2003/10/01

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156 衆院・予算委員会 


平成十五年十月一日(水曜日)

藤井委員長 この際、海江田万里君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。海江田万里君。

海江田委員 民主党の海江田万里です。

 まず、質問に先立ちまして、過日の十勝沖の地震で被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 それから、きょうが、この予算委員会、私もこうやって新たに総理に、総理というか自民党の総裁選で勝たれた小泉総理にお目にかかるのは初めてでございますので、改めまして、自民党総裁選での勝利、おめでとうございます。

 そして、新たに選ばれました閣僚の方々にも、まず、おめでとうございますということをお伝えしたいと思います。あわせまして、藤井委員長にも、総裁選、お疲れさまでございました。

 エールの交換はここまででございまして、総理は、二年半前に就任をされましてから二度の内閣改造をおやりになりましたけれども、私の記憶では、最初に総理になられましたときに、一内閣一閣僚ということを、これは大きな公約だというふうに私は認識をしておりますが、柱に据えておられたように思いますが、二度改造をやられて、ほとんどの閣僚もかわっているという状況で、やはりこの一内閣一閣僚というのはもう無理だったんですか、どうなんですか。やはり、この点についても改めて総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、一内閣一閣僚、望ましいと思っております。

海江田委員 望ましいけれども、それができなかったということでございますね。それについてはいろいろな思いがおありだろうと思いますが、その意味では、これもやはり最初にお約束をしたことだから、その約束が果たせなかったということについてざんきの思いがあるとか、そういうことはいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 いかに改革を進めるために多くの方々からの協力を得るかということの方が大事だと思っております。

海江田委員 これは、三十兆円の国債のときも、それは大した公約じゃないとおっしゃったんですから、そういう答えが返ってくるのもしようがないかもしれませんけれども、今回の国会が始まりまして、最初に総理が本会議場で所信表明を行いました。その所信表明を聞かせていただいて、それから、実は、きょうのこの予算委員会での質疑もそうなわけでございますけれども、総理はいつも所信表明のときには、最初は米百俵という名文句といいますか、歴史の故事をお引きになって、あしたのことを考えなきゃいけないということを非常に強調なさった。それから、二回目の所信表明では、たしかダーウィンの進化論について引用されまして、やはり変わらなければ生き延びていくことができないんだということをおっしゃいました。

 今回、その意味の言葉をどういう表現をされるのかということで、その意味では私も注目をしていたわけでございますが、今回は司馬遼太郎先生の言葉を引用しまして、悲観論ではだめなんだ、子供たちに次へのステップを、前進をするためにやはり楽観論が必要なんだ、こういうお話をされました。

 先ほどの当委員会でのお話もそうでしたけれども、私は、悲観論、楽観論ということについて、若干総理はお考え違いといいますか、よく私どもなんかに対しましても、だめだだめだじゃだめなんだとか、そんな悲観論じゃだめなんだというようなことをお話しになりますが、私どもは悲観論を述べているんではありませんで、経済についての先行きが厳しい、あるいは実際足元が厳しいということは危機意識としてお話をしているわけでありまして、その意味では、楽観論、悲観論ということでお話をされてしまいますと、どうしても危機意識というものが希薄になってしまうんではないだろうかということを、私は、余計なことかもしれませんけれども、そのことに危機意識を持っております。

 まさに今、景気も確かに一年前あるいは二年前に比べますとよくなっている部分もございます。きょうも日銀が短観を出しまして、その中の業況指数、業況判断といったものが若干上向いてきました。ただ、その上向いてきたというのも、やはり一部の大企業、しかも製造業。非製造業の方はまだまだだと。それから、中小企業に至っては、まだまだ製造業もなかなか明るさが見えてこないということがありまして、その意味では、やはり経済、日本の経済に対する危機意識というのはこれまでと変わらず持ち続けなければいけない、私はそのように思うわけですけれども、その点はいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 何事も表があれば裏がある。コインの裏表ではありませんが、作用があれば反作用がある、プラスがあればマイナスがある。物事はやはり両面見ていかなきゃいけないと思っております。そういうことを言いますと、景気の情勢、厳しい中においても、明るい兆しも見えてきた指標も出ております。

 司馬遼太郎氏の、人間のすばらしさは、自分のことを悲観的に思わないことだという言葉を引用したのも、私は司馬遼太郎氏の本をかなり読み込んでおりますので、あれほど、戦国時代とか幕末時代、日本の大きな時代の転換期にあって、歴史上の人物を数千人にわたって見てきた方、時代の困難な時期を見てきた歴史作家として、私もあの本、いろいろな本を読んで大変得るところが多かったわけであります。

 今、厳しいという状況でありますが、各時代において、今では想像できないような絶望的な時代においても、我々の先輩たちは絶望せずに、悲観的に思わないで、何とかこの困難な時代を切り開いていこう、自分の将来を自分の力で何とか可能性を見出していこうということで、苦難の道を歩んできたわけであります。

 そういう意味において、今の時代も厳しい状況でありますが、戦後の、敗戦後の時期に比べても恵まれた点もある、そういう面も見て、だめだだめだと悲観的に思わないで、いい点も見ることが必要ではないかと。余り悲観的に見ますと、挑戦の意欲も失います。いい面も見て、すばらしく活躍している人もいると。あるいは、自分の国、日本の国に比べてもっと困難な局面に遭遇していながら、建国の意欲に燃えている国々もある。そういう点から、私は、一面的に物を見ないで、両面見る必要があると。

 余りにも小泉内閣だめだだめだという議論が多いし、今の時代は惨たんたるありさまだ、悲観論に満ち満ちているというような議論をする方もおりますので、それだけではないのではないか、両面見ながら、新しい可能性、日本の持つ潜在力を信じて、新しい時代を切り開いていく意欲を持つことも大事ではないかという意味を込めて、司馬遼太郎氏の言葉を引用したわけでございます。

