしっかりとこのルールを作るはずであります。
ところが、自分たちが予期せぬ、抵抗してきたことをやろうとしたから、そこに問題点が出てきたんじゃないか。今回、自分たちはやりたくなかったのに、今回、局長、君に責任を取れとは言わぬよと、政府の責任で買い上げる、焼却するかは後で考えればいいなんていうふうに脅されて、どなられてこの政策が決まっていったんです。いつの間にか、前の当時のこの当該の局長は今そこに座っていません。小林局長はもう替えられているということであります。
そして、これ農林水産省の人はこれ何て言っているかというと、買上げはのまされてしまったけれども、恐れていた焼却は盛り込まずに済んだと、こう肩を若干なで下ろしたわけであります。それは安全な牛肉を焼くなんということはこれはできないことなんです、役所にとっては。ところが、自民党側はあくまで焼却するための保管だと考えていたというんです。これがこの半端な制度ということであります。
この中身についてはいろいろ言いたいこともあろうかと思いますけれども、この雪印食品を始めとして虚偽制度が出ました。これはこの政策決定にいろいろ問題があったんじゃないですか。この辺、御答弁を短くお願いします。
○国務大臣(武部勤君) この最初の事業は、私ども市場を隔離をして、そして落ち着いた段階でまた流通することもあり得べしということで取り組んだのでありますが、しかし、二頭目、三頭目が出たわけですね。そのことによって国民の間には不安が更に高まり、牛肉の消費が一段と落ち込んでいったということでございます。
したがいまして、私どもとしてはこれはもう野党の皆さん方も挙げて国会等で早く焼却すべしと、そういう強い声がございました。そこで、私といたしましては、念には念を入れて消費者の皆さん方の不安を払拭しなくちゃいけない、それから、どんどん出ていく全頭検査による安全を証明された牛肉の流通の円滑化も進めなきゃならない。年末になっておりました。
そこで、私どもはやむなく焼却を決断した次第でございまして、これは党の特定の人の圧力によってそういうふうになったわけではございませんので、このことを御理解いただきたいと存じます。
○小川勝也君 そのことによって、どういうふうになったかちょっとパネルを上げていただきたいと思います。(資料を示す)
ここに六番に書いてあります。消費の低迷は行政不信と表示不信が重なった結果だと、これは私が言っているんじゃない。調査検討委員会が指摘しているわけであります。
最初安全だと言ってみんなの前で食べた武部大臣が、次から次へと屋上屋を重ねた、その苦渋の気持ちは私は一%も理解しないわけではありません。しかしながら、国民の、消費者の皆さんのマインドというのはそのことによってはっきり冷えてしまったのが、ここに主張されている内容であります。やったことは間違いでないかもしれないけれども、結論として残念な結果になってしまったというのはお認めいただかなければならないというふうに思っています。
牛肉の消費、先ほど江田議員から食肉の安全の問題、いろいろありました。私も一〇〇%信頼している。安全だと思って食べています。しかし、この消費者の中の皆さんの不信というのは、これは人の心の中までは変えられないわけであります。お金を使ったから食えって言っても食えないわけであります。こういうふうに、度重なるこの失政とか不信とか行き違いとか、苦渋の選択が積み重なって今の状況になってしまったのではありませんか。
さらに、この族議員との関係でいうと、今回、この朝日新聞のペーパーの中に、武部農林水産大臣の文字はどこにもありません。というと、これはどうか分かりませんけれども、農林水産族の、いわゆる農水族の皆さんは、大臣を通さなくてもおれたちが決めれば、局長に通達すれば政策は実行できるというふうに考えている節があるのではないかなというふうに思っています。これはなぜかというと、武部農林水産大臣は、小泉総理から大変この重い責任を持って農林水産大臣を拝命した人だと私は認識しているからであります。
仄聞するところによると、このパネルにあります八番のところを小泉総理が非常に懸念をしておる、日ごろから。そして、自分が内閣を構成するとき、小泉構造改革内閣を作り上げるときには、族議員の中から農林水産大臣をやってもらうのではなくて、気骨のあるそれ以外の武部さんにやってもらいたい、これが小泉総理の御意向だったやに伺っています。
