2003/05/28

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156 衆院・予算委員会 

菅代表、外交・経済問題で首相を追及 (民主党ニュース)

 衆議院予算委員会の28日の集中審議で、民主党の菅直人代表が質問に立ち、政府の外交・安保政策および経済問題への対応をめぐって小泉首相らを厳しく追及した。

 菅代表は、外交・安保政策をめぐっては、米国の一国主義への対応、イラク復興支援、対北朝鮮政策について質した。米国ブッシュ政権の一国主義的対外政策について菅代表は、世界各国が懸念を深めていることを指摘しながら、これに政府としてどう対応するか、とりわけそれを規定しているいわゆるネオコン勢力の主張をどう考えるか、と質した。しかし小泉首相は「それぞれの国の考え方がある」などとはぐらかすばかりで、具体的な評価や見解は何一つ示さなかった。

 イラク復興支援をめぐっては、先の日米首脳会談で首相が“C130を使用して人道的輸送を行いたい”との意向を語ったことを取り上げ、「何を、どこからどこまで運ぶことを想定しているのか」と質問。ところが首相は、「イラク周辺国で必要があれば自衛隊機を派遣してもいい、ということ」などと 述べ、何ら具体的な検討などなく発言したことを自己暴露した。菅代表は、「たんなる“思いつき外交”だ」と厳しく批判した。
 
 また菅代表は、首相が日米首脳会談で北朝鮮に対して「対話と圧力」をもって対応すると述べたことについても問題にし、「日朝平壌宣言に沿って対応するという従来の方針は転換したのか」と質した。首相が「変わっていない」と答えたため、菅代表は「(北朝鮮がNPT脱退や核保有を宣言している中で)まだそんなことを言っているのか」と一喝。「だから宣言を遵守させることが大事」などとピンボケな答弁を繰り返す首相に対し、「思いつきどころでなく、まったくの無原則外交だ」と指弾した。
 
 経済問題をめぐっては、りそな銀行への資本注入決定について追及。2兆円以上の公的資金を注入しなければならない事態に至ったのは小泉内閣の経済失政が原因だとして、首相の責任を質した。しかし首相は、「改革に向けての努力の過程でのできごと」「残念だ」などと他人事のような答弁に終始した。
 
 また菅代表は、りそな銀に対する資本増強の必要の認定をめぐる問題も追及。同銀の会計監査を行った2つの監査法人のうち、朝日監査法人が繰り延べ税金資産を自己資本に算入すべきでないという見解を示していたことを指摘し、「繰り延べ税金資産を算入しなければ、りそな銀行は債務超過で破綻していた。金融庁が再検査すべきではないか」と主張した。しかし竹中金融・経済財政担当相は、「りそな銀と正式に契約しているのは新日本監査法人。適正な検査が行われた」として、再検査の必要を否定した。


平成十五年五月二十八日(水曜日)

菅(直)委員 小泉総理、地球を一周されて、またロシアあるいはエビアン・サミットでフランスに出かけられる、その合間のような時間のこの衆参の予算委員会であります。しかし、総理が外に出ておられる間も、残念ながら我が国では、経済危機あるいは地震など多くの課題が発生をいたしております。

 そういう中で、大変外遊が立て込んではおりますけれども、国内の課題についても、さらにはその外遊に関連した問題についても、きょうは、外交と経済について幾つかの点で質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、先日の日米首脳会談であります。

 私は、一般的に言えば、日本の総理とアメリカの大統領が仲がいいというのは大変結構なことだ、このように思っております。しかし、もう一つ言えば、今、世界のほとんどの国が、すべての国がと言ってもいいでしょう、一国主義化したアメリカとの間でどのようなつき合い方をするのか、どのように向かい合うのかを大変苦慮している、そういう時代にあると思います。

 小泉総理は、イラクに関連して、大量破壊兵器が破棄されていないということを理由としてアメリカの武力行使を支持されました。具体的に何か手伝ったということは私が知る限り余りありませんが、まあ、支持をするということで、金魚のふんぐらいの役割は果たしたんではないか、このように思います。

 しかし、それでは、そういうアメリカの新しい外交方針に関して、日本外交、小泉外交がどういう筋道で対応しようとしているのか、ただただ引っ張っていかれるのか、それとも何らかの立場を持って臨んでいるのか、全く見えません。先日のテキサスにおける首脳会談を見ていても、テキサスの本物のカウボーイの後ろを日本製のカウボーイがついていっている、そんな姿にしか私には見えませんでした。

 そこで、きちっとした議論を少しさせてもらいたい。

 九月十一日のテロ以来、アフガニスタン、イラク戦争、確かにアメリカは戦争に勝ちました。しかし、テロを抑止する、あるいはテロの発生、テロの拡大を防ぐというそれらの地域の安定化については、例えばアフガニスタンにおいても、必ずしも安定化に成功していないわけであります。そういう中で、今のアメリカが進めようとしている、いわゆるネオコンと言われる人たちの考え方、一国主義的な考え方に対して、小泉総理自身、どういう考え方を持って臨まれようとしているのか、国民の皆さんにわかりやすく説明をしていただきたい。

小泉内閣総理大臣 まず、御指摘のように、日本が金魚のふんみたいにという自虐的な考えは、野党第一党の党首としてお持ちにならない方が私はいいと思っております。日本はしっかりとした独立国であり、アメリカとは違った役割を世界で持っております。そういう点から、日本は、アメリカとは違った役割を、安全保障の面においてもあるいは経済の面においても果たすことができる分野がたくさんあると思っております。

 アフガニスタンの問題におきましても、世界が協力してアフガンの問題に取り組み、今においては、まだアフガンにおきまして不安定な状況はありますが、テロの温床としてのアフガンではなくなったと思います。アルカイーダも存在しておりますけれども、かつてのように、今アフガンにはカルザイ政権が誕生している、世界が協力している。そういう点から考えて、私どもにおいては、アメリカとは違ったアフガンの国づくりに果たすことができる。

