平成13年6月6日
I.「国民のための外交・国民と共に歩む外交」のための具体的施策
グローバル化が進む中で、外交活動はますます多岐にわたってきているが、国民の理解と支持なくして外交はあり得ない。この点について、研修や民間企業との交流等を通じて外務省員の意識改革を徹底するとともに、国民との一番の接点となる領事業務を抜本的に改革し、また、国民に対する情報の提供を拡充していく。さらに、国民に開かれた外務省を実現するとの観点から、第三者による「開かれた外務省」会議を立ち上げる。
1. 省員の徹底した意識改革
- グローバル化の時代に求められる外交官像に基づいた行動規範を、平成13年度内に策定する。
- I種職員及び専門職職員に国民と直接接する現場業務を経験させるため、在外研修に引き続き、原則として1年間程度、領事実務に従事することを、平成14年度から制度化する。
- 官民交流法も活用しつつ、外務省職員の民間企業やNGOへの派遣、民間企業における中・短期の研修等を通じ、民間の視点を養う。
- 民間も参加している人事院研修に積極的に参加するとともに、外務省自らも、意識改革のためのセミナー等を開催する。
2. 領事業務の抜本的改革
- 海外に在住、往来する国民の安全を守り利益を増進する領事業務は、一般外交業務と共に、外務省の役割の両輪をなす。この認識に立ち、本省幹部・在外公館長が率先して省員の意識改革に取り組み、日頃の領事行政サービスと海外安全対策の拡充を図るとともに、そのための本省及び在外公館の体制を改善・強化する。
- 国民が領事行政サービスを一層容易に利用できるよう、国民の要望・意見を積極的に取り入れるための施策を講じるとともに、民間等から利用者本位のサービスを学ぶ。それにより、情報技術をも活用してビザの発給等の手続きの簡素化・事務の効率化を図るとともに、在外公館における領事窓口や休館時の対応の改善を図る。また、国民の海外生活上の利益・福利の増進のため、時代の要請に応じた政策・措置の必要性を把握し、実施に移す。領事行政サービスの提供に当たっては、国民が容易に旅券の発給を受けられるようにする等、地方自治体等との連携を強化していく。
- 危険度を増す海外での邦人の活動の多様化を念頭に置き、危機管理対応体制を強化する。地域ごとに特定の在外公館を指定して当該地域における緊急事態に対応するための拠点公館とする制度の立ち上げ、専門家の育成・活用等、緊急時の機動力を人員・装備の面から充実し、事態に即応する体制を確立する。
- 専門性を備えた職員の質・量両面の拡充等、領事業務を抜本的に改革するために、所要の体制を強化する。
- 体制の強化に際しては、業務の外部委託を積極的に進める。
3. 情報サービスの拡充
- 外務省や在外公館のホームページ等を活用し、海外安全情報、経済関係情報、諸外国の最近の情勢を含む政治社会状況等についての情報提供を、質、量、迅速性等の面でより充実させる。情報発信の手段としてiモード・ホームページの導入やホームページのバリアフリー化を一層推進する。
- 国民に対する外交政策についての情報発信を強化する。特に、日本外交のあり方について幅広い意見交換を行うとの観点から外務省員による各種講演会等国民との意見交換の機会の拡充を図るとともに、外務省内外に国民との直接的な接点を拡充する。
- 在外公館による日本企業に対する支援活動の円滑化のため「日本企業支援窓口」業務の拡充を図る。
- 開かれた外務省を目指して、情報公開を前向きに積極的に進める。
4. 「開かれた外務省」会議の立ち上げ
- 外務省外の者を構成員とする「開かれた外務省」会議を早期に立ち上げる。本会議は、四半期に一度を目途に会合を行い、外務省に寄せられる様々な意見や苦情(省内からのものも含む。)を「第三者の目」によりチェックし、国民の視点から見て適当と考える意見を外務大臣に対して提言する。
- 本会議の事務局は、IVの監察査察部門に置く。
II.効率的かつ効果的な外交体制の実現
要人の往来がますます活発になる中で、より統一的、効率的かつ簡素に要人の往来に関連するロジ業務を処理するため、外務省内の体制を整備するとともに、便宜供与業務についても見直しを行う。併せて、民間の視点も踏まえて、外務省全体の事務の合理化を図る。
1. 要人の外国訪問業務(いわゆるロジ業務)の国際標準化
- 儀典長の下に総理・外務大臣の外国訪問、外国要人の日本訪問に関連するロジ業務を一元化する。また、総理大臣の外国訪問に関するロジ業務は、会計手続きも含め、外務省へ一元化する。なお、外務省職員は、内閣官房報償費を扱わない。
- 総理大臣をはじめとする我が国要人の外国訪問に関する国際標準に沿った基準を定め、事務体制・予算の合理化を図り、同行者を大幅に削減し、これに伴う訪問先の在外公館における受け入れロジの簡素化等を早急に行う。
- 会計事務の合理化のため、キャンセル料や予約金を支払うための方策について早急に検討を行い結論を得る。また、法人カードの導入の必要性等について検討を行い早急に結論を得る。