海江田委員 私が言っておりますのは、楽観論、悲観論というその次元の議論ではありませんで、やはり今も相変わらず日本の経済に対しては大変厳しい状況がありますから、そういうことに対して、やはり危機意識をしっかり持っていただきたい、昨今の総理の発言を聞いておりますと、その意味では、根拠なき楽観論といいますか、危機意識の薄さといいますか、それがあるんではないだろうかということを指摘しているわけでございます。

 具体的な質問に入りますけれども、総理は、この二十六日の衆議院の所信表明の演説で、「サービス分野を中心に、この三年間で約二百万人の雇用が創出されたと見込まれます。」、そして「今後二年間で三百万人の雇用創出を目指します。」このように演説をされておりますけれども、これは本当に間違いのない数字でございますか。

小泉内閣総理大臣 私もこれは確認したんです。これは間違いのない数字だ、そういうことで引用をいたしました。詳しい数字については、関係大臣から答弁させます。

海江田委員 間違いのない数字かということで確認をしたということでございますが、恐らく、そのときに見せられた資料が、今皆様方のところにお配りをしている資料ではないだろうかというふうに思うわけでございますが、いかがですか。総理、ちょっとお目通しいただいて。お配りした、それです。そのとおりですか。

小泉内閣総理大臣 はい。このとおりであります。

海江田委員 これを見ますと、一見しますと、二〇〇〇年の一月から六月の間、一千四百六十三万人、サービス業における雇用者数の増加、そして、二〇〇三年の一月から六月が一千六百十八万人ですから、プラス百五十五万人になっている。それを少しサービス業の範囲を広げまして、あるいは広げたというよりも、むしろ、従来はサービス業だったんですけれども、これからはもう余り伸びていかないなというところをわざと落としまして、そして、新規にこれから伸びていくであろうと見込まれるところを今度新たにサービス業という定義づけをし直しをしまして、そういういわば工夫といいますか、もう少し端的に言うと細工をしまして、それで一・三倍を掛けて約二百万人という数字を出しているんだろうと思いますが、実は、これはもう真っ赤なうそといいますか、全然実態と違うわけですよ。それについて、何かもし総理以外で、竹中さん意見があれば。

竹中国務大臣 この五百三十万人雇用というのは、そもそもの発想は、海外への製造業の立地とか衰退していく産業とか、雇用が減るところというのは、この構造調整の中ではどうしても出てくる、それを補うためには新たな雇用創出が必要である、その創出の可能性として、こういう分野で五百三十万人の可能性があるということを出したわけです。これは委員もう御指摘のように、したがって、これは純増ではなくて、新たな創出です。

 かつ、統計のベースが、五百三十万人雇用の議論を島田晴雄教授らがなさったときのベースというのは、事業所統計でありますとかサービス基本調査でありますので、これは五年に一回しか出ない。これを労働力調査、労働力調査は非常に頻繁に出ますので、しかしこれは非常に範囲が狭い、この調整。

 したがって、純増ではなくて創出の部分、それと範囲が狭い部分をより広く、その調整を行って推計をしたものでございます。推計でありますから、これは一つの推計であります、我々としては、この推計は非常に適切なものであるというふうに思っておりまして、これをもとに、さらに雇用をふやしていきたいというふうに考えているわけです。

海江田委員 今竹中さんがおっしゃっていたことは大変重要でありまして、一つの推計でしかないということなわけですね、総理。

 だから実感としまして、本当にこの二百万人雇用が創出された、まあ、これは雇用の機会ですから、やめた人はもちろんいる、純増でただこの二百万人ふえたということではないということはわかりますけれども、それにしてもやはり少し、実際の就業者というのは平成十一年六千四百四十六万人、平成十四年で六千三百三十万人ですから、これは百十六万人、実際の就業者は減っているわけですね。それと比べて、やはりここで二百万人も機会がふえたというのは多過ぎやしないだろうかということぐらいは、少しは総理、お役人からあるいは竹中さんから見せられた数字をそのままうのみにするんじゃなくて、やはりそれは考えていただきたいんですね。

 あるいは本当に町の声、先ほども同じ東京の吉田公一議員と話していましたけれども、今、東京がいい、いいと言われていますけれども、その中だって、地方の人たちは東京がいいからいいんですねなんて言われますけれども、その中だって商店街はもうシャッター街になったり、そういう現実があるわけですよ。総理も、そういうことには目をつぶっているわけじゃないわけですから、そういうのをごらんになれば、ここでやはり雇用が二百万人も創出をされたということ、本当なのかなと、だれだって思うのがそうなんですね。そうはお思いにならなかったんですか。

小泉内閣総理大臣 新しい雇用が創出されたということでありますので、これに対して、今指摘されましたように確認をして、見込まれますという表現を使って所信表明で言ったわけでありますが、同時に雇用を失った方もいるのは事実であります。両面事実なわけです。ふえた分と減った分がありますよと。

海江田委員 じゃ、トータルではどうなんですか、トータルでは。総理でいいです、総理です、それは簡単な話じゃないですか。トータルでは。

竹中国務大臣 雇用の問題というのは、これは海江田委員よく御承知の上で聞いておられると思いますが、世界じゅうで今大変であります。

 この二年間で日本の失業率はほぼ横ばいなんですね。その間にしかし、経済がいいというアメリカでも一%ポイント以上ふえて、フランスでもドイツでも一%ポイント以上ふやしている。日本も雇用は大変厳しいです。しかし、その失われた分、何とか創出で補っているから、何とか横ばいでもっているということだと思っております。

 就業者数そのものは、実は九七年がピークで、その後どんどん減っていきました。二〇〇〇年、一九九九年、つまりあれだけの大きな公共事業をやって、需要追加をやっているときですら、実は就業者数は減っておりました。