 さらに、イラクの問題につきましても、日本は戦闘行為には参加いたしませんが、今後、イラクの復興支援については、日本独自でできること、あるいは国際社会との協力の中でできること、いろいろあると思います。

 こういう点について、最も重要な日米同盟関係強化発展のために努力することによって、私は、アメリカとは違った日本の役割、そして日米が共同して世界の平和づくり、経済成長の発展に努力する分野はたくさんあると思いますので、今後、日米同盟関係というのは世界の中の日米同盟関係であるという視点でお互いの友好協力を増進していく必要があると思っております。

菅(直)委員 私の質問のポイントのところをまだお答えいただいていません。

 私が申し上げたのは、例えば一昨年の九月十一日のあのテロ以来、それに対する反撃として、アルカイーダが存在するアフガニスタンを攻撃し、そして、私も、かつてのカンボジアのように非常に不安定な状況の中では国内的にも国際的にもいろいろな問題が起きるので、かつてソ連軍が引き揚げた後の放置をしたこのアフガニスタンを安定した国に立て直していく、それには日本が役割を果たすことに賛成であります。しかし、先日も外務省から現状をお聞きしますと、残念ながら、カブール周辺だけは国際的な部隊が存在してある程度の治安が保たれているけれども、他の地域はそれぞれの軍閥が支配している、戦闘がそれほど激しく起きているわけではないけれども中央政府が機能していない。それではタリバン発生前のアフガニスタンに戻っただけではないか、一部にアルカイーダの残党がいるだけではなく新たなそうしたものもそこからはびこりかねない、そういう状況を見て物を言っているわけであります。

 ある意味では、テロを撲滅すると言いながら、テロの遺伝子をまき散らしているんではないか。このことが、今のいわゆるネオコンと言われる人たち、つまりは、先制攻撃によってそれを抑え込めるんだという人たちに対する最も大きな、ある意味ではその意見に対する対案といいましょうか疑問なんですね。

 ですから、私が総理に聞いているのは、そういうネオコンと一部に称されているような人たちの考え方、ブッシュ政権は相当部分それに引っ張られておりますけれども、その考え方に対してどういうふうに考えられるのか、これはアメリカとのこれからのつき合いの中で基本的に非常に重要な問題ですから国民の前でわかりやすくお答えをいただきたい、このことを質問したんです。はっきりお答えください。

小泉内閣総理大臣 それぞれの国にはそれぞれの考え方があります。日本におきましても一つの考え方ではございません。与党と野党、考え方も違います。いろいろな法案に対して賛否両論、与党内においても野党内においてもあります。アメリカにおいても私は同じだと思います。いろいろな考え方がある。

 しかし、ブッシュ大統領は、テロの撲滅に対して各国と協調して取り組んでいこうと。そして、アメリカにはネオコンと言われるような考え方もあると思いますが、そういう考えに対しても冷静に、慎重に対応している。決して引きずられているというものではないという点につきましては、民主主義の国でありますので、私は、その辺はよくブッシュ大統領も理解されていると思っております。

菅(直)委員 委員長も首をかしげられていましたが、果たして今のが答弁になったんでしょうか。

 いろいろな考え方がある、当たり前ですよ、いろいろな考え方があるのは。しかし、そのいろいろな考え方の中で、例えばですよ、きょうテレビを見ておりました、ラムズフェルド国防長官は、イラクの大量破壊兵器については、直前に破壊兵器そのものが壊されてどこかに放棄されたかもしれないから見つからないかもしれない、こういうことをちょうどニュースで言っておりました。つまり、いろいろな考え方があるということじゃ済まないんです。

 総理がこの場で国民に向かって、あるいはいろいろな場で国民に向かって、アメリカの武力攻撃を賛成だ、支持すると言われたのは、その大量破壊兵器が必ずしもなくなっていないという見通しの中で言われた。ネオコンの皆さんからすれば、極端に言えば、大量破壊兵器があろうがなかろうが、フセイン体制をつぶすためにやったというのが専らの見方であります。総理も「ブッシュの戦争」という本を読まれたかどうかは知りませんけれども、それを見ても、アフガンの戦争のころから、もう次はイラクだということにはっきりとねらいを定めていたわけです。

 いろいろな考え方があるというのは結構です。その考え方の中で今のブッシュ政権が多くを動いているとしたら、それに対してどうするか、金魚のふんでないんだったら、ちゃんとした意思を示してください。そういう議論を避けてというよりは、ごまかしている。私は総理と何度かここの場で議論いたしましたが、総理に一つの言葉を提供したいと思います。総理ははぐらかしの名人です。はぐらかし総理です。そうでないんだったら、今の質問にもう一回答えてください。

小泉内閣総理大臣 私は、はぐらかすことなく誠実に答えているつもりであります。

 日本とアメリカとは国情も違いますし、軍事的にも経済的にもそれぞれ違いがあります。しかし、協力していく分野がたくさんある。今回のイラクの問題につきましても、アメリカを支持しましたけれども、アメリカと一緒に行動しているわけではない。日本独自の行動をしているんです。

 日米関係は重要であります。菅さんみたいに、ブッシュ政権は危険だ、そういう考えを私は持っておりません。いずれ政権をとるであろうと意欲を燃やしている野党第一党の党首が、日米、最も重要な国の最高指導者を危険な政権だとはっきり申し上げて、どうやって今後日米関係を強化、協力していくのか、私は非常に危うさを感じております。

 こういう点から、今回のイラクの問題におきましても、アメリカは国際協調体制をつくるように懸命に努力して、今回、安保理決議も採択されました。私はそういう状況を見まして、日本はアメリカと協力する、国連と協力する、各国と協力していく、この方針を堅持してまいりたいと思います。

