平成15年7月14日 衆議院提出 戻るホーム目次

税制改革基本法案

自 由 党

 目次
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 個人の所得に関する税制の改革(第六条・第七条)
第三章 法人税に関する改革(第八条・第九条)
第四章 消費税に関する改革(第十条・第十一条)
第五章 租税特別措置等の廃止(第十二条)
附則

 第一章 総則

 (目的)
第一条 この法律は、公平で簡素な税制の確立に向けたこの法律の定めるところにより行われる税制の抜本的な改革(以下「抜本的税制改革」という。)の趣旨、基本理念等を明らかにし、かつ、簡潔にその全体像を示すことにより、抜本的税制改革についての国民の理解を深めるとともに、抜本的税制改革の整合的、包括的かつ一体的な実施を推進し、もって自己責任の原則に基づく自由で公正な開かれた社会の形成に寄与することを目的とする。

 (抜本的税制改革の趣旨)
第二条 抜本的税制改革は、現行の税制が、各種の控除制度、租税特別措置等により、税負担の公平を確保することが困難で、かつ、国民に分かりにくい複雑なものとなっているとともに、急速な少子高齢化の進展、産業をめぐる国際競争の激化等の社会経済情勢の変化に対応できたものとなっていないことに対処して、将来の展望を踏まえつつ、公平で簡素な税制を確立するために行われるものとする。

 (抜本的税制改革の基本理念)
第三条 抜本的税制改革は、租税は国民が社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのものであるという基本的認識の下に、社会経済情勢の変化を踏まえつつ、税負担の公平が確保され、かつ、国民に分かりやすい簡素な税制を確立することを基本原則として行われるものとする。

 (国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、抜本的税制改革に際し、行政及び財政の改革の一層の推進に努めなければならない。

2 国及び地方公共団体は、抜本的税制改革の趣旨及び内容について国民の理解と協力を得るように努める等その円滑な推進に資するための環境の整備に配慮しなければならない。

 (改革の実施)
第五条 抜本的税制改革の趣旨及び基本理念に従い、所得税、個人の道府県民税及び市町村民税(以下「個人住民税」という。)、法人税、消費税、租税特別措置等について、別に法律で定めるところにより、次章から第五章までに定める措置を中心とする改革を行うものとする。

 第二章 個人の所得に関する税制の改革

 (申告税の創設)
第六条 公平で簡素な個人の所得に関する税制を確立するため、次に掲げる方針に従い、国税として申告税を創設するものとする。

一 申告税の納税義務者は、居住者等(居住者(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。以下同じ。)及び居住者以外の個人であって国内における所得を有するものをいう。以下同じ。)とすること。

二 申告税の課税標準は、その年中の総収入金額から必要経費を控除した金額(以下この条において「総所得金額」という。)とすること。

三 総所得金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、その年分の総収入金額を得るために要した必要最小限度の費用の額とし、その計算は、法律で定めるところにより行うこと。

四 申告税には、所得控除、税額控除等の各種の控除制度は、居住者等の最低限度の生活を維持するために必要な金額に係る控除を除き、原則として設けないこと。

五 申告税の額は、その年分の課税総所得金額(総所得金額から別に法律で定める控除をした残額をいう。)を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて計算した金額を合計した金額とすること。
千万円以下の金額         百分の五
   千万円を超え二千万円以下の金額  百分の十
   二千万円を超える金額       百分の二十 

2 納税者としての意識の高揚を図るため、申告税は、申告納税方式(納付すべき税額が納税者のする申告(電子情報処理組織を使用するものを含む。)により確定することを原則とする方式をいう。)により納付されるものとする。

3 申告税の創設に伴い、所得税は、廃止するものとする。

 (個人住民税の負担の公平の確保等)
第七条 個人住民税の負担の公平を確保し、及びその簡素化を図るため、次に掲げる方針に従い、個人住民税の改正を行うものとする。
一 個人住民税の所得割の課税標準は、前年の総所得金額とすること。
二 前号の総所得金額は、申告税に係る総所得金額の計算の例によって算定すること。
三 個人住民税に係る所得控除の制度は、基礎控除を除き、原則として廃止すること。
四 個人住民税の所得割の税率は、百分の五とすること。

2 納税者としての意識の高揚を図るため、個人住民税については、特別徴収による納付の制度は、廃止するものとする。

 第三章 法人税に関する改革

 (法人税の負担の軽減)
第八条 国際的視点に立った法人税制の確立を目指し、法人税の負担が内国法人(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第三号に規定する内国法人をいう。)の国際競争力を阻害することのない水準になるとともに、我が国への投資の促進に資するよう、法人税の基本税率を引き下げるものとする。

 (創造的事業活動の促進)
第九条 次の措置を講ずることにより創業等を通じて新たな事業分野の開拓を図る創造的事業活動を行う中小企業者の法人税の負担の軽減を図るものとする。

一 別に法律で定める創造的事業活動を行う中小企業者に該当する法人に対しては、当該法人の設立の日を含む事業年度からその設立の日以後三年を経過する日を含む事業年度までの各事業年度の所得に対する法人税を課さないこと。

二 前号に規定する法人に対しては、当該法人の設立の日以後三年を経過する日を含む事業年度の翌事業年度からその設立の日以後五年を経過する日を含む事業年度までの各事業年度において、当該事業年度の所得から別に法律で定める留保控除額を控除した金額について法人税を課すること。

 第四章 消費税に関する改革

 (消費税の収入の使途)
第十条 高齢化の進展に適切に対処し、高齢者に係る基礎的な社会保障に要する費用の安定した財源を確保するため、消費税の収入の全額は、基礎年金、老人医療及び介護に要する費用の財源に充てるものとする。

 (消費税の課税の適正化)
第十一条 消費税に係る課税の公平を図るため、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第九条に規定する小規模事業者に係る納税義務の免除の措置及び同法第三十七条に規定する中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例は、廃止するものとする。

 第五章 租税特別措置等の廃止

第十二条 公平で簡素な税制を確立するため、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)による租税特別措置及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)による非課税等特別措置は、原則として廃止するものとする。

 附 則

この法律は、公布の日から施行する。

 理 由

公平で簡素な税制の確立に向けた抜本的税制改革についての国民の理解を深めるとともに、抜本的税制改革の整合的、包括的かつ一体的な実施を推進するため、抜本的税制改革の趣旨、基本理念等を明らかにし、かつ、簡潔にその全体像を示す必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


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