 それが、この就業者数がようやく去年の末からことしぐらいに底を打って、今少しふえるような傾向が見られている。そういうような状況になっておりますので、我々としては、これは御指摘のとおり創出です、だから減っているところもあります、だから我々としてはもっと創出したいんです、したがって、その五百三十万人の中の二百万人ぐらいいっている、もっと頑張ろう、もっと頑張ってこれをふやしていこうという意味でこの数字を出しております。

海江田委員 先ほどは推計だというお話があって、そしてもっと創出したいという希望的な願望があって、これは希望的な願望の数字なんですよ。

 実際にそれだけ雇用がふえているのなら本当にそれは喜ばしいことですし、それから完全失業率も若干、今五・一というところまでなっていますけれども、これはまだまだ、私たちの政党ではこの任期中、今度総選挙があって、その総選挙の後、ですから四年の間にやはり四%台の前半にしたい、こういうことをはっきりうたっているわけであります。

 そのためにはこういうこともやらなきゃいけないよ、ああいうこともやらなきゃいけないよ、公共事業なども、緑のダムなどに変えたりNPOなどに変えたりということでやっていかなきゃいけないよというような、実際のマニフェストの中にそういう中身を盛り込んでいるんですが、これは、そういう意味からいうと、本当に現実にはないけれども、こういうふうにしたいんだという願望のあらわれをやはりここに書いているということで。

 総理、一つだけ言いますけれども、総理は、実は私、この二百万という数字を聞いたとき、何でおかしいなと思ったかというと、ことしの四月のたしか二十三日ですかね、党首討論がありまして、私は国家基本政策の委員会の筆頭理事をやっていますので、いつも総理の前で話を聞いておりますが、そのときの四月二十三日の国家基本政策委員会、俗に言うクエスチョンタイムの菅代表とのやりとりの中で、総理は、いいですか、ことしの四月二十三日の段階で、「十二年度を基準にすると、」これはさっきと同じですね、この「十二年度を基準にすると、約九十万人ぐらい雇用も創出しております。」こういうふうに言っているんですよ。四月の二十三日ですね、四月の二十三日に約九十万人ぐらいということを言っていて、そこからたった五カ月たったところでどうして急に二百万人になるんですか。この百十万ふえたのはおかしいと思いませんか、総理。

 これは総理がおっしゃったんだから。いや、総理ですよ、それは。

坂口国務大臣 四月におっしゃったのは、それは二年間でサービス業が九十万ということを、約五十万ぐらいずつふえてきておりますから、大体年間で百万というふうに思っております。

海江田委員 それはいいですよ。だから、ことしの四月の段階、四月二十三日で九十万とおっしゃったのが、同じ口からどうして五カ月たったところで二百万という、倍以上にふえたんですか。それは総理、普通に、常識で考えて不思議だと思いませんか、どうですか。

小泉内閣総理大臣 ですから、確認して、それぞれ間違いない、そういう推定なり見込みだということで発表したんですから、私はそれぞれの役所の調査を見て発言しておりますので、そういう発表になったわけでございます。

海江田委員 では、全く不思議だと思わない。では、御自分が四月二十三日に九十万と言ったことをお忘れになっていたんじゃないですか、もうこの所信表明をする段階で。どうですか。

小泉内閣総理大臣 私もその点、確認したんです。しかし、間違いありませんということですから発表したんです。

海江田委員 それでしたら、このわずか五カ月という短期間に百十万ふえた理由というのは何ですかとお尋ねにならなかった、いやいや、それはお尋ねにならなかったですか、総理は。そういう疑問は持たなかったですか。

竹中国務大臣 データのことでありますので、私もその場で総理に御説明をさせていただきました。これはどうしてこういう数字が出てくるんだということはきちっと総理から御質問がありましたので、説明させていただきました。もう言うまでもありませんが、統計の比較の時点が違います。一年分統計が長くなっています。サービス業の範囲が広がっております。かつ、これは純増ではなくて、いわゆるグロスといいますか、総創出をあらわしております、それで二百万という数字が出てまいりますということを申し上げている。

 これはデータですから、推計です。しかし、データはことごとく、ほとんどが推計です。失業率だって推計です。GDPだって推計です。それで、推計が間違っておられるというんだったら、どこが間違っているかとか、自分で推計したらどうなるかというのをやはり示していただかないと、ちょっと議論にならないと思います。

海江田委員 まあこれはいつまで言ってもしようがありませんが、あらまほしけれという数字を述べているのにすぎないんですよ。だから、これだって、見込まれますという言い方にして、断定をしていないわけで、どうもそういう、思料しますという話であるわけですから。

 だけれども、それをやはり、ここでは成果をお話ししているんだから、そういうような形で成果の中にこういうことを入れるというのは、私は、それはやはりちょっと違うんじゃないだろうかというふうに思います。

 あと、竹中さんはよくデータだ、データだ、数字だと言うけれども、確かに数字はうそをつかないよ、数字はうそをつきませんけれども、うそつきがよくこの数字を利用しますからね。それだけは言っておきますけれどもね。

 もう少しこれからは、その意味では私は、何も悲観的になれという話じゃないけれども、やはり危機意識を持って事に当たっていただきたい。しかも、先ほどもお話をしましたけれども、やはり雇用というのは本当に人々にとりまして、では失業給付がもらえるからそれでいいかというと、そうではなくて、やはり働いて働いて自分自身を発見して、そしてそれなりの賃金を得たり、あるいは、自分で商売を始めて、それでもって収入を得たりして、それで自分自身の実現にもなるわけですから、この雇用という問題にはこれまで以上にやはり力を入れていただきたい、私はそのように思うわけですね。