菅(直)委員 また出ましたね。はぐらかしの次は今度はすりかえですか。

 ブッシュ政権について、前もこの場で言われましたけれども、それは一つの政権の考え方について賛成な部分もあります。しかし、こういう考え方で大丈夫なのかなと。例えば、あの武力行使について私は反対をいたしました。まさにそれが一つ一つ、反対をしたら政権がとれないから賛成しなきゃいけないと、今の総理の言葉はまるっきりそうじゃないですか。ノーと言える日本じゃなくて、イエスとしか言えない総理じゃないですか。そういうすりかえ、はぐらかしの名人の総理だからまともに答えていないわけです。(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に。

菅(直)委員 少し具体的な形でお聞きをいたします。

 首脳会談で総理は、C130を派遣して、そして人道的な輸送に当たらせたいということを言われております。一体どんなものをどこからどこに運ぶことを想定されているんですか。C130というのは航続距離が短いんです。あのアフガンのときに、パキスタン製のテントを日本が輸入して、それを日本からC130に積んで、三回か五回か途中とまって、たしかパキスタンかどこかに送ったことがありましたね。そんなことを考えようとしているんですか。これは、総理が首脳会談で発言された中身ですから、総理から説明してください。

小泉内閣総理大臣 私は、イラク周辺国に対して自衛隊の輸送機が必要であればその派遣も検討している、イラク自身に対しての復興策については日本が主体的に考えるということを述べただけであります。

菅(直)委員 ですから聞いているんですよ。かつてヨルダンかどこかに物を送ったことがありますが、日本から送ることを考えているんですか、この足の短い輸送機で。それとも、ヨルダンと例えばイランとか、どこかあの周辺国で何かお互いが物を動かすのに日本が輸送業務に当たるという意味なんですか。まさに総理が言われたことですから、聞いているんです。周辺国で輸送業務に当たらせたい、自衛隊のC130を派遣したいと言われているじゃないですか、ブッシュ大統領の前で。どういうものを想定されているんですか。多くの国は、今たくさんあのあたりで輸送機が飛んでいますよ、普通の民間機も含めて。どういう意味なんですか。

小泉内閣総理大臣 必要なことがあれば自衛隊機を派遣してもいい、周辺国に対して。それは今後具体的に、どの国が何を必要としているかよく協議し、検討すればいいことであります。

菅(直)委員 結局のところは、思いつきにしかすぎないということですよね。何が必要性があるのかこれから考えると言いながら、C130という具体的な自衛隊が持っている輸送機の名前まで挙げておいて、いざとなったら、いやこれから必要があればと。それはそうでしょう。これから必要があればいろいろ考えるんでしょう。それにはもしかしたら、C130なんか持っていくよりは、それに等しいお金を持っていった方がいいかもしれない。しかし、とにかく自衛隊を持っていきたいということなのかどうなのかわかりませんが、説明がないんだからわからない。思いつき外交と言われたって仕方ないじゃないですか。

 次には、もう少し話を進めたいと思います。

 総理は、北朝鮮について、対話と圧力という言葉を使われてアメリカ大統領に話をされたと聞いております。一般的に言えば、対話と圧力といえば、話し合いと同時に何らかの圧力をかける。

 私は、平壌宣言以降、北朝鮮の行動を見ていれば、それ以前とは対応が変わるのは当然だと私自身は思っています。ですから、何らかの形で、先ほどの議論もありました、北朝鮮からの船に対して厳しいチェックをする、あるいは亡命者からの話をきっちり聞く、そういったいろいろなことをやるべきだと思っております。しかし、例えば川口外務大臣は、いや何にも方針は変わっていません。総理もどこかで、いや別に変わったことを言ったんじゃありませんなんということをたしか言われたんじゃないでしょうか。

 総理はこの席でかつて、金大中大統領や盧武鉉大統領の太陽政策を支持すると言われ、そして、みずから署名された平壌宣言に基づいて取り組むということを言われてきました。そのことと今回の対話と圧力ということ、私は変わったからいけないと言っているんじゃないですよ。あらかじめ、はぐらかされないように言っておきますけれども。変わるのは、私からすれば当然だと思いますが、変わったんですか変わらないんですか、国民の前ではっきりお答えください。

小泉内閣総理大臣 変わっておりません。日朝平壌宣言、これを誠実に履行させるために対話といろいろな働きかけ、圧力と言ってもいいでしょう。日本だけでできませんから、各国と協力してまいります。

菅(直)委員 さすがに与党席も静かですね。

 平壌宣言によれば、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」これから変わっていないんですね、今も。この宣言どおりに考えて取り組んでいくということですね。

小泉内閣総理大臣 この宣言を基本に、これを誠実に履行させるように取り組んでまいります。

菅(直)委員 全く矛盾したことを平気で言って、本来ならこんな答弁、成り立たないですよ。対話と圧力と一方で言いながら、だれがこれが遵守されていると思うんですか。遵守されていないということを日米間で話しているんじゃないんですか。核兵器の開発について、少なくともアメリカの情報機関では、あるいはブッシュ大統領も、何発か持っているかもしれない、持っていそうだと。北朝鮮自身が、プルトニウムの取り出しをやっている。実際にやっているかどうかはわかりません。まさに遵守していないということを当事者が言っているのにもかかわらず、遵守しているというこれに基づいてやるんですか、自民党、それでいいんですか。

 こんな考え方でいいんですか。全くインチキじゃないですか。言っていること、やっていること、ばらばらじゃないですか。思いつき以外でもし成り立つ説明があるんだったら、この対話と圧力ということと、この平壌宣言に基づいて対応するということの、今私の申し上げた矛盾を国民の皆さんにわかるように説明してください。

小泉内閣総理大臣 全然矛盾していないんですよ。日朝平壌宣言は、アメリカも支持しています、韓国も支持しています、中国も支持しています、ロシアも支持しています、EUも支持しております。これを誠実に実行させるようにこれから努力していく。アメリカは核開発プログラムを容認していません。韓国もそうです。