その辺は総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 農林水産大臣というのは非常に大事な役職でありまして、国民の食料安全確保、言わば政治にとって、古今東西、古来から国民に安全な食料を確保するというのは、政治で最も大事なことだと言われているぐらい大事な仕事であります。そういう際に、これから二十一世紀にふさわしい体制を取っていかなきゃならないと、今まで見直さなきゃならない点もあるでしょうということで、武部さんだったらば気骨のある改革意欲に富んでいる人であろうと。そういうところを見込んで私は大臣に起用したわけでございます。
○小川勝也君 結局、この小泉さんは、その農水省の今までの体質、あるいは族議員との関係を変えてほしいと思って武部さんを起用したんだと、今のお言葉でも私は理解をいたしました。
しかし、今、武部農林水産大臣はどういう状況に置かれているのか。野党からは辞めろ辞めろと言われている。私も何回も言っている。消費者も、武部さんが大臣の間は牛肉は食いたくない。今日の午前中の参考人質疑でもありました。辞めてくれたら牛肉を食べるよなんという人もいるぐらい、こういう午前中の質疑でもありました。国民も今回の様々なこの不信が募っている。総理には任命をいただいたけれども、若干四面楚歌に近い。
そんなときに手を差し伸べているのが、農林水産省の役人の一部の人たちと、自民党の族議員の人たちだと思います。農林水産族がこれは反発って書いてあるんですね。これは何を反発したかというと、今回のこのパネルの中で、いわゆる族議員のところはやっぱりやめてくれと言ったんですね。その記事が載っているわけでありますけれども、農相更迭論が一応は鎮静と書いてある。どういうことを書いてあるかというと、与党内の農相更迭論が一応鎮静化している、今後も予断を許さない状況だと。いいですか。総理に任命されたけれども、野党に辞めれと言われている、国民から支持されていない、そしてここで与党からの支持が切れたら、武部さん、どうなってしまうのか。
今、農林水産大臣として食の安全の仕事がしたいという決意もありました。もしその仕事がしたいということになると、今議題となっているこの族議員の人たちの意向をそんたくして行政をしていかなければ、自分のステータス、存在が保たれないという状況に置かれているのが武部さんなんであります。ですから、食の安全が本当に大事であれば、私は、任命したときの総理のその発想は非常に良かったと思いますけれども、今本当に食の安全を大事にしようとするときに、今その人選はミステークになっていると言わざるを得ないと申し上げたいわけであります。
さて、農林水産省の族議員体質というのは巷間いろいろ言われているところであります。例えば、土木工事が多いとか、予算は多いのに肝心の生産者の暮らしは苦しくなるばかりだ、組織団体の幹部と一部議員が何かつながっているんじゃないか、役人が関係団体に天下っている、これが私たちが持っている印象でもありますし、国民の皆さんもそう思っているかもしれない。小泉総理も、一部そのことに気付いて武部大臣を指名したんだろうというふうに思っています。
今、本当にこの食の安全ということを大事にしながら農林水産行政を変えようとするならば、本当に大変なエネルギーが要るんだろうというふうに思います。国民から信頼を失っていたり、様々な重大な失政だというふうに指摘されている大臣で、野党から早く辞めた方がいいというふうに言われている大臣にそんな大事な改革ができるのか、小泉総理、お伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 武部大臣に対してそれぞれ御批判があるということは、この委員会等、今までの委員会の御指摘でも分かっておりますが、これからの農林水産行政におきましても、変えていこう、体制を立て直していこうと、不当な圧力に屈しないでやっていこうというためには、よほどの胆力がないとできない仕事であります。多少の辞めろ辞めろの声にたじろいで辞めたいと、自らの責任を放棄するような人だったらとても務まらない。
不当な圧力にも屈せず、断固として安全を確保するための体制整備をするんだという決意に燃えているからこそ私は武部さんを農林大臣にし、武部大臣の責任の取り方は、今までの行政、不備な点は反省して、これからの新しい食品安全確保のための体制を作ると、そういうことに向かって全力を尽くすべきだと言っておるわけでありますので、私は武部さんならその方向で断固と構造改革に向かって邁進してくれると思っております。