 特に、雇用で、先ほどもお話ししました、我々の党はやはりNPOの関係します雇用というものにかなり力点を置いているわけですよ。先ほどのこの政府の方でも、やはりこれからは、例えば医療でありますとか、介護でありますとか、そういうところが雇用が広がっていくよというようなことは言っているわけでございますが、このNPOの税制につきましても、たしか一万二千ぐらいNPOの法人があって、本当に税制の優遇を受けておられるのはたった十五なんですよね。これはいかにも少な過ぎると。私たちは、これを大体この四年の間に、NPOの法人の資格を持ったところの六割ぐらいがやはりきちっと税制上の恩典を得なければいけないというふうに考えているわけです。

 これは財務大臣にお尋ねをしますけれども、やはり幾ら何でも、NPOの法人で税制上の恩典を得られるのが一万二千でたった十五というのは、これは少な過ぎるというような認識を持っておられないかどうか。

谷垣国務大臣 今、海江田委員おっしゃったように、一万二千七百八十のNPO法人、設立があるわけですが、認定されたものは十五件、ことしの八月末までですが。

 それで、もう委員よく御承知のように、昨年の税制改正で、優遇措置の対象となる認定NPO法人の要件について大分緩和をいたしました。まだ、今の十五というのはこの改正の前の数字でございますから、改正によってもう少し多くのNPO法人に活用していただいて、ふえてくることを期待しております。

海江田委員 ですから、その二百万人とかいう数字は、実は、そういうような手当てをきちっとやって、そうしたときに初めてそういう数字が達成できるわけで、後でこれはちゃんと本当に実際の数字が、確定をした数字が出てきますから、そうすれば、本当に今この時点で二百万人ふえていたのかどうなのかということもはっきりしますから、だから、そこでもうはっきりさせるしかないわけでございますが、ぜひこの雇用の問題には、これまで以上にやはり力を入れていただかなければいけないということはお伝えをしておきます。

 それからもう一つ、やはりこれは、今の日本の経済の状況をずっと考えまして、先ほどもお話をしましたけれども、きょうも確かに、日銀の短観などで少し明るさも見えていると。

 ただ、それも、先ほど来お話があるように、輸出主導であったり、あるいは企業の設備投資が前向きになったりというところで実は経済が上向きをしてきているわけですが、ただ、私は、本当にいつまでも、そういう意味では、日本の経済の成長と申しますか、あるいは日本の経済の原動力を、そうした企業の設備投資でありますとかあるいは輸出でありますとか、そういうことに本当に頼り続けていいんだろうかどうなんだろうかということをやはり考えているわけですね。

 それはどうしてかといいますと、やはり今、例えば円の問題もこれだけ、きょうあたり百十一円とか、これはまさに、総理が自民党の総裁選挙で再選をされて、そしてそのときにG7があって、そこで、為替のレートというものはもう少し柔軟にしなきゃいけないというような形で、いわば日本の円買いの、円高に対する、円を安くさせようという動きに対して、世界からそういうある程度、特にアメリカですけれども、批判が入ってきたというようなところから円高がずっと進行しているわけですけれども、そういうような外国の、アメリカの景気でありますとか、アメリカと日本との為替の変動でありますとか、やはりこういうことに頼り続けて本当にいいんだろうかどうなんだろうかということを私は思うわけです。

 特に、総理はやはり構造改革ということを言っているわけですから、経済構造の改革ということでいえば、本当に発想を百八十度変えまして、これまでのそういった設備投資だとかそれから輸出だとか、そういういわば企業、法人中心の考え方、ここをまず改めて、まずここから先に出ていってもらって経済全体を膨らまそうという考え方じゃなくて、例えば個人の消費であるとか、ただ個人の消費というと、みんな買いたいものないじゃないかと言うけれども、私もいろいろ聞いてみましたけれども、やはり一番買いたいのは住宅ですよ。

 だから、住宅産業でありますとか、あるいは住宅をしっかりさせることによって、良質の住宅を持たせることによって、それでまた消費も拡大をするわけですから、そういう個人消費だとか住宅だとかというところにもっともっと手厚く、その意味では後押しを、もちろん基本的には、自分たちが自分たちのお金でそういう住宅を手に入れるわけですけれども、そういうことをしやすいように政府が後押しをする、政治が後押しをするということはやっても全然構わないんじゃないだろうか。むしろ、そういうところに思い切って、これまでの法人や企業から思い切ってそういう個人の方にかじ切りをするということが、やはり私は構造改革なんじゃないだろうかと。

 民主党はまさにそこのところを主張しているわけですけれども、そういうお考えはどうでしょうか、総理。

小泉内閣総理大臣 先日も、ある経済人との懇談の機会におもしろいことを聞いたんです。

 政府があれ買え、これ買えと言うのはろくなことがない、今売れている商品を見てごらんなさいと。今売れている商品は何ですかと私、聞いたんですよ。そうしたら、ビデオじゃなくてDVD、液晶テレビ、ブラウン管の幅の広いのから薄いの、これが非常によく売れていると。それとカメラつき携帯電話、これほど売れるとは思わなかったと。それからデジカメ、それと食器洗い器。食器洗い器なんていうのは、今では手で洗うよりきれいに汚れが落ちて、水の使い方も、手で洗うよりも少ない。それともう一つ、これは小泉さん、想像つかないでしょうけれどもと言われたのがごみ焼却、家庭のごみを自分で小さくして。これが静かなブームだと言われましたよ。

 だから、政府であれ買え、これ買えなんて言わない方がいい、民間の企業はそう言われなくても何を消費者が好んでいるかを真剣に展開しているんだと。要は、企業の活動をもっと自由に、余り縛らないで自由にやらせるような環境をつくってくれ、規制改革もしてくれということを言われまして、なるほどなと思いましたね。

海江田委員 途中までは聞いていたんですが、私が言ったのは、やはりそれは今の液晶テレビもそうですけれども、総理、小さな家にあんなのを置いたって入り切らなくなっちゃうわけですよ。