菅(直)委員 私は、平壌宣言をアメリカが九月十七日以降認めたという話は聞いたことがありませんね。だって、全く矛盾しているじゃないですか。アメリカは、北朝鮮が遵守していないと言っているじゃないですか。何をそんなインチキを言っているんですか。

 いつ言ったんですか、アメリカの大統領が。九月十七日以降ですよ。北朝鮮が遵守しているんですか。ここに書いてあるんですよ、あなたの署名したものに。答えてください。

小泉内閣総理大臣 日朝平壌宣言が誠実に履行された暁に日朝国交正常化がなされるんです。そのための働きかけを各国と協力してやっていこうというんです。全く変わりありません。

菅(直)委員 またはぐらかしていますね。ちょっと、これね、場合によったら、こんな議論をしていて、日本の外交の議論になるんですか、これで。

 私が読み上げたところは、私が言っているんじゃないんですよ、総理がサインされているんですよ。「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」確認したけれども、それができていないじゃないですか。こんなことをアメリカが支持しているんですか。

 九月十七日の時点でこれができたことは、それはもしかしたら大いに結構だと言ったかもしれません。しかし、九月十七日以降に、先日の三カ国三者会談においても直接、正式の会議の席であったかどうかは別として、北朝鮮の担当者が、アメリカのケリーさんにですか、言ったじゃないですか、うちは持っていますよと。まだそんなことのあれですか……(発言する者あり)総理がこの考え方に沿ってやると言っているから聞いているんです。まだ変わっていないと言われるんでしたら、わかるように説明してください。全く、それこそ黒を白と言っているようなものであり、白を黒と言っているようなものじゃないですか。北朝鮮が核に関する国際的な合意を遵守していると書いてあって、それでいいんだと言うんですか。

小泉内閣総理大臣 だからこそ、この宣言は重要なんですよ。「双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。」アメリカも、現在も日朝平壌宣言を支持しております。韓国も支持しています。これを実行させることが大事なんです。これからなんです。何ら変わることないんです。

菅(直)委員 これは、国会の皆さんは少なくとも少しはおわかりだし、多分、一般にごらんになっている皆さんもわかると思うんですよ。九月十七日ですからね。九月十七日から後に、あの核査察も追い出し、NPTですか、あれの脱退も宣言をし、アメリカに対して核保有もみずから言ったんですからね。

 それを、これを守らせることが目標なんだ、これをわざわざ破ったという事実をまず認めないでおいて、何が守らせるですか。これが守られていることを前提としたのがこの平壌宣言じゃないですか。

 もう一度だけお聞きしますが、この平壌宣言は破られたんじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 これは、大事な政治宣言文書です。これを誠実に履行させることが大事なんです。外交交渉なんです。それを理解して、これを破棄したから、これはもう破られたから御破算だと言ってどうなるんですか。この宣言を誠実に履行させるために粘り強い努力が、日本だけでなく各国と協力し合っていくことが大事なんです。

菅(直)委員 私は、ほかの場面でも申し上げたことがあるんですが、小泉総理の論理というのは、自分に都合の悪いことは一切聞こえない、一切見えない、そういう前提ですね。よく、ダチョウが、怖いものが来たら砂の中に頭を突っ込んで一切見えない、聞こえない。こうやってちゃんと文書にまでなっているものを、明らかにだれが見ても遵守されていないものを、遵守されなかったとは言いたくない、自分がサインしたんだから言いたくない。こんなことを前提にして外交交渉をやって、思いつきどころじゃないじゃないですか。無原則外交という、無原則小泉外交という、そういう名前をきょうは提供して、国内の問題に移らせていただこうと思います。

 そこで、総理、りそなの三月期決算において、自己資本比率が四%を割った。そこで、いろいろな金融危機対応会議を招集されて、そして二兆円余りの公的資金、公的資金というのは最終的には国民の負担になりかねない、多くの場合にはなってしまうその資金の投入をその会議で決めた。諮問をしたのも総理、そして、その会議の座長というか議長も総理であります。

 私はまず総理に、こういうふうに立ち至ったことについて、二兆円以上のお金を一つの銀行に投じる、国民の皆さんに、こうなったことはやはりこれまでの対応を含めて十分なところがなかった、ぜひ理解をしてほしい、これまでのことについてはおわびをする、その一言を言ってもらいたいと思いますが、言っていただけますか。

小泉内閣総理大臣 このような事態に至ったことは金融機関が健全でないという一つのあらわれでございますので、これは残念なことだと思います。しかし、放置しておいて預金者に不安を与えたり、あるいは取引先企業に混乱を与えたり、そういうことにしない対応も政府として必要であります。

 そういうことから公的資金投入を決断したわけでありまして、私は金融危機を起こさないという判断に基づいて決断した結果でございますので、私は今後、金融健全化に向けて一層努力していきたいと思っております。

菅(直)委員 残念だという言葉はありました。残念だというのは、これは謝罪になるんでしょうか。日本の総理大臣として、またその座長なり議長として、二兆円余りの国民の税金を投入しようとしていて、原因は銀行にある、残念だ、これで成り立つんですか。国民に対しては謝罪されないんですか。はっきりしてください。

小泉内閣総理大臣 謝罪とかそういう問題ではなくて、健全化して、この公的資金注入が将来返ってくるような健全化に努力させていきたい、自主的な努力を促していきたい、また、金融庁も監督していきたい、そういうことによって、金融健全化に向けて努力を傾けていくのが責任だと思っております。

菅(直)委員 結局は、謝罪しないということですね。

 ということは、総理、この問題に関して総理は責任はあるんですか、それとも責任はないんですか。私は責任があると思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 すべての責任は私にあります。小泉内閣にあります。