2. 便宜供与業務等の見直し
- 現行の便宜供与基準を見直して公開し、便宜供与についての国民の理解を得る。
- 在外公館等の見直しを行い、効率的運用を図る。
- 便宜供与の実績を、今後は情報公開の対象とし、業務の透明性と国民に対する説明責任を高める。
3. 全面的な事務合理化
- 職場環境の整備等も含めて、事務の合理化を強力に推進する。必要に応じ、外部の専門家の指導を仰ぐ。
- 翻訳や国際会議のロジ等の面でのアウトソーシング(外部委託)の導入をさらに積極的に行うとともに、勤務実態に応じた柔軟な勤務体制の導入をはかる。
III.「強力な外交のための人事体制改革」の実現のための具体的施策
外務省が効果的・効率的な外交を推進するには、外交を担う職員の人事について公平性、客観性、透明性を高めるとともに、能力本位の人事を実施することが不可欠である。1. 競争原理の導入による有能な人材の積極的任用
- 将来の省幹部となるべきI種職員間における競争原理を明確にするために、在外公館長や本省管理職への選考のあり方をより厳しくする。また、I種職員以外でも有能な職員については、試験採用区分にこだわらず、積極的に高いポストに任用していく。
- 他省庁との人事交流の促進を図るとともに、大使等幹部ポストを含め省外の有能な人材を積極的に活用する。
- 交代を必要とするポストに対する省内公募制を導入し、早急に実施すべく成案を得る。
- 現行の登用制度について、本来の目的である省員の志気を高める制度になるよう、廃止の可能性も含め、その抜本的な見直しを行い、早急に結論を得る。
2. 人事における公平性、客観性、透明性、予測可能性の向上
- 人事の硬直化と志気の停滞を防ぎ、その予測可能性を高めるため、人事異動を定期化するとともに、1ポストの任期を一定期間に定めることとし、その具体的な方途について早急に成案を得て、実施に移す。
- 特にI種以外の職員がそれぞれの専門性を確立し易くするため、また、自己の人生設計についての予測可能性を高められるよう、これら職員が入省してから定年退職するまでの典型的なキャリア・パスを示し、これに則った人事に努める。
3. 人事管理制度の強化
- 職員の能力や実績に応じた人事を行うべく、次の新たな人事評価制度を早急に導入する。
(1) 評価者が勤務評定前に被評価者との面談を行うことを義務づける。
(2) いわゆる「部下から上司への評価」制度の導入を検討する。
- 特定の幹部や公館長の意向に左右されず、省全体を視野に入れた人事ができるよう、人事当局の体制の拡充を行う。
- 人事上の悩みについての相談を受けカウンセリングを行うため、人事相談室を拡充し、女性も含めた相談員に随時相談できる体制を早急に整える。
- 女性職員の処遇に対して、きめ細かい対応をし、男女共同参画社会に適わしい育児休業制度等の実現をはかる。
- 人事については信賞必罰を旨とし、顕著な功績のあった職員に対する表彰制度を積極的に活用する。
4. 研修の拡充
- I種職員及び専門職職員の官房・領事業務研修を強化する。
- 課長、課長補佐等中間管理職についての研修も強化する。
- その他の職員については、本省及び在外での語学研修を含む各種研修の拡充を行う。
IV.不正と疑惑の根絶
外務省への国民の信頼を回復するため、省内におけるチェック体制を抜本的に強化するとともに、組織の効果的・効率的運営のための指導も併せ行うための体制整備を行う。また、報償費についても必要な制度改革を実施する。
1. 監察査察体制の強化・拡充
- 本省業務について、新たに監察制度を設け、在外公館に対する現行の査察と併せ、監察査察制度を創設する。
- このため、ハイレベルの監察査察官(仮称)を置き、その下に所要の体制整備を行う。この監察査察官は、原則として省外の第三者の適任者を任命する(短期任用を検討)。なお、人事の決定に当たっては、幹部人事に関わる現行承認制度に準じた扱いとする。
- 監察査察官の下に、外部からも適任者をスタッフとして加え、監察・査察業務にも、公認会計士等外部の専門家に守秘義務をかけた上で、参加させる。
- 監察・査察には従来型の通常・特別査察に加えて、抜き打ちの監察・査察も実施する。
2. 報償費制度の改革
- 報償費の支出は、外務大臣の責任で行う。(大臣決裁)
- 平成13年度予算については、一層の効率的使用と節約に努める。
- 平成14年度予算については、使用の実績を踏まえながら、他の予算科目への振替えも視野に入れつつ、極力減額に努める。
V.その他
- グローバル化が進む中で、外交活動を強化するためには、それに従事する人の質・量共の増加は避けられない、と思料する。改革と併行して検討しなければならない。
- 省員からの意見聴取の結果等、外務省機能改革会議の提言に盛り込まれなかった要素についても、今後、フォローアップを図っていく。