 だから、そういう意味で、そういうような家電製品だとか何だとかも含めて、やはりそこの入れ物であります家をもっと力を入れるべきじゃないだろうか。あるいは発想を変えて、法人から個人中心だというふうに減税なんかでも、ちょっと今時間がないので、詳しい数字を言っていただく時間があるかどうかわかりませんけれども、減税だって、やはりどうしても法人の方が中心になっているわけですよ。

 住宅の減税は果たしてどういうふうになるのか。今度、住宅ローンの減税も切れますし、しかも、住宅ローンの減税が今までのやり方でいいのかというような問題もあるわけですよ。

 それで、私、ちょっと調べてみましたら、実は一九三〇年代のアメリカのあの大恐慌を救ったのは、実は住宅なんですよ。テネシー川の公共事業の方ばかり宣伝をされますけれども、実はあの一九三〇年のときにアメリカもやはりマイアミの土地の投機のブームとかありまして、がたっと不動産価格が下がったわけですよ。土地の価格が下がって不動産価格が下がった。

 そこから考えたのが、今度は土地自体に価値を見つけるんじゃなくて、むしろ土地の上の上物の住宅に価値を見出して、アメリカの住宅というのは大体十一ぐらいのパターンなんですよ。コロニアル風とか何とか風とか、その大体十一ぐらいのパターンができたのが、まさに一九三〇年代の大恐慌の中から、しかも、もう土地だけじゃだめだから、むしろ土地は安くてもいいけれども、その上にしっかりとした上物があれば、それがやはり一つの不動産というか住宅というか、資産をしっかり守ることができるんじゃないだろうかというような考え方になってきた。

 しかも、そのときに、実はアメリカは住宅ローンの控除の制度を導入したんですよ。その控除の制度というのは、我が国のような住宅ローンの控除とは全然違って、我が国の住宅ローンの控除というのは、ローンの残高が幾らありますか、その一%ということで、しかもそれを、最初は五年間だったのが七年になったり十年になったりとかいう、買った当初は返済が厳しいだろうから、だんだん賃金も上がっていくだろう、それから、買った家も上がっていくだろうから、一番厳しいのは最初のせいぜい三年か四年だろう、あるいは五年から十年ぐらいだろうから、その間税金をおまけしますよというのが我が国の基本的な住宅取得控除の考え方ですよ。

 だけれども、そうじゃなくて、アメリカが一九三〇年代に取り入れたのは、ローンの金利があったら、その金利があり続けるうちは未来永劫その金利分を所得から控除しますよ、減税をしますよという考え方だったわけですよ。これは全然違うわけですよ。

 それで、日本もそろそろ、やはりその意味では、買ってすぐ上がっていくなんていうことはもうない。それから、給料が上がっていくこともない。むしろ今さらされているのは、住宅ローンの金利が上がったらどうするんだろうか。この間、駆け込みが随分あった。これから金利がもう二度も上がったから、本当にこれから住宅を買う人たちが出てくるか心配ですけれども、やはり金利リスクというものはあるわけですよ。

 ところが、住宅ローンの金利は減税をしますよという形になっていれば、少なくとも買う人たちは金利の上昇リスクから、金利が上昇してそれだけローンを払うのが多くなればその分は税金でおまけになるから、最終的にはそういうリスクから逃れられるとか、こういうような発想の転換がやはり必要なんであって、先ほどお話があった、何が売れている、かれが売れている、これは自分たちが勝手に考えていることだから任せておけばいいという話じゃなくて、そういうふうに住宅ローンの仕組みもあるいは住宅の取得の仕組み、そういうものもやはりこれはある程度政府が応援をすべきではないだろうか。

 それこそ、むだな公共事業をやるよりもそういう方に応援をすべきではないだろうかというふうに考えているんですが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 まず、我が国でやっている住宅ローン減税ですね、今おっしゃったようにことしで期限を迎える、こういうことになっておりますが、これは、景気対策の観点から住宅が大事だと今おっしゃった、それをやろうということでやってきたわけですが、これを続けますと大体一兆円という減税になっている。これはなかなか今の財政としては大きいということがございます。

 それからもう一つは、多分そのことをお触れになったんだろうと思いますが、住宅をめぐる環境を見ますと、新築の住宅投資が持ち家比率の上昇に必ずしもつながらないという面もございます。それから、借家とかあるいは住みかえといった住宅ニーズも多様化してくる。そういうものにどうこたえたらいいか。今までの、新規供給を重視する、持ち家政策だけでいいのかといったような議論も、これはあわせてやらなきゃいかぬのだろうと思います。そういうことを踏まえて、今年末の税制改正の中でどうするかを議論していきたいと思っております。

 それから、委員がお触れになりました、アメリカの例もお引きになって、もう少し違う発想で住宅ローンの利子の減税というのは考えられないかということなんですが、これも確かに一つの考え方なんですが、やはりローンを使う人と使わない人のバランスとか、あるいはそれが租税回避に使われるというような懸念もこれはなくはなくて、諸外国でもだんだん廃止縮小の方向にあるというふうに聞いておりますので、今直ちに委員のおっしゃるようなことはとりにくいのかな、こう思っております。

海江田委員 この問題、いずれ財務金融委員会でしっかり議論したいと思いますが、ただ、ローンを使う人と使わない人のバランスと言いますけれども、これは使うのが当たり前の話であって、使わないというのはごく一部の人なわけですから。

 それから、ローンが使えれば、それによって新規に住宅を取得する人もふえるわけですから、私は、やはりこの住宅の問題、あるいはもう一つ前の、やはり個人のところに重点を置いた減税といいますか、個人にこれから景気を拡大する力を、やはりよりかかっていくんだというような考え方を持っていただいていいんじゃないだろうかと思っていますが、念のために、個人の減税、随分先行減税をやったという話がありますけれども、個人の減税と法人の減税でいうと、今の減税でよろしゅうございますが、どのくらいの割合になっていますか。