菅(直)委員 一般論を言っているんじゃありません。小泉政権二年間の経済政策の失敗がこの誘因になっているという意味での責任があるんではないですかと言っているんです。

小泉内閣総理大臣 改革に向けての努力の過程の出来事であり、これは残念なことではありますけれども、今後将来の持続的成長に向けての努力の一環である、そう私は思っております。

菅(直)委員 重ねて聞きますが、残念だけれども責任はないと言われるんですね。

小泉内閣総理大臣 これは、すべての問題について小泉内閣は責任を負っております。

菅(直)委員 またはぐらかしているでしょう。当たり前じゃないですか。私は、このりそなの破綻に対して二兆円余りを投入しなきゃいけないことに対して、この二年間、例えば株価が二年前と同じ水準であれば、このような自己資本比率に低下は多分していなかったでしょう、そういうことを含めて総理に責任があるんではないかと申し上げているんですが、一般的にすべての問題に総理大臣として責任がある、しかし、この金融が失敗したのは改革の過程だ、これが総理のお答えでしたね、今。――うんとうなずかれました、言葉は出ませんでしたけれども。

 それでは、お尋ねをしましょう。

 森前総理が、私も出ていたある席で、ここにいる菅さんが私がやめたら株が上がると言ったけれども、上がらなかったじゃないか、もっと下がったじゃないかと言われました。私は、それは後を任せた人が間違っていたんじゃないですか、このように申し上げました。

 ここにこういう表があります。手元にあるでしょう。これは、東証、先日私も視察に行ってまいりましたが、東証がスタートしてから今日まで二十二人の総理大臣がおられます。吉田さんのころは、まだ東証がなかったそうであります。そして、上がった率、下がった率、騰落率と言うんだそうですけれども、ランキングをつけてみました。

 第一位は、バブルの発生でありますけれども、中曽根内閣のとき、二二一%。つまりは三倍ということになるんでしょうか、上がった率ですから。第二位が佐藤栄作さんのときであります。上からずっと言ってもいいですが、一番下はどなたでしょうかね、これ。最下位、小泉純一郎、マイナス四〇%。マイナス四〇%ということは、一〇〇の価格が六〇に下がった、半分近くに下がったということであります。これが二年間の結果です。

 その前の森総理、一九・八%。下がった下がったと私も言いました。しかし、森総理からいったら、自分のときに下がったよりももっと倍以上下がっているじゃないか。その前の小渕さんのときは相当上がっていますね。これは三五%上がっています。

 こういう数字を見ていて、マーケットはどう言っているか。先日、総理は、これも日米首脳会談で、今株価は底にある、専門家はみんなそう言っていると言いましたけれども、私が東証に行って、その後、若手のディーラーの皆さんと話をしたときに、皆さんが口をそろえて言われたのは、将来が見えなければ株は上がりません、小泉総理は、その人たちが言ったんですよ、ちょっと喜ぶことを言うかもしれませんが、その人たちが言ったんですが、多分自民党の中では総裁に再選されるでしょう、小泉政権が続くでしょう、小泉政権が続いている限り株価の低迷は同じように続くでしょうというのが、私が話した二、三十人の若手のディーラーの考えでありました。

 この株価を見ても、総理は一切、自分の経済的な政策が何も効果を上げなかった、失敗であったということを認めないんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、株価が上がる、下がる、これは、一国の経済事情にもよると思いますが、世界経済の影響も多分にあると思います。

 しかし、現在、こういう株価の下落というのは好ましいことではありませんし、株は下がるより上がる方がいいに決まっております。しかし、改革なくして成長なし路線を続けていかなきゃならないのも事実でございます。

 そういう面において、私は、今の株価水準というのは二十年前の水準にあると。確かに下落率は多いんですが、菅さんも自分が首相になれば二倍になるとかいった話でございますけれども、株価が先を見越した現在の価格であるということになりますと、上がっているときはずっと上がらなきゃならない、下がっているときはずっと下がらなきゃならない。

 株の見方はさまざまであります。当たらないんです。当たれば、みんな安心して買う。当たりにくいから、買う人、買わない人、損する人、得する人がある。でありますので、私は、全体の経済をよくすることによって株価も上がっていくことにつなげていきたい。専門家の話というのはいろいろあると思います。底だと言う人もいます。二十年前の水準だから、底だと言う人もいます。あるいは、まだ下がると言う人もおります。それはさまざまな見方があると思いますが、改革なくして成長なし路線に変わりはございません。

菅(直)委員 今の話を聞いていて、そうだと思った人は、多分、総理以外一人もおられないんじゃないでしょうか。総理の辞書には責任という言葉は多分入っていないんでしょうね。

 つまり、歴代内閣、いろいろな事情がありました。もちろん、バブルで上がり過ぎたのもあります。別に、上がったのがすべていいとは言いません。下がった方が調整段階でよかった場合もあるかもしれません。

 しかし、一万四千円という森内閣の末期の価格が、私も、森さんがやめたら少し上がるんじゃないかと思って、たしかそういう発言をしました、森さんがやめたとき。しかし、その後、小泉さんになってまた半分まで来るとは、さすがに私の予想をはるかに超えていました。

 その原因はどこにあるか。一言で言えば、今言われた構造改革なくして景気回復なしということの言葉を決して否定はいたしません。しかし、この間、何度も議論いたしましたが、需要拡大や雇用拡大というものを一方に置きながら、やらなければいけない構造改革をやらなきゃいけないのに、構造改革もできない、需要拡大もできない、どちらも将来が見えない、まさに将来が見えないから株価が低迷しているんです。

 この問題は時間があれば後ほどもう少し詰めていきたいと思いますが、もう一度、りそなの本体の問題に戻ります。

 りそなについて、総理は諮問をされましたね、金融危機対応会議ですか。諮問をされた時点で、これは総理の名前になっていますが、四%割れということを認識されて諮問されたようですが、債務超過でなかったかと他の議員からもありました。総理は、債務超過になっていないという説明を受けられたからそういう内容の諮問を出されたんですか。総理が出された諮問ですから、総理からお答えください。