○小川勝也君 いや、そう思っているのは、これ、総理だけだと思いますね。族議員の方々は、自分たちの意向を反映してくれる大臣だったら守りたいと思っている。しかし、本当にその族議員の利益が奪われるような改革をするならば、あっさりと手を引くでしょう。今一番味方に付けなければならないのは、小泉内閣の誕生のときを思い出してください、私は国民の声だと思います。国民がどんな思いで今牛肉を見詰めているのか。
もう一回パネルを上げてください。「消費の低迷は行政不信と表示不信が重なった結果」だと。先ほど指摘したとおり、この表示不信だって様々な圧力に屈した結果、適用された政策の結果、こういうふうになってしまったということであります。
このことを変えられないということがもう一つと、そして一番大事な点を申し上げたいと思います。
この全部がこの検討委員会の指摘でありますけれども、そしてまた被害総額が二千億円を超えているんだといいます。そんな中で、今回このBSEが日本に発生したという問題について、だれがどのように責任を取ったということであります。多分、雪印食品の社長も辞任をされました、全農の会長もこれは辞職をすることになっています。
それでは、農林水産省、あるいはこの食の安全をめぐって、あるいはBSEの発生をめぐっては、だれがどのように責任を取るのか、取ったのか、総理、もう一回答弁お願いします。
○国務大臣(武部勤君) 先ほど来申し上げておりますように、九月十日に我が国初めてのBSE患畜が発生して、私は、これは行政に構造的な問題がある、何でBSEの侵入を防げなかったんだろう、ゼロリスクとは言わないまでも、何で危機対応マニュアルがなかったんだろう、更には縦割り行政の問題も感じました。
したがいまして、これは役人任せにせずして、政治主導で執念を持ってこの問題を究明していこう、そのためには客観的な検証も必要だ、科学的な知見も必要だと、いろいろ抵抗はありましたけれども、BSE問題に関する調査検討委員会を立ち上げて、今大詰めを迎えているわけでございます。もう何度もお話ししておりますように、オープンで、データも四千ページも出して、公開の下にやっておるわけです。それを受けて真剣に取り組んでいく。どんな圧力にも屈しません。国民、消費者、そして消費者のために一生懸命頑張ることが生産者につながると、そういう考え方でこれからも真剣に取り組んでまいりたいというのが私の決意でございます。
○小川勝也君 トーンを少し落としまして、総理は韓国から帰ってこられたばかりだったと思います。
この食の安全というテーマは農業と非常に密接に結び付いておりまして、非常に重要なテーマだと思います。金大中大統領は、この食の安全ということに非常に大きな強いリーダーシップを発揮して、いわゆる民間学者の農政部長、いわゆる農業大臣を起用いたしました。そして、日本で言うところの有機農業というのでしょうか、韓国では環境に親しむということで親環農業と言うんだそうであります。この人を起用して、非常に強く持続型の農業政策を推進したというふうに言われています。そして、この例えば金成勲という大臣のほかに何人かがその任に当たったのでありますけれども、異口同音に同じことを言っているというふうに言っています。農政を転換するのに大変強い行政の力、圧力、抵抗を感じたということであります。
そして、日本に置き換えてみると、例えばこの食の安全を実施していこうとすると消費者保護に省益の壁という、こういう指摘もあります。農林水産省の役人が自分たちの利益を守ろうとする力も非常に強い、そして族議員と呼ばれる人たちが自分たちの権益やシステムを守ろうとする力も非常に強い。そんな中、先ほど小泉総理は、武部さんにやってもらいたいというふうにおっしゃっていましたけれども、本当に手負いの武部さんで大丈夫なのか、国民から信頼を受けていない武部さんで大丈夫なのかというふうに、私は党利党略を超えて心配をしているところであります。一日も早くこの食の安全を確立するという大きなテーマに向かって私たちの国がかじを切らない限り、大変なことになってしまうと思います。
最後にもう一度だけ、小泉総理、御答弁をお願いいたします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 一年近く大臣を経験されて武部さんもよく、今まで以上にこの困難な問題を理解してきたと思います。また、なさなければならない改革というものも分かってきたと思います。今までの御批判を謙虚に受け止めて構造改革に農林水産分野においても邁進していただきたいと、武部さんならできると私は思っております。
2002/03/26 |