谷垣国務大臣 ちょっとその割合は今資料がないんですが、割合を見ますと、相続税、贈与税、これは個人にとって資産の有効な活用につながるわけでありますが、これが初年度〇・一兆、それから平年度が〇・二兆。それから、金融・証券税制、これは株式になじみの少ない方々を含めて預貯金並みの手軽さで投資ができる、これが初年度〇・一兆、平年度〇・一兆、こういう形になっております。

 それで、法人税の方は、初年度一・四兆、平年度一・七兆。これは、確かに法人だ、個人ではなく法人だということですが、大きく申し上げると、産業競争力の強化とか、中小企業の基盤強化を通じて雇用とか経済全般に好影響が及んで、個人にもそれはメリットがあることであるというふうに思います。

海江田委員 そういう考え方は古いということは先ほど申し上げたんですが。

 相続、贈与の話もだまされてはいけないんですけれども、初年度〇・一兆、それで平年〇・二兆というお話ですが、あれは、新たに相続と贈与の一体化という話が出てきましたね。それも入れているわけですけれども、相続と贈与の一体化というのは、一体化を選びますと、最終的には、その方が亡くなったときの相続税の、そのときの相続税率でもってもう一回再計算をし直すんですよ。

 そうしますと、まあ一年か二年先ならいいですけれども、まあ、いいと言ったら亡くなった方にはあれですけれども、これが五年先とか十年先になりますと、これはまさに政府税調の、せんだって発表した中期展望に入っていましたけれども、これからは実は相続税は強化をしますよという一つの方針を打ち出しているんですよ。

 どうして相続税は強化しますよということを言っているかというと、少子高齢化になって、子供が少ないから、結局、親が子供のためにお金をかける額が少なくなるから、最終的に資産が残るでしょうと。この最終的に資産が残った分を、つまり、子育てをやらずに資産を残した分を、やはり最後のところで税金でいただきましょうという考え方ですから、これがいい悪いは別ですよ、いい悪いは別ですけれども、そういうような考え方がありますから、将来的に相続税は、その税調の中期展望によれば必ず強化されるんですよ。今のような、各種の控除があって、税率も比較的低くてと。中には高いのもありますけれども、各種の控除があんなにたくさん、なくなるんですよ。恐らく各種の控除がぐっと圧縮されるんですよ。

 そうすることによって、この生前贈与なんかを受けた人たちというのは、実は、確かに、今はよかったというふうに思うけれども、それが相続と一体化をしていますから、一体化をして最後に再計算をやったら何のことはなかったという結論になるんですよ。

 だから、そのことからいうと、これはちっとも……(発言する者あり)いや、そういうことになるんですよ、方向性として。だから、そこのところをよくお考えになっていただいて、さらに一層、やはり個人に対する減税の部分を厚くしていただきたいと思うわけです。

谷垣国務大臣 随分先のことまで読んで御議論をいただいたわけですが、もちろん我々も、今おっしゃいましたように、この税制調査会の答申を一つたたき台にしてこれから議論をしていかなきゃならないんですが、ただ、今度の相続税、贈与税の一体化というのは、相続税が課税されない方々、九五%ですが、そういう方々にとっても、生前贈与を行いやすくなっている、それで事業承継なんかもやりやすくなっている、そういう点はあるというふうに思っております。

海江田委員 まあそれは、財務大臣、まだ就任をしたばかりですが、財務省の言うことをそのままオウム返しに言っているので、これは私は、ずっと本当に研究していまして、そういうふうになるんですよ。これを選んだ人というのは、最終的には相続税の本体が変わっちゃえば、そっちで再計算ですから。絶対、体を張ってでも阻止する、相続税の課税強化を許さないなんということを言えないでしょう、そういう流れになっているんだから。

 だから、そういうふうに、まだまだやはり随分不十分なところも個人に対してはありますし、それから、うまく仕組まれているんですよ。一見すると、一体化すると、確かにああ、いいかなというふうに思うけれども、最後のところで変わってきてしまえばだめなんだから。
 これはさっきの総理のデータの話もそうなんですけれども、その意味ではまだまだ官僚支配から抜け切れていないといいますか、これは堺屋太一さんが新聞に書いていましたけれども、総理は族議員と闘うのは一生懸命だと。族議員征伐、族議員退治に対しては非常に情熱を燃やしているけれども、その引きかえに、官僚そのものにもうすっかりいいようにされてしまっているというような指摘もあるんですよ。

 ですから、やはりきちっとそういう――もし違うというんなら、どうぞ、いいですよ。

小泉内閣総理大臣 官僚が族議員にこれをやるんですよ。官僚の分野を侵されると、よくお世話になっている議員のところに行って、これは何とか反対してください、反対くださいと。そこら辺をよく見なきゃだめです。与党の政治家だから、私の方がはるかに知っているんです。

 だから、そういう官僚主導にならないように、政治主導というものも大事だということは、よくわきまえています。

 今、相続税の話が出たけれども、この前、実におもしろいというか説得力のある話を聞きましたよ。それは、相続税、いろいろな陳情に来ます、税制の場合は。ほとんど減税の陳情、増税してくれという話なんというのはめったにないんだけれども、相続税は、生きているうちは払う、死んだ後まで取らないでくれという話には、これはなかなか説得力のある話だなと。相続税、生きているうちは金があるから払ってもいい、しかし、死んだ後まで取るというのはむごいじゃないかという陳情を受けたときには、これはおもしろい話、説得力があるなと。

 しかし、同時に、一方では、相続あるほどの人から税金を取るのは当たり前じゃないかという意見もあるんです。ほとんどは相続すべき資産がない、そういう人も考えてくれと。だから、両方のバランスをとって考えなきゃいかぬ、税のことは。その点はよく考えなきゃいかぬと思います。