小泉内閣総理大臣 私は、竹中大臣から、りそなの状況において、いろいろ報告を受けておりました。

 そういう中、りそな銀行の十五年三月期決算において、同行の自己資本比率が健全行の国内基準である四%を下回るという、そういう状況だという報告を受けました。このような事態を放置いたしますと、我が国あるいはりそな銀行が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある、こうしたことを未然に防ぐ必要があるため、同行に対して資本増強を行う必要があるという報告を竹中大臣から私は受けました。

 そういう質問を受けまして、金融対応会議を開催して資本増強の必要性の認定に関して諮問を行うこととしたものであり、それに沿って公的資金注入を決断したわけでございます。

菅(直)委員 いつの時点ですか。竹中さんから、つまり四%は割っている、二%は超えている、債務超過ではない。つまり、債務超過であればこういう諮問が出ないはずです。この諮問は、預金保険法百二条一号ということがもう既に書いてあります。いつの時点で聞かれたんですか。

小泉内閣総理大臣 たしか、沖縄の太平洋・島サミットに行っていた最中だと思います。正確な時点は、私より竹中大臣の方が御存じだと思います。

竹中国務大臣 経緯について御報告を申し上げます。

 十七日に金融危機対応会議を開催しておりますが、その日の十一時に開かれましたりそなの取締役会でその決算が出てきたわけでございます。これを受けて、我々としましては、四%を割り込んで二%台になるという結果がその十一時の取締役会で出てきたわけでございますけれども、我々としてはそれに基づいて、銀行監督の手続であります、まず銀行法二十四条に基づく報告徴求というのを十四時に行っております。

 その時点で先方からは、確かに二%台になると。二十四条というのは、正確に行わないと罰則つきの報告でありますから、これは向こうは当然のことながら正確に行ってくる。それによって、二%台である、つまりこれはゼロを割り込んでいないという意味で、当然、債務超過ではない。それに対してさらに、それを自力で回復するのは困難である、そういうような報告を受けまして、二時ごろであったと思いますが、沖縄におられます総理に、私の方からその状況を報告いたしまして、これは預保法百二条第一項第一号に基づく措置をとるのが適切であろうというふうに私の方から申し上げました。それを受けて、総理の方で御決断をいただいたということでございます。

菅(直)委員 それでは、竹中さんにお聞きをいたします。

 三月期決算、私も拝見をいたしました。私は公認会計士ではありませんし、それほどの専門家ではありませんから、いろいろな皆さんの専門的な知識もお聞きをいたしました。

 単体でいうと、繰り延べ税金資産が三千九百十六億計上されています。資本の部の合計が千百八十一億円計上されています。

 この計算のやり方が正しいかどうかは別として、単純にこれを引きますとマイナスの二千七百三十五億になるわけです。つまりは、繰り延べ税金資産を入れたからプラスになっているけれども、繰り延べ税金資産を入れなかったらマイナスになる。この、引く千百八十一億がいいのか、専門的で私も半分しかわかりませんが、ティア1と言われる数字がいいのかわかりませんが、いずれにしても、そういうものを、繰り延べ税金資産を外せばマイナスになるという数字に、私が見たところなっておりました。

 聞くところによれば、朝日監査法人はそういう状況を把握した段階で、繰り延べ税金資産を資本に繰り入れることはできない、公認会計士協会から出ている指針の解釈からしてできない。そうすると、これは二%ではありません、破綻です。

 そこで、結果的には、やめろと言われたのかやめると言ったのか知りませんが、朝日監査法人は監査からおりて、新日本だけが残ったわけであります。その新日本との中でも、りそな担当者と金融庁の担当課長との間で、こう言ったらああ言っている、こういうやりとりがあったというメモが出ております。

 そこで、竹中さんにお聞きします。

 いずれにしても、あなたの、まあ、あなたは法律的には何か金融庁の責任大臣じゃないんだそうですね。正確には、法律的に言えば、責任大臣は内閣府の大臣だそうでありまして、内閣府の大臣はだれかと聞いたら小泉総理大臣だそうでありますが、しかし、担当されている以上は、実質的なことはやっておられるんでしょう。

 竹中さんにお聞きしますが、あなたはどの数字を見て、どういう報告、つまりは企業から出てきた報告は報告として、金融庁の皆さんは朝日監査法人がおりる経緯、担当者が自殺する経緯といいましょうか、自殺したことも御存じだったはずですが、そういうことがありながら、本来なら、朝日監査法人からすれば債務超過と見ていたのにかかわらず、そうではないものをそのまま受け入れた。これは竹中さん、あなたがそれでいいと判断されたんですね。間違いないと判断されたんですね。そのことをお聞かせいただきたいと思います。

竹中国務大臣 菅委員から、三点御質問がございました。

 一つは、繰り延べ税金資産なかりせばという表現を使われましたが、その実態をどのように見るのかというのが第一点。それと、朝日監査法人の名前が出てまいりまして、それはどのような経緯、どのように位置づけているのかという点。第三点が、新日本監査法人と金融庁の間に何らかのやりとりがあったのか。重要な三点でございますので、少しきっちりとお話をさせていただくつもりでございます。

 まず、繰り延べ税金資産なかりせばマイナスではないかと。しかし、これはどう考えても、なかりせばという仮定はおかしいわけでございます。これは繰り延べ税金資産という資産勘定を、監査法人、公認会計士が監査上も認定している。言うまでもありませんけれども、これは一種の税金の前払い金でありまして、これは資産でございます。資産であることは間違いありませんが、それが将来、税金を払ったときに回収されますので、その回収可能性がどうかということで、これが監査法人の重要な判断にもなるわけでございます。

 しかし、いずれにしても、これは資産でありますし、その資産性がある、回収可能性があるというふうに、独立した監査法人が監査してそれが計上されているわけでございますから、これがなかりせばというのは、そういう議論そのものが余り意味をなさないのではないかというふうに思っております。

 二番目の問題でございますが、朝日監査法人の名前が出ましたが、この監査法人は、正式にりそな銀行と契約を結んだ監査法人ではないというふうに認識をしております。我々は、正式に契約を結んだ新日本監査法人が時間をかけてしっかりと監査をして、そしてどのような結果を出したかという点が極めて大事な点であるということになります。

 第三番目、新日本監査法人に対して、金融庁が何かどうこう言ったのか……(菅(直)委員「新日本じゃないですよ、りそなです」と呼ぶ)りそなに対して何か言ったのか。新日本とりそな、要するに申し上げたいことは、これは第一番目の繰り延べ税金資産等々をどのように評価するか、会計に対する我々の評価そのものでございますけれども、今のシステムというのは、まず企業がしっかりとした決算を行うこと、それに対して独立した監査法人が、客観的な、公正妥当と認められる監査基準に基づいてそれを監査すること、我々はそれを事後的にチェックするという立場になっております。

 この百二条の意義というのは、システミックリスクを未然に防ぐために、その時々で利用可能な最善の情報に基づいて、まさにクイックアクション、素早い決断をするというところに非常に重要なポイントがございます。しからば、そのときに、その重要なクイックアクションをとる場合に、利用可能な情報はどのぐらい信頼性が高いかということでございますけれども、我々は、そういった問題が常に決算に反映されますように、いろいろな仕組みをつくってまいりました。

 まずは、これは特別検査をしっかりと行う。特別検査は、再検査を行いましたので、二度続けて行っている。今回、金融再生プログラムに基づいて、いわゆるディスカウント・キャッシュフローと言われるような新しい手法も用いて検査を行ったということでございます。かつ、監査法人がそれを適正に検査している。常に、検査の体制としては通年・専担検査の体制をとっている。

 その意味では、今の検査の体制というのは非常にしっかりしたもので、その特別検査の結果が適切に今回の決算の結果にも反映されているというふうに考えるわけでございます。そうした観点から、我々としては、今回の決算、我々の判断に基づいた数値が極めて正確性の高いものであるというふうに思っております。

 なお、そうした監査法人の独立性に対して、我々は一切そういったものに、独立した監査法人に影響を与えてはいけないということを、金融庁の中では再三再四、私の方から指示を出しておりまして、そうした方向で金融庁はきっちりと対応したというふうに認識をしております。

菅(直)委員 今、三つのことを分けてちゃんと答えると言われましたが、三つ目については最後の一言があっただけです。しかし、そのことをもう一度お聞きします。

 竹中大臣が金融庁に、監査法人に対して圧力をかけるな、接触を余りするんじゃない、こういうふうに言われたという話は聞いております。しかし実際には、その竹中大臣の、これは命令になるのか、あなたの立場がはっきりしませんが、担当ですから、総理だったら命令ですが、その竹中大臣の指示が守られたのかどうかということを聞いているんです。自分が言ったからで済むんだったら、行政の責任者の責任をとったことになりません。私も厚生大臣をやりましたが、厚生省がまともに情報を上げてきたことはほとんどありませんから。

 名前も出ています。あえてここでは申しませんが、りそなの担当常務と金融庁の担当課長との間でいろいろなやりとりがあったということが報道で出ています。確かめられたんですか、本人に。そんなことはまさかやっていないだろうなと周辺に確かめたんですか。相手の常務に確かめたんですか。それで、そういうことはなかったと竹中さんの責任のもとで言えるんですか。その責任のもとで言えるのなら、はっきり言ってください。そのかわり、後に間違っていたときはきちっとした責任をとってください。

 私は、竹中さんが決してやれと言ったとは思っていません。しかし、総理大臣が何にも言わないで、担当大臣が言ったぐらいで金融庁のお役人が果たして言うことを聞いたのか、私の経験からいえば大変疑問なので、きっちり確かめさせてください。

竹中国務大臣 連休明けにこういうりそなと監査法人との間で幾つかのやりとりがあるようだというのが私のところに上がってきました段階で、今菅委員が御指摘くださいましたように、私の方としては、これは独立した監査法人にきっちりと監査してもらうというのが今の制度の趣旨であるから、それには間違っても介入してはならないし、またそれだけではなくて、誤解を与えるような行動を断じてとってはならないということを伝達いたしました。それから一週間の間に、数回私は同じような伝達をいたしました。それに関して担当部局に確認をいたしまして、そういうことは一切ない、きちっとやっているというような報告を私は受けております。非常に緊張感の高い一週間の仕事の中で、金融庁の皆さんはそれぞれの責務を非常に緊張感を持って果たしてくれたというふうに思っております。

 なお、雑誌等々でそういう報道があるということは承知をしておりますが、これに関しましては、金融庁の広報室の方からその雑誌社に対しましては弁護士を通じて正式に、根拠のない報道であるということに対して抗議の文を発出したところでございます。

菅(直)委員 ちょっとはっきり答えてくださいよ。私はあえてここでは固有名詞を言いませんでしたが、おわかりでしょう、固有名詞は。私も、薬害エイズのときに全部の固有名詞の中で調査をさせました。報道があってから、大臣自身がその固有名詞に該当する人、一つは金融庁の担当です、一つはりそなの常務です、ちゃんと直接話を聞かれた上で、そんなことは一切ない、また、竹中大臣の心証も含めてその証言なり発言は信用できる、そういう判断をされたんですか。それとも、一般的にそんなことはないと。十数年間、薬害エイズの資料は、歴代厚生大臣がないかないかと聞いても、見つからない見つからないで過ごされたわけでありまして、小泉総理が厚生大臣の時代も多分そうだったでしょう。ちゃんと固有名詞で聞いたのかどうか、はっきりお答えください。