海江田委員 一つ、総理にこれはぜひお答えいただきたいんですが、視点が変わりますけれども、先ほどの原口議員の質問に対して、藤井総裁が、総理の秘書官の御子息が道路公団にはいなかったと言いましたけれども、ファミリー企業については否定をしなかったわけですね。それから、このファミリー企業にいたということについては同僚や元取締役の証言もあるということなんですが、小泉総理の秘書官が道路公団ファミリー企業に御子息を縁故採用するなどと癒着していたということについて、やはり総理は改めてどういうふうに思うのかということをお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、それをどうして癒着と解釈するのか、おかしいと思いますね。個人のお子さんの仕事、就職のことを考えるのは、親御さんの立場に立ってみれば当然じゃないでしょうか。そこまで追及という気持ちでするんですかね。私は、国会議員として、一人の親として、その辺はもっと考えていただきたいと思います。

海江田委員 これについては、では、そういう事実が判明をした段階で、どういうふうに思いますかということを聞いているわけですから、それはもう全く構わないということですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 それは私に関係ないことですから。個人のお子さんのことで、そこまで私にどうだこうだと言うのはいかがなものでしょうか。

海江田委員 これにつきましては今後、まあ今度総選挙になってしまえばあれですけれども、やはり国会でもしっかりと、安倍官房副長官の答弁もありますので、私どもとしましては、さらにもう少し調査をしまして、それなりのやはり対応をしていきたい、そのように思っているところでございます。

 それから、さっきの話になりますが、住宅の話でリバースモーゲージというのがありまして、これは国土交通大臣にお知らせをしてございますが、優良な住宅があれば、アメリカなんかもそうですけれども、今日本でも、最近、百年住宅とかいうものがどんどん出てきまして、そうしますと、その住宅が一軒あれば、実は本当は、先ほどの相続の話にも出ましたけれども、現金なんかそんなになくても、その住宅を担保にして、さっきの総理の話では、生きているうちには取らないでくれ、亡くなってから取っていただくのは自由ですよという話に……(発言する者あり)逆ですか、これは。亡くなってからは取らないでくれ、生きているうちに取ってくれ、こういう話ですか。

 今私がお話をしておりますのは、最後のところで、自分が子孫に美田をもう残したくない、もう残す必要がないという人もまたふえているのも確かなんですよ。そうすると、自分が住んでいた優良な住宅が一つあれば、その住宅を担保にして、逆の年金の形ですね。リバースというのはテープレコーダーなんかのリバースで、巻き戻しですから、最初の住宅ローンというのは、がぽっと大金を借りて、そしてそれを月々払っていく。それが払い終わったところで、その住宅の現在価値に対してまたお金を借りて、そのお金を借りたものを年金型で今度は受け取っていく。最後に、亡くなったところで、自分だけじゃなくて奥さんでもいいわけですけれども、家族が亡くなったところでそれを売りに出してしまえば、もうそれでチャラですよと。そうすることによって、例えば年金の額についても、いろいろな、だんだん少なくなっちゃうんじゃないだろうかというような不安があるけれども、その不安が、そうやって自宅を担保に入れた年金でもって補うことができる。結果的に、何もお年寄りはそんなにたくさん現金なんかを、金融資産を持っていなくたっていいというような考え方もあるんです。

 これは一時期、三鷹市か武蔵野市か、そういうところが導入を図ったわけですが、その後ちょっと余りそういう事例を聞いていないんですが、アメリカなんか、最近になって特にやはり八万件ぐらいそういう件数も出ておりますので、そういう問題に対する国土交通省のお考えなりはいかがでしょうか。

石原国務大臣 ただいま委員御指摘のリバースモーゲージは、私の住んでいるところの横の吉祥寺で、武蔵野市ですか、かなり盛んだったんですが、なぜ日本で普及しないかというのは、先ほど委員が議論の中であった、アメリカの住宅は、それこそコロニアル方式の家とか何とか方式の家といって、そのものを欲しがる客層がいる。それで、その家が新しくないんですね。中古住宅でも価値がある。

 しかし、日本の場合は、十五年ぐらいたちますと上物の価値はゼロになりまして、中古住宅の情報でも、駅から徒歩何分とか、そういうものが唯一の価値判断になっているんですけれども、周りに何があるとか町並みがどうであるとか、先ほど委員御指摘の、何とか方式の家がここの地域はいっぱいある、こういうものを示すことによって、このリバースモーゲージは少子高齢化社会の中で有益な制度だと私も思いますので、国交省としても、いろいろ御指示をいただいて普及に努力をさせていただきたいと考えております。

海江田委員 ぜひこれは、やはり一種、価格が下落したときの保険だとか、そういうものも含めた設計が必要になってくるわけですから、これはやはり最初の段階では幾つかのモデルをつくって、そしてその中でスタートをさせるということになるんでしょうけれども、国としてもやはりそういうことにはしっかりと後押しをしていっていただきたい、そのように思うわけです。

 あともう一つ、クリーンエネルギー自動車等導入促進補助事業という長い名前ですけれども、これは、総理は随分、車のクリーン化といいますか、公用車を全部クリーンエネルギーを使った車にかえようとか、そんなようなことも言っているわけですが、現実にこのクリーンエネルギー自動車導入促進補助事業、つまり自分の乗っている車を新規に、クリーンエネルギーであります電気自動車、電気自動車はまだ高いですからそんなにいませんけれども、ハイブリッドカーだとか天然ガス自動車だとか、こういうものにかえようとするときに、普通の車を買ったときとの差額の二分の一以内を補助するという制度なんですが、私の知り合いで、これから車を買うんだけれども、この制度を利用しようと思ったんですけれども、実際には利用できないという返事が返ってきたというんですね。