竹中国務大臣 報道等々で名前が出ております直接の担当者に対しましても、またそれを監督する立場の上司に対しましても、直接確認をしております。

菅(直)委員 もう一回、確認をした上でそういうことはないということだったんですね。確認した上で、あなたが直接会った上で本人から、そういうことはありませんでした、相手のりそなの常務からもそういう話を聞かれたということですね、あなた本人が。自分で言われたんですか、本当に。

竹中国務大臣 金融庁の担当者には何度も直接会って確認をしております。

 それと、先方の話でありますけれども、これは、何らか非常に確証の高い疑惑とかそういうものが別にあるわけではございませんですから、私としては、金融庁の担当者に確認をして、厳密に職務を遂行したものというふうに認識をしております。

菅(直)委員 余り固有名詞を言うつもりはありませんでしたが、担当、担当と言われても担当者はたくさんおりますから。

 報道によれば、金融庁の銀行第一課長の鈴木と言われる方だそうでありますが、りそなの常務の大谷という方ですが、その二人に直接ただされて、そういう返事を聞かれて、そういう心証を持たれたんですね。抽象的なお答えでは、後でお互いに言った、言わないということになりますから。

竹中国務大臣 御指摘の課長には直接確認をしております。
 なお、先方の銀行に対して私から特に接触をする立場にはないというふうに思っております。

菅(直)委員 なぜですか。なぜそんなことを言えるんですか。なぜですか。金融庁は監督責任があるんじゃないですか。

 ということは、片方しか聞いていないということですね。相手の話は聞いていないということですね。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、私は、金融庁の職員を監督する立場にあります、その中でその担当の者には確認をしております。

 しかし、外部の人に対する確認というのは、これは、それを行うに足るよほどの客観的な証左、証拠がある場合にはそういうことをするということも考えられましょうが、これは、いわば出どころのわからないワープロ打ちの紙が出たからといって、それに基づいて一々外部に対して確認する、そういう性格のものではないと思っております。(発言する者あり)

菅(直)委員 ワープロ打ちであるかないかのことが重要なんじゃないんです、今も同僚が言っておりますが。二兆円を超える公的資金を導入するかどうかの判断が問題なんです。ワープロ紙が問題じゃないんです。印鑑が百個ついてあろうがなかろうが、二兆円のお金があなたのポケットマネーから出るわけでも、総理のポケットマネーから出るわけでもないんですから。しかも、それが破綻処理なのか資本注入なのかを判断する最も重要な判断のところで行われたということが言われているんです。

 担当者に聞いてまともに答えることは、私が知る限り、簡単じゃありません。大臣なんてそのうち、二、三年したらかわるんだと思っていますからね、みんな。片方でちゃんと相手側にも聞くのは当然じゃないですか。私は、この問題はこれから予算委員会でしっかりと、両方の担当者、りそなの人も参考人なり、場合によったら証人によって聞いてはっきりしなければ、二兆円ものお金をつぎ込むかどうかという重大な問題ですよ。

 先ほど与党の議員からもありました、もう一回きちんと検査したらいいんじゃないですか。もう一回きちんと、先ほど来一、二、三と言われましたけれども、一番目の問題もそうです。なかりせばなんということを考えることはできないなんて言われましたが、私が公認会計士協会からお聞かせいただいた公認会計士のいわゆる五項の基準の読み方によっては、債務超過の場合には繰り延べ税金資産は回収可能とはみなされないというふうにもちゃんと読めるわけでありまして、ぎりぎりのところ、それは監査法人の判断が入ったのかもしれません。いろいろあるんだそうですね、キャッシュフローがどうとか、タックスプランニングがどうとか、いろいろ難しい言葉を私も聞きました。

 少なくともそういう微妙な問題がある中で、専門家集団の金融庁が、なぜ監査法人がやったことが正しかったのかどうかを再チェックできないんですか。なぜそれが適切であったかどうかを再チェックできないんですか。朝日監査法人が法律的に契約していたかどうかは別として、少なくとも、どちらでしたか、あさひ銀行か大和銀行のもともと監査法人としてやっていたわけですから。別に評論家的に朝日監査法人がかかわっていたわけじゃないんですから。

 私は総理に、私の時間は終わりますので、最後に申し上げておきます。

 あなたは法律的には内閣府の大臣なんです。金融庁は内閣府の外局です。外局の長官は官僚です。つまりは、あなたは金融庁の責任大臣なんですから、もう一度きちんと再調査、再検査をされて、それを明らかにした上でなければ二兆円の公費投入はできない、このことを国民の前ではっきり約束していただきたいと思いますが、いかがですか。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、我々は、整備された検査のシステムを持っております。通年・専担検査、これは当然のことながらやっていきます。さらには、これは昨年の十月の金融再生プログラムの中に、新たに繰り延べ税金資産については、繰り延べ税金資産検査も行うということを決めております。その決められたシステムの中で、しっかりと引き続き検査を続けていきたいというふうに思っております。

菅(直)委員 総理にもう一度聞きます。

 いいですか。技術的なことを聞いているんじゃないですよ、今。それは、結果として同じだったら同じだったでいいんですよ。結果として同じだったら同じだったでいいんですよ。少なくとも、監査法人によって認識が違っていたということは事実なんですから。

 そういうことを踏まえて、果たして、そうした扱い方が、公認会計士協会から出している指針や、あるいは今の社会情勢、経済情勢から見て適切であるかどうかをもう一度、金融庁の責任で検査し直したらどうですか。企業と監査法人任せで、その結果で我が国の大事な税金二兆円を自動的に出すなんということは、私は国会が認めるわけにはいかないと思いますが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 金融健全化に向かってしっかりした対応をしていきたいと思います。

菅(直)委員 終わります。


2003/05/28

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