 それについては、これも資料を皆さん方のところにお配りしておりますけれども、いろいろな条件がついてくるわけですね。例えば、年間走行距離が六千キロ以上であることとか、これはなかなか難しいですよ、六千キロを一年間に走るのは。それから、自動車の利用区間、住宅から事業所まで、それから住宅から駅までが直線距離で十キロメートル以上、または実走行距離が片道十二キロメートル以上であること。この永田町や霞が関に来るとなると、大体高円寺がちょうど十二キロぐらいですか、高円寺から先、つまり阿佐谷だとか荻窪だとか、あの辺より先からこのあたりに通ってくるのならいいけれども、あの中の人たちはだめだとか、それからもう一つありますのは、「自動車を利用する場合の通勤時間の方が、公共交通機関等を利用する時間より短いこと。」という決まりがありまして、そうなると、例えば高円寺の向こう側で阿佐谷、荻窪だって、あのあたりから朝通勤時間に来れば、とてもじゃないけれども、それは公共交通機関の方が早いに決まっているわけです。

 結局、これを利用できないというようなことになりまして、こんなんじゃ。実際に聞いてみると、東京の人はほとんど利用していなくて、結果的には地方の人たちですね。地方の人は早い時間でばっと走れますから、地方の人がほとんど利用しているといいますけれども、クリーンエネルギーにしなきゃいけないというのは、東京はもっと非常に大きな問題があるわけですから、やはりそういうところもしっかりと、これは一度こういうことを指示を出したということで、後はどうなっているか、なかなかここまでは実際に利用した人でなければわからない指摘なわけですが、そういう声もよく聞いて、実際に自分がやろうとしていることがしっかり守られているのかどうなのか、それがちゃんと、きちっと政府の方針が貫徹しているのかどうなのか、やはりそういうこともチェックしていないと、本当にそれこそ官僚主導で、お役人の手のひらの中に乗っかってしまうということで、そんなことはないとさっきおっしゃいましたけれども、実際、一つ一つのことを当たってみると、そういうケースがたくさんあるんですよ。

 だから、こういう問題も、やはりこれはぜひ善処をしていただいて、もうちょっと利用しやすいものにしていただくというようにお願いをしたいんです。

中川国務大臣 今先生御指摘のように、新しいエネルギーの、いわゆるクリーンエネルギー自動車でございますが、エネルギー政策の観点からいきまして、ガソリン中心からエネルギーの多様化という観点、あるいはまた省エネとか、あるいはクリーンエネルギーという観点からも、こういうものを小泉総理中心に政府として進めているところでございます。

 今先生御指摘のように、いろいろな優遇措置がある一方、今先生御指摘のようないろいろな要件も厳しいということで、平成五年からの十年間で、電気自動車、ハイブリッド自動車、天然ガス自動車合わせて五万二千台が補助実績ということでございます。一方、政府の導入目標は、二〇一〇年まで三百二十二万台ということになっておりまして、これがどんどん普及をしていかなければならない。

 他方、先生御指摘のような、実際にはいろいろな要件の規制もかかっているということでございますので、この辺は、政府あるいはまた場合によっては自治体等々ともよく御相談をしながら、総理の方針に基づいて、普及に向けてさらに努力をしていきたいと思っております。

海江田委員 総理の方針もよく承ってという答弁がありましたけれども、こういうのはやはりもう少し、これは本当に、えてして、まさに大枠を政治家が決める、方向性を決めるのが政治だということを言って、細かいことまでやらぬということをよくおっしゃっていますけれども、その細かいところでもって本来の政治家の主張などを曲げてしまうのがやはり官僚政治なんですよ。

 だから、それは細かいところと言われるかもしれないけれども、実際にどういうようになっているのかということをきちっと細かく点検をして、そしてそれが本来の趣旨とそぐわないものであれば直ちに軌道修正をする。今のままでいけば、一年間に一万台ちょっとぐらいで、二〇一〇年までに三百二十二万台、できるはずもないですよ、これは。そうすると、結局そのお金が残っちゃうということになりますから、そういうことはぜひ総理のリーダーシップでしっかりやってください。

小泉内閣総理大臣 利用しやすい簡素な手続、そういう視点が大事だと思いますので、その御指摘を踏まえて、もっと利用しやすいようなものにしていかなきゃならないと思っております。

海江田委員 もう時間が短くなりましたけれども、最後に一つ。

 総理は、新聞はよく読む方ですかね、国内の新聞は。せんだって、これはいつですかね、九月の二十三日ですから、総理が安倍さんを幹事長にして、そして組閣をやった直後、翌日の新聞ですか。これは、読売新聞の橋本五郎さんという編集委員が「「惑溺政治」卒業を」と。これは、私も改めて読んでみましたら、「文明論之概略」、福沢諭吉先生の本ですが、ここに出てくる。ここのテーマが、実は惑溺ということに対する、惑溺はいけないよと。

 この惑溺というのは、つまり一つの物事に凝り固まって周りのことが見えなくなってしまうというのが惑溺という言葉なわけですが、やはりこれはまさに政治でも、総理は構造改革ということをおっしゃる、だけれども、その構造改革ということを言うことが一つの自己目的になってしまって、そしてほかの意見やほかの風景が、状況が見えなくなってくるということに陥る。これがやはり一番戒めなければいけないということでありますので、総理にはその嫌いがあるということ、私は全く同感ですが、私ではなくて、この読売新聞の編集委員がおっしゃっているんですが、そういうことのないよう努めていただきたい。

 それについて感想があればどうぞ。

小泉内閣総理大臣 貫くべきところは貫き、大胆かつ柔軟に対処するべきはするべきと。そのように柔軟に対応すべき点もあると思いますし、両方よく勘案しながら総合的に考えていきたいと思います。

海江田委員 ありがとうございました。


2003/10